説明

コンバインの排藁搬送装置

【課題】扱胴終端部の藁が堆積しやすい場所に動力伝達機構を配置することを回避し、かつ、乱れのないスムーズな排藁搬送が可能なコンバインの排藁搬送装置を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である排藁搬送装置16を具備するコンバインは、フィードチェン9の駆動軸の回転数を検知する回転数センサ51を具備し、排藁搬送装置16は、モータ40により駆動されるとともに、モータ40への出力電圧を、前記検知される回転数に応じてコントローラ50により変更するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで排藁処理装置に搬送するコンバインの排藁搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで排藁処理装置に搬送するコンバインの排藁搬送装置において、該排藁搬送装置を、扱胴を駆動させる扱胴駆動軸から伝達される動力により駆動することとした排藁搬送装置の構成技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
また、排藁搬送装置に対する駆動力を、扱胴に対してフィードチェンとは反対側位置に位置させた伝動軸を介して、前記排藁搬送装置の搬送途中位置、もしくは搬送終端位置から入力することとした排藁搬送装置の構成技術は公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
上述した特許文献1に開示された構成では、排藁搬送装置を排藁搬送チェーン、前部排藁挟持杆、後部排藁挟持杆等により構成したことで、排藁搬送チェーンとの挟持作用が確実にでき、排藁詰まり等の発生を防止し、排藁を円滑に搬送できる。しかし、前記排藁搬送装置の駆動動力は扱胴駆動軸より伝達されるため、扱胴終端部に配置される伝達機構に藁が堆積しやすく、ベルトスリップの際にこの藁が発火する虞がある。
また、特許文献2に開示された構成では、上記の如く扱胴終端部に動力伝達機構を設けることがなく、係る場所への藁の堆積を防止できる。しかし、扱胴から排藁搬送装置に動力を伝達する構成であると、排藁量が多くなり排藁搬送装置の負荷が増加した場合、扱胴の回転数も低下するため、脱穀性能が低下する。また、排藁搬送チェーンで詰まりが生じた場合には、扱胴等も一緒に逆回転して詰まりを除去するため、大きな力が必要となっていた。
【特許文献1】特開2001−299076号公報
【特許文献2】特開2005−287340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、扱胴終端部の藁が堆積しやすい場所に動力伝達機構を配置することを回避し、かつ、乱れのないスムーズな排藁搬送が可能なコンバインの排藁搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、脱穀装置により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで排藁処理装置に搬送するコンバインの排藁搬送装置であって、前記コンバインは、前記フィードチェンの搬送速度を検知する手段を具備し、前記排藁搬送装置を、モータにより駆動するとともに、該モータの出力を、前記フィードチェンの搬送速度に応じて変更する手段を設けるものである。
【0007】
請求項2においては、前記モータを、前記排藁搬送装置の始端側に配設するものである。
【0008】
請求項3においては、前記モータを、前記排藁搬送装置の終端側に配設するものである。
【0009】
請求項4においては、扱胴により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで搬送するコンバインの排藁搬送装置であって、前記コンバインは、前記フィードチェンの搬送速度を検知する手段を具備し、エンジンの出力を処理胴に伝達し、該処理胴と前記排藁搬送装置との間に動力伝達機構と動力断接手段を設けるとともに、前記排藁搬送装置にモータを付設して駆動可能に構成し、前記フィードチェンの搬送速度に応じて、前記排藁搬送装置を、モータまたは処理胴からの動力の、何れか一方又は両方により駆動するものである。
【0010】
請求項5においては、前記モータを、前記排藁搬送装置の終端側に配設するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1の如く構成したので、フィードチェンの搬送速度に適した排藁搬送速度を実現できる。扱胴終端部の駆動伝達機構が不要となり、係る場所への藁の堆積を防止できる。さらに、排藁搬送装置に係るエンジンからの動力伝達が不要となるので、駆動力の低減を防止できる。また、排藁搬送装置の独立した駆動が可能となり、排藁搬送装置に詰まり等が生じたときに逆回転にて排出が可能となる。
【0013】
請求項2の如く構成したので、排藁搬送装置始端部付近の空間を利用でき、係る箇所に配設されるモータのメンテナンスが容易になり、メンテナンス性を向上できる。
【0014】
請求項3の如く構成したので、重心を開放支点側に配置でき、排藁搬送部を開放する際の操作性を向上できる。また、排藁搬送装置前方の空間が大きく、係る箇所のメンテナンスが容易になる。
【0015】
請求項4の如く構成したので、排藁搬送速度の無段階調節が可能となり、フィードチェンの搬送速度に適した排藁搬送速度を実現できる。また、扱胴終端部の動力伝達機構が不要となり、係る場所への藁の堆積を防止できる。また、一方で駆動していときに負荷が増加して駆動力が不足した場合には、他方を駆動させてアシストして、確実に搬送することができる。
【0016】
請求項5の如く構成したので、重心を開放支点側に配置でき、排藁搬送部を開放する際の操作性を向上できる。また、排藁搬送装置前方の空間が大きく、係る箇所のメンテナンスが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である、脱穀装置12により脱穀された後の排藁をフィードチェン9より受け継いで排藁処理装置17に搬送する排藁搬送装置16を具備するコンバインについて、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図中における矢印Aの指す方向を前とし、前後方向を規定する。また、係る前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【実施例1】
【0018】
まず、図1乃至図3を参照して、本発明に係る排藁搬送装置16を具備するコンバインの全体構成について説明する。
【0019】
図1及び図2に示す如く、コンバインは、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2が配設され、機体フレーム2の前部には、刈取部3が昇降可能に配設される。刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース5を立設して引起しケース5より突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、分草板4後部に配設する刈刃7にて株元を刈り取る構成である。
【0020】
刈り取られた穀稈は、搬送部8にて後部へ搬送され、搬送部8の後部上端から株元がフィードチェン9に受け継がれ、扱胴21や処理胴22を具備する脱穀装置12内に穀稈が搬送され、脱穀される。そして、フィードチェン9後端には排藁搬送チェーン18等を具備する排藁搬送装置16が配設され、排藁搬送装置16の後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベヤ等を具備する排藁処理装置17が配設され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一に放出する構成である。
【0021】
また、脱穀装置12側部には選別後の精粒を貯溜するグレンタンク13が配設され、グレンタンク13前部には運転室14が配設される一方、グレンタンク13後部には排出オーガ15の縦オーガ15aが立設され、縦オーガ15aを中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とし、本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易に構成される。
【0022】
グレンタンク13の底部には排出コンベヤ20が前後方向に配設され、排出コンベヤ20から排出オーガ15に動力が伝達されて、排出オーガ15先端よりトラック等へ穀粒を排出可能に構成される。更に、脱穀装置12下方には、選別部が配設され、脱穀装置12から流下する穀粒や藁屑等から穀粒を選別し、精粒をグレンタンク13に搬送する構成である。
【0023】
図2及び図3に示す如く、コンバイン本体の左後部において、脱穀装置12、排藁処理装置17が前後に配設される。脱穀装置12には、前述の如く、扱胴21や処理胴22が内蔵されており、穀稈が脱穀される。脱穀装置12には、扱室カバー31が開閉可能に設けられ、扱室カバー31の閉鎖により脱穀装置12の上方を被覆する構成である。
また、排藁処理装置17には、前述の如く、排藁カッターや拡散コンベヤ等の処理装置を具備し、フィードチェン9を介して搬送される排藁を受け継いでこれらの処理装置へ搬送する排藁搬送装置16(排藁搬送チェーン18)を具備する。排藁処理装置17には、処理室カバー30が開閉可能に設けられ、処理室カバー30の閉鎖により排藁処理装置17の上方を被覆する構成である。
【0024】
以下では、図3を参照して、本実施例に係る処理室カバー30について説明する。
処理室カバー30は、排藁処理装置17の上方を被覆するカバー部材である。排藁処理装置17の上方を除く部分は機体フレーム2等により覆われる。図3に示す如く、排藁処理装置17内の右側には、機体フレーム2に支持される支持フレーム32が配設される。支持フレーム32の前後両端部には、ブラケット33・33が固設され、ブラケット33・33には回動支軸34・34がそれぞれ回動自在に設けられる。処理室カバー30は、後端が幅広の略台形状とした板状部材を、左右方向のフレーム部材と前後方向のフレーム部材とを合わせた排藁支持フレーム35により支持される。排藁支持フレーム35の後部は、一対の左右フレーム36・36等により構成され、左右フレーム36・36の右端部に回動支軸34・34が設けられる。
【0025】
以上の如く構成される処理室カバー30は、回動支軸34・34を中心として上方に回動自在に構成される。また、本実施例に係るコンバインは、この開閉操作手段としての操作機構(不図示)を具備し、操作者が該操作機構を操作することによって、処理室カバー30の開閉が可能となる。
【0026】
以下では、図3を参照して、本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である排藁搬送装置16について説明する。
【0027】
排藁搬送装置16は、脱穀装置12によって脱穀された後の排藁を搬送する手段であり、排藁処理装置17内に設けられる。図3に示す如く、排藁処理装置17内には、左右フレーム36に固設される排藁メインフレーム37が配置されている。そして、排藁メインフレーム37に、排藁搬送装置16の支持フレーム38が固設され、排藁搬送装置16が、支持フレーム38、排藁メインフレーム37、左右フレーム36等を介してコンバイン本体に支持される構成である。
【0028】
図3に示す如く、排藁搬送装置16は、主として排藁搬送チェーン18、タイン付きの排藁補助搬送ベルト19、機体側に取り付けられる棒状の排藁挟扼ガイド(不図示)、等を具備する。排藁搬送チェーン18及び補助搬送ベルト19と、その下方に配設される前記排藁挟扼ガイドとに排藁を保持し、排藁搬送チェーン18及び補助搬送ベルト19の駆動により排藁を搬送する構成である。平面視において、補助搬送ベルト19は排藁搬送チェーン18の内側に位置し、補助搬送ベルト19により排藁の穂先側を保持・搬送し、排藁搬送チェーン18により排藁の株元側を保持・搬送するものである。
以上の如く構成される排藁搬送チェーン18と、補助搬送ベルト19と、は略平行に一体的に連結固定して配置され、支持フレーム38に支持される。
【0029】
以上の如く構成される排藁搬送装置16は、支持フレーム38、排藁メインフレーム37、左右フレーム36等を介してコンバイン本体に支持され、前記排藁挟扼ガイドを除いて回動支軸34・34を中心として処理室カバー30と一体的に上方に回動自在に構成される。
【0030】
図3に示す如く、排藁搬送チェーン18は、その始端部に配置される駆動スプロケット43、及びその終端部に配置される従動スプロケット44を巻回する。補助搬送ベルト19は、排藁搬送チェーン18から動力を得て駆動される。具体的には、排藁搬送チェーン18に巻回されるスプロケットの一つであるスプロケット45に、補助搬送ベルト19駆動用の駆動軸46が設けられ、駆動軸46に固設されて動力を得るプーリ47が補助搬送ベルト19に設けられる。以上の如く、排藁搬送チェーン18と補助搬送ベルト19とが連動する構成である。
【0031】
図3に示す如く、駆動スプロケット43に固設される入力軸(不図示)は、図示せぬ減速ケース等を介してモータ40の出力軸41と接続され、モータ40から該入力軸に動力が伝達される。モータ40は、例えばバッテリからの直流電源を電源とする電気式のモータからなり、その出力電圧を変更することによりモータ出力(回転数)、正逆回転等を変更可能に構成され、ケースより出力軸41が突出される。モータ40は、前記減速ケースとともに処理室カバー30側に図示せぬ支持部材を介して固定される。
なお、本実施例では、モータ40は、電気式のモータとしモータ40の出力軸41に減速ケースを接続する構成としたが、減速ケース付きのギアードモータで構成しても良く、正逆回転可能なモータ、かつ、十分な出力トルクを得られる構成であれば本実施例のものには限定されない。
【0032】
図4に示す如く、モータ40は、制御手段となるコントローラ50と接続され、コントローラ50からの出力電圧等の制御信号によりその出力が変更される構成である。なお、コントローラ50は、コンバインの作動を制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイス等を含んで構成される。
【0033】
フィードチェン9の排藁(穀稈)搬送速度は、フィードチェン9の駆動軸(不図示)に設けられる回転数検知手段となる回転数センサ51によって検知される回転数と、コントローラ50に予め記憶される該回転数と搬送速度との相関により予測値として算出される。そして、コントローラ50は、この搬送速度の予測値に相当する排藁搬送装置16の搬送速度をもたらすモータ40の出力電圧値を予め記憶しており、該出力電圧をモータ40に出力することにより、フィードチェン9による搬送速度(予測値)と、排藁搬送装置16による搬送速度とを同調させる構成である。
なお、フィードチェン9の搬送速度を検知する手段として、本実施例では上記の如く駆動軸の回転数を検知して、搬送速度を予測する方法としたが、フィードチェン9の搬送速度と同調されるコンバインの走行速度から搬送速度を予測する方法でも、同じく搬送部8の搬送速度を検知する方法でも良く、フィードチェンの搬送速度を検知又は予測可能な構成であれば本実施例のものには限定されない。
【0034】
また、図4に示す如く、コントローラ50には、モータ40を逆回転操作させる逆回転操作手段52が接続され、操作者は逆回転操作手段52を操作することにより、モータ40を逆回転させる構成である。
【0035】
以上の如く構成される排藁搬送装置16は、コントローラ50と接続されるモータ40によって駆動され、コントローラ50にはフィードチェン9駆動軸の回転数を検知する回転数センサ51が接続され、コントローラ50は、回転数センサ51によって得られる回転数よりフィードチェン9の搬送速度の予測値を算出し、この予測値に応じた出力電圧をモータ40に出力するので、フィードチェン9の搬送速度に同調した排藁搬送装置16の搬送速度を実現でき、排藁を受け継ぐ際にスムーズな受け渡しが可能となる。また、排藁搬送装置16は、モータ40により駆動されるので、エンジン(不図示)から排藁搬送装置16に動力を伝達する必要がなくなる。さらに、排藁搬送装置16は、モータ40により駆動されるので、独立した駆動が可能となり、モータ40の正逆回転により排藁搬送装置16の正逆回転が可能となる。
【0036】
以上の如く、本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である排藁搬送装置16を具備するコンバインは、フィードチェン9の駆動軸の回転数を検知する回転数センサ51を具備し、排藁搬送装置16は、モータ40により駆動されるとともに、モータ40への出力電圧を、前記検知される回転数に応じてコントローラ50により変更するものである。
このように構成することにより、排藁搬送速度の無段階の調整が可能となり、フィードチェン9の搬送速度と、排藁搬送装置16の搬送速度とを同調させることが可能となり、フィードチェン9から排藁搬送装置16への排藁の受け渡しをスムーズにできる。また、エンジン(不図示)から排藁搬送装置16への動力伝達機構を設ける必要がなくなり、該エンジンの動力低減を防止でき、従来扱胴終端部に設けられていた動力伝達機構が不要となり、係る場所への藁の堆積を防止できる。さらに、排藁搬送装置16に詰まり等が生じたときに、逆回転にすることによって容易に詰まりを排出除去することができる。
【0037】
さらに、以上の如く、モータ40は、排藁搬送装置16の始端側に配置される排藁搬送チェーン18の駆動スプロケット43に動力を伝達することにより排藁搬送装置16を駆動するものである。
このように構成することにより、排藁搬送装置16始端部近傍の空間を利用でき、係る箇所に配設されるモータ40のメンテナンスが容易になり、メンテナンス性を向上できる。
【0038】
以下では、図5を参照して本実施例に係る排藁搬送装置16の駆動構成の別実施例について説明する。
【0039】
図5に示す如く、モータ40の出力軸41は、排藁搬送装置16終端付近の補助搬送ベルト19駆動用の駆動軸46に図示せぬ減速ケース等を介して接続される。こうして、モータ40の駆動力が駆動軸46に伝達され、駆動軸46に固設されるスプロケット45に伝達されて、排藁搬送チェーン18が補助搬送ベルト19と連動される構成である。
【0040】
以上の如く、モータ40は、排藁搬送装置16の終端側に配置される補助搬送ベルト19の駆動軸46に動力を伝達することにより排藁搬送装置16を駆動するものである。
このように構成することにより、回動支軸34・34近傍にモータ40を配設することにより処理室カバー30全体の重心を回動支軸34・34側に配置でき、処理室カバー30を開けて排藁処理装置17を開放する際の操作性を向上できる。また、排藁搬送装置16始端側の空間が大きく、排藁の詰まりが生じたときなどの係る箇所のメンテナンスが容易になる。
【実施例2】
【0041】
以下では、図6乃至図9を参照して本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である排藁搬送装置60について説明する。
なお、本実施例に係る排藁搬送装置60を具備するコンバインの構成は前述の実施例1に係る構成と略同じであり、その他の構成についても実施例1と同一箇所についての説明は省略する。
【0042】
図6乃至図8に示す如く、処理胴22を駆動させる処理胴入力軸22aの後端部には、プーリ61が固設され、このプーリ61と、回動支軸34・34近傍に配置される伝達軸62の一方に固設されるプーリ63と、テンションプーリ64と、テンションアーム67の一端に固設されるテンションプーリ65と、にはベルト66が巻回される。テンションアーム67の他端は、左右フレーム36に回動可能に支持され、前述の如く回動支軸34・34を回動支点として処理室カバー30と一体的に回動可能である。
そして、伝達軸62の他方には、スプロケット68が固設され、このスプロケット68と、排藁駆動軸69の一端に固設されるスプロケット70と、にはチェーン71が巻回される。排藁駆動軸69の他端にはベベルギア72が配設され、ベベルギア72の他端側には排藁入力軸73が接続される。この排藁入力軸73の他端は、補助搬送ベルト19に巻回されるスプロケットの内の一つのスプロケット47に固設される。
さらに、図7及び図8に示す如く、テンションアーム67は左右フレーム36に対して回動可能に構成され、テンションアーム67の中途部に、バネ(不図示)がテンションアームの長手方向と直交する方向に二つ設けられる。該バネのうちの一方は、機体フレーム2と連結され、テンションアーム67を初期位置に付勢するものであり、該バネのうちの他方は、図示せぬ操作ワイヤ、セクタギア等を介してクラッチモータ81に接続される。クラッチモータ81は、コントローラ80と接続され、コントローラ80からの制御信号を受けて前記セクタギア、操作ワイヤ、バネを介してテンションアーム67を引っ張り、テンションプーリ65がベルト66からの動力の伝達を受けない位置に移動させる、いわゆるベルトテンション式のクラッチを構成し、これを動力断接手段とするものである。なお、コントローラ80の構成は前述の実施例1に係るコントローラ50と略同じである。また、動力断接手段は、クラッチモータ81の代わりにシリンダ等を用いることも可能である。また、ベルトテンション式クラッチの代わりに電磁クラッチ等を用いることも可能であり限定するものではない。
【0043】
また、エンジンからの動力は適宜の動力伝達機構を介して、処理胴入力軸22aの前端側(排藁搬送装置60と反対側)に伝達される。
【0044】
以上の如く、エンジンからの動力は、適宜の動力伝達機構を介して、処理胴入力軸22aの前端側に伝達され、処理胴入力軸22aより、プーリ61、プーリ63、伝達軸62、スプロケット68、スプロケット47等を介して排藁搬送装置60に伝達される。
そして、コントローラ80よりクラッチモータ81に制御信号を送ることにより、テンションプーリ65がベルト66からの伝達を受けない位置に移動されることによって、エンジンから排藁搬送装置60への動力を切断することが可能である(図7参照)。また、処理室カバー30を開放することにより、テンションアーム67が上方へ回動し、テンションプーリ65がベルト66から動力の伝達を受けない位置に移動することによって、エンジンから排藁搬送装置60への動力を切断する構成である(図8参照)。
【0045】
排藁搬送装置60を駆動するもう一つ方法として、図6に示す如く、排藁搬送装置16の終端側であって、補助搬送ベルト19に巻回されるスプロケットのうち一つに、モータ40の出力軸41が図示せぬ減速ケース等を介して接続される。このモータ40の構成は実施例1に係るモータの構成と同様である。
【0046】
以下では、図9を参照して、以上の如く構成される排藁搬送装置60の駆動制御構成について説明する。なお、前述の実施例1と同様にコントローラ80には、モータ40が接続され、回転数センサ51を介してフィードチェン9の搬送速度が予測値として入力されるものとし、前述と同様に逆回転操作手段51が接続されるものとする。
【0047】
図9に示す如く、回転数センサ51により検知される回転数より、フィードチェン9の搬送速度が予測される。そして、コントローラ80は、この搬送速度に応じて、モータ40による駆動又は処理胴駆動軸22aからの動力伝達による駆動のいずれかを選択する構成である。例えば、搬送速度が低速、中速のときにはモータ40による駆動とし、高速のときには処理胴駆動軸22aからの動力伝達による駆動とすることができる。ただし、処理胴駆動軸22aにより駆動される排藁搬送装置60の搬送速度をフィードチェン9の搬送速度と同調できない場合には、モータ40によって補助的に駆動することが可能である。モータ40による駆動を停止する場合には、モータ40にて発電、又はモータ40の電源となるバッテリに電力を回生することが可能である。
【0048】
以上の如く構成される排藁搬送装置60は、エンジン(不図示)の出力を処理胴22に伝達する処理胴入力軸22aからの動力伝達機構と、コントローラ80と接続されるモータ40と、のいずれか一方又は両方によって駆動され、コントローラ80に入力されるフィードチェン9の搬送速度に応じて、モータ40への出力電圧、並びに前記動力伝達機構の断接を切り換えるので、フィードチェン9の搬送速度に同調した排藁搬送装置60の搬送速度を実現でき、排藁を受け継ぐ際にスムーズな受け渡しが可能となる。
【0049】
以上の如く、本発明に係る排藁搬送装置の実施の一形態である排藁搬送装置60を具備するコンバインは、
フィードチェン9の駆動軸の回転数を検知する回転数センサ51を具備し、排藁搬送装置60は、エンジンの出力を処理胴22に伝達し、処理胴22と排藁搬送装置60との間に、処理胴入力軸22aからの動力伝達機構と、動力断接手段を設けるとともに、排藁搬送装置60にモータ40を付設して、前記検知される回転数に応じて前記動力断接手段による動力の断接、及びモータ40への出力電圧を、コントローラ80により変更するものである。
このように構成することにより、フィードチェンの搬送速度に適した排藁搬送速度を実現できる。また、扱胴終端部の動力伝達機構が不要となり、係る場所への藁の堆積を防止できる。
【0050】
以上の如く、モータ40は、排藁搬送装置60の終端側に配置される補助搬送ベルト19に巻回されるスプロケットのうちの一つに動力を伝達することにより排藁搬送装置60を駆動するものである。
このように構成することにより、回動支軸34・34近傍にモータ40を配設することにより処理室カバー30全体の重心を回動支軸34・34側に配置でき、処理室カバー30を開けて排藁処理装置17を開放する際の操作性を向上できる。また、排藁搬送装置60始端側の空間が大きく、排藁の詰まりが生じたときなどの係る箇所のメンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るコンバインの実施の一形態であるコンバインの側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく左後方の概略平面図。
【図4】本発明に係る排藁搬送装置制御の実施の一形態を示す制御ブロック図。
【図5】本発明に係るコンバインの実施の別形態であるコンバインの左後方の概略平面図。
【図6】本発明に係るコンバインの実施の別形態であるコンバインの左後方の概略平面図。
【図7】同じく概略背面図。
【図8】同じく概略背面図。
【図9】本発明に係る排藁搬送装置制御の実施の別形態を示す制御ブロック図。
【符号の説明】
【0052】
9 フィードチェン
16 排藁搬送装置
18 排藁搬送チェーン
19 補助搬送ベルト
40 モータ
41 出力軸
50 コントローラ
51 回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで排藁処理装置に搬送するコンバインの排藁搬送装置であって、
前記コンバインは、前記フィードチェンの搬送速度を検知する手段を具備し、
前記排藁搬送装置を、モータにより駆動するとともに、
該モータの出力を、前記フィードチェンの搬送速度に応じて変更する手段を設ける、
ことを特徴とするコンバインの排藁搬送装置。
【請求項2】
前記モータを、前記排藁搬送装置の始端側に配設する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの排藁搬送装置。
【請求項3】
前記モータを、前記排藁搬送装置の終端側に配設する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの排藁搬送装置。
【請求項4】
扱胴により脱穀された後の排藁をフィードチェンより受け継いで搬送するコンバインの排藁搬送装置であって、
前記コンバインは、前記フィードチェンの搬送速度を検知する手段を具備し、
エンジンの出力を処理胴に伝達し、該処理胴と前記排藁搬送装置との間に動力伝達機構と動力断接手段を設けるとともに、前記排藁搬送装置にモータを付設して駆動可能に構成し、
前記フィードチェンの搬送速度に応じて、前記排藁搬送装置を、モータまたは処理胴からの動力の、何れか一方又は両方により駆動する、
ことを特徴とするコンバインの排藁搬送装置。
【請求項5】
前記モータを、前記排藁搬送装置の終端側に配設する、
ことを特徴とする請求項4に記載のコンバインの排藁搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−37(P2009−37A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162939(P2007−162939)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】