説明

コンバインのステップ操作機構

【課題】コンバインの乗降用ステップの位置切換を手動で操作可能なステップ操作機構を乗降の邪魔にならないように提供する。
【解決手段】操向操作具を有する操縦部とエンジンカバー24Aの上方に配置された運転座席22とを搭乗運転部8に備え、搭乗運転部8に対する乗降のための乗降用ステップ51が、車体の側方に展開された作用位置と車体寄りに退避した格納位置との間で位置切換可能に設けられており、エンジンカバー24Aの前壁24Bに沿って上下に延出されたステップ操作ロッド60の下端に乗降用ステップ51が連結され、ステップ操作ロッド60の上端に操作ハンドル63が設けられ、操作ハンドル63を介してのステップ操作ロッド60の上下移動操作によって、乗降用ステップ51の位置切換操作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向操作具を有する操縦部とエンジンカバーの上方に配置された運転座席とを搭乗運転部に備え、搭乗運転部に対する乗降のための乗降用ステップが、車体の側方に展開された作用位置と車体寄りに退避した格納位置との間で位置切換可能に設けられているコンバインのステップ操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のステップ操作機構に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1は搭乗運転部がキャビンで覆われたコンバインに関し、乗降口に対する乗降を補助する乗降用ステップが、キャビンの乗降口を閉鎖可能なスライド式のキャビンドアの開閉動作に連動して作用位置と格納位置との間で自動的に切換操作される構成が記されている。このように乗降用ステップを車体寄りに立設した格納位置に折り畳むことで、作用位置に展開された乗降用ステップが耕地から立ち上がっている農作物の一部と干渉する現象を抑制できる。
【0003】
尚、特許文献1では、スライド式のドアの後端は車両の前後方向に摺動移動するが、前端は車両の幅方向外側に円弧状の軌跡で移動するように、キャビン内に設けた縦軸心廻りに回動される揺動アームの遊端がスライド式のドアの前後方向中央よりも前方寄りの位置に固定されている。揺動アームはドアの上下両端に配置されており、乗降用ステップの操作機構として、下方のドアの揺動アームと乗降用ステップとを連係させるプッシュプルワイヤを設けている。ドアを全開から全閉に向けて操作するとプッシュプルワイヤを介してステップが格納位置に向けて引き上げられる。また、ドアの全開操作によって乗降用ステップが作用位置に展開されるように、乗降用ステップを作用位置に向けて付勢するバネが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−238792号公報(0073段落、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記された搭乗ステップ収納機構では、キャビンドアの開閉操作と乗降用ステップの位置切換とを連動させるために、上述したような複雑な構成が必要であった。
【0006】
本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、コンバインの乗降用ステップの位置切換を手動で操作可能な簡単な構成のステップ操作機構を乗降の邪魔にならないように提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコンバインのステップ操作機構の特徴構成は、
操向操作具を有する操縦部とエンジンカバーの上方に配置された運転座席とを搭乗運転部に備え、
前記搭乗運転部に対する乗降のための乗降用ステップが、車体の側方に展開された作用位置と車体寄りに退避した格納位置との間で位置切換可能に設けられており、
前記エンジンカバーの前壁に沿って上下に延出されたステップ操作ロッドの下端に前記乗降用ステップが連結され、前記ステップ操作ロッドの上端に操作ハンドルが設けられ、
前記操作ハンドルを介しての前記ステップ操作ロッドの上下移動操作によって、前記乗降用ステップの位置切換操作が行われる点にある。
【0008】
上記の特徴構成による乗降用ステップ操作機構では、運転座席に座した作業者がステップ操作ロッドの上端にある操作ハンドルを手で握り、そのまま操作ハンドルを上方または下方に移動操作することで、乗降用ステップを作用位置と格納位置との間で切り換えることができる。また、ステップ操作ロッドはエンジンカバーの前壁に沿って上下に延出されているので、搭乗運転部に対して出入りする作業者の邪魔になり難い。
【0009】
本発明の他の特徴構成は、前記操作ハンドルが前記エンジンカバーの上面に沿って車両の後方向きに延出されている点にある。
【0010】
本構成であれば、作業者が運転座席に座したままの体勢で操作ハンドルを握り、上下に操作し易い。また、本構成であれば、搭乗運転部に対して作業者が出入りする際や、作物などの刈り取り作業時に操作ハンドルが邪魔になり難い。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、前記乗降用ステップが、前記ステップ操作ロッドの上向きの移動操作によって前記作用位置から前記格納位置に操作され、前記ステップ操作ロッドの下向きの移動操作によって前記格納位置から前記作用位置に操作される点にある。
【0012】
本構成であれば、運転座席の作業者が、乗降用ステップを格納位置にしたい場合はステップ操作ロッドを上向きに、乗降用ステップを格納位置にしたい場合はステップ操作ロッドを下向きに、という具合にステップ操作ロッドの上下操作を直感的に操作できる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記搭乗運転部に対する乗降時に把持されて搭乗者の体重の一部を受ける乗降補助ハンドルが、前記操作ハンドルよりも車両の後方寄りの位置から、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜した状態で前方向きに延出されており、前記操作ハンドルは、前記乗降補助ハンドルの延長線と交差するように、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜して設けられている点にある。
【0014】
本構成であれば、作業者は例えば片足をステップに載せ、且つ、平面視において車内側へ斜め内側前向きに延出された乗降補助ハンドルを片手で握った位置にて、比較的容易に搭乗運転部に対して乗り降りできる。しかも、操作ハンドルは、乗降補助ハンドルの延長線と交差するように、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜して設けられているので、乗り降りの際に体重を不用意に操作ハンドルに預けてしまう虞が抑制される。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記搭乗運転部を備えたキャビンが、エンジンを覆う作業位置と、前記エンジンを露出させる非作業位置との間で前記車体に対して位置変更可能に設けられ、前記乗降用ステップが前記車体に支持されており、
前記ステップ操作ロッドは、少なくとも前記乗降用ステップに連結された下部ロッドと前記操作ハンドルを備えた上部ロッドとに分離可能に形成されている点にある。
【0016】
本構成であれば、ステップ操作ロッドの上部ロッドを下部ロッドから分離するという簡単な事前操作によって、キャビンを非作業位置に移動することが可能となり、非作業位置ではエンジンなどのメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体を示す側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】搭乗運転部を示す平面図である。
【図4】ステップ操作機構(作用位置)を示す側面図である。
【図5】ステップ操作機構(作用位置)を示す正面図である。
【図6】ステップ操作機構(格納位置)を示す正面図である。
【図7】ステップ操作機構(作用位置)を示す平面図である。
【図8】作用位置におけるステップを示す正面図である。
【図9】格納位置におけるステップを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1にはコンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されており、このコンバインは、パイプ材などで形成される機体フレーム1(車体の一例)の下部に左右一対のクローラ式走行装置2(走行部の一例)を装備し、機体フレーム1の前部に刈取搬送部3を乗降揺動可能に連結し、機体フレーム1の左半部に脱穀装置4を搭載し、その脱穀装置4の後部に排ワラ処理部5を連結し、機体フレーム1の右後部に穀粒タンク6を搭載し、その穀粒タンク6にスクリュー搬送式の穀粒排出装置7を装備し、機体フレーム1の右前部に搭乗運転部8を形成するとともにその搭乗運転部8を覆うキャビン9を装備して構成されている。左右のクローラ式走行装置2は、それらの等速駆動で直進状態を現出し、かつ、それらの差動で旋回状態を現出する。
【0019】
刈取搬送部3は、機体の走行に伴って、刈取対象となる所定条数の植立穀稈を、複数のデバイダ10や複数の引起装置11で分草して引き起こすとともに、それらの株元側をバリカン型の切断装置12で切断し、切断後の刈取穀稈を、穀稈搬送装置13で起立姿勢から横倒れ姿勢に姿勢変更させながら後方の脱穀装置4に向けて搬送するように構成されている。
【0020】
脱穀装置4は、刈取搬送部3からの刈取穀稈の株元側に対して脱穀処理を施す脱穀部(不図示)、脱穀部からの処理物に対して選別処理を施す選別部(不図示)、及び、選別された単粒化穀粒を1番物として回収し、枝梗付き穀粒などを2番物として回収する回収部(不図示)などを備え、回収した1番物を揚送コンベヤ(不図示)を介して穀粒タンク6に供給し、2番物を2番還元装置(不図示)を介して選別部に還元し、切れワラなどの塵埃を排塵口から機外に排出し、脱穀処理後の排ワラを排ワラ処理部5に供給する。
【0021】
2番還元装置には、2番物に対して再び脱穀処理を施す処理部が備えられている。排ワラ処理部5は、脱穀部からの排ワラをそのまま機体後方に搬送して機外に放出する長ワラ放出状態と、脱穀部からの排ワラを細断装置に供給して細断してから機外に放出する細断放出状態とに切り換え可能に構成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク6は、搭乗運転部8の後方に位置する作業位置と、搭乗運転部8の後方を開放するメンテナンス位置(二点鎖線で示す)とに、穀粒タンク6の後方に設定した縦向きの軸心P1周りに位置変更可能に構成されており、作業位置に位置変更した状態では、揚送コンベヤで搬送される穀粒の貯留や、貯留した穀粒の穀粒排出装置7による機外への排出が可能となり、メンテナンス位置に位置変更した状態では、脱穀装置4と穀粒タンク6との間や穀粒タンク6と搭乗運転部8との間などに配備された図示しない各種機器や伝動系あるいは操作系などに対するメンテナンス作業が行い易くなる。
【0023】
穀粒排出装置7は、穀粒タンク6に貯留した穀粒を、穀粒タンク6の底部に前後向きに配備した底スクリュー6Aで後方に向けて搬送し、その底スクリュー6Aの搬送端に縦向きに連設したスクリュー式の縦搬送部6Bで揚送し、その縦搬送部6Bの搬送端に上下揺動可能かつ旋回可能に連設したスクリュー式の排出搬送部7Aで、トラックの荷台などの所望の排出位置に向けて搬送し、排出搬送部7Aの搬送端に形成した排出口7Bから機外に排出する。
【0024】
そして、穀粒タンク6の後方に立設される縦搬送部6Bのスクリュー軸心P1が、穀粒タンク6の位置変更用の軸心P1に設定され、縦搬送部6Bが穀粒タンク6の位置変更用の支柱に兼用されている。
【0025】
図1及び図3に示すように、搭乗運転部8は、機体フレーム1の右前端部に立設したフロントパネル15に、機体の操向と刈取搬送部3の昇降操作とを可能にする十字揺動式の操縦レバー16(操向操作具の一例)や、走行速度などを表示する表示パネル17などを装備し、フロントパネル15(操縦部の一例)の左端に連接する状態で機体フレーム1の前部左右中央側に立設したサイドパネル18に、主変速装置として装備した静油圧式無段変速装置(図示せず)の変速操作を可能にする変速レバー19、及び、刈取搬送部3に対する伝動を断続する刈取クラッチ(図示せず)の切り換え操作と脱穀装置4に対する伝動を断続する脱穀クラッチ(図示せず)の切り換え操作とを可能にするクラッチレバー20などを装備し、フロントパネル15とサイドパネル18とで区画された機体フレーム1の右前部に樹脂成型品からなる搭乗ステップ21を敷設し、その搭乗ステップ21の後上方に運転座席22を配備して形成されている。
【0026】
図1及び図3〜6に示すように、搭乗運転部8の後方にはエンジンボンネット24の一部をなすエンジンカバー24Aが形成されており、運転座席22は、このエンジンカバー24Aの上方に前後位置調節可能に配置されている。エンジンボンネット24は、ボンネット本体25や、そのボンネット本体25の右後部に設けたヒンジH1を介して開閉揺動可能となるようにボンネット本体25に連結されるボンネットカバー30、などを備えて構成され、ボンネットカバー30の右側壁30に吸気口31が形成されるとともに防塵網32が張設されている。エンジンカバー24Aの右側角部は、平面視において、車両後方に向かって斜めに延出する傾斜縦壁部24B(前壁の一例)となっている。
【0027】
図1、図4及び図5に示すように、エンジンルームには、水冷式のエンジン34、冷却ファン(不図示)、ラジエータ(不図示)、空調用のコンデンサ(不図示)、及び、エンジン34の上方に配備されるエアークリーナ(不図示)などが収容されており、冷却ファンの吸引作用で、防塵網32で除塵される外気を吸気口31からエンジンルーム内に導いてエンジン34の冷却などを行うように構成されている。
【0028】
そして、ラジエータやコンデンサに付着した塵埃の除去、空調用冷媒の補充、及び、エアークリーナのエレメント交換、などのメンテナンス作業は、ボンネットカバー30を開き操作してエンジンルームの右側方を開放することで行えるようになっている。
【0029】
図1、図3及び図5〜8に示すように、キャビン9は、乗降口40を備えたキャビンフレーム42に、フロントガラス43、左サイドガラス44、右サイドガラス45、リヤガラス(不図示)、及びルーフ部47、などを装備してキャビン本体48を形成し、そのキャビン本体48の右側部に、縦向き軸心を備えたヒンジH2を介して、乗降口40を閉塞する全閉位置と乗降口40を開放する全開位置とにわたって揺動可能なドア49を備えている。
【0030】
図1及び図6に示すように、ドアフレーム部41は、搭乗運転部8がその後下部である運転座席22の下方にエンジンボンネット24を備えることから、乗降口40として、その上部側に対して下部側が前方寄りに偏倚した形状のものを形成するように構成されており、これによって、搭乗運転部8の後下部にエンジンボンネット24を備えるものでありながら、その影響で狭くなる虞のある乗降口40の下部側を広く確保することができ、結果、乗降口40からの乗降を良好に行える。
【0031】
図2に示すように、キャビン本体48は、エンジン34の上方に位置する作業位置と、エンジン34の前部や上部を開放するメンテナンス位置(二点鎖線で示す)との間で、脱穀装置4の右壁部の前端に設けられた縦向きの軸心P2周りに位置変更可能に構成されている。キャビン本体48のメンテナンス位置への切り換えは、予め穀粒タンク6をメンテナンス位置に切り換えた上で行われる。
【0032】
搭乗ステップ21を支持する機体フレーム1のステップ支持部23には、乗降口40からの乗降を助ける手段として、クローラ式走行装置2のクローラベルトの上端と同等の高さに第1補助ステップ51(乗降用ステップの一例)が配置され、第1補助ステップ51と搭乗ステップ21との中間の高さに第2補助ステップ52が配置されている。
【0033】
図5及び図6に示すように、車両幅方向への張り出し量の少ない第2補助ステップ52は折り畳むことができない固定式であるが、第1補助ステップ51は、搭乗運転部8の側方に展開された作用位置と搭乗運転部寄りに立設した格納位置との間で、前後向きの軸心P3周りの揺動切換可能に設けられている。
【0034】
第2補助ステップ52はボンネットカバー30の面から殆ど突出していない。第1補助ステップ51は、格納位置においてボンネットカバー30の面から僅かに突出しているが、作用位置ではボンネットカバー30から右方に十分に突出して乗降を助けている。
【0035】
第1補助ステップ51の揺動切換は、キャビン9の内部にまで延出されたステップ操作ロッド60の上下移動によって実施可能に構成されている。ステップ操作ロッド60は、第1補助ステップ51に連結された下部ロッド61と、下部ロッド61の上端からキャビン9の内部まで延出された上部ロッド62とからなる。下部ロッド61と上部ロッド62とは、第1補助ステップ51と第2補助ステップ52との中間の高さに配置されたジョイント部64によって分離可能に連結されている。
【0036】
上部ロッド62は、ジョイント部64に連結された下端から搭乗ステップ21の上方まで概して真上に直線状に延出された長尺の第1延出部62Aと、第1延出部分62Aからエンジンカバー24Aの傾斜縦壁部24Bに向かって斜め上方に延出された短い第2延出部62Bと、第2延出部62Bの上端から再び概して真上に直線状に延出された長尺の第3延出部62Cと、第3延出部62Cの上端から車両の後方向きに延出された第4延出部62Dとを有する。
【0037】
第2補助ステップ52の後端付近に相当するキャビン本体48の箇所には、側面視で逆L字状の案内ブラケット65が支持されている。上部ロッド62の第2延出部62Bが、案内ブラケット65に形成された案内貫通孔65Hと、搭乗ステップ21を構成する鋼板に形成された案内貫通孔21Hとに挿通され、これらの案内貫通孔65H,21Hによって摺動案内されることで、ステップ操作ロッド60の上下移動経路が決められている。
【0038】
上部ロッド62の第3延出部62Cは、エンジンカバー24Aの傾斜縦壁部24Bに沿って、エンジンカバー24Aの上面24Tを越える高さまで延び、そこからエンジンカバー24Aの上面24Tに沿って車両の後方向きに延出した第4延出部62Dにはゴム製または樹脂製のカバーが外嵌されて操作ハンドル63を構成している。図7に示すように、操作ハンドル63は平面視において、操作し易く、且つ、非操作時には邪魔になり難いように、第4延出部62Dから後方且つ内側寄りに斜めに延出されている。作業者は運転座席22に腰掛けたままの体勢で、操作ハンドル63を握ってステップ操作ロッド60を上下移動させ、第1補助ステップ51を揺動操作することができる。
【0039】
ステップ操作ロッド60の下端位置は第1補助ステップ51の作用位置と対応し、ステップ操作ロッド60の上端位置は第1補助ステップ51の格納位置と対応している。ステップ操作ロッド60長さは、第1補助ステップ51が作用位置となるステップ操作ロッド60の下端位置において、操作ハンドル63が標準高さに設定された運転座席22のシートの下面22Bとエンジンカバー24Aの上面24Tとの中間の高さに来るように設定されている。例えば、ステップ操作ロッド60の上端位置では、操作ハンドル63が運転座席22のシートの下面22Bの高さに来るように設定すればよい。
【0040】
第1補助ステップ51の車両前後方向の両端には、一対の補助支持板54A,54Bが立設されている。補助支持板54A,54Bは、第1補助ステップ51の作用位置において、車両幅方向に関して第1補助ステップ51の中央部よりも内側に配置されている。
また、ステップ支持部23のフレーム23Aからは、一対の支持ブラケット70が車両幅方向の外向きに延出されている。各支持ブラケット70は、フレーム23Aに溶接された基端部70Aと、基端部70Aの車両前後方向の両端から車両幅方向の外向きに延出された1対の支持アーム部70Bとを一体的に備える。前後の補助支持板54A,54Bは、これらの1対の支持アーム部70Bの間に内装された状態で、補助支持板54A,54Bに形成された第1貫通孔と、支持アーム部70Bに形成された貫通孔とに同時に挿通される一対の連結ピン71によって枢支されている。
【0041】
連結ピン71を挿通する第1貫通孔は、第1補助ステップ51が作用位置の際に、補助支持板54A,54Bの車両幅方向の内側上端に形成されており、ステップ操作ロッド60の下部ロッド61の下端は、第1補助ステップ51が作用位置の際に、後側の補助支持板54Bの第1貫通孔よりも下方に位置する第2貫通孔に枢支されている。
【0042】
第1補助ステップ51には、第1補助ステップ51を作用位置と格納位置とのいずれかに選択的に位置決めするトグルバネ式の位置規制機構として、1つのコイルスプリング80が設けられている。コイルスプリング80の一端は、前側の補助支持板54Aの車両前後方向に関して第2貫通孔と一致する位置から前方に延出された支持軸73に係止され、コイルスプリング80の他端は、フレーム23Aの外面から概して水平な姿勢で延出された係止板23Bに係止されている。
【0043】
前側の1対の支持アーム部70Bの間の下方位置には、第1補助ステップ51の作用位置において、第1補助ステップ51の車両幅方向に関する内側端部の上端が、コイルスプリング80の付勢力によって押付けられる作用位置規制板75が配置されている。
前側の1対の支持アーム部70Bの上端には、第1補助ステップ51の格納位置において、前側の補助支持板54Aの上端に取り付けられた被規制板55の上端が、コイルスプリング80の付勢力によって押付けられる格納位置規制板76が配置されている。
【0044】
車両の外から見て運転座席22の後方には、搭乗運転部8に対する乗り降り時に主に搭乗者の左手によって把持されて搭乗者の体重の一部を受けるための乗降補助ハンドル85が設けられている。乗降補助ハンドル85は、エンジンカバー24Aの上面24Tから上向きに立設された補助ロッド84の先端に設けられている。
図7に示すように、乗降補助ハンドル85は、標準高さに設定されている運転座席22のシートの上面22Aと下面22Bとの中間の高さにあり、ステップ操作ロッド60の操作ハンドル63よりも車両の後方寄りの位置から、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜した状態で前方向きに延出されている。
【0045】
操作ハンドル63は平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜して設けられているので、操作ハンドル63は乗降補助ハンドル85の延長線と略垂直に交差しているが、平面視において乗降補助ハンドル85の先端と操作ハンドル63との間には、操作ハンドル63の直径を上回る間隙がある。
【0046】
図5に示すように、第1補助ステップ51が作用位置にあるとき、操作ハンドル63は乗降補助ハンドル85よりも十分に低い位置にあり、且つ、乗降補助ハンドル85よりもキャビン9の内側寄りにあるので、搭乗者が第1補助ステップ51と第2補助ステップ52に足を置きながら搭乗ステップ21に向かうとき、操作ハンドル63よりも乗降補助ハンドル85が先に搭乗者の視野に入る。また、搭乗者から見て左側に見えて来る乗降補助ハンドル85は、搭乗者が延出方向を確認し易く、且つ、左手で握り易い角度で延出されている。他方、操作ハンドル63は、搭乗者が延出方向を確認に難く、且つ、左右のどちらの手でも握り難い角度で延出されている。
【0047】
下部ロッド61と上部ロッド62とを連結するジョイント部64は、下部ロッド61の上端から上方に延出されたスリーブ体61Aを備えている。スリーブ体61Aには、上部ロッド62の下端が挿通されている。スリーブ体61Aの上端には、互いに径方向で対向した一対の貫通孔が形成されており、上部ロッド62の下端にも、互いに径方向で対向した一対の貫通孔が形成されている。スリーブ体61Aの上端と上部ロッド62の下端とは、これらの貫通孔に同時に横向きに挿通された連結ピン90によって連結され、連結ピン90の一端に形成された貫通孔には、連結ピン64Pの抜け止め手段として割りピン91が挿通されている。
【0048】
キャビン本体48を縦向きの軸心P2周りにメンテナンス位置に切り換える際には、第2補助ステップ52はキャビン本体48と共に回動するが、第1補助ステップ51はキャビン本体48と共に回動せず機体フレーム1側に残る。したがって、案内ブラケット65の貫通孔65Hと搭乗ステップ21の案内貫通孔21Hとに同時に挿通されている上部ロッド62が、メンテナンス位置への切り換えの障害となるので、予め上部ロッド62を除去した状態で切り換えが実施される。この場合は、割りピン91を除去し、連結ピン64Pを抜き取れば、上部ロッド62を案内ブラケット65の貫通孔65Hと搭乗ステップ21の案内貫通孔21Hから上向きに抜き取ることができる。
【0049】
〔別実施形態〕
〈1〉ステップ操作ロッド60の上下移動操作によって、第1補助ステップ51と第2補助ステップ52の双方が位置切り換えされる形態で実施してもよい。
【0050】
〈2〉第1補助ステップ51の作用位置と格納位置との位置切り換えを、縦向きの軸心周りの揺動、又は、左右方向の摺動で行う形態で実施してもよい。
【0051】
〈3〉キャビン本体48に対する、エンジン34の上方に位置する作業位置とエンジン34の前部や上部を開放するメンテナンス位置との間での位置変更が、縦向きの軸心P2周りではなく、キャビン本体48の下部前端付近などに車体の幅方向に沿って延びた横軸心周りで行われる形態で実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
操向操作具を有する操縦部とエンジンカバーの上方に配置された運転座席とを搭乗運転部に備えたコンバイン(普通型コンバインやキャビン無しのコンバインを含む)に対して、搭乗運転部に対する乗降のための乗降用ステップを、車体の側方に展開された作用位置と車体寄りに退避した格納位置との間で位置切換可能に設けた構成として利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 機体フレーム(車体)
2 クローラ式走行装置(走行部)
8 搭乗運転部
9 キャビン
15 操縦部
16 操向操作具
21 搭乗ステップ
21H 案内貫通孔
22 運転座席
24 エンジンボンネット
24A エンジンカバー
24B 傾斜縦壁部(前壁、エンジンカバー)
24T 上面(エンジンカバー)
34 エンジン
40 乗降口
48 キャビン本体
51 第1補助ステップ(乗降用ステップ)
52 第2補助ステップ
60 ステップ操作ロッド
61 下部ロッド
62 上部ロッド
63 操作ハンドル
64 ジョイント部
65 案内ブラケット
65H 案内貫通孔
70 支持ブラケット
70A 基端部
70B 支持アーム部
71 連結ピン
73 支持軸
80 コイルスプリング
84 補助ロッド
85 乗降補助ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作具を有する操縦部とエンジンカバーの上方に配置された運転座席とを搭乗運転部に備え、
前記搭乗運転部に対する乗降のための乗降用ステップが、車体の側方に展開された作用位置と車体寄りに退避した格納位置との間で位置切換可能に設けられており、
前記エンジンカバーの前壁に沿って上下に延出されたステップ操作ロッドの下端に前記乗降用ステップが連結され、前記ステップ操作ロッドの上端に操作ハンドルが設けられ、
前記操作ハンドルを介しての前記ステップ操作ロッドの上下移動操作によって、前記乗降用ステップの位置切換操作が行われるコンバインのステップ操作機構。
【請求項2】
前記操作ハンドルが前記エンジンカバーの上面に沿って車両の後方向きに延出されている請求項1に記載のコンバインのステップ操作機構。
【請求項3】
前記乗降用ステップが、前記ステップ操作ロッドの上向きの移動操作によって前記作用位置から前記格納位置に操作され、前記ステップ操作ロッドの下向きの移動操作によって前記格納位置から前記作用位置に操作される請求項1または2に記載のコンバインのステップ操作機構。
【請求項4】
前記搭乗運転部に対する乗降時に把持されて搭乗者の体重の一部を受ける乗降補助ハンドルが、前記操作ハンドルよりも車両の後方寄りの位置から、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜した状態で前方向きに延出されており、前記操作ハンドルは、前記乗降補助ハンドルの延長線と交差するように、平面視において車両の前後方向に対して車内側に傾斜して設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のコンバインのステップ操作機構。
【請求項5】
前記搭乗運転部を備えたキャビンが、エンジンを覆う作業位置と、前記エンジンを露出させる非作業位置との間で前記車体に対して位置変更可能に設けられ、前記乗降用ステップが前記車体に支持されており、
前記ステップ操作ロッドは、少なくとも前記乗降用ステップに連結された下部ロッドと前記操作ハンドルを備えた上部ロッドとに分離可能に形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のコンバインのステップ操作機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−95551(P2012−95551A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244006(P2010−244006)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】