コンバインの刈取部
【課題】刈取部に設ける掻込装置を多量の穀稈導入に対応できるものとし、刈取作業の能率を高める。
【解決手段】穀稈の掻込みスターホイル(2,2)の上側に一対の掻込みラグベルト(4,4)を設け、左右中間にセンターガイド(5,5)を配置した穀稈掻込み装置において、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、平面視において、掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側へ掻込み作用域を広げるために、前側を窪み状に後退させて右側掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を拡大する。
【解決手段】穀稈の掻込みスターホイル(2,2)の上側に一対の掻込みラグベルト(4,4)を設け、左右中間にセンターガイド(5,5)を配置した穀稈掻込み装置において、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、平面視において、掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側へ掻込み作用域を広げるために、前側を窪み状に後退させて右側掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を拡大する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンバインは、外周を星型状の掻込み歯部(凸部)に形成した掻込みスターホイルと、掻込みラグベルトと、これらに穀稈を誘導案内するための複数本のガイド杆等によって構成した穀稈掻込み装置を、刈取搬送装置の前部に装備して構成されている。例えば、実開平6−26425号公開実用新案公報(特許文献1参照)、更には、特開2007−117007号公開特許公報(特許文献2参照)に穀稈掻込み装置が開示されている。
【0003】
まず、実開平6−26425号公開実用新案公報に示されている技術は、穀稈誘導路の前部に複数のスター形の掻込ホイル8,8a,9が軸架して設けられ、更に、スター形の掻込ホイル8,8a,9と同軸に、それぞれ後部が支持された突起付き掻込みベルト10,10a,11を前方に延長して、前部を広げて圃場の穀稈列を誘導しながら掻込み作用ができる構成が示されている。
【0004】
そして、特開2007−117007号公開特許公報に示されている技術は、前部の穀稈掻込み部位に、掻込みスターホイルと、掻込み用のラグベルトと、穀稈を案内するガイド杆とをそれぞれ設け、圃場の穀稈を刈取装置に掻込みながら案内する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−26425号公開実用新案公報
【特許文献2】特開2007−117007号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来からコンバインの穀稈掻込み装置は、同じ刈取条数であっても、圃場における稲の出来、不出来によって、収穫量が左右されるから、供給される穀稈量に大(多量),小(少量)のバラツキが生じて一度に多量の穀稈が供給されたり、逆に、供給量が少ない場合がある。このような場合、従来のコンバインにおける穀稈掻込み装置は、刈取条数に応じて標準的な穀稈量を想定して穀稈の誘導間隔やガイド杆の配置、更にはガイド杆の弾力性、掻込みスターホイルや掻込みラグベルトの回転速度等を設定しているから、穀稈が多量の場合や逆に少量の場合に対応できず、詰まったり、倒伏したりして適確な掻込み作用ができない場合が生じる課題があった。
【0007】
更に、従来の掻込みスターホイルの掻込み作用範囲(掻込み作用に利用する範囲)は、狭く、掻込みスターホイルの全周の中で限られた一部分しか利用せず、掻込み搬送作用が不充分となる課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、圃場の穀稈を刈取装置(1)側へ掻込む左右一対の掻込みスターホイル(2,2)を、相互の掻込み歯部(3,3)の先端回転軌跡が交差する程度に接近させて軸架し、該左右一対の掻込みスターホイル(2,2)の上側には、前方ほど相互の間隔を広くして平面視でハ字状に配置した左右一対の掻込みラグベルト(4,4)をそれぞれ設け、前方からの穀稈を左右に分離して両側に案内するセンターガイド(5,5)を前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)の中間位置前方に配置し、前記右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、該右側掻込みスターホイル(2)の回転方向に沿わせて穀稈を案内し、回転中心側への穀稈の倒れ込みを規制する構成とし、該ガイド杆(6)を、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側から、穀稈に対して掻込み歯部(3)の掻込み作用が可能な位置まで前側を窪み状に後退させて形成した穀稈掻込み装置を備えることを特徴とするコンバインの刈取部とした。
【0009】
前側から送込まれる圃場の刈取直前の穀稈を、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を拡大して多量の穀稈でも適確に掻込み作用を行う装置としている。すなわち、請求項1の発明は、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、掻込み範囲を拡大するために、掻込み歯部(3)の掻込み作用範囲を可能な位置まで前側を窪み状に後退させて、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を極力右側方向に拡大したから、掻込み作用範囲が従来より広がって、特に、多量の穀稈が一度に誘導されてきた場合に対応できるように掻込み能力を高めたものとなった。
【0010】
そして、請求項2記載の発明は、圃場の穀稈を左右両側に分離して前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側へ案内する少なくとも上下2段のセンターガイド(5,5)を設け、該センターガイド(5,5)の左右の上部案内杆(5a,5a)の前後方向の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト(4,4)の先端部分を結んだ仮想線(D−D)よりも前方側に配置し、センターガイド(5,5)の左右の下部案内杆(5b,5b)は、前後の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(B)を、前記仮想線(D−D)よりも後方側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部とした。
【0011】
誘導される穀稈量の変化に対応できるものとなっている。すなわち、上下2段構成のセンターガイド(5,5)は、左右の上部案内杆(5a,5a)が、前方側において、少量の穀稈であっても前寄りにある最も外側に張出した部位(A)が、早めに外側へ押し出すように案内して、掻込みラグベルト(4,4)側に誘導して係合させ、掻込みを促進することができる。そして、逆に、多量の穀稈が送込まれてくると、左右の下部案内杆(5b,5b)が、上部案内杆(5a,5a)より遅れたタイミングでもって穀稈を掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側に誘導案内することができるものとなっている。
【0012】
実施例の場合、上記の如き作用は、左右の上部案内杆(5a,5a)が、左右の下部案内杆(5b,5b)に対比して、柔軟に構成しているから、多量の穀稈が供給されたときには内側に退避し、少量の穀稈に対しては外側の掻込みラグベルト(4,4)側に案内することができる。
【0013】
そして、請求項3記載の発明は、前記センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、円弧形状に最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも更に右側に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部とした。
【0014】
センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、誘導案内する穀稈を右側の掻込みラグベルト(4)、及び掻込みスターホイル(2)の係合圏内に案内できるから、それら穀稈を係合するタイミングが早くなって、掻込み工程での停滞がなく、素早く掻込まれるものとなった。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1記載の発明によると、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を、従来の構成に比べて大幅に拡大し、多量の穀稈に対しても充分に対応することができる。そして、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、掻込み範囲を拡大するために、前側から軸芯(P)側に後退させて窪み状に形成し、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を極力右側方向に拡大することで、多量の穀稈にも充分に対応できるように掻込み能力が高まり、刈取作業を能率よく行うことができる。
【0016】
そして、請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、前方から掻込み部位に誘導される穀稈量の変化に対応しながら適確な掻込みを行うことができる。すなわち、上下2段のセンターガイド(5,5)を構成する上部案内杆(5a,5a)と下部案内杆(5b,5b)とに、それぞれ分担して機能を持たせ、短稈や少量の穀稈であっても、逆に、多量の穀稈が送込まれてきても掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側に適確に案内して掻込むことができ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0017】
なお、実施例の場合、上部案内杆(5a,5a)は、張出した部位(A)を前寄りに配置し、しかも、下部案内杆(5b,5b)に対比して柔軟な構成としているから、少量の穀稈に対しては早い時期に外方の掻込みラグベルト(4,4)側に案内して掻込み作用を促進し、又、一度に多量の穀稈が供給されたときには柔軟な作用によって穀稈に押圧されて内側に退避するから、下部案内杆(5b,5b)が穀稈に作用し、外側の掻込みラグベルト(4,4)側に案内することができる。
【0018】
そして、請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)を右側の掻込みラグベルト(4)に近づけて構成したから、特に、少量の穀稈の場合、早いタイミングで掻込みラグベルト(4)の係合圏内に案内して、掻込み工程における穀稈の停滞をなくし、素早く掻込むことができ、刈取作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】穀稈掻込み装置の平面図
【図2】穀稈掻込み装置の要部の平面図
【図3】穀稈掻込み装置の平面図
【図4】穀稈掻込み装置の側断面図
【図5】コンバインの正面図
【図6】コンバインの側面図
【図7】刈取搬送装置の平面図
【図8】一部破断したコンバインの平面図
【図9】コンバインの作用側面図
【図10】コンバインの作用平面図
【図11】コンバインの作用側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を具体的に説明する。
まず、コンバイン10は、図5、及び図6に示すように、左右一対のクローラ11,11を装備した走行フレーム12上に、穀稈供給口13を前側に位置させて脱穀装置14を搭載し、その前側に刈取搬送装置15を配置して構成している。そして、刈取搬送装置15は、図面に示すように、基部を、走行フレーム12の前部に設けられた懸架台16の上部に、上下回動自在に懸架し、前方斜め下方に向けて延長された刈取フレーム17と、該刈取フレーム17の先端部に、横に向けて配置した伝動ケースを一体に連結して略T字型のフレームを形成し、このフレームに各装置を支持した構成としている。
【0021】
そして、刈取搬送装置15は、図面に示すように、前側低位置に分草杆18を、4条の刈取条列(図5参照)ごとに分草支持杆19で区分して取り付け、その背後から上方に向けて傾斜させた穀稈引起し装置20を配列した構成としている。更に、刈取搬送装置15は、上記穀稈引起し装置20の下方に4条の刈幅とした刈取装置1を設け、この刈取装置1の上方から前方側に向けて、本件出願の主要部であり、詳細に後述する穀稈掻込み装置22を装備している。そして、刈取搬送装置15は、上記穀稈掻込み装置22の後部に接続させて刈取後の穀稈を後部上方の脱穀装置14まで搬送する株元搬送装置23と穂先搬送装置24とを設けて構成している。
【0022】
以下、穀稈掻込み装置22について実施例を説明する。
まず、左右一対の掻込みスターホイル2,2は、図1、乃至図4に示すように、前記した左右一対の穀稈引起し装置20,20の間で背後に位置し、刈取装置1の上方において、相互の掻込み歯部(凸部)3,3が噛合い状態になる位置まで接近させて軸架し、回転駆動可能に構成している。実施例の場合、図面に示すように、右側の掻込みスターホイル2は、相互に噛合っている左側の掻込みスターホイル2から伝動される構成になっている。
【0023】
なお、本件明細書における右側、左側の表現は、コンバイン10の前進方向に向かって見た状態で判断し記載している。
そして、左右一対の掻込みラグベルト4,4は、図面に示すように、圃場の穀稈を係合して後方に掻込み作用が出来る程度の後退角を備えた長いラグを配列して上側のケース(上側の板、図4参照)25に支持したプーリに巻き付けて伝動可能に支持し、前記左右一対の掻込みスターホイル2,2の上方に同一軸で伝動可能に軸架した構成としている。そして、該掻込みラグベルト4,4は、図2に示すように、前方を広くして後方をスターホイル2,2の間隔幅に狭め、平面視でハ字状に配置して穀稈を中央部位の掻込みスターホイル2,2の掻込み圏内に集めるように作用する構成としている。
【0024】
つぎに、センターガイド5,5は、図1、乃至図4に示すように、前記掻込みラグベルト4,4、及び前記掻込みスターホイル2,2の中間で前方に配置するが、前記した4条に刈取条間を仕切っている分草支持杆(左右一対の穀稈引起し装置20,20の間に位置する分草支持杆)19に左右の上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとの基部を固着し、上下2段(図4参照)に構成している。そして、実施例の場合、上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとは、図面から解るように、案内杆の軸径に差をつけ、穀稈株元に作用する下部案内杆5b,5bを大径にして強くし、株元より少し上側の稈茎に作用する上部案内杆5a,5aを小径にして弾性のある柔軟な構成にしている。
【0025】
そして、上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとは、図2に示すように、外側を円弧形状にして、それぞれ外側縁で圃場に植わっている穀稈に対して案内作用をしながら前側で左右両側に分離し、略中間位置に達した部位で左右の掻込みラグベルト4,4に受け継がせるように構成している。そして、上部案内杆5a,5aは、図2に示すように、円弧形状に形成して最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト4,4の先端部分を結んだ仮想線(D−D)より前方側に位置する構成としている。そして、下部案内杆5b,5bは、図2に示すように、前後の略中間位置で円弧形状の最も外側に張出した部位(B)を、前記した仮想線(D−D)より後方側に位置する構成としている。
【0026】
そして、本件明細書においては、上記した円弧形状に形成して最も外側に張出した部位(A)、及び部位(B)は、図2に示すように、各案内杆5a,5bの前部側と後部側とからそれぞれ延長した仮想の延長線の交点Cを含むものとする。
【0027】
このように構成することによって、センターガイド5,5は、前方から掻込み部位に誘導されてくる穀稈に対して、下部案内杆5b,5bが株元側に強く作用し、上部案内杆5a,5aが穀稈の上部位置(掻込みラグベルト4,4の作用する部位の上側付近、図4参照)に作用して両側に案内する。そして、実施例の場合、上部案内杆5a,5aは、張出した部位(A)を前寄りに配置し、しかも、下部案内杆5b,5bに対比して柔軟な構成としているから、少量の穀稈や短稈に対する対応性が優れており、早い時期に外方の掻込みラグベルト4,4側に案内して掻込み作用を促進し、又、一度に多量の穀稈が供給されたときには柔軟な作用によって穀稈に押圧されて内側に退避するから、下部案内杆5b,5bが穀稈の株元側に作用し、外側の掻込みラグベルト4,4側に案内することができる。
【0028】
更に、右側の上部案内杆5aは、図2に示すように、円弧形状の最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記した右側掻込みスターホイル2の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)より、更に、右側にまで張出した状態に構成している。
【0029】
実施例の右側上部案内杆5aは、上記の如く構成して、右側の掻込みラグベルト4に近づけているから、掻込み穀稈が少量の場合や短稈に対し、早いタイミングで掻込みラグベルト4の係合圏内に穀稈を案内して、掻込み工程の初期における穀稈の乱れや停滞をなくし、素早く掻込み作用ができるものとなった。
【0030】
つぎに、ガイド杆6は、図1に示すように、基部を右側スターホイル2より右側の前部機枠27に固着し、掻込みスターホイル2上の前側を通し、左側の搬送チエン28の搬送側に沿わせて設け、中間部位から後部を挟持杆29とする構成としている。そして、ガイド杆6は、図面に示すように、前半部分を前記掻込みスターホイル2の回転方向に沿わせて前縁で前側の穀稈を案内し、スターホイル2の回転中心側への倒れ込み(巻き込み作用)をなくするように規制する構成としている。そして、該ガイド杆6は、図2に示すように、前記右側掻込みスターホイル2の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)より右側から穀稈に対して、前記掻込み歯部(凸部)3の掻込み作用ができるように前側を窪み状(掻込み歯部(凸部)3の作用域を拡大するため)に後退させて掻込みスターホイル2の掻込み作用域を拡大する構成としている。
【0031】
したがって、掻込みスターホイル2は、掻込み作用範囲が広がったことによって、掻込み効果がアップし、多量の穀稈が一度に供給されたり、倒伏穀稈に対しても適確な掻込み作用ができるものとなった。
【0032】
そして、実施例は、前記ガイド杆6を、掻込みスターホイル2の前側で掻込み歯部(凸部)3の基の部分まで軸芯P側に近づけて配置すれば、より掻込み機能の促進を図ることができる。
【0033】
そして、実施例の場合、前記センターガイド5,5を構成する上部案内杆5a,5aは、図2に示すように、右の上部案内杆5aの終端部分を前記ガイド杆6に交差させて構成している。したがって、実施例は、交差させることによって少量の穀稈や短稈を保持しながら適確に掻込み作用をして穀稈姿勢を乱さずに案内することができる利点がある。
【0034】
そして、右側の掻込みスターホイル2は、軸芯Pの周囲を囲むように巻付き防止カラー30が設けられ、穀稈や藁屑の巻き付きを防止する構成としている。そして、上記巻付き防止カラー30は、図1に示すように、搬送チエン28と挟持杆29との間の搬送穀稈量が増えて挟持杆29が外側(図1において右側)に押圧されて広がると、前部のガイド杆6の部分(掻込みスターホイル2の上方に位置する部分)が軸芯P側に近づいてカラーに接触するが、そのとき外周で受け止めて、ストッパーの機能を果たすことになっている。
【0035】
つぎに、穀稈搬送通路における搬送中の穀稈等の詰まりを検出する装置に関する実施例について、図7に基づいて説明する。
まず、穀稈搬送通路40は、図7に示す実施例の場合、前部の左右にそれぞれ2条の刈取穀稈通路40a,40bが形成され、2条の穀稈列を刈取って上方に搬送して合流する構成としている。各刈取穀稈通路40a,40bは、図面に示すように、始端部に左右一対の掻込みラグベルト41,41と掻込みスターホイル42,42とが設けられ、それに接続して搬送チエン43と挟持杆44とからなる株元搬送装置45と穂先搬送装置46とを設けて構成している。そして、穀稈搬送通路40は、上記左右の刈取穀稈通路40a,40bを上方に延長して搬送穀稈を合流させて搬送し、図面では省略したが脱穀装置に穀稈を供給する構成としている。
【0036】
そして、詰まり検出装置47は、図面に示すように、前記穀稈通路40の側部に臨ませて詰まり感知板48を設け、この詰まり感知板48を詰まりセンサ49に接続して検出作動に基づき検出できる構成としている。実施例の場合は、つまりを検出すると、すぐ、警報を発する構成としている。
【0037】
なお、詰まり検出後の対応は、コンバインを緊急停止して作業を自動的に中断する等の対応策が考えられる。
実施例は、刈取穀稈が正常に搬送されているときには詰まり感知板48が穀稈ガイドを兼ねる構成とし、円滑な搬送ができる特徴がある。そして、実施例は、詰まり感知板48を、最も詰まりが発生し易い左右の刈取穀稈通路40a,40bの合流位置(穀稈搬送通路40)に設けることによって、詰まりを早期に検出することができる特徴がある。
【0038】
つぎに、図8、乃至図11に基づいて、刈取オープン装置の実施例を説明する。
従来からコンバインは、刈取搬送装置を、清掃やメンテナンスのために走行フレームの前部位置から側方にオープン回動するとき、例えば、刈取搬送装置と走行フレームとを連結している刈取昇降油圧機構等を着脱操作する必要があり、相当の手間と作業者に負担がかかっていた。
【0039】
実施例は、上記課題を解決するものであって、オープン回動操作に際し、着脱操作等の作業をほとんどする必要がなく、比較的簡単にオープン操作ができるコンバインの刈取搬送装置を提供するものである。
【0040】
まず、刈取搬送装置55は、図面に示すように、刈取懸架台56に軸架した刈取フレーム57の前部に支持され、後部の横軸58を回動支点にして上下方向に刈取高さの昇降調節を可能とし、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点にして刈取懸架台56と一体となって、左外側方向へ刈取オープン回動ができる構成となっている。このように、実施例は、上記刈取懸架台56が刈取フレーム57と横軸58とを介して刈取搬送装置55と一体となっており、全体が、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点にして左外側にオープン回動ができる構成となっている。そして、刈取搬送装置55は、図面に示すように、刈取フレーム57と前記横軸58とを介して刈取懸架台56に支持し、刈取フレーム57の後部に連結して後方に伸ばした昇降用の延長アーム60を刈取上下油圧シリンダ61と連結し、上下昇降ができる構成となっている。そして、上記刈取上下油圧シリンダ61は、図面から解るように、前記刈取懸架台56に設けた収納部62に収納する構成としている。
【0041】
そして、油圧機構のバルブ63と作動油のタンク64とは、前記縦軸59の背後の回動時に邪魔にならない位置に配置して構成している。そして、前記刈取上下油圧シリンダ61は、上記作動油のタンク64からホース65で接続した構成としている。なお、前記刈取上下油圧シリンダ61は、これに代えて、例えば、電動モータ等を利用することもできる。
【0042】
以上のように、実施例は、刈取搬送装置55を支持している刈取懸架台56を、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点として一体に左側方へ刈取オープン回動ができる構成とし、回動する刈取懸架台56に刈取上下油圧シリンダ61を装備したから、刈取オープン回動操作がきわめて簡単にできるものとなった。そして、実施例は、刈取上下の油圧シリンダ61を含めて油圧機構も簡単となり、製造コストも高くならない効果がある。
【符号の説明】
【0043】
1 刈取装置
2 掻込みスターホイル
3 掻込み歯部(凸部)
4 掻込みラグベルト
5 センターガイド
5a 上部案内杆
5a 上部案内杆
5b 下部案内杆
5b 下部案内杆
6 ガイド杆
P 軸芯
P−P1 仮想の延長線
A 上部案内杆の外側に張出した部位
B 下部案内杆の外側に張出した部位
D−D 左右ラグベルトの先端と先端とを結んだ仮想線
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンバインは、外周を星型状の掻込み歯部(凸部)に形成した掻込みスターホイルと、掻込みラグベルトと、これらに穀稈を誘導案内するための複数本のガイド杆等によって構成した穀稈掻込み装置を、刈取搬送装置の前部に装備して構成されている。例えば、実開平6−26425号公開実用新案公報(特許文献1参照)、更には、特開2007−117007号公開特許公報(特許文献2参照)に穀稈掻込み装置が開示されている。
【0003】
まず、実開平6−26425号公開実用新案公報に示されている技術は、穀稈誘導路の前部に複数のスター形の掻込ホイル8,8a,9が軸架して設けられ、更に、スター形の掻込ホイル8,8a,9と同軸に、それぞれ後部が支持された突起付き掻込みベルト10,10a,11を前方に延長して、前部を広げて圃場の穀稈列を誘導しながら掻込み作用ができる構成が示されている。
【0004】
そして、特開2007−117007号公開特許公報に示されている技術は、前部の穀稈掻込み部位に、掻込みスターホイルと、掻込み用のラグベルトと、穀稈を案内するガイド杆とをそれぞれ設け、圃場の穀稈を刈取装置に掻込みながら案内する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−26425号公開実用新案公報
【特許文献2】特開2007−117007号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来からコンバインの穀稈掻込み装置は、同じ刈取条数であっても、圃場における稲の出来、不出来によって、収穫量が左右されるから、供給される穀稈量に大(多量),小(少量)のバラツキが生じて一度に多量の穀稈が供給されたり、逆に、供給量が少ない場合がある。このような場合、従来のコンバインにおける穀稈掻込み装置は、刈取条数に応じて標準的な穀稈量を想定して穀稈の誘導間隔やガイド杆の配置、更にはガイド杆の弾力性、掻込みスターホイルや掻込みラグベルトの回転速度等を設定しているから、穀稈が多量の場合や逆に少量の場合に対応できず、詰まったり、倒伏したりして適確な掻込み作用ができない場合が生じる課題があった。
【0007】
更に、従来の掻込みスターホイルの掻込み作用範囲(掻込み作用に利用する範囲)は、狭く、掻込みスターホイルの全周の中で限られた一部分しか利用せず、掻込み搬送作用が不充分となる課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、圃場の穀稈を刈取装置(1)側へ掻込む左右一対の掻込みスターホイル(2,2)を、相互の掻込み歯部(3,3)の先端回転軌跡が交差する程度に接近させて軸架し、該左右一対の掻込みスターホイル(2,2)の上側には、前方ほど相互の間隔を広くして平面視でハ字状に配置した左右一対の掻込みラグベルト(4,4)をそれぞれ設け、前方からの穀稈を左右に分離して両側に案内するセンターガイド(5,5)を前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)の中間位置前方に配置し、前記右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、該右側掻込みスターホイル(2)の回転方向に沿わせて穀稈を案内し、回転中心側への穀稈の倒れ込みを規制する構成とし、該ガイド杆(6)を、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側から、穀稈に対して掻込み歯部(3)の掻込み作用が可能な位置まで前側を窪み状に後退させて形成した穀稈掻込み装置を備えることを特徴とするコンバインの刈取部とした。
【0009】
前側から送込まれる圃場の刈取直前の穀稈を、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を拡大して多量の穀稈でも適確に掻込み作用を行う装置としている。すなわち、請求項1の発明は、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、掻込み範囲を拡大するために、掻込み歯部(3)の掻込み作用範囲を可能な位置まで前側を窪み状に後退させて、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を極力右側方向に拡大したから、掻込み作用範囲が従来より広がって、特に、多量の穀稈が一度に誘導されてきた場合に対応できるように掻込み能力を高めたものとなった。
【0010】
そして、請求項2記載の発明は、圃場の穀稈を左右両側に分離して前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側へ案内する少なくとも上下2段のセンターガイド(5,5)を設け、該センターガイド(5,5)の左右の上部案内杆(5a,5a)の前後方向の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト(4,4)の先端部分を結んだ仮想線(D−D)よりも前方側に配置し、センターガイド(5,5)の左右の下部案内杆(5b,5b)は、前後の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(B)を、前記仮想線(D−D)よりも後方側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部とした。
【0011】
誘導される穀稈量の変化に対応できるものとなっている。すなわち、上下2段構成のセンターガイド(5,5)は、左右の上部案内杆(5a,5a)が、前方側において、少量の穀稈であっても前寄りにある最も外側に張出した部位(A)が、早めに外側へ押し出すように案内して、掻込みラグベルト(4,4)側に誘導して係合させ、掻込みを促進することができる。そして、逆に、多量の穀稈が送込まれてくると、左右の下部案内杆(5b,5b)が、上部案内杆(5a,5a)より遅れたタイミングでもって穀稈を掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側に誘導案内することができるものとなっている。
【0012】
実施例の場合、上記の如き作用は、左右の上部案内杆(5a,5a)が、左右の下部案内杆(5b,5b)に対比して、柔軟に構成しているから、多量の穀稈が供給されたときには内側に退避し、少量の穀稈に対しては外側の掻込みラグベルト(4,4)側に案内することができる。
【0013】
そして、請求項3記載の発明は、前記センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、円弧形状に最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも更に右側に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部とした。
【0014】
センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、誘導案内する穀稈を右側の掻込みラグベルト(4)、及び掻込みスターホイル(2)の係合圏内に案内できるから、それら穀稈を係合するタイミングが早くなって、掻込み工程での停滞がなく、素早く掻込まれるものとなった。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1記載の発明によると、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を、従来の構成に比べて大幅に拡大し、多量の穀稈に対しても充分に対応することができる。そして、右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、掻込み範囲を拡大するために、前側から軸芯(P)側に後退させて窪み状に形成し、掻込みスターホイル(2)の掻込み作用範囲を極力右側方向に拡大することで、多量の穀稈にも充分に対応できるように掻込み能力が高まり、刈取作業を能率よく行うことができる。
【0016】
そして、請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、前方から掻込み部位に誘導される穀稈量の変化に対応しながら適確な掻込みを行うことができる。すなわち、上下2段のセンターガイド(5,5)を構成する上部案内杆(5a,5a)と下部案内杆(5b,5b)とに、それぞれ分担して機能を持たせ、短稈や少量の穀稈であっても、逆に、多量の穀稈が送込まれてきても掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側に適確に案内して掻込むことができ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0017】
なお、実施例の場合、上部案内杆(5a,5a)は、張出した部位(A)を前寄りに配置し、しかも、下部案内杆(5b,5b)に対比して柔軟な構成としているから、少量の穀稈に対しては早い時期に外方の掻込みラグベルト(4,4)側に案内して掻込み作用を促進し、又、一度に多量の穀稈が供給されたときには柔軟な作用によって穀稈に押圧されて内側に退避するから、下部案内杆(5b,5b)が穀稈に作用し、外側の掻込みラグベルト(4,4)側に案内することができる。
【0018】
そして、請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)を右側の掻込みラグベルト(4)に近づけて構成したから、特に、少量の穀稈の場合、早いタイミングで掻込みラグベルト(4)の係合圏内に案内して、掻込み工程における穀稈の停滞をなくし、素早く掻込むことができ、刈取作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】穀稈掻込み装置の平面図
【図2】穀稈掻込み装置の要部の平面図
【図3】穀稈掻込み装置の平面図
【図4】穀稈掻込み装置の側断面図
【図5】コンバインの正面図
【図6】コンバインの側面図
【図7】刈取搬送装置の平面図
【図8】一部破断したコンバインの平面図
【図9】コンバインの作用側面図
【図10】コンバインの作用平面図
【図11】コンバインの作用側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を具体的に説明する。
まず、コンバイン10は、図5、及び図6に示すように、左右一対のクローラ11,11を装備した走行フレーム12上に、穀稈供給口13を前側に位置させて脱穀装置14を搭載し、その前側に刈取搬送装置15を配置して構成している。そして、刈取搬送装置15は、図面に示すように、基部を、走行フレーム12の前部に設けられた懸架台16の上部に、上下回動自在に懸架し、前方斜め下方に向けて延長された刈取フレーム17と、該刈取フレーム17の先端部に、横に向けて配置した伝動ケースを一体に連結して略T字型のフレームを形成し、このフレームに各装置を支持した構成としている。
【0021】
そして、刈取搬送装置15は、図面に示すように、前側低位置に分草杆18を、4条の刈取条列(図5参照)ごとに分草支持杆19で区分して取り付け、その背後から上方に向けて傾斜させた穀稈引起し装置20を配列した構成としている。更に、刈取搬送装置15は、上記穀稈引起し装置20の下方に4条の刈幅とした刈取装置1を設け、この刈取装置1の上方から前方側に向けて、本件出願の主要部であり、詳細に後述する穀稈掻込み装置22を装備している。そして、刈取搬送装置15は、上記穀稈掻込み装置22の後部に接続させて刈取後の穀稈を後部上方の脱穀装置14まで搬送する株元搬送装置23と穂先搬送装置24とを設けて構成している。
【0022】
以下、穀稈掻込み装置22について実施例を説明する。
まず、左右一対の掻込みスターホイル2,2は、図1、乃至図4に示すように、前記した左右一対の穀稈引起し装置20,20の間で背後に位置し、刈取装置1の上方において、相互の掻込み歯部(凸部)3,3が噛合い状態になる位置まで接近させて軸架し、回転駆動可能に構成している。実施例の場合、図面に示すように、右側の掻込みスターホイル2は、相互に噛合っている左側の掻込みスターホイル2から伝動される構成になっている。
【0023】
なお、本件明細書における右側、左側の表現は、コンバイン10の前進方向に向かって見た状態で判断し記載している。
そして、左右一対の掻込みラグベルト4,4は、図面に示すように、圃場の穀稈を係合して後方に掻込み作用が出来る程度の後退角を備えた長いラグを配列して上側のケース(上側の板、図4参照)25に支持したプーリに巻き付けて伝動可能に支持し、前記左右一対の掻込みスターホイル2,2の上方に同一軸で伝動可能に軸架した構成としている。そして、該掻込みラグベルト4,4は、図2に示すように、前方を広くして後方をスターホイル2,2の間隔幅に狭め、平面視でハ字状に配置して穀稈を中央部位の掻込みスターホイル2,2の掻込み圏内に集めるように作用する構成としている。
【0024】
つぎに、センターガイド5,5は、図1、乃至図4に示すように、前記掻込みラグベルト4,4、及び前記掻込みスターホイル2,2の中間で前方に配置するが、前記した4条に刈取条間を仕切っている分草支持杆(左右一対の穀稈引起し装置20,20の間に位置する分草支持杆)19に左右の上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとの基部を固着し、上下2段(図4参照)に構成している。そして、実施例の場合、上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとは、図面から解るように、案内杆の軸径に差をつけ、穀稈株元に作用する下部案内杆5b,5bを大径にして強くし、株元より少し上側の稈茎に作用する上部案内杆5a,5aを小径にして弾性のある柔軟な構成にしている。
【0025】
そして、上部案内杆5a,5aと下部案内杆5b,5bとは、図2に示すように、外側を円弧形状にして、それぞれ外側縁で圃場に植わっている穀稈に対して案内作用をしながら前側で左右両側に分離し、略中間位置に達した部位で左右の掻込みラグベルト4,4に受け継がせるように構成している。そして、上部案内杆5a,5aは、図2に示すように、円弧形状に形成して最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト4,4の先端部分を結んだ仮想線(D−D)より前方側に位置する構成としている。そして、下部案内杆5b,5bは、図2に示すように、前後の略中間位置で円弧形状の最も外側に張出した部位(B)を、前記した仮想線(D−D)より後方側に位置する構成としている。
【0026】
そして、本件明細書においては、上記した円弧形状に形成して最も外側に張出した部位(A)、及び部位(B)は、図2に示すように、各案内杆5a,5bの前部側と後部側とからそれぞれ延長した仮想の延長線の交点Cを含むものとする。
【0027】
このように構成することによって、センターガイド5,5は、前方から掻込み部位に誘導されてくる穀稈に対して、下部案内杆5b,5bが株元側に強く作用し、上部案内杆5a,5aが穀稈の上部位置(掻込みラグベルト4,4の作用する部位の上側付近、図4参照)に作用して両側に案内する。そして、実施例の場合、上部案内杆5a,5aは、張出した部位(A)を前寄りに配置し、しかも、下部案内杆5b,5bに対比して柔軟な構成としているから、少量の穀稈や短稈に対する対応性が優れており、早い時期に外方の掻込みラグベルト4,4側に案内して掻込み作用を促進し、又、一度に多量の穀稈が供給されたときには柔軟な作用によって穀稈に押圧されて内側に退避するから、下部案内杆5b,5bが穀稈の株元側に作用し、外側の掻込みラグベルト4,4側に案内することができる。
【0028】
更に、右側の上部案内杆5aは、図2に示すように、円弧形状の最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記した右側掻込みスターホイル2の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)より、更に、右側にまで張出した状態に構成している。
【0029】
実施例の右側上部案内杆5aは、上記の如く構成して、右側の掻込みラグベルト4に近づけているから、掻込み穀稈が少量の場合や短稈に対し、早いタイミングで掻込みラグベルト4の係合圏内に穀稈を案内して、掻込み工程の初期における穀稈の乱れや停滞をなくし、素早く掻込み作用ができるものとなった。
【0030】
つぎに、ガイド杆6は、図1に示すように、基部を右側スターホイル2より右側の前部機枠27に固着し、掻込みスターホイル2上の前側を通し、左側の搬送チエン28の搬送側に沿わせて設け、中間部位から後部を挟持杆29とする構成としている。そして、ガイド杆6は、図面に示すように、前半部分を前記掻込みスターホイル2の回転方向に沿わせて前縁で前側の穀稈を案内し、スターホイル2の回転中心側への倒れ込み(巻き込み作用)をなくするように規制する構成としている。そして、該ガイド杆6は、図2に示すように、前記右側掻込みスターホイル2の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)より右側から穀稈に対して、前記掻込み歯部(凸部)3の掻込み作用ができるように前側を窪み状(掻込み歯部(凸部)3の作用域を拡大するため)に後退させて掻込みスターホイル2の掻込み作用域を拡大する構成としている。
【0031】
したがって、掻込みスターホイル2は、掻込み作用範囲が広がったことによって、掻込み効果がアップし、多量の穀稈が一度に供給されたり、倒伏穀稈に対しても適確な掻込み作用ができるものとなった。
【0032】
そして、実施例は、前記ガイド杆6を、掻込みスターホイル2の前側で掻込み歯部(凸部)3の基の部分まで軸芯P側に近づけて配置すれば、より掻込み機能の促進を図ることができる。
【0033】
そして、実施例の場合、前記センターガイド5,5を構成する上部案内杆5a,5aは、図2に示すように、右の上部案内杆5aの終端部分を前記ガイド杆6に交差させて構成している。したがって、実施例は、交差させることによって少量の穀稈や短稈を保持しながら適確に掻込み作用をして穀稈姿勢を乱さずに案内することができる利点がある。
【0034】
そして、右側の掻込みスターホイル2は、軸芯Pの周囲を囲むように巻付き防止カラー30が設けられ、穀稈や藁屑の巻き付きを防止する構成としている。そして、上記巻付き防止カラー30は、図1に示すように、搬送チエン28と挟持杆29との間の搬送穀稈量が増えて挟持杆29が外側(図1において右側)に押圧されて広がると、前部のガイド杆6の部分(掻込みスターホイル2の上方に位置する部分)が軸芯P側に近づいてカラーに接触するが、そのとき外周で受け止めて、ストッパーの機能を果たすことになっている。
【0035】
つぎに、穀稈搬送通路における搬送中の穀稈等の詰まりを検出する装置に関する実施例について、図7に基づいて説明する。
まず、穀稈搬送通路40は、図7に示す実施例の場合、前部の左右にそれぞれ2条の刈取穀稈通路40a,40bが形成され、2条の穀稈列を刈取って上方に搬送して合流する構成としている。各刈取穀稈通路40a,40bは、図面に示すように、始端部に左右一対の掻込みラグベルト41,41と掻込みスターホイル42,42とが設けられ、それに接続して搬送チエン43と挟持杆44とからなる株元搬送装置45と穂先搬送装置46とを設けて構成している。そして、穀稈搬送通路40は、上記左右の刈取穀稈通路40a,40bを上方に延長して搬送穀稈を合流させて搬送し、図面では省略したが脱穀装置に穀稈を供給する構成としている。
【0036】
そして、詰まり検出装置47は、図面に示すように、前記穀稈通路40の側部に臨ませて詰まり感知板48を設け、この詰まり感知板48を詰まりセンサ49に接続して検出作動に基づき検出できる構成としている。実施例の場合は、つまりを検出すると、すぐ、警報を発する構成としている。
【0037】
なお、詰まり検出後の対応は、コンバインを緊急停止して作業を自動的に中断する等の対応策が考えられる。
実施例は、刈取穀稈が正常に搬送されているときには詰まり感知板48が穀稈ガイドを兼ねる構成とし、円滑な搬送ができる特徴がある。そして、実施例は、詰まり感知板48を、最も詰まりが発生し易い左右の刈取穀稈通路40a,40bの合流位置(穀稈搬送通路40)に設けることによって、詰まりを早期に検出することができる特徴がある。
【0038】
つぎに、図8、乃至図11に基づいて、刈取オープン装置の実施例を説明する。
従来からコンバインは、刈取搬送装置を、清掃やメンテナンスのために走行フレームの前部位置から側方にオープン回動するとき、例えば、刈取搬送装置と走行フレームとを連結している刈取昇降油圧機構等を着脱操作する必要があり、相当の手間と作業者に負担がかかっていた。
【0039】
実施例は、上記課題を解決するものであって、オープン回動操作に際し、着脱操作等の作業をほとんどする必要がなく、比較的簡単にオープン操作ができるコンバインの刈取搬送装置を提供するものである。
【0040】
まず、刈取搬送装置55は、図面に示すように、刈取懸架台56に軸架した刈取フレーム57の前部に支持され、後部の横軸58を回動支点にして上下方向に刈取高さの昇降調節を可能とし、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点にして刈取懸架台56と一体となって、左外側方向へ刈取オープン回動ができる構成となっている。このように、実施例は、上記刈取懸架台56が刈取フレーム57と横軸58とを介して刈取搬送装置55と一体となっており、全体が、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点にして左外側にオープン回動ができる構成となっている。そして、刈取搬送装置55は、図面に示すように、刈取フレーム57と前記横軸58とを介して刈取懸架台56に支持し、刈取フレーム57の後部に連結して後方に伸ばした昇降用の延長アーム60を刈取上下油圧シリンダ61と連結し、上下昇降ができる構成となっている。そして、上記刈取上下油圧シリンダ61は、図面から解るように、前記刈取懸架台56に設けた収納部62に収納する構成としている。
【0041】
そして、油圧機構のバルブ63と作動油のタンク64とは、前記縦軸59の背後の回動時に邪魔にならない位置に配置して構成している。そして、前記刈取上下油圧シリンダ61は、上記作動油のタンク64からホース65で接続した構成としている。なお、前記刈取上下油圧シリンダ61は、これに代えて、例えば、電動モータ等を利用することもできる。
【0042】
以上のように、実施例は、刈取搬送装置55を支持している刈取懸架台56を、走行フレーム54上の縦軸59を回動支点として一体に左側方へ刈取オープン回動ができる構成とし、回動する刈取懸架台56に刈取上下油圧シリンダ61を装備したから、刈取オープン回動操作がきわめて簡単にできるものとなった。そして、実施例は、刈取上下の油圧シリンダ61を含めて油圧機構も簡単となり、製造コストも高くならない効果がある。
【符号の説明】
【0043】
1 刈取装置
2 掻込みスターホイル
3 掻込み歯部(凸部)
4 掻込みラグベルト
5 センターガイド
5a 上部案内杆
5a 上部案内杆
5b 下部案内杆
5b 下部案内杆
6 ガイド杆
P 軸芯
P−P1 仮想の延長線
A 上部案内杆の外側に張出した部位
B 下部案内杆の外側に張出した部位
D−D 左右ラグベルトの先端と先端とを結んだ仮想線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の穀稈を刈取装置(1)側へ掻込む左右一対の掻込みスターホイル(2,2)を、相互の掻込み歯部(3,3)の先端回転軌跡が交差する程度に接近させて軸架し、該左右一対の掻込みスターホイル(2,2)の上側には、前方ほど相互の間隔を広くして平面視でハ字状に配置した左右一対の掻込みラグベルト(4,4)をそれぞれ設け、前方からの穀稈を左右に分離して両側に案内するセンターガイド(5,5)を前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)の中間位置前方に配置し、前記右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、該右側掻込みスターホイル(2)の回転方向に沿わせて穀稈を案内し、回転中心側への穀稈の倒れ込みを規制する構成とし、該ガイド杆(6)を、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側から、穀稈に対して掻込み歯部(3)の掻込み作用が可能な位置まで前側を窪み状に後退させて形成した穀稈掻込み装置を備えることを特徴とするコンバインの刈取部。
【請求項2】
圃場の穀稈を左右両側に分離して前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側へ案内する少なくとも上下2段のセンターガイド(5,5)を設け、該センターガイド(5,5)の左右の上部案内杆(5a,5a)の前後方向の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト(4,4)の先端部分を結んだ仮想線(D−D)よりも前方側に配置し、センターガイド(5,5)の左右の下部案内杆(5b,5b)は、前後の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(B)を、前記仮想線(D−D)よりも後方側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部。
【請求項3】
前記センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、円弧形状に最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも更に右側に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部。
【請求項1】
圃場の穀稈を刈取装置(1)側へ掻込む左右一対の掻込みスターホイル(2,2)を、相互の掻込み歯部(3,3)の先端回転軌跡が交差する程度に接近させて軸架し、該左右一対の掻込みスターホイル(2,2)の上側には、前方ほど相互の間隔を広くして平面視でハ字状に配置した左右一対の掻込みラグベルト(4,4)をそれぞれ設け、前方からの穀稈を左右に分離して両側に案内するセンターガイド(5,5)を前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)の中間位置前方に配置し、前記右側掻込みスターホイル(2)の上側に配置するガイド杆(6)を、該右側掻込みスターホイル(2)の回転方向に沿わせて穀稈を案内し、回転中心側への穀稈の倒れ込みを規制する構成とし、該ガイド杆(6)を、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯(P)から前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも右側から、穀稈に対して掻込み歯部(3)の掻込み作用が可能な位置まで前側を窪み状に後退させて形成した穀稈掻込み装置を備えることを特徴とするコンバインの刈取部。
【請求項2】
圃場の穀稈を左右両側に分離して前記掻込みラグベルト(4,4)及び掻込みスターホイル(2,2)側へ案内する少なくとも上下2段のセンターガイド(5,5)を設け、該センターガイド(5,5)の左右の上部案内杆(5a,5a)の前後方向の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(A)を、左右の掻込みラグベルト(4,4)の先端部分を結んだ仮想線(D−D)よりも前方側に配置し、センターガイド(5,5)の左右の下部案内杆(5b,5b)は、前後の略中間位置で円弧形状に最も外側に張出した部位(B)を、前記仮想線(D−D)よりも後方側に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部。
【請求項3】
前記センターガイド(5,5)を構成する右側の上部案内杆(5a)は、円弧形状に最も外側に張出した部位(A)が、平面視において、前記右側掻込みスターホイル(2)の軸芯Pから前方へ延長した仮想延長線(P−P1)よりも更に右側に位置する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取部。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−273556(P2010−273556A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126685(P2009−126685)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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