説明

コントローラ装置および注入システム

【課題】複数の注入ヘッドに対してコントローラ装置を共通化し、製品開発や製品管理の効率性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】このコントローラ装置150は、シリンジ内の薬液を患者に向けて注入する注入ヘッドに接続されて使用される、ディスプレイ151を備えたコントローラ装置150であって、複数の注入ヘッドに対応できるように、それぞれの注入ヘッドに対応する複数の動作モードを有し、接続された注入ヘッドを識別する機能と、その注入ヘッドに対応する動作モードを起動させる機能と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入ヘッドとそのコントローラ装置を備え患者に薬液を注入する注入システム等に関し、特に、複数の注入ヘッドに対してコントローラ装置を共通化し、製品開発や製品管理の効率化を図ることができる注入システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用の画像診断装置として、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron
Emission Tomography)装置、血管造影(アンギオグラフィ)装置等が知られている。このような撮像装置を使用する際、患者に造影剤や生理食塩水など(以下、これらを単に「薬液」とも言う)を注入することがあり、この薬液注入を自動で行う注入システムについても種々提案されている。
【0003】
注入システムは、一般に、シリンジが装着される注入ヘッドと、その動作を制御するコントローラ装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。コントローラ装置にはディスプレイが備えられており、オペレータはこのディスプレイを通じて、注入条件の設定を行ったり、注入中のリアルタイム情報(例えば注入圧力など)を確認したりすることができる。このようなコントローラ装置は「コンソール」と呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174039
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、注入ヘッドには様々な種類があり、例えば、1本のシリンジのみを搭載する一筒式のものや、2本のシリンジを搭載する二筒式のものがある。また、例えばCT用、MR用、アンギオグラフィ用といったように、一緒に使用される撮像装置のタイプに応じて種々の注入ヘッドが使用される。
【0006】
しかしながら、従来の注入システムでは、例えばCT用、MR用、アンギオグラフィ用などの用途ごとに、それぞれ専用のコントローラ装置を用いていたため、製品開発や製品管理における効率性の点で、改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の注入ヘッドに対してコントローラ装置を共通化し、製品開発や製品管理の効率性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.上記目的を達成するため本発明のコントローラ装置は、
シリンジ内の薬液を患者に向けて注入する注入ヘッドに接続されて使用される、ディスプレイを備えたコントローラ装置であって、
複数の注入ヘッドに対応できるように、それぞれの注入ヘッドに対応する複数の動作モードを有し、
接続された上記注入ヘッドを識別する機能と、
その注入ヘッドに対応する動作モードを起動させる機能と、
を備える。
【0009】
このような構成によれば、コントローラ装置が複数の動作モードを有しており、接続された注入ヘッドに対応して1つの動作モードが起動されるので、1つのコントローラ装置で複数の注入ヘッドに対応することが可能となる。したがって、CT用、MR用、アンギオグラフィ用などの用途ごとにコントローラ装置を製造する必要がなく、製品開発および管理における効率化を図ることができる。
【0010】
本発明は次のようなものであってもよい。
2.上記注入ヘッドがコントローラ装置に接続された際に、
注入ヘッドの上記識別、および、それに対応する動作モードの上記起動が自動的に行われる、上記1に記載のコントローラ装置。
【0011】
3.さらに、
外部機器を接続するためのインターフェース端子、または、記憶媒体が差し込まれるスロットを備え、
上記外部機器を用いて、または、上記記憶媒体のデータを用いて、コントローラ装置のソフトウェアの更新が行われる、上記1または2に記載のコントローラ装置。
【0012】
4.コントローラ装置の筐体として、前面側のフロントパネルと、後方側のリアハウジングとを有しており、
上記リアハウジングが、ヒンジを介して上記フロントパネルに連結され、ヒンジ方式で開くことができるように構成されている、上記1〜3のいずれか1に記載のコントローラ装置。
【0013】
5.上記ディスプレイがタッチパネル式である、上記1〜4のいずれか1に記載のコントローラ装置。
【0014】
6.上記1〜5のいずれか1項に記載のコントローラ装置と、それに接続される注入ヘッドと、を備える注入システムであって、
上記コントローラ装置に接続されている上記注入ヘッドのソフトウェアの更新を、上記コントローラ装置を介して行えるように構成されている、注入システム。
本出願において「ソフトウェアの更新」には、ソフトウェアを修正する目的で行われるものや、新しい薬液注入条件(注入プロトコル)を追加する目的で行われるものが含まれる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、複数の注入ヘッドに対してコントローラ装置が共通化されるので、製品開発や製品管理の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】撮像システム全体を模式的に示す模式図である。
【図2】コントローラ装置とそれに接続される注入ヘッドとを示す図である。
【図3】コントローラ装置を背面側から見た斜視図である。
【図4】図1のシステム全体のブロック図である。
【図5】コントローラ装置の筐体の構造を示す図である。
【図6】図1のシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】ソフトウェアを更新する際の機器の接続状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1は撮像システム全体を模式的に示しており、このシステムは、患者の透視画像を撮像する撮像装置300と、それに接続された注入システム100とを備えている。
【0018】
注入システム100は、患者に対して造影剤を注入するための注入ヘッド110と、それに接続され注入ヘッドの動作を制御するコントローラ装置(コンソール)150とを有している(詳細後述)。
【0019】
撮像装置300は、患者の透視画像を撮像する装置本体303と、患者を載せて横方向に移動するベッド304とを備えている。図4のブロック図では、装置本体内の制御部303a、撮像部303b、および寝台304が示されている。なお、撮像装置300としては、CTスキャナ、MRI装置、アンギオグラフィ装置などを利用可能である。
【0020】
本実施形態では、コントローラ装置150に対して複数の種類の注入ヘッド110が選択的に接続される(図2参照)。接続される注入ヘッド110の種類は特に限定されるものではないが、例えば、CT用、MR用、アンギオグラフィ用の注入ヘッドである。また、一筒式の注入ヘッドが接続されてもよいし、二筒式の注入ヘッドが接続されてもよい。
【0021】
図1に示された例では、一筒式の注入ヘッド110がコントローラ装置150に接続されている。コントローラ装置150と注入ヘッド110との接続は有線接続であってもよいし、無線接続(通信路の少なくとも一部で無線接続が行われるものを含む)であってもよい。
【0022】
注入ヘッド110は、シリンジ121が装着されるシリンジ保持部(不図示)と、そのシリンジのピストン部材を進退移動させるピストン駆動機構115(図4参照)と、各部の動作を制御する制御部114と、その注入ヘッドの識別情報などを記憶している記憶部116を有している。また、注入ヘッド110は、コントローラ装置150との間で通信を行う通信機能を有している。
【0023】
なお、シリンジ121が識別タグ(例えばRFIDタグ等)を有するものである場合には、注入ヘッド110は、そのタグに対して情報を読み/書きをするリーダ・ライタ(不図示)を備えていてもよい。さらに、ピストン駆動機構115がシリンジのピストン部材を押す圧力を検出する圧力センサ(不図示)を有していてもよく、このセンサを用いて、薬液の注入圧力をモニタリングすることができる。
【0024】
なお、シリンジ121は、プレフィルドタイプのものであってもよいし、吸引式のものであってもよい。シリンジ121は、注入ヘッド110に直接装着されるものであってもよいし、アダプタを介して装着されるものであってもよい。
【0025】
図2〜図4に示すように、コントローラ装置150は、所定の情報を表示するディスプレイ151を有しており、このディスプレイ151は例えばタッチパネル式である。オペレータは、コントローラ装置150のタッチパネル式ディスプレイ151を通じて所定の入力(注入条件の設定など)を行うことができる。
【0026】
コントローラ装置150は、筐体として、前面側のフロントパネル155と、後方側のリアハウジング156とを有している。図3に示すように、コントローラ装置150の背面には、例えばパーソナルコンピュータといった外部機器が接続される複数のインターフェース端子158が設けられている。また、例えばSDカード(登録商標)などの記憶媒体が差し込まれるスロットが設けられていてもよい。図4のブロック図では、コントローラ装置150に関し、各部の動作を制御する制御部153、それぞれの注入ヘッドに対応する複数の動作モードなどを記憶する記憶部154、ディスプレイ151、スロット159、およびインターフェース端子158が示されている。
【0027】
コントローラ装置150は、100V〜240Vの電源に対応するものであることが好ましく、これにより各国での使用が可能となる。
【0028】
図5は、コントローラ装置150を上方から見た図であり(筐体形状を簡略化して示している)、リアハウジング156を開いた状態が示されている。この図に示すように、本実施形態の注入ヘッド150では、フロントハウジング155とリアハウジング156とがヒンジ161を介して連結されている。リアハウジング156は、ヒンジ161側を支点としてヒンジ方式で開く。
【0029】
このような構成によれば、リアハウジング156の周縁部に沿うように複数箇所でネジ止めしていた従来の方式と比較して、筐体の開閉が非常に容易となる。そのため、修理やメンテナンスの際の作業性を格段に向上させることができる。特に、図5のようにリアハウジング156を開けた状態でコントローラ装置150が自立するようになっていることが好ましい。これにより、コントローラ装置150を立たせたままの状態で、修理およびメンテナンス作業が可能となり、作業性の向上を図ることができる。
【0030】
なお、ヒンジ161で連結される箇所は、コントローラ装置150の側部であってもよいし(図5のタイプ)、または、コントローラ装置150の上辺部もしくは下辺部であってもよい。
【0031】
コントローラ装置150の機能について説明すると、このコントローラ装置150は、注入ヘッド110との間で通信を行う通信機能を有している。具体的には、コントローラ装置150は、注入ヘッド110が接続された際に、その接続された注入ヘッドを識別する機能を有している。この識別は、注入ヘッド110が接続された際に自動的に行われてもよいし、オペレータがあるタイミングで所定の入力を行った際に行われてもよい。
【0032】
コントローラ装置150は、注入ヘッド110を識別した後、その注入ヘッドに対応する動作モードを起動させる機能を有している。この動作に関しても、識別後に自動的に行われてもよいし、オペレータがあるタイミングで所定の入力を行った際に行われてもよい。
【0033】
「その注入ヘッドに対応する動作モードを起動させる」とは、コントローラ装置150の記憶部154に記憶された複数の動作モード(例えば、注入ヘッドAに対応した動作モード、注入ヘッドBに対応した動作モード、注入ヘッドCに対応した動作モードなど)のうちの1つを起動させることをいう。
【0034】
注入ヘッドの識別に関して、具体的には次のような情報が一例として識別される:
−接続された注入ヘッドがどのような注入動作を行うものか/使用するシリンジの容量はどれくらいか/その注入ヘッドは一筒式か二筒式か
−使用される言語は何か
−その注入ヘッドのソフトウェアのバージョン情報
【0035】
コントローラ装置150は、また、スロット159に差し込まれた記憶媒体のデータを用いて、または、接続されたパーソナルコンピュータによって、そのプログラムを更新する機能を有している。本実施形態ではさらに、コントローラ装置150に接続されている注入ヘッド110のソフトウェアの更新を、そのコントローラ装置150経由で行う機能も備えられている(図7参照)。
【0036】
上記のように構成された本実施形態の注入システムの動作について以下、図6を参照しつつ説明する。
まず、本システムで使用する注入ヘッド110とコントローラ装置150とを接続する(ステップS1)。以下、図2のように注入ヘッドAがコントローラ装置150に接続される例について説明する。
【0037】
注入ヘッドAがコントローラ装置に接続されると、コントローラ装置150と注入ヘッドAとの間で通信が行われ、コントローラ装置150は、接続されたものが注入ヘッドAであると識別する(ステップS2)。
【0038】
次いで、コントローラ装置150は、識別された注入ヘッドAに対応する動作モードを記憶部154から読み出して起動させる(ステップS3)。これにより、その注入ヘッドAに対応するソフトウェアの画面がディスプレイ151に表示される。
【0039】
そして、コントローラ装置150は、その注入ヘッドAのソフトウェアのバージョンを識別し、更新が必要かどうかを確認する。更新が必要な場合には、ディスプレイ151にその旨が表示され、オペレータによる所定の入力の後、ソフトウェアの更新が行われる。なお、この更新は自動的に行われてもよい。
【0040】
更新が完了した場合、または不要な場合には次のステップに移り、スタンバイ状態(ステップS4)となる。この状態でオペレータがコントローラ装置150に一定の入力を行うことで、薬液の注入条件が設定される。その条件に従ってその注入ヘッド110を動作させることで、薬液注入が行われる。
【0041】
なお、注入ヘッドAがシリンジ121のRFIDタグを読み取る機能を備えるものである場合には、コントローラ装置150は、注入ヘッドAで読み取られたタグ情報を注入ヘッドAから受け取る。そして、必要であれば、そのタグ情報をコントローラ装置150のディスプレイ151に表示させる。
シリンジのRFIDタグに対しては、注入終了後に、所定の情報(例えば、そのシリンジが既に使用済みであることを示す情報など)が書き込まれてもよい。
【0042】
以上説明したような本実施形態のシステムによれば、コントローラ装置150が接続された注入ヘッド110に応じて所定の動作モードが起動するように構成されており、1つのコントローラ装置150で複数の注入ヘッド110に対応することができる。特に、その動作モードの起動が自動的に行われるようになっている場合、システムをセットアップする際の手間が簡素化し、セットアップ時の人為的ミスも生じない。
【0043】
また、本実施形態のシステムによれば、コントローラ装置150が例えば図4に示すようにヒンジ方式で筐体を開けることができるものであるため、筐体の複数箇所でネジ止めをしていた従来の方式と比較して、修理やメンテナンスを行う際の作業性が向上する。
【0044】
また、本実施形態のシステムによれば、コントローラ装置150と注入ヘッド110とが接続された状態で、注入ヘッド110のソフトウェアの更新をコントローラ装置150経由で行うことができる。従来のシステムのおいては、コントローラ装置150と注入ヘッド110のそれぞれに外部機器を接続してソフトウェアの更新作業を行う必要があったが、本発明によれば、コントローラ装置150に対する作業で両方の機器のソフトウェアを更新できるので、作業が非常に簡単であり、作業時間も大幅に短縮する。
【0045】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、パーソナルコンピュータをコントローラ装置150に接続することにより、または所定の記憶媒体をコントローラ装置150に挿入することにより、コンピュータ装置150に所定の情報が与えられる例を示したが、これに限らず、コンピュータ装置150が外部のネットワーク(インターネットまたは病院システムなど)に接続され、そのネットワーク経由で所定の情報が与えられてもよい。
【0047】
コントローラ装置150に対する入力手段は、タッチパネルに限定されるものではなく、キーボードやマウスなどの機器が利用されてもよい。コントローラ装置150には、警告音やメッセージを発するためのスピーカが設けられていてもよい。コントローラ装置150は、撮像装置300が配置される撮像室内で使用されるものであってもよいし、撮像室外の他の部屋で使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
110 注入ヘッド
115 ピストン駆動機構
121 シリンジ
150 コントローラ装置
151 ディスプレイ
155 フロントパネル
156 リアハウジング
161 ヒンジ
300 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ内の薬液を患者に向けて注入する注入ヘッドに接続されて使用される、ディスプレイを備えたコントローラ装置であって、
複数の注入ヘッドに対応できるように、それぞれの注入ヘッドに対応する複数の動作モードを有し、
接続された前記注入ヘッドを識別する機能と、
その注入ヘッドに対応する動作モードを起動させる機能と、
を備えるコントローラ装置。
【請求項2】
前記注入ヘッドが前記コントローラ装置に接続された際に、
注入ヘッドの前記識別、および、それに対応する動作モードの前記起動が自動的に行われる、請求項1に記載のコントローラ装置。
【請求項3】
さらに、
外部機器を接続するためのインターフェース端子、または、記憶媒体が差し込まれるスロットを備え、
前記外部機器を用いて、または、前記記憶媒体のデータを用いて、コントローラ装置のソフトウェアの更新が行われる、請求項1または2に記載のコントローラ装置。
【請求項4】
前記コントローラ装置の筐体として、前面側のフロントパネルと、後方側のリアハウジングとを有しており、
前記リアハウジングが、ヒンジを介して前記フロントパネルに連結され、ヒンジ方式で開くことができるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコントローラ装置。
【請求項5】
前記ディスプレイがタッチパネル式である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコントローラ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコントローラ装置と、それに接続される注入ヘッドと、を備える注入システムであって、
前記コントローラ装置に接続されている前記注入ヘッドのソフトウェアの更新を、前記コントローラ装置を介して行えるように構成されている、注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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