説明

コンサベータ用隔膜

【課題】新規なコンサベータ用隔膜を提供すること。
【解決手段】このコンサベータ用隔膜は、少なくとも、ガス遮断性を有する合成樹脂製フィルム又はシートの膜と、機械的強度を有する合成繊維製織物の膜とで構成された多重膜構造を形成し、各々の膜は、接着されて一体化されてなく、各々が独立している。このコンサベータ用隔膜の形状は、袋状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンサベータ用隔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油入変圧器では、周囲温度及び負荷の変化に伴って油温、従って油の体積が変化するので、構造的にこれに対応しておく必要がある。このとき、油温変化に伴って外気がタンク(外箱)を出入りする呼吸作用によって油や絶縁物が吸湿したり、高温の油が空気中の酸素によって酸化されてスラッジと呼ぶ沈殿物を生じ、絶縁強度と冷却効果を低下させる。これを防止するため、種々の油劣化防止装置が実用化されている。
【0003】
油と空気の接触部分の温度を下げ、且つ接触面積を小さくするためには、タンク内空間の有効利用を兼ねてコンサベータと呼ばれる油膨張室を本体タンクの上部に設置する方法が採用される。コンサベータ内の油と大気の接触を遮断するため、コンサベータ内に柔軟で耐油性があり、且つ透気度の低いゴム製の隔膜又は袋(以下、単に「隔膜」という。)を取り付け、この隔膜によって油と外気の接触を遮断する隔膜式コンサベータが広く採用されている。
【0004】
なお、本発明を実現する対象は、油入変圧器に限定されない。本発明は、油入変圧器、油入リアクトル、油入コンデンサ、油入ケーブルなど、絶縁油が封入された全ての電気機器が対象となる。従って、本出願書類では、本発明を実現する対象を「油入電気機器」と総称する。
【0005】
本発明者は、隔膜式コンサベータを開示する公開特許文献として、次の2件を承知している。
【特許文献1】特開2006-237531「油入変圧器コンサベータ用複合膜」(公開日:2006年09月07日)
【特許文献2】特開2001-297920「変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体」(公開日:2001年10月26日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、後述する様に、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用複合膜又は絶縁油遮蔽体では、本発明者の希望する性能に関して幾つかの点でこれを満たしていない点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、新規なコンサベータ用隔膜を提供することを目的とする。
【0008】
更に、本発明は、新規な隔膜式コンサベータ及びこれを利用した油入電気機器を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的に鑑みて、本発明に係るコンサベータ用隔膜は、少なくとも、ガス遮断性を有する合成樹脂製フィルム又はシートの膜と、機械的強度を有する合成繊維製織物の膜とで構成された多重膜構造を形成し、各々の膜は、接着されて一体化されてなく、各々が独立している。
【0010】
上記コンサベータ用隔膜では、該コンサベータ用隔膜は袋状の形状であってよい。
【0011】
上記コンサベータ用隔膜では、前記合成樹脂製フィルム又はシートの膜の材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)及びポリビニルアルコール(PVA)から成る群から選択された任意の材質であってよい。
【0012】
上記コンサベータ用隔膜では、前記合成繊維製織物の膜の材質は、ポリエステル(PET)又はポリアミド(PA)であってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規なコンサベータ用隔膜を提供することができる。
【0014】
更に、本発明によれば、新規な隔膜式コンサベータ及びこれを利用した油入電気機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るコンサベータ用隔膜の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0016】
[油入電気機器]
図1は、代表的な油入電気機器1の概略構成を示した図である。油入電気機器1は、機器本体3が、概して密閉された外箱2の内部に設置されている。機器本体3は、導体8により、ブッシング7を介して外部と電気的に接続されている。外箱2の上部には、コンサベータ5が形成されている。コンサベータ5の内部は、隔膜6で仕切られている。
【0017】
図2に示す様に、この隔膜6は典型的には袋状の形状である。そのため、呼吸袋とも呼ばれている。隔膜6は呼吸孔8を有している。図1に示すように、袋状の内部は呼吸孔8を通って吸湿呼吸器接続管(図示せず。)により、大気と連通している。コンサベータ5と袋状隔壁6との間の空間(即ち、袋状隔壁6の外側)、並びに外箱2の内部には電気絶縁油4が封入されている。コンサベータ5では、隔膜6により、絶縁油4と外気との接触が遮断されている。
【0018】
[隔膜の構成]
図2に示す様に、この隔膜6は典型的には袋状の形状と成っている。この隔膜6は、少なくとも、合成樹脂製フィルム又はシートの膜と、合成繊維製織物の膜とを有する多重構造となっている。なお、日本工業規格(JlS Z1707,K7124-1,K7127,K7128-1,K7133等)により、フィルムは250μm未満であり、シートは250μm以上1mm以下とされているが、本出願書類では、説明の便宜上、合成樹脂製フィルム及び合成樹脂製シートの全てを「合成樹脂製フィルム」と略称することとする。
【0019】
袋状隔膜6を形成する、少なくとも合成樹脂製フィルムの膜と合成繊維製織物の膜とを有する多重膜構造の特徴は、合成樹脂製フィルム膜相互間、合成繊維製織物膜相互間、及び合成樹脂製フィルム膜と合成繊維製織物膜の間を接着せずに、多重袋構造式としたことにある。
【0020】
即ち、合成樹脂製フィルムの膜を製袋するために、ヒートシーラ、インパルスシーラ、超音波シーラ等の比較的小規模な設備(道具)を使って、必要な箇所のみを部分的に熱接合している。同様に、合成繊維製織物の膜を製袋するために、比較的小規模設備(道具)の縫製用ミシンを使って、必要な箇所のみを部分的に縫製している。しかし、合成樹脂製フィルム膜相互間、合成繊維製織物膜相互間、及び合成樹脂製フィルム膜と合成繊維製織物膜の間は、必要最小限の箇所(例えば、呼吸孔8に接続する端部等)を除いて、接着されていない。
【0021】
隔膜6の多重膜構造(例えば、図2で破線円で囲んだ箇所)の構成例を、図3を用いて説明する。各構成例は、図で見て上方が大気と接する面であり、下方が絶縁油と接する面である。即ち、隔膜6が袋状の場合、上方が袋内面、下方が袋外面となる。
【0022】
(第1の構成例)
第1の構成例10−1は、合成繊維製織物14の片面に合成樹脂製フィルム12が重ねられた多重膜構造から成る。即ち、第1の構成例10−1は、大気と接する面に合成樹脂製フィルム膜12が配置され、絶縁油と接する面に合成繊維製織物膜14が配置されている。合成樹脂製フィルム膜12と合成繊維製織物膜14とは接着されていない。
【0023】
(第2の構成例)
第2の構成例10−2は、第1の構成例10−1の合成繊維製織物膜14の上に、合成樹脂製フィルム膜16が重ねられた多重膜構造から成る。即ち、第2の構成例10−2は、合成繊維製織物膜14の両面に、合成樹脂製フィルム膜12,16が夫々重ねられた多重膜構造から成る。合成樹脂製フィルム膜12、合成繊維製織物膜14及び合成樹脂製フィルム膜16は、相互に接着されていない。
【0024】
(第3の構成例)
第3の構成例10−3は、第2の構成例10−2の上面に、合成樹脂製フィルム膜18が重ねられた多重膜構造から成る。即ち、第3の構成例10−3は、合成繊維製織物膜14の両面に、合成樹脂製フィルム膜12,16が夫々重ねられ、更に、合成樹脂製フィルム膜12の上面に合成樹脂製フィルム膜18が重ねられた多重膜構造から成る。合成樹脂製フィルム膜18、同12、合成繊維製織物膜14及び合成樹脂製フィルム膜16は、相互に接着されていない。
【0025】
(第4の構成例)
第4の構成例10−4は、第1の構成例10−1の合成樹脂製フィルム膜12の上に、合成樹脂製フィルム膜18が重ねられた多重膜構造から成る。即ち、第4の構成例10−4は、合成繊維製織物膜14の両面に、合成樹脂製フィルム膜12,16が夫々重ねられた多重膜構造から成る。合成樹脂製フィルム膜18、同12及び合成繊維製織物膜14は、相互に接着されていない。
【0026】
(第5の構成例)
第5の構成例10−5は、第2の構成例10−2の上に、第1の構成例10−1が重ねられた多重膜構造から成る。即ち、第5の構成例10−5は、合成繊維製織物膜14の両面に、合成樹脂製フィルム膜12,16が夫々重ねられ、更に、合成樹脂製フィルム膜12の上面に合成繊維製織物膜20が重ねられ、更に合成繊維製織物膜20の上面に合成樹脂製フィルム膜22が重ねられた多重膜構造から成る。合成樹脂製フィルム膜22、合成繊維製織物膜20、合成樹脂製フィルム膜12、合成繊維製織物膜14及び合成繊維製織物膜16は、相互に接着されていない。
【0027】
(合成樹脂製フィルム及び合成繊維製織物)
上記各構成例で使用される合成樹脂製フィルム膜12,16,18,22及び合成繊維製織物膜14,20に関して説明する。
【0028】
これら合成樹脂製フィルム膜12,16,18,22は、隔膜6に必要な性能の内、主として、ガス遮断機能を受け持っている。これら合成樹脂製フィルム膜の材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)、及びポリビニルアルコール(PVA)のいずれから成る。これら合成樹脂製フィルム膜の構造は、単質単層フィルム、多質共押出フィルム、又は多質ラミネートフィルムのいずれかである。これら合成樹脂製フィルムの枚数は、1枚又は所望に応じて複数枚とする。
【0029】
合成樹脂製フィルム膜として、ガス遮断性能としてガス透過度1mL/m2・d・MPaレベル以上、耐熱性能として80℃〜130℃以上、耐寒性能として−70〜−20℃の性能のものが幅広く実用化されており、市場に於いて商業的に入手できる。
【0030】
従って、これら合成樹脂製フィルム膜の材質、構造、枚数は、油入電気機器の要求仕様、電圧階級等により要求されるガス遮断性等に応じて適宜選択される。このような合成樹脂製フィルム膜の厚さは、典型的には、合計で0.1mm以下である。
【0031】
合成繊維製織物膜14,20は、主として、隔膜6に必要な性能の内、機械的強度を受け持っている。これら合成繊維製織物膜の材質は、ポリエステル(PET)、及びポリアミド(PA)のいずれから成る。これら合成繊維製織物膜の枚数は、1枚又は所望に応じて複数枚とする。従って、これら合成繊維製織物膜の材質、枚数は、油入電気機器の要求仕様により要求される機械的強度等に応じて適宜選択される。このような合成繊維製織物膜の厚さは、典型的には、合計で0.2mm以下である。
【0032】
[隔膜の製造方法]
本実施形態に係るコンサベータ用隔膜6の製造方法の特徴は、次の点にある。各合成樹脂製フィルム膜は、1枚ずつ熱接合して袋状にする。合成樹脂製フィルム膜を製袋するために、ヒートシーラ、インパルスシーラ、超音波シーラ等の比較的小規模な設備(道具)を使って、必要な箇所のみを部分的に熱接合している。
【0033】
各合成繊維製織物膜は、1枚ずつ縫製して袋状にする。合成繊維製織物膜を製袋するために、比較的小規模設備(道具)の縫製用ミシンを使って、必要な箇所のみを部分的に縫製している。
【0034】
こうして出来た合成樹脂製フィルム膜の袋及び合成繊維製織物膜の袋を、図3で説明した構成例に従って、必要枚数重ね合わせる。これら袋と袋は、呼吸孔8の部分を除き、接着せずに独立した状態とする。
【0035】
[実施形態の利点・効果]
本実施形態に係るコンサベータ用隔膜の利点・効果を、特許文献1(特開2006-237531)及び特許文献2(特開2001-297920)に開示するコンサベータ用隔膜と比較しながら説明する。
【0036】
ここで、図4(A)は特許文献1の図1を転記した図であり、図4(B)は特許文献1の図4を転記した図であり、図4(C)は特許文献2の図3を転記した図である。
【0037】
特許文献1は、コンサベータ用隔膜に関して次の様に開示する。図4(A)に示すコンサベータ用複合膜1は、酸素ガスバリア性を備える酸化防止用の高分子材料を用いた中間層2と、この中間層2の両面に設けられたナイロン布等の補強材による一対の内層3A,3Bと、内層3A,3Bのそれぞれの表面に設けられたニトリルゴム等の耐油物質による一対の外層4A,4Bとを備える。中間層2として、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)、延伸ポリビニルアルコール(延伸PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のフィルムを好適に用いることができる。中間層2と内層3A,3Bは、接着剤により接着されている。内層3A,3Bと外層4A,4Bの間は、加硫融着(加硫接合)等の接着法により接着できる。
【0038】
図4(B)に示すコンサベータ用複合膜20の構成は、ガスバリア性を備える中間層としてのビニロンフィルム(PVA)21と、このPVA層21の両面に設けられた内層としての一対のナイロン布層22A,22Bと、ナイロン布22A,22Bのそれぞれの表面に外層として設けられたニトリルゴム膜層23A,23Bとを備える。なお、各層の相互間は、接着剤により接着されている。また、PVA層21に換えて、外層と同じニトリルゴム膜を中間層として使用したコンサベータ用複合膜もある。
【0039】
特許文献2は、コンサベータ用隔膜に関して次の様に開示する。図4(C)は、変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体を構成する積層布の要部断面図を示し、熱可塑性ポリウレタンを含む接着剤をナイロン66の210デニール、密度が、たて、よこ共に50本/inの平織布7の両面に塗付して接着剤層8,8を形成し、前記接着剤層8,8の上に熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタンを圧延展着した後に加熱処理して熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層9,9を形成して、総厚みが0.6mmの熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10を作成する。そして、熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10を構成材として熱融着加工手段により、絶縁油遮蔽体である隔膜3又は袋4の遮蔽体を作成する。尚、図中、11は平織布7のよこ糸、12はたて糸をそれぞれ示す。
【0040】
以上の特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較すると、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、次の様な利点・効果を有する。
【0041】
(1) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、多重袋構造である。即ち、合成樹脂製フィルム膜相互間、合成繊維製織物膜相互間、及び合成樹脂製フィルム膜と合成繊維製織物膜の間は接着されていない状態であり、即ち、独立した状態にある。
【0042】
これに対して、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜は、いわゆる「ゴム引布」構造であり、各層が接着されて一体となっている。具体的には、図4(A)に示すように、合成ゴム(ニトリルゴム)、合成繊維製織物(ポアミド)、高分子フィルム(PVAなど)を複数枚接着することにより一体化してシートにしたり、図4(B)に示すように、合成ゴム(ニトリルゴム)、合成繊維製織物(ポリアミド)を複数枚接着することにより一体化してシートにしたり、図4(C)に示すように、合成ゴム(ウレタンゴム)、合成繊維製織物(ポリアミド)を複数枚接着することにより一体化してシートにしている。
【0043】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、柔軟性、可撓性に優れている。
【0044】
(2) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜を構成する各膜(各シート)は、合成樹脂製フィルム又は合成繊維製織物のいずれかである。
【0045】
これに対して、特許文献1,2に開示する各シートは、図4(A)に示すように、合成ゴム(ニトリルゴム)、合成繊維製織物(ポアミド)、高分子フィルム(PVAなど)を複数枚接着することにより一体化してシートにしたり、図4(B)に示すように、合成ゴム(ニトリルゴム)、合成繊維製織物(ポリアミド)を複数枚接着することにより一体化したシートであったり、図4(C)に示すように、合成ゴム(ウレタンゴム)、合成繊維製織物(ポリアミド)を複数枚接着することにより一体化したシートである。
【0046】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、シート自体が柔軟性、可撓性に優れている。
【0047】
(3) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜の合成樹脂製フィルム膜は、比較的小規模な設備(道具)を使って、必要な箇所のみを部分的に熱接合している。コンサベータ用隔膜の合成繊維製織物膜は、比較的小規模設備(道具)の縫製用ミシンを使って、必要な箇所のみを部分的に縫製している。
【0048】
これに対して、特許文献1の例では接着剤を介してシートを重ね合わせて継ぎ目を設け、この継ぎ目の表裏両面には接着剤を介して補強テープを当てて加熱、加圧して製袋している。特許文献2の例では継ぎ目を融着して製袋している。特許文献1及び2の複合膜、遮蔽体は、高温・高圧で合成ゴムシート、合成繊維織物、高分子フィルムを複数枚接着して一体シートにしたうえ、継ぎ目を高温・高圧で接着するため、比較的大規模な結反機、糊引機、カレンダー、加硫機、ディップ装置、高周波融着機などの設備を必要とする。また、接着することでシートの柔軟性(可撓性)が更に低下する。
【0049】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、比較的小規模設備(道具)で製造することができる。
【0050】
(4) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、各膜(各シート)が独立しているため、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルが可能である。
【0051】
これに対して、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜は、高温・高圧で合成ゴムシート、合成繊維織物、高分子フィルムを複数枚接着して一体シートから製造されている。
【0052】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルが一層容易に出来る。
【0053】
(5) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、耐熱温度の高い隔膜を実現することが出来る。例えば、合成樹脂製フィルム膜は耐熱性能(80℃〜130℃以上)を有しているので、100℃以上のフィルムを選択できる。同様に、合成繊維製織物膜は耐熱性能(80℃〜130℃以上)を有しているので、100℃以上の織物を選択できる。
【0054】
これに対して、特許文献1及び2で使用しているニトリルゴム、ウレタンゴムの耐熱温度は約100℃程度以下である。
【0055】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、電気絶縁油の引火点の高い電気絶縁油を封入して高温運転する電気機器のも対応できる。
【0056】
(6) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、低い温度の寒冷性能を実現できる。例えば、合成樹脂製フィルム膜は耐寒性能(−70℃〜−20℃)を有しているので、−35℃以下のフィルムを選択できる。同様に、合成繊維製織物膜は耐寒性能(−70℃〜−60℃)を有しているので、−35℃以下の織物を選択できる。
【0057】
これに対して、特許文献1で使用しているニトリルゴムの耐寒温度は−35℃程度以上である。
【0058】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、低い温度の寒冷性能を実現でき、電気絶縁油の流動点の低い電気絶縁油を封入して寒冷地に設置する電気機器に使用することができる。
【0059】
(7) 本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、比較的薄く実現できる。例えば、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜の合成樹脂製フィルム膜の厚さは合計で0.1mm以下、合成繊維製織物膜も合計で0.2mm以下である。
【0060】
これに対して、特許文献1及び2の複合膜、遮蔽体の厚さは0.6mmから1.Ommあり、大容積の呼吸袋では1袋50kgを超えることもある。
【0061】
従って、本実施形態に係るコンサベータ用隔膜は、特許文献1及び2に開示するコンサベータ用隔膜と比較して、質量が約1/2〜1/3以上軽くなり、取り扱い、組立、運搬などが容易となる。また、原料消費を抑えることもできる。
【0062】
[代替例等]
以上、本発明に係るコンサベータ用隔膜の実施形態に関して説明したが、本発明はこれに限定されない。当業者が容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明に含まれる。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、代表的な油入電気機器の概略構成を示した図である。
【図2】図2は、図1の油入電気器を構成する隔膜を示す図である。
【図3】図3は、図2の破線円で囲んだ箇所の構成例を説明する図である。
【図4】図4(A)は特許文献1の図1を転記した図であり、図4(B)は特許文献1の図4を転記した図であり、図4(C)は特許文献2の図3を転記した図である。
【符号の説明】
【0064】
1:油入電気機器、 2:外箱、 3:機器本体、 4:絶縁油、 5:コンサベータ、 6:隔膜,袋状隔膜、 7:ブッシング、 9:導体、 12,16,18,22:合成樹脂フィルム膜、 14,20:合成樹脂製繊維物膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ガス遮断性を有する合成樹脂製フィルム又はシートの膜と、機械的強度を有する合成繊維製織物の膜とで構成された多重膜構造を形成し、
各々の膜は、接着されて一体化されてなく、各々が独立している、コンサベータ用隔膜。
【請求項2】
請求項1に記載のコンサベータ用隔膜において、該コンサベータ用隔膜は袋状の形状である、コンサベータ用隔膜。
【請求項3】
請求項2に記載のコンサベータ用隔膜において、
前記合成樹脂製フィルム又はシートの膜を製袋するために、ヒートシーラ、インパルスシーラ又は超音波シーラの比較的小規模な設備道具を使って、該合成樹脂製フィルム又はシートの膜の必要な箇所のみを部分的に熱接合している、コンサベータ用隔膜。
【請求項4】
請求項2に記載のコンサベータ用隔膜において、
前記合成繊維製織物の膜を製袋するために、比較的小規模設備の縫製用ミシンを使って、該合成繊維製織物の膜の必要な箇所のみを部分的に縫製している、コンサベータ用隔膜。
【請求項5】
請求項1に記載のコンサベータ用隔膜において、該コンサベータ用隔膜は、次の(1)〜(6)のいずれかの構成から成る、コンサベータ用隔膜。
(1)第1の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第1の合成繊維製織物の膜。
(2) 第1の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第1の合成繊維製織物、第2の合成樹脂製フィルム又はシートの膜。
(3) 第1の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第2の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第1の合成繊維製織物、第3の合成樹脂製フィルム又はシートの膜。
(4) 第1の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第2の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第1の合成繊維製織物の膜。
(5) 第1の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第1の合成繊維製織物の膜、第2の合成樹脂製フィルム又はシートの膜、第2の合成繊維製織物の膜、第3の合成樹脂製フィルム又はシートの膜。
【請求項6】
請求項1に記載のコンサベータ用隔膜において、
前記合成樹脂製フィルム又はシートの膜の材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)及びポリビニルアルコール(PVA)から成る群から選択された任意の材質である、コンサベータ用隔膜。
【請求項7】
請求項1に記載のコンサベータ用隔膜において、
前記合成樹脂製フィルム又はシートの膜の構造は、単質単層フィルム、多質共押出フィルム、又は多質ラミネートフィルムのいずれかである、コンサベータ用隔膜。
【請求項8】
請求項1に記載のコンサベータ用隔膜において、
前記合成繊維製織物の膜の材質は、ポリエステル(PET)又はポリアミド(PA)である、コンサベータ用隔膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンサベータ用隔膜を有するコンサベータ。
【請求項10】
請求項9に記載のコンサベータを備える油入電気機器。
【請求項11】
請求項10に記載の油入電気機器において、該油入電気機器は、油入変圧器、油入リアクトル、油入コンデンサ又は油入ケーブルのいずれかである、油入電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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