説明

コンデンサおよびその製造方法

【課題】圧接接続に伴う亀裂や箔割れなどの電極箔の損傷を防止し、電極箔と引出し端子との接続強度を高める。
【解決手段】電極箔(2)に引出し端子(4)が冷間圧接法により接続されたコンデンサであって、前記電極箔(2)と前記電極箔との接続部に冷間圧接金型で形成された凹部(8)の平面形状が円形状であるコンデンサおよびその製造方法である。冷間圧接金型の押圧面が角部を持たないので電極箔に対する局所的な応力集中を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間圧接法により電極箔と引出し端子を接続する電解コンデンサや電気二重層コンデンサなどのコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサなど、各種のコンデンサは、コンデンサ素子の陽極側および陰極側の電極箔に引出し端子を接続している。コンデンサ素子は、陽極側および陰極側の電極箔の間にセパレータを介在させて巻回されている。このコンデンサ素子に電解液を含浸した後、外装ケースに封入している。陽極箔および陰極箔にはアルミニウムなどの電極材料で形成された箔が使用されている。陽極箔には箔表面にエッチングによる拡面処理及び化成処理が施されている。陰極箔には箔表面に拡面処理、必要に応じて化成処理が施されている。
【0003】
電極箔と引出し端子の接続方法には冷間圧接法(コールドウェルド)がある。この圧接法は、電極箔と引出し端子とを接続部で金型を押圧することにより接続する方法である。この押圧には台形状の押圧面を持つ金型が用いられてきた(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−235453号公報
【特許文献2】特開2007−273645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化成処理により電極箔の表面に形成された酸化皮膜は一般的に硬く脆いことが知られている。また、コンデンサには小型化や高容量化が求められている。高容量化では、電極箔の表面積を拡大させるため高倍率のエッチング処理が施された電極箔が用いられる。この高倍率エッチングを施した電極箔の残芯部(酸化皮膜の未形成部)は高倍率エッチングを施していない電極箔と比べ薄くなる。このため、高倍率のエッチング処理を施し、化成処理を施した電極箔は脆弱化している。このような電極箔を冷間圧接金型で押圧すると、電極箔の一部に亀裂を生じたり、接続の信頼性を低下させるという課題がある。
【0006】
また、小型化されたコンデンサでは電極箔の幅が狭いため、引出し端子との接続部と電極箔の縁との距離が短い。接続部で電極箔に生じた亀裂が電極箔の縁部まで波及し、これが箔割れの原因となる。このような電極箔の亀裂や箔割れは、引出し端子との接続性を悪化させるという課題がある。
【0007】
このような電極箔の亀裂や箔割れは、冷間圧接金型が電極箔に押しつけられる押圧面の形状が関係している。従来、押圧面の形状は矩形であり、また、断面形状は台形状であった。このような形状の冷間圧接金型を用いると、その押圧面の角部に押圧時の応力が集中する。この応力集中が押圧面の角部から電極箔の押圧部に過剰な応力を生じさせる。高倍率エッチング処理などで脆弱化している電極箔では、その応力に打ち勝つことができず、亀裂を生じる原因になるという課題がある。
【0008】
本発明のコンデンサおよびその製造方法の目的は、上記課題に鑑み、冷間圧接接続に伴う亀裂や箔割れなどの電極箔の損傷を防止し、電極箔と引出し端子との接続強度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサおよびその製造方法は以下のとおりである。
【0010】
(1) 上記目的を達成するため、本発明のコンデンサは、電極箔に引出し端子が冷間圧接法により接続されたコンデンサであって、前記電極箔と前記引出し端子との接続部に冷間圧接金型により形成された凹部の平面形状が円形状である。
【0011】
(2) 上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて好ましくは、前記接続部が球面状または円錐台状であってもよい。
【0012】
(3) 上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法は、冷間圧接法により電極箔と引出し端子を接続したコンデンサの製造方法であって、冷間圧接金型の押圧部の平面形状を円形状に形成し、コンデンサ素子の陽極側電極または陰極側電極に用いる電極箔を引出し端子に重ね、前記電極箔と前記引出し端子との接続部に前記冷間圧接金型を押圧して前記電極箔と前記引出し端子を接続する。
【0013】
(4) 上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において好ましくは、前記接続部を押圧する前記冷間圧接金型の押圧面が球面状または円錐台状であってもよい。
【0014】
(5) 上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において好ましくは、前記接続部を押圧する前記冷間圧接金型の押圧面に平坦面部を有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0016】
(1) 冷間圧接金型の押圧面が円形状であり角部を有さないので、電極箔に対する局所的な応力集中を回避できるので、電極箔の亀裂や割れを防止できる。
【0017】
(2) 電極箔と引出し端子との接続性を高め、接続強度を向上させることができる。
【0018】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係る電極箔および引出し端子の接続部を示す図である。
【図2】図1のIIA−IIA線断面を示す断面図である。
【図3】電極箔および引出し端子の接続処理を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る冷間圧接金型および接続処理を示す断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る拘束金型を併用した接続処理の変形例を示す図である。
【図6】拘束金型に固定治具を併用した変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施の形態〕
【0021】
図1は第1の実施の形態に係る電極箔および引出し端子の接続部を示している。図1に示す構成は一例であって、本発明は係る構成に限定されるものではない。
【0022】
電極箔2はコンデンサ素子の陽極側電極または陰極側電極に用いられる。この電極箔2はたとえば、アルミニウムで形成されている。電解コンデンサでは、陽極箔にエッチングによって拡面化処理した金属箔にさらに化成処理を施したものが使用され、陰極箔にエッチングにより拡面化処理を施した金属箔が使用される。
【0023】
この電極箔2に接続される引出し端子4は一例として内部リード部4−1、支持部4−2および外部リード部4−3を備えている。内部リード部4−1は、アルミニウムの棒状体を偏平に圧縮成形した偏平部である。支持部4−2は、内部リード部4−1が形成されていない既述の棒状体の原型部分であって、図示しないコンデンサ素子を収納した外装ケースの封口部材を貫通させ、封口部材に支持させる部分である。外部リード部4−3は、支持部4−2より細く、半田付け可能な金属を表面にめっきしたワイヤで形成されている。外部リード部4−3は支持部4−2に溶接によって接続されている。外部リード部4−3は半田付け可能な金属ワイヤで形成してもよい。
【0024】
この引出し端子4は、内部リード部4−1に重ねられた電極箔2と冷間圧接法により圧接接続されている。引出し端子4と電極箔2との間には複数の接続部6−1、6−2が形成されている。各接続部6−1、6−2は平面視円形形状の湾曲凹部8である。この湾曲凹部8は平面形状が円形状の凹部の一例である。この湾曲凹部8は、冷間圧接金型10(図3)の押圧により電極箔2および引出し端子4に生じている圧接接続の痕跡である。
【0025】
図2のAは、各接続部6−1、6−2の断面を示している。図2のBは、図2のAのIIB部の拡大断面を示している。
【0026】
図2のAに示すように、各接続部6−1、6−2には断面半球形状の湾曲凹部8が形成されている。各湾曲凹部8の底部では電極箔2と引出し端子4の内部リード部4−1との間で圧接による接続が生じている。この実施の形態では、図2のBに示すように、電極箔2が湾曲凹部8に臨み、内部リード部4−1は重ねられた電極箔2とともに押し潰されている。破線で示す部分では、電極箔2と内部リード部4−1との金属間が一体化されている。
【0027】
図3は、冷間圧接法による接続工程を示している。この接続工程は、コンデンサの製造法に含まれる一工程である。この実施の形態は、冷間圧接法により電極箔と引出し端子を接続したコンデンサの製造方法の一例である。図3のAは圧接前の状態を示している。図3のBは圧接処理を示している。
【0028】
この接続工程には、重ね工程と、圧接工程が含まれる。
【0029】
(1) 重ね工程
【0030】
この重ね工程では、平坦面金型12の上面に載置された引出し端子4の内部リード部4−1の上面に電極箔2を重ねる。この場合、球形状押圧面14を備えた冷間圧接金型10を用いる。冷間圧接金型10の中心線Oに引出し端子4の中心を合わせる。引出し端子4と重ねられた電極箔2とを所定位置に保持する。
【0031】
(2) 圧接工程
【0032】
既述の重ね工程を経て、引出し端子4に重ねられた電極箔2の上面に冷間圧接金型10を降下させる。これにより、冷間圧接金型10と平坦面金型12との間に電極箔2および引出し端子4の内部リード部4−1が挟み込まれる。冷間圧接金型10に対して平坦面金型12に向かう圧力Pを加える。これにより、電極箔2および引出し端子4の内部リード部4−1の接続部6−1、6−2には図3のBに示すように、冷間圧接金型10の球形状押圧面14による湾曲凹部8が形成される。この結果、電極箔2と引出し端子4の内部リード部4−1の金属が一体化されることにより接続される。
【0033】
このような球形状押圧面14を有する冷間圧接金型10を用いた場合には、次のような圧接接続が得られる。
【0034】
(a) 球形状押圧面14で電極箔2を押圧するので、球形状押圧面14から電極箔2に加わる応力が球形状押圧面14から放射状に作用し、均等な応力となり、応力集中を回避できる。つまり、球形状押圧面14では、角部がないので、従前の金型で角部に生じていた応力集中はない。球形状押圧面14により冷間圧接金型10からの応力が特定の一か所に集中することを防止できる。このため、電極箔2が脆弱化していても、局所的な応力の集中がないため、応力集中による亀裂発生を防止できる。
【0035】
(b) 球形状押圧面14により押圧された電極箔2および引出し端子4の平坦な内部リード部4−1との圧接部分に広がりが生じる。この結果、接続部6−1、6−2の面積が広く、電極箔2および引出し端子4の接続強度も高めることができる。
【0036】
〔第2の実施の形態〕
【0037】
第1の実施の形態の冷間圧接金型10の形状を球形状押圧面14としたのに対し、第2の実施形態では、円錐台状押圧面16とした冷間圧接金型10を用いている。図4は、円錐台状押圧面16を備える冷間圧接金型10およびこれを用いた第2の実施の形態に係る圧接接続を示している。図4において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0038】
第2の実施の形態では冷間圧接金型10に図4のAに示すように、円錐台状押圧面16を備えている。円錐台状押圧面16は、冷間圧接金型10の先端部に平坦面部16−1と円錐面部16−2とともに、平坦面部16−1と円錐面部16−2とを連結する湾曲面部16−3を備えている。
【0039】
このような円錐台状押圧面16を備える冷間圧接金型10を用いれば、図4のBに示すように、円錐台状押圧面16によって冷間圧接金型10の湾曲凹部8が形成される。つまり、接続部6−1、6−2に形成される湾曲凹部8では、電極箔2および内部リード部4−1に平坦面部18−1が形成される。この平坦面部18−1を中心にすり鉢状の円錐面部18−2が形成される。この円錐面部18−2と平坦面部18−1との間は湾曲面部18−3によって連続した面部が形成される。
【0040】
このため、第2の実施の形態によっても次のような圧接接続が得られる。
【0041】
(a) 円錐台状押圧面16で電極箔2を押圧するので、円錐台状押圧面16から電極箔2に加わる応力が円錐台状押圧面16から放射状に作用する。つまり、円錐台状押圧面16では、角部がないので、従前の金型で角部に生じていた応力集中はない。円錐台状押圧面16により冷間圧接金型10からの応力が特定の一か所に集中することを防止できる。このため、電極箔2が脆弱化していても、第1の実施の形態と同様に、局所的な応力の集中がないため、応力集中による亀裂発生を防止できる。
【0042】
(b) 円錐台状押圧面16により押圧された電極箔2および引出し端子4の平坦な内部リード部4−1との圧接部分に広がりが生じることは第1の実施の形態と同様である。この結果、接続部6−1、6−2の面積が広く、電極箔2および引出し端子4の接続強度も高めることができる。
【0043】
〔他の実施の形態〕
【0044】
(1) 上記実施の形態の平坦面金型12に引出し端子4の内部リード部4−1の変形を抑えるため、拘束金型20を用いてもよい。この拘束金型20では、平坦面金型12の平坦面と平行な平坦面部20−1の側部に拘束立壁として変形防止ストッパ20−2を備え、各変形防止ストッパ20−2と平坦面部20−1とで形成される空間部内で内部リード部4−1を加圧してもよい。このような構成とすれば、引出し端子4の応力変形による箔割れを防止でき、接続部6−1、6−2の接続強度をより高めることができる。
【0045】
つまり、拘束金型20を配置すれば、冷間圧接金型10の押圧時、引出し端子4の幅方向への広がり、それによる電極箔2の追従による引き延ばしを防止でき、電極箔2の残芯部の伸びを防止でき、電極箔2の厚さが薄くなることを防止できる。この結果、押圧時に幅方向への引出し端子4の広がりもなく、引出し端子4の応力変形による箔割れを防止でき、接続部6−1、6−2の接続強度をより高めることができる。
【0046】
更に、電極箔2側に押圧時に図6に示すように、電極箔2を変形防止ストッパ20−2と挟み込むように固定治具22を配置してもよい。このような構成とすれば、冷間圧接金型10の押圧時に引出し端子4が拘束金型20に拘束されるとともに、固定治具22で引出し端子4が上方に伸びる力を押さえ込むことができる。これにより、引出し端子4の変形防止と、電極箔2の伸び上がりを防止できるので、押圧力を接続部6−1、6−2に集中でき、各接続部6−1、6−2の接続強度がより高められる。
【0047】
(2) 上記実施の形態では、電解コンデンサの電極箔を例示したが、電解コンデンサ以外の電極箔と引出し端子との圧接接続に利用してもよい。
【0048】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明では、冷間圧接金型の押圧面部を球面状または円錐台状にし、押圧時に生じる応力集中から電極箔を防護でき、圧接接続による亀裂や箔割れを防止でき、信頼性の高いコンデンサの提供に寄与し、有用である。
【符号の説明】
【0050】
2 電極箔
4 引出し端子
4−1 内部リード部
4−2 支持部
4−3 外部リード部
6−1 接続部
6−2 接続部
8 湾曲凹部
10 冷間圧接金型
12 平坦面金型
14 球形状押圧面
16 円錐台状押圧面
16−1 平坦面部
16−2 円錐面部
16−3 湾曲面部
18−1 平坦面部
18−2 円錐面部
18−3 湾曲面部
20 拘束金型
20−1 平坦面部
20−2 変形防止ストッパ
22 固定治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極箔に引出し端子が冷間圧接法により接続されたコンデンサであって、
前記電極箔と前記引出し端子との接続部に冷間圧接金型により形成された凹部の平面形状が円形状であることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記接続部が球面状または円錐台状であることを特徴とする、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
冷間圧接法により電極箔と引出し端子を接続したコンデンサの製造方法であって、
冷間圧接金型の押圧部の平面形状を円形状に形成し、
コンデンサ素子の陽極側電極または陰極側電極に用いる電極箔を引出し端子に重ね、前記電極箔と前記引出し端子との接続部に前記冷間圧接金型を押圧して前記電極箔と前記引出し端子を接続することを特徴とする、
コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記接続部を押圧する前記冷間圧接金型の押圧面が球面状または円錐台状であることを特徴とする、
請求項3に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記接続部を押圧する前記冷間圧接金型の押圧面に平坦面部を有することを特徴とする、
請求項3または4に記載のコンデンサの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115311(P2013−115311A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261705(P2011−261705)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】