説明

コンバインの刈取前処理装置

【課題】収穫作業の中断を低減し、ヘッドロスを低減する汎用コンバインの刈取前処理装置を提供する。
【解決手段】掻込みオーガ(33)と複数並設した縦回り搬送装置(47)をオーガフレーム(31)に設け、縦回り搬送装置(47)の後部に刈刃(52)を設け、搬送ラグ(45)を上部と下部に回動する縦回り搬送装置(47)を前部から緩やかに後上がり傾斜させ、圃場に略水平に設けていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、特にコンバインの刈取前処理装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用コンバインの穀桿を係止し搬送する左右一対の搬送装置には、倒伏した穀桿を起立させる搬送装置の前部から後上がり傾斜する案内杆が設けられていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−215620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、倒伏した穀桿、特に、倒伏した湿った穀桿の収穫作業にあっては、多くの穀桿が搬送装置の上面や案内杆に寄りかかったり、絡まったりすることから、搬送抵抗によって、穀稈搬送が停滞して詰まりを生じる虞があり、左右一対の搬送装置の間に詰まった穀桿を取除く為、収穫作業を中断する問題がある。
また、穀稈の穂先側が案内杆に寄りかかったり、絡まったりすることで、脱粒や杆切れが発生することや、刈刃によって切断した後の穀稈が搬送装置の外側に脱落することから、搬送行程におけるヘッドロスが大きいという問題がある。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、脱穀装置(4)の前方に設けられたコンバインの刈取前処理装置(5)であって、該刈取前処理装置(5)は、左右の側壁(31a,31a)と後板(31b)と底板(31c)によって構成されるオーガフレーム(31)と、前記左右の側壁(31a,31a)間に両端を軸支した掻込みオーガ(33)と、前記後板(31b)部に形成した開口部(32)と脱穀装置(4)を連通するフィーダハウス(20)と、穀稈搬送用の複数の搬送ラグ(45)を備え前記掻込オーガ(33)の前側において左右方向に複数並設された縦回り搬送装置(47)と、縦回り搬送装置(47)の下部に設けられ該縦回り搬送装置(47)によって搬送される穀桿の株元を切断する刈刃(52)とから構成したことを特徴とするコンバインの刈取前処理装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記掻込オーガ(33)は、その前部が下降する方向へ回転する構成とし、側面視において、前記縦回り搬送装置(47)の後端部を前記掻込みオーガ(33)の前側下部に臨ませて配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取前処理装置である。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記縦回り搬送装置(47)の搬送ラグ(45)は、縦回り搬送装置(47)の前部において下方に突出した後、縦回り搬送装置(47)の上側へ移動し、起立姿勢で後方へ移動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバインの刈取前処理装置である。
【0008】
請求項4に係る発明は、側面視において、前記刈刃(52)と前記掻込みオーガ(33)との間に略山形形状に形成されたカバー(70)を設け、前記縦回り搬送装置(47)の搬送ラグ(45)が、当該カバー(70)の頂部(72)よりも上方を通過した後に下降する構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンバインの刈取前処理装置である。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記縦回り搬送装置(47)の上方に、多数のリールタイン(64)を有した掻込リール(61)を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンバインの刈取前処理装置である。
【0010】
請求項6に係る発明は、前記リールタイン(64)は、左右に隣接する2つの前記縦回り搬送装置(47,47)の間に形成された穀稈導入通路内に侵入する第1リールタイン(64a)と、前記穀稈導入通路の外側を通過する第2リールタイン(64b)とから構成したことを特徴とする請求項5記載のコンバインの刈取前処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、掻込オーガ(33)の前側に縦回り搬送装置(47)を並設したので、倒伏した穀桿や、大豆、そば等の丈の低い穀桿を確実に引起し、縦回り搬送装置(47)の下部に設けられた刈刃(52)で株元を切断し、後方の掻込みオーガ(33)に円滑に引き継ぐことができ、収穫作業の能率向上およびロスの低減を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、掻込みオーガ(33)の前側下部に縦回り搬送装置(47)の後端部が臨んでいるので、掻込みオーガ(33)の下降回転域に穀桿を供給でき、穀稈が掻込みオーガ(33)の上部に供給されることによる掻込みオーガ(33)前方への穀稈の飛散を低減することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2記載の発明の効果を奏するうえに、縦回り搬送装置(47)の前部において下方に突出した後、縦回り搬送装置(47)の上側に移動する移送ラグ(45)によって、倒伏した湿った穀桿、圃場に穂先が潜っている穀桿であっても確実に引起して掻込みオーガ(33)へ供給することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、刈刃(52)と掻込みオーガ(33)との間に略山形形状に形成されたカバー(70)が設けられ、搬送ラグ(45)が、カバー(70)の頂部(72)よりも上方を通過した後に下降するので、穀稈を掻込オーガ(33)に円滑に供給できるうえに、供給された穀稈が前方へ脱落することを防止することができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、複数のリールタイン(64)を有する掻込リール(61)が設けられているので、この掻込みリール(61)と縦回り搬送装置(47)とにより移送中の穀桿の脱落を防止しながら、穀稈を掻込みオーガ(33)に効率良く供給することができる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項5記載の発明の効果を奏するうえに、リールタイン(64)を、左右に隣接する2つの縦回り搬送装置(47,47)の間に形成された穀稈導入通路内に侵入する第1リールタイン(64a)と、前記穀稈導入通路の外側を通過する第2リールタイン(64b)とから構成したことにより、掻込リール(61)のリールタイン(64a)を縦回り搬送装置(47)と側面視でオーバーラップする位置まで下降させることができ、掻込リール(61)による掻込作用が高まるとともに、縦回り搬送装置(47)への穀稈の絡み付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】汎用コンバインの左側面図である。
【図2】汎用コンバインの平面図である。
【図3】第1実施形態の刈取前処理装置の拡大左側面図である。
【図4】第1実施形態の刈取前処理装置の拡大平面図である。
【図5】第2実施形態の刈取前処理装置の拡大左側面図である。
【図6】第2実施形態の刈取前処理装置の拡大平面図である。
【図7】第3実施形態の刈取前処理装置の拡大左側面図である。
【図8】第3実施形態の刈取前処理装置の拡大平面図である。
【図9】第4実施形態の刈取前処理装置の拡大左側面図である。
【図10】第4実施形態の刈取前処理装置の拡大平面図である。
【図11】本実施形態の動力伝動図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の汎用コンバインの刈取前処理装置の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。又、以下の説明において、キャビン内の操作席(図示省略)にコンバインの進行方向を向いて着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前方」と、後退方向を「後方」という。
【0019】
図1、図2は、汎用コンバイン1を示している。汎用コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行する為の左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀・選別を行なう脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前方には圃場の穀桿を収穫する刈取前処理装置5が設けられている。脱穀装置4で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置4の右側に設けられたグレンタンク6に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒7により外部へ排出される。又、車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席を備えたキャビン8が設けられている。
【0020】
次に、本発明の刈取前処理装置5の第1実施形態について説明する。
【0021】
図1〜図4に示すように、脱穀装置4の前方に設けられた第1実施形態の刈取前処理装置5は、フィーダハウス20と、オーガ装置30と、搬送装置40と、刈刃装置50と、掻込み装置60とから構成されている。なお、刈取前処理装置5は本実施形態に限定されることはなく、用途に合わせ他の装置を組込むこともでき、又、掻込み装置60等の装置を取外すこともできる。
【0022】
(フィーダハウス)
フィーダハウス20は、前方のオーガ装置30と後方の脱穀装置4との間に設けられ、オーガ装置30の回動によりオーガ装置30の左側部に寄せ集められた稲、麦、大豆、そば等の穀桿を脱穀装置4に搬送する装置である。
フィーダハウス20は、枠体21の後部に支持された駆動軸25に軸支された駆動スプロケットと枠体21の前部に支持された従動軸22に軸支された従動スプロケット23とに所定間隔に外方に延伸びる略L形状に形成されたスラットが設けられたチェン24が巻き掛けられている。
駆動軸25には、後述するように刈取りクラッチ110,プーリ111を介しエンジン100の回動が伝動され、従動軸22をR1方向に回動させる。よって、穀桿はチェン24のスラットに係止された状態を維持しながらフィーダハウス20の下部を通過し脱穀装置4に移送されることになる。
【0023】
(オーガ装置)
オーガ装置30は、フィーダハウス20の前方に汎用コンバイン1の約全幅に亘って設けられている。オーガ装置30は、搬送装置40で移送された穀桿、掻込み装置60で掻込まれた穀桿を後板31bの左下部に形成された開口部32の前方に寄せ集め、穀桿をフィーダハウス20に移送する装置である。
オーガ装置30のオーガフレーム31は、左右一対の側壁31a,31aと、側壁31a,31aの後部を連結する後板31bと、側壁31a,31aの後部と後板31bの下部を連結する底板31cによって構成されている。又、側壁31a,31aの前端部には圃場の穀桿を分ける分草体39,39が設けられている。
なお、側壁31a,31aの前部には底板31cは設けられておらず、側壁31a,31aの前方には、後述する刈刃装置50等が設けられている。
【0024】
側壁31aは、側面視において略多角形状に形成されており、側壁31aの上端部は前部から後部に後上がり傾斜し、側壁31aの下端部は前部から中間部に亘り略水平に形成され、中間部から後部に亘り下方に円弧状に突出して形成されている。
後板31bは、正面視において略長方形に形成され、底板31cは側面視において前部は略水平に形成され、後部は下方に円弧状に突出して形成されている。
なお、オーガフレーム31は、鋼材からなる側壁31a,31aと後板31bと底板31cを溶接により一体形成することもでき、又、一枚の鋼材を切断・折曲げにより一体形成することもできる。更に、側壁31a等の形状は、上述の形状に限定されることはなく用途に合わせ任意の形状に形成することができる。
【0025】
掻込みオーガ33は、左右の一対の側壁31a,31aに支持された駆動軸34に軸支されている。又、掻込みオーガ33の外周には、移送されてきた穀桿を開口部32の前方に寄せ集める為に右側に向かって傾斜した搬送螺旋35が設けられ、開口部32の前方での穀桿の滞留を防止する為に開口部32の前方に位置する掻込みオーガ33の外周には2本の掻込みフィンガー36,36が設けられている。
なお、掻込みフィンガー36は、駆動軸34に軸支されたアーム37の前部に回転自在に設けられており掻込みオーガ35の外周に設けられたフィンガー孔38に挿通されている。
駆動軸34には後述するように刈取りクラッチ110,プーリ111,113,114を介しエンジン100の回動が伝動され、掻込みオーガ33をR2方向に回動させる。
【0026】
側壁31aの下部には、支軸91に揺動可能に支持されたスプーン形状に形成された刈高さ検出器90が設けられており、刈高さ検出器90の検出値に応じて、後述する搬送装置40及び刈刃装置50は自動昇降する。
【0027】
(搬送装置)
搬送装置40は、穀桿、特に倒伏した穀桿や、大豆、そば等の丈の低い穀桿を引起し、オーガ装置30の掻込みオーガ33に穀桿を移送する装置であり、本実施形態にあっては、搬送装置40は、オーガ装置30のオーガフレーム31の前方に縦回り搬送装置47が四基設けられ、それぞれ二基の縦回り搬送装置47,47が一対となり穀桿の導入通路内(作業面)を形成している。
なお、縦回り搬送装置47は4基に限定されることはなく用途、機種に合わせて必要な基数を設けることができる。
【0028】
縦回り搬送装置47の枠体41は左右に分割可能に形成されている。一対の縦回り搬送装置47,47の枠体41の対向する側部の後部は中空の筒体43によって相互に連結されており、左右の筒体43,43の内部にはオーガ装置30の左右の一対の側壁31a,31aに回転自在に支持された駆動軸42が挿通されている。又、連結フレーム81によって左側から二基目と三基目の縦回り搬送装置47,47の枠体41,41の対向する側部は連結されており、連結フレーム81に回転自在に支持されたゲージフレーム82の下部と駆動軸42の間には駆動軸42に回転自在に軸支された油圧シリンダ84が懸架されている。
なお、キャビン8内に設けられた昇降スイッチの接続によって油圧シリンダ84は伸張し、駆動軸42を支点として各縦回り搬送装置47を上下方向に昇降させる。
【0029】
各縦回り搬送装置47の枠体41は、側面視において前部から緩やかに後上がり傾斜し、圃場面に略水平に設けられ、枠体41の前端部には圃場の穀桿を分ける分草体46が設けられている。又、各縦回り搬送装置47の枠体41の搬送ラグ45が移動する上面部の後部は、側面視において後述するカバー70の頂部72の上方に位置し、カバー70の頂部72を超えて、オーガ装置30の掻込みオーガ33の下部の前方まで延伸している。
よって、縦回り搬送装置47の前部で引起され、搬送される穀桿は、カバー70と接触することなくオーガ装置30の掻込みオーガ33の下部に移送される為、縦回り搬送装置47の搬送時における穀桿の脱落及び掻込みオーガ33の回動により穀桿がはじき出されによるヘッドロスを低減することができる。
【0030】
各縦回り搬送装置47には、枠体41の後部の連結パイプ43の内部を挿通する駆動軸42に軸支された駆動スプロケットと枠体41の前部に支持された従動軸44に軸支された従動スプロケットに所定間隔に搬送ラグ45が設けられた搬送チェンが巻き掛けられ、枠体41の前部に搬送ラグ45を起立させる起立ガイドが設けられている。
搬送ラグ45は、起立ガイドによって枠体41の前部において下方に起立し、起立状態を維持したまま枠体41の前部を下方から上方に回動し、枠体41の側面視において上面部を通過し、枠体41の後部において上方から下方に回動し、枠体41の側面視において下面部において倒伏する。
よって、倒伏した穀桿や、大豆、そば等の丈の低い穀桿を搬送ラグ45によって地中から引起す為、搬送装置40の引起し時に発生するヘッドロスを低減することができる。
【0031】
駆動軸42には後述するように刈取りクラッチ110,プーリ111,113,116,118,119を介しエンジン100の回動が伝動され、搬送ラグ45をR3方向に回動する。
【0032】
(刈刃装置)
刈刃装置50は、縦回り搬送装置47で引起され、後方に搬送される穀桿の株元を切断する装置であり、刈刃装置50は、作業面を形成する一対の縦回り搬送装置47,47の下方にそれぞれ設けられている。
刈刃装置50は、伝動ケース51の前部に回転自在に支持された従動軸51aに軸支された刈刃(回転刃)52と、伝動ケース51の後部に支持される油圧モータ53とから構成されており、左右の伝動ケース51,51は、左側から一基目の縦回り搬送装置47の枠体41と右側から一基目の縦回り搬送装置47の枠体41の下方部にそれぞれ支持されている。
伝動ケース51は、側面視において前部から後上がり傾斜しており、伝動ケース51の前部の下方部は圃場面との接触を防止するため略水平に形成されている。又、回転刃52も伝動ケース51と同様に側面視において前部から後上がり傾斜している。
なお、回転刃52の後上がり傾斜角度は縦回り搬送装置47の後上がり傾斜角度によりも大きく設けられており、縦回り搬送装置47で搬送される穀桿の下端部で切断でき、籾等の取りこぼしの低減を図ることができる。
【0033】
回転刃52を駆動する油圧モータ53の出力軸53aに軸支された駆動スプロケット53bと伝動ケース51の従動軸51aに軸支された従動スプロケット51bにはチェン54が巻き掛けられており、油圧モータ53の出力軸53aの回動によって回転刃52はR4方向に回動する。又、後述するように油圧モータ53の出力軸53aの回転速度はコンバイン1の車速にシンクロしており、油圧モータ53によって回動させられる回転刃52は車速に追従した速度に常時変化するので異常回転(低速走行時に刈刃が高速回転する等。)がなくなり、土の撥ね飛ばしがなくなってオーガ装置30の底板31cに土を持ち込むことも少なくなる。
【0034】
伝動ケース51の従動スプロケット51b、油圧モータ53の駆動スプロケット53b、チェン54等は上下に分割可能に形成されている伝動ケース51の内方に設けられている。
なお、油圧モータ53は、穀桿を縦回り搬送装置47で効率良く搬送するため、作業面を避けて配置するのが好適であり、回転刃52の外径は、縦回り搬送装置47で搬送される穀桿の株元を確実に切断するため、作業面の幅よりも大径に形成するのが好適である。
【0035】
(カバー)
カバー70は、搬送中の穀桿等が刈刃装置50のチェン54等に付着し詰まることを防止し、掻込みオーガ33によってはじき出される穀桿を防止する部品であり、オーガ装置30の約全幅に亘って底板31cの前部の上方部に設けられている。
鋼材からなるカバー70の前カバー71の前端部は、刈刃装置50の回転刃52を軸支する従動軸51aの後方に位置し、前部から頂部72に後上がり傾斜している。カバー70の頂部72は、側面視において縦回り搬送装置47の後端部の近傍に位置し、縦回り搬送装置47の上面部より下方に位置している。カバー70の後カバー73は、頂部72から後下がり傾斜し、後カバー73の後端部はオーガ装置30の底板31cに支持されている。
なお、本実施形態にあっては前カバー71の後上がり傾斜角度と後カバー73の後下がり傾斜角度は、ほぼ同じ傾斜角度に形成されているが、前カバー71の後上がり傾斜角度を後カバー73の後下がり傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度にした場合、縦回り搬送装置47での穀桿等の搬送をより効率的に行なうことができ好適である。
【0036】
カバー70は、平面視において4基の縦回り搬送装置47と対向する部位及び2基の刈刃装置50の油圧モータ53と対向する部位は切欠かれ、カバー70の左右両端部はそれぞれオーガ装置30の左右の側壁31a,31aに支持されている。
なお、本実施形態にあっては、油圧モータ53と対向する部位を切欠いているが、背丈の低い油圧モータ53を使用する場合にあっては、油圧モータ53と対向する部位を切欠く必要はない。
【0037】
搬送される穀桿の株元が回転刃52と前カバー71との隙間に詰まるのを防止するため、作業面に対向する前カバー71の前端部にはゴム等からなる弾性カバー74を設けるのがより好適である。
【0038】
(ゲージ輪)
ゲージ輪80は、圃場の凹凸に応じ左側から二基目と三基目の縦回り搬送装置47,47の昇降を行なう装置であり、ゲージ輪80は、連結フレーム81に支持されるゲージフレーム82の先端部に設けられたケージ片83に回転自在に支持され、ゲージフレーム82の下部と搬送装置40の駆動軸42の間にはダンパー機能を併せ持つ油圧シリンダ84が懸架されている。
【0039】
(掻込み装置)
掻込み装置60は、縦回り搬送装置47で引起される、刈刃装置50で株元が切断された穀桿をオーガ装置30に掻込む装置であり、オーガ装置30の約全幅に亘って搬送装置40の上方に設けられている。
掻込み装置60は、側面視において略六角形状に形成された掻込みリール61と、掻込みリール61の中心軸62を回転自在に軸支する掻込みフレーム63から構成されている。
掻込みリール61は、六箇所の各隅部に横方向に所定間隔で複数のリールタイン64が吊下げられたタイン支持杆65を有し、掻込みフレーム63の後部は、オーガ装置30の後板31bに設けられた支持部材66に回転自在に軸支され、掻込みフレーム63の中間部は掻込みフレーム63を昇降させる油圧シリンダ67に支持されている。
なお、掻込みフレーム63には、駆動軸68に軸支された駆動スプロケットと中心軸62に軸支された従動スプロケットにチェンが巻き掛けした伝動機構が設けられており、駆動軸68には後述するように刈取りクラッチ110,プーリ111,113,116,118,120を介しエンジン100の回動が伝動され、掻込みリール61をR5方向に回動する。
【0040】
掻込みリール61には、一対の縦回り搬送装置47,47によって引起され搬送される穀桿を脱落させることなくオーガ装置30に掻込むために、一対の縦回り搬送装置47,47の間に3本の第1リールタイン64aが設けられ、一対の縦回り搬送装置47,47の幅方向外方にある穀桿を作業面に取り込むために、一対の搬送装置47,47の幅方向の外側にそれぞれ1本ずつの第2リールタイン64bが設けられている。
なお、上述のように第1リールタイン64aと第2リールタイン64bを設けた場合、掻込み装置60の下降時に、掻込み装置60の第1リールタイン64aと第2リールタイン64bが刈刃装置50の油圧モータ53等に干渉することがなく好適である。
【0041】
刈刃装置50の回転刃52で株元が切断された穀稈の作業面からの脱落に伴うヘッドロスを防止するため、最降下時における掻込みリール61のリールタイン64の先端部の軌跡Sに示すように、リールタイン64の長さ、掻込みリール61の掻込みフレーム63への取付け位置を調整し、リールタイン64の先端部が刈刃装置50の回転刃52の前方に位置させるのが好適である。
【0042】
次に、本発明の刈取前処理装置5の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0043】
図5、図6に示すように、第2実施形態にあっては、一対の縦回り搬送装置47,47、特に、左側から二基目と三基目の縦回り搬送装置47,47で搬送される穀桿の穂先が作業面の外方に向かって倒伏しゲージ輪80等に絡まるのを防止する為に、第1実施形態の掻込みリール61のゲージ輪80側の第2リールタイン64bの幅方向の外側にそれぞれ1本の第3リールタイン64cを設けている。
なお、隣接する第3リールタイン64c,64cの間隔は、ゲージ輪80の幅よりも幅広に設けられている。
【0044】
次に、本発明の刈取前処理装置5の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0045】
図7、図8に示すように、第3実施形態にあっては、一対の縦回り搬送装置47,47、特に、左側から二基目と三基目の縦回り搬送装置47,47で搬送される穀桿の穂先が作業面の外方に向かって倒伏しゲージ輪80等に絡まるのを防止する為に、ゲージ輪80等の上方に樹脂、薄板からなる防止カバー85を設けている。
防止カバー85の後部は駆動軸42に回転可能に軸支され、平面視においてゲージ輪80、ゲージフレーム82、ケージ片83、油圧シリンダ84を覆い、側面視において前端部から後上がり傾斜してゲージ輪80の上方に至り、引続き後下がり傾斜する略三角形状に形成されている。
【0046】
次に、本発明の刈取前処理装置5の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0047】
図9、図10に示すように、第4実施形態にあっては、一対の縦回り搬送装置47,47、特に、左側から二基目と三基目の縦回り搬送装置47,47で搬送される穀桿の穂先が作業面の外方に向かって倒伏しゲージ輪80等に絡まるのを防止する為に、ゲージ輪80等の両側部に金属棒からなる防止杆86a,86bを設けている。
防止杆86aは、左側から三基目の縦回り搬送装置47の分草体46の左側部に固定され平面視において前端部からゲージ輪80の前部に向かって傾斜し、引続きゲージ輪80、ゲージフレーム82、ケージ片83及び油圧シリンダ84と平行に油圧シリンダ84の前部まで延伸し、側面視おいて前端部から後上がり傾斜しゲージ輪80の上方に至り、引続き水平に延伸している。
【0048】
防止杆86bは、左側から二基目の縦回り搬送装置47の分草体46の右側部に固定され平面視において前端部からゲージ輪80の前部に向かって傾斜し、引続きゲージ輪80、ゲージフレーム82、ケージ片83及び油圧シリンダ84と平行に油圧シリンダ84の前部まで延伸し、側面視おいて前端部から後上がり傾斜しゲージ輪80の上方に至り、引続き水平に延伸している。
【0049】
次に、本発明の刈取前処理装置5の第1〜第4実施形態の動力伝達について説明する。
【0050】
図11に示すように、エンジン100の回動は油圧無段変速装置101に伝動され、油圧無段変速装置101の出力は走向ミッション102を介して刈刃装置50の油圧モータ53,53に伝動され回転刃52,52を回動させる。よって、回転刃52,52の回転速度はコンバイン1の車速にシンクロさせた速度となり、安定した刈取ができ、回転刃52,52は車速に追従した速度に常時変化するので異常回転(低速走行時に刈刃が高速回転する等。)がなくなり、土の撥ね飛ばしがなくなってオーガ装置30の底板31cに土を持ち込むことも少なくなる。
【0051】
油圧無段変速装置101の出力は刈取りクラッチ110を介してフィーダハウス20の駆動軸25に軸支されたプーリ111に伝動され、フィーダハウス20の駆動軸25を反時計方向に回動させる。
【0052】
プーリ111の出力は第一回転軸112に軸支されたプーリ113に伝動され、プーリ113の出力はオーガ装置30の駆動軸34に軸支されたプーリ114に伝動され、オーガ装置30の駆動軸34を反時計方向に回動させる。又、プーリ113の出力は第二回転軸115に軸支されたプーリ116に伝動される。
【0053】
プーリ116の出力は第三回転軸117に軸支されたプーリ118に伝動され、プーリ118の出力は搬送装置40の駆動軸42に軸支されたプーリ119に伝動され、搬送装置40の駆動軸42を時計方向に回動させる。又、プーリ118の出力は掻込み装置60の駆動軸68に軸支されたプーリ120に伝動され、掻込み装置60の中心軸62を反時計方向に回動させる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、汎用コンバインの刈取前処理装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 汎用コンバイン
4 脱穀装置
5 刈取前処理装置
20 フィーダハウス
30 オーガ装置
31 オーガフレーム
31a 側壁
31b 後板
31c 底板
32 開口部
33 掻込みオーガ
40 搬送装置
41 枠体
42 駆動軸
43 筒体
44 従属軸
45 搬送ラグ
47 縦回り搬送装置
50 刈刃装置
51 伝動ケース
52 刈刃
53 油圧モータ
60 掻込み装置
61 掻込みリール
63 掻込みフレーム
64 ルールタイン
64a 第1リールタイン
64b 第2リールタイン
64c 第3リールタイン
65 タイン支持杆
70 カバー
71 前カバー
72 頂部
73 後カバー
74 弾性カバー
80 ゲージ輪
85 防止カバー
86 防止杆
91 刈高さ検出器
102 走向ミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置(4)の前方に設けられたコンバインの刈取前処理装置(5)であって、
該刈取前処理装置(5)は、左右の側壁(31a,31a)と後板(31b)と底板(31c)によって構成されるオーガフレーム(31)と、
前記左右の側壁(31a,31a)間に両端を軸支した掻込みオーガ(33)と、
前記後板(31b)部に形成した開口部(32)と脱穀装置(4)を連通するフィーダハウス(20)と、
穀稈搬送用の複数の搬送ラグ(45)を備え前記掻込オーガ(33)の前側において左右方向に複数並設された縦回り搬送装置(47)と、
縦回り搬送装置(47)の下部に設けられ該縦回り搬送装置(47)によって搬送される穀桿の株元を切断する刈刃(52)とから構成したことを特徴とするコンバインの刈取前処理装置。
【請求項2】
前記掻込オーガ(33)は、その前部が下降する方向へ回転する構成とし、側面視において、前記縦回り搬送装置(47)の後端部を前記掻込みオーガ(33)の前側下部に臨ませて配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取前処理装置。
【請求項3】
前記縦回り搬送装置(47)の搬送ラグ(45)は、縦回り搬送装置(47)の前部において下方に突出した後、縦回り搬送装置(47)の上側へ移動し、起立姿勢で後方へ移動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバインの刈取前処理装置。
【請求項4】
側面視において、前記刈刃(52)と前記掻込みオーガ(33)との間に略山形形状に形成されたカバー(70)を設け、前記縦回り搬送装置(47)の搬送ラグ(45)が、当該カバー(70)の頂部(72)よりも上方を通過した後に下降する構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンバインの刈取前処理装置。
【請求項5】
前記縦回り搬送装置(47)の上方に、多数のリールタイン(64)を有した掻込リール(61)を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンバインの刈取前処理装置。
【請求項6】
前記リールタイン(64)は、左右に隣接する2つの前記縦回り搬送装置(47,47)の間に形成された穀稈導入通路内に侵入する第1リールタイン(64a)と、前記穀稈導入通路の外側を通過する第2リールタイン(64b)とから構成したことを特徴とする請求項5記載のコンバインの刈取前処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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