説明

コンクリート表面遅延剤

本発明の表面遅延剤組成物は、植物油またはその誘導体、動物油またはその誘導体、或いはこれらの混合物に懸濁された少なくとも1つの表面遅延剤活性物を含んでなる。この組成物の使用を含む方法も記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリ−ト材料の表面を遅延させるための組成物及び方法、特に植物油または動物油を有する表面遅延剤(retarder)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
「表面遅延剤」はコンクリ−ト組成物の表面を処理するために使用される組成物である。骨材を含む新鮮なコンクリ−トを注ぎ、平らにし、次いでその表面に表面遅延剤を約200g/mの割合で噴霧する。数時間後、処理した表面を高圧下のジェット水流で洗い落として未硬化のセメントを除去し且つ骨材を表面に露呈させる。
【0003】
現在まで表面遅延剤は水または溶剤に基づくものであった。言い換えれば遅延剤の「活性物」(例えばスークローズ、有機酸またはその塩、など)を水に溶解させるか、或いは溶剤に懸濁させている。
【0004】
しかしながら水基材の及び溶剤基材の表面遅延剤は、利点と欠点をそれぞれ有する。例えば石油蒸留物に由来する溶剤基材のものは、典型的には雨や日光の影響にさほど敏感でないが、環境の観点から好ましくない。水基材の表面遅延剤は、環境には優しいが、高熱または日光にさらした時蒸発に敏感であるから性能に関して影響を受ける。
【0005】
従ってこれらのそれぞれの欠点を考慮して新規な表面遅延剤が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来法の欠点を克服することに関して、本発明は植物油またはその誘導体、動物油またはその誘導体、或いはそのような油または誘導体の混合物内に分散された少なくとも1つのセメント遅延活性成分を含んでなる表面遅延剤組成物を提供する。
【0007】
かくして本発明の例示しうる方法は、表面遅延剤組成物を水和しうるセメント質 (cementitious)材料表面(例えばコンクリ−ト)に塗布し、そしてセメント質材料が硬化し始めた後に処理した表面部分を除去し、これによって除去された表面部分の下の「浸食された」表面部分を顕在化させることを含んでなる。後に「活性物(active)」としてより簡単に言及される通常の硬化遅延剤成分または成分は、個々にまたは他の活性物(及び随意の成分、例えば顔料、充填剤など)と組み合わせて、本発明の組成物及び方法に成功裏に使用できる。
【0008】
本発明の硬化遅延剤組成物の一つの相対的な利点は、それがぬれた(wet)膜のコ−ティングを与え、そして順次これが、遅延剤活性物に水和しうるセメント質表面へ浸透する好ましい機会を与えることである。このぬれたコンクリートへ浸透する能力が維持されると、表面遅延剤が処理された表面の浸食を可能にする効率が非常に保持される。逆にコ−ティングが蒸発する或いはさもなければ遅延剤活性物を分散させえない(この結果それはもはや活性物でなくなる)場合、浸食の可能性はひどく低下し或いは失われる。
【0009】
本発明の利点は、例えば耐熱性試験で特に明らかである。高い熱状態において水の比較的速い蒸発速度のために、溶剤基材の表面遅延剤は水基材のそれより良好に機能しうるけれど、本発明の植物油基材及び動物油基材の遅延剤は溶剤基材の遅延剤より良好に働き、一方で同時に天然成分を使用するという事実から環境に優しい製品を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は以下更に詳細に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で使用するような、「セメント」及び「セメント質(cementitious)組成物」(これはセメント組成物と同義)は、水和しうるセメント結合材を含んでなるペ−スト、モルタル、及びコンクリ−ト組成物をいうものと理解される。ここに「ペ−スト」、「モルタル」、及び「コンクリ−ト」とは、技術用語である。「ペ−スト」は水和しうるセメント結合剤(普通は、限定するものではないが、ポ−トランドセメント、煉瓦用セメント、またはモルタルセメント、そしてこの結合材は石灰石、水和した石灰、フライアッシュ、粒状の溶鉱炉スラグ、ポゾラン、及びシリカヒュ−ム、またはセメントに通常含まれる他の材料を含んでいてよい)及び水からなる混合物であり、「モルタル」は細かい骨材(例えば砂)を更に含むペ−ストであり、そして「コンクリ−ト」は粗い骨材(例えば粉砕した砂利、石)を更に含むモルタルである。本発明で試験されるセメント質組成物は、必要量のある材料、例えば水和しうるセメント、水、及び細かい及び/または粗い骨材を、特定のセメント組成物を形成せしめるために適用しうるように混合して作られる。
【0012】
本明細書に記述されるまたは特許請求される成分のすべてのパ−セントは、断らない限り組成物の全重量に関しての値である。
【0013】
本発明の例示される表面遅延剤組成物は、植物油またはその誘導体、動物油またはその誘導体、或いは該油のまたはその誘導体の混合物に分散された少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分(これは簡単には「活性物」または「遅延剤活性物」として言及されることがある)を含んでなる。好ましくは該植物油、該動物油、及び/又はこれらの誘導体は、組成物の全重量の1%−98%、より好ましくは組成物の全重量の25%−92%、最も好ましくは組成物の全重量の50%−90%である。
【0014】
通常の遅延剤活性物は本発明で使用するのに適当であり、またこれらはユーザーに応じて単独でまたは組み合わせて使用しうる。例示できる硬化を遅延させる活性物は、組成物の全重量の1−20%の量で使用できる。例示できる固化を遅延させる活性物はカルボン酸(例えばリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ヘプタグルコン酸)及びその塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム塩)を含み、或いはそれは糖、スクロ−ス、ロフェロ−ス、デキストロ−ス、マルト−ス、ラクト−ス、キシロ−ス、フルクト−ス、マンノ−ス、及びグルコ−スであってよい。
【0015】
本明細書で使用される「植物油」とは、植物及び樹液木の、種子、果実、または木の実(例えばパラゴムの木の樹液、メ−プル、リグノスルホネ−ト、松の木の樹液)から抽出される産生物(液体、ペースト、または固体形のいずれか)を意味し、またそれに関するものである。植物油は一般に混合グリセリドの混合物であると考えられる[参照、例えばN.ア−ビング(Irving)、リチャ−ド(Richard)J.ルイス(Lewis),Sr.編、ホ−リ−(Hawley)の簡略化学辞典、第11版、フォン・ノストランド・レインホ−ルド社(Von Nostrand Reinhold Co.,New York,1987年)、1219ページ]。植物油は、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、落花生油、ブドウの種子油、トウモロコシ油(例えばコーンの胚芽油を含む)、キヤノラ油、ココナッツ脂、アマニ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、ア−モンド油、アボカド油、キリ油、ココア油、サフラワ−油、麻実油、クルミ油、ケシ油、オイチシカ油(例えばブラジルのオイチシカの木(Licania rigida)の種子から圧搾で得られる)、パ−ムナッツ油、エノ油、ペカン油、桐油、及び松根タール油を含むが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の好適な硬化遅延剤組成物は、ナタネ油に分散された少なくとも1つの活性物、例えばクエン酸またはクエン酸塩、或いは糖例えばスクロ−スを含んでなる。例えばこのナタネ油は組成物の全重量の50%またはそれ以上であってよい。
【0017】
更なる具体例は、遅延剤活性物を分散させるために植物油誘導体も使用できる。そのような誘導体はC−C30脂肪酸のモノ及びジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコ−ル、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミド、及びト−ル油誘導体からなる群から選択しうる。
【0018】
本発明の目的に有用と考えられる可能性のある有能な植物油及び動物油誘導体の一覧表はかなり大きい。しかしながら、ニ−ルセン(Nielsen)らの世界特許出願WO第85/05066号(国際公開番号)、国際特許明細書番号PCT/CK85/00043の、16ページから始まる部分に有用な一覧表が示されている。この誘導体は、酢酸ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸オクチル、酢酸イソオクチル、酢酸セチル、酢酸ドデシル、酢酸トリデシル;ラク酸ブチル、ラク酸イソブチル、イソラク酸アミル、ラク酸ヘキシル、ラク酸ヘプチル、ラク酸イソヘプチル、ラク酸オクチル、ラク酸イソオクチル、ラク酸2−エチルヘキシル、ラク酸ノニル、ラク酸イソノニル、ラク酸セチル、ラク酸イソセチル;ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸イソブチル、ヘキサン酸アミル、ヘキサン酸ヘキシル、ヘキサン酸ヘプチル、ヘキサン酸イソヘプチル、ヘキサン酸オクチル、ヘキサン酸2−エチルヘキシル、ヘキサン酸ノニル、ヘキサン酸イソノニル、ヘキサン酸セチル、ヘキサン酸イソセチル;オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、オクタン酸プロピル、オクタン酸イソプロピル、オクタン酸ブチル、オクタン酸イソブチル、オクタン酸アミル、オクタン酸ヘキシル、オクタン酸ヘプチル、オクタン酸イソヘプチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸イソオクチル、オクタン酸2−エチルヘキシル、オクタン酸ノニル、オクタン酸イソノニル、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル;2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、2−エチルヘキサン酸イソブチル、2−エチルヘキサン酸イソアミル、2−エチルヘキサン酸ヘキシル、2−エチルヘキサン酸ヘプチル、2−エチルヘキサン酸イソヘプチル、2−エチルヘキサン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸イソオクチル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸ノニル、2−エチルヘキサン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル;デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸イソプロピル、デカン酸ブチル、デカン酸イソブチル、デカン酸イソアミル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチル、デカン酸イソヘプチル、デカン酸オクチル、デカン酸イソオクチル、デカン酸2−エチルヘキシル、デカン酸ノニル、デカン酸イソノニル、デカン酸セチル、デカン酸イソセチル;ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸イソアミル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ヘプチル、ラウリン酸イソヘプチル、ラウリン酸オクチル、ラウリン酸イソオクチル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸ノニル、ラウリン酸イソノニル、ラウリン酸セチル、ラウリン酸イソセチル;オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸イソアミル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸イソヘプチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸イソオクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸ノニル、オレイン酸イソノニル、オレイン酸セチル、オレイン酸イソセチル;コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、コハク酸ジイソアミル、コハク酸ジヘキシル、コハク酸ジヘプチル、コハク酸ジイソヘプチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソオクチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、コハク酸ジノニル、コハク酸ジイソノニル、コハク酸ジセチル、コハク酸ジイソセチル;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソアミル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジイソヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソブチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸アミル、ミリスチン酸ヘキシル、ミリスチン酸ヘプチル、ミリスチン酸イソヘプチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸ノニル、ミリスチン酸イソノニル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸イソセチル;パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソブチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸アミル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘプチル、パルミチン酸イソヘプチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸イソノニル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソセチル;ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸イソヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ノニル、ステアリン酸イソノニル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸イソセチルを含む。
【0019】
本発明に有用な植物油は精油であってもよい。ここに「精油」とは、元の花や果実の特徴的な芳香や風味(即ち本質的性質)を含む油を意味する。精油は普通花または葉の水蒸気蒸留或いは外皮または他の部分(例えば幹、花、小枝など)の冷圧搾によって得られる。精油の例は、オレンジ、グレ−プフル−ツ、レモン、柑橘類、及び松の木を含む。
【0020】
本発明の他の例示できる表面遅延剤組成物においては、少なくとも1つのセメントのコ硬化を遅延させる活性物を、植物油またはその誘導体の代わりにまたはそれと組み合わせて使用できる動物油またはその誘導体に分散させることができる。ここに「動物油」とは、動物の構成部、例えば骨または他の動物体成分から得られる産生物(油、ワックス、または固体形のいずれか)を意味する。その例は、ラ−ド油、骨油、ニシン油、タラ肝油、牛脚油、イワシ油、ラノリン油、魚油、羊毛油、タロ−油、及び蜂蜜油を含む。動物油の誘導体は、C−C30脂肪酸のモノ及びジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコ−ル、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミド、及びト−ル油誘導体を含む。(参照、植物油誘導体の議論で上述した一覧表)。
【0021】
更に動物油及び植物油の混合物は種々の用途に使用できることも意図される。例えば松の木油は羊毛油の臭いを被覆しまたは隠蔽するのに使用できる。例示できる表面遅延剤組成物は、ヒマワリ油メチルエステル(40%)、羊毛油(25%)、スクロース(9%)、酸化鉄 (2%)、けいそう土(22%)、及び松の木油(2%)を含んでなる。但しこれらのすべてのパ−セントは組成物の全重量に基づくものである。
【0022】
更に例示しうる表面遅延剤組成物においては、遅延剤活性物を2つまたはそれ以上の異なる植物油に分散させることができる。即ち例えば、活性物を植物油並びに植物油誘導体を含んでなる連続相担体内に分散させてよい。植物油(単複)及び/または動物油(単複)は、好ましくは連続相担体として機能し、その中に1つまたはそれ以上の遅延剤活性物(例えば糖、酸、及び/またはその塩)が非連続相として全体に懸濁されている。
【0023】
本発明者は本発明組成物に溶媒を使用しないことを好むが、それは植物及び/または動物油の他に溶剤または水を随時使用してもよい。即ち随時、石油基剤の溶剤及び/または水が、本発明の組成物に混入できる。但し、そのようなことは先に議論した性能または環境的理由のために好適ではない。
【0024】
更に例示しうる本発明の表面遅延剤組成物は、随時充填剤、例えば炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、砂、雲母、タルク、粘土(例えばカオリン)、硫酸バリウム、シリコアルミン酸ナトリウム、アルミナ、炭酸バリウム、ドロマイト(カルシウム及びマグネシウムの炭酸塩、CaMg(CO),炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、けいそう土、またはこれらのいずれかの混合物を含むことができる。全充填剤含量は、例えば表面遅延剤組成物の全重量に基づいて0−50%であってよい。
【0025】
更に例示しうる本発明の表面遅延剤組成物は、1つまたはそれ以上の顔料、着色剤、または染料、例えば二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化亜鉛、カ−ボンブラック、または他の顔料または着色剤を、組成物の全重量の0−30%の量で含んでいてもよい。本組成物の使用者が、例えば噴霧適用中に、特に意図するセメント質表面が表面遅延剤組成物で処理されたことを肉眼で確認できるように、少なくとも1つの顔料、着色剤、または染料を使用することは望ましい。
【0026】
他の例示しうる本発明の表面遅延剤組成物は更に他の成分、例えばソルビト−ル、ほう酸(またはその塩)、アルキルホスフェ−ト、タンパク質、及びカゼインを含んでいてよい。これらの更なる成分は、表面遅延剤組成物の種々の性質、例えばレオロジ−、粘度、及び/または表面張力を調節するために使用できる。従って、更なる具体例は1つまたはそれ以上のレオロジ−改変剤及び/または粘度改変剤を含む。
【0027】
本発明の例示しうる方法は、表面遅延剤組成物のコ−ティングを、水和しうるセメント質材料の表面、例えばコンクリ−トの表面に適用することを含んでなる。組成物はローラーで塗布できるが、好ましくは噴霧で、処理すべき表面に直接塗布される。続いて処理した表面部分を、加圧洗浄機またはホースを用いて洗い落とし、処理した、除去した表面部分の下の浸食された部分を露呈させる。
【0028】
以下の実施例は、例示の目的だけで示すものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
[実施例I]
【0029】
3つの表面遅延剤組成物を比較試験のために処方した。1つは溶剤基材、第2は水基材、そして第3は植物油基材のものであった。3つの処方物の、100重量部当たりの部に基づく成分量を表1に要約する。
【0030】
【表1】

次いでこれらの3つの処方物の各々を、しみだし水をコンクリートから蒸発させた後(普通コンクリ−トを混合し且つ注入した後約20分かかる)噴霧コーティングによりコンクリ−ト表面に塗布した。コンクリ−トは約350kg/mであり、タイプ1のポルトランドセメントを用いて約0.55の水/セメント比であった。当量の顔料の含有(inclusion)は、コンクリ−ト表面における等しいコ−ティング厚さ(約0.2mm)の視覚的推測を可能にした。
【0031】
ぬれた噴霧コ−ティングを、35℃で1日間コンクリ−ト表面上に残させることによって耐熱性を試験した。次いでこの表面を、水で噴霧して処理した部分を除去した。水基材の表面遅延剤は表面を貧弱に浸食し、一方溶剤基材の処方物は良好であると判定されたが、植物油基材の表面遅延剤はコンクリ−ト表面の浸食が深く非常に良好であった。本発明者によれば、植物油基材の表面遅延剤は遅延剤活性物がコンクリ−ト中へ有効に浸透するぬれたフィルムコ−ティング担体を提供したと判断した。
【0032】
次に、3つの試料処方物をぬれたコンクリ−ト表面に湿式噴霧コ−ティングし、1時間待ち、次いで処置した表面に水を噴霧することにより、耐雨性を試験した。この試験において、水基材の遅延剤は再び貧弱にしか機能しなかったが、溶剤基材と植物油基材の表面遅延剤処方物は浸食の深さが水基材の処方物に比べてより深かったから「良好」の性能を示した。本発明者は、これがぬれたフィルムコ−ティングが水(または雨)によって容易に洗い落とされないという事実のためであると考える。
【0033】
3つの異なる試料処方物の冷温効率を評価するために第3の試験を行った。3つの処方物を3つの異なるぬれたコンクリ−ト表面に塗布し、次いでこれを24時間5℃の温度に供した。処理した表面を洗い落とした時、水基材の表面遅延剤によって付与される浸食の深さは「中程度」と判断され、植物油基材及び溶剤基材の両方の表面遅延剤は「良好」な浸食深さを可能にした。
【0034】
最後に3つの処方物を3日間の遅延試験に供した。最初、最初の組のすべて3つの処方物をぬれたコンクリ−ト上に噴霧コ−ティングし、20℃で3日間放置し、一方で第2の組を同様に塗布し、5℃で3日間放置した。両方の場合、洗い落とし後水基材の表面遅延剤は「貧弱な」浸食深さを与え、溶剤基材の表面遅延剤は「良好な」浸食深さを与え、植物油基材の表面遅延剤は「非常に良好な」浸食深さを与えることが観察された。再びこれは、植物油基材の表面遅延剤が表面活性物を硬化コンクリ−ト表面中へ浸透させる最も好ましいフィルムコ−ティングを提供するという本発明者の推測を証明するように見えた。
【0035】
これらの試験結果を下の表2に示す。
【0036】
【表2】

[実施例II]
【0037】
コンクリ−トによって失われる水の量を、3つの処方物を3つの異なるコンクリ−ト表面試料にコ−ティングして試験した。78時間における平方メートル当たりの水消失量に関して、ASTM C309にしたがって硬化効果を試験した。水基材表面遅延剤処方物の場合、水消失量は2500gであり、植物油基材及び溶剤基材処方物の両方に対する水消失量は1000gであった。これらの結果を下の表3に示す。この表は、生分解性(ISO9408による)及び燃焼性(試料を小カップへ注入する時)に対する評価も示す。
【0038】
【表3】

従って、これらの試験は、植物油基材表面遅延剤処方物が環境的に健全であることを明らかにする。
[実施例III]
【0039】
種々の表面遅延剤活性物、糖及び酸/塩種の両方を用いた異なる処方物を、種々の植物油及び植物油誘導体の組合わせ物を用いて、溶剤基材及び水基材処方物と比べて試験した。遅延剤活性物は組み合わせても、単独でも使用した。動物油も試験した。多くの場合、結果は上述したものと同様であった。
【0040】
上記実施例及び具体例は例示の目的だけで示してあり、本発明の範囲を限定する意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油またはその誘導体、動物油またはその誘導体、或いは該油のまたはその誘導体の混合物に分散された少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分を含んでなる、表面遅延剤組成物。
【請求項2】
該植物油、該動物油、或いはこれらの混合物または誘導体が組成物の全重量の、少なくとも1%で98%を越えない、請求項1の組成物。
【請求項3】
該植物油、該動物油、或いはこれらの混合物が組成物の全重量の、少なくとも25%で92%を越えない、請求項2の組成物。
【請求項4】
該植物油、該動物油、或いはこれらの混合物が組成物の全重量の、少なくとも50%で90%を越えない、請求項3の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分を植物油に分散させる、請求項4の組成物。
【請求項6】
該植物油が、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、落花生油、ブドウ種油、トウモロコシ油、キヤノラ油、ココナッツ油、アマニ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、ア−モンド油、アボカド油、キリ油、ココア油、サフラワ−油、麻実油、クルミ油、ケシ油、オイチシカ油、パ−ムナッツ油、エノ油、ペカン油、桐油、及び松根タール油からなる群から選択される、請求項5の組成物。
【請求項7】
該植物油がナタネ油を全重量の少なくとも50%で含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項8】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分を植物油またはその誘導体に分散させる、請求項1の組成物。
【請求項9】
該植物油誘導体が、C−C30脂肪酸のモノ及びジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコ−ル、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミド、及びト−ル油誘導体からなる群から選択される1つまたはそれ以上の物質を含んでなる、請求項8の組成物。
【請求項10】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分を植物油またはその誘導体に分散させ、そして該植物油またはその誘導体が精油である、請求項1の組成物。
【請求項11】
該精油がオレンジ、グレ−プフル−ツ、レモン、カンキツ類、及び松、のエッセンスから選択される、請求項1の組成物。
【請求項12】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分を、ラ−ド油、骨油、ニシン油、タラ肝油、牛脚油、イワシ油、ラノリン油、魚油、羊毛油、及びタロ−油からなる群から選択される動物油に分散させる、請求項1の組成物。
【請求項13】
該動物油が、C−C30脂肪酸のモノ及びジグリセリド、C−C30脂肪酸のエステル、C−C30脂肪酸のエトキシル化化合物、C−C30脂肪族アルコ−ル、C−C30脂肪族アミン、C−C30脂肪族アミド、及びト−ル油誘導体からなる群から選択される物質を含んでなる、請求項12の組成物。
【請求項14】
該組成物が少なくとも2つの異なる植物油、または植物油及び植物油誘導体を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項15】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分が糖、或いは酸またはその塩である、請求項1の組成物。
【請求項16】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分が組成物の全重量の、少なくとも1%で20%を越えない量で存在する、請求項15の組成物。
【請求項17】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分がカルボン酸またはその塩、リンゴ酸またはその塩、酒石酸またはその塩、クエン酸またはその塩、グルコン酸またはその塩、ヘプタグルコン酸またはその塩からなる群から選択される、請求項16の組成物。
【請求項18】
該少なくとも1つのセメントの硬化を遅延させる活性成分が糖である、請求項16の組成物。
【請求項19】
糖がスクロ−ス、ロフェロ−ス、デキストロ−ス、マルト−ス、ラクト−ス、キシロ−ス、フルクト−ス、マンノ−ス、及びグルコ−スからなる群から選択される、請求項18の組成物。
【請求項20】
水または石油系溶剤を更に含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項21】
顔料、着色剤、染料、充填剤、レオロジ−改変剤、粘度改変剤、またはこれらの混合物を更に含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項22】
組成物1のコ−ティングを、水和しうるセメント質材料の表面に塗布することを含んでなる、方法。
【請求項23】
該コ−ティングした材料の表面部分を洗い落とし、これによって浸食された部分を顕在化させることを更に含んでなる、請求項22の方法。

【公表番号】特表2007−509025(P2007−509025A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535546(P2006−535546)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/032739
【国際公開番号】WO2005/042681
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】