コンタクトレンズの安定化
コンタクトレンズ設計は、運動量モーメントが平衡される、安定化を改善して提供される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特定の視覚欠損は、円筒型、二焦点、若しくは多焦点の特性等の、非球状補正物の態様をコンタクトレンズの1つ又は2つ以上の面に応用することで補正可能である。これらのレンズが効果的であるためには、眼上にある間、概して特定の方向で維持される必要がある。レンズの眼上での方向の維持は通常、レンズの機械的特性を変えることによって行われる。レンズの後面に対する前面の偏心、下方レンズ周辺部の厚さの増大、レンズ表面上における俯角又は仰角の形成、及びレンズ縁部の切断を含むプリズムの安定化が、安定化アプローチの例である。更に、薄いゾーン、又は、レンズ周辺部の厚さが減少する領域を使用することによってレンズを安定化させる動的安定化が用いられている。通常、薄いゾーンは、その眼上配置の観点から、レンズの垂直軸線又は水平軸線のいずれかに対して対称である2つの領域に位置付けられる。
【0002】
レンズ設計を評価することは、眼上でのレンズの性能に関して判断すること、並びにその後、必要かつ可能な場合に、その設計を最適化することを伴う。このプロセスは、通常、試験設計を患者において臨床的に評価することによって行われる。しかしながら、このプロセスは、患者間の変動性が考慮されなければならないために、かなりの数の患者が試験される必要があるため、時間と費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定のコンタクトレンズの安定化を改善する継続的必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズである。
【0005】
本発明の別の態様において、コンタクトレンズを安定化させる方法は、安定化ゾーンパラメーターの公称セット、レンズ設計の眼上での性能を評価すること、この性能に基づいてメリット関数を計算すること、及びメリット関数を適用することによって安定化ゾーンパラメーターを最適化すること、を取り入れる。このプロセスは、まばたき等の眼構造の影響をシミュレートする、仮想モデル(例えば、ソフトウェアベースの)を介して反復的に実行され得、安定化スキームを適宜調整する。
【0006】
本発明の更に別の態様において、コンタクトレンズは、眼上のレンズ上で作用するトルクの運動量モーメントが平衡されるスキームに従って安定化される。
【0007】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、レンズの残りのゾーンとは異なる厚さを有する1つ又は2つ以上のゾーンの形成によって安定化され、これらのゾーンは、レンズが眼上にあるときにレンズ上で作用するトルクの運動量モーメントが平衡されるように、位置付けられる。
【0008】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、安定化ゾーンを有し、その長さの大半はレンズの水平軸線の下にある。
【0009】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する。
【0010】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】安定化コンタクトレンズの正面図又はオブジェクト図。
【図2A】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2B】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2C】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図3】本発明に従う安定化の最適化プロセスを示す、フローチャート。
【図4A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図4B】実施例1に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図4C】実施例1に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図5A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図5B】実施例2に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図5C】実施例2に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図6A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図6B】実施例3に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図6C】実施例3に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図7A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図7B】実施例4に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図7C】実施例4に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図8】回転速度の測定を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明のコンタクトレンズは、レンズ上で作用する様々な力の平衡をとることに基づいて安定化を最適化する設計を有する。これは、眼上で働くトルク、眼の構成要素、及び最終的には眼上に配置される安定化レンズの平衡をとる設計プロセスの適用を伴う。好ましくは、改善された安定化は、安定化の要素を含む公称設計を有する改善プロセスの開始によって実現される。例えば、中心を通る水平軸線及び垂直軸線の両方に対して対称である2つの安定化ゾーンを有するレンズ設計は、本発明の方法に従ってレンズの安定化を最適化するために、有用な参照である。「安定化ゾーン」とは、周辺ゾーンのその他の領域の厚さよりも大きな厚さ値を有するレンズの周辺ゾーンの領域を意味する。「周辺ゾーン」とは、レンズの視覚ゾーンを周囲方向に囲み、レンズの縁部は含まずに、そこまで延在するレンズ表面の領域を意味する。安定化ゾーンを有しない周辺ゾーンは通常、回転対称面、好ましくは球面を備えるであろう。有用な開始点である別の安定化設計は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050237482号に記載されるが、いずれの安定化設計も、後に本発明に従って最適化される、公称設計として使用され得る。安定化設計の改善プロセスはまた、以下に記載される眼モデルを用いて改善を試験すること、試験の結果を評価すること、及び所望のレベルの安定化が達成されるまで改善プロセスを反復して継続することを取り入れることができる。
【0013】
図1は、安定化レンズの前面、又はオブジェクト側面を描写する。レンズ10は、視覚ゾーン11を有する。レンズの周辺部は、視覚ゾーン11を囲む。2つの厚い領域12が、周辺部に位置付けられており、これらが安定化ゾーンである。
【0014】
本プロセスにおいて、新しい設計を製造するために使用されることが好ましいモデルは、機械的操作及びレンズ安定性への効果をシミュレートする、様々な要因及び想定を取り入れる。好ましくは、このモデルは、よく知られているプログラミング技術に従って、標準的なプログラミング及びコーディング技術を使用する、ソフトウェアまで単純化される。概観として、本モデルは、眼の規定数のまばたきの以下に説明される力の適用をシミュレートすることによって、安定化レンズを設計するためのプロセスで使用される。レンズが回転及び偏心する角度は、適宜決定される。設計は、次いで、回転及び/又はセンタリングをより望ましいレベルにすることを目的とする手法で変えられる。次いで、所定数のまばたき後のまばたき時の並進を判定するために、再度モデルにかけられる。設計の改変は、以下により詳細に記載されるメリット関数の適用によって達成される。
【0015】
モデルは、眼が、好ましくは角膜及び強膜を表す少なくとも2つの球面部からなり、x−y−z座標軸の原点が、角膜を表す球体の中心にあることを想定する。非球面等のより複雑な表面もまた、使用され得る。レンズのベース形状は球面部からなるが、レンズのベースカーブ半径は、レンズの中心から縁部に向かって変化することが可能である。2つ以上のベースカーブが、後面を描くために使用されてもよい。眼上に位置されるレンズは、眼のものと同一の形状をとることが想定される。レンズの厚さ分布は、必ずしも回転対称である必要はなく、実際に、本発明のレンズの幾つかの好ましい実施形態によると対称的ではない。レンズ縁部の厚いゾーンが、レンズの位置挙動及び方向挙動を制御するために使用されてもよい。均一の薄い液体被膜(涙液膜)が、通常の厚さが1〜7μm、好ましくは5μmで、レンズと眼との間に存在する。この涙液膜は、レンズ後方涙液膜と呼ばれる。レンズ縁部では、レンズと眼との間の液膜の厚さはより小さく、ムチン涙液膜と称される。通常の厚さが1〜10μm、好ましくは5.0μmの均一の薄い液体被膜(また、涙液膜)が、レンズと下瞼及び上瞼との間に存在し、これらはレンズ前方涙液膜と称される。下瞼及び上瞼の両方の境界は、x−y平面内の単位法線ベクトルを有する平面内にある。したがって、z軸線に垂直な平面上のこれらの境界の射影は、直線である。この想定はまた、瞼の動作中にもなされる。上瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この均一圧力は、上瞼によって被覆されるコンタクトレンズの全域又は上瞼の境界付近のこの領域の一部に、均一幅でかけられる(平面に対して垂直な方向で、瞼の縁部を描く曲線を通して測定される)。下瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この圧力は、下瞼によって被覆されるコンタクトレンズの全域にかけられる。瞼によってコンタクトレンズにかけられる圧力は、コンタクトレンズの、特に縁部付近の不均一な厚さ分布(厚いゾーン)を通してレンズで作用するトルクに貢献する。コンタクトレンズで作用するトルクに対するこの圧力効果は、メロンの種効果(melon seed effect)と称される。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦がレンズ後方涙液膜内に存在する。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦はまた、レンズ縁部と眼との間のムチン涙液膜内にも存在する。更に、粘性摩擦は、レンズが動く及び/又は瞼が動く場合に、レンズ前方涙液膜内に存在する。レンズ内の負担及び圧迫は、レンズの変形に起因して起こる。これらの負担及び圧迫は、レンズの弾性エネルギー量に繋がる。レンズが眼に対して動き、レンズの変形が変化するにつれて、弾性エネルギー量が変化する。レンズは、弾性エネルギー量が最小である位置にある傾向がある。
【0016】
眼の形状(角膜及び強膜)、レンズのベース形状、及び瞼の動作を示すパラメーターが、図2に示される。レンズの動作は、レンズで作用する運動量モーメントの平衡から得られる。慣性効果は無視される。次いで、レンズで作用するすべてのモーメントの合計はゼロになる。したがって、次のようになる。
【数1】
【0017】
最初の4つのモーメントは、トルクに抵抗しており、レンズの動作に直線的に依存する。残りのトルクは駆動トルクである。運動量モーメントのこの平衡は、レンズの位置βに対する非線形一次微分方程式をもたらす。
【数2】
【0018】
この等式は、4次ルンゲ・クッタ積分スキームを用いて解かれる。コンタクトレンズ上の点の位置は、回転ベクトルβ(t)周辺の回転から得られる。点の古い位置を現在の位置に変換する回転マトリックスR(t)は、ロドリゲスの公式から得られ、
【数3】
式中、
【数4】
である。
【0019】
数値積分法において、時間離散化が使用される。次いで、レンズの動作は、多数の後続回転として見ることができ、したがって、次の時間工程
【数5】
において、回転マトリックスは次のようになり、
【数6】
式中、
【数7】
が、時間ステップ
【数8】
の間の回転である。
【0020】
回転マトリックスは、レンズの回転
【数9】
及び偏心
【数10】
に分解される。
【数11】
【0021】
レンズの回転は、レンズの中心線を中心とした回転である。偏心は、(x,y)平面内の線を中心とした回転である。したがって、レンズの位置は、偏心
【数12】
に続く、中心線を中心としたレンズの回転
【数13】
として見られる。
【0022】
本発明の好ましい方法において、これらの関係に基づくメリット関数(MF)は、調整されるように構築され、そうすることで公称設計の安定化スキームを改善する。これらのメリット関数は、レンズの眼上での性能要件に基づいて定義される。好ましい実施形態において、メリット関数は、a)レンズの回転及びセンタリング性能(式1)、b)静止位置の周囲におけるレンズの安定性(式2)、又はc)レンズの回転及びセンタリング性能、並びに静止位置の周囲におけるレンズの安定性(式3)、を定義するが、これらに限定されない。
【数14】
【0023】
レンズの回転とは、まばたきの最中及びその合間に起こる、z軸線を中心としたレンズの角運動を意味する。回転は、眼上でのレンズの初期位置、あるいは眼上でモデル化される際のレンズの具合によって、時計回り又は反時計回りであり得る。
【0024】
レンズのセンタリングとは、レンズの幾何学的中心と角膜頂点との間の距離を意味する。センタリングは、角膜頂点の平面内のx−y座標系に記録される。
【0025】
レンズの安定性とは、水平方向(x軸線)及び垂直方向(y軸線)における最大のレンズ移動の量、並びにまばたき周期の間のレンズの回転の量を意味する。レンズの安定性は、好ましくは、レンズがその最終位置に達した後に、レンズの誤方向及び偏心が記録されない。
【0026】
メリット関数の目的及び適用の例示として式1を使用して、Rot及びCentはそれぞれ、最適化されるべきレンズ設計の回転及びセンタリングにおけるレンズ性能を示す。RREF及びCREFは、初期レンズ設計の回転及びセンタリングにおける、レンズ性能を示す変数である。WR及びWCは、1つの係数の、他の係数に対する寄与の調整を可能にする2つの重み係数であり、0〜1の値をとることができる。適用される際、以下に例示されるように、これらの関数は、数値的に解かれるのが最良である。重み係数は、目的の構成要素が十分に考慮されるように適用される。それらは、均等であってもよく、あるいは1つの構成要素が、別のものより注目されてもよい。したがって、例えば、1つがセンタリングよりも回転を最適化することに関連する場合、それらはWCよりも大きいWRを選択することになる。安定化設計は、そのメリット関数が、この構成下において先行する設計に対して減少される場合に、改善される。更に、それは、このような場合においてメリット関数が最小化される際、最適化される。もちろん、安定化以外の理由から、1つのレンズ設計が別のものより好ましい場合があるため、改善された安定化は、必ずしも本設計の安定化の態様を最適化することなく、依然として本発明に従って取り組まれ得る。
【数15】
【0027】
式2において、XRange、YRange、及びθRangeは、最適化されるように設計されるレンズの水平方向、垂直方向、及び回転の安定性におけるレンズ性能を示し、XREF、YREF、及びθREFは、初期レンズ設計の水平方向、垂直方向、及び回転の安定性におけるレンズ性能であり、WX、WY及びWθは、それぞれに対して係数の寄与の調整を可能にする重み係数である。
【数16】
【0028】
式3において、Rot、Cent、及びStabは、最適化されるべきレンズ設計の回転、センタリング、及び安定性におけるレンズの性能を示し、RREF、CREF、及びSREFは、初期レンズ設計の回転、センタリング、及び安定性におけるレンズの性能であり、RREF、CREF、及びSREFは、それぞれに対して係数の寄与の調整を可能にする重み係数である。
【0029】
別の実施形態において、メリット関数は、着用の快適性を含み、更に、安定化ゾーンの体積、安定化ゾーンの表面積、ソフトコンタクトレンズ着用者の安全化ゾーンに対する自覚、又は任意の他の関連基準を含むことができる。
【0030】
更に好ましい実施形態において、メリット関数は、次のパラメーターから、上述のものと同一方式で定義される。
− 回転性能:
− 回転曲線反応の下の表面積
− ±5.0度以内の回転において、静止位置に達するまでの時間
− 初期回転速度
− センタリング性能:
− センタリング曲線反応の下の表面積
− センタリングにおいて、静止位置に達するまでの時間
− 最終静止位置に達するまでの最初の時間
− センタリング速度
− 安定性性能:
− 水平方向の移動の規模
− 垂直方向の移動の規模
− 回転の規模
− 水平移動の持続時間
− 垂直移動の持続時間
− 回転の持続時間
− 着用の快適性:
− 安定化ゾーンを形成するための超過材料の容積
− 安定化ゾーンによって覆われる表面積
− レンズ着用者の安定化ゾーンに対する自覚
【0031】
本方法によって製造され得る安定化の種類に制限はない。安定化ゾーンは、次の種類であってもよい。
− X及びY軸線に対して対称
− X又はY軸線に対して対称
− X及びY軸線の両方に対して非対称
− 一定の半径方向距離
− 可変の半径方向距離
【0032】
様々な安定化ゾーンパラメーターは、最適化の際に評価され得、次のものを含むが、それらに限定されない:ゾーンの長さ、ピーク厚の位置、ピークのいずれかの側面上の傾斜面角度、ゾーンの円周方向傾斜、及びゾーンの幅。最適化パラメーターもまた、レンズ直径、ベースカーブ、厚さ、視覚ゾーン直径、周辺ゾーン幅、材料特性、及びレンズの特徴を示す他のパラメーターを含むことができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、二種類の改善アプローチが開示される。1つ目において、完全な最適化は、MFによって誘導される安定化調整の既定の反復を有する眼上挙動モデルが、レンズがその静止位置に達するまで、幾つかのまばたきサイクルを必要とするところで、実行される。別の実施形態において、設計は、所定数のまばたきサイクルの間に改善される。有意義な安定化改善を提供するのに効果的であるには、3回のまばたきサイクルが、ほぼ最小である。いずれの場合でも、プロセスは、MFの公称設計への適用を用いて、反復的に実行される。3回のまばたきサイクルが使用される場合においては、初期のまばたきは、水平からの角度αでレンズを配向し、中間のまばたきは、レンズが水平から角度βで配向され、そして最終のまばたきは、レンズが静止位置に位置される。最も好ましい実施形態において、角度αは45度に設定され、角度βは22度に設定される(しかし、いずれの角度もこれらの値に限定されない)。別の実施形態において、最適化のプロセスは、両アプローチの組み合わせであり、減少された数のまばたきサイクルが、中間解に達するために事前に使用され、次いで数回のまばたきサイクルが、最適化が許容角度で実行されたことを確認するために使用される。
【0034】
図3は、この改善プロセスのフローチャートを示す。初期安定化ゾーン設計は、既存の設計又は新しい設計のどちらかであってもよい。これらの設計からの安定化ゾーンパラメーターが決定される。これらのパラメーターは、パラメーターがそれらの初期値周辺で修正される際に、設計性能を計算することから得られる。レンズの性能に最多の変化をもたらすパラメーターは、好ましくは最適化プロセスに対して選択される。工程1において、安定化ゾーンパラメーターは、検討のために選択される。これらは、例えば、とりわけ、安定化ゾーンの規模(Z0)、0〜180度の経線に沿うピーク位置(r0)、0〜180度の経線を角度的に囲むピーク位置(θ0)、ピーク位置の上及び下の傾斜、安定化ゾーンの角度長(σθ)、ピーク位置を中心に回転される安定化ゾーン、並びに安定化ゾーンの幅(σR)を含むことができる。
【0035】
工程2において、レンズは、初期設計又は公称設計に達するために、安定化ゾーンパラメーターに関して数学的に定義される。安定化ゾーンを記述する数学的関数の種類に制限はない。安定化ゾーンはまた、CADアプリケーション等、コンピュータ処理のソフトウェアを使用して記述されてもよい。(定義されたパラメーターを用いて)数学的に記述された設計は、工程3で眼モデルに入れられ、回転、センタリング、及び安定性のデータが、表1に示されるように生成される)。このデータは、次いで、安定化パラメーターのうちの1つ又は2つ以上を修正するために、任意の工程4で使用されてもよい。
【表1】
【0036】
安定化ゾーンは、再成形、拡大縮小、回転、転換によって、又は現在の設計を修正するための任意の他の技術を使用することによって修正される。工程5a〜5dにおいて、修正された安定化パラメーターは、ここで修正された設計のそれぞれに対する回転、センタリング、及び安定性データを生成するために、再度眼モデルを通される。対応する工程6a〜6dのそれぞれの場合において、メリット関数が作成され、レンズが(好ましくは回転を通じて)操作されるにつれて、工程7及び8において新しい回転、センタリング、及び安定性のデータを生成するために、それぞれの新しい設計に適用される。更に、各反復において、メリット関数は、工程9で計算され、工程10において、それらが減少しているかどうかを確認する。減少は、前回の反復を超える改善である。メリット関数が減少しなかった場合は、次いで、安定化パラメーターが任意の工程11で再度修正されてもよく、結果の修正されたレンズ設計が、次いで選択工程7及びデータ生成工程8に戻される。メリット関数が減少した場合、それは安定化における改善を示し、レンズ設計は、最終設計(工程12)であると決定されるか、又は他のゾーンが、任意の工程13で再度改善される。本発明は、乱視用レンズ及び多焦点レンズにおいて最大の有用性を見出すことができる。更に、設計は、特定の個体の角膜トポグラフィーに合わせてカスタマイズされたレンズ、高次波面収差補正を有するレンズ、又はその両方において有益である。好ましくは、本発明は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,652,638号、同第5,805,260号、及び同第6,183,082号に開示されているような乱視用レンズ又は乱視用多焦点レンズを安定化させるために用いられる。
【0037】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、高次眼収差、角膜トポグラフィーデータ、又はその両方の補正を取り入れてもよい。かかるレンズの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,305,802号及び同第6,554,425号に見出される。
【0038】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、美容上魅力的にするために、眼上で特定の方向に据えられる必要のある薄い色付きの模様等、美容的な特徴を取り入れてもよい。
【0039】
本発明のレンズは、メガネのレンズ、コンタクトレンズ、及び眼内レンズを非限定的に含む眼科用レンズを製造するのに好適な任意のレンズ成形材料から製造されてもよい。ソフトコンタクトレンズを形成するための例示的な材料は、例えば、限定することなく、シリコーンエラストマー、シリコーン含有マクロマー、例えば、限定することなく、米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号(これらは、本明細書において参照により全体が組み込まれる)に開示されているもの、ヒドロゲル、シリコーン含有ヒドロゲルなど、及びこれらの組み合わせである。より好ましくは、表面はシロキサンであるか、又はポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物、シリコーンヒドロゲル若しくはエタフィルコンAなどのヒドロゲルを含むがこれらに限定されないシロキサン官能基を含む。
【0040】
レンズ材料の硬化は、任意の好都合な方法で行うことができる。例えば、材料を型に入れ、熱、放射線、化学物質、電磁放射線硬化など、及びこれらの組み合わせによって硬化させることができる。好ましくは、コンタクトレンズの実施形態では、紫外線を使用して、又は可視光線のフルスペクトルを使用して成型が行われる。より具体的には、レンズ材料を硬化させるのに適した正確な条件は、選択した材料及び形成すべきレンズによって決定される。好適なプロセスは、米国特許第5,540,410号に開示されており、この文献は、本明細書において参照により全体が組み込まれている。
【0041】
本発明のコンタクトレンズは、任意の好都合な方法で製造され得る。このような方法の1つは、金型インサートを作製するために、VARIFORM(商標)アッタチメントを備えるOPTOFORM(商標)旋盤を使用する。この成型インサートを使用して型を作製する。その後、好適な液体樹脂を金型間に配置した後に、樹脂を圧縮及び硬化させて、本発明のレンズを形成する。当業者は、任意の多くの既知の方法を用いて本発明のレンズを製造することができることを認識するであろう。
【0042】
ここで、本発明について、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明することにする。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
既知の設計を有する、乱視患者の視力補正のためのコンタクトレンズが、図6に示される。これは、従来のレンズ設計ソフトウェアを使用して、次の入力設計パラメーターを用いて設計された。
度数:−3.00D
乱視度数:−0.75D
乱視軸:180度
レンズ直径:14.50mm
前方視覚ゾーンの直径8.50mm
後方視覚ゾーンの直径11.35mm
レンズのベースカーブ:8.50mm
中心部の厚さ:0.08mm
【0044】
使用された眼モデルのパラメーターは、表2A及び2Bに挙げられる。
【0045】
安定化ゾーンは、レンズの厚さプロファイルに追加される特別厚いゾーンである。初期安定化ゾーンは、厚さにおける半径及び角度の変化を記述する、正規化されたガウス関数の組み合わせを使用して構成される。極座標における安定化ゾーンのサグを記述する数式は、次のようになり、
【数17】
式中、Z0は、安定化ゾーンの最大規模であり、r0及びθ0は、ピークの半径位置及び角位置、σR及びσθは、半径方向及び角度方向における厚さプロファイルの変化を制御するパラメーターである。
【0046】
半径方向及び角度方向に沿う傾斜の変化は、対数正規ガウス分布を使用して得られる。式は、次のようになる。
【数18】
【0047】
安定化ゾーンを制御する設計パラメーターは、次のとおりである。
安定化ゾーンの規模における変化(Z0)。
0〜180度の経線に沿ったピーク位置の変化(r0)。
0〜180度の経線を角度的に囲むピーク位置の変化(θ0)。
ピーク位置の上及び下での傾斜の変化。
安定化ゾーンの角度長の変化(σθ)。
ピーク位置を中心に回転される安定化ゾーン。
0〜180度の経線に沿った安定化ゾーンの幅の変化(σR)。
【0048】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
Z0=0.25mm
r0=5.75mm
σR=0.50mm
θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
σθ=25.0度
【0049】
安定化ゾーンは、次いで、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。最終の最大レンズ厚は、0.38mmであった。プロファイルの図解は、図4に示される。安定化ゾーンは、ピーク高さから均一に低下する傾斜を有する垂直軸線及び水平軸線の両方に対称である。
【表2】
【表3】
【0050】
コンタクトレンズの回転及びセンタリングの特性は、表2に提供される初期パラメーターを用いて上述された眼モデルを使用して決定された。レンズの回転は、モデル化されるまばたきの回数が0から20へ進むにつれて、約45度から10度未満まで徐々に減少した。1〜20のまばたきの過程にわたって、センタリングは、約0.06mm〜0.08mmを少し上回るまでに、比較的安定して留まった。先行技術のレンズに適用される、式1によって定義されるメリット関数の結果の値は、WR=WC=1.0で、1.414であった。この実施例は、眼上での方向の維持が、前面の周辺上の陥凹又は隆起を使用して達成される場合に、これらのパラメーターのレンズによって達成される、回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0051】
(実施例2)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転及びセンタリングに対する同一重量、WR=WC=1.0。
【0052】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
− σθ=25.0度
【0053】
安定化ゾーンは、次いで、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。
【0054】
安定化ゾーンは、レンズ性能特性が、その初期設計に有意な改善を示すまで、ピーク位置を中心に回転された。回転は、元の安定化ゾーン座標に座標変換(ピーク位置を中心とする回転)を適用することによって得られ、
【数19】
式中、(x0,y0)は元の座標であり、(x,y)が新しい座標であり、αが回転の角度である。
【0055】
改善された安定化設計は、図5に示されるように、安定化の上部がレンズの中心に向かって方向付けされた状態で、安定化ゾーンの最終方向が垂直軸線から10.0度離れている場合に得られた。更に、安定化ゾーンは、水平軸線に対して対称ではない。この場合において、各ゾーンの長さの大半は、水平軸線上にある。メリット関数の最終値は、0.58であった。メリット関数上の改善は、およそ59%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、急激に降下した。同一範囲のまばたきで、約40〜25度の回転が見られた初期設計と比較すると、まばたき4の開始時においては30度未満の回転が見られ、まばたき12以降は回転が見られなかった。センタリングは、同一回数のまばたきサイクルで、0.06から0.08を超える初期設計と比較して、改善された設計においては、まばたき1において0.04mm未満に留まり、その後は0.03未満に留まった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0056】
(実施例3)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転及びセンタリングに対する同一重量、WR=WC=1.0。
【0057】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
− σθ=25.0度
【0058】
安定化ゾーンは、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。
【0059】
改善された安定化設計は、図6に示されるように、安定化ゾーンの最終方向が、安定化ゾーンのピーク位置がレンズの幾何学的中心から、0〜180度の経線を角度的に囲んで変化されるような場合に得られた。安定化ゾーンは、もはや水平軸線に対して対称ではなく、それらのゾーンの傾斜の変化率は、0〜180の経線から離れる方向によって異なる。メリット関数の最終値は0.64であった。メリット関数上の改善は、およそ55%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、急激に降下した。同一のまばたき範囲で初期設計において見られる約40〜30〜15度の回転と比較すると、まばたき4の開始時において、30度未満の回転が見られ、約10度の回転がまばたき10で見られ、まばたき16以降は回転が見られなかった。センタリングは、まばたき1で0.06mm未満であり、まばたき4では0.04未満であった。その後、急激に下落し、同一回数のまばたきサイクルで0.06超から0.07超、及び0.08超であった初期設計と比較すると、8回のまばたきで0.02未満、まばたき16では0であった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0060】
(実施例4)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転に対する重量WR=0.84、センタリングに対する重量WC=1.14。
【0061】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=1.954
− σθ=0.14
【0062】
安定化ゾーンは、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。安定化ゾーンが、ピーク位置の周囲の傾斜を変更するために調整された。ピーク位置は、図7に示されるように、0〜180度の経線上に留まる。安定化ゾーンは、水平軸線に対して対称ではなく、それらのゾーンの傾斜の変化率は、ピーク高さから離れる方向によって異なる。これは、レンズの底部に向かう傾斜においてより緩やかな降下を有するこの事例において顕著である。傾斜の変化は、厚さの変化を角度的に記述する対数正規ガウス分布関数を使用して得られた。メリット関数の最終値は0.86であった。メリット関数上の改善は、およそ30%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、緩やかに降下した。同一範囲のまばたきで、約38〜30〜15度の回転が見られた初期設計と比較すると、まばたき6の開始時においては、30度未満の回転が見られ、まばたき12では約10度の回転が見られ、まばたき16以降は回転が見られなかった。センタリングは、まばたき1において、0.08mm未満であり、まばたき4では0.07未満であった。その後、急激に下落し、同一回数のまばたきサイクルで0.06から0.07超、及び0.08である初期設計と比較すると、8回のまばたきで0.05未満、まばたき16では0.04であった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0063】
図8は、実施例1、2、3、及び4の眼上のレンズ方向に対する回転速度を要約する。実施例1に説明された初期設計は、45°〜0°の誤方向範囲において約−0.55°/秒の平均回転速度を有し、一方で、実施例2、3、及び4において得られた設計は、同一の誤方向範囲内で、−0.70°/秒を超える平均回転速度を有する。実施例2及び4は、15°より低い誤方向に対してより高い回転速度を有する。いずれの設計も、高次収差補正のために設計されるソフトコンタクトレンズ等、眼上での単一方向性を必要とするレンズにとってより適切である。これらの設計は、患者のレンズ挿入を補助するために、前面上に特別な基準を要する、異なる適合方法を必要とする場合がある。レンズの眼上での方向は、安定化の非対称に起因して、前面の印のために固有であるため、挿入時のレンズの方向は、レンズがその静止位置に達した後のレンズの最終位置と非常に近い。挿入時の、低い誤方向に対する高い回転速度は、より速い完全な視力補正を提供するであろう。それらの設計はまた、実施例3の設計において、より良いセンタリング性能を提示する。レンズのセンタリングは、少ない回数のまばたきの間に安定する。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズであって、運動量モーメントが平衡される、コンタクトレンズ。
(2) 安定化ゾーンが、その長さの大半を前記レンズの水平軸線の下に位置して有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 安定化ゾーンが、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 安定化ゾーンが、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記レンズ中心から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、前記レンズ中心から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは異なる、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(6) 経線に沿う前記レンズ縁部から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、経線に沿う前記レンズ縁部から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは同一ではない、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
【背景技術】
【0001】
特定の視覚欠損は、円筒型、二焦点、若しくは多焦点の特性等の、非球状補正物の態様をコンタクトレンズの1つ又は2つ以上の面に応用することで補正可能である。これらのレンズが効果的であるためには、眼上にある間、概して特定の方向で維持される必要がある。レンズの眼上での方向の維持は通常、レンズの機械的特性を変えることによって行われる。レンズの後面に対する前面の偏心、下方レンズ周辺部の厚さの増大、レンズ表面上における俯角又は仰角の形成、及びレンズ縁部の切断を含むプリズムの安定化が、安定化アプローチの例である。更に、薄いゾーン、又は、レンズ周辺部の厚さが減少する領域を使用することによってレンズを安定化させる動的安定化が用いられている。通常、薄いゾーンは、その眼上配置の観点から、レンズの垂直軸線又は水平軸線のいずれかに対して対称である2つの領域に位置付けられる。
【0002】
レンズ設計を評価することは、眼上でのレンズの性能に関して判断すること、並びにその後、必要かつ可能な場合に、その設計を最適化することを伴う。このプロセスは、通常、試験設計を患者において臨床的に評価することによって行われる。しかしながら、このプロセスは、患者間の変動性が考慮されなければならないために、かなりの数の患者が試験される必要があるため、時間と費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定のコンタクトレンズの安定化を改善する継続的必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズである。
【0005】
本発明の別の態様において、コンタクトレンズを安定化させる方法は、安定化ゾーンパラメーターの公称セット、レンズ設計の眼上での性能を評価すること、この性能に基づいてメリット関数を計算すること、及びメリット関数を適用することによって安定化ゾーンパラメーターを最適化すること、を取り入れる。このプロセスは、まばたき等の眼構造の影響をシミュレートする、仮想モデル(例えば、ソフトウェアベースの)を介して反復的に実行され得、安定化スキームを適宜調整する。
【0006】
本発明の更に別の態様において、コンタクトレンズは、眼上のレンズ上で作用するトルクの運動量モーメントが平衡されるスキームに従って安定化される。
【0007】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、レンズの残りのゾーンとは異なる厚さを有する1つ又は2つ以上のゾーンの形成によって安定化され、これらのゾーンは、レンズが眼上にあるときにレンズ上で作用するトルクの運動量モーメントが平衡されるように、位置付けられる。
【0008】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、安定化ゾーンを有し、その長さの大半はレンズの水平軸線の下にある。
【0009】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する。
【0010】
本発明の更に別の実施形態において、コンタクトレンズは、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】安定化コンタクトレンズの正面図又はオブジェクト図。
【図2A】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2B】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2C】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図3】本発明に従う安定化の最適化プロセスを示す、フローチャート。
【図4A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図4B】実施例1に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図4C】実施例1に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図5A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図5B】実施例2に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図5C】実施例2に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図6A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図6B】実施例3に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図6C】実施例3に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図7A】安定化ゾーンを有する安定化レンズの正面図。
【図7B】実施例4に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図7C】実施例4に対応する、円周方向厚さ及び半径方向厚さのグラフ。
【図8】回転速度の測定を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明のコンタクトレンズは、レンズ上で作用する様々な力の平衡をとることに基づいて安定化を最適化する設計を有する。これは、眼上で働くトルク、眼の構成要素、及び最終的には眼上に配置される安定化レンズの平衡をとる設計プロセスの適用を伴う。好ましくは、改善された安定化は、安定化の要素を含む公称設計を有する改善プロセスの開始によって実現される。例えば、中心を通る水平軸線及び垂直軸線の両方に対して対称である2つの安定化ゾーンを有するレンズ設計は、本発明の方法に従ってレンズの安定化を最適化するために、有用な参照である。「安定化ゾーン」とは、周辺ゾーンのその他の領域の厚さよりも大きな厚さ値を有するレンズの周辺ゾーンの領域を意味する。「周辺ゾーン」とは、レンズの視覚ゾーンを周囲方向に囲み、レンズの縁部は含まずに、そこまで延在するレンズ表面の領域を意味する。安定化ゾーンを有しない周辺ゾーンは通常、回転対称面、好ましくは球面を備えるであろう。有用な開始点である別の安定化設計は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050237482号に記載されるが、いずれの安定化設計も、後に本発明に従って最適化される、公称設計として使用され得る。安定化設計の改善プロセスはまた、以下に記載される眼モデルを用いて改善を試験すること、試験の結果を評価すること、及び所望のレベルの安定化が達成されるまで改善プロセスを反復して継続することを取り入れることができる。
【0013】
図1は、安定化レンズの前面、又はオブジェクト側面を描写する。レンズ10は、視覚ゾーン11を有する。レンズの周辺部は、視覚ゾーン11を囲む。2つの厚い領域12が、周辺部に位置付けられており、これらが安定化ゾーンである。
【0014】
本プロセスにおいて、新しい設計を製造するために使用されることが好ましいモデルは、機械的操作及びレンズ安定性への効果をシミュレートする、様々な要因及び想定を取り入れる。好ましくは、このモデルは、よく知られているプログラミング技術に従って、標準的なプログラミング及びコーディング技術を使用する、ソフトウェアまで単純化される。概観として、本モデルは、眼の規定数のまばたきの以下に説明される力の適用をシミュレートすることによって、安定化レンズを設計するためのプロセスで使用される。レンズが回転及び偏心する角度は、適宜決定される。設計は、次いで、回転及び/又はセンタリングをより望ましいレベルにすることを目的とする手法で変えられる。次いで、所定数のまばたき後のまばたき時の並進を判定するために、再度モデルにかけられる。設計の改変は、以下により詳細に記載されるメリット関数の適用によって達成される。
【0015】
モデルは、眼が、好ましくは角膜及び強膜を表す少なくとも2つの球面部からなり、x−y−z座標軸の原点が、角膜を表す球体の中心にあることを想定する。非球面等のより複雑な表面もまた、使用され得る。レンズのベース形状は球面部からなるが、レンズのベースカーブ半径は、レンズの中心から縁部に向かって変化することが可能である。2つ以上のベースカーブが、後面を描くために使用されてもよい。眼上に位置されるレンズは、眼のものと同一の形状をとることが想定される。レンズの厚さ分布は、必ずしも回転対称である必要はなく、実際に、本発明のレンズの幾つかの好ましい実施形態によると対称的ではない。レンズ縁部の厚いゾーンが、レンズの位置挙動及び方向挙動を制御するために使用されてもよい。均一の薄い液体被膜(涙液膜)が、通常の厚さが1〜7μm、好ましくは5μmで、レンズと眼との間に存在する。この涙液膜は、レンズ後方涙液膜と呼ばれる。レンズ縁部では、レンズと眼との間の液膜の厚さはより小さく、ムチン涙液膜と称される。通常の厚さが1〜10μm、好ましくは5.0μmの均一の薄い液体被膜(また、涙液膜)が、レンズと下瞼及び上瞼との間に存在し、これらはレンズ前方涙液膜と称される。下瞼及び上瞼の両方の境界は、x−y平面内の単位法線ベクトルを有する平面内にある。したがって、z軸線に垂直な平面上のこれらの境界の射影は、直線である。この想定はまた、瞼の動作中にもなされる。上瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この均一圧力は、上瞼によって被覆されるコンタクトレンズの全域又は上瞼の境界付近のこの領域の一部に、均一幅でかけられる(平面に対して垂直な方向で、瞼の縁部を描く曲線を通して測定される)。下瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この圧力は、下瞼によって被覆されるコンタクトレンズの全域にかけられる。瞼によってコンタクトレンズにかけられる圧力は、コンタクトレンズの、特に縁部付近の不均一な厚さ分布(厚いゾーン)を通してレンズで作用するトルクに貢献する。コンタクトレンズで作用するトルクに対するこの圧力効果は、メロンの種効果(melon seed effect)と称される。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦がレンズ後方涙液膜内に存在する。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦はまた、レンズ縁部と眼との間のムチン涙液膜内にも存在する。更に、粘性摩擦は、レンズが動く及び/又は瞼が動く場合に、レンズ前方涙液膜内に存在する。レンズ内の負担及び圧迫は、レンズの変形に起因して起こる。これらの負担及び圧迫は、レンズの弾性エネルギー量に繋がる。レンズが眼に対して動き、レンズの変形が変化するにつれて、弾性エネルギー量が変化する。レンズは、弾性エネルギー量が最小である位置にある傾向がある。
【0016】
眼の形状(角膜及び強膜)、レンズのベース形状、及び瞼の動作を示すパラメーターが、図2に示される。レンズの動作は、レンズで作用する運動量モーメントの平衡から得られる。慣性効果は無視される。次いで、レンズで作用するすべてのモーメントの合計はゼロになる。したがって、次のようになる。
【数1】
【0017】
最初の4つのモーメントは、トルクに抵抗しており、レンズの動作に直線的に依存する。残りのトルクは駆動トルクである。運動量モーメントのこの平衡は、レンズの位置βに対する非線形一次微分方程式をもたらす。
【数2】
【0018】
この等式は、4次ルンゲ・クッタ積分スキームを用いて解かれる。コンタクトレンズ上の点の位置は、回転ベクトルβ(t)周辺の回転から得られる。点の古い位置を現在の位置に変換する回転マトリックスR(t)は、ロドリゲスの公式から得られ、
【数3】
式中、
【数4】
である。
【0019】
数値積分法において、時間離散化が使用される。次いで、レンズの動作は、多数の後続回転として見ることができ、したがって、次の時間工程
【数5】
において、回転マトリックスは次のようになり、
【数6】
式中、
【数7】
が、時間ステップ
【数8】
の間の回転である。
【0020】
回転マトリックスは、レンズの回転
【数9】
及び偏心
【数10】
に分解される。
【数11】
【0021】
レンズの回転は、レンズの中心線を中心とした回転である。偏心は、(x,y)平面内の線を中心とした回転である。したがって、レンズの位置は、偏心
【数12】
に続く、中心線を中心としたレンズの回転
【数13】
として見られる。
【0022】
本発明の好ましい方法において、これらの関係に基づくメリット関数(MF)は、調整されるように構築され、そうすることで公称設計の安定化スキームを改善する。これらのメリット関数は、レンズの眼上での性能要件に基づいて定義される。好ましい実施形態において、メリット関数は、a)レンズの回転及びセンタリング性能(式1)、b)静止位置の周囲におけるレンズの安定性(式2)、又はc)レンズの回転及びセンタリング性能、並びに静止位置の周囲におけるレンズの安定性(式3)、を定義するが、これらに限定されない。
【数14】
【0023】
レンズの回転とは、まばたきの最中及びその合間に起こる、z軸線を中心としたレンズの角運動を意味する。回転は、眼上でのレンズの初期位置、あるいは眼上でモデル化される際のレンズの具合によって、時計回り又は反時計回りであり得る。
【0024】
レンズのセンタリングとは、レンズの幾何学的中心と角膜頂点との間の距離を意味する。センタリングは、角膜頂点の平面内のx−y座標系に記録される。
【0025】
レンズの安定性とは、水平方向(x軸線)及び垂直方向(y軸線)における最大のレンズ移動の量、並びにまばたき周期の間のレンズの回転の量を意味する。レンズの安定性は、好ましくは、レンズがその最終位置に達した後に、レンズの誤方向及び偏心が記録されない。
【0026】
メリット関数の目的及び適用の例示として式1を使用して、Rot及びCentはそれぞれ、最適化されるべきレンズ設計の回転及びセンタリングにおけるレンズ性能を示す。RREF及びCREFは、初期レンズ設計の回転及びセンタリングにおける、レンズ性能を示す変数である。WR及びWCは、1つの係数の、他の係数に対する寄与の調整を可能にする2つの重み係数であり、0〜1の値をとることができる。適用される際、以下に例示されるように、これらの関数は、数値的に解かれるのが最良である。重み係数は、目的の構成要素が十分に考慮されるように適用される。それらは、均等であってもよく、あるいは1つの構成要素が、別のものより注目されてもよい。したがって、例えば、1つがセンタリングよりも回転を最適化することに関連する場合、それらはWCよりも大きいWRを選択することになる。安定化設計は、そのメリット関数が、この構成下において先行する設計に対して減少される場合に、改善される。更に、それは、このような場合においてメリット関数が最小化される際、最適化される。もちろん、安定化以外の理由から、1つのレンズ設計が別のものより好ましい場合があるため、改善された安定化は、必ずしも本設計の安定化の態様を最適化することなく、依然として本発明に従って取り組まれ得る。
【数15】
【0027】
式2において、XRange、YRange、及びθRangeは、最適化されるように設計されるレンズの水平方向、垂直方向、及び回転の安定性におけるレンズ性能を示し、XREF、YREF、及びθREFは、初期レンズ設計の水平方向、垂直方向、及び回転の安定性におけるレンズ性能であり、WX、WY及びWθは、それぞれに対して係数の寄与の調整を可能にする重み係数である。
【数16】
【0028】
式3において、Rot、Cent、及びStabは、最適化されるべきレンズ設計の回転、センタリング、及び安定性におけるレンズの性能を示し、RREF、CREF、及びSREFは、初期レンズ設計の回転、センタリング、及び安定性におけるレンズの性能であり、RREF、CREF、及びSREFは、それぞれに対して係数の寄与の調整を可能にする重み係数である。
【0029】
別の実施形態において、メリット関数は、着用の快適性を含み、更に、安定化ゾーンの体積、安定化ゾーンの表面積、ソフトコンタクトレンズ着用者の安全化ゾーンに対する自覚、又は任意の他の関連基準を含むことができる。
【0030】
更に好ましい実施形態において、メリット関数は、次のパラメーターから、上述のものと同一方式で定義される。
− 回転性能:
− 回転曲線反応の下の表面積
− ±5.0度以内の回転において、静止位置に達するまでの時間
− 初期回転速度
− センタリング性能:
− センタリング曲線反応の下の表面積
− センタリングにおいて、静止位置に達するまでの時間
− 最終静止位置に達するまでの最初の時間
− センタリング速度
− 安定性性能:
− 水平方向の移動の規模
− 垂直方向の移動の規模
− 回転の規模
− 水平移動の持続時間
− 垂直移動の持続時間
− 回転の持続時間
− 着用の快適性:
− 安定化ゾーンを形成するための超過材料の容積
− 安定化ゾーンによって覆われる表面積
− レンズ着用者の安定化ゾーンに対する自覚
【0031】
本方法によって製造され得る安定化の種類に制限はない。安定化ゾーンは、次の種類であってもよい。
− X及びY軸線に対して対称
− X又はY軸線に対して対称
− X及びY軸線の両方に対して非対称
− 一定の半径方向距離
− 可変の半径方向距離
【0032】
様々な安定化ゾーンパラメーターは、最適化の際に評価され得、次のものを含むが、それらに限定されない:ゾーンの長さ、ピーク厚の位置、ピークのいずれかの側面上の傾斜面角度、ゾーンの円周方向傾斜、及びゾーンの幅。最適化パラメーターもまた、レンズ直径、ベースカーブ、厚さ、視覚ゾーン直径、周辺ゾーン幅、材料特性、及びレンズの特徴を示す他のパラメーターを含むことができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、二種類の改善アプローチが開示される。1つ目において、完全な最適化は、MFによって誘導される安定化調整の既定の反復を有する眼上挙動モデルが、レンズがその静止位置に達するまで、幾つかのまばたきサイクルを必要とするところで、実行される。別の実施形態において、設計は、所定数のまばたきサイクルの間に改善される。有意義な安定化改善を提供するのに効果的であるには、3回のまばたきサイクルが、ほぼ最小である。いずれの場合でも、プロセスは、MFの公称設計への適用を用いて、反復的に実行される。3回のまばたきサイクルが使用される場合においては、初期のまばたきは、水平からの角度αでレンズを配向し、中間のまばたきは、レンズが水平から角度βで配向され、そして最終のまばたきは、レンズが静止位置に位置される。最も好ましい実施形態において、角度αは45度に設定され、角度βは22度に設定される(しかし、いずれの角度もこれらの値に限定されない)。別の実施形態において、最適化のプロセスは、両アプローチの組み合わせであり、減少された数のまばたきサイクルが、中間解に達するために事前に使用され、次いで数回のまばたきサイクルが、最適化が許容角度で実行されたことを確認するために使用される。
【0034】
図3は、この改善プロセスのフローチャートを示す。初期安定化ゾーン設計は、既存の設計又は新しい設計のどちらかであってもよい。これらの設計からの安定化ゾーンパラメーターが決定される。これらのパラメーターは、パラメーターがそれらの初期値周辺で修正される際に、設計性能を計算することから得られる。レンズの性能に最多の変化をもたらすパラメーターは、好ましくは最適化プロセスに対して選択される。工程1において、安定化ゾーンパラメーターは、検討のために選択される。これらは、例えば、とりわけ、安定化ゾーンの規模(Z0)、0〜180度の経線に沿うピーク位置(r0)、0〜180度の経線を角度的に囲むピーク位置(θ0)、ピーク位置の上及び下の傾斜、安定化ゾーンの角度長(σθ)、ピーク位置を中心に回転される安定化ゾーン、並びに安定化ゾーンの幅(σR)を含むことができる。
【0035】
工程2において、レンズは、初期設計又は公称設計に達するために、安定化ゾーンパラメーターに関して数学的に定義される。安定化ゾーンを記述する数学的関数の種類に制限はない。安定化ゾーンはまた、CADアプリケーション等、コンピュータ処理のソフトウェアを使用して記述されてもよい。(定義されたパラメーターを用いて)数学的に記述された設計は、工程3で眼モデルに入れられ、回転、センタリング、及び安定性のデータが、表1に示されるように生成される)。このデータは、次いで、安定化パラメーターのうちの1つ又は2つ以上を修正するために、任意の工程4で使用されてもよい。
【表1】
【0036】
安定化ゾーンは、再成形、拡大縮小、回転、転換によって、又は現在の設計を修正するための任意の他の技術を使用することによって修正される。工程5a〜5dにおいて、修正された安定化パラメーターは、ここで修正された設計のそれぞれに対する回転、センタリング、及び安定性データを生成するために、再度眼モデルを通される。対応する工程6a〜6dのそれぞれの場合において、メリット関数が作成され、レンズが(好ましくは回転を通じて)操作されるにつれて、工程7及び8において新しい回転、センタリング、及び安定性のデータを生成するために、それぞれの新しい設計に適用される。更に、各反復において、メリット関数は、工程9で計算され、工程10において、それらが減少しているかどうかを確認する。減少は、前回の反復を超える改善である。メリット関数が減少しなかった場合は、次いで、安定化パラメーターが任意の工程11で再度修正されてもよく、結果の修正されたレンズ設計が、次いで選択工程7及びデータ生成工程8に戻される。メリット関数が減少した場合、それは安定化における改善を示し、レンズ設計は、最終設計(工程12)であると決定されるか、又は他のゾーンが、任意の工程13で再度改善される。本発明は、乱視用レンズ及び多焦点レンズにおいて最大の有用性を見出すことができる。更に、設計は、特定の個体の角膜トポグラフィーに合わせてカスタマイズされたレンズ、高次波面収差補正を有するレンズ、又はその両方において有益である。好ましくは、本発明は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,652,638号、同第5,805,260号、及び同第6,183,082号に開示されているような乱視用レンズ又は乱視用多焦点レンズを安定化させるために用いられる。
【0037】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、高次眼収差、角膜トポグラフィーデータ、又はその両方の補正を取り入れてもよい。かかるレンズの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,305,802号及び同第6,554,425号に見出される。
【0038】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、美容上魅力的にするために、眼上で特定の方向に据えられる必要のある薄い色付きの模様等、美容的な特徴を取り入れてもよい。
【0039】
本発明のレンズは、メガネのレンズ、コンタクトレンズ、及び眼内レンズを非限定的に含む眼科用レンズを製造するのに好適な任意のレンズ成形材料から製造されてもよい。ソフトコンタクトレンズを形成するための例示的な材料は、例えば、限定することなく、シリコーンエラストマー、シリコーン含有マクロマー、例えば、限定することなく、米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号(これらは、本明細書において参照により全体が組み込まれる)に開示されているもの、ヒドロゲル、シリコーン含有ヒドロゲルなど、及びこれらの組み合わせである。より好ましくは、表面はシロキサンであるか、又はポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物、シリコーンヒドロゲル若しくはエタフィルコンAなどのヒドロゲルを含むがこれらに限定されないシロキサン官能基を含む。
【0040】
レンズ材料の硬化は、任意の好都合な方法で行うことができる。例えば、材料を型に入れ、熱、放射線、化学物質、電磁放射線硬化など、及びこれらの組み合わせによって硬化させることができる。好ましくは、コンタクトレンズの実施形態では、紫外線を使用して、又は可視光線のフルスペクトルを使用して成型が行われる。より具体的には、レンズ材料を硬化させるのに適した正確な条件は、選択した材料及び形成すべきレンズによって決定される。好適なプロセスは、米国特許第5,540,410号に開示されており、この文献は、本明細書において参照により全体が組み込まれている。
【0041】
本発明のコンタクトレンズは、任意の好都合な方法で製造され得る。このような方法の1つは、金型インサートを作製するために、VARIFORM(商標)アッタチメントを備えるOPTOFORM(商標)旋盤を使用する。この成型インサートを使用して型を作製する。その後、好適な液体樹脂を金型間に配置した後に、樹脂を圧縮及び硬化させて、本発明のレンズを形成する。当業者は、任意の多くの既知の方法を用いて本発明のレンズを製造することができることを認識するであろう。
【0042】
ここで、本発明について、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明することにする。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
既知の設計を有する、乱視患者の視力補正のためのコンタクトレンズが、図6に示される。これは、従来のレンズ設計ソフトウェアを使用して、次の入力設計パラメーターを用いて設計された。
度数:−3.00D
乱視度数:−0.75D
乱視軸:180度
レンズ直径:14.50mm
前方視覚ゾーンの直径8.50mm
後方視覚ゾーンの直径11.35mm
レンズのベースカーブ:8.50mm
中心部の厚さ:0.08mm
【0044】
使用された眼モデルのパラメーターは、表2A及び2Bに挙げられる。
【0045】
安定化ゾーンは、レンズの厚さプロファイルに追加される特別厚いゾーンである。初期安定化ゾーンは、厚さにおける半径及び角度の変化を記述する、正規化されたガウス関数の組み合わせを使用して構成される。極座標における安定化ゾーンのサグを記述する数式は、次のようになり、
【数17】
式中、Z0は、安定化ゾーンの最大規模であり、r0及びθ0は、ピークの半径位置及び角位置、σR及びσθは、半径方向及び角度方向における厚さプロファイルの変化を制御するパラメーターである。
【0046】
半径方向及び角度方向に沿う傾斜の変化は、対数正規ガウス分布を使用して得られる。式は、次のようになる。
【数18】
【0047】
安定化ゾーンを制御する設計パラメーターは、次のとおりである。
安定化ゾーンの規模における変化(Z0)。
0〜180度の経線に沿ったピーク位置の変化(r0)。
0〜180度の経線を角度的に囲むピーク位置の変化(θ0)。
ピーク位置の上及び下での傾斜の変化。
安定化ゾーンの角度長の変化(σθ)。
ピーク位置を中心に回転される安定化ゾーン。
0〜180度の経線に沿った安定化ゾーンの幅の変化(σR)。
【0048】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
Z0=0.25mm
r0=5.75mm
σR=0.50mm
θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
σθ=25.0度
【0049】
安定化ゾーンは、次いで、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。最終の最大レンズ厚は、0.38mmであった。プロファイルの図解は、図4に示される。安定化ゾーンは、ピーク高さから均一に低下する傾斜を有する垂直軸線及び水平軸線の両方に対称である。
【表2】
【表3】
【0050】
コンタクトレンズの回転及びセンタリングの特性は、表2に提供される初期パラメーターを用いて上述された眼モデルを使用して決定された。レンズの回転は、モデル化されるまばたきの回数が0から20へ進むにつれて、約45度から10度未満まで徐々に減少した。1〜20のまばたきの過程にわたって、センタリングは、約0.06mm〜0.08mmを少し上回るまでに、比較的安定して留まった。先行技術のレンズに適用される、式1によって定義されるメリット関数の結果の値は、WR=WC=1.0で、1.414であった。この実施例は、眼上での方向の維持が、前面の周辺上の陥凹又は隆起を使用して達成される場合に、これらのパラメーターのレンズによって達成される、回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0051】
(実施例2)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転及びセンタリングに対する同一重量、WR=WC=1.0。
【0052】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
− σθ=25.0度
【0053】
安定化ゾーンは、次いで、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。
【0054】
安定化ゾーンは、レンズ性能特性が、その初期設計に有意な改善を示すまで、ピーク位置を中心に回転された。回転は、元の安定化ゾーン座標に座標変換(ピーク位置を中心とする回転)を適用することによって得られ、
【数19】
式中、(x0,y0)は元の座標であり、(x,y)が新しい座標であり、αが回転の角度である。
【0055】
改善された安定化設計は、図5に示されるように、安定化の上部がレンズの中心に向かって方向付けされた状態で、安定化ゾーンの最終方向が垂直軸線から10.0度離れている場合に得られた。更に、安定化ゾーンは、水平軸線に対して対称ではない。この場合において、各ゾーンの長さの大半は、水平軸線上にある。メリット関数の最終値は、0.58であった。メリット関数上の改善は、およそ59%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、急激に降下した。同一範囲のまばたきで、約40〜25度の回転が見られた初期設計と比較すると、まばたき4の開始時においては30度未満の回転が見られ、まばたき12以降は回転が見られなかった。センタリングは、同一回数のまばたきサイクルで、0.06から0.08を超える初期設計と比較して、改善された設計においては、まばたき1において0.04mm未満に留まり、その後は0.03未満に留まった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0056】
(実施例3)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転及びセンタリングに対する同一重量、WR=WC=1.0。
【0057】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=左及び右の安定化ゾーンに対して、それぞれ180度及び0度
− σθ=25.0度
【0058】
安定化ゾーンは、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。
【0059】
改善された安定化設計は、図6に示されるように、安定化ゾーンの最終方向が、安定化ゾーンのピーク位置がレンズの幾何学的中心から、0〜180度の経線を角度的に囲んで変化されるような場合に得られた。安定化ゾーンは、もはや水平軸線に対して対称ではなく、それらのゾーンの傾斜の変化率は、0〜180の経線から離れる方向によって異なる。メリット関数の最終値は0.64であった。メリット関数上の改善は、およそ55%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、急激に降下した。同一のまばたき範囲で初期設計において見られる約40〜30〜15度の回転と比較すると、まばたき4の開始時において、30度未満の回転が見られ、約10度の回転がまばたき10で見られ、まばたき16以降は回転が見られなかった。センタリングは、まばたき1で0.06mm未満であり、まばたき4では0.04未満であった。その後、急激に下落し、同一回数のまばたきサイクルで0.06超から0.07超、及び0.08超であった初期設計と比較すると、8回のまばたきで0.02未満、まばたき16では0であった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0060】
(実施例4)
新しい安定化ゾーンは、上述の眼モデル及び最適化方法、並びに実施例1に説明された初期設計を使用して設計された。メリット関数は、以下を使用して定義された。
− 回転における反応の下の表面積。
− センタリングにおける反応の下の表面積。
− 回転に対する重量WR=0.84、センタリングに対する重量WC=1.14。
【0061】
初期安定化ゾーンは、次の値から構築された。
− Z0=0.25mm
− r0=5.75mm
− σR=0.50mm
− θ0=1.954
− σθ=0.14
【0062】
安定化ゾーンは、元のレンズの厚さプロファイルに追加された。安定化ゾーンが、ピーク位置の周囲の傾斜を変更するために調整された。ピーク位置は、図7に示されるように、0〜180度の経線上に留まる。安定化ゾーンは、水平軸線に対して対称ではなく、それらのゾーンの傾斜の変化率は、ピーク高さから離れる方向によって異なる。これは、レンズの底部に向かう傾斜においてより緩やかな降下を有するこの事例において顕著である。傾斜の変化は、厚さの変化を角度的に記述する対数正規ガウス分布関数を使用して得られた。メリット関数の最終値は0.86であった。メリット関数上の改善は、およそ30%であった。回転は、初期安定化設計と比較して、緩やかに降下した。同一範囲のまばたきで、約38〜30〜15度の回転が見られた初期設計と比較すると、まばたき6の開始時においては、30度未満の回転が見られ、まばたき12では約10度の回転が見られ、まばたき16以降は回転が見られなかった。センタリングは、まばたき1において、0.08mm未満であり、まばたき4では0.07未満であった。その後、急激に下落し、同一回数のまばたきサイクルで0.06から0.07超、及び0.08である初期設計と比較すると、8回のまばたきで0.05未満、まばたき16では0.04であった。この実施例は、実施例1のレンズと比較して、改善された回転、センタリング、及び安定性を示す。
【0063】
図8は、実施例1、2、3、及び4の眼上のレンズ方向に対する回転速度を要約する。実施例1に説明された初期設計は、45°〜0°の誤方向範囲において約−0.55°/秒の平均回転速度を有し、一方で、実施例2、3、及び4において得られた設計は、同一の誤方向範囲内で、−0.70°/秒を超える平均回転速度を有する。実施例2及び4は、15°より低い誤方向に対してより高い回転速度を有する。いずれの設計も、高次収差補正のために設計されるソフトコンタクトレンズ等、眼上での単一方向性を必要とするレンズにとってより適切である。これらの設計は、患者のレンズ挿入を補助するために、前面上に特別な基準を要する、異なる適合方法を必要とする場合がある。レンズの眼上での方向は、安定化の非対称に起因して、前面の印のために固有であるため、挿入時のレンズの方向は、レンズがその静止位置に達した後のレンズの最終位置と非常に近い。挿入時の、低い誤方向に対する高い回転速度は、より速い完全な視力補正を提供するであろう。それらの設計はまた、実施例3の設計において、より良いセンタリング性能を提示する。レンズのセンタリングは、少ない回数のまばたきの間に安定する。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズであって、運動量モーメントが平衡される、コンタクトレンズ。
(2) 安定化ゾーンが、その長さの大半を前記レンズの水平軸線の下に位置して有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 安定化ゾーンが、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 安定化ゾーンが、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記レンズ中心から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、前記レンズ中心から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは異なる、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(6) 経線に沿う前記レンズ縁部から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、経線に沿う前記レンズ縁部から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは同一ではない、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズであって、運動量モーメントが平衡される、コンタクトレンズ。
【請求項2】
安定化ゾーンが、その長さの大半を前記レンズの水平軸線の下に位置して有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
安定化ゾーンが、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
安定化ゾーンが、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記レンズ中心から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、前記レンズ中心から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは異なる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
経線に沿う前記レンズ縁部から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、経線に沿う前記レンズ縁部から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは同一ではない、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項1】
公称安定化設計に対して、安定化を改善して設計されたコンタクトレンズであって、運動量モーメントが平衡される、コンタクトレンズ。
【請求項2】
安定化ゾーンが、その長さの大半を前記レンズの水平軸線の下に位置して有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
安定化ゾーンが、一方向において、他の方向に対してとは異なる比率の(その頂点からの)傾斜の変化を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
安定化ゾーンが、水平軸線の上で、水平軸線の下とは異なる高さプロファイルを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記レンズ中心から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、前記レンズ中心から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは異なる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
経線に沿う前記レンズ縁部から安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿う1つの点までの距離が、経線に沿う前記レンズ縁部から同一の安定化ゾーンの最厚部の輪郭に沿うもう1つの点までの距離とは同一ではない、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【公表番号】特表2013−515279(P2013−515279A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544883(P2012−544883)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060990
【国際公開番号】WO2011/084678
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510294139)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060990
【国際公開番号】WO2011/084678
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510294139)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
【Fターム(参考)】
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