説明

コンテナ

【課題】 開口部寸法、内法寸法、内容積を大きく損うことなく、かつ、自重が大きく増大することもなく、防振性、経済性に優れる一般雑貨用のコンテナを提供する。
【解決手段】 浮床18は、汎用コンテナと共通する床梁構造12に支持される防振材保持部材14と、防振材保持部材14に鉛直下方から保持される複数の防振材16とによって、床梁構造12に対し下方からフローティング支持される。よって、浮床18に載置される貨物への振動の伝達を防ぐことが出来る。また、複数の防振材16は、各防振材16が浮床18から受ける荷重が等分布となる位置に配置されていることから、浮床18の全体にわたり、均一な防振機能を発揮させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振機能を備えたコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般雑貨用コンテナ(汎用コンテナ)が、様々な貨物の輸送に広く用いられている。この汎用コンテナは、周知のように、所定の外形寸法に形成された密閉性を有する荷箱であり、貨物の荷役性を考慮して、2方向の開口を備えるものが多い(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】「MONTHLY かもつ」,社団法人 鉄道貨物協会,平成13年8月1日,第51巻,第8号,p.7−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、汎用コンテナは、種々のコンテナの中で最も簡単な構造を有するものであることから、安価、軽量であり、なおかつ、規格寸法内で開口部寸法、内法寸法、内容積を最大に確保することが可能である、といった種々の利点を備えている。
しかしながら、一般雑貨の中には、搬送時において防振性が望まれるもの(例えば、ロール紙等)もあることから、上述した汎用コンテナの種々の利点を損うことなく、比較的簡易に、汎用コンテナに防振機能を持たせることが望まれていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開口部寸法、内法寸法、内容積を大きく損うことなく、かつ、自重が大きく増大することもなく、防振性、経済性に優れる一般雑貨用のコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明に係るコンテナは、汎用コンテナと共通する床梁構造と、該床梁構造に支持される防振材保持部材と、該防振材保持部材に鉛直下方から保持される複数の防振材と、該防振材によって鉛直下方から支持される浮床とを備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、浮床は、汎用コンテナと共通する床梁構造に支持される防振材保持部材と、該防振材保持部材に鉛直下方から保持される複数の防振材とによって、床梁構造に対し下方からフローティング支持されることから、浮床に載置される貨物への振動の伝達を防ぐことが出来る。
【0006】
また、前記複数の防振材は、各防振材が前記浮床から受ける荷重が均等となる位置に配置されていることから、浮床の全体にわたり、均一な防振機能を発揮させることが可能となる。
また、前記浮床と、前記床梁構造に固定され前記浮床を枠状に囲むフレーム部材との間隙に、制振材を配置することによって、浮床に対し、防振材による主に上下方向の振動減衰機能のみならず、制振材による前後左右方向の振動減衰機能を十分に与えることが可能となる。
【0007】
また、本発明において、前記防振材保持部材は、前記床梁構造の一部を窪ませて形成された防振材の取付座であり、前記浮床は、前記防振材に直接的に当接する一体のプレートと、該プレートの上面を覆う複数のパネルとからなり、前記プレートの下面周縁部と前記床梁構造の外周フレームとの間に、弾性シール部材が配置されていることが望ましい。
この構成によれば、汎用コンテナと共通する床梁構造の一部を窪ませて形成された防振材の取付座によって、防振材を保持し、なおかつ、該防振材を一体のプレートに直接的に当接させることにより、浮床に防振性を与えることが可能となる。また、プレートの上面を複数のパネルで覆うことにより、浮床の内装が完備される。さらに、プレートの下面周縁部と床梁構造の外周フレームとの間に、弾性シール部材を配置していることから、浮床をフローティング支持する床構造の採用によって、コンテナ室内とコンテナ外部との密閉性が阻害されることはない。
【0008】
また、本発明において、前記防振材保持部材は、前記床梁構造に直付けされかつ外部に対しシールされた、汎用コンテナと共通の床板であり、前記浮床は、格子状に組まれ前記防振材と直接的に当接する可動梁と、該可動梁の上面を覆い前記防振材と直接的に当接する複数のパネルとからなることとしてもよい。
本発明によれば、前記防振材保持部材は、前記床梁構造に直付けされかつ外部に対しシールされた、汎用コンテナと共通の床板であることから、コンテナ室内とコンテナ外部との密閉性は確保された状態にある。そして、浮床は、格子状に組まれた可動梁と、該可動梁の上面を覆う複数のパネルとからなり、可動梁および複数のパネルの双方に対し、汎用コンテナと共通の床板によって鉛直下方から保持される複数の防振材が直接的に当接することにより、浮床に防振性を与えることが可能となる。また、プレートの上面を複数のパネルで覆うことにより、浮床の内装が完備される。
なお、複数のパネルは、格子状に組まれた可動梁によって整列され、互いに凹凸を生じることなく一体化された状態で、防振材にフローティング支持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明はこのように構成したので、コンテナの開口部寸法、内法寸法、内容積を大きく損うことなく、かつ、自重が大きく増大することもなく、防振性、経済性に優れた一般雑貨用のコンテナを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。(なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0011】
図1には、本発明の実施の形態に係るコンテナ10を示している。コンテナ10の外観は、従来の汎用コンテナと何ら変わることなく、かつ、コンテナの荷役作業用の機材や、コンテナに対する貨物の荷役作業自体も、従来の汎用コンテナと同様である。また、構成部品も、基本的に従来の汎用コンテナと変わるものではない。
ここで、図2〜図5を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係るコンテナの床構造を説明する。
【0012】
コンテナ10は、従来の汎用コンテナと共通する床梁構造12を備えている。また、この床梁構造12に支持される防振材保持部材14と、防振材保持部材14に鉛直下方から保持される複数の防振材16と、防振材16によって鉛直下方から支持される浮床18とを備えている。なお、図2の例では、複数の防振材16は、各防振材16が浮床18から受ける荷重が均等となる位置に配置されており、全て同一のものが36箇所に設けられている。また、当然に、防振材16を鉛直下方から保持する防振材保持部材14も、各防振材16が受ける荷重が均等となるような所定位置に設けられている。
なお、本実施の形態では、防振材保持部材14は、床梁構造12の一部を窪ませて形成された防振材の取付座である。また、防振材16は、円筒状のゴムブッシュであり、その上下端部には、金属製の取付フランジが加硫接着されたものである。さらに、浮床18は、平面視した状態で矩形の一体をなすプレート20と、プレート20の上面を覆う複数のパネル22とで構成されている。このプレート20は、鋼鈑をプレス成形して得られるものであり、防振材16に対し直接的に当接する凹溝20aを備えている。したがって、防振材16とプレート20とを固定するためのボルト24は凹溝20aの内部に納まり、プレート20の上面からボルト24が突出することはない。
【0013】
また、パネル22は、コンテナ10の内装として一般的に用いられているベニヤ合板等の、木質パネルであり、なおかつ、従来の汎用コンテナの床材と同様に、JIS規格等によって寸法が定められた木質パネルを、そのまま採用することが可能である。さらに、プレート20の下面周縁部と、床梁構造12の外周フレーム26との間には、弾性シール部材28が配置されている。弾性シール部材28は、帯状の防水気密ゴムであり、外周フレーム26と弾性シール部材28との密着面(シール面)が、プレート20の下面外周端に沿って帯状に連続することによって、コンテナ室内とコンテナ外部との密閉性が確保されている。
さらに、浮床18と、床梁構造12に固定され浮床18を枠状に囲むフレーム部材30との間隙Sには、図5に拡大して示すように、制振材32が配置されている。この制振材32は、板状のゴム製のものが用いられている。また、荷崩れ防止用のストラップを掛け回すラッシングリング34は、浮床18の上面外周端に設けられていることから、浮床18がいわゆるフローティング支持された状態であるにもかかわらず、浮床18に載置される貨物とラッシングリング34との相対位置が変化することは無く、よって、ストラップが弛むような不具合は生じない。また、浮床18上に貨物を載置した状態で、浮床18の上面とフレーム部材30の上面とが同一の高さとなるように、防振材16等の各構成部材の厚みが決定されていることが望ましい。
【0014】
上記構成をなす、本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。まず、浮床18は、汎用コンテナと共通する床梁構造12に支持される防振材保持部材14と、防振材保持部材14に鉛直下方から保持される複数の防振材16とによって、床梁構造12に対し下方からフローティング支持されることから、浮床18に載置される貨物への振動の伝達を防ぐことが出来る。
また、複数の防振材16は、各防振材16が浮床18から受ける荷重が均等となる位置に配置されていることから、浮床18の全体にわたり、均一な防振機能を発揮させることが可能となる。しかも、浮床18と、床梁構造12に固定され浮床18を枠状に囲むフレーム部材30との間隙Sに、制振材32を配置することによって、浮床18に対し、防振材16による主に上下方向の振動減衰機能のみならず、制振材32による前後左右方向の振動減衰機能を、十分に与えることが可能となる。
【0015】
なお、本実施の形態では、汎用コンテナと共通する床梁構造12の、一部を窪ませることにより形成された防振材の取付座14によって、防振材16を保持し、かつ、防振材16を、浮床の矩形の一体をなすプレート20に直接的に当接させることにより、浮床18に防振性を与えている。また、プレート20の上面を複数のパネル22で覆うことにより、浮床の内装が完備される。さらに、プレート20の下面周縁部と床梁構造12の外周フレーム26との間に、弾性シール部材28を配置していることから、浮床18をフローティング支持する床構造の採用によって、コンテナ室内とコンテナ外部との密閉性が阻害されることはない。したがって、本実施の形態に係るコンテナ10は、防振機能を備えつつ、従来の汎用コンテナと同様の貨物保全機能(密閉性)が確保されている。
なお、本発明の第1の実施の形態に係るコンテナと、従来の汎用コンテナとの数値的比較によれば、内法寸法および開口寸法は、床梁構造12の外周フレーム26の上面から、浮床18の上面までの高さの分だけ減少するに留まるものである。また、自重についても、10%程度の増加に抑えられている。
【0016】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るコンテナ床構造を、図6〜図9を参照しながら説明する。ここで、本発明の第1の実施の形態に係るコンテナと同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
まず、本実施の形態に係るコンテナ40についても、その外観は、従来の汎用コンテナと何ら変わることなく(図1参照)、コンテナの荷役作業用機材、荷役作業も従来の汎用コンテナと同様である。また、構成部品も、基本的に従来の汎用コンテナと変わるところがない点は、本発明の第1の実施の形態と同じである。
また、コンテナ40は、その床梁構造においても、従来の汎用コンテナと共通する床梁構造12を備えている。そして、この床梁構造12に支持される防振材保持部材42と、防振材保持部材42に鉛直下方から保持される複数の防振材44と、防振材42によって鉛直下方から支持される浮床46とを備えている。なお、図6の例においても、複数の防振材44は、各防振材44が浮床46から受ける荷重が均等となる位置に配置されており、合計で91箇所に設けられている。
【0017】
なお、本実施の形態では、防振材保持部材42は、床梁構造12に直付けされかつ外部に対しシールされた、汎用コンテナと共通の床板42である。また、図示の例では、浮床42の面積を最大限に確保するために、床梁構造12の外周フレーム26も、防振材保持部材として用いられている。なお、防振材44には、ゴムパッドが用いられている。
また、浮床46は、格子状に組まれた可動梁48と、可動梁48の上面を覆う複数(3枚)のパネル50とで構成されている。可動梁48は長尺の板材であり、幅方向の両端部が切り起こされた形状(図8参照)を有している。そして、パネル50には、第1の実施の形態に係るパネル22と同様の、木質パネルが採用されている。さらに、可動梁48、パネル50の何れも、防振材44と直接的に当接するものである。ここで、可動梁48の直下、および、ラッシングリング34をパネル50に固定するプレート33(図7)の直下に位置する防振材44Aは、パネル50と直接的に当接する防振材44Bに対し、可動梁48およびプレート33の厚みの分だけ薄いものが採用されている。
さらに、図9に拡大して示すように、浮床46と、床梁構造12に固定され浮床46を枠状に囲むフレーム部材52との間隙Sには、板状のゴム製の制振材54が配置されている。制振材54は、パネル50の上面周縁部から側面部へと巻き込むように取付られ、さらに、フレーム部材52に固定された断面L字状のストッパ56によって正確に位置決めされることで、浮床46の前後左右方向の防振機能を高めている。なお、浮床46上に貨物を載置した状態で、浮床46の上面とストッパ56の上面とが同一の高さとなるように、防振材44等の各構成部材の厚みが決定されていることが望ましい。
【0018】
さて、上記構成を有する本発明の第2の実施の形態によれば、防振材保持部材42が、床梁構造12に直付けされかつ外部に対しシールされた、汎用コンテナと共通の床板であることから、コンテナ室内とコンテナ外部との密閉性は確保された状態にある。そして、浮床46は、格子状に組まれた可動梁48と、可動梁48の上面を覆う複数のパネル50とからなり、可動梁48および複数のパネル50の双方に対し、床板42によって鉛直下方から保持される複数の防振材44(44A、44B)が、直接的に当接することにより、浮床46に防振性を与えることが可能となる。すなわち、本実施の形態においても、浮床46は、床梁構造12に対し下方からフローティング支持されることから、浮床46に載置される貨物への振動の伝達を防ぐことが出来る。
ラッシングリング34についても、パネル50に固定されたプレート33に軸着されていることから、浮床46がいわゆるフローティング支持された状態であるにもかかわらず、浮床46に載置される貨物とラッシングリング34との相対位置が変化することは無く、よって、ストラップが弛むような不具合は生じない。その他、本発明の第1の実施の形態に係るコンテナと同様の作用効果については、詳しい説明を省略する。
【0019】
なお、本発明の第2の実施の形態において、複数のパネル50は、格子状に組まれた可動梁48によって整列され、互いに凹凸を生じることなく一体化された状態で、防振材44にフローティング支持されている。また、本発明の第2の実施の形態に係るコンテナ40と、従来の汎用コンテナとの数値的比較によれば、内法寸法および開口寸は、床梁構造12の外周フレーム26の上面から、浮床46の上面までの高さの分だけ減少するに留まるものである。また、自重についても、6%程度の増加に抑えられている。
さらに、本発明の第2の実施の形態によれば、既存の汎用コンテナに対しても、荷室床面に、防振材44、浮床46、フレーム部材52、制振材54、ストッパ56を取り付けることで、防振機能を付加することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコンテナの側面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図2のB−B線における断面を一部省略して示した図である。
【図4】図2のC−C線における断面を一部省略して示した図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るコンテナの横断面図である。
【図7】図6のD−D線における断面を一部省略して示した図である。
【図8】図6のE−E線における断面を一部省略して示した図である。
【図9】図8の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0021】
10、40:コンテナ、 12:床梁構造、 14、42:防振材保持部材、 16、44:防振材、 18、46:浮床、20:プレート、 22、50:パネル、26:外周フレーム、28:弾性シール部材、 30、52:フレーム部材、 32、54:制振材、42:防振材保持部材、44:防振材、46:浮床、 48:可動梁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用コンテナと共通する床梁構造と、該床梁構造に支持される防振材保持部材と、該防振材保持部材に鉛直下方から保持される複数の防振材と、該防振材によって鉛直下方から支持される浮床とを備えることを特徴とするコンテナ。
【請求項2】
前記複数の防振材は、各防振材が前記浮床から受ける荷重が均等となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコンテナ。
【請求項3】
前記浮床と、前記床梁構造に固定され前記浮床を枠状に囲むフレーム部材との間隙に、制振材を配置したことを特徴とする請求項1または2記載のコンテナ。
【請求項4】
前記防振材保持部材は、前記床梁構造の一部を窪ませて形成された防振材の取付座であり、
前記浮床は、前記防振材に直接的に当接する一体のプレートと、該プレートの上面を覆う複数のパネルとからなり、
前記プレートの下面周縁部と前記床梁構造の外周フレームとの間に、弾性シール部材が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のコンテナ。
【請求項5】
前記防振材保持部材は、前記床梁構造に直付けされかつ外部に対しシールされた、汎用コンテナと共通の床板であり、
前記浮床は、格子状に組まれ前記防振材と直接的に当接する可動梁と、該可動梁の上面を覆い前記防振材と直接的に当接する複数のパネルとからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のコンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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