説明

コンバインの脱穀装置

【課題】脱粒物を効率よく漏下できる受網を備えることで、作業性および生産性を向上させたコンバインの脱穀装置を提供する。
【解決手段】機体の中央部であって、機体の前後方向に軸架した扱胴6と、この扱胴6の下方周囲、かつ流穀板45および篩分装置47の上方に設置し、複数の抜孔53を形成した受網33とからなり、この受網33は、機体の前部から後部に向かって左右幅内に、抜孔53を含む凹凸部55,56を連続させた波形状を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴および受網からなるコンバインの脱穀装置に関し、より詳細には、扱胴での穀稈の脱穀処理による脱粒物を、下方の選別装置に漏下させ易い受網を備えるコンバインの脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体先端の刈取部で刈り取った穀稈を、刈取部後方に搬送し、脱穀部における脱穀装置の扱胴で脱穀処理を行い、その脱粒物を、扱胴下方に設けた受網から、下方に配設された選別装置に漏下させるものがある。そして、この受網において脱粒物を効率的に漏下させるため、例えば、受網に形成した抜孔の大きさを、受網の位置により変えて、受網の前部で脱粒物の目詰まりを防ぎ、脱粒物を漏下させ易くしたもの(例えば、特許文献1)や、受網に補助弓金を設置して、穀稈の移動抵抗を小さくするとともに、脱粒物を主弓金に加えて補助弓金にも受け止めさせ、脱粒物の漏下を促進させるもの(例えば、特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−095057号公報
【特許文献2】特開2007−111012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような、扱胴の下方に、扱胴に沿って湾曲設置されている受網は、平坦な材質に複数の抜孔を形成したものであり、上方に有する扱胴で脱穀処理され、落下してきた穀稈からの脱粒物が、受網上において抜孔部分以外の場所に滞留してしまうため、これら抜孔から下方に効率良く漏下できないという問題があった。また、特に特許文献2のような受網では、脱粒物が、弓金に接触して破損してしまうなどのおそれもあった。
そこで、この発明の目的は、脱粒物を効率よく漏下できる受網を備えることで、作業性および生産性を向上させたコンバインの脱穀装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体の中央部であって、前記機体の前後方向に軸架した扱胴と、該扱胴の下方周囲、かつ流穀板および篩分装置の上方に設置し、複数の抜孔を形成した受網とからなるコンバインの脱穀装置において、前記受網は、機体の前部から後部に向かって左右幅内に、前記抜孔を含む凹凸部を連続させた波形状を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置において、前記受網は、前記各凹凸部の頂部および底部を連結した傾斜部に、前記抜孔を等間隔で形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置において、前記受網は、前記各凹凸部の底部を、前記抜孔で形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置において、前記傾斜部の角度は、隣接する前記凹凸部の底部に対して、少なくとも120度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、機体の中央部であって、機体の前後方向に軸架した扱胴と、この扱胴の下方周囲、かつ流穀板および篩分装置の上方に設置し、複数の抜孔を形成した受網とからなるコンバインの脱穀装置において、受網は、機体の前部から後部に向かって左右幅内に、抜孔を含む凹凸部を連続させた波形状を備えるので、扱胴からの落下穀粒は、受網表面の上下高さ方向で3次元的に形成された凹凸により、各凸部の頂部から傾斜部の傾斜面に沿って、抵抗なく誘導されて滑落し、これら傾斜面に穿設された各抜孔から効率的に選別部に落下させることができる。従って、脱穀および選別の処理能力を向上させたコンバインの脱穀装置を提供することができる。
することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、受網は、各凹凸部の頂部および底部を連結した傾斜部に、抜孔を等間隔で形成したので、扱胴からの落下穀粒を、傾斜部に沿って自重により滑落させる際に、容易に抜孔から選別部に落下させることができる。従って、脱穀および選別の処理能力を向上させたコンバインの脱穀装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、受網は、各凹凸部の底部を、抜孔で形成したので、扱胴からの落下穀粒を、自重により傾斜部に沿って各凹凸部の底部まで滑落させることで、容易に抜孔から選別部に落下させることができる。従って、脱穀および選別の処理能力を向上させたコンバインの脱穀装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、傾斜部の角度は、隣接する凹凸部の底部に対して、少なくとも120度を有するので、扱胴からの落下穀粒を、各凸部の頂部から120度の傾斜部の傾斜面に沿って、抵抗なく誘導されて滑落させ、各抜孔から効率的に選別部上に落下させることができる。従って、脱穀および選別の処理能力を向上させたコンバインの脱穀装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの全体側面図。
【図2】コンバインの全体平面図。
【図3】穀稈搬送装置の左側面図である。
【図4】脱穀部および選別部の左側面模式図である。
【図5】受網の設置状態を説明する扱胴の斜視図である。
【図6】受網の平面図である。
【図7】受網の全体正面図である。
【図8】受網を上方から見た斜視図である。
【図9】受網の一部を示した拡大正面図である。
【図10】抜孔の一部の拡大斜視図である。
【図11】抜孔をさらに拡大して示した斜視図である。
【図12】異なる大きさの抜孔を穿設した、受網の一部を示す受網の展開図である。
【図13】凹部に穿設した抜孔を示す、受網の一部を上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1はこの発明の一例としての自脱型コンバインの右側面図、図2は図1のコンバインの左側面図、図3は穀稈搬送装置の側面図、図4は脱穀部および選別部の左側面模式図である。
【0015】
まず、コンバイン1は、図1〜3に示すように、左右一対のトラックフレーム2に、左右一対の走行クローラ3を装設し、これら左右トラックフレーム2に機台4架設される。また、機台4上には、引起機構8、刈刃9、収穫物搬送手段10などを備える刈取部7や、フィードチェーン18を機体左側に張架し、扱胴6を内蔵する脱穀装置である脱穀部5、排藁チェーン終端を臨ませる排藁処理部11、脱穀部5からの籾を揚穀筒を介して搬入するグレンタンク12、このグレンタンク12の籾を機外に搬出する排出オーガ13などが設置される。
【0016】
さらに、機体前部の機台4上には、ハンドル14や運転席15、および運転席15下方にはエンジンEが設けられており、これら構成により自脱型のコンバイン1が連続的に稲などの農作物を刈取って脱穀するように構成されている。
【0017】
そして、機台3の後部には、グレンタンク12内の籾を外部へ排出するための排出オーガ13の縦オーガ16が立設されており、この縦オーガ16を中心としてグレンタンク12が左右回動可能に設けられて、グレンタンク12の前側を外方に回転させて開放可能に構成されている。また、機台3の後部には、脱穀部5に連続して穀稈搬送装置17が内設されている。
【0018】
刈取部7で刈り取られた穀稈は、収穫物搬送手段10にて後部へ搬送され、収穫物搬送手段10の上端から株元側が穀稈搬送装置17のフィードチェーン18に受け継がれ、扱胴6の供給始端部を介して脱穀部5および選別部19からなる脱穀装置内に穀稈が搬送される。そして、フィードチェーン18後端には、排藁搬送チェーン20が配設され、この排藁搬送チェーン20後部下方には、カッター,結束機などからなる図示しない排藁処理部が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出し、或いは切断せずに放出するようにしている。
【0019】
脱穀部5は、コンバイン1の進行方向左側に配置され、脱穀部4の右側には選別後の精粒を貯留するグレンタンク12が配設されている。そして、グレンタンク12の前方には運転席15が配設されている。つまり、運転席15は、機体の進行方向右前方に配置されている。一方、グレンタンク12の後方には、排出オーガ13の縦オーガ16が立設され、縦オーガ16を中心にして排出オーガ13およびグレンタンク12が側方へ回動可能とし、グレンタンク12を側方へ回動することにより機体内側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
【0020】
そして、グレンタンク12の底部には、図示しない排出コンベアが前後方向に配設され、該排出コンベアの後部が縦オーガ16の下部に連通されるとともに、前記排出コンベア後部から排出オーガ13に動力が伝達されて、排出オーガ13先端よりトラックなどへグレンタンク12内の穀粒を排出できるようにしている。さらに、脱穀部5の下方には、選別部19が配設され、脱穀部5から流下する穀粒や藁屑等から穀粒を選別し、精粒をグレンタンク12に搬送したり、藁屑などを機外に排出するようにしている。
【0021】
穀稈搬送装置17は、上述の脱穀部5において、刈り取った穀稈の一端(株元側)を挟扼しながら搬送するためのものであり、刈取部7で刈り取った穀稈を排藁搬送チェーン20まで搬送するフィードチェーン18と、フィードチェーン18上方に配設され、搬送されている穀稈を挟扼する挟扼杆21と、挟扼杆21を本機側に対して弾性支持する複数の弾性支持体22などとから構成されている。
【0022】
この穀稈搬送装置17においては、対向配置される挟扼杆21とフィードチェーン18とによって、刈取部7で刈り取った穀稈の株元側を挟扼し、扱室内の扱胴6によって脱穀する構成となっており、この挟扼杆21とフィードチェーン18とが対向した部分を搬送経路としている。そして、脱穀部5にて脱粒された排藁は、フィードチェーン18の後端部(下流側端部)において、排藁搬送チェーン20へと受け継がれ、この排藁搬送チェーン20によって、前記排藁処理部へと搬送される。
【0023】
挟扼杆21は、ステー23などによって固設される支持杆24と、支持杆24に複数の弾性支持体22を介して弾性支持して設けられている。この挟扼杆21は、フィードチェーン18に沿うように左右平行状に一対の板状部材が配置された形状となっており、フィードチェーン18による搬送方向断面視逆U字状に形成されている。
【0024】
支持杆24は、中空の柱状部材であり、図示しない扱室カバー内の左側において前後方向に長く、挟扼杆21と並列的に配置されるように形成されている。そして、この支持杆24の側面には、一定間隔ごとに弾性支持体22が、その上部が支持されるとともに配設され、これら弾性支持体22の下部に挟扼杆21が弾性支持されている。この弾性支持体22の下部は、挟扼杆21に連結ピンで枢支されており、弾性支持体22の上部は支持杆24よりも上方に延出されている。
【0025】
次に、脱穀部5について説明する。図4に示すように、脱穀部5に形成された扱室31には、機体の前後方向に軸架された略円柱形状の扱胴6が設けられ、この扱胴6の外周面には複数の扱歯32が植設されている。そして、扱胴6の下部周辺を覆うように半円形状の受網33が着脱可能に周設されている。一方、フィードチェーン18により、穀桿の株元側が拘束されつつ、穀桿の先端側が扱胴6の下方に挿入されて穀稈が機体後方に搬送される。このとき、扱胴6の回転により脱粒が行われ、受網33から穀粒や藁屑等が漏下するようにしている。
【0026】
続いて、選別部19について説明する。選別部19は、揺動選別装置41による揺動選別と唐箕42による風選別とが行われ、一番物と二番物と藁屑等に分別される。
【0027】
揺動選別装置41は、機枠43内に収納される。揺動選別装置41の前端部は、扱胴6の前端部の下方まで延出され、揺動選別装置41前下部には図示せぬ揺動軸が設けられるとともに、後部には揺動駆動機構44が設けられ、この揺動駆動機構44によって揺動選別装置41が機枠43に対して揺動するように構成されている。なお、揺動駆動機構44の後下方には燃料タンク(不図示)が配置されている。
【0028】
揺動選別装置41の前部には、流穀板45が設けられるとともに、この流穀板45の後下方に搬送板46が設けられる。これら流穀板45および搬送板46は、板状の部材を波形に成形したものであり、受網33を通過した処理物(穀粒および藁屑等との混合物)は、流穀板45および搬送板46上に落下し、揺動選別装置41の揺動により機体後方に搬送される。そして、搬送板46後部には、第二選別部である網状のグレンシーブ47が連設されるとともに、このグレンシーブ(篩分装置)47と搬送板46の上方、かつ流穀板45の後方には、第一選別部であるチャフシーブ48が被装されている。さらに、チャフシーブ48の後方には、ストローラック49が配設される。
【0029】
チャフシーブ48は、複数のチャフフィンから構成され、投入される処理物の量に応じてチャフフィンの開度を調節することを可能としている。すなわち、チャフフィンの上下一側端部が揺動選別装置41に枢支されて、チャフシーブ48左右両側に設けられた揺動板に枢結され、また、他側端部がチャフシーブ48の左右両側に設けられた摺動板に枢結されている。この摺動板は、揺動選別装置41と一体的に揺動されるとともに、摺動板には調節レバーが枢結されており、この調節レバーに連結されたワイヤの弛緩又は牽引により摺動板が前後に摺動される。なお、調節レバーは、ワイヤと反対側に設けられたバネによって各チャフフィンの傾斜角を小(寝かせる)とする方向に付勢されている。
【0030】
そして、摺動板の摺動によりチャフフィンの角度が変更され、チャフフィンの傾斜角を大(立てる)とさせるとき、チャフシーブ48の開度を大として穀粒の漏下量を増大させ、各チャフフィンの傾斜角を小(寝かせる)とさせるときチャフシーブ48の開度を小として穀粒の漏下量を減少させるように構成している。
【0031】
こうして、穀粒および細かい藁屑はチャフシーブ48を通過して下方に落下し、チャフシーブ48の開口よりも大きい藁屑などは後方に搬送される。このとき、チャフシーブ48とグレンシーブ47との間には、唐箕42により選別部19の前方から後方への気流が発生しており、細かい藁屑の一部は後方に吹き飛ばされて穀粒と分離される。
【0032】
また、揺動選別装置19における前流穀板45の後部下方かつ後流穀板46の前部下方には、唐箕42が配置され、チャフシーブ48やグレンシーブ47に選別風を送風するようにしている。
【0033】
そして、揺動選別装置41の後端部近傍には、吸引ファン(横断流ファン)50が全幅に横設され、唐箕42から供給される選別風の流れに乗ってきた塵埃や脱穀時に発生する塵埃などを、吸引ファン50により吸引して機外へと排出するようにしている。
【0034】
選別部19内に投入され、前流穀板45上に漏下された穀粒、枝梗付着粒、未熟穀粒および細かい藁屑などの混合物は、チャフシーブ48上に漏下される過程で唐箕42により発生する選別部19の前方から後方への気流により、細かい藁屑の一部が後方へ吹き飛ばされる。そして、チャフシーブ48上に漏下した穀粒、枝梗付着粒、未熟穀粒および細かい藁屑などの混合物は、揺動選別装置41の揺動により、後方に搬送される、このとき、これら穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑などは、チャフシーブ48の開口部より下方に落下し、大きい藁屑はチャフシーブ48の後方まで搬送され、ストローラック49を経て機外に排出される。
【0035】
また、チャフシーブ48の開口部より下方に落下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑などは、後流穀板46およびグレンシーブ47上に漏下される。このときも唐箕42からの選別風により、細かい藁屑の一部は後方に吹き飛ばされて分離される。
【0036】
さらに、グレンシーブ47上に漏下された穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑などのうち、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑などは、グレンシーブ47を通過して下方に落下する。このとき、重量が大きい穀粒(一番)は一番回収部51に回収され、図示しない一番コンベアから揚穀コンベアを経て、グレンタンク12に搬送される。
【0037】
一方、重量が小さい未熟穀粒や細かい藁屑の一部や穂切り粒や穀粒などが混じった未処理粒は、唐箕42からの選別風により後方に吹き飛ばされ、二番回収部52に回収され、図示しない二番コンベアから二番還元コンベアを経て、前流穀板45上(またはチャフシーブ48上)に再投入される。
【0038】
次に、本願発明の特徴である、受網について、その具体的構成を説明する。図5は受網の設置状態を説明する扱胴の斜視図、図6は受網の平面図、図7は受網の全体正面図、図8は受網を上方から見た斜視図、図9は受網の一部を示した拡大正面図、図10は抜孔の一部の拡大斜視図、図11は抜孔をさらに拡大して示した斜視図である。
【0039】
上述とともに図5に示すように、脱穀部5における扱胴6の下方には、この扱胴6の下部周辺を覆うように、ステンレスなどの金属からなる略半円形状の受網33が着脱可能に周設される。
【0040】
その受網33は、機体側方に対して開閉可能に構成されたフィードチェーン18を支持する図示しないフィードチェーンフレームを開放し、機体側方より機体側に設けられている、それぞれ不図示のフレームに設けたレールに沿って円弧状に引き出したり挿入したりして着脱可能としている。
【0041】
この受網33は、例えば、図6〜8に示すように、網枠51内に薄い板体52が固設されており、この板体52には、方形状の抜孔53が機体前後方向および左右方向に複数等間隔で網目状に穿設されている。なお、抜孔53は、上述した方形状に限定されるものではない。
【0042】
本願では、この板体52を、正面視で凹凸を有する波状に形成するものである。つまり、板体52は、扱胴6の下方に装着された向きにおいて、機体の左右方向に沿い、板体52の前後幅で凹凸形状54が施される。
【0043】
この凹凸形状54は、図9に示すように、凸部55および凹部56の繰り返しからなる構成で、例えば、凸部55の高さh(凸部55の頂部から凹部56の上端部までの高さ)を、2mm〜4mm程度、好ましくは3mmとし、各凸部55の傾斜部sの傾斜角度α(各凹部56の底部から、この凹部56に隣接する凸部55への傾斜角度)を110度〜130度程度、好ましくは120度とすることができる。
【0044】
なお、略半円形状の受網33における円中心から、凸部55の頂部までの半径は、機種による扱胴6の大きさで受網33の大きさも変わるが、例えば4条刈りの機種における受網33では、291.3mmとすることができる。
【0045】
さらに、例えば、図10に示すように、凹凸形状54を有する板体52の表面であって、各凸部55の左右両傾斜面には、抜孔53が、設置した受網33の前後方向に沿って等間隔に複数穿設される。
【0046】
このような構成により、扱胴6により穀稈から脱穀処理され、下方の受網33上に落下した穀粒は、そのまま抜孔53を介して、さらに下方の選別部19上に落下するものもあるが、一方では、各凸部55の頂部から凸部55の傾斜面に沿って下方の各凸部55に誘導滑落される際、凸部55の傾斜面に穿設された各抜孔53から選別部19上に落下する。
【0047】
従って、従来では、扱胴6での処理により落下した穀粒は、受網の板体に2次元的に穿設された抜孔では、これら抜孔に誘導落下されず、抜孔間に留まり、穀粒を効率的に選別部19上に落下させることができなかった。
【0048】
しかしながら、本願の受網33の板体52に、3次元的に穿設された凹凸形状54を有する受網33では、図11に示すように、扱胴6からの落下穀粒は、各凸部55の頂部から120度の傾斜部sの傾斜面に沿って、抵抗なく誘導されて滑落し、これら傾斜面に穿設された各抜孔53から効率的に選別部19上に落下させることができ、脱穀および選別の処理能力を向上させることができる。
【0049】
なお、上述した抜孔は、受網33への穿設位置によって、その大きさを変えてもよい。図12は、異なる大きさの抜孔を穿設した、受網の一部を示す受網の展開図である。
【0050】
この場合、装着した受網33の前部下方には、流穀板45が位置し、受網33の中央部下方には、グレンシーブ47が位置するとともに、受網33の後部下方には、チャフシーブ48が位置する。そして、例えば、受網33の前部aに有する各抜孔53aの開口面積は、受網33の中央部bに有する各抜孔53bの開口面積よりも大きく穿設される。
【0051】
また、受網33の後部cに有する各抜孔53cの開口面積は、受網33の前部aに有する各抜孔53aの開口面積よりも大きく穿設される。
【0052】
このように構成することで、扱胴6前部の下方に位置する受網33の前部aは、受網33の抜孔53aの開口面積が、受網33の中央部bに有する各抜孔53bの開口面積よりも大きいことから、扱胴6による処理物が、揺動選別装置41の始端部となる流穀板45上に漏下し易くなる。従って、穀稈が多量に搬送されて扱胴6による処理量が多くなっても、受網33前部aで目詰まりが生じなくなり、この受網23前部aでの処理物の漏下を促進させることができ、流穀板45で効率よく選別を行うことができる。
【0053】
次に、扱胴6中央部の下方に位置する受網33は、抜孔53bの開口面積が、抜孔53aの開口面積よりも小さいことから、これら抜孔53bからは処理物が比較的漏下し難くなる。従って、大まかな脱粒の後に、抜孔53bを漏下した処理物の量は比較的少ないため、グレンシーブ47から落下するときに処理物が集中して生じる詰まりを防止することができる。
【0054】
さらに、抜孔53a,53bよりも開口面積が大きい抜孔53cを有する受網23の後部cからは、扱胴6で十分に処理された穀粒や未熟穀粒などの処理物が漏下し易くなり、穀粒はチャフシーブ38を通過して一番物として回収され、未熟穀粒や細かい藁屑の一部、穂切り粒などが混じった未処理粒は、揺動により後方へ送られると同時に、唐箕42からの選別風により後方に吹き飛ばされ、二番物として回収部に送られる。以上のように、受網33の位置により抜孔53a,53b,53cの開口面積を変えることで、処理物を効率よく選別することができる。
【0055】
また、抜孔は凹部にのみ穿設させてもよい。図13は、凹部に穿設した抜孔を示す、受網の一部を上方から見た斜視図である。
【0056】
この場合、受網33の板体52に穿設された凹凸形状54において、装着した受網33であって、各凹部56の機体左右方向に、等間隔で複数の抜孔53´が穿設される。
【0057】
このような構成にすることで、扱胴6からの落下穀粒は、そのまま抜孔53´を介して、さらに下方の選別部19上に落下するものもあるが、一方では、各凸部55の頂部から凸部55の傾斜面に沿って下方の各凹部56に誘導滑落され、これら凹部56に穿設された各抜孔53´から選別部19上に落下する。
【0058】
従って、扱胴6からの落下穀粒は、各凸部55の頂部から120度の傾斜面に沿って、凹部56に抵抗なく誘導されて滑落し、これら凹部56に穿設された各抜孔53´から効率的に選別部19上に落下させることができ、脱穀および選別の処理能力を向上させることができる。
【0059】
以上詳述したように、この例のコンバイン1の脱穀装置は、機体の中央部であって、機体の前後方向に軸架した扱胴6と、この扱胴6の下方周囲、かつ流穀板45および篩分装置47の上方に設置し、複数の抜孔53を形成した受網33とからなり、この受網33は、機体の前部から後部に向かって左右幅内に、抜孔53を含む凹凸部55,56を連続させた波形状を備えるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
なお、この発明は、圃場の穀稈を連続的に刈取って脱穀する、受網を有する脱穀装置を備えたあらゆるコンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
6 扱胴
33 受網
51 網枠
52 板体
53,53a,53b,53c,53´ 抜孔
54 凹凸形状
55 凸部
56 凹部
a 前部
b 中央部
c 後部
s 傾斜部
h 高さ
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の中央部であって、前記機体の前後方向に軸架した扱胴と、
該扱胴の下方周囲、かつ流穀板および篩分装置の上方に設置し、複数の抜孔を形成した受網と、
からなるコンバインの脱穀装置において、
前記受網は、機体の前部から後部に向かって左右幅内に、前記抜孔を含む凹凸部を連続させた波形状を備えることを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
前記受網は、前記各凹凸部の頂部および底部を連結した傾斜部に、前記抜孔を等間隔で形成したことを特徴とする、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
前記受網は、前記各凹凸部の底部を、前記抜孔で形成したことを特徴とする、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項4】
前記傾斜部の角度は、隣接する前記凹凸部の底部に対して、少なくとも120度を有することを特徴とする、請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−130675(P2011−130675A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290425(P2009−290425)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】