説明

コンバインの脱穀装置

【課題】 全量投入型のコンバインの脱穀装置において、扱歯が脱穀対象物に同時に衝突することを防止できるとともに、縄状になり易い脱穀物であっても適切に扱歯を作用させることができる構成を提供する。
【解決手段】脱穀装置14が備える扱胴30の扱歯41は、扱胴30と軸線を一致させる第1螺旋81に沿って並べられる。また、前記扱歯41と、その扱歯41に対して扱胴30の軸方向で隣り合う扱歯41とが、その位相を異ならせるとともに当該軸方向に見て一部のみ重複するように配置される。また、隣り合う扱歯41同士が扱胴30の軸方向で一部重複する一連の扱歯41は、第1螺旋81と同軸かつ巻き方向が同じで当該第1螺旋81よりピッチが大きい第2螺旋82に沿って並べられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンバインが備える脱穀装置に関するものであり、詳細には、脱穀装置が有する扱胴の扱歯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、螺旋状に扱歯が配置される扱胴を備える脱穀装置が知られている。この種の扱胴を開示するものとして例えば特許文献1がある。この特許文献1の扱胴は、当該扱胴周面に植設される複数の扱歯を、供給側から排出側に向け脱穀物に移送作用を与えるようにスクリュー状の線上に分割するとともに、前記扱胴の始端側部分から終端側部分の前記扱歯を、移送角を可変にし、前記扱胴の軸線方向と同方向に直線状に並設して構成されている。
【特許文献1】特許第2578075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
扱歯が軸方向と平行な同一直線上に並べて配置されている場合、脱穀処理時に複数の扱歯が同時に脱穀対象物に作用するため、脱穀装置に生じる瞬間的な負荷が大きくなってしまう。この点、特許文献1は、扱歯の移送角を変えることで脱穀対象物の条件に応じた脱穀処理の作用を調節できるものの、上述した扱歯の同時作用による瞬間的な負荷の増大は避けられない。特に、全量投入型コンバインでは、刈り取った穀稈全てが脱穀装置に投入されるので、脱穀処理で生じる負荷の影響が大きくなる。
【0004】
また、脱穀対象物の中には、大豆等のように搬送中に穀稈同士が絡み合って縄状になり易いものもあり、脱穀が適切に行われないままコンバインの機外に排出されたり、縄状となった脱穀対象物が脱穀装置内や排藁搬送装置等に詰まったりするおそれがあった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、扱歯が脱穀対象物に同時に衝突することを防止して、縄状になり易い脱穀物であっても適切に扱歯を作用させることができるコンバインの脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、周面に複数の扱歯を有する扱胴によって穀稈を脱穀する全量投入型コンバインの脱穀装置において、以下の構成が提供される。即ち、前記扱歯は、前記扱胴と軸線を一致させる第1の螺旋に沿って並べられる。また、前記扱歯と、その扱歯に対して前記扱胴の軸方向で隣り合う扱歯とが、その位相を異ならせるとともに当該軸方向に見て一部のみ重複するように配置される。そして、隣り合う扱歯同士が前記扱胴の軸方向で一部重複する一連の扱歯が、前記第1の螺旋と同軸かつ巻き方向が同じで当該第1の螺旋よりピッチが大きい第2の螺旋に沿って並べられる。
【0008】
これにより、搬送されてくる脱穀対象物に対し、第2の螺旋に沿って配置される一連の複数の扱歯が時間差をおいて順番に作用することになる。従って、複数の扱歯が同時に脱穀対象物に衝突して瞬間的な過負荷や騒音及び振動が発生することを防止でき、脱穀性能に優れるとともに乗り心地が快適なコンバインを提供することができる。また、ピッチの異なる2つの螺旋に沿って扱歯が配置されるので、脱穀対象物が縄状に纏まることを防止でき、スムーズな脱穀を行うことができる。
【0009】
前記のコンバインの脱穀装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この脱穀装置は、チャフシーブと、切刃と、を備える。前記チャフシーブは、前記扱胴から落下する穀粒を選別するために、当該扱胴の下方に複数配置される。前記切刃は、扱胴において最も上流側に配置される前記扱歯の近傍位置から、前記チャフシーブのうちで最も上流側に配置されるチャフシーブの下流側端部に相当する位置までを少なくとも含む範囲に配置される。前記切刃は、前記扱胴の回転によって複数の前記扱歯が周回する経路の間に配置される。
【0010】
これにより、脱穀対象物に切刃が作用するので、扱歯の連続的な作用とあいまって脱穀作業を一層効果的に行うことができる。また、脱穀対象物が縄状となり易い扱胴の上流側に切刃が配置されるので、一層スムーズな脱穀を行うことができる。また、扱胴の上流側に設置した切刃により処理された穀粒の殆どが最も上流側のチャフシーブに落下して選別されるので、選別効率を向上させることができる。
【0011】
前記のコンバインの脱穀装置においては、前記扱胴の近傍に配置された角度調節自在の送塵弁を備えることが好ましい。
【0012】
これにより、送塵弁の角度を調節することによって扱胴内の屑の滞留時間を作物の条件に応じて調節できるので、脱穀性能をより有効に発揮させることができる。
【0013】
前記のコンバインの脱穀装置においては、前記扱胴の周面は、円弧状に湾曲された複数の板状部材を繋ぎ合わせて構成されており、複数の前記扱歯の一部は、前記板状部材の繋ぎ目を跨ぐように配置されることが好ましい。
【0014】
これにより、分割された板状部材を繋ぎ合わせることで扱胴の周面を構成できるので、扱胴の製造が容易になる。また、板状部材の繋ぎ目部分に扱歯が配置されているので、脱穀対象物が繋ぎ目に挟まって詰まりの原因となることを防止できる。更に、繋ぎ目を避けて扱歯を配置する必要がないため、前記第1の螺旋及び第2の螺旋上で扱歯の配置が途切れることを少なくでき、スムーズな脱穀が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバインが前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の全量投入型のコンバイン10は、大豆、稲、麦等の株元を刈り取るための刈取部12を機体前部に備え、進行部としてのクローラ部11を機体下部に備えて構成されている。コンバイン10の左側の上部には、刈り取った穀稈を脱穀するための脱穀装置14が備えられる。また、この脱穀装置14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン10の上部右側に備えられている。
【0017】
グレンタンク15の前方には、コンバイン10を操作するための運転部17が配置されている。この運転部17には運転操作部52及び運転座席等が設けられており、この運転操作部52を操作することによって刈取や走行等、コンバイン10の各種の操作を行うように構成されている。前記運転部17の下方には、コンバイン10の駆動源としての図略のエンジンが配置されている。
【0018】
図1に示すクローラ部11はコンバイン10の左右両側に配置されており、このクローラ部11が駆動することでコンバイン10を走行させるように構成されている。そして、この左右のクローラ部11を図略の走行ミッション装置によって制御することで、コンバイン10の走行方向及び速度の調節が可能になっている。
【0019】
刈取部12は、刈り取る作物と刈り取らない作物を分離するために前部に配置されるデバイダ18と、デバイダ18の後方に配置される刈刃部13と、デバイダ18の上方に配置されるリール部16と、を備える。デバイダ18は略角錐状に形成されており、その先端部分がコンバインの前方に突出するようにしてコンバイン10の機体の左右両側に配置されている。また、刈刃部13は、刈刃と受刃とを備えており、両者が左右に駆動されることによって作物の株元を切り取る。
【0020】
リール部16は、フレーム部材によって略六角柱状に形成されており、コンバイン10の機体幅方向に横設されている。このリール部16は回転可能に支持されるとともに、前記フレーム部材には図略のリールタインが複数並設されている。この構成で、リール部16を回転駆動すると、前記刈刃部13で刈り取った作物を前記リールタイン及びフレーム部材によって取り込み、後述する搬送部21に送り込むことができる。
【0021】
搬送部21は、コンバイン10の左右方向に軸線を向けて配置されるスクリューコンベア46と、脱穀装置14の前方に配置されるフィーダハウス47と、を備える。スクリューコンベア46は、コンバインの右側から左側へ(図1に示す紙面奥側から手前側へ)穀稈を搬送し、フィーダハウス47に送り込む。フィーダハウス47はチェーンコンベア48を内部に備えており、穀稈は、このチェーンコンベア48によって脱穀装置14まで搬送される。
【0022】
次に図2及び図3を参照して、脱穀装置14について説明する。図2は脱穀装置14の要部を示した側面図である。図3は扱胴30とその周辺の様子を示した脱穀装置14の拡大正面図である。
【0023】
図2に示すように、脱穀装置14は穀稈脱穀用の扱胴30を備え、この扱胴30は、脱穀装置14内の前後方向ほぼ全体にわたって配置されている。扱胴30は、その先端部が面取りされた円筒形状に構成されており、当該先端部には穀稈を取り込むための螺旋状のインペラ54が設けられている。そして、インペラ54より下流側において、扱胴30の周面には複数の扱歯41が植設されている。なお、この扱歯41は所定の規則に従って配列されており、この詳細については後述する。図3に示すように、扱胴30の下方位置にはコーンケーブ34が備えられる。このコーンケーブ34は、扱胴30の下部を覆うように円弧面状に構成されている。
【0024】
この構成で、フィーダハウス47から脱穀装置14に搬送された穀稈は、扱胴30の回転による衝撃作用、扱歯41によるしごき作用、そして、コーンケーブ34によるもみほぐし作用等によって脱粒される。
【0025】
脱穀装置14は、扱胴30の下方に左右方向に横設される揺動選別装置32を備えており、この揺動選別装置32の更に下方には唐箕ファン38が備えられている。この揺動選別装置32と唐箕ファン38によって、脱穀装置14における選別装置が構成されている。
【0026】
揺動選別装置32について説明する。この揺動選別装置32は、穀粒搬送方向の上流から下流に向かって順に、第1チャフシーブ36と、第2チャフシーブ37と、を備えている。第1チャフシーブ36及び第2チャフシーブ37は、穀粒と藁屑の粗選別を行うためのものであり、揺動選別装置32の幅方向に横架された複数のチャフフィンを備えている。このチャフフィンの角度は変更可能に構成されており、この角度を調節することによって穀粒の漏下量を調節することができる。
【0027】
脱穀装置14の底部上流側には、前記唐箕ファン38が揺動選別装置32の幅方向に横設されている。そして、唐箕ファン38より下流側の位置には、一番コンベア樋26及び二番コンベア樋27が横設されている。前記一番コンベア樋26は第1チャフシーブ36の下方に配置され、一番物を回収可能に構成されている。
【0028】
以上の構成で、揺動選別装置32より落下してくる脱穀対象物に対して、唐箕ファン38が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物は一番コンベア樋26へ送られるとともに、比重のやや軽い物は二番物として二番コンベア樋27に飛ばされる。以上により、脱穀後の処理物を比重選別することができる。なお、選別装置の選別精度を上げるために、比重が若干軽い程度の物についても二番コンベア樋27に落下するように選別風の強度等が調整されている。かかる揺動選別装置32と風選別装置との相互作用により、脱穀後の処理物は、穀稈が搬送されてくる機体前方側から後方側に向けて搬送され、一番物と二番物に選別される。
【0029】
前記一番コンベア23の搬送方向下流側の端部は脱穀装置14の右側(図2の紙面奥側)の壁から突出し、この突出部分には、上下方向に向けて配設された揚穀筒19が接続されている。この構成で、前記選別装置によって選別されて一番コンベア樋26に落下した一番物は、一番コンベア23及び揚穀筒19を介して前記グレンタンク15まで搬送される。
【0030】
また、二番コンベア24の搬送方向下流側の端部は脱穀装置14の右側(図2の紙面奥側)の壁から突出し、この突出部分には還元筒20が接続されている。この還元筒20は、扱胴30の上流側部分の下部に向けて延びるように配設され、その先端には、二番物を処理して揺動選別装置32へ放出する二番処理装置44が接続されている。
【0031】
この構成で、二番コンベア樋27に落下した二番物は、二番コンベア24によって図2の紙面手前側から奥側へ搬送される。そして二番物は、二番コンベア24の終端部から還元筒20を介して二番処理装置44に搬送され、適宜の処理がされた後に揺動選別装置32へ還元される。
【0032】
以上に示すように、コンバイン10によって刈り取られた穀稈から脱穀された穀粒は、選別装置によって一番物と二番物に選別される。そして選別された一番物は、一番コンベア23及び揚穀筒19を介してグレンタンク15に集積される。グレンタンク15内に貯留された一番物は、図2に示す排出オーガ51を介して機外に排出される。一方、二番物は、二番コンベア24、還元筒20、二番処理装置44を経由して前記揺動選別装置32上に戻され、再び選別される。
【0033】
次に、扱胴30に配置される扱歯41の配列について説明する。本実施形態において、それぞれの扱歯41は、図2において鎖線で示す2種類の螺旋81,82の交点上に配置されることになる。2種類の螺旋81,82は、何れも扱胴30の回転軸線と同一の軸を有しており、ピッチは異なるが巻き方向は同じとなっている。以下、この2種類の螺旋のうち、ピッチが小さい方の螺旋81を第1螺旋と称し、ピッチの大きい方の螺旋82を第2螺旋と称する。
【0034】
第1螺旋81は扱胴30の周面を複数回周回しており、その経路中で第2螺旋82と交わっている。前記扱歯41は、この第1螺旋81に沿って等間隔で配置されている。そして、例えば第1螺旋81の1周目の最初に配置される扱歯41と2周目の最初に配置される扱歯41は、扱胴30の軸方向で隣り合うことになるが、この隣り合う扱歯41は扱胴30の軸線と平行な直線上に並ぶことはなく、扱胴30の周方向に若干ズレて(即ち、位相を若干異ならせて)配置される。このズレにより、上記の隣り合う扱歯41は、扱胴30の軸方向に見て互いに一部のみ重なるように配置される。そして、第1螺旋81が1周するごとに上記のズレが繰り返されることで、扱胴30の軸方向に隣り合う一連の扱歯41が、前記第2螺旋82に沿って並ぶことになる。
【0035】
前記第2螺旋82はピッチが大きいため扱胴30の全周にわたって周回することなく、扱胴30の終端部分に達している。また、第2螺旋82は複数形成されており、互いに交わることなく、それぞれが第1螺旋81とだけ交わっている。第2螺旋82は、第1螺旋81の1周分に配置される扱歯41の数と等しい数だけ形成される。
【0036】
次に、図4を参照して、扱歯41を取り付ける位置について説明する。図4(a)は、扱胴30の周面を構成する板状部材70の側面図であり、図4(b)は、板状部材70の展開図を示す。即ち、図4(a)に示すように、本実施形態の扱胴30の周面部分は、細長い長方形の板状部材70を、その長手方向に見たときに半円状になるように曲げることで半割り部を構成し、2つの半割り部を接合することで形成されている。この接合部分においては、前記板状部材70の端部同士が当該板状部材70の厚み方向に重ね合わされている。
【0037】
図4(b)に示すように、板状部材70には、扱歯41を取り付けるための貫通状の取付孔71が形成されている。本実施形態において前記扱歯41は丸棒を適宜曲げて構成されており、この丸棒の両端を固定するために、前記取付孔71は1つの扱歯41につき2個ずつ形成されている。
【0038】
前記取付孔71は、板状部材70の短手方向から若干傾斜する複数の直線91上に等間隔に配置されている。また、取付孔71は、板状部材70の長手方向に並ぶことはなく、板状部材70の短手方向に若干のズレを形成しながら等間隔で配置される。言い換えれば、前記取付孔71は、板状部材70の長手方向から若干傾斜した直線92上に等間隔に配置されている。
【0039】
図4(b)は板状部材70を曲げる前の状態を示したものであり、この板状部材70を図4(b)の紙面手前側が内側となるように円筒状に曲げることで、前記直線91は第1螺旋81となり、前記直線92は第2螺旋82となる。そして、前記取付孔71に扱歯41をそれぞれ固定することで、当該扱歯41が2つの螺旋81,82上に配置されることになる。
【0040】
次に図5を参照して切刃60及び送塵弁61について説明する。図5は、扱胴30、切刃60及び送塵弁61の様子を示した脱穀装置14の要部平面図である。前記切刃60は穀稈を切断するためのものであり、図5に示すように、扱胴30の左側に複数配置されている。これらの切刃60は、扱胴30の上流側端部近傍から軸方向中央部にかけて、当該扱胴30の軸方向に沿って所定の間隔で並べて配置されている。また、図2に示すように、切刃60が配置される範囲は、扱胴30において最も上流側に配置される扱歯41の近傍位置から、第1チャフシーブ36の下流側端部近傍までとなっている。それぞれの切刃60は、扱胴30の回転によってそれぞれの扱歯41が周回する経路の間に配置されている。この構成により、切刃60で穀稈を切断しつつ穀粒を脱穀し、処理物を第1チャフシーブ36で効果的に選別することができる。
【0041】
前記送塵弁61は、扱室内での処理物の滞留時間を調整するためのものであり、図5に示すように、扱胴30の上方に複数並べて配置されている。この送塵弁61は扱室の天井面に回動可能に支持されるとともに、その端部同士がバー部材64で連結されており、1つの送塵弁61が回動すると他の送塵弁61も連係して回動するように構成されている。また、最も上流側に配置される送塵弁61には作業レバー62が接続されており、この作業レバー62を操作することで、複数の送塵弁61の向きを一斉に変更することができる。また、脱穀装置14は、この作業レバー62を所望の位置で保持するためのレバーガイド63を備えており、このレバーガイド63で作業レバー62をロックすることで、送塵弁61を適切な角度で保持することができる。
【0042】
以上に示すように、本実施形態のコンバイン10は全量投入型に構成されている。また、このコンバイン10が備える脱穀装置14において、当該脱穀装置14が備える扱胴30の扱歯41は、扱胴30と軸線を一致させる第1螺旋81に沿って並べられる。また、扱歯41と、その扱歯41に対して扱胴30の軸方向で隣り合う扱歯41とが、その位相を異ならせるとともに当該軸方向に見て一部のみ重複するように配置される。また、隣り合う扱歯41同士が扱胴30の軸方向で一部重複する一連の扱歯41が、第1螺旋81と同軸かつ巻き方向が同じで当該第1螺旋81よりピッチが大きい第2螺旋82に沿って並べられる。
【0043】
この構成により、搬送されてくる脱穀対象物に対し、第2螺旋82に沿って配置される一連の複数の扱歯41が時間差をおいて順番に作用することになる。従って、複数の扱歯41が同時に脱穀対象物に衝突して瞬間的な過負荷や騒音及び振動が発生することを防止でき、脱穀性能に優れるとともに乗り心地が快適なコンバイン10を提供することができる。また、ピッチの異なる2つの螺旋81,82に沿って扱歯41が配置されるので、脱穀対象物が縄状に纏まることを防止でき、スムーズな脱穀を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態の脱穀装置14は、扱胴30から落下する穀粒を選別するために当該扱胴30の下方に配置される第1チャフシーブ36と、第2チャフシーブ37と、を備える。また、前記脱穀装置14は、扱胴30において最も上流側に配置される扱歯41の近傍位置から、第1チャフシーブ36の下流側端部に相当する位置までを少なくとも含む範囲に配置される切刃60を備える。この切刃60は、扱胴30の回転によって複数の扱歯41が周回する経路の間に配置される。
【0045】
この構成により、脱穀対象物に切刃60が作用するので、扱歯41の連続的な作用とあいまって脱穀作業を一層効果的に行うことができる。また、脱穀対象物が縄状となり易い扱胴30の上流側に切刃が配置されるので、一層スムーズな脱穀を行うことができる。また、扱胴30の上流側に設置した切刃60により処理された穀粒の殆どが第1チャフシーブ36に落下して選別されるので、選別効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の脱穀装置14は、扱胴30の近傍に配置された角度調節自在の送塵弁61を備える。
【0047】
この構成により、送塵弁61の角度を調節することによって扱胴30内の屑の滞留時間を作物の条件に応じて調節できるので、脱穀性能をより有効に発揮させることができる。
【0048】
次に、図6を参照して扱胴の3つの変形例について説明する。図6は変形例の扱胴及び扱歯を示した拡大断面図である。
【0049】
図6(a)に示す変形例における扱胴の周面は、半円状に湾曲された2枚の板状部材70(前記半割り部)を繋ぎ合わせて構成されている。なおこのとき、2つの板状部材70同士は、当該板状部材70の端面同士を突き合わせるように接合される。これにより、扱胴30の周面に形成される凹凸を少なくすることができる。
【0050】
そして、複数の扱歯41の一部は、板状部材70の繋ぎ目72に跨がるようにして配置される。即ち、扱歯41は上記実施形態と同様に丸棒を曲げて形成されるとともに、その一端は一側の板状部材70に固定され、他端は他側の板状部材70に固定される。これにより、前記繋ぎ目72において処理物が詰まったり引っ掛かったりすることを抑制でき、メンテナンスの回数を少なくすることができる。
【0051】
また、図6(b)に示すように、一側の板状部材70の内側に、他側の板状部材170の一部が折れ曲がって入り込むような繋ぎ目172を形成することもできる。これにより、扱胴30の周面に形成される凹凸を少なくするとともに、繋ぎ目172の部分の結合力を容易に強化することができる。そして、この変形例においても同様に、複数の扱歯41の一部は、板状部材70と板状部材170との繋ぎ目172に跨がるように配置される。
【0052】
また、図6(b)のように板状部材170を折り曲げずに、図6(c)に示すように、一側の板状部材70の内側に他側の板状部材70が入り込むような繋ぎ目272を形成することもできる。この場合、単純な構成で、繋ぎ目172の部分の結合力を容易に強化することができる。そして、この変形例においても同様に、扱歯41を繋ぎ目272に跨がるように配置することができる。
【0053】
以上に示すように、本変形例の脱穀装置においては、前記扱胴の周面は、円弧状に湾曲された複数の板状部材70を繋ぎ合わせて構成されている。そして、複数の前記扱歯41の一部は、前記板状部材70の繋ぎ目72を跨ぐように配置されている。
【0054】
この構成により、分割された板状部材70を繋ぎ合わせることで扱胴30の周面を構成できるので、扱胴30の製造が容易になる。また、板状部材70の繋ぎ目72を跨ぐように扱歯41が配置されているので、脱穀対象物が繋ぎ目72に挟まって詰まりの原因となることを防止できる。更に、繋ぎ目72を避けて扱歯41を配置する必要がないため、2つの螺旋81,82上で扱歯41の配置が途切れることを少なくでき、スムーズな脱穀が可能になる。
【0055】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0056】
上記実施形態の構成では、扱胴30に配置される扱歯41が第1螺旋81上かつ第2螺旋82上に配置される構成であるが、この構成に限定されず、例えば2つの螺旋81,82の一方又は両方から外れた適宜の場所に扱歯41を追加配置することができる。また、前記第1螺旋81上での扱歯41の間隔は常に一定とする必要はなく、間隔を変えた扱歯41を一部配置したり、一部の扱歯41を省略したりすることができる。
【0057】
また、上記実施形態では第1螺旋81及び第2螺旋82のピッチが一定とされているが、この構成に限定されない。例えば、扱胴30の下流側近傍で第1螺旋81又は第2螺旋82のピッチを変化させるように構成することができる。
【0058】
また上記実施形態では、第1チャフシーブ36の下流側端部近傍まで切刃60が配置されている構成であるが、この構成は変更することができる。例えば、切刃60が配置される範囲を第2チャフシーブ37の下流側端部近傍まで延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態のコンバインの様子を示した側面図。
【図2】脱穀装置の要部の様子を示した側面図。
【図3】脱穀装置の拡大正面図。
【図4】扱胴の周面を構成する板状部材を示した側面図及び展開図。
【図5】脱穀装置の要部平面図。
【図6】変形例の扱胴及び扱歯を示した拡大断面図。
【符号の説明】
【0060】
10 コンバイン
30 扱胴
41 扱歯
60 切刃
61 送塵弁
81 第1螺旋
82 第2螺旋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に複数の扱歯を有する扱胴によって穀稈を脱穀する全量投入型コンバインの脱穀装置において、
前記扱歯は、前記扱胴と軸線を一致させる第1の螺旋に沿って並べられるとともに、
前記扱歯と、その扱歯に対して前記扱胴の軸方向で隣り合う扱歯とが、その位相を異ならせるとともに当該軸方向に見て一部のみ重複するように配置され、隣り合う扱歯同士が前記扱胴の軸方向で一部重複する一連の扱歯が、前記第1の螺旋と同軸かつ巻き方向が同じで当該第1の螺旋よりピッチが大きい第2の螺旋に沿って並べられることを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインの脱穀装置であって、
前記扱胴から落下する穀粒を選別するために当該扱胴の下方に複数配置されるチャフシーブと、
扱胴において最も上流側に配置される前記扱歯の近傍位置から、前記チャフシーブのうち最も上流側に配置されるチャフシーブの下流側端部に相当する位置までを少なくとも含む範囲に配置される切刃と、
を備え、
前記切刃は、前記扱胴の回転によって複数の前記扱歯が周回する経路の間に配置されることを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンバインの脱穀装置であって、
前記扱胴の近傍に配置された角度調節自在の送塵弁を備えることを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のコンバインの脱穀装置であって、
前記扱胴の周面は、円弧状に湾曲された複数の板状部材を繋ぎ合わせて構成されており、複数の前記扱歯の一部は、前記板状部材の繋ぎ目を跨ぐように配置されることを特徴とするコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−225726(P2009−225726A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75623(P2008−75623)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】