説明

コンセント測定プローブ及び電圧測定器

【課題】コンセント形状(穴の間隔)が異なる様々な国のコンセントに対して使用することのできるコンセント測定プローブ及び電圧測定器を提供する。
【解決手段】測定プローブ3A、3Bのグリップ31には、グリップ31の軸線方向においてバリア34の一側及び/又は他側に、且つ、バリア34に隣接して保持溝35、36が形成され、対をなす測定プローブ3A、3Bを互いに平行に配置して一体に組み合わせたとき、互いに一方の測定プローブの環状鍔部34の外周の一部が、他方の測定プローブの保持溝35、36に嵌合し、両測定プローブ3A、3Bを一体的に固定し、対をなす両測定プローブ3A、3Bの探針32、32間の距離を所定値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、コンセントの電圧測定が可能な電圧測定器に関するものであり、特に、コンセントの穴の間隔が異なる種々の形状のコンセントに適用して電圧測定が可能なコンセント測定プローブ及び斯かるコンセント測定プローブを備えた電圧測定器である。
【背景技術】
【0002】
従来、測定切替スイッチにより電圧、電流、電気抵抗等の測定が可能であり、測定結果をデジタル表示部により表示するデジタルマルチメータが広く使用されている。デジタルマルチメータの一例を、本願添付の図5に示す。
【0003】
本例に示すように、通常、デジタルマルチメータ1Aは、メータ本体2と、メータ本体2に接続された一対の測定プローブ3(3A、3B)とにて構成される。メータ本体2には、測定切り替えスイッチ4及びデジタル表示部5等が設けられている。
【0004】
例えば、コンセントの電圧を測定する場合は、ユーザは、電圧測定器として機能するDMM(デジタルマルチメータ)1Aなどを使用し、メータ本体2に設けられた、例えばロータリスイッチとされる測定切り替えスイッチ4を回して、測定対象を設定する。つまり、例えば、ロータリスイッチ4を「OFF」位置から「ACV」位置へと回し、ファンクションを電圧測定に設定する。
【0005】
次いで、ユーザは、一般には、片手にメータ本体2と測定プローブ1本を持ち、もう一本の手に他の1本の測定プローブを持って、コンセントの穴に挿入にてコンセント金属端子に接触させて測定する。
【0006】
このように、従来の、コンセントの電圧測定方法は、両手を使用して、コンセントの穴に対して両方の測定プローブ3(3A、3B)を確実に挿入して接触させることが必要とされた。しかも、その操作は容易とは言い難い。そのために、測定プローブをコンセントの穴に確実に挿入して接触させるために複数回操作を繰り返し行なうこともある。更なる測定方法の簡易化が望まれている。
【0007】
そこで、特許文献1は、本願添付の図6、図7に示すように、コンセントの電圧測定をより確実に、且つ、簡単に実施し得る電圧測定器1Aを開示している。特許文献1に記載する電圧測定器1Aは、メータ本体2をユーザが片手で把持し得る形状とし、且つ、メータ本体2の両側部には、測定プローブ3(3A、3B)をそれぞれ着脱自在に支持し得る支持構造20(20A、20B)が設けられている。
【0008】
従って、ユーザは、コンセントの電圧測定に際しては、測定プローブ3(3A、3B)をメータ本体2の両側部に支持構造20(20A、20B)により固定的に支持させる。これにより、測定プローブ3(3A、3B)の探針32、32は、コンセントの穴の間隔(W)にセットされる。従って、ユーザは、片手に持ったメータ本体2と共に、所定の間隔(W)に設定保持されている測定プローブ3(3A、3B)の探針32、32をコンセントの穴に挿入させ、金属部に確実に接触させることができる。
【0009】
このように、特許文献1に記載の電圧測定器1Aは、測定プローブ3(3A、3B)をメータ本体2に固定することができ、且つ、固定した測定プローブ3(3A、3B)の間隔(W)がコンセントの穴の間隔とされるので、片手で、且つ、容易に、操作性良く、コンセントの電圧を確実に測定することができる、といった利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1164379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電圧測定器1Aは、コンセント穴間隔(W)が一定距離とされるコンセントの電圧測定に対しては有効であるが、例えば、コンセント穴の間隔が異なる各国のコンセントに対応させることは困難である。
【0012】
本発明の目的は、コンセント形状(穴の間隔)が異なる様々な国のコンセントに対して使用することのできるコンセント測定プローブ及び電圧測定器を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、片手で、且つ、容易に、操作性良く、コンセントの電圧を確実に測定することのできるコンセント測定プローブ及び電圧測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係るコンセント測定プローブ及び電圧測定器にて達成される。要約すれば、本発明の一態様によれば、コンセントの電圧を測定するための測定プローブであって、略円柱状とされる絶縁性のグリップと、前記グリップの先端部に設けた探針と、前記探針から所定の距離の位置にて前記グリップに形成された環状鍔部とされるバリアと、を備えた一対の測定プローブにおいて、
前記グリップには、前記グリップの軸線方向において前記バリアの一側及び/又は他側に、且つ、前記バリアに隣接して保持溝が形成され、
前記対をなす測定プローブを互いに平行に配置して一体に組み合わせたとき、互いに一方の測定プローブの前記環状鍔部の外周の一部が、他方の測定プローブの前記保持溝に嵌合し、両測定プローブを一体的に固定し、前記対をなす両測定プローブの前記探針間の距離を所定値に設定することを特徴とする測定プローブが提供される。
【0015】
本発明の一実施態様によると、前記バリアは、前記グリップの中心軸線と中心が一致した楕円形状又は三角形以上の多角形状とされる。
【0016】
本発明の他の態様によると、測定器本体と、前記測定器本体に接続された一対の測定プローブとを備えた電圧測定器において、
前記測定プローブは、上記いずれかの構成の測定プローブであることを特徴とする電圧測定器が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
(1)コンセント形状(穴の間隔)が異なる様々な国のコンセントに対して有効に使用することができる。
(2)片手で、且つ、容易に、操作性良く、コンセントの電圧を確実に測定することができる。
といった利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に従って構成される電圧測定器として機能するデジタルマルチメータの全体構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、本発明に係る測定プローブの正面図であり、図2(b)は、平面図である。
【図3】図3(a)は、本発明に係る測定プローブの一実施例の斜視図であり、図3(b)は、本発明に係る測定プローブの他の実施例の斜視図であり、図3(c)は、保持溝の他の実施例を示す図3(b)の線III−IIIに取った断面図である。
【図4】図4(a)は、互いに平行に配置した対をなす測定プローブの正面図であり、図4(b)は、第一の形状のコンセントの電圧測定をするために二つの測定プローブを一体に組み合わせた使用態様を説明する図であり、図4(c)は、第二の形状のコンセントの電圧測定をするために二つの測定プローブを一体に組み合わせた使用態様を説明する図である。
【図5】従来のデジタルマルチメータの一例を示す全体構成図である。
【図6】従来のデジタルマルチメータの一例を示す全体構成図である。
【図7】図6に示す従来のデジタルマルチメータの使用状態を説明するための全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るコンセント測定プローブ及び電圧測定器を図面に則して更に詳しく説明する。
【0020】
実施例1
(電圧測定器の全体構成)
図1に、本発明に従って構成されるコンセント測定プローブ及び電圧測定器の一実施例を示す。
【0021】
電圧測定器1の全体構成は、図5を参照して説明した従来の電圧測定器として使用されるデジタルマルチメータ1Aと同様である。ただ、測定プローブ3(3A、3B)の構成において異なる。
【0022】
つまり、図1に示すように、電圧測定器(デジタルマルチメータ)1は、測定器本体(以下、「メータ本体」という。)2と、メータ本体2に接続された一対の測定プローブ3(3A、3B)とにて構成される。メータ本体2には、測定切替スイッチ4及びデジタル表示部5などが設けられている。
【0023】
対をなす測定プローブ3A、3Bは、同じ形状、構造とされるので、以下の説明では、測定プローブ3A、3Bは、特に区別することを必要とする場合を除いては、測定プローブ3と総称して説明する。
【0024】
図2(a)を参照して説明すれば、本実施例において、測定プローブ3は、細長の略円柱状とされる絶縁性のグリップ31を備えており、グリップ31の先端部31aには、探針32が端面31a1から突出して設けられている。探針32は金属製の細長棒とされ、絶縁性のグリップ31の内部にてリード線33と電気的に接続されている。グリップ31の後端部31bからはリード線33が引き出され、リード線33の端部は、メータ本体2に電気的に接続されている。
【0025】
なお、従来、グリップ31には、使用時に使用者の指が滑り探針32に接触するのを防止する滑り止め機能をなすために、その先端の探針32に隣接する位置に、即ち、グリップ31の先端面31a1から距離(L)だけ、内方へと移動した位置に、環状に突出したリング状凸部、即ち、鍔部とされるバリア34がグリップ31と一体に形成されている。
【0026】
本発明によれば、バリア34は、従来の「滑り止め機能」の他に、詳しくは後述するように、二つの測定プローブ3A、3Bを一体に組み合わせたときの両探針32、32間の距離(W)を所定値(W1、W2)に設定して固定する機能をもなす(図4参照)。
【0027】
更に説明すると、本実施例によれば、バリア34は、図2(b)及び図3(a)に示すように、測定プローブ3の軸線、即ち、グリップ31の中心軸線と中心(O)が一致した、短径(a)、長径(b)の楕円形状に形成される。
【0028】
また、測定プローブ3には、バリア34を基準として測定プローブ3の軸線方向に、即ち、図2(a)にて、バリア34の上側(一側)及び下側(他側)に、且つ、バリア34に隣接して、第1及び第2の環状の保持溝35、36が形成される。勿論、溝は、一方の測定プローブ3Aに対してはバリア34の上側に、他方の測定プローブ3Bに対しては下側にのみ形成してもよい。当然、この逆でも構わない。
【0029】
上記溝35、36は、二つの測定プローブ3(3A、3B)を一体に組み合わせたとき、相手方の測定プローブの所定の厚さ(T)とされるバリア(鍔部)34の外周の一部が着脱可能に嵌合し、両測定プローブ(3A、3B)を一体的に固定し、両探針32、32間の距離(W)を所定値(W1、W2)に設定する機能をなす。
【0030】
次に、図4を参照して、上記構成の測定プローブ3(3A、3B)の使用態様について説明する。
【0031】
(測定プローブの使用態様)
本実施例の測定プローブ3(3A、3B)を備えた電圧測定器1によれば、図4(a)〜(c)に示すように、
(1)二つの、即ち、第1及び第2測定プローブ3A、3Bを、例えば、第1及び第2測定プローブ3A、3Bのバリア34の短径(a)が互いに対向するように、又は、第1及び第2測定プローブ3A、3Bのバリア34の長径(b)が互いに対向するように、第1及び第2測定プローブ3A、3Bを互いに平行に配置し(図4(a))、
(2)次に、図4(b)、(c)に示すように、第1測定プローブ3Aのバリア34の外周部を、第2測定プローブ3Bの溝部36に押入する。同時に、第2測定プローブ3Bのバリア34の外周部を、第1測定プローブ3Aの溝部35に押入する。
【0032】
つまり、第1及び第2測定プローブ3A、3Bは、図4(b)に示すように、バリア34の短径(a)が互いに対向するようにして、又は、図4(c)に示すように、バリア34の長径(b)が互いに対向するようにして、一体的に固定される。
【0033】
勿論、上記(2)は、次のようにしても良い。つまり、
(2)第1測定プローブ3Aのバリア34の外周部を、第2測定プローブ3Bの溝部35に押入する。同時に、第2測定プローブ3Bのバリア34の外周部を、第1測定プローブ3Aの溝部36に押入する。
【0034】
本実施例によれば、図4(b)の場合は、第1及び第2測定プローブ3A、3Bの探針32、32間の間隔(W)は、第1の形状のコンセントS1の穴間隔W1と同じに設定され、図4(c)の場合は、第1及び第2測定プローブ3A、3Bの探針32、32間の間隔(W)は、第2の形状のコンセントS2の穴間隔W2と同じに設定される。
【0035】
図示してはいないが、もし、上記コンセントS1、S2の穴間隔W1、W2の間である、第3の形状のコンセントの穴間隔W3の場合には、第1及び第2測定プローブ3A、3Bを軸線を中心としてに回転させて、短径(a)と長径(b)の間の適当な直径位置にて互いにバリア(鍔部)34、34が相手の溝35、36に嵌まり合うようにして固定する。
【0036】
つまり、バリア34の形状を楕円形とすることにより、直径が異なる場所を使用することで2つ測定プローブ3A、3Bの固定する間隔(W)を連続的に変えることができる。これにより、コンセント形状(穴間隔)が異なる様々な国のコンセントの電圧測定に利用することができる。
【0037】
上記にて理解されるように、本発明によれば、
(1)コンセント形状(穴の間隔)が異なる様々な国のコンセントに対して使用することができる。
(2)片手で、且つ、容易に、操作性良く、コンセントの電圧を確実に測定することができる。
といった利点を有している。
【0038】
実施例2
上記実施例1では、各測定プローブ3A、3Bのバリア34は、短径(a)、長径(b)を有した楕円形状であるとして説明したが、バリア34の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図3(b)に示すように、各測定プローブは、短辺(a)、長辺(b)の長方形とすることもできる。また、場合によっては、測定プローブ、即ち、グリップ31の軸中心(O)から各辺までの距離がそれぞれ異なる三角形以上の多角形状とすることも可能である。
【0039】
尚、本実施例の場合においては、保持溝35、36は、必ずしもグリップ31に円形状に形成する必要はなく、例えば、図3(c)に示すように、直線状の溝35(36)とすることも可能である。
【0040】
本実施例2のように、バリア34を三角形、四角形、或いは、その他の多角形とした場合には、楕円形状とした場合に比較し、探針32、32の距離の変更は段階的となり、連続的に変更調整することはできない。
【0041】
しかしながら、本実施例においても、実施例1と同様の作用効果、つまり、
(1)コンセント形状(穴の間隔)が異なる様々な国のコンセントに対して使用することができる。
(2)片手で、且つ、容易に、操作性良く、コンセントの電圧を確実に測定することができる。
といった利点を有していることは明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 デジタルマルチメータ(電圧測定器)
2 メータ本体(測定器本体)
3(3A、3B) 測定プローブ
4 スイッチ
5 表示部
31 グリップ
31a グリップ先端部
32 探針
33 リード線
34 バリア
35、36 保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセントの電圧を測定するための測定プローブであって、略円柱状とされる絶縁性のグリップと、前記グリップの先端部に設けた探針と、前記探針から所定の距離の位置にて前記グリップに形成された環状鍔部とされるバリアと、を備えた一対の測定プローブにおいて、
前記グリップには、前記グリップの軸線方向において前記バリアの一側及び/又は他側に、且つ、前記バリアに隣接して保持溝が形成され、
前記対をなす測定プローブを互いに平行に配置して一体に組み合わせたとき、互いに一方の測定プローブの前記環状鍔部の外周の一部が、他方の測定プローブの前記保持溝に嵌合し、両測定プローブを一体的に固定し、前記対をなす両測定プローブの前記探針間の距離を所定値に設定することを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
前記バリアは、前記グリップの中心軸線と中心が一致した楕円形状又は三角形以上の多角形状とされることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
測定器本体と、前記測定器本体に接続された一対の測定プローブとを備えた電圧測定器において、
前記測定プローブは、請求項1又は2に記載の測定プローブであることを特徴とする電圧測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−32974(P2013−32974A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169212(P2011−169212)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】