説明

コンバインの排藁搬送装置

【課題】 排藁チェンを上下回動させる従来技術は、回動操作毎に機体内に装備した駆動ベルトを脱着する手間が掛かり又、回動中心が搬送体から離反した回動操作では持上げる操作力が増加する課題がある。
【解決手段】 扱胴軸7から動力を受動する搬送体1を上下回動可能にした排藁搬送装置において、該搬送体1を駆動する入力プーリ2の中央部Xに向けて前記搬送体1の回動中心線Pを延設させるとともに、穂先を搬送する搬送帯35側を支点にして回動する支持部材を排稈フレーム5から吊設し、回動半径を短縮させて該搬送体1の上下回動を排藁室40内で可能にした排藁搬送装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱粒後の排稈をフィードチェンから排藁チェンに受継ぎ、機体後方に排出する搬送体を装備し、該搬送体を上下回動可能に支持したコンバインの排藁搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィードチェンに連設して斜搬送する排藁チェンの受継ぎでは、搬送方向が屈折することから排稈の詰まりや稈抜けが発生し易くなり、整備点検をするために排藁室の床面に弾持した排藁ガイド棒に対して、搬送体を固着するロック装置を解除させ、補強用の排稈フレームを回動支点にして上方に開放すると、該搬送体が支持フレームとともに上昇して前記排藁ガイド棒との間隔が広がり、容易にメンテナンスを行える構造にしたものがある(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、搬送体を取付けたフレームが排藁チェンの上方を通過する構成であり、回動中心が駆動ケースよりも高い位置になって扱胴軸と入力軸との軸間が変動し、入力ベルトを外す操作をともなう回動搬送体である。
【特許文献1】特開平4−84826号公報(第3頁、第3―4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
排藁チェンを上下回動させる従来技術は、搬送体と並行にした排稈フレームを前記排藁チェンの上方に架設し、回動支点を搬送体から離反した機体内側に設けたフレーム構造にしたものであり、回動操作によって扱胴軸と入力軸の軸間が変動し、回動操作毎に機体内に装備した駆動ベルトを脱着する等の手間が掛かり、重量物の搬送装置を持上げる労力が増加する問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、搬送体を上下に回動させても駆動ベルトの軸間が変動しない回動中心線を設定し、該駆動ベルトを装着した状態のままで詰まりの除去や整備点検が行え、しかも、持上げる回動労力が軽減するように搬送体の回動半径を短縮させた排藁搬送装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
扱胴軸から動力を受動する搬送体を上下回動可能にした排藁搬送装置において、該搬送体を駆動する入力プーリの中央部に向けて前記搬送体の回動中心線を延設させるとともに穂先を搬送する搬送帯側を支点にし、回動可能に支持する支持部材を排稈フレームから吊設して回動中心線に連結したことにより、搬送体の回動半径が短縮されて排藁室内で該搬送体を回動可能に支持する支点構造にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
入力プーリ2の中央部Xに向けて延長した回動中心線Pを搬送体1の回動支点にしたので、回動操作にともなう扱胴軸7と入力軸8の軸間に変動が生じず、搬送体1の回動角度10だけ該入力プーリ2が傾斜した状態で駆動ベルト11の張力変化が最少限にとどまり、前記搬送体1の回動操作毎に駆動ベルト11を脱着する手間が解消された。又、穂先を搬送する搬送帯35側を支点にして搬送体1を回動可能にしたので、搬送障害を生じ易い排藁チェン14側の挟扼力を主に開放し、その支点構造も簡素化された。このような支点構造を固定した排稈フレーム5から支持部材を吊設して回動中心線Pに連結させ、回動支点を入力プーリ2の軸芯まで降下した位置に設定したものであり、その回動半径を排藁チェン14と回動中心線Pとの間隔に短縮したために、前記搬送体1が排藁室40内で回動可能になり、排稈フレーム5を固設したまま回動操作が行え構造の簡素化と、搬送装置を持上げる操作力を軽減させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態をコンバインに搭載した脱穀部の実施例図を参照に構造の概要を述べる。図8はコンバインの全体側面図であって、図1の排藁搬送装置の配置を示す脱穀部の平面図を併用して説明すると、左右一対のクローラ走行装置20に支持された機台21上に脱穀部Aを搭載し、前方に昇降自在の刈取部Bを装着して刈高さ調節を行ないながら分草板17で傾倒穀稈を浮揚させ、刈刃18で切断した穀稈を後方に連設する揚上搬送装置22で挟扼移送し、前記脱穀部Aに横設したフィードチェン23の始端側に受継がせる刈取搬送経路にしてある。
【0008】
フィードチェン23に受継いだ刈取穀稈を扱室25に装架した扱胴26の回転によって脱粒と処理を行い、周設した扱室の受網27から扱卸物が揺動選別体28上に落下し、揺動運動によって扱卸し物を後方に搬送しながら穀粒と塵埃を分別する粗選別が行われ、揺動選別装置の下方に併設した選別部31に非選別物を誘導し、選別風で良穀粒を分離して機外に搬出するようにしたコンバインに搭載した脱穀機の構成である。
【0009】
このような搭載用脱穀機の排藁搬送装置について図1の排藁搬送装置を装着した脱穀機の後方平面図と、図2に示す排藁チェンを巻回させた搬送体の側面図に図8に示すコンバインの全体側面図を併用して説明すると、扱室25に扱歯32を植設した扱胴26を回転自在に装架し、並設したフィードチェン23で刈取穀稈を搬送しながら脱粒処理をするものであって、脱粒後の排稈を斜搬送する排藁チェン14と穂先側に設けた搬送帯35で搬送体1を形成し、始端側で前記フィードチェン23から排稈を受継ぎ、機体後方に装着したカッター部37に供給する排藁搬送装置にしたものである。
【0010】
次に搬送装置を収設した排稈フレームの構成を説明すると、扱室25の後壁38に排稈フレーム5を連結して排藁室40の上方にコの字型に配置させ、終端に立設する門形フレーム41に螺着し、前記排稈フレーム5の対角部55a、55bに搬送体1を横断する支持パイプ42a、42bを架設したフレーム構造により、排藁室40を形成したものである。
【0011】
排稈フレームから支持した搬送装置の駆動構造を図4の搬送体を示す平面図と、始端側を示す図3の平面図を併用して説明すると、排藁チェン14の駆動を扱胴軸7の軸端に固設した駆動プーリ46から出力し、搬送体1に連結する駆動ケース6に装備した入力プーリ2に受動して、入力軸8と一対のベベルギヤ47を介して前記排藁チェン14の作用側が後方に移動する回転を付与するものであり、挟扼ガイド48と穂部ガイド50を前後に並設して排稈の穂部側と稈元側を挟扼しながら斜搬送するものである。又、非作用側の排藁チェン14に噛合させたスプロケット51によって、連結ケース52を介して対向する搬送帯35の始端側に再入力させ、前記排藁チェン14と同方向に回転する排藁搬送装置である。
【0012】
本発明の要旨である搬送装置が上下動する回動中心線の設定について上記する図2、3、4図を併用して説明すると、回動支点を結んだ回動中心線Pを入力プーリ2の中央部Xに向けて延設させ、排藁搬送装置の上方に架設した排稈フレーム5から支持メタル3a、3bを吊設し、搬送帯35側と該回動中心線Pが平面視と一致する位置を回動支点にしたことによって、搬送体1を矢印イの方向に回動させた場合に、駆動ケース6に内装した入力軸8と該扱胴軸7の軸間が変動しない構成になり、駆動ベルト11の張力変化を最小限にとどめたものである。
【0013】
このような回動中心線Pを設定したことによって、図5の前方支持メタルの正面図に鎖線で示す如く搬送体1の回動操作を行うと、入力プーリ2が中央部Xを中心に回転角度10に相当する分傾斜するが、前述したように軸間が変動しないために、前記入力プーリ2に巻き掛けた駆動ベルト11の張力変化が最小限にとどまり、回動操作毎に脱穀部A内で行う前記駆動ベルト11の脱着手間が解消できる構成にしてある。
【0014】
次に回動支点の支持構造とその特徴を説明すると、回動する搬送体1を排藁チェン14に搬送帯35を並設した構成にし、穂先を搬送する前記搬送帯35側を支点にして搬送体1を回動可能にしたものであって、固定した排稈フレーム5から支持アーム4を排稈フレーム5から吊設して回動中心線Pに連結させ、支点位置を入力プーリ2の軸芯まで降下させて該回動中心線P上に回動支点を設定し、その回動半径を前記排藁チェン14と回動中心線Pとの間隔に短縮させたことによって、前記搬送体1が排藁室40内で回動可能になり、排稈フレーム5を固設したままで回動操作が行える構成にしたものである。
【0015】
図3の拡大平面図に示す前方支持メタル3aの配置は、回動中心線Pが通過する駆動ケース6の位置に支点軸12aを一体的に装着し、前支持パイプ42aから吊設した前支持アーム4aに前記前方支持メタル3aを設け、該支点軸12aと係合させた回動自在の連結構造にし、フィードチェン23から排稈を受継ぐ排藁チェン14の始端側強度を保持し、剛性の高い前記駆動ケース6を介在させた構成によって、詰まり等の搬送異状による変形や破損防止をしたものである。
【0016】
図5と図6は支持メタルの前方と後方を示す正面図であって、図1の脱穀部の後方平面図を併用して排稈フレームから吊設した搬送体の支持構造を説明すると、前述したように脱穀部Aの後壁38からコの字型に排稈フレーム5を配置し、入力プーリ2側の角部55a上に前支持パイプ42aを設け、対向する角部55bにも同様の後支持パイプ42bを対設し、搬送体1の上方を横断する前記支持パイプ42と回動中心線Pが平面視で交叉する位置に向け、支持アーム4a、4bを排稈フレームから吊設して排藁チェン14と並行する支持メタル3a、3bを設けたものである。これを中心にして搬送体1を回動角度10に開放をさせた際に、入力プーリ2が図5の鎖線で示す中央部Xを軸芯に変位するようにした支持構造にしてある。
【0017】
一方後方支持メタル3bは、排藁チェン台60と搬送帯ケース13を連結する補強板58を後方に設け、その近傍で搬送帯35側と回動中心線Pを平面視で一致させた位置を回動支点にし、該搬送帯ケース13の中央付近に装着溝56を設けてケース周辺の強度を高め、前記回動中心線Pと同方向に取付座57を溶着し、前記後方支持メタル3bを挟持した状態で後支点軸12bを嵌入させ、該搬送帯35側を回動支点にした排藁搬送装置にしてある。尚、図5に示した挟扼ガイド48は床面73の下方から排藁チェン14側にバネ75で付勢したものであり、挟扼する排稈量の増減に伴い出退する構成にしてある。
【0018】
図7は要部を断面した調節レバーの側面図であって、図3の始端側を拡大した平面図に図4の平面図を併用して排稈の搬送状態から開放状態にする回動操作を説明すると、排藁チェン台60と搬送帯ケース13の間を接続する連結ケース52を搬送体1の前側に、補強板58を後方に装着して一体化した搬送体1を形成し、該排藁チェン台60の外面にレバー受61を設けて屈曲した調節レバー62の垂直部63を嵌入させ、その軸端に抜け止ピン65を設けて左右の回動を可能にしたレバー構造にしてある。
【0019】
この調節レバー62を案内する調節板66を前支持パイプ42aから垂設し、回動中心線Pに対向したガイド溝67を穿ち、その両端に下限孔68と上限孔70を鉤形に設けた形状を鎖線で図示する投影図に示してあり、該調節レバー62が下限孔68に嵌着した位置において挟扼ガイド48に排藁チェン14のプレートが嵌り込んだ搬送状態になり、矢印ロ方向のレバー操作によって上限孔70の位置に移動させて搬送体1が挟扼力を失う開放状態を保持するものである。
【0020】
このような開放状態にした搬送体1の回動位置で搬送帯35側の移動を少なくし、排藁チェン14側の開放距離を大きくして排稈層の厚い稈元側の開放状態を顕著にするために、前記排藁チェン14から回動中心線Pまでの間隔を回動半径にし、搬送帯35側と一致した回動支点の位置になるように該回動半径が短縮され、回動操作時の持上げ力も軽減したものである。尚、このようなレバー装置を前記搬送体1の前後に設置すれば搬送装置が排稈フレーム5に複数箇所で接続でき、一層強固な連結構造にすることができる。
【0021】
上記したように入力プーリ2の中央部Xに向けて延長した回動中心線Pを搬送体1の回動支点にしたので、回動操作にともなう扱胴軸7と入力軸8の軸間は変動せず、搬送体1の回動角度10だけ該入力プーリ2が傾斜した状態で駆動ベルト11の張力変化が最少限にとどまり、前記搬送体1の回動操作毎に駆動ベルト11を脱着する手間が解消された。又、穂先を搬送する搬送帯35側を支点にして搬送体1を回動可能にしたので、排藁チェン14側の回動幅を搬送帯35側よりも大きく開放する支点構造になり、その支持部材を排稈フレーム5から吊設して支点位置を入力プーリ2の軸芯まで降下させ、回動中心線Pと該排藁チェン14との間隔を回動半径に短縮したので、前記搬送体1が排藁室40内で回動可能になり、排稈フレーム5を固設したままの回動操作が行える簡素化した支点構造になるとともに、搬送装置を持上げる調節レバー62の操作力を軽減させたものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
動力の伝達をする駆動軸側に対して、異なる傾斜方向に物体を移送するベルトコンベヤや収穫機の搬送装置に活用できる。


【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】脱穀部の後方平面図である。
【図2】搬送体の側面図である。
【図3】搬送体の始端側を拡大した平面図である。
【図4】搬送体の平面図である。
【図5】搬送体の前方支持メタルを示す正面図である。
【図6】搬送体の後方支持メタルを示す正面図である。
【図7】要部を断面した調節レバーの側面図である。
【図8】コンバインの全体側面図である。
【符号の説明】
【0024】
A・・脱穀部 P・・回動中心線 X・・中央部
1・・搬送体 2・・入力プーリ 3・・支持メタル
4・・支持アーム 5・・排稈フレーム 6・・駆動ケース
7・・扱胴軸 8・・入力軸 10・・回転角度
11・・駆動ベルト 12・・支点軸 13・・搬送帯ケース
14・・排藁チェン 26・・扱胴 35・・搬送帯
40・・排藁室 42・・支持パイプ 46・・駆動プーリ
57・・取付座 58・・補強板 60・・排藁チェン台
62・・調節レバー 66・・調節板 67・・ガイド溝
矢印イ・・搬送体の回動方向
矢印ロ・・調節レバーの操作方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載する脱穀部に架設した扱胴にフィードチェンを並設し、その終端部から機体後方に斜搬送する搬送体を設け、扱胴軸から動力を受動する前記搬送体を上下回動可能の構成にした排藁搬送装置において、搬送体(1)を駆動する入力プーリ(2)の中央部(X)に向けて該搬送体(1)の回動中心線(P)を延設させたことを特徴とするコンバインの排藁搬送装置。
【請求項2】
排藁チェン(14)と搬送帯(35)を並設して搬送体(1)を形成し、穂先を搬送する前記搬送帯(35)側を支点に該搬送体(1)を回動可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載したコンバインの排藁搬送装置。
【請求項3】
固設した排稈フレーム(5)から回動中心線(P)に連結する支持部材を該排稈フレーム(5)から吊設し、排藁室(40)内で搬送体(1)を回動可能に支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したコンバインの排藁搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−223254(P2006−223254A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44006(P2005−44006)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】