説明

コンクリート構造物及びその連結構造並びにその施工方法

【課題】破損なく設置でき、簡単な作業で確実に目地を覆うことができ、しかも、防砂耐久性の高いコンクリート構造物及びその連結構造並びにその施工方法を提供する。
【解決手段】複数が横に並べられ連結されるコンクリート構造物100において、隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って一方の端部に基端が固定された下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uと、隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って他方の端部に基端が固定され先端が下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に挟入される中層の帯状可撓シート材13Mとを設けた。コンクリート構造物100は、中層の帯状可撓シート材13Mの基端に沿って複数の環材を固定し、環材には両端がコンクリート構造物100に固定された紐材を挿通し、上層の帯状可撓シート材の長手方向にはこの紐材に係止するフック部材を複数固定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂吸出防止用の帯状可撓シート材を備えたコンクリート構造物及びその連結構造並びにその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
干拓、埋立、防潮用などの堤防における土砂吸出防止、法面の洗掘防止、及びケーソンやコンクリートブロック、L形ブロックの護岸用として、その目地を覆う帯状可撓シート材(以下、「防砂板」とも称す。)が用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば、護岸構造体は、護岸のために、複数のコンクリート構造物が、海岸、河岸、湖岸等の沿岸に沿って、一列に整列するように並べて水中に沈められ、そのコンクリート構造物と対面する陸側との間を埋め立て構築される。防砂板は、隣接するこれらコンクリート構造物との間の目地を陸側にて覆って設けられる。また、防砂板は、護岸、堤防基礎部の洗掘防止の沈床用シートとしても使用される。
【0004】
このようにして構築された護岸構造体には、湾口から侵入する回折波や、消波堤を越波・透過する伝達波が頻繁に押し寄せてくるため、目地を介しての土砂吸出防止の対策が重要となる。防砂板は、埋立による土圧にてコンクリート構造物に押し付けられて密着し、目地を水密に塞ぐことで、目地からの土砂吸出を防止し、潮の干満、波浪浸水等によって、護岸の陥没を引き起こすことを防止する。
【特許文献1】実公昭60−19132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防砂板は、陸上にてコンクリート構造物に設置した後に、海上曳航して海中に設置する場合、潮流や曳航力により、バタツクことが頻発し、破損する等の問題があった。破損したり、強度の低下した防砂板は、土圧により裂けやすく、土砂吸出防止効果を低下させた。また、防砂板の施工現場での接続は、一般的に、埋立前の水中工事において行われ、潜水夫による視界不良の中で施工されることが多い。このため、手さぐりで作業を行わなければならず、防砂板の位置確認、コンクリート構造物ヘの取り付け、接続金具による接続すらも困難であった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、破損なく設置でき、簡単な作業で確実に目地を覆うことができ、しかも、防砂耐久性の高いコンクリート構造物及びその連結構造並びにその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のコンクリート構造物は、複数が横に並べられ連結されるコンクリート構造物100であって、
隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って一方の端部3Rに基端13aが固定された下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uと、
隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って他方の端部3Lに基端13aが固定され先端13bが前記下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に挟入される中層の帯状可撓シート材13Mと、
前記中層の帯状可撓シート材13Mと前記上層の帯状可撓シート材13Uを固定する固定手段と、
を具備したことを特徴とする。
【0008】
このコンクリート構造物では、陸上にてコンクリート構造物100に帯状可撓シート材13L,13U,13Mが設置可能となり、水中での帯状可撓シート材設置の施工手間が省ける。下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に中層の帯状可撓シート材13Mを入れた3層の防砂構造が形成される。そして、固定手段にて、中層と上層の帯状可撓シート材13M,13Uが固定される。
【0009】
請求項2記載のコンクリート構造物は、請求項1記載のコンクリート構造物であって、
前記中層の帯状可撓シート材13Mの基端13aの長手方向と、前記上層の帯状可撓シート材13Uの上面の長手方向には、一方に紐材23が保持され、他方に該紐材23が係止するフック部材25が複数固定されており、
前記紐材23と前記フック部材25とで前記固定手段を構成することを特徴とする。
【0010】
このコンクリート構造物では、中層の帯状可撓シート材13Mと、上層の帯状可撓シート材13Uのいずれか一方の長手方向に沿って紐材23が延在され、他方の長手方向には所望の間隔でフック部材25が係止され、中層の帯状可撓シート材13Mと上層の帯状可撓シート材13Uが、水中においても簡単な作業により、捲れ規制されて、保持される。
【0011】
請求項3記載のコンクリート構造物は、請求項1記載のコンクリート構造物であって、
前記中層の帯状可撓シート材13Mの基端13aの長手方向と、前記上層の帯状可撓シート材13Uの上面の長手方向には、それぞれ紐材23が保持され、
該紐材23を係止する複数のフック部材25で前記中層の帯状可撓シート材13Mと前記上層の帯状可撓シート材13Uを固定され、
前記各紐材23と前記フック部材25とで前記固定手段を構成することを特徴とする。
【0012】
このコンクリート構造物では、中層の帯状可撓シート材13Mの基端13aの長手方向と、上層の帯状可撓シート材13Uの上面の長手方向に、それぞれ紐材23が延在されており、これら紐材23が複数のフック部材25が係止されることで、中層の帯状可撓シート材13Mと上層の帯状可撓シート材13Uとが、簡単な作業によって、捲れ規制されて、固定保持される。
【0013】
請求項4記載のコンクリート構造物は、請求項2又は3記載のコンクリート構造物であって、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記上層の帯状可撓シート材13Uを基端に保持する複数の上層保持テープ27Uと、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記下層の帯状可撓シート材13Lを前記上層の帯状可撓シート材13Uに保持する複数の下層保持テープ27Lと、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記中層の帯状可撓シート材13Mを基端に保持する中層保持テープ27Mと、
を具備することを特徴とする。
【0014】
このコンクリート構造物では、コンクリート構造物100に固定されたそれぞれの帯状可撓シート材13U,13L,13Mが筒状に丸められてコンパクトとなり、海上曳航時や、コンクリート構造物設置時に場所をとらず、また、水中でバタツクことがなくなる。
【0015】
請求項5記載のコンクリート構造物の連結構造は、複数のコンクリート構造物100を横に並べ、その目地11を埋立側となる陸1側から帯状可撓シート材13U,13L,13Mにて覆うコンクリート構造物100の連結構造であって、
前記目地11を挟み一方のコンクリート構造物100との目地11に沿う端部3Rには下層及び上層の可撓シート材13L,13Uが基端13aを固定して設けられ、他方のコンクリート構造物100との目地11に沿う端部3Lには中層の帯状可撓シート材13Mが基端13aを固定して設けられ、
前記下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に、前記中層の帯状可撓シート材13Mの先端13bが挟入されて前記目地11が3層の前記帯状可撓シート材13U,13L,13Mにて覆われることを特徴とする。
【0016】
このコンクリート構造物の連結構造では、3層に重ねられた帯状可撓シート材13U,13L,13Mにより目地11が覆われ、防砂強度が高められる。上下層の帯状可撓シート材13U,13Lの間に、中層の帯状可撓シート材13Mが挟入され、隣接コンクリート構造物100が離れる方向に移動して目地11が離間しても、中層の帯状可撓シート材13Mがスライドして水密状態を維持し続ける。
【0017】
請求項6記載のコンクリート構造物の連結構造は、請求項5記載のコンクリート構造物の連結構造であって、
前記3層の帯状可撓シート材13U,13L,13Mが、前記目地11を覆うとともに、前記コンクリート構造物100の後端よりも延出するよう延長形成され、前記コンクリート構造物100を複数横に並べた状態で、前記帯状可撓シート材13U,13L,13Mの延長部分が設置地盤面を覆うことを特徴とする。
【0018】
このコンクリート構造物の連結構造では、3層に重ねられた帯状可撓シート材13U,13L,13Mにより目地11が覆われるとともに、コンクリート構造物100の後端よりも延出することで、このコンクリート構造物100の後端を覆うとともに、設置地盤面をも覆い、横に並ぶ複数のコンクリート構造物100の目地11が地盤から連続して塞がれ埋立土砂を覆うこととなり、この目地11からの埋立土砂が流出することがなく、また、浸水も防止される。
【0019】
請求項7記載のコンクリート構造物の施工方法は、請求項4記載のコンクリート構造物を用いた施工方法であって、
水中に、帯状可撓シート材13U,13L,13Mが埋立側となる向きで複数の前記コンクリート構造物100を横に並べ、
前記下層保持テープ27Lを切断して下層の帯状可撓シート材13Lで隣接するコンクリート構造物100との間の目地11を覆い、
前記中層保持テープ27Mを切断して前記中層の帯状可撓シート材13Mを該下層の帯状可撓シート材13Lの表面に重ね、
前記上層保持テープ27Uを切断して前記上層の帯状可撓シート材13Uを該中層の帯状可撓シート材13Mの表面に重ねた後、
前記紐材23に前記フック部材25を順次係止して前記上層の帯状可撓シート材13Uと前記中層の帯状可撓シート材13Mを保持することを特徴とする。
【0020】
このコンクリート構造物の施工方法では、水中で潜水夫が隣接コンクリート構造物100の帯状可撓シート材13U,13L,13Mを接続する場合、下層保持テープ27L、中層保持テープ27M、上層保持テープ27Uが順次切断されると、筒状に丸められた帯状可撓シート材13U,13L,13Mが自己の弾性力により面状に展開され、下層、中層、上層の順で各帯状可撓シート材13U,13L,13Mが3層の重ね状態となる。そして、固定手段である紐材23とフック部材25とにより、帯状可撓シート材を層状に保持する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る請求項1記載のコンクリート構造物によれば、隣接するコンクリート構造物との目地に沿って一方の端部に下層及び上層の帯状可撓シート材を固定し、他方の端部に先端が下層及び上層の帯状可撓シート材の間に挟入される中層の帯状可撓シート材を固定したので、陸上にてコンクリート構造物に帯状可撓シート材を設置でき、水中での帯状可撓シート材設置の施工手間が省けるとともに、下層及び上層の帯状可撓シート材の間に中層の帯状可撓シート材を入れた3層構造で目地を塞ぐことができ、高い防砂耐久性を得ることができる。そして、固定手段にて、中層と上層の帯状可撓シート材を容易に固定でき、これによって帯状可撓シート材が捲れてしまうことがない。
【0022】
請求項2記載のコンクリート構造物によれば、中層の帯状可撓シート材と上層の帯状可撓シート材とのいずれか一方の長手方向に沿って紐材が延在され、他方の長手方向には所望の間隔で複数のフック部材を複数固定したので、水中においても、紐材に、フック部材を係止するのみで、簡単な作業により、3層構造の帯状可撓シート材にて確実に目地を覆うことができる。
【0023】
請求項3記載のコンクリート構造物では、中層の帯状可撓シート材の基端の長手方向と、上層の帯状可撓シート材の上面の長手方向に、それぞれ紐材が延在されており、これら紐材が複数のフック部材が係止されることで、中層の帯状可撓シート材と上層の帯状可撓シート材とが、簡単な作業によって、捲れ規制されて、固定保持される。
【0024】
請求項4記載のコンクリート構造物によれば、筒状に巻いた上層の帯状可撓シート材を基端に保持する複数の上層保持テープと、筒状に巻いた下層の帯状可撓シート材を上層の帯状可撓シート材に保持する複数の下層保持テープと、筒状に巻いた中層の帯状可撓シート材を基端に保持する中層保持テープとを備えたので、それぞれの帯状可撓シート材をコンパクトに丸めることができ、海上曳航時や、コンクリート構造物設置時に場所をとらず、また、水中でバタツクことがないため、帯状可撓シート材を破損なく設置できる。
【0025】
請求項5記載のコンクリート構造物の連結構造によれば、下層及び上層の帯状可撓シート材の間に、中層の帯状可撓シート材の先端を挟入して、目地を3層の帯状可撓シート材にて覆ったので、目地を覆うシート材の強度を高め、防砂耐久性を向上させることができる。また、上下層の帯状可撓シート材の間に、中層の帯状可撓シート材が挟入されるので、隣接コンクリート構造物が離れる方向に移動して目地が離間しても、中層の帯状可撓シート材がスライドして水密状態を維持し続けることができ、信頼性の高い防砂性能を得ることができる。この結果、地盤、及びコンクリート構造物等の収縮、圧力等に耐え、特に海岸などの堤防の土砂吸出防止用(防砂板)に有効使用できる。
【0026】
請求項6記載のコンクリート構造物の連結構造によれば、目地を覆う3層の帯状可撓シート材が、コンクリート構造物の後端よりも延出することで、このコンクリート構造物の後端を覆うとともに、設置地盤面をも覆い、横に並ぶ複数のコンクリート構造物の各目地が地盤から連続して塞がれて埋立土砂にて覆うこととなり、この目地からの埋立土砂が流出することがなく、また、浸水も防止される。
【0027】
請求項7記載のコンクリート構造物の施工方法によれば、帯状可撓シート材が埋立側となる向きでコンクリート構造物を横に並べ、下層保持テープ、中層保持テープ、上層保持テープを順次切断して目地を3層の帯状可撓シート材にて覆った後、紐材にフック部材を係止して上層の帯状可撓シート材と中層の帯状可撓シート材を保持するので、水中で潜水夫が隣接するコンクリート構造物の帯状可撓シート材を接続する場合、下層保持テープ、中層保持テープ、上層保持テープを順次切断するだけで、帯状可撓シート材を3層の重ね状態にでき、施工の手間を大幅に削減しながら、高い防砂性能で目地を塞ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るコンクリート構造物及びその連結構造並びにその施工方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るコンクリート構造物が使用された護岸構造体の斜視図、図2は図1に示したコンクリート構造物の斜視図である。
本実施の形態によるコンクリート構造物100は、例えば複数が、海岸、河岸、湖岸等の沿岸に沿って、一列に整列するように横並べで水中に沈められ、そのコンクリート構造物100と対面する陸1側との間を埋め立てて護岸構造体200を構築する。
【0029】
コンクリート構造物100は、短尺の擁壁を成すコンクリートブロックとして本体3が形成される。本体3は底板(底版)5と、これに立設した垂直壁7との間に、三角形の控え壁9の二辺を接続してなる。底板5と垂直壁7は、L型を形成することから、重力式、半重力式の擁壁に比べ、垂直壁7の断面積は小さくて済む。L型本体3は、壁面に土地境界が接している場合等、つま先版が設けられない場合に好適に用いられる。なお、本体3は、つま先版を延出した逆T型とすることもできる。
【0030】
垂直壁7の高さが高くなると、片持ち梁式擁壁では土圧が増大し、不経済な断面となる。そのため、図例のように、片持ち梁式擁壁の垂直壁7と底板5との間に三角形の控え壁9を入れ、垂直壁7と底板5を三辺固定の状態にて構成している。このような三辺固定とすることで、垂直壁7に生ずる応力を小さくすることができ、経済性を確保しながら壁高を大きくできる。この種の控え壁式本体3では、垂直壁7の高さを7m以上とすることができる。
【0031】
本体3の垂直壁7には、陸1側となる面3aに、隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って帯状可撓シート材13が設けられる。帯状可撓シート材13は、底板5の上面にも延長して設けられる。帯状可撓シート材13は、本体3の両端に、それぞれ異なる帯状可撓シート材13(13U,13M,13L)が設けられる。なお、図中、15はコンクリート構造物100を重機にて吊り持ちするときに使用されるフックを示す。
【0032】
図3は図2に示したコンクリート構造物の下部正面図、図4は図3に示した環材及びフック部材を(a)、その側面視を(b)、筒状に巻かれて保持された各帯状可撓シート材を(c)で表した要部説明図、図5は3層に重ねられた帯状可撓シート材にて目地が塞がれた連結部の断面図、図6は紐材とフック部材により保持された上層、中層の帯状可撓シート材の斜視図である。
帯状可撓シート材13は、隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って一方の端部3Rに基端13a(図5参照)が固定された下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uと、隣接するコンクリート構造物100との目地11に沿って他方の端部3Lに基端13aが固定され先端13bが下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に挟入される中層の帯状可撓シート材13Mとからなる。それぞれの帯状可撓シート材13の基端13aは、本体3に植設された不図示のナットに、帯状の押さえ板17の上からボルト19が螺合されて固定される。
【0033】
中層の帯状可撓シート材13Mには、固定手段を構成する基端13aに沿って複数の環材21が固定され、この環材21には、両端が本体3に固定された紐材23が挿通される。この紐材23は、図示しないが、両端に結び目が形成され、或いは両端が環材21に結びつけられるなどして、帯状可撓シート材13Mから脱落しないように固定されている。また、上層の帯状可撓シート材13Uの長手方向には、紐材23に係止する固定手段を構成するフック部材25が、環材27を介して複数固定されている。フック部材25は、バネ性を有する線材にて返しの設けられたクリップ状に形成され、或いはカラビナなどの一部が開閉自在な環状部材よりなり、水中においても、紐材23に引っ掛ける動作で、容易に係止できるように構成されている。
【0034】
図6に示すように、中層の帯状可撓シート材13Mの長手方向に沿って連続して延在した紐材23に、所望の間隔でフック部材25が係止されることで、中層の帯状可撓シート材13Mと上層の帯状可撓シート材13Uが簡単な作業により、捲れ規制されて、保持されるようになっている。これにより、3層構造の帯状可撓シート材にて確実に目地が覆われる。
【0035】
それぞれの帯状可撓シート材13は、筒状にコンパクトに丸められて、設置現場まで保持されるようになっている。すなわち、上層の帯状可撓シート材13Uは、先端13bを基端に向かって筒状に巻いた状態で、外周が複数の上層保持テープ27Uによって保持される。下層の帯状可撓シート材13Lは、先端13bを基端13aに向かって筒状に巻いた状態で、複数の下層保持テープ27Lによって保持される。中層の帯状可撓シート材13Mは、先端13bを基端13aに向かって筒状に巻いた状態で、複数の中層保持テープ27Mによって保持されている。
【0036】
コンクリート構造物100に固定されたそれぞれの帯状可撓シート材13U,13L,13Mが筒状に丸められてコンパクトになることで、海上曳航時や、コンクリート構造物設置時に場所をとらず、また、水中でバタツクことがなくなる。これにより、帯状可撓シート材13U,13L,13Mを破損させずに設置できるようになっている。
【0037】
コンクリート構造物100同士の連結構造では、目地11を挟み一方のコンクリート構造物100との目地11に沿う端部3Rに下層及び上層の可撓シート材13L,13Uが設けられ、他方のコンクリート構造物100との目地11に沿う端部3Lに中層の帯状可撓シート材13Mが設けられている。
【0038】
すなわち、下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に、中層の帯状可撓シート材13Mの先端13bが挟入されて、目地11が3層の帯状可撓シート材13U,13L,13Mにて覆われることとなる。これにより、防砂強度が高められる。また、上下層の帯状可撓シート材13U,13Lの間に、中層の帯状可撓シート材13Mが挟入され、隣接コンクリート構造物100が離れる方向に移動して目地11が離間しても、中層の帯状可撓シート材13Mがスライドして水密状態を維持し続けることができる。
【0039】
上記コンクリート構造物100によれば、陸上にてコンクリート構造物100に帯状可撓シート材13を設置でき、水中での帯状可撓シート材設置の施工手間が省けるとともに、下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に中層の帯状可撓シート材13Mを入れた3層構造で目地11を塞ぐことができ、高い防砂耐久性を得ることができる。
【0040】
また、上記コンクリート構造物100の連結構造によれば、下層及び上層の帯状可撓シート材13L,13Uの間に、中層の帯状可撓シート材13Mの先端13bを挟入して、目地11を3層の帯状可撓シート材13U,13L,13Mにて覆うので、防砂耐久性を向上させることができる。
【0041】
そして、上下層の帯状可撓シート材13U,13Lの間に、中層の帯状可撓シート材13Mが挟入されるので、隣接コンクリート構造物100が離れる方向に移動して目地11が離間しても、中層の帯状可撓シート材13Mがスライドして水密状態を維持し続けることができ、信頼性の高い防砂性能を得ることができる。この結果、地盤、及びコンクリート構造物等の収縮、圧力等に耐え、特に海岸などの堤防の土砂吸出防止用(防砂板)に有効使用できる。
【0042】
なお、帯状可撓シート材13U,13L,13Mは、図に示したように、垂直壁7、底板5に設けられる他、図1に示すように、底板5の後端より延出させ、底板5の後端面、さらには、地盤面を覆うものであってもよい。これにより、帯状可撓シート材13は、潮の干満、波浪浸水等によって、護岸の陥没を引き起こすことを防止したり、護岸、堤防基礎部の洗掘防止の沈床用シートとしても使用される。また、法面の洗掘防止用目地材として使用されてもよい。
【0043】
次に、上記コンクリート構造物の施工方法を説明する。
図7は帯状可撓シート材による目地塞ぎ作業の手順を(a)〜(e)で表した説明図、図8は一部分が土砂にて埋め立てられた護岸構造体の斜視図である。
護岸構造体200を構築するには、先ず、帯状可撓シート材13を、陸上にて本体3に設置し、各帯状可撓シート材13U,13L,13Mを下層保持テープ27L、上層保持テープ27U、中層保持テープ27Mにて筒状に丸めてコンパクトに保持する。この際、環材21及び紐材23、フック部材25も予め取り付けておくと、水中での作業を減らすことができる。
【0044】
次いで、このコンクリート構造物100を、海上曳航して、海中に設置する。なお、帯状可撓シート材13U,13L,13Mは、水中に設置した後に、本体3に潜水夫が取り付けを行っても良い。
コンクリート構造物100は、帯状可撓シート材13U,13L,13Mが陸1側となる向きで、複数を横に並べる。これにより、図7(a)に示すように、目地11を挟んで、上下層の帯状可撓シート材13U,13Lと、中層の帯状可撓シート材13Mとが対向配置される。
【0045】
次いで、図7(b)に示すように、下層保持テープ27Lを切断して、下層の帯状可撓シート材13Lで隣接するコンクリート構造物100との間の目地11を覆う。
図7(c)に示すように、中層保持テープ27Mを切断して、中層の帯状可撓シート材13Mを、下層の帯状可撓シート材13Lの表面に重ねる。
図7(d)に示すように、上層保持テープ27Uを切断して、上層の帯状可撓シート材13Uを中層の帯状可撓シート材13Mの表面に重ねる。
【0046】
その後、図7(e)に示すように、紐材23に、フック部材25を順次係止して、上層の帯状可撓シート材13Uと中層の帯状可撓シート材13Mを保持する。なお、3層となり目地11を覆う帯状可撓シート材13U,13L,13Mは、コンクリート構造物100の底板5の後端よりも延長形成され、この後端よりも延出して地盤面を覆い、すなわち目地11部分から連続して塞ぎ、地面側を覆う。また、この帯状シート材13U,13L,13Mの延長部分は、コンクリート構造物100を海中に設置する以前に、各保持テープにて筒状に丸めて保持されるとともに、延出した下端側を上方に折り返して底板上面に保持される。この保持は、下端側を底板5のフック15などに掛け、或いは、上記同様の保持テープを用いても良い。これによりコンクリート構造物100の設置時に、帯状シート材13U,13L,13Mの延長部分がばたつくことがなく、コンクリート構造物自体で地面(設置面)との間に挟んでしまうことがない。そして、地面への設置後に上方に折り返された下端部分を延長させて目地11から地面へ覆うように配置する。
最後に、図8に示すように、土砂31を埋立、護岸構造体200の構築が完了する。
【0047】
このように、この施工方法では、水中で潜水夫が隣接コンクリート構造物100の帯状可撓シート材13U,13L,13Mを接続する際、下層保持テープ27L、中層保持テープ27M、上層保持テープ27Uが順次切断されることで、筒状に丸められた帯状可撓シート材13U,13L,13Mが自己の弾性力により面状に展開され、下層、中層、上層の順で各帯状可撓シート材13U,13L,13Mが3層の重ね状態となる。
【0048】
したがって、上記コンクリート構造物の施工方法によれば、下層保持テープ27L、中層保持テープ27M、上層保持テープ27Uを順次切断するだけで、帯状可撓シート材13U,13L,13Mを3層の重ね状態にでき、施工の手間を大幅に削減しながら、高い防砂性能で目地を塞ぐことができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、固定手段を、中層の帯状可撓シート材13Mに紐材23を設け、上層の帯状可撓シート材13Uにフック部材25を設ける構成としたが、少なくともいずれか一方に紐材23を設ける構成とすればよく、他方にフック部材25として互いを係止し連結することとすればよい。また、双方の帯状可撓シート材13M,13Uに紐材23を設けて、両紐材23同士を、フック部材25で連結係止することとしてもよい。このような構成とすれば、フック部材25の取付位置が、両紐材23の長手方向の所望の位置となり、取付位置の自由度が増すこととなり、また、取付作業時において、予め決められた正確な位置にフック部材25を配置することなく、おおよその位置で作業を行うことができ、条件の悪い水中作業を容易なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るコンクリート構造物が使用された護岸構造体の斜視図である。
【図2】図1に示したコンクリート構造物の斜視図である。
【図3】図2に示したコンクリート構造物の下部正面図である。
【図4】図3に示した環材及びフック部材を(a)、その側面視を(b)、筒状に巻かれて保持された各帯状可撓シート材を(c)で表した要部説明図である。
【図5】3層に重ねられた帯状可撓シート材にて目地が塞がれた連結部の断面図である。
【図6】紐材とフック部材により保持された上層、中層の帯状可撓シート材の斜視図である。
【図7】帯状可撓シート材による目地塞ぎ作業の手順を(a)〜(e)で表した説明図である。
【図8】一部分が土砂にて埋め立てられた護岸構造体の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1…陸
3L…他方の端部
3R…一方の端部
11…目地
13…帯状可撓シート材
13L…下層の帯状可撓シート材
13M…中層の帯状可撓シート材
13U…上層の帯状可撓シート材
13a…基端
13b…先端
21…環材
23…紐材
25…フック部材
27L…下層保持テープ
27M…中層保持テープ
27U…上層保持テープ
100…コンクリート構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数が横に並べられ連結されるコンクリート構造物であって、
隣接するコンクリート構造物との目地に沿って一方の端部に基端が固定された下層及び上層の帯状可撓シート材と、
隣接するコンクリート構造物との目地に沿って他方の端部に基端が固定され先端が前記下層及び上層の帯状可撓シート材の間に挟入される中層の帯状可撓シート材と、
前記中層の帯状可撓シート材と前記上層の帯状可撓シート材を固定する固定手段と、
を具備したことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート構造物であって、
前記中層の帯状可撓シート材の基端の長手方向と、前記上層の帯状可撓シート材の上面の長手方向には、一方に紐材が保持され、他方に該紐材が係止するフック部材が複数固定されており、
前記紐材と前記フック部材とで前記固定手段を構成することを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項3】
請求項1記載のコンクリート構造物であって、
前記中層の帯状可撓シート材の基端の長手方向と、前記上層の帯状可撓シート材の上面の長手方向には、それぞれ紐材が保持され、
該紐材を係止する複数のフック部材で前記中層の帯状可撓シート材と前記上層の帯状可撓シート材を固定され、
前記各紐材と前記フック部材とで前記固定手段を構成することを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項4】
請求項2又は3記載のコンクリート構造物であって、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記上層の帯状可撓シート材を基端に保持する複数の上層保持テープと、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記下層の帯状可撓シート材を前記上層の帯状可撓シート材に保持する複数の下層保持テープと、
先端を基端に向かって筒状に巻いた前記中層の帯状可撓シート材を基端に保持する中層保持テープと、
を具備することを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項5】
複数のコンクリート構造物を横に並べ、その目地を帯状可撓シート材にて覆うコンクリート構造物の連結構造であって、
前記目地を挟み一方のコンクリート構造物との目地に沿う端部には下層及び上層の可撓シート材が基端を固定して設けられ、他方のコンクリート構造物との目地に沿う端部には中層の帯状可撓シート材が基端を固定して設けられ、
前記下層及び上層の帯状可撓シート材の間に、前記中層の帯状可撓シート材の先端が挟入されて前記目地が3層の前記帯状可撓シート材にて覆われることを特徴とするコンクリート構造物の連結構造。
【請求項6】
請求項5記載のコンクリート構造物の連結構造であって、
前記3層の帯状可撓シート材が、前記目地を覆うとともに、前記コンクリート構造物の後端よりも延出するよう延長形成され、前記コンクリート構造物を複数横に並べた状態で、前記帯状可撓シート材の延長部分が設置地盤面を覆うことを特徴とするコンクリート構造物の連結構造。
【請求項7】
請求項4記載のコンクリート構造物を用いた施工方法であって、
水中に、帯状可撓シート材が埋立側となる向きで複数の前記コンクリート構造物を横に並べ、
前記下層保持テープを切断して下層の帯状可撓シート材で隣接するコンクリート構造物との間の目地を覆い、
前記中層保持テープを切断して前記中層の帯状可撓シート材を該下層の帯状可撓シート材の表面に重ね、
前記上層保持テープを切断して前記上層の帯状可撓シート材を該中層の帯状可撓シート材の表面に重ねた後、
前記紐材に前記フック部材を順次係止して前記上層の帯状可撓シート材と前記中層の帯状可撓シート材を保持することを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65472(P2010−65472A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233583(P2008−233583)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】