説明

コンクリート製品の養生方法

【課題】簡単な設備で養生できるとともに、表面の仕上り品質を向上させるようにした。
【解決手段】セグメント1の養生方法は、下方に向けて水を流す流出口13を有する流水設備10の水供給管12の下方に、脱型後のセグメント1を積載したトラック2を配置させ、流出口13より水を出し、セグメント1の表面に水を連続して流すようにした。コンクリート内部から表面に溶出するカルシウムを洗い流すことができるため、カルシウムがコンクリート製品の表面に付着し、斑状の跡が残って見映えが悪くなることをなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品の養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメントなどのコンクリート製品では、型枠内にコンクリートを打設してから脱型し、その後に養生を行なっているのが一般的である。そして、脱型したコンクリート製品の養生方法として、ストックヤードなどに運んでそのままの状態で保管する方法、保水シートでコンクリート製品を覆う方法、及び水中養生する方法などが行われている(例えば、特許文献1参照)。水中養生は、プールなどの設備を設け、脱型直後にコンクリート製品をプール内に沈め、数日間(例えば3日〜7日)、水につけて養生することで、早期に所定の強度を発現させる養生方法である。
【特許文献1】特開平6−128053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のコンクリート製品の養生方法では、以下のような問題があった。
コンクリート製品が戸外のストックヤードに置かれる場合には、雨がコンクリート製品にかかると、コンクリート表面に接する水に反応してコンクリート内のカルシウムが溶け出し、その溶出したカルシウムの通り道にカルシウムの跡が残り、その部分が図3に示すように斑模様の汚れとなって見映えが悪くなり、コンクリート製品としての品質が落ちるとともに、その商品価値が低下するといった問題があった。
また、従来の水中養生では、プール内の水が滞留した状態であり、プール内に入れられたコンクリート製品から溶出するカルシウムがプールの水によって洗い流されず、コンクリート表面にそのカルシウムが付着した状態となり、斑模様の跡が残るといった問題があった。
そして、上述したようなカルシウムによるコンクリート表面の斑模様の汚れは、出荷前などに紙やすりなどで擦り落としたり、補修材を塗布するなどの作業が行なわれていた。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な設備で養生できるとともに、表面の仕上り品質を向上させるようにしたコンクリート製品の養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート製品の養生方法では、型枠を用いてコンクリートを打設することによって製造されるコンクリート製品の養生方法であって、脱型後のコンクリート製品の表面に水を流すようにしたことを特徴としている。
本発明では、脱型後のコンクリート製品の上方などから水を出し、そのコンクリート製品の表面に水を流すことで、コンクリート内部から表面に溶出するカルシウムを洗い流すことができる。そのため、溶出したカルシウムがコンクリート製品の表面に付着して斑状の跡が残って見映えが悪くなることをなくすことができる。また、コンクリート製品の表面に水を流すのみの簡易な養生方法でよいことから、例えば水供給管と流出口を備えた簡単な設備とすることができる。
【0006】
また、本発明に係るコンクリート構造物の養生方法では、流出口を備え、所定の流水領域を有する流水手段を設け、流水領域に脱型後のコンクリート製品を配置させ、そのコンクリート製品の表面に向けて流出口から出る水を流すようにすることが好ましい。
本発明では、例えばトラックなどの移動車両に脱型したコンクリート製品を積載し、流水手段の流水領域に配置するように移動させ、流出口よりコンクリート製品の表面に水を流し、所定時間が経過した後に移動車両を流水領域から例えばストックヤードへ移動させることができる。このように、コンクリート製品を移動車両に積載した状態のまま、そのコンクリート製品の表面に水を流すことができることから、養生作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリート構造物の養生方法によれば、脱型後のコンクリート製品の表面に水を流すことで、コンクリート内部から表面に溶出するカルシウムを洗い流すことができ、溶出したカルシウムがコンクリート製品の表面に付着して斑状の跡が残ることがなくなって見映えが良くなり、コンクリート表面の仕上り品質を向上させ、コンクリート製品の価値を高めることができる。そのため、斑状の汚れを取り除くための補修作業をなくすことができる。
また、コンクリート製品の表面に水を流すのみの簡単な養生方法でよいことから、例えば水供給管と流出口を備えた簡単な設備とすることができる。したがって、従来のプール設備と比べて設備コストを大幅に低減することができるうえ、広い敷地面積が不要であるため、敷地面積の狭い場所であっても養生を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るコンクリート製品の養生方法の実施の形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるコンクリート製品の養生方法を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその正面図、図2は本実施例による養生後のセグメント表面の状態を示した写真である。
【0009】
図1に示すように、本実施の形態によるコンクリート製品の養生方法は、型枠を用いてコンクリートを打設することによって製造されるコンクリート製品を対象とし、脱型した後のコンクリート製品の表面に水を流すようにした方法である。そして、本実施の形態では、水を流すための手段として、流水装置10(流水手段)を用いている。
なお、本実施の形態によるコンクリート製品は、シールドトンネルなどに用いられるコンクリートセグメント(以下、単に「セグメント1」と称する)を使用する。
【0010】
先ず、流水装置10について図1を用いて説明しておく。なお、本実施の形態では、脱型後のセグメント1がトラック2などの移動車両の荷台に積載され、例えばストックヤードなどに運搬されるものとする。
図1(a)及び(b)に示すように、流水装置10は、門型形状の架台11と、架台11の上部に設けられた水供給管12と、水供給管12に備えられた流出口13とからなる。そして、水供給管12は、架台11の内方(流水領域)にトラック2の荷台を配置させたときに、荷台上のセグメント1のほぼ上方全域にわたって複数の流出口13、13、…が配置されるように適宜設置されている。すなわち、複数の流出口13、13、…から流出される水は、所定の流水領域に停止されたトラック2上のセグメント1の表面を流れるようになっている。そして、この流水は、養生時間中、絶え間なく連続して流れるようにすることが好ましい。なお、このとき使用される水は、例えば地下水、或いは水道水とされる。
【0011】
次に、流水装置10を使用したセグメント1の養生方法について、さらに具体的に説明する。
図1に示すように、セグメント1は、型枠を用いて打設され、例えば半日程度の時間をかけて蒸気養生を行なった後に脱型される。脱型したセグメント1をトラック2の荷台に載せて移動させ、そのセグメント1が流水装置10の複数の流出口13、13、…の下方に位置するように流水領域にトラック2を停止させる。そして、トラック2に載せた状態で、各流出口13から水を出してコンクリート製品1のほぼ全表面にわたって一様に水を流し、所定時間が経過した後にトラック2を流水装置10の下方から例えばストックヤードへ移動させるようにする。
【0012】
このように本養生方法では、セグメント1の表面に水を流すと、セグメント1のコンクリートが水と反応してコンクリート内部から表面にカルシウムを溶出させるとともに、そのカルシウムを流水で洗い流すことができる。これにより、カルシウムがセグメント1の表面に付着して斑状の跡が残ることをなくすことができる。
また、流水装置10を使用することで、セグメント1をトラック2に積載した状態のままそのセグメント1の表面に水を流すことができることから、養生作業の効率化を図ることができる。
【0013】
本実施の形態によるコンクリート製品の養生方法では、脱型後のセグメント1の表面に水を流すことで、コンクリート内部から表面に溶出するカルシウムを洗い流すことができ、溶出したカルシウムがセグメント1の表面に付着して斑状の跡が残ることがなくなって見映えが良くなり、コンクリート表面の仕上り品質を向上させ、セグメント1の価値を高めることができる。そのため、斑状の跡を取り除くための補修作業をなくすことができる。
また、セグメント1の表面に水を流すのみの簡単な養生方法でよいことから、水供給管12と流出口13を備えた簡単な設備とすることができる。したがって、従来のプール設備と比べて設備コストを大幅に低減することができるうえ、広い敷地面積が不要であるため、敷地面積の狭い場所であっても養生を行なうことができる。
【0014】
このように、本実施の形態によるコンクリート製品の養生方法を裏付けるため、実施例について図1及び図2に基づいて以下説明する。
【実施例】
【0015】
本実施例では、上述したようにトラック2の荷台に脱型後のセグメント1を載せて流水装置10の下方、すなわち流水領域まで移動させ、脱型してから15分〜60分後に流出口13から水を出してセグメント1の表面に水を流し始め、20〜120分程の間、連続して水を流すようにした。
図2は流水装置10を用いて養生した後のセグメント1のコンクリート表面を示す写真である。図2に示すように、前記条件において流水により養生した結果、セグメント表面に跡が残らない仕上りとなることがわかった(図3に示す従来例参照)。なお、図3に示す従来の養生によるセグメントの表面では、写真の上下方向に斑状の跡が残っていることがわかる。
【0016】
さらに、本実施例では、上述したように15〜60分後の脱型後の早い段階で流水による養生を開始し、20〜120分の間、コンクリートから溶出するカルシウムを洗い流すことで、本養生後に雨がセグメントに当ってもカルシウムが溶出しにくい状態となることが確認された。したがって、流水による養生開始のタイミングは、例えば脱型後から60分以内とするのが好適である。
なお、上述した流水による養生時間(20〜120分程度)で、従来行なわれているプールに沈める水中養生と同様の所定のコンクリート強度(1日強度で15N/mm程度)を確保できることがわかった。そのため、水中養生で要する時間(例えば3日〜7日程度)と比べて、短時間で所定のコンクリート強度が得られるという効果を奏する。
【0017】
以上、本発明によるコンクリート製品の養生方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではセグメント1の上方から水を流すようにしているが、これに限定されず、例えば上方に加えて側方或いは下方からセグメント1の表面に向けて水を出すようにしてもかまわない。要はコンクリート製品の表面に対して一様に水を流すことができればよいのである。
また、本実施の形態ではコンクリート製品としてセグメント1を対象としているが、例えばコンクリート床板、護岸用ブロック、ボックスカルバートなど、他のコンクリート製品にも流水による養生方法を適用することができる。
【0018】
また、流水装置10の形状、大きさ、流出口13の数量、配置などの構成については、本実施の形態に限定されず、例えばトラック2の大きさ、セグメントの大きさ、形状などの条件に合わせて適宜設定すればよい。
そして、流水装置10の位置についても本実施の形態では固定させているが、移動可能な流水手段であってもかまわない。例えば車輪などの移動手段を備えた流水装置を使用し、所定箇所に配置させたセグメントの箇所に移動させるようにしてもよい。
さらに、本実施の形態では脱型前に蒸気養生を行なっているが、行なわなくてもかまわない。
さらにまた、本実施の形態では、セグメント1を積載して移動させる車両としてトラック2を用いているが、セグメント1などのコンクリート製品を運搬、移動させる手段はこれに限定されることはなく、例えば脱型箇所から流水設備10まで延在する軌道などを設け、その軌道上を走行する車両などにコンクリート製品を積載させるようにしてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態によるコンクリート製品の養生方法を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。
【図2】本実施例による養生後のセグメント表面の状態を示した写真である。
【図3】従来の養生方法によるセグメント表面の状態を示した写真である。
【符号の説明】
【0020】
1 セグメント(コンクリート製品)
2 トラック
10 流水装置(流水手段)
12 水供給管
13 流出口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠を用いてコンクリートを打設することによって製造されるコンクリート製品の養生方法であって、
脱型後のコンクリート製品の表面に水を流すようにしたことを特徴とするコンクリート製品の養生方法。
【請求項2】
流出口を備え、所定の流水領域を有する流水手段を設け、
前記流水領域に前記脱型後のコンクリート製品を配置させ、そのコンクリート製品の表面に向けて前記流出口から出る水を流すようにしたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製品の養生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−149606(P2008−149606A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341305(P2006−341305)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】