説明

コンクリート離型剤

【課題】コンクリート成型物を型枠から容易に離型させることができるとともに、優れたコンクリート仕上げ面を可能とする離型剤を提供する。
【解決手段】膨潤性層状粘土鉱物を水に分散させてなるコンクリート離型剤で、乾燥すると薄膜の皮膜層を形成し、この皮膜層が容易に層間剥離することで良好な離型性を可能とする。ここで、コンクリート側に剥離した皮膜は、コンクリート硬化においてコンクリートと一体化し、平滑なコンクリート仕上げ面を呈するようになる。さらに、油剤を一切使用しない完全水系であることから、コンクリート表面の気泡や気泡跡が発現しにくく、かつシミ発生のない白色度の高い均一で良好なコンクリート仕上げ面を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート離型剤に関するもので、より詳細にはコンクリート成型物の型枠からの離型性および表面外観に優れたコンクリート離型剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート離型剤としては、鉱物油、動物油、植物油等の油剤を主成分するものが主流で、油性タイプと油剤を界面活性剤を用いて水に分散させたエマルジョンタイプがある。ここで油性タイプの離型剤は、水系エマルジョンタイプに比べ離型性は勝っているものの、コンクリート仕上げ面に気泡が発生しやすく、反対に水系エマルジョンタイプの離型剤は、気泡の問題は改善されるものの離型性が劣ると言われている。しかしながら、どちらもコンリート仕上げ面が油剤によるシミ等で外観的に問題があるとともに、離型性に関しても良好といえるレベルではない。
【0003】
離型性および外観面を改善する方法として、例えば以下のような技術が開示されているが、いずれも満足できるものではなく、加えて油剤や有機物を使用していることから、環境、安全面にも問題がある。
【特許文献1】特開平5−69428
【特許文献2】特開2001−88112
【特許文献3】特開2004−130661
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、良好なコンクリートの離型性と仕上り外観を可能とするとともに、環境、安全面でも優れたコンクリート離型剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来のコンクリート離型剤は、油剤等の表面(界面)張力の低い、すなわち表面(界面)自由エネルギーの低い液剤を塗布することで、コンクリート成型物と型枠との付着力を弱めようとするものである。しかしながら、この考えの範疇でいくら最適化を図ったとしても限界があることが分り、本発明者らは、全く違った発想から課題解決に取り組んだ。
【0006】
その結果、表面(界面)自由エネルギーを低くするのではなく、次のようなメカニズムで離型性および仕上り外観が良好なコンクリート離型剤を開発するに至った。すなわち、水系かつ全く油剤を含まない組成で、乾燥することで薄膜の皮膜層を形成するようなコンクリート離型剤であり、その薄膜皮膜層が容易に層間剥離することで良好な離型性を可能とするものである。
【0007】
ここで、コンクリート側に剥離した皮膜は、コンクリート硬化の際、硬化反応に関わるような組成にすることでコンクリートと一体化し、平滑なコンクリート仕上げ面を呈するようになる。さらに、水系であることからコンクリート表面の気泡や気泡跡が発現しにくい上に、油剤を一切使用していないため、残留によるシミ発生等の懸念もない。したがって、白色度の高い良好なコンクリート仕上げ面を得ることができる。
【0008】
このように、水が乾燥することで皮膜層を形成するとともに、その皮膜層が容易に層間剥離するような特性を顕示し、さらにコンクリートの硬化反応に関わるような成分を鋭意探索、検討した結果、膨潤性層状粘土鉱物が最適であることを見出した。
【0009】
膨潤性層状粘土鉱物としては、ベントナイト、スメクタイト、モンモリナイト、雲母系膨潤性層状粘土鉱物等が挙げられる。中でも、スメクタイトは平滑な仕上げ面を顕現させるのに良好で、特に不純物の少ない合成スメクタイトが好ましい。
【0010】
本発明のコンクリート離型剤は、これらの中の1種類もしくは2種類以上の膨潤性層状粘土鉱物を水に溶かしたもので、濃度としては0.5〜3.5重量%の範囲が、特性面、作業面から望ましい。
【0011】
なお、必要に応じて膨潤性層状粘土鉱物以外の成分を添加することもできる。使用方法としては、本発明品を型枠に塗布し乾燥した後、コンクリートを注入する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート離型剤を用いることで、従来の油剤系の離型剤とは比較にならない程の良好な離型性を得ることができると同時に、コンクリート表面の気泡や気泡跡が発現しにくく、白色度が高く、全くシミのない均一で良好な仕上げ面を実現することが可能となる。
【実施例】
【0013】
50×50×50mmサイズの鋼板製の型枠に、離型剤として2重量%の合成スメクタイトの水溶液を塗布後、自然乾燥させた。この型枠に、普通ポルトランドセメント:砂:水道水=1:3:0.7の割合(重量比)でよく混合したモルタルを流し込み、2日間放置した後の離型性および仕上り外観を評価した結果、以下の通り良好であった。
(離型性) 力を加えずに容易に離型できる。
(仕上り外観)均一的に白く、気泡もほとんどない。
○比較例1
【0014】
離型剤として市販の油性タイプ(株式会社ノックス社製「フォームノックス#100」)を用い、それ以外は実施例と同じ条件でテストを行った結果は以下の通りである。
(離型性) ある程度の力を加えないと離型しない。
(仕上り外観)白色度が低く、色ムラがある。気泡もかなり多い。
○比較例2
【0015】
離型剤として市販の水性エマルジョンタイプ(東邦化学工業社製「パラックス40KA−3」)を用い、それ以外は実施例と同じ条件でテストを行った結果は以下の通りである。
(離型性) かなりの力を加えないと離型しない。
(仕上り外観)白色度が低く、色ムラがある。気泡は少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性層状粘土鉱物を水に分散させてなるコンクリート離型剤。
【請求項2】
上記膨潤性層状粘土鉱物が、ベントナイト、スメクタイト、モンモリナイト、雲母系膨潤性層状粘土鉱物のなかの1種類、もしくは2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート離型剤。
【請求項3】
上記膨潤性層状粘土鉱物が、スメクタイトであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート離型剤。