説明

コンバイン

【課題】分草杆を操縦部から遠隔操作を可能としながら前処理を揺動開放して走行機体のメンテナンス等を行う際の作業性を向上する。
【解決手段】走行機体2上に設けられた運転操作部6に操作具20を設置し、前処理部3の側方に分草杆9を設け、前記前処理部3を走行機体2に縦軸Yを中心に回動可能に支持して走行機体2の前部に位置する刈取作業姿勢と走行機体の前部を開放する開放姿勢とに切換可能に構成したコンバインにおいて、前記操作具20と分草杆9とを連係手段を介して連係して該操作具20の操作により分草杆9を分草作用姿勢と格納姿勢とに切換可能に構成すると共に、前記連係手段が前記縦軸Y近傍を通過するように構成したことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理部に設けられた分草杆を運転操作部から遠隔操作可能としたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取部に横外方側に張り出した分草作用姿勢と内方側に起立引退した格納姿勢とに揺動切り換え自在な分草杆を取り付け、この分草杆にワイヤを介して連係していて分草杆の姿勢を遠隔操作で切り換える操作具を、走行機体の操縦部に設置したコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、刈取部を縦向き軸心周りでの揺動により走行本機の前方部に位置する刈取作業姿勢と走行本機の前方を開放する開放姿勢とに切り換え自在に構成したコンバインが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−194622公報
【特許文献2】特開2002−44公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のものは、特許文献2のように刈取部を縦向き軸心周りで揺動できるものでなく、ワイヤの配索が刈取部の揺動を考慮したものでなかったので、例えば特許文献1のもので刈取部を揺動しようとすると、ワイヤの連結を外す必要があり、作業性が悪いという課題があった。
本発明の目的は、分草杆を操縦部から遠隔操作を可能としながら前処理部を揺動開放して走行機体のメンテナンス等を行う際の作業性を向上する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明においては、走行機体上に設けられた運転操作部に操作具を設置し、前処理部の側方に分草杆を設け、前記前処理部を走行機体に縦軸を中心に回動可能に支持して走行機体の前部に位置する刈取作業姿勢と走行機体の前部を開放する開放姿勢とに切換可能に構成したコンバインにおいて、前記操作具と分草杆とを連係手段を介して連係して該操作具の操作により分草杆を分草作用姿勢と格納姿勢とに切換可能に構成すると共に、前記連係手段が前記縦軸近傍を通過するように構成したことを特徴としている。
また、分草杆を支持部材で前処理部に取り付け、操作具と分草杆とを連係手段である前記支持部材とワイヤーとで連係すると共に、該ワイヤーが縦軸近傍を通過するように構成したことを特徴としている。。
また、分草杆を支持部材で前処理部に取り付け、操作具と分草杆とを連係手段である前記支持部材とワイヤーとで連係すると共に、該支持部材を縦軸近傍に取り付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1乃至3の発明によれば、運転操作部から操作具を操作して分草杆を切換操作できるものでありながら、操作具と分草杆とを連係する連係手段を外さず前処理部の開放を行えるので作業性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、コンバインは左右のクローラ走行装置1を備えた走行機体
2の前部に、植立穀稈を引き起こした後刈り取って後方に搬送する前処理部3を昇降自在に連結し、前記走行機体2上に、前記前処理部3からの穀稈を脱穀処理する脱穀装置4と脱穀穀粒を貯溜するタンク5と運転操作部6とを備え、脱穀装置4の左右横脇にタンク5を配置しかつタンク5の前部に運転操作部6を配置して構成されている。
【0007】
前記前処理部3には、植立穀稈を分草する複数の分草体7を分草体支持フレーム8に一体的に取り付けると共に、左右両側の分草体支持フレーム8に分草杆9をそれぞれ取り付けている。
【0008】
前記分草体7の後方には、分草体7により分草された後の植立穀稈を引き起こす引起装置10と、該引起装置10により引き起こした穀稈の株元を切断する刈刃装置(図示無し)と、該刈刃装置で刈り取られる穀稈を掻き込んで搬送する掻込搬送装置(図示無し)と、該掻込搬送装置の後方で刈取穀稈の稈長を検出して自動的に適正な扱深さに調節する扱深搬送装置(図示無し)等の穀稈搬送装置が設けてあり、前記扱深搬送装置の終端部まで搬送された刈取穀稈が脱穀フィードチェーン11を介して脱穀装置4に供給されるようになっている。
【0009】
また、前記前処理部3は、走行機体2に昇降自在に連結され、横向き軸心X周りでの上下揺動により昇降するものであって、この前処理部3を走行機体2に昇降自在に取り付ける手段は、走行機体2の機体フレーム2a上に前処理支持部2bを設け、その上端部に取り付けた前処理部3側の取付部材12で、伝動ケースを兼用する前処理支持フレーム13の横向き筒状部13aを横向き軸心X周りで回転自在に支持する構成となっている。つまり、前処理支持フレーム13の横向き筒状部13aが、走行機体2に上下揺動自在に支持される軸となっている。また、前処理部3を昇降操作するための昇降駆動機構は、機体フレーム2aと前処理支持フレーム13の前後向き筒状部13bとの間に介在された油圧シリンダ14への圧油供給に伴い前処理部3をその自重に抗して上昇させ、油圧シリンダ14からの排油に伴い前処理部3を自重で下降させる機構である。
【0010】
更に、前記前処理部3は、走行機体2に開放自在に連結され、縦向き軸心(縦軸)Y周りで左右回動するものであって、この前処理部3を走行機体2に開放自在に取り付ける手段は、前記取付部材12をこれと一体に設けられた取付軸12aを介して前記前処理支持部2bに回動自在に支持する構成となっている。つまり、取付軸12aが前記縦向き軸心Y回りで回転自在に支持され、この取付軸12aを中心に取付部材12を含む前処理部3が回動して走行機体2の前部に位置する刈取作業姿勢と走行機体2の前部を開放する開放姿勢とに切換可能に構成されている。
【0011】
前記前処理部3の左側方に設けられた分草杆9は、先端部を回動中心とした左右揺動により、横外方側に張り出した分草作用姿勢(図3)と内方側に格納された格納姿勢(図2)とに切換自在に構成されている。この分草杆9を前処理部3に取り付ける手段は、分草杆9の先端を分草体支持フレーム8に設けられた縦向き回動軸15に揺動可能に取り付け、終端部を支持部材(連係手段)16で前処理支持フレーム13に取り付ける構成となっている。前記支持部材16は、その基端部が前処理支持フレーム13に縦向き軸心Z周りで揺動自在に取り付けられると共に、その先端部が分草杆9に着脱自在に設けられた連結ロッド17を介して相対移動可能に融通を持って取り付けられている。よって、前記分草杆9の姿勢が切り換わっても前記支持部材16が分草杆9をその揺動を許容しながら支持するように構成されている。
【0012】
18は分草杆9の後端に連結された補助分草杆であり、その先端が分草杆9の後端にフレキシブルに取り付けられると共に、後端部が機体フレーム2aに左右出し入れ可能に取り付けられたステップ19のリング状部材19aにスライド移動可能に挿入支持されてお
り、分草杆9の姿勢切換動作及び、ステップ19の出し入れ動作を許容しながら補助分草杆18が連動する構成となっている。
【0013】
前記運転操作部6は、座席6aとこれの前方に位置する前方操作部6bと前記座席6aの左右横一側に位置する側方操作部6cとを備えている。
【0014】
前記分草杆9を遠隔操作で姿勢切換をする操作手段は、前記運転操作部6の側方操作部6cに揺動自在な操作レバー(操作具)20を設け、図4に示すように、この操作レバー20の分草位置への揺動によって前記支持部材16を外側に揺動させて前記分草杆9を分草作用姿勢に揺動位置させる第1ワイヤー(連係手段)21と、操作レバー20の格納位置への揺動によって前記支持部材16を内側に揺動させて前記分草杆9を格納姿勢に揺動位置させる第2ワイヤー(連係手段)22とを設け、前記操作レバー20に作用してこの操作レバー20を摩擦で位置保持することにより前記分草杆9を前記の各姿勢に保持する摩擦保持手段23を設けて構成されている。
【0015】
前記摩擦保持手段23は、操作レバー20の揺動軸心部に作用するものであって、ボルトであるレバー取付軸23aに2枚の摩擦板23bで操作レバー20のレバー本体を挟む状態でこれらをセットし、バネ座金23cをセットし、その状態でナット23dを締め込むことで構成されている。
【0016】
16aは支持部材16に設けたストッパーピンであって、前処理支持フレーム13側に形成された長孔13cに前記ストッパーピン16aの先端を入り込ませ、これにより支持部材16の揺動範囲を規制し、分草杆9を分草作用位置と格納位置で停止できるように構成されている。
【0017】
前記操作レバー20と分草杆9とを連係する前記ワイヤー21,22は、縦向き軸心Yの近傍を通過するように構成されている。具体的に説明すると、前記操作レバー20に連結されたワイヤー21,22は先ず下方に向かって延設され、前記横向き筒状部13aの位置まで下がると次は横向き筒状部13aの後側に沿い、走行機体2の左側に位置する縦向き軸心Yに向かって延設される。そして、横向き筒状部13aの左端まで延設されるとワイヤー21,22は横向き筒状部13aの後側から前側に向かって横向き筒状部13aの左端部の側方を通過して延設され、平面視で取付軸12aの外側を迂回した後、横向き筒状部13aの前側に沿って右側に延設される。そして、横向き筒状部13aの中間位置まで延設されるとワイヤー21,22は前方向に曲がり、前後向き筒状部13bに沿って前側へ向かって延設される。そして、前後向き筒状部13bの先端部まで延設されるとワイヤー21,22は左方向に曲がり、前処理支持フレーム13の横フレーム部13dに沿って支持部材16まで延設される構成となっている。
【0018】
以上の構成により、運転操作部6から操作レバー20を操作して、遠隔操作により分草杆9の姿勢切換を良好に行うことができる。
また、走行機体2のメンテナンス等を行う際には、取付部材12を固定しているボルト24を外し、縦向き軸心Yを中心に前処理部3を走行機体2の前方から退避した開放位置に回動してメンテナンス作業を良好に行うことができる。
この時、ワイヤー21,22が縦向き軸心Yの近傍を通過するように構成されているから、前処理部3の開放に伴ってワイヤー21,22が引っ張られるのを極力少なくでき、ワイヤー21,22を外さず前処理部3の開放が行えるので作業性が良い。
【0019】
上記実施形態では、ワイヤー21,22を取付軸12aの外側を迂回させて配索したが、縦向き軸心Yの近傍を通過すれば良いから上記構成に変えて取付軸12aの内側を通過させる構成としても良い。
【0020】
上記実施形態では、ワイヤー21,22を前後向き筒状部13bに沿わせて配索したが、上記構成に変えて縦向き軸心Yの近傍に設けられた補強フレーム25に沿わせて配索する構成としても良い。こうすれば、ワイヤー21,22の配索距離を短くできるので、コストが安くなる。
【0021】
上記実施形態では、ワイヤー21,22で連結したが、ワイヤーに代えてリンク機構により連結する構成としても良い。
【0022】
上記実施形態では、操作レバー20と分草杆9とを直接ワイヤー21,22で連係するものを例示したが、分草杆9の姿勢切換を電動アクチュエータの駆動により行うようなものの場合も、その電気配線が縦向き軸心Yの近傍を通過するように構成すれば電気配線を外さず前処理部3の開放を行うことができる。
【0023】
上記実施形態では、分草杆9を水平方向に揺動することにより横外方側に張り出した分草作用姿勢と内方側に引退した格納姿勢とに切り換わるように構成したが、分草杆9を前後方向軸心周りで揺動するように構成して横外方側に傾倒揺動した分草作用姿勢と内方側に起立引退した格納姿勢とに切り換わるようにしても良い。その時は、分草杆9と支持部材16とを固着して両者を一体で揺動する構成とする。
【0024】
図6〜図10は、分草杆9の姿勢切換構造の他の実施形態を示したものである。
上記実施形態と同様の構成については説明を省略するが、支持部材16を前処理部3に取り付ける手段は、その基端部を取付軸12aの下方延出部12bに取り付けている。つまり、前記基端部を縦向き軸心Y周りで回動する取付部材12に取り付け、尚且つ平面視で縦向き軸心Yの近傍に位置するように構成したから、分草杆9が前処理部3の開放を妨げることなく一緒に回動すると共に、開放に伴ってワイヤー21,22が引っ張られるのを極力少なくでき、ワイヤー21,22を外さず前処理部3の開放が行えるものである。
【0025】
また、分草杆9を遠隔操作で姿勢切換をする操作手段は、運転操作部6の側方操作部6cに揺動自在な操作レバー20を設け、図9に示すように、操作レバー20の分草位置への揺動によって支持部材16を外側に揺動させて前記分草杆9を分草作用姿勢に揺動位置させる第1ワイヤー21と、操作レバー20の格納位置への揺動によって支持部材16を内側に揺動させて前記分草杆9を格納姿勢に揺動位置させる第2ワイヤー22とを設け、前記操作レバー20をレバーガイド26のガイド孔27に係止させて位置保持することにより分草杆9を前記の各姿勢に保持する係合保持手段を設けて構成されている。
【0026】
前記係合保持手段は、前記操作レバー20を把持部28と本体部29とに分割し、その本体部29に対して把持部28を前後方向の回動軸30周りで左右揺動可能に支持すると共に、前記把持部28をスプリング31で左揺動方向へ付勢することにより、操作レバー20を前後揺動して分草位置又は格納位置に移動させると、把持部28がスプリング31の付勢力により前記回動軸30周りで揺動してガイド孔27の係合部27a又は27bと係合することで構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】分草杆を格納姿勢に切り換えた状態のコンバイン平面図である。
【図3】分草杆を分草作用姿勢に切り換えた状態のコンバイン平面図である。
【図4】操作レバーと分草杆との連係を示す作用図である。
【図5】前処理部を開放した状態のコンバイン平面図である。
【図6】他の実施形態を示すコンバインの左側面図である。
【図7】同上分草杆を格納姿勢に切り換えた状態のコンバイン平面図である。
【図8】同上分草杆を分草作用姿勢に切り換えた状態のコンバイン平面図である。
【図9】同上操作レバーと分草杆との連係を示す作用図である。
【図10】同上前処理部を開放した状態のコンバイン平面図である。
【符号の説明】
【0028】
2 走行機体
3 前処理部
6 運転操作部
9 分草杆
16 支持部材(連係手段)
20 操作レバー(操作具)
21 ワイヤー(連係手段)
22 ワイヤー(連係手段)
Y 縦向き軸心(縦軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)上に設けられた運転操作部(6)に操作具(20)を設置し、前処理部(3)の側方に分草杆(9)を設け、前記前処理部(3)を走行機体(2)に縦軸(Y)を中心に回動可能に支持して走行機体(2)の前部に位置する刈取作業姿勢と走行機体の前部を開放する開放姿勢とに切換可能に構成したコンバインにおいて、
前記操作具(20)と分草杆(9)とを連係手段を介して連係して該操作具(20)の操作により分草杆(9)を分草作用姿勢と格納姿勢とに切換可能に構成すると共に、前記連係手段が前記縦軸(Y)近傍を通過するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
分草杆(9)を支持部材(16)で前処理部(3)に取り付け、操作具(20)と分草杆(9)とを連係手段である前記支持部材(16)とワイヤー(21,22)とで連係すると共に、該ワイヤー(21,22)が縦軸(Y)近傍を通過するように構成したを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
分草杆(9)を支持部材(16)で前処理部(3)に取り付け、操作具(20)と分草杆(9)とを連係手段である前記支持部材(16)とワイヤー(21,22)とで連係すると共に、該支持部材(16)を縦軸(Y)近傍に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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