説明

コンバイン

【課題】搬送される穀稈が無理な姿勢とならないようにすると共に、コンパクト化を図ったコンバインを提供する。
【解決手段】引起し装置15により引起されて切断された穀稈を、搬送する下穂先搬送体33及び上穂先搬送体36により搬送してなる前処理部3を有するコンバイン1において、下穂先搬送体33は、上下方向に配置された第1の駆動軸31に設けられた駆動スプロケットと、爪付きチェーンとを有し、上穂先搬送体36は、上下芸方向に配置された第2の駆動軸32に設けられた駆動スプロケットと、爪付きチェーンとを有している。第2の駆動軸32は第1の駆動軸31に対して右方向にオフセットして配置され、かつ第1の駆動軸の上端部と第2の駆動軸の下端部とを伝動機構を介して連動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係り、詳しくは引起し装置により引起され、切断装置により切断された穀稈を、下穂先搬送体及び上穂先搬送体により搬送する前処理部を有するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインは、機体前方側に、刈刃、引起し装置及び各種の搬送体を有する前処理部が配設されており、引起し装置によって引起した穀稈を刈刃によって刈取り、この刈取られた穀稈は各種の搬送体によって機体後方側に備えられた脱穀装置へ搬送されるように構成されている。このような前処理部の搬送体は、株元搬送体及び穂先搬送体などで構成されており、該穂先搬送体は、下穂先搬送体及び上穂先搬送体を有している。
【0003】
上記下穂先搬送体及び上穂先搬送体については、同一の駆動軸によって爪付きチェーンを駆動し穀稈を搬送しているものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このものによれば、下穂先搬送体を駆動するスプロケットの径よりも上穂先搬送体を駆動するスプロケットの径を大径にすることにより、上穂先搬送体側を高速で搬送することで、穀稈の搬送状態を良好に保っていた。
【0004】
また、下穂先搬送体の従動スプロケットと上穂先搬送体の駆動スプロケットとが回転軸を介して一体回転するように連結された構成のものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−141650号公報
【特許文献2】特開2000−224912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前処理部における搬送体の配置位置は、引起し装置により引起され、刈取られた穀稈を搬送するための通路を確保できるように設定される。即ち、引起し装置の位置によって搬送体(特に上穂先搬送体)の配置位置が設定される。
【0007】
しかしながら、上述のように同一の駆動軸によって爪付きチェーンを駆動し穀稈を搬送しているものでは、上記のように引起し装置の配置位置によって上穂先搬送体の配置位置が設定され、それに伴って駆動軸の配置も設定されてしまい、設計の自由度が減少し、コンパクト化の妨げとなる虞があった。また、下穂先搬送体に対する上穂先搬送体の搬送速度を増速するために、上穂先搬送体を駆動するスプロケットの径を大径とすることは、搬送体の肥大化を招く虞があった。
【0008】
さらに、下穂先搬送体の従動スプロケットと上穂先搬送体の駆動スプロケットとが伝動軸を介して一体回転するように連結されたものでは、下穂先搬送体及び上穂先搬送体が穀稈の搬送方向にはオフセットされるが、上下方向においては、下穂先搬送体の従動スプロケットと上穂先搬送体の駆動スプロケットとが同軸上の配置となるため、搬送通路の設定が限定され、搬送される穀稈が無理な姿勢となる虞があった。
【0009】
そこで本発明は、搬送される穀稈が無理な姿勢とならないようにすることが可能になると共に、コンパクト化を図ることが可能なコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図4参照)、引起し装置(例えば15,16,17)と、該引起し装置(例えば15,16,17)の後方に配置された、下穂先搬送体(33)及び上穂先搬送体(36)と、を備え、前記引起し装置(例えば15,16,17)により引起され、切断装置(61)により切断された穀稈を、前記下穂先搬送体(33)及び前記上穂先搬送体(36)により搬送してなる前処理部(3)を有するコンバイン(1)において、
前記下穂先搬送体(33)は、上下方向に配置された第1の駆動軸(31)に設けられた駆動スプロケット(33b)と、従動スプロケット(33c)と、これら駆動スプロケット(33b)及び従動スプロケット(33c)に巻掛けられた爪付きチェーン(33a)と、を有し、
前記上穂先搬送体(36)は、上下方向に配置された第2の駆動軸(32)に設けられた駆動スプロケット(36b)と、従動スプロケット(36c)と、これら駆動スプロケット(36b)及び従動スプロケット(36c)に巻掛けられた爪付きチェーン(36a)と、を有し、
前記第1の駆動軸(31)と前記第2の駆動軸(32)とは、左右方向にオフセットして配置され、かつ前記第1の駆動軸(31)の上端部(31a)と前記第2の駆動軸(32)の下端部(32a)とを伝動機構(35)を介して連動してなる、
ことを特徴とするコンバイン(1)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図2乃至図4参照)、前記引起し装置(例えば15,16,17)は、左右方向に3個並設され、左引起し装置(17)と中央引起し装置(16)とで2条の穀稈の引起し、右引起し装置(15)により1条の穀稈を引起し、
前記下穂先搬送体(33)及び前記上穂先搬送体(36)は、前記右引起し装置(15)により引起されて切断された1条の穀稈を搬送し、
前記第2の駆動軸(32)に対して前記第1の駆動軸(31)が左方向にオフセットされてなる、
請求項1記載のコンバイン(1)にある。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、第1の駆動軸と第2の駆動軸とが、左右方向にオフセットして配置されているので、前処理部における下穂先搬送体及び上穂先搬送体の配置自由度が向上し、コンバインのコンパクト化を図ることができ、また、搬送される穀稈が無理な姿勢とならないような搬送通路を確保することが可能となる。さらに、第1の駆動軸と上端部と第2の駆動軸の下端部とを伝動機構を介して連動しているので、伝動機構部分のギヤ比を変更するだけで、搬送体を肥大化させることなく上穂先搬送体の爪付きチェーンの増速を可能とすることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、左右方向に3個並設され、左引起し装置と中央引起し装置とで2条の穀稈の引起し、右引起し装置により1条の穀稈を引起すタイプ、いわゆる3条刈りのコンバインであって、下穂先搬送体及び上穂先搬送体は、右引起し装置により引起されて切断された1条の穀稈を搬送するものであり、第2の駆動軸に対して第1の駆動軸が左方向にオフセットされているので、3条刈りのコンバインにおいて前処理部における各種の穀稈搬送体の配置が、走行用ミッションケース等と干渉しない合理的な配置となって、コンバインのコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図4に沿って説明する。
【0016】
図1に示すように、コンバイン1は、進行方向左右のクローラ走行装置7,7に支持された走行機体2に、該走行機体2に対して昇降自在に接続されている前処理部3と、脱穀装置6と、運転部5などを備えて構成される。
【0017】
上記走行機体2は、図1及び図2に示すように、左右幅方向の右側前方に操作パネル11や運転席12などが設けられる運転部5と、該運転部5の後方側にグレンタンク(図示せず)がそれぞれ配設されており、また走行機体2の左側には、前処理部3にて刈取られた穀稈を搬送する脱穀フィードチェーン(図示せず)、及び該脱穀フィードチェーンにより搬送された穀稈を脱穀する脱穀装置6が配設されている。この脱穀装置6にて脱穀された穀粒は、揚上搬送されてグレンタンクに一時的に貯留される。
【0018】
上記前処理部3は、走行機体2の略々全幅にわたって穀稈を分草する多数の分草デバイダ18を有しており、該分草デバイダ18は、機体前方に延びる分草フレーム67にそれぞれ取付けられている。該分草フレーム67の後方側は、前処理部3の下方側で機体左右方向に延設された横フレーム66に固定されている。また、分草デバイダ18のそれぞれの後方には、分草された穀稈を引起す引起し装置15,16,17が前方から後方に向けて上昇する傾斜状に設けられている。さらに、前処理部3の両側面には、それぞれ保守・整備のために簡単に着脱することを可能としたサイドカバー65,65が配設されている。
【0019】
なお、本実施の形態で説明するコンバイン1は3条刈り用のコンバインであり、上記引起し装置15,16,17は、それぞれ右側引起し装置15、中央引起し装置16、左側引起し装置17となっている。
【0020】
前処理部3は、その作動基端側を伝動軸ケース22に固着され、かつ走行機体2の前方斜め下方に向けて延出する縦伝動ケース23に接続されている。該縦伝動ケース23は、その中間部に連結された図示を省略している油圧シリンダの伸縮に基づき昇降可能に前処理部3を支持している。この縦伝動ケース23の下端部、即ち前処理部3との接続部側では、機体左右方向に延設され、かつ該縦伝動ケース23と略々T字状に直交する横伝動ケース24が一体的に連結されている。
【0021】
上記右側引起し装置15は、図2に示すように、爪付きチェーン(図示せず)と引起しケース15aとを有し、該爪付きチェーンには所定間隔で複数本の爪(図示せず)が取付けられ、これらの爪が引起しケース15a内を上方に回動して穀稈を引起す。この爪付きチェーンを駆動する動力は、伝動軸ケース22内の駆動軸から縦伝動ケース23内及び横伝動ケース24内の駆動軸を介し、該横伝動ケース24から機体前方側の上方向へ傾斜状に延びる右側引起し伝動ケース25aによって伝達されている。また、右側引起し装置15は、この右側引起し伝動ケース25aによって上端部が支持されている。
【0022】
また同様に、中央引起し装置16は、爪付きチェーン(図示せず)と引起しケース16aとを有し、該爪付きチェーンには所定間隔で複数本の爪16baが取付けられ、これらの爪16baが引起しケース16a内を上方に回動して穀稈を引起す。この爪付きチェーンを駆動する動力は、伝動軸ケース22内の駆動軸から縦伝動ケース23内及び横伝動ケース24内の駆動軸を介し、該横伝動ケース24から機体前方側の上方向へ傾斜状に延びる中央引起し伝動ケース25bによって伝達されている。また、中央引起し装置16は、この中央引起し伝動ケース25bによって上端部が支持されている。
【0023】
さらに、左側引起し装置17は、爪付きチェーン(図示せず)と引起しケース17aとを有し、該爪付きチェーンには所定間隔で複数本の爪17baが取付けられ、これらの爪17baが引起しケース17a内を上方に回動して穀稈を引起す。この爪付きチェーンを駆動する動力は、伝動軸ケース22内の駆動軸から縦伝動ケース23内及び横伝動ケース24内の駆動軸を介し、該横伝動ケース24から機体前方側の上方向へ傾斜状に延びる左側引起し伝動ケース25cによって伝達されている。また、左側引起し装置17は、この左側引起し伝動ケース25cによって上端部が支持されている。
【0024】
図1に示すように、上記引起し装置15,16,17の後方で、かつ横伝動ケース24の前方下部には、地面に近接して穀稈の株元を切断する刈刃(切断装置)61が設けられ、この刈刃61により切断された穀稈は、掻込み搬送装置30によって略々直立状態で掻込まれて後方に搬送される。
【0025】
該掻込み搬送装置30は、大まかに、図2に示すように、右側株元搬送チェーン53,54、右側掻込みスターホイル(図示せず)、右側下穂先搬送体33、及び右側上穂先搬送体36などを有する右側掻込み搬送装置30rと、中央掻込みスターホイル(図示せず)、左側株元搬送チェーン55、左側掻込みスターホイル62(図1参照)、左側下穂先搬送体42、及び左側上穂先搬送体47などを有する左側掻込み搬送装置30lとで構成されている。
【0026】
そして、右側掻込みスターホイルなどにより掻き込まれた右側の穀稈は、案内板68に導かれると共に、右側株元搬送チェーン53,54、右側下穂先搬送体33、及び右側上穂先搬送体36によって搬送される。また、中央掻込みスターホイルなどにより掻き込まれた中央の穀稈、及び左側掻込みスターホイル62(図1参照)などにより掻き込まれた左側の穀稈は、案内板68に導かれると共に、左側株元搬送チェーン55、左側下穂先搬送体42、及び左側上穂先搬送体47によって搬送される。
【0027】
上記右側株元搬送チェーン54は、詳しくは後述する第1の駆動軸31と一体に固着された駆動スプロケット26により駆動されており、また、左側株元搬送チェーン55は、後述する駆動軸(図示せず)と一体に固着された駆動スプロケット27により駆動されている。
【0028】
さらに、上記掻込み搬送装置30の後方には、回動支点軸58を中心として上下に揺動自在な扱深搬送装置50が設けられており、該掻込み搬送装置30から引継がれた穀稈は、この扱深搬送装置50における株元扱深搬送体55により株元側が挟持され、穂先扱深搬送体56により穂先側が挟持されて搬送される。また、この扱深搬送装置50により、予め設定しておいた扱深さに自動的に調節され、脱穀フィードチェーン(図示せず)により、上述の脱穀装置6に向けて搬送される。
【0029】
上記掻込み搬送装置30の左側下穂先搬送体42及び左側上穂先搬送体47は、図2に示すように、横伝動ケース24に接続され、該横伝動ケース24からベベルギヤを介して動力が伝達される駆動軸(図示せず)を備えており、左側下穂先搬送体42及び左側上穂先搬送体47共に該駆動軸と一体に回転するよう配設された駆動スプロケット(図示せず)と従動スプロケット(図示せず)とを有し、この駆動スプロケットと従動スプロケットとに巻掛けられた爪付きチェーン42a,47aをそれぞれ備えて構成される。また、左側下穂先搬送体42及び左側上穂先搬送体47には、上記駆動軸を被覆するようにパイプ43が配設されており、該駆動軸を保護している。
【0030】
次に、本発明の要部である右側の下穂先搬送体33及び上穂先搬送体36について説明する。
【0031】
右側下穂先搬送体33及び右側上穂先搬送体36は、左右方向においてオフセットされて配設された第1の駆動軸31及び第2の駆動軸32によって駆動されるように構成されている。
【0032】
上記第1の駆動軸31は、図2に示すように、下端部分において横伝動ケース24に接続され、該横伝動ケース24からベベルギヤを介して動力が伝達される。また、図4に示すように、上方部分においては、後述する下穂先搬送体33の駆動スプロケット33bが固着されており、さらに、上端部31aにおいては、該第1の駆動軸31と一体に回転するようにスプロケット31bが固着されている。
【0033】
上記下穂先搬送体33は、第1の駆動軸31と一体に回転するように固着された駆動スプロケット33bと、従動スプロケット33cと、これら駆動スプロケット33b及び従動スプロケット33cに巻掛けられた爪付きチェーン33aとが備えられている。さらに、該爪付きチェーン33aには、所定間隔で複数本の爪33abが取付けられている。
【0034】
上記第1の駆動軸31の上方において、該第1の駆動軸31に対して右方向にオフセットされた第2の駆動軸32が回転自在に配設されており、該第2の駆動軸32には、下端部32aにおいて、スプロケット32bが一体に回転するように固着されており、上方部分において、上穂先搬送体36の駆動スプロケット36bが固着されている。
【0035】
上記上穂先搬送体36は、第2の駆動軸32と一体に回転するように固着された駆動スプロケット36bと、従動スプロケット36cと、これら駆動スプロケット36b及び従動スプロケット36cに巻掛けられた爪付きチェーン36aとが備えられている。さらに、該爪付きチェーン36aには、所定間隔で複数本の爪36abが取付けられている。
【0036】
また、上記第1の駆動軸31の上端部31aに固着されたスプロケット31bと、上穂先搬送体36に駆動を伝達する第2の駆動軸32の下端部32aに固着されたスプロケット32bと、これらスプロケット31b及びスプロケット32bに巻掛けられたチェーン35aとによって、第1の駆動軸31から第2の駆動軸32に動力を伝達する伝動機構35が構成されている。これにより、左右方向においてオフセットされて配設された第1の駆動軸31及び第2の駆動軸32では、該第1の駆動軸31から該第2の駆動軸32への動力の伝達が可能となる。
【0037】
上記右側の上穂先搬送体36及び下穂先搬送体33は、ケース36d、33dに収納されて、前記爪付きチェーン36a、33aの爪36ab,33abが上記ケースの一側面から突出するように構成されている。また、上記第1の駆動軸31は、ケース33dの外側になる部分で、該第1の駆動軸31を被覆するように配設されたパイプ38により保護されている。同様に上記第2の駆動軸32は、ケース36dの外側になる部分で、該第2の駆動軸32を被覆するように配設されたパイプ39により保護されている。
【0038】
さらに、上穂先搬送体36は、図2に示すように、右側引起し装置15の配置位置によってその配置位置が決定される。この右側上穂先搬送体36を駆動する第2の駆動軸32に対して、左方向にオフセットして配置された第1の駆動軸31は、一体に回転するように配置された右側株元搬送チェーン54の駆動スプロケット26の配置位置も左方向にオフセットさせることになる。これにより、右側株元搬送チェーン54は、走行用トランスミッションケース60と干渉することなく配置することが可能となる。つまり、第1の駆動軸31を第2の駆動軸32に対して左方向にオフセットすることは、走行機体2に対して前処理部3を右方向に配置することを可能とするものであり、コンバイン1のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0039】
また、第1の駆動軸31を第2の駆動軸32に対して左方向にオフセットするので、右側下穂先搬送体33及び右側上穂先搬送体36の配置もオフセットされ、搬送される穀稈が無理な姿勢とならないような搬送通路を確保することが可能となる。
【0040】
さらに、上記伝動機構35は、スプロケット31b及びスプロケット32bのギヤ比を変更することで、右側下穂先搬送体33及び右側上穂先搬送体36の搬送速度を設定することができ、右側下穂先搬送体33に対して右側上穂先搬送体36の搬送速度を増速することが可能となる。
【0041】
次に、本発明に係るコンバイン1の作用について説明する。
【0042】
3条刈りのコンバインは、図2に示すように、引起し装置15,16,17によって穀稈を引起し、刈刃61によって穀稈を刈取る。刈取られた穀稈のうちの右側の穀稈は、右側掻込みスターホイル(図示せず)などにより右側掻込み搬送装置30rに掻き込まれ、案内板68(図3参照)に導かれると共に、右側株元搬送チェーン53,54、右側下穂先搬送体33、及び右側上穂先搬送体36によって扱深搬送装置50へ搬送される。
【0043】
また、刈取られた穀稈のうちの中央の穀稈と左側の穀稈とは、中央掻込みスターホイル(図示せず)などにより、中央の穀稈が左側掻込み搬送装置30lに掻き込まれ、さらに、左側掻込みスターホイル62などにより、左側の穀稈が左側掻込み搬送装置30lに掻き込まれる。そして、これら2条の穀稈は、案内板68(図3参照)に導かれると共に、左側株元搬送チェーン55、左側下穂先搬送体42、及び左側上穂先搬送体47によって扱深搬送装置50へ搬送される。
【0044】
扱深搬送装置50では、上記掻込み搬送装置30から引継がれた穀稈が、株元扱深搬送体57により株元側が挟持され、穂先扱深搬送体56により穂先側が挟持されて搬送される。また、この扱深搬送装置50により、予め設定しておいた扱深さに自動的に調節される。その後、穀稈は、該扱深搬送装置50から脱穀フィードチェーン(図示せず)に引き継がれて、上述の脱穀装置6に向けて搬送される。
【0045】
以上のように本発明に係るコンバイン1によると、第1の駆動軸31と第2の駆動軸32とが、左右方向にオフセットして配置されているので、コンバイン1の走行機体2と前処理部3との左右方向における配置の可能となる範囲が増し、コンバイン1のコンパクト化を図ることができ、また、搬送される穀稈が無理な姿勢とならないような搬送通路を確保することが可能となる。さらに、第1の駆動軸31と上端部31aと第2の駆動軸32の下端部32aとを伝動機構35を介して連動しているので、伝動機構35部分のギヤ比を変更するだけで、搬送体を肥大化させることなく上穂先搬送体36の爪付きチェーン36aの増速を可能とすることができる。
【0046】
また、右側、中央、及び左側引起し装置15,16,17は、左右方向に3個並設され、左側引起し装置17と中央引起し装置16とで2条の穀稈の引起し、右引起し装置15により1条の穀稈を引起すタイプ、いわゆる3条刈りのコンバインであって、下穂先搬送体33及び上穂先搬送体36は、右引起し装置15により引起されて切断された1条の穀稈を搬送するものであり、第2の駆動軸32に対して第1の駆動軸31が左方向にオフセットされているので、3条刈りのコンバインにおいて前処理部3における各種の穀稈搬送体の配置が、走行用ミッションケース60等と干渉しない合理的な配置となって、コンバイン1のコンパクト化を図ることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、下穂先搬送体33及び上穂先搬送体36を3条の穀稈を刈取るコンバイン1に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば4条や5条の穀稈を刈取るコンバインに適用することもできる。
【0048】
また、伝動機構35は、チェーン35aにより動力を伝達するように説明したが、これに限定されるものではなく、例えば歯車を用いて動力を伝達することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】コンバインの前方部分の側面図。
【図2】コンバインの前方部分の平面図。
【図3】前処理部の要部後方斜視図。
【図4】第1及び第2の駆動軸、右側下穂先搬送体、及び右側上穂先搬送体の斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 コンバイン
3 前処理部
15 右引起し装置
16 中央引起し装置
17 左引起し装置
31 第1の駆動軸
31a 上端部
32 第2の駆動軸
32a 下端部
33 下穂先搬送体
33a 爪付きチェーン
33b 駆動スプロケット
33c 従動スプロケット
35 伝動機構
36 上穂先搬送体
36a 爪付きチェーン
36b 駆動スプロケット
36c 従動スプロケット
61 切断装置(刈刃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引起し装置と、該引起し装置の後方に配置された、下穂先搬送体及び上穂先搬送体と、を備え、前記引起し装置により引起され、切断装置により切断された穀稈を、前記下穂先搬送体及び前記上穂先搬送体により搬送してなる前処理部を有するコンバインにおいて、
前記下穂先搬送体は、上下方向に配置された第1の駆動軸に設けられた駆動スプロケットと、従動スプロケットと、これら駆動スプロケット及び従動スプロケットに巻掛けられた爪付きチェーンと、を有し、
前記上穂先搬送体は、上下方向に配置された第2の駆動軸に設けられた駆動スプロケットと、従動スプロケットと、これら駆動スプロケット及び従動スプロケットに巻掛けられた爪付きチェーンと、を有し、
前記第1の駆動軸と前記第2の駆動軸とは、左右方向にオフセットして配置され、かつ前記第1の駆動軸の上端部と前記第2の駆動軸の下端部とを伝動機構を介して連動してなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記引起し装置は、左右方向に3個並設され、左引起し装置と中央引起し装置とで2条の穀稈の引起し、右引起し装置により1条の穀稈を引起し、
前記下穂先搬送体及び前記上穂先搬送体は、前記右引起し装置により引起されて切断された1条の穀稈を搬送し、
前記第2の駆動軸に対して前記第1の駆動軸が左方向にオフセットされてなる、
請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−289013(P2007−289013A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117182(P2006−117182)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】