説明

コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法とコンクリート型枠面のICタグ構造

【課題】 非接触ICタグをコンクリート構造体に簡易に組み込む方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、アンテナパターンに非接触通信機能と記憶機能を有するICチップが装着された非接触ICタグ1を、コンクリート構造体表面に組み込む方法であって、(1)予めICタグ1の周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程と、(2)コンクリート型枠30面に、当該成形材料で固められたICタグ1を接着剤または粘着剤を用いて仮固定する工程と、(3)当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリート31を打設する工程と、(4)コンクリートが固まった後に、ICタグ1をコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠30を脱型する工程と、からなることを特徴とする。ICタグ1は、コンクリート型枠を貫通する複数本のボルトとICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板により仮固定してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法とコンクリート型枠面のICタグ構造に関する。本発明の具体的用途は、コンクリート構造体へのICタグ組み込み工事や組み込みしたICタグによる構造体の管理の分野等である。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグを使用して、コンクリート構造体の管理に利用する場合がある。すなわち、コンクリート構造体の材質や施工事業者、施工年月日、補修工事内容、補修工事年月日等の管理をする目的である。従来、この用途のための非接触ICタグを、コンクリート構造体の完成後に取り付ける場合は、接着剤等でコンクリート表面に固定することになるが、ICタグが露出しているため、人体や車両等の接触、風化等により剥落する可能性が高い。また、コンクリートを削って埋め込むこともできるが、作業負荷が増える上に、コンクリート構造を弱くする危険性もある。
【0003】
そこで、本発明はコンクリート工事の施工時に型枠面にICタグを仮固定してコンクリート打設と同時にICタグを装着する組み込み方法と、コンクリート型枠面のICタグ構造を提案するものである。このような先行技術は検出できないが、敢えて挙げれば、以下の特許文献1〜特許文献4がある。
特許文献1は、電子タグを2色のコンクリート間に挟んで成形することを記載しているが、型枠の内面にICタグを仮固定することについては記載していない。特許文献2は、型枠の内面に植生用の資材を詰めた包装体を取り付けしてから、コンクリートを打設することを記載しているが、ICタグに関連する技術ではない。
【0004】
特許文献3は、コンクリート壁面の点検調査支援システムについて記載し、壁面に非接触ICタグを埋設又は貼付することを記載している(段落0022)が、本願のような組み込み方法やコンクリート型枠面のICタグ構造については記載していない。
特許文献4は、構造的健全性のモニタリングデバイスについて記載し、トランスポンダとセンサを使用して構造物の健全性のモニタリングを行うことを記載するが、センサを埋設するもので、やはり本願の組み込み方法やコンクリート型枠面のICタグ構造については記載していない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−166410号公報
【特許文献2】特開平6−228977号公報
【特許文献3】特開2005−227829号公報
【特許文献4】特表2005−523494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、非接触ICタグをコンクリート構造体に使用する場合には、該構造体の完成後にICタグをコンクリート面に貼り付けするか、後から埋め込みするか、鉄筋等に固定してからコンクリートを打設し、コンクリート材料内に埋め込みしてしまう方法が行われていた。しかし、貼り付けする場合は人体や車両等の接触、あるいは自然風化により剥落してしまう可能性が高い問題があった。後から埋め込みする場合は、追加工事が必要になるほか、構造体を損傷する問題が生じる。また最初からコンクリート内に埋め込みしてしまう場合はコンクリートの外面からICタグの位置が判り難く、メンテナンスが困難になる問題があった。
【0007】
そこで本発明は、コンクリート型枠面にICタグを仮固定してから、当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設して、コンクリート構造体表面にICタグを組み込みする方法とコンクリート型枠面のICタグ構造を提案するものである。かかる組み込み方法等により、コンクリート構造体の各種管理も容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、アンテナパターンに非接触通信機能と記憶機能を有するICチップが装着された非接触ICタグを、コンクリート構造体表面に組み込む方法であって、(1)予めICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程と、(2)コンクリート型枠面に、当該成形材料で固められたICタグを接着剤または粘着剤を用いて仮固定する工程と、(3)当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設する工程と、(4)コンクリートが固まった後に、ICタグをコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠を脱型する工程と、からなることを特徴とするコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法、にある。
【0009】
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、アンテナパターンに非接触通信機能と記憶機能を有するICチップが装着された非接触ICタグを、コンクリート構造体表面に組み込む方法であって、(1)コンクリート型枠面にICタグをコンクリート型枠を貫通する複数本のボルトとICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板により仮固定する工程と、(2)当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設する工程と、(3)コンクリートが固まった後に、ICタグをコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠を脱型する工程と、からなることを特徴とするコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法、にある。
【0010】
上記要旨の第1において、ICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程の際、型枠の表面側に対して、コンクリートの内部側になる部分に最大断面面積部分が位置するようにすることが脱型を容易にして好ましい。
【0011】
また上記要旨の第1または第2において、コンクリート打設前の型枠に仮固定されたICタグには、施工事業者名、型枠番号、施工位置、施工年月日、打設したコンクリート材料、内部の配筋構造、の何れかまたはそれらの組み合わせからなる情報が記録されている、ようにすれば、その後の構造体の管理に便利である。また、ICタグの表面色がコンクリート構造体完成後のコンクリート表面色と異なる色彩にされていれば、ICタグの位置の識別に便利である。
【0012】
上記課題を解決する本発明の要旨の第3は、非接触ICタグをコンクリート構造体表面に組み込む際のICタグ構造であって、保護樹脂層からなるICタグ表面がコンクリート型枠面に接着剤または粘着剤により仮固定され、かつ、当該ICタグの背面がセメント材料または他の成形材料により薄板状にされた成形体に固着しており、当該薄板状成形体がコンクリート型枠面におけるICタグ表面側よりもコンクリートの内部になる背面側において、最大断面面積部分を有することを特徴とするコンクリート型枠面のICタグ構造、にある。
【0013】
上記課題を解決する本発明の要旨の第4は、非接触ICタグをコンクリート構造体表面に組み込む際のICタグ構造であって、保護樹脂層からなるICタグ表面がコンクリート型枠面に接触しており、かつ当該ICタグがコンクリート型枠を貫通する複数本のボルトにより、前記コンクリート型枠とICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板との間に挟まれて仮固定されていることを特徴とするコンクリート型枠面のICタグ構造、にある。
【0014】
上記本発明の要旨の第3において、薄板状成形体のコンクリート側となる外面に金属箔が貼着されているか金属塗装、または金属蒸着がされている、ようにすればコンクリート構造体内の鉄筋等の影響を排してICタグの通信安定性を図ることができる。本発明の要旨の第4において、ねじ穴付きフランジ板のコンクリート側となる外面に金属箔が貼着されているか金属塗装、または金属蒸着がされている、場合も同様の効果を奏する。
また、上記本発明の要旨第3、第4において、コンクリート打設前の型枠に仮固定された非接触ICタグには、施工事業者名、型枠番号、施工位置、施工年月日、打設したコンクリート材料、内部の配筋構造、の何れかまたはそれらの組み合わせからなる情報が記録されている、ようにすれば、その後の構造体の管理に便利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法では、コンクリート型枠面にICタグを仮固定した後、当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設する工程を行うので、追加する工事を必要としないで、ICタグを取り付けでき、その後もICタグが剥落するようなこともない。また、ICタグがコンクリート表面に現れているので、埋め込みするような場合のように、その所在が判り難くなることがない。
コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法(請求項1)では、接着剤または粘着剤を用いてICタグをコンクリート型枠に仮固定するので、工事の手間を節減できる。
コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法(請求項2)では、コンクリート型枠を貫通する複数本のボルトとICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板により仮固定するので、コンクリートの打設時にICタグが脱落することがない。
【0016】
本発明のコンクリート型枠面のICタグ構造(請求項6)では、ICタグがコンクリート型枠面に接着剤または粘着剤により仮固定され、コンクリートの内部になるICタグの背面側に最大断面面積部分が有するように、セメント材料または他の成形材料により成形されているので、ICタグがコンクリート内部に残って脱型し易くされている。
本発明のコンクリート型枠面のICタグ構造(請求項7)では、ICタグがコンクリート型枠を貫通する複数本のボルトとICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板により仮固定されているので、コンクリート打設時にICタグが脱落することがない。
請求項8、請求項9のように、薄板状成形体あるいはフランジ板のコンクリート側となる外面に金属箔が貼着されているか金属塗装、または金属蒸着がされている、ようにすれば、コンクリート内部の鉄筋等の影響を排してICタグの安定した通信を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の第1実施形態の方法を示す断面図、図2は、同第2実施形態の方法を示す断面図、図3は、第1実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図、図4は、第2実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図、図5は、非接触ICタグの一般形態を示す図、である。
【実施例1】
【0018】
図1は、コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法(第1実施形態)を示す図であり、図1(A)は、ICタグ1をコンクリート型枠に仮固定した状態、図1(B)は、コンクリート打設時の状態、図1(C)は、型枠を脱型した後の状態を示している。
【0019】
まず、予め当該ICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程、を行う。これは、ICタグ1が直接セメント材料に接触してコンクリート打設されると、ICタグ1が損傷を受け易いので、その周囲および背面を予め保護する目的で行うものである。ただし、あまり厚く成形して重量が大きくなるとコンクリート型枠30からの脱落も生じ易くなるので薄板状の成形体10にする。成形体10の厚みdは、3 mmから30mm程度の範囲が好ましい。剥離しないよう重量や厚みを制限する目的であるが、仮接着強度との関係で剥離が生じなければ、より厚みのあるものとしてもよい。
成形体10の表面面積はICタグ1の大きさに関係するが、通常、ICタグ1が札入れサイズカード以下の大きさであるから、その周囲を含めた大きさ程度になる。
【0020】
ICタグ1は、アンテナ表面が透明樹脂等により被覆されて保護されているのが好ましい。通常、ICタグ1のアンテナ面は表面保護フィルムで覆われているが、長期間の使用に耐えるようにするために、さらに熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂、ガラス材料等により保護強化することが好ましいからである。
【0021】
成形体10は、型枠30の表面側の面に対して、コンクリートの内部側になる部分に最大断面面積部分が位置するようにされているのが好ましい。コンクリート打設し固化した後において、コンクリート型枠30面からICタグ1を剥離し易くするためである。そのためには、薄板状の成形体10の背面が、図1(A)の実線のように鍔状突出部11を有するようにするか、図1(A)の破線のように成形体の全体が截頭錐体型で背部断面が大面積になるように成形することが好ましい。必ずしもICタグ1の背面全周域で拡大されている必要はなく、一部分が拡大していてもよい。
【0022】
次に、図1(A)のように、コンクリート型枠30面に非接触ICタグ1を仮固定する工程、を行う。なお、この工程は先の成形体とする工程と前後しても構わない。すなわち、型枠30面に非接触ICタグ1を仮固定してから、ICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程を行ってもよいものである。
仮固定は、ICタグ1の表面に強接着しない接着剤または粘着剤を使用して型枠30面に、ICタグ1を仮接着することにより行う。この際、ICタグ1と型枠30面間を剥離する際の当該面間の剥離強度が、前記鍔状突出部11の破壊強度よりも大きくならないようにする必要がある。コンクリート型枠30には、鋼製や木製のものを使用できる。
【0023】
成形材料としては、普通セメント、軽量コンクリート材料、樹脂含浸コンクリート材料等のセメント材料の他、石膏、石灰、ドロマイト、粘土、セラミック、等の無機系材料、水溶性またはエマルジョンタイプの天然ないし高分子材料、例えばセルロース、ゴム、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂等を使用でき、これらの材料を単独または混合して用いることができる。不飽和ポリエステル、フェノール、メラミン、尿素、エポキシ、シリコーン等の熱硬化性樹脂で熱硬化させて使用することもできる。
【0024】
次に、図1(B)のように、型枠30内のICタグ1側にコンクリートを打設すると、ICタグ1とその背面の成形体10は生コンクリート中に埋没する。生コンクリートは通常の使用材料であってよい。ICタグ1は成形体10により保護されているので、破損することはない。コンクリート材料が十分に固まった後に当該コンクリート型枠30を脱型すれば、図1(C)のように、成形体10がコンクリート内側に、ICタグ1がコンクリート構造体35の表面に組み込まれて工事が完了する。
【0025】
ICタグ1には、施工事業者名、型枠番号、施工位置(コンクリート構造体の全体における位置)、施工年月日、打設したコンクリート材料(砂利その他のコンクリート素材の種別、産地等)、内部の配筋構造、等の何れかまたはそれらの組み合わせ記録しておくことができる。これらの記録により後に、コンクリート構造体に異常状況が現れた場合には、原因の追求等に有用となる。
【0026】
通常、コンクリート内に埋設物を表面に現れるように埋め込む場合は、内部の配筋から型枠側に向けて押圧する部材を取り付けし、埋設物を型枠30面に押圧した状態で行うことが多いが、上記第1実施形態の組み込み方法では、そのような部材を使用する必要がなく、簡易に工事を完了することができる。また、コンクリート型枠30に対して加工する必要もなく、型枠30の再利用を容易にする。
【実施例2】
【0027】
図2は、コンクリート構造体へのICタグ組み込み方法(第2実施形態)を示す図であり、図2(A)は、ICタグ1をコンクリート型枠に仮固定した状態、図2(B)は、コンクリート打設時の状態、図2(C)は、型枠を脱型した後の状態を示している。
コンクリート型枠30面にICタグ1を仮固定するのは、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態ではICタグ1の仮固定をプラスチック製ねじ穴付きフランジ板20と複数本のボルト21により行う。すなわち、コンクリート型枠30にボルト21を貫通させるばか穴(ねじ溝がなくボルトを緩く通せる穴)32を複数箇所設けると共に、フランジ板20のボルト21が当接する部分にねじ穴を設けて、当該複数本のボルト21をねじ込みする。図2(A)のように、ICタグ1は、コンクリート型枠30とねじ穴付きフランジ板20との間に挟まれた状態で仮固定される。ボルト21は4本程度用いてICタグ1の上下左右等で固定するのが適切である。
【0028】
ねじ穴付きフランジ板20は、3mmないし10mm程度の厚みを有すれば十分であるが、あまり薄くてはねじ穴を設けられなくなる。フランジ板20の大きさは、ICタグ1の背面全体を覆い、ICタグ1を貫通しないようICタグ1の外側にねじ穴を設けられる程度の大きさにする。1本のボルト21と単体ナットの組み合わせを複数箇所に用いてもICタグ1を型枠30に仮固定できるが、コンクリート型枠を脱型する際に、ナットがボルト21と一緒に回転して離脱し難くなり易い。
【0029】
ねじ穴付きフランジ板20をプラスチック製とするのは、金属材料を使用してICタグ1に干渉を与えないためである。ただし、フランジ板20が10mm程度以上の厚みを有する場合、あるいはフランジ板20自体が当該厚みを有しなくても、ICタグ1のフランジ板側が10mm以上の厚みに成形されている場合は、フランジ板20の外面(コンクリートに接触する面)に金属箔を貼着するか金属塗装、あるいは金属蒸着して使用してもよい。金属塗装とは、アルミペースト等の金属粉末を含む塗料により導電性のある塗装をすること、金属蒸着とはアルミニウム等により導電性のある蒸着をすることをいう。ICタグ1と金属箔等との間隔が10mm以上になる場合は、ICタグ1に金属の影響を与えず、却って背後の配筋等の影響を排除して、安定した通信が可能となるからである。
【0030】
また、この際、ICタグ1は実施形態1の場合と同様に、表面側となるアンテナ表面、周囲および背面が透明樹脂等により被覆されて保護されているのが好ましい。長期間の使用に耐えるようにするため、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂、ガラス材料等により保護強化されていることが好ましい。
フランジ板20のプラスチック材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ノボラック樹脂、等の板状のものを用いることができる。板状に限らず、コンクリートとの接触面積を大きくするため、背面側を凹凸形状等にして成形した成形品であってもよい。
【0031】
次いで、図2(B)のように、当該コンクリート型枠30を用いてICタグ1側にコンクリート31を打設する。コンクリートが固まった後に、ICタグ1をコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠30を脱型する工程を行う。この工程は、第1実施形態と同様であるが、コンクリート型枠30からボルト21を取り外す作業を行う必要がある。コンクリート型枠30を脱型すれば、図2(C)のように、フランジ板20をコンクリート構造体内に残して、ICタグ1がコンクリート表面に現れて組み込まれ工事が完了する。ICタグ1の表面側に残ったボルト21の抜き穴は埋め込みするか飾りくぎ等で隠蔽する。
【0032】
第2実施形態の組み込み方法は、第1実施形態の組み込み方法よりも、ICタグ1がコンクリート打設時に脱落する危険を少なくすることができる。ただし、コンクリート型枠30に対してボルト21を通す穴加工を行う必要がある。
【0033】
図5は、非接触ICタグ1の一般形態を示す図であって、図5(A)は、平面図、図5(B)は、ICチップ3部分を通る断面図である。
非接触ICタグ1は、図5(A)のように、ベースフィルム5にアンテナパターン2を形成し、当該アンテナパターン2の両端部2a,2bにICチップ3を装着している。ICチップ3は、処理機能、記憶機能、及び入出力機能を備える通常のものである。
アンテナパターン2は、図5(A)では平面なコイル状のものを示しているが、2片のパッチアンテナやダイポールアンテナからなる場合もある。通常は、ベースフィルム5にラミネートした金属箔をエッチングしたり、導電性パターンからなるインキにより印刷したパターンからなっている。
【0034】
図5(B)の断面図のように、アンテナパターン2とICチップ3の面は、接着剤層6を介して表面保護フィルム4により被覆されている。表面保護フィルム4にはベースフィルム5と同一の基材や他のプラスチックフィルムを使用できる。
コンクリート構造体に組み込みする場合、表面保護フィルム4が薄層のフィルムからなる場合は、外面からの接触や悪戯から保護するため、樹脂層でさらに固めるか、より厚みのある樹脂シート等で保護するのが好ましい。
【0035】
上記において、ベースフィルムとしては、各種のプラスチックフィルムを幅広く使用できる。例として以下に挙げるフィルム、あるいはそれらの複合フィルムを使用できる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G(テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。
なお、表面保護フィルム4にも同種の材料を使用できる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明のコンクリート型枠面のICタグ構造の実施例について説明する。
非接触ICタグとして、厚み38μmの2軸延伸PETフィルムをベースフィルム5として、アンテナ形状が27mm×45mmのコイル状アンテナ2を形成し、厚み150μmのICチップ3をアンテナパターンの両端部2a,2bに装着した。さらにアンテナ面とICチップ3面に表面保護フィルム4として、ベースフィルム5と同一厚みの2軸延伸PETフィルムを積層して非接触ICタグ1を完成した(図5参照)。
【0037】
この非接触ICタグ1の表面保護フィルム4面を、硬化後の厚みが0.5mmとなるように着色したポリエステル系熱硬化性樹脂を塗工して硬化させた後、該ICタグ1を舟底型の成形型(底面が30mm×50mm、上面が42mm×60mm、厚み10mm)の底面に納めてから、熱硬化性ポリエステル樹脂を注いで、注型成形した。着色した熱硬化性樹脂等を使用するのは、表面色がコンクリート構造体完成後のコンクリート表面色と異なる色彩にして、ICタグの位置を明示するためである。
【0038】
図3は、第1実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図で、図3(A)は成形後のICタグ成形体10を示す図、図3(B)はコンクリート型枠30に取り付けした状態を示し、コンクリート打設直前の状態を示す図である。
成形後、非接触ICタグ1の成形体10は、厚み約10.5mmとなった(図3(A)参照)。当該成形体10の背面に厚み7μmのアルミ箔12を貼り付けした後、当該ICタグ1の成形体10を、図3(B)のように、木製コンクリート型枠30の表面に澱粉糊で接着して仮固定し、所定の形状に型枠組みをした。
【0039】
この段階でICタグ1に対して、施工事業者名、型枠番号、施工位置(コンクリート構造体の全体における位置)、施工年月日、打設するコンクリート材料(砂利その他のコンクリート素材の種別、産地等)、内部の配筋構造、等を書き込みした。
その後、通常のセメント材料を注ぎ込んでコンクリートの打設を行った。72時間経過後、コンクリート型枠30を脱型すると、ICタグ1はその着色した表面をコンクリート構造体35表面に現し、成形体10部分をコンクリート構造体内に組み込みして脱型することができた。
【0040】
このコンクリート構造体中の非接触ICタグ1に対して、周波数13.56MHzリーダライタ(株式会社ウェルトキャット製「RCT−200−01」)を用いてリードライト試験を行い、前記書き込み事項を支障なく読み取りでき、追加書き込みできることも確認できた。
【実施例4】
【0041】
図4は、第2実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図で、図4(A)は、コンクリート型枠30とプラスチック製ねじ穴22付きフランジ板20を示す図、図4(B)はコンクリート型枠30に、ICタグ1をフランジ板20により仮固定した状態を示し、コンクリート打設直前の状態を示す図である。
まず、鋼製コンクリート型枠30のフランジ板20のねじ穴22に対応する位置の4箇所にばか穴32を設けた。この穴32はボルト21を緩く通す穴であってねじ溝を設けない。フランジ板20には、厚み4mmの塩化ビニル板を50mm×80mmの矩形状にし、その上下左右位置4箇所にねじ穴22を設けた。
【0042】
非接触ICタグ1としては、実施例3で準備したと同一のICタグ1を使用した。このICタグ1を実施例3と同様にして、熱硬化性ポリエステル樹脂で表裏を成形して固め、全体の厚みが5.0mm程度の成形体10となるようにした(図4(A))。
その後、コンクリート型枠30のばか穴32を設けた所定位置内に当該成形体10を置き、先に準備したプラスチック製フランジ板20を被せ、4箇所のねじ穴22にボルト21をねじ込みして仮固定した(図2、図4(B)参照)。
【0043】
この段階でICタグ1に対して、施工事業者名、型枠番号、施工位置(コンクリート構造体の全体における位置)、施工年月日、打設するコンクリート材料(砂利その他のコンクリート素材の種別、産地等)、内部の配筋構造、等を書き込みした。
その後、通常のセメント材料を注ぎ込んでコンクリートの打設を行った。72時間経過後、コンクリート型枠30を脱型すると、ICタグ1はその表面をコンクリート構造体35表面に現し、ICタグ1とフランジ板20をコンクリート構造体内に組み込みして脱型することができた。
【0044】
このコンクリート構造体中の非接触ICタグ1に対して、周波数13.56MHzリーダライタ(株式会社ウェルトキャット製「RCT−200−01」)を用いてリードライト試験を行い、前記書き込み事項を支障なく読み取りでき、追加書き込みできることも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態の方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の方法を示す断面図である。
【図3】第1実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図である。
【図4】第2実施形態のコンクリート型枠面のICタグ構造を示す図である。
【図5】非接触ICタグの一般形態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ICタグ
2 アンテナパターン
3 ICチップ
4 表面保護フィルム
5 ベースフィルム
6 接着剤層
10 成形体
11 鍔状突出部
12 金属箔、アルミ箔
20 ねじ穴付きフランジ板
21 ボルト
22 ねじ穴
30 コンクリート型枠
31 コンクリート
35 コンクリート構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナパターンに非接触通信機能と記憶機能を有するICチップが装着された非接触ICタグを、コンクリート構造体表面に組み込む方法であって、(1)予めICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程と、(2)コンクリート型枠面に、当該成形材料で固められたICタグを接着剤または粘着剤を用いて仮固定する工程と、(3)当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設する工程と、(4)コンクリートが固まった後に、ICタグをコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠を脱型する工程と、からなることを特徴とするコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法。
【請求項2】
アンテナパターンに非接触通信機能と記憶機能を有するICチップが装着された非接触ICタグを、コンクリート構造体表面に組み込む方法であって、(1)コンクリート型枠面にICタグをコンクリート型枠を貫通する複数本のボルトとICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板により仮固定する工程と、(2)当該コンクリート型枠を用いてICタグ側にコンクリートを打設する工程と、(3)コンクリートが固まった後に、ICタグをコンクリート構造体表面に残して当該コンクリート型枠を脱型する工程と、からなることを特徴とするコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法。
【請求項3】
ICタグの周囲および背面をセメント材料または他の成形材料で固める工程の際、型枠の表面側に対して、コンクリートの内部側になる部分に最大断面面積部分が位置するようにすることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法。
【請求項4】
コンクリート打設前の型枠に仮固定されたICタグには、施工事業者名、型枠番号、施工位置、施工年月日、打設したコンクリート材料、内部の配筋構造、の何れかまたはそれらの組み合わせからなる情報が記録されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法。
【請求項5】
ICタグの表面色がコンクリート構造体完成後のコンクリート表面色と異なる色彩にされていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンクリート構造体へのICタグ組み込み方法。
【請求項6】
非接触ICタグをコンクリート構造体表面に組み込む際のICタグ構造であって、保護樹脂層からなるICタグ表面がコンクリート型枠面に接着剤または粘着剤により仮固定され、かつ、当該ICタグの背面がセメント材料または他の成形材料により薄板状にされた成形体に固着しており、当該薄板状成形体がコンクリート型枠面におけるICタグ表面側よりもコンクリートの内部になる背面側において、最大断面面積部分を有することを特徴とするコンクリート型枠面のICタグ構造。
【請求項7】
非接触ICタグをコンクリート構造体表面に組み込む際のICタグ構造であって、保護樹脂層からなるICタグ表面がコンクリート型枠面に接触しており、かつ当該ICタグがコンクリート型枠を貫通する複数本のボルトにより、前記コンクリート型枠とICタグ背面のプラスチック製ねじ穴付きフランジ板との間に挟まれて仮固定されていることを特徴とするコンクリート型枠面のICタグ構造。
【請求項8】
薄板状成形体のコンクリート側となる外面に金属箔が貼着されているか金属塗装、または金属蒸着がされていることを特徴とする請求項6記載のコンクリート型枠面のICタグ構造。
【請求項9】
ねじ穴付きフランジ板のコンクリート側となる外面に金属箔が貼着されているか金属塗装、または金属蒸着がされていることを特徴とする請求項7記載のコンクリート型枠面のICタグ構造。
【請求項10】
コンクリート打設前の型枠に仮固定された非接触ICタグには、施工事業者名、型枠番号、施工位置、施工年月日、打設したコンクリート材料、内部の配筋構造、の何れかまたはそれらの組み合わせからなる情報が記録されていることを特徴とする請求項6または請求項7記載のコンクリート型枠面のICタグ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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