説明

コンバインの伝動構造

【課題】手間を掛けずに脱穀装置の回転速度の変更を行えるようにする。
【解決手段】エンジンからの動力を複数の被駆動機器Dに伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造において、伝動手段は、エンジンからの動力を受ける入力側プーリ86Aと、複数の被駆動機器Dのうちの脱穀装置3に動力を伝達する出力側プーリ86Bとを備えて構成され、入力側プーリ86Aと出力側プーリ86Bとの少なくとも何れか一方に、大径プーリ121のベルト巻回部121aと小径プーリ120のベルト巻回部120aとを同一面内に且つ同一回転軸心上に配置し、大径プーリ121を着脱自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインで取り扱う収穫対象には、稲麦や大豆等があり、特に比較的軟らかくて損傷し易いものとしては大豆等が挙げられる。従って、損傷し易い収穫対象を処理する場合には、収穫物に傷をつけ難くするために、被駆動機器の駆動回転速度を低くすることが好ましい。
従来、この種のコンバインの伝動構造としては、エンジンから脱穀装置にわたる伝動経路に、ギヤ変速装置を設置して、脱穀装置の回転速度を変更できるように構成してあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−56081号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコンバインの伝動構造によれば、脱穀装置の回転速度を変更するのに、ギヤ変速装置を用いて行っており、装置が複雑になると共に、設置スペースも嵩張ることから、構造の簡単化が望まれる。
そこで、伝動手段として、一対のプーリと伝動ベルトとを使用することが挙げられる。
この場合、一対のプーリのうちの一方のプーリは、それぞれ着脱自在な大径のものと小径のものとの二種類を用意しておき、要求される回転速度に応じて、使用する径のプーリを選択して着け替えることで、脱穀装置の回転速度を変更することになる。
しかし、大径プーリが装着されている状態から小径プーリに着け替えたり、その逆に、小径プーリが装着されている状態から大径プーリに着け替える時には、まず、装着されているプーリを取り外し、その後、着け替えるプーリを装着し直す手間がかかり、脱穀装置の回転速度の変更作業が繁雑になる問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、手間を掛けずに脱穀装置の回転速度の変更を行えるコンバインの伝動構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造において、前記伝動手段は、前記エンジンからの動力を受ける入力側プーリと、前記複数の被駆動機器のうちの脱穀装置に動力を伝達する出力側プーリとを備えて構成され、前記入力側プーリと前記出力側プーリとの少なくとも何れか一方に、大径プーリのベルト巻回部と小径プーリのベルト巻回部とを同一面内に且つ同一回転軸心上に配置し、前記大径プーリを着脱自在に構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、脱穀装置の回転速度の変更を行うには、例えば、大径プーリが装着されている状態から小径プーリに変更するには、大径プーリを取り外すだけで、その内側に同一回転軸心上に配置されている小径プーリが使用可能な状態となり、わざわざ小径プーリを取り付ける手間がかからない。
一方、例えば、小径プーリが装着されている状態から大径プーリに変更するには、小径プーリの外側に大径プーリを取り付けるだけで大径プーリが使用可能な状態となり、わざわざ小径プーリを取り外す手間がかからない。
また、大径プーリと小径プーリとは、それぞれのベルト巻回部が同一面内に配置されているから、上述の何れのプーリの使用状態においても、伝動ベルトの巻回経路が傾かないので、効率よく回転力を伝達できる環境を維持できる。
このように、脱穀装置の回転速度の変更作業を、手間をかけずに簡単に且つ迅速に行うことができる。
また、小径プーリに関しては、大径プーリを使用している状態でも取り外す必要がないから、別途、保管個所を用意する必要がない。
尚、大径プーリと小径プーリとを設けるのは、入力側プーリ、又は、出力側プーリ、又は、入力側プーリと出力側プーリとの両方、の使用形態をとることが可能である。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記伝動手段は、前記脱穀装置のうちの扱胴に動力を伝達する扱胴伝動部であるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、伝動手段によって扱胴の回転速度の変更を行うことができ、扱胴の回転速度を、比較的硬くて損傷し難い稲や麦などに扱き処理を施すのに適した高速と、比較的軟らかくて損傷し易い大豆などに扱き処理を施すのに適した低速とに切り換えることができる。
【0010】
つまり、損傷し難い稲や麦などを収穫する場合には、扱胴の回転速度を稲麦用の高速に切り換えることによって処理能力の向上を図ることができ、損傷し易い大豆などを収穫する場合には、扱胴の回転速度を大豆用の低速に切り換えることによって扱き処理時の損傷による品質の低下を防止することができる。
【0011】
本発明の第3の特徴構成は、前記伝動手段は、前記脱穀装置のうちの選別駆動部に動力を伝達する選別部伝動部であるところにある。
【0012】
本発明の第3の特徴構成によれば、伝動手段によって選別駆動部の回転速度の変更を行うことができ、選別駆動部の回転速度を、稲や麦などに扱き処理を施すのに適した高速と、大豆などに扱き処理を施すのに適した低速とに切り換えることができる。
【0013】
つまり、損傷し難い稲や麦などを収穫する場合には、選別駆動部の回転速度を稲麦用の高速に切り換えることによって処理能力の向上を図ることができ、損傷し易い大豆などを収穫する場合には、選別駆動部の回転速度を大豆用の低速に切り換えることによって選別処理時の損傷による品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】普通型コンバインの全体左側面図
【図2】普通型コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断左側面図
【図4】各カバーを取り外した脱穀装置の左側面図
【図5】伝動構造を示す脱穀装置の正面図
【図6】脱穀装置の正面図
【図7】普通型コンバインの伝動構成を示す概略図
【図8】扱胴用の伝動機構の構成を示す要部の縦断正面図
【図9】扱歯の支持状況を示す仕切板の後面図
【図10】送塵弁の取付状態を示す脱穀装置の上面図
【図11】送塵弁角度調整レバーの取付状況を示す正面視要部断面図
【図12】別実施形態の伝動構成を示す要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を普通型(全稈投入型)コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、普通型コンバインは、走行車体1の走行に伴って収穫対象の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送装置2を走行車体1から前方に向けて昇降揺動可能に延出した状態で装備し、刈取搬送装置2からの刈取穀稈に扱き処理を施し、扱き処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置3を走行車体1の左半部に搭載し、脱穀装置3での扱き処理及び選別処理で得た単粒化穀粒を貯留して籾袋への詰め込みを可能にする袋詰装置4を走行車体1の右半部に搭載して構成してある。
【0017】
走行車体1は、車体フレーム5の下部に左右一対のクローラ式走行装置6を装備し、車体フレーム5の前部右側領域に搭乗運転部7を形成して構成してある。
また、車体フレーム5の左側領域における脱穀装置3の前端部には、操作や点検時に利用可能な梯子130が固着してある。
梯子130は、金属パイプ材によって形成してあり、車体フレーム5から、脱穀装置3の上端の範囲に配置されている。横に間隔をあけて縦配置に設けられた一対の縦パイプ130Aと、縦方向に間隔をあけて両縦パイプ130Aにわたって夫々固着された複数の横パイプ130Bと、車体フレーム5と、脱穀装置3とに梯子130を取り付ける複数のステー材130Cとを設けて構成してある。梯子130そのものは、平面視において、前方左側に向かって開いた姿勢に固定されており、昇降時に前方の刈取搬送装置2が邪魔になりにくいように構成されている。
また、梯子130には、コンバイン左側のバックミラー130Dと方向指示器130Eが取り付けられている。
【0018】
刈取搬送装置2は、走行車体1の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ8により未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分け、刈取搬送装置2の前部上方に配備した回転リール9により収穫対象穀稈の穂先側を後方に掻き込み、刈取搬送装置2の底部に装備したバリカン型の切断機構10により収穫対象穀稈の株元側を切断して収穫対象穀稈を取り込む。そして、取り込んだ収穫対象穀稈である刈取穀稈を、切断機構10の後方に配備したスクリュ搬送式のオーガ11により左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置3にわたるように架設した掻上げ搬送式のフィーダ12により脱穀装置3に供給搬送する。
【0019】
刈取搬送装置2の昇降揺動は、車体フレーム5とフィーダ12とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ13の伸縮作動により、刈取搬送装置2における脱穀装置3との接続端部となるフィーダ12の後端部に配備した左右向きのフィーダ駆動軸14を支点にして行う。
【0020】
図3〜6に示すように、脱穀装置3は、車体フレーム5に連結する脱穀フレーム15を上下に2分割可能に構成してある。脱穀フレーム15の上側フレーム部15Aには、フィーダ12が供給する刈取穀稈に扱き処理を施す脱穀部3Aを備えてある。脱穀フレーム15の下側フレーム部15Bには、脱穀部3Aでの扱き処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部3B、及び、その選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部3Cを備えてある。
【0021】
脱穀部3Aは、上側フレーム部15Aに前後方向視U字状の受網16などを装備して形成した扱室17に、前後向きの扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで刈取搬送装置2からの刈取穀稈に扱き処理を施すバータイプの扱胴19を配備して構成してある。
【0022】
選別部3Bは、受網16から漏下した処理物を後方に移送しながら揺動選別する揺動選別手段(選別駆動部に相当)20、揺動選別手段20に精選別用の選別風を供給する唐箕21、揺動選別手段20に粗選別用の選別風を供給する副唐箕22、及び、揺動選別手段20に2番物選別用の選別風を供給する2番唐箕23、などを脱穀部3Aの下方に配備して構成してある。
【0023】
回収部3Cは、揺動選別手段20の下方に、揺動選別手段20の前部側から漏下して唐箕21からの選別風を受けながら流下する単粒化穀粒を1番物として回収する1番回収部24と、揺動選別手段20の後部側から漏下して2番唐箕23からの選別風を受けながら流下する枝梗付き穀粒などを2番物として回収する2番回収部25とを、その順で前後に並ぶように配備して構成してある。
【0024】
脱穀部3Aにおいて、扱室17は、扱胴19を下方から覆う受網16、扱胴19の上部を開閉可能に上方から覆う上部カバー26、扱胴軸18の前端部を回転可能に支持する前側縦板部材27、扱胴軸18の後端部を回転可能に支持する後側縦板部材28、及び、フィーダ12からの刈取穀稈を受網16に案内する案内面29Aをフィーダ12の後端から受網16の前端にわたる後上がり傾斜姿勢で備えた穀稈案内板29、などによって区画形成してある。そして、前側縦板部材27と穀稈案内板29との間に、フィーダ12が掻上げ搬送した刈取穀稈の扱室17への供給を可能にする供給口30を形成してある。又、受網16の後端を支持する板状の後側支持部材31と後側縦板部材28との間に、扱き処理後の刈取穀稈である脱粒穀稈などの排出物の扱室17からの排出を可能にする排稈口32を形成してある。
【0025】
図3に示すように、扱胴19は、扱胴19の前端部を形成する掻込部33と扱胴19の後部側を形成する扱き処理部34とを、それらが前後に連なる状態で扱胴軸18を中心に正面視右回りに一体回転するように扱胴軸18に連結して構成してある。
【0026】
掻込部33は、前細りの円錐台状に形成した胴部分35の外周面に掻き込み搬送用の2枚の螺旋羽根36を装備して、扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで、穀稈案内板29が案内するフィーダ12からの刈取穀稈の全体を、2枚の螺旋羽根36によって後方の受網16や上部カバー26と扱き処理部34との間の扱き処理空間S1に掻き入れるスクリュ搬送式に構成してある。尚、掻込部33としては、胴部分35に螺旋羽根36に代えて整梳歯や扱歯などの異なる掻込部材を備えたものであってもよい。
【0027】
扱き処理部34は、その前端又は後端を形成する円盤状の支持板37,38を、前端用の支持板37が掻込部33の後端に連接し、後端用の支持板38が後側縦板部材28の直前に位置するように扱胴軸18に装備してある。又、円盤状の仕切板39を、扱き処理部34の前後中間部位となる前後の支持板37,38の中間又は略中間に位置するように扱胴軸18に装備してある。そして、これらの支持板37,38及び仕切板39の各外周部に、前後の支持板37,38にわたる長さを有する複数(例えば6本)の棒状部材40を、扱胴軸18に沿う前後向き姿勢で扱胴軸18から等距離の位置に扱胴19の周方向に等間隔で並ぶように連結し、かつ、各棒状部材40に、複数の扱歯41を棒状部材40から扱胴19の外方に向けて突出する姿勢で前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。これにより、扱室17の内部に扱室17に連通する内部空間S2が形成されたバータイプの扱胴19を構成してある。
【0028】
これにより、扱き処理部34は、扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで、受網16や上部カバー26との間の扱き処理空間S1に位置する刈取穀稈に扱歯41の打撃や扱歯41の梳き込みなどによる扱き処理を施し、この扱き処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に棒状部材40及び扱歯41の打撃や扱歯41の梳き込みなどによる扱き処理を施すように構成してある。
【0029】
そして、扱き処理部34の内部空間S2を扱き処理用の処理空間に使用することにより、大量の刈取穀稈を扱室17に供給した場合であっても、扱き処理空間S1での処理物の滞留や扱き処理空間S1の飽和を回避することができ、これにより、処理物の滞留や扱き処理空間S1の飽和に起因して十分な扱き処理が行われないまま処理物が受網16から漏下する、あるいは、扱き処理に要する負荷が増大して扱胴19に対する伝動系が損傷する、などの不都合の発生を防止することができる。
【0030】
仕切板39は、扱き処理部34に形成した内部空間S2の上手側部分を後側から塞ぐように扱胴軸18を中心にして配備した円板で構成してあり、これにより、脱穀処理物量が減少する扱き処理部34の前後中間部位においては、仕切板39が、扱き処理部34の内部空間S2での脱穀処理物の脱穀処理方向下手側への流動を阻止し、扱き処理部34の回転とともに脱穀処理物を扱き処理部34の周囲に導いて、脱穀処理物に対する扱歯41などの打撃や梳き込みなどによる脱穀や、単粒化穀粒の受網16からの漏下を促すようになることから、脱穀処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱粒穀稈などが扱き処理部34の内部空間S2を素通りして、脱粒穀稈とともに脱穀処理方向下手側端部の排稈口32から排出されることに起因した3番ロスの発生を阻止することができる。
【0031】
又、複数の扱歯41だけでなく複数の棒状部材40までもが、扱室内の処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0032】
尚、棒状部材40には、丸パイプ鋼材、角パイプ鋼材、丸棒鋼材、角棒鋼材、アングル材、又はチャンネル材などを採用することができる。各扱歯41には、丸棒鋼材、角棒鋼材、丸パイプ鋼材、又は角パイプ鋼材などを採用することができる。
【0033】
また、各扱歯41は、基端部が棒状部材40に固着されているが、固着姿勢は、先端部が、回転周方向での後方側に位置する状態に傾斜させて取り付けられている。
また、支持板37,38や仕切板39に対する棒状部材40の取付構造は、図9、図11に示すように、棒状部材40の外周部にブラケット40Aを設けておき、このブラケット40Aを、支持板37,38や仕切板39の該当個所に重ねてボルト止めして固定してある。
ブラケット40Aには、ボルト挿通穴40Bが、扱歯41の基端部を挟んだ2ヵ所に形成してある。
【0034】
支持板37,38や仕切板39には、ボルト挿通穴40Bに対応する位置にボルト挿通穴140が形成してある。このボルト挿通穴140は、各ブラケット40Aに対応させて2ヵ所ずつ設けられてあり、それぞれ扱き処理部34の径方向に沿う長穴として形成してある。従って、ボルトの本締めを行う前には、長穴内でのボルトのスライドが可能で、扱歯41の設置角度の変更を行えるように構成されている。扱歯41の角度変更は、収穫対象が損傷しやすい大豆の場合に、傾斜させる等の使い方ができる。
また、支持板37,38には、扱歯41の最大傾斜を規定するストッパ141が突起として形成してある。このストッパ141に前記ブラケット40Aの縁部が当接することでそれ以上の傾斜が規制される。
【0035】
上部カバー26の内部には、図3、図10、図11に示すように、扱胴19が扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転するのに伴って扱室17の上部に移動した刈取穀稈や処理物を車体後方に案内する複数の送塵弁42を、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。
この送塵弁42は、縦枢支軸42a周りに揺動できるように取り付けられている。揺動操作によって送塵弁42の平面視による傾斜角度が変更され、収穫対象の種類によって変更調整することができる。
各送塵弁42は、端部どうしがリンク部材42bによって連結されており、一つの送塵弁42を縦枢支軸42a周りに揺動操作することで、全ての送塵弁42の角度を変更することができる。
【0036】
また、操作用の送塵弁42は、上部カバー26の上方に縦枢支軸42aが貫通させてあり、その上端部に送塵弁角度調整レバー142が取り付けてある。
送塵弁角度調整レバー142は、金属製の棒状部材で構成してあり、その基端部が縦枢支軸42aに固定されており、先端部が操作部である。送塵弁角度調整レバー142の揺動操作位置の固定は、上部カバー26の上面に沿って延設された固定プレート26aへのネジ止めによって実施される。固定プレート26aに形成された複数のネジ穴26bのうちの一つに送塵弁角度調整レバー142を貫通する固定ネジ26cを螺合させることで、送塵弁角度調整レバー142の位置固定を行える。
【0037】
図3に示すように、揺動選別手段20は、その後下部に備えた偏心カム式の揺動駆動機構43の作動で前後揺動するシーブケース44を備え、そのシーブケース44の上部に、粗選別用のグレンパン45と粗選別体46とストローラック47とを、その順でシーブケース44の前端から後方に向けて連なるように配備し、シーブケース44の下部に、案内板48とグレンシーブ49とをその順で前後に連接配備し、かつ、グレンシーブ49の後方にグレンシーブ49と連なるように2番物選別用の2番選別体50を配備して構成してある。
【0038】
粗選別用のグレンパン45は、縦断側面形状が鋸刃状になるように屈曲形成した板金材で構成してあり、その上面が副唐箕22の副唐箕軸53よりも低い位置に位置する状態で配備してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の前端部から漏下してグレンパン45に堆積する穀粒含有率の高い処理物を比重差選別して比重の小さい稈屑などの塵埃と比重の大きい穀粒とに上下に層分けしながら後方の粗選別体46に移送する。これにより、粗選別体46での穀粒の漏下を促進させることができる。
【0039】
粗選別体46には、複数のチャフリップ板46Aを左右向きの姿勢で前後方向に設定間隔をあけて整列配備して構成したチャフシーブ46を採用してある。チャフシーブ46は、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の前部側及びグレンパン45からの処理物に篩い選別処理を施して、穀粒などをチャフリップ板46Aの間から漏下させながら、チャフリップ板46Aの間から漏下しなかった処理物を後方のストローラック47に移送する。
【0040】
尚、チャフシーブ46としては、複数のチャフリップ板46Aを前後方向に連動揺動可能に連結して開度調節可能に構成した可動式のものであってもよく、又、複数のチャフリップ板46Aを所定の後傾斜姿勢で固定して開度調節不能に構成した固定式のものであってもよい。又、粗選別体46として、チャフシーブ46に代えて、単一の平板に複数の漏下孔及び選別片を設定間隔をあけて整列形成して構成した選別プレートを採用してもよく、又、鋸刃状に形成した複数のラック板を前後向きの姿勢で左右方向に設定間隔をあけて整列配備して構成したストローラックを採用してもよい。
【0041】
ストローラック47は、鋸刃状に形成した複数のラック板47Aを後上がりの傾斜姿勢で後向きに延出する片持ち状態で左右方向に設定間隔をあけて整列配備して構成してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の後部側及び粗選別体46からの処理物に各ラック板47Aの左右の振れによるほぐし作用を施して、穀粒などをラック板47Aの間から漏下させながら、ラック板47Aの間から漏下しなかった処理物をストローラック47の後端から流下させる。
【0042】
グレンシーブ49は、粗選別体46の後部側の下方に後上がり傾斜姿勢で配備したクリンプ網又は樹脂網などから構成してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、粗選別体46及び案内板48からの穀粒含有率の高い処理物に篩い選別処理を施して、単粒化穀粒を1番物として漏下させながら、漏下しない枝梗付き穀粒などを2番物として稈屑などとともに後方の2番選別体50に移送する。
【0043】
2番選別体50には、複数のチャフリップ板50Aを左右向きの姿勢で前後方向に設定間隔をあけて整列配備して構成した2番チャフシーブ50を採用してある。2番チャフシーブ50は、その後端がシーブケース44の後縦壁44Aに近接するように後上がりの傾斜姿勢でシーブケース44の後部に配備してあり、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の後端部、ストローラック47、及びグレンシーブ49からの処理物に篩い選別処理を施して、枝梗付き穀粒などを2番物としてチャフリップ板50Aの間から漏下させながら、チャフリップ板50Aの間から漏下しない長い稈屑などの処理物をシーブケース44の後方に移送する。
【0044】
グレンシーブ49と2番チャフシーブ50とは側面視で前後に一直線上に並ぶように配備し、チャフシーブ46と2番チャフシーブ50とは、2番チャフシーブ50の前端部がチャフシーブ46の後端部よりも低い配置高さとなるように段差をつけた状態で前後に配備してある。
【0045】
尚、2番チャフシーブ50としては、複数のチャフリップ板50Aを前後方向に連動揺動可能に連結して開度調節可能に構成した可動式のものであってもよく、又、複数のチャフリップ板50Aを所定の後傾斜姿勢で固定して開度調節不能に構成した固定式のものであってもよい。
【0046】
唐箕21は、揺動選別手段20の前下方に配備してあり、左右向きの唐箕軸51を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、唐箕ケース52の後下部に形成した吹出口52Aから、後上方のグレンシーブ49と1番回収部24との間、グレンシーブ49の全域、及び、グレンシーブ49と2番チャフシーブ50との間、を吹き抜ける精選別用として供給するように構成してある。
【0047】
唐箕21の吹出口52Aには、唐箕21からの選別風を、グレンシーブ49及びグレンシーブ49の底面近くを吹き抜ける上層風と、1番回収部24の上方近傍を吹き抜ける下層風とに分ける風向板52Bを配備してある。風向板52Bは、上層風の流速を高めるための絞り面52Baを上部に備え、下層風の吹き出し方向を水平又は水平近くに修正する風向部52Bbを後端部から後下方向きに延出させてある。
【0048】
これにより、唐箕21からの選別風を、グレンシーブ49から漏下して1番回収部24に流下する処理物、及び、グレンシーブ49による篩い選別中の処理物に前下方から作用させて、それらの処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて後上方に風力搬送する風力選別を行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃の1番回収部24への混入を防止しながらグレンシーブ49から漏下する単粒化穀粒を1番回収部24に回収する1番回収処理を精度良く行なうことができる。
【0049】
特に、グレンシーブ49から漏下した直後の処理物には、流速を高めた上層風が作用することにより、比較的大きい稈屑などを効率良く風力選別することができ、比較的大きい稈屑などが取り除かれて1番回収部24の近くまで流下した処理物には、1番回収部24の上方近傍を水平又は略水平に吹き抜ける下層風が作用することにより、この処理物に残留する比較的小さい稈屑などを精度良く風力選別することができる。
【0050】
副唐箕22は、扱胴19の掻込部33を下方から覆うように配備した穀稈案内板29と前記唐箕21との間における揺動選別手段20よりも前側の空間に配備してあり、左右向きの副唐箕軸53を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、副唐箕ケース54の後下部に形成した吹出口54Aから、粗選別用のグレンパン45の底面に備えた後下がり傾斜姿勢の上側風向板55と案内板48から前方に水平に延出した下側風向板56との間、チャフシーブ46と案内板48及びグレンシーブ49との間、並びに、ストローラック47と2番チャフシーブ50との間、を吹き抜ける粗選別用として供給するように構成してある。尚、副唐箕22の側面視での外径(回転直径)は唐箕21の側面視での外径(回転直径)の1/2(又は略1/2)に設定してある。
【0051】
これにより、副唐箕22からの選別風を、上側風向板55と下側風向板56との間の後窄みの空間を通して流速を高めた状態で、チャフシーブ46を漏下して案内板48及びグレンシーブ49に流下する処理物や、受網16の後端部及びストローラック47から流下する処理物に効果的に作用させることができ、その結果、それらの処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて後上方に風力搬送する風力選別を良好に行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃のグレンシーブ49や2番チャフシーブ50への流下をより確実に抑制することができ、グレンシーブ49及び2番チャフシーブ50での選別効率や選別精度の向上を図ることができる。
【0052】
又、副唐箕22からの選別風がチャフシーブ46のチャフリップ板46Aの間を通過し難くなることから、副唐箕22からの選別風がチャフシーブ46のチャフリップ板46Aの間を勢いよく通過することに起因してチャフシーブ46からの漏下が抑制されて後方のストローラック47に移送される処理物が増えることによる選別効率の低下を防止することができる。
【0053】
2番唐箕23は、2番チャフシーブ50の前下方における1番回収部24と2番回収部25との間に配備してあり、左右向きの2番唐箕軸57を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、2番唐箕ケース58の後上部に形成した吹出口58Aから、2番チャフシーブ50の下方を通過して2番チャフシーブ50の後端部から後上方に吹き抜ける2番選別用として、揺動選別手段20の後縦壁であるシーブケース44の後縦壁44Aに向けて供給するように構成してある。又、吹出口58Aは、その吹き出し方向下手側の端部が2番チャフシーブ50の前端と前後方向で一致又は略一致するように後方側に延出してあり、しかも、その上側及び下側の案内面が吹き出し方向下手側ほど上下間隔が狭くなる先窄み形状に形成してある。尚、吹出口58Aの上側の案内面は、側面視で逆V字状に屈曲した形状に形成してある。
【0054】
つまり、2番唐箕23からの選別風を先窄み形状の吹出口58Aにより流速を高めた状態で2番チャフシーブ50の前端近くから吹き出させることができ、これにより、2番唐箕23からの選別風を2番チャフシーブ50を漏下して2番回収部25に流下する処理物に効果的に作用させることができ、その結果、その処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて、チャフリップ板50Aとの引っ掛かりで2番チャフシーブ50の後端部上に滞留する長い稈屑などとともに、2番チャフシーブ50の後端部から後上方に風力搬送する風力選別を良好に行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃の2番回収部25への混入を防止しながら2番チャフシーブ50から漏下する枝梗付き穀粒などを2番回収部25に回収する2番回収処理を精度良く行なうことができる。
【0055】
又、2番唐箕23からの選別風が2番チャフシーブ50の前部側に配備したチャフリップ板50Aの間を通過し難くなることから、チャフシーブ46の後端部付近で合流した唐箕21及び副唐箕22からの選別風に影響を及ぼし難くなるとともに、2番唐箕23からの選別風が2番チャフシーブ50の前部側のチャフリップ板50Aの間を勢いよく通過することに起因して2番チャフシーブ50の前部側からの漏下が抑制されてシーブケース44の後方に移送される穀粒が増えることによる穀粒回収効率の低下を防止することができる。
【0056】
回収部3Cにおいて、1番回収部24はグレンシーブ49から漏下した1番物を底部の1番物搬出領域に流下案内する側面視底窄まり形状に形成してある。2番回収部25は、2番チャフシーブ50から漏下した2番物を底部の2番物搬出領域に流下案内する側面視底窄まり形状に形成してある。又、2番回収部25の前部上方には、2番唐箕ケース58の吹出口58Aが前方側から覆うように延出している。
【0057】
1番回収部24の底部には、左右向きの1番スクリュ軸59を中心に左側面視左回りに回転することで、1番回収部24の1番物搬出領域まで流下した1番物を右方に搬送する1番搬送スクリュ60を配備してある。2番回収部25の底部には、左右向きの2番スクリュ軸61を中心に左側面視左回りに回転することで、2番回収部25の2番物搬出領域まで流下した2番物を右方に搬送する2番搬送スクリュ62を配備してある。
【0058】
1番搬送スクリュ60の右端部には、1番搬送スクリュ60が搬送した1番物を袋詰装置4の上部に揚送するバケット式の揚送コンベヤ63を連動連結してある。2番搬送スクリュ62の右端部には、2番搬送スクリュ62が搬送した2番物に再び扱き処理を施す再処理機構64、及び、この再処理機構64による再処理後の2番物を粗選別用のグレンパン45に還元搬送するスクリュ式の2番還元スクリュ65を連動連結してある。
【0059】
脱穀装置3の後端下部には、扱き処理に伴って排稈口32から流出した脱粒穀稈や選別処理によって揺動選別手段20の後方に搬出した長い稈屑などを細断して機外に排出するチョッパ66を配備してある。チョッパ66は、脱穀装置3の後端下部に連結した排稈カバー67の内部において、左右方向に一定間隔をあけて整列配備した複数の固定刃68に対して、左右向きのチョッパ軸69にその周方向及び左右方向に所定間隔をあけて整列装備した複数の回転刃70がチョッパ軸69を中心に左側面視左回りに回転することで脱粒穀稈などを細断するように構成してある。
【0060】
図2及び図7に示すように、このコンバインでは、搭乗運転部7における運転座席71の下方にエンジン72を配備してあり、このエンジン72からの動力を、エンジン72から左方に延出した出力軸73において走行用と作業用とに分岐してある。
【0061】
図7に示すように、走行用の動力は、エンジン72の出力軸73から走行用の伝動手段Aを介して左右のクローラ式走行装置6に伝達する。走行用の伝動手段Aは、ベルト伝動式の伝動機構74、静油圧式無段変速装置75、及び、トランスミッションケース76に内蔵したギア式伝動機構(図示せず)、などから構成してある。
【0062】
図7に示すように、作業用の動力は、エンジン72の出力軸73から作業用の伝動手段Bを介して刈取搬送装置2及び脱穀装置3に伝達する。刈取搬送装置2には、エンジン72からの動力で駆動される被駆動機器Cとして、回転リール9、切断機構10、オーガ11、及びフィーダ12を備えている。脱穀装置3には、エンジン72からの動力で駆動される被駆動機器Dとして、扱胴19、揺動選別手段20、唐箕21、副唐箕22、2番唐箕23、1番搬送スクリュ60、2番搬送スクリュ62、揚送コンベヤ63、再処理機構64、2番還元スクリュ65、及びチョッパ66、を備えている。
【0063】
作業用の伝動手段Bは、エンジン72からの動力を、エンジン72の出力軸73からベルト伝動式の伝動機構77を介して唐箕軸51の右端部に減速伝達し、その唐箕軸51の伝動方向上手側の端部となる右端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐してある。
【0064】
高速伝動系Hは、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の伝動方向下手側の端部となる左端部からベルト伝動式の第1伝動機構78を介して副唐箕軸53の左端部と2番唐箕軸57の左端部と中継軸79とに増速伝達し、中継軸79からベルト伝動式の第2伝動機構80を介してチョッパ軸69の左端部に増速伝達するように構成してある。
【0065】
低速伝動系Lは、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の右端部からベルト伝動式の第1減速機構81を介して左右向きのアイドラ軸82の右端部に減速伝達し、アイドラ軸82の左端部からベルト伝動式の第2減速機構83を介して1番スクリュ軸59の左端部と2番スクリュ軸61の左端部とに減速伝達する2段減速式に構成してある。又、2番スクリュ軸61の回転動力を、ベルト伝動式の第3伝動機構84を介して揺動選別手段20の揺動軸85に減速伝達するように構成してある。この2番スクリュ軸61と第3伝動機構84と揺動軸85とによって選別部伝動部20Aが構成されている。
【0066】
つまり、作業用の伝動手段Bでは、エンジン72からの動力を伝達する唐箕軸51の右端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐することにより、唐箕軸51の左端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐する場合に比較して唐箕軸51に掛かる負荷を軽減することができる。
【0067】
そして、唐箕21、副唐箕22、及び2番唐箕23を高速回転駆動させることができ、これにより、これらの各唐箕21〜23から強い選別風を発生させることができ、結果、風力選別による選別精度の向上を図ることができる。又、チョッパ66も高速回転駆動させることができ、結果、チョッパ66として高い細断性能を確保することができる。
【0068】
一方、1番搬送スクリュ60及び2番搬送スクリュ62を、それらのスクリュによる穀粒の損傷が生じ難い低速で駆動することができ、結果、1番搬送スクリュ60及び2番搬送スクリュ62による搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することができる。又、揺動選別手段20を低速で揺動駆動することができ、これにより、揺動選別手段20の高速揺動駆動で穀粒が飛び跳ねることに起因した穀粒回収効率の低下や3番ロスの発生を防止することができる。
【0069】
しかも、低速伝動系Lを2段減速式に構成することにより、第1減速機構81及び第2減速機構83などでの変速比を小さくすることができ、第1減速機構81及び第2減速機構83などに備える各プーリ81A,81B,83A〜83Cとして小径のものを採用することができる。これにより、各プーリ81A,81B,83A〜83Cなどの他物との干渉を容易に回避することができ、唐箕軸51から各搬送スクリュ60,62などへの減速伝動が行い易くなる。その結果、作業用の伝動手段Bの組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0070】
作業用の伝動手段Bには、エンジン72からの動力を扱胴軸18に伝達する扱胴伝動系L1と刈取搬送装置2の入力軸であるフィーダ駆動軸14に伝達する刈取搬送伝動系L2とを並列に備えている。
【0071】
扱胴伝動系L1は、唐箕軸51及び中継伝動軸としてのアイドラ軸82を経由したエンジン72からの動力を、アイドラ軸82の左端部から扱胴用の伝動機構(扱胴伝動部に相当)86を介して扱胴用の入力軸として伝動ケース87に備えた左右向きの伝動軸88の左端部に伝達し、伝動軸88の右端部からベベルギア式の伝動機構89を介して扱胴軸18に伝達するように構成してある。伝動ケース87は、脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端上部に連結してある。伝動軸88は、その左端部が伝動ケース87の左端部から横外方に延出するように伝動ケース87の左半部に装備してある。ベベルギア式の伝動機構89は伝動ケース87の左右中央部に内蔵してある。
【0072】
刈取搬送伝動系L2は、唐箕軸51及びアイドラ軸82を経由したエンジン72からの動力を、アイドラ軸82の左端部から刈り取り搬送用の伝動機構90を介してフィーダ駆動軸14の左端部に伝達するように構成してある。刈り取り搬送用の伝動機構90には、アイドラ軸82からフィーダ駆動軸14への伝動の断続を可能にするベルトテンションクラッチを採用してある。
【0073】
伝動ケース87の右半部には、ベベルギア式の伝動機構89に備えた逆回転動力取り出し用のベベルギア89Aと一体回転する左右向きの逆回転軸100を、逆回転軸100の右端部が伝動ケース87の右端部から横外方に延出するように装備してある。そして、逆回転軸100の右端部とフィーダ駆動軸14の右端部とにわたって、逆回転軸100からフィーダ駆動軸14への逆回転動力の伝達を可能にする逆回転用の伝動機構101を架設してある。逆回転用の伝動機構101には、逆回転軸100からフィーダ駆動軸14への伝動の断続を可能にするベルトテンションクラッチを採用してある。
【0074】
図4、図5及び図7〜9に示すように、扱胴伝動系L1の伝動軸88は、前述したように脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端上部に連結した伝動ケース87の左半部に装備してある。フィーダ駆動軸14は、脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端下部に左右一対の軸受部材102を介して連結してある。アイドラ軸82は、脱穀装置3における刈取搬送装置2との接続端である前端の外側で、唐箕軸51と副唐箕軸53との間における唐箕軸51よりも副唐箕軸寄りの位置に位置するように、脱穀フレーム15における下側フレーム部15Bの前端上部に左右一対の軸受部材103を介して連結してある。
【0075】
つまり、扱胴用の入力軸である伝動軸88と刈取搬送装置2の入力軸であるフィーダ駆動軸14とアイドラ軸82とが、その順で脱穀装置3の上部から下部に向けて、アイドラ軸82を伝動軸88及びフィーダ駆動軸14に近づけた状態で、かつ、脱穀装置3の前端に略沿った状態で上下方向に並ぶように配備してある。これにより、アイドラ軸82と伝動軸88とを連動連結する扱胴用の伝動機構86、及び、アイドラ軸82とフィーダ駆動軸14とを連動連結する刈り取り搬送用の伝動機構90を、刈取搬送装置2と脱穀装置3との接続箇所に、前後幅の狭い上下向きでその上下長さを極力短くした状態でコンパクトに配備することができる。
【0076】
図4、図5及び図8に示すように、扱胴用の伝動機構86は、第1プーリ(入力側プーリに相当)86Aと第2プーリ(出力側プーリに相当)86Bとを備え、それらのプーリ86A,86Bを伝動ベルト86Cにより巻き掛け連動するベルト伝動式に構成してある。
第1プーリ86Aは、小径プーリ120と大径プーリ121とを備えて構成してあり、これら一対のプーリ120,121は、小径プーリ120の外周のベルト巻回部120aと、大径プーリ121の外周のベルト巻回部121aとが同一面に位置し、且つ、共通の回転軸心を備えている。
具体的には、アイドラ軸82の左端部にアイドラ軸82と一体回転するように外嵌した小径プーリ120と、この小径プーリ120と一体回転するように小径プーリ120に左外側からボルト連結する大径プーリ121とから構成してある。通常は、図5に示すように、大径プーリ121を小径プーリ120に取り付け、大径プーリ121と第2プーリ86Bとに亘って伝動ベルト86Cを巻回して使用する。扱胴19の回転を遅くする場合には、図8に示すように、大径プーリ121を取り外して小径プーリ120に伝動ベルト86Cを巻回することで実現することができる。大径プーリ121と小径プーリ120とは、各ベルト巻回部120a,121aが同一面に位置するように設置されるから、図5及び図8の何れの場合においても、伝動ベルト86Cが各プーリに対して傾斜しない状態に巻回させることができる。
第2プーリ86B(図4参照)は、伝動軸88の左端部に伝動軸88と一体回転するように外嵌したボス部86Baと、このボス部86Baと一体回転するようにボス部86Baに左外側からボルト連結する大径の外周部86Bbとから構成してある。
【0077】
この構成により、扱胴用の伝動機構86は、第1プーリ86Aの大径プーリ121の付け替えで、扱胴19の回転状態を変更でき、アイドラ軸82と一体回転する第1プーリ86Aが小径プーリ120となるように大径プーリ121を取り外した大豆用の低速伝動状態と、アイドラ軸82と一体回転する第1プーリ86Aが大径プーリ121となるように大径プーリ121をボルト連結した稲麦用の高速伝動状態とに切り換え可能に構成してある。
【0078】
大径プーリ121の使用状態から、大径プーリ121を取り外した小径プーリ120の使用状態に変更する場合、伝動ベルト86Cの緩みが大きくなるが、これに対しては、テンションクラッチTのテンションプーリTpを、入り位置が大きく入り込むように付勢することで対応できる。また、伝動ベルト86Cの緩みの緩和に関しては、テンションプーリの付勢による対応の他、例えば、第2プーリ86Bを大径化することでも対応できる。
【0079】
図4、図5、図7及び図8に示すように、フィーダ駆動軸14、アイドラ軸82、及び伝動軸88は、それぞれ、それらの各左端部が走行車体1の左側端に位置するように左外方に向けて延出させてある。アイドラ軸82の左端部には、刈取搬送伝動系L2での伝動方向最上手側の伝動回転体である刈り取り搬送用の伝動機構90の出力プーリ90Aが第1プーリ86Aと一体に形成してあり、アイドラ軸82と一体回転するように外嵌させてある。出力プーリ90Aの右端部には第2減速機構83の出力プーリ83Aを一体形成してある。
【0080】
本実施形態のコンバインの伝動構造によれば、大径プーリ121の取り付け(又は、取り外し)操作のみで、扱胴19の回転速度の変更作業を、手間をかけずに簡単に且つ迅速に行うことができる。
つまり、損傷し難い稲や麦などを収穫する場合には、扱胴19の回転速度を稲麦用の高速に切り換えることによって処理能力の向上を図ることができ、損傷し易い大豆などを収穫する場合には、扱胴19の回転速度を大豆用の低速に切り換えることによって扱き処理時の損傷による品質の低下を防止することができる。
【0081】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0082】
〈1〉 伝動手段Bは、先の実施形態で説明したように、大径プーリ121と小径プーリ120とを、第1プーリ(入力側プーリ)86Aに備えたものに限るものではなく、例えば、第2プーリ(出力側プーリ)86Bに備えるものであってもよい。
また、第1プーリ86Aと第2プーリ86Bとの両方に備えるものであってもよい。
〈2〉 伝動手段Bは、先の実施形態で説明したに扱胴伝動部86に設けてあるものに限るものではなく、例えば、選別部伝動部20Aに設けるものであってもよい。
その一例を説明する。図12に示すように、選別部伝動部20Aは、2番スクリュー軸61の回転動力を、ベルト伝動式の第3伝動機構84を介して揺動選別手段20の揺動軸85に伝達するように構成してある。
2番スクリュー軸61には、第2減速機構83を構成するプーリ83Cと、選別部伝動部20Aを構成する入力側プーリ86Aとが、軸心方向に間隔をあけて一体回転自在に取り付けられている。エンジンからの動力は、プーリ83Cを介して入力側プーリ86Aに入力される。
一方、上述の揺動選別手段20の揺動軸85には、出力側プーリ86Bが一体回転自在に取り付けられており、入力側プーリ86Aと出力側プーリ86Bとにわたって伝動ベルト86Cが巻回されている。伝動ベルト86Cの弛みは、テンションプーリ(不図示)による押圧で解消されている。
出力側プーリ86Bは、大径プーリ121と小径プーリ120とが、互いのベルト巻回部121a,120aが同一面内に位置する状態で、揺動軸85に一体回転自在に取り付けられている。大径プーリ121は、小径プーリ120の側部にボルト固定してあり、ボルトを外すことで取り外すことができる。
当該実施形態によれば、稲麦等の脱穀時には、大径プーリ121を取り外して小径プーリ120に伝動ベルト86Cを巻回した状態で使用する一方、損傷を受けやすい大豆等の脱穀時には、大径プーリ121を小径プーリ120に取り付け、大径プーリ121に伝動ベルト86Cを巻回した減速回転状態で使用する。
【0083】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
当該コンバインは、袋詰装置に替えてグレンタンクを搭載した自脱型のものにも利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
3 脱穀装置
19 扱胴
20 揺動選別手段(選別駆動部に相当)
20A 選別部伝動部
72 エンジン
86 伝動機構(扱胴伝動部に相当)
86A 第1プーリ(入力側プーリに相当)
86B 第2プーリ(出力側プーリに相当)
120 小径プーリ
120a ベルト巻回部
121 大径プーリ
121a ベルト巻回部
B 伝動手段
D 被駆動機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造において、
前記伝動手段は、前記エンジンからの動力を受ける入力側プーリと、前記複数の被駆動機器のうちの脱穀装置に動力を伝達する出力側プーリとを備えて構成され、
前記入力側プーリと前記出力側プーリとの少なくとも何れか一方に、大径プーリのベルト巻回部と小径プーリのベルト巻回部とを同一面内に且つ同一回転軸心上に配置し、前記大径プーリを着脱自在に構成してあるコンバインの伝動構造。
【請求項2】
前記伝動手段は、前記脱穀装置のうちの扱胴に動力を伝達する扱胴伝動部である請求項1に記載のコンバインの伝動構造。
【請求項3】
前記伝動手段は、前記脱穀装置のうちの選別駆動部に動力を伝達する選別部伝動部である請求項1に記載のコンバインの伝動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−21982(P2013−21982A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160744(P2011−160744)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】