説明

コンバイン

【課題】カッタの開閉に伴い、搬送される排わらのカッタへの供給と非供給とを切り換える切換装置と、切換装置の操作を行う操作具とを繋ぐワイヤを円滑に案内する案内ガイドを設けたコンバインを提供する。
【解決手段】排わらを切断処理するカッタへの搬送される排わらの供給と非供給とを切り換える切換装置29と、該切換装置29の操作を行う操作具とを連結するワイヤ32のカッタを開放姿勢から作業姿勢に姿勢変更させる際に発生する弛み部分を案内しながら、ワイヤ32をカッタの回動方向に押し込む案内ガイド36をカッタ機枠23側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀後の排わらを切断処理するカッタを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、排わらを切断処理するカッタと、搬送される排わらのカッタへの供給と非供給とを切り換える切換装置と、該切換装置の操作を行う操作具とを備え、上記カッタが開放姿勢と作業姿勢とに開閉回動自在に装着され、上記切換装置がカッタ側に設けられ、前記操作具と切換装置とがワイヤを介して連結され、操作具の操作に応じてワイヤによって切換装置を切り換え作動させるコンバインが公知となっている。
【0003】
操作具と切換装置とがワイヤを介して連結される場合、カッタが開放姿勢にあるときと、カッタが作業姿勢のときとでは、操作具から切換装置までの距離が異なるため、ワイヤの長さをカッタが開放姿勢にあるときに基づいて設定する必要がある。
【0004】
このためカッタが作業姿勢に閉じられると、ワイヤはカッタが作業姿勢の場合に必要な長さより長いため、カッタの作業姿勢への姿勢変更に伴って折れ曲がって破損したり、他の構造物の妨げとなったりする場合があった。
【0005】
これに対してワイヤをカッタが作業姿勢の場合に必要な長さとし、カッタを開放姿勢に開くと切換装置側とワイヤ側との連係を断ち、カッタの開閉に伴ったワイヤの移動を廃したコンバインが公知となっている(特許文献1参照)。また操作レバーとカッタの回動支点の近傍に配置されたリンク機構とをロッドを介して連結し、リンク機構と切換装置リンク機構を極めて短いワイヤによって連結し、カッタの開閉に伴うワイヤの移動が極小さくなるように構成したコンバインも公知となっている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2527918号公報
【特許文献2】特許第2574503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2のコンバインは、共にリンク機構等からなる複雑な機械構造を持つ。このため構造が複雑化し、且つコストアップになるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のコンバインは、排わらを切断処理するカッタ9と、搬送される排わらのカッタ9への供給と非供給とを切り換える切換装置29と、該切換装置29の操作を行う操作具31とを備え、上記カッタ9が、作業姿勢Aと開放姿勢Bとに開閉回動自在に装着され、上記切換装置29がカッタ9側に設けられ、前記操作具31と切換装置29とがワイヤ32を介して連結され、操作具31の操作に応じてワイヤ32によって切換装置29を切り換え作動させるコンバインにおいて、カッタ機枠23側に、カッタ9の開放姿勢Bから作業姿勢Aへの姿勢変更の際に発生するワイヤ32の弛み部分を案内しながらワイヤ32をカッタ9の回動方向に押し込む案内ガイド36を設けたことを特徴としている。
【0008】
第2に走行機体1の後方側に後部カバー22を設け、カッタ9を後部カバー22の後方に配置し、操作レバー31を後部カバー22の前方に配置し、後部カバー22にワイヤ32及び案内ガイド36を挿通状態で通過させる挿通部38を設け、案内ガイド36の後部カバー22より前方部分に、カッタ9の作業姿勢Aへの回動時に、案内ガイド36と一体的にワイヤ32を押し込み移動させるようにワイヤ32を支持する支持部36Aを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
操作具と切換装置とがワイヤを介して連結され、カッタを開放姿勢に開く際にワイヤが妨げとならないように、ワイヤの長さが開放姿勢のカッタの位置に基づいて設定される場合、以上のように構成される本発明の構造によると、開放姿勢のカッタを作業姿勢に姿勢変更すると、案内ガイドによってワイヤがカッタの回動方向に向かって押し込まれ、ワイヤが屈曲して破損したり、ワイヤが他の構造物の妨げになったりする不都合が防止される。
【0010】
走行機体後方の後部カバーを挟んで前方に操作レバーを、後方にカッタを配置した場合、後部カバーにワイヤ及び案内ガイドを挿通状態で通過させる挿通部を設け、案内ガイドの後部カバーより前方部分に、カッタの作業姿勢への回動時に、案内ガイドと一体的にワイヤを押し込み移動させるようにワイヤを支持する支持部を設けることによって、ワイヤを後部カバーより前方側に押し込み、ワイヤの屈曲破損や、他の構造物の妨げ等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はコンバインの平面図である。該コンバインは、走行機体1の前方に前処理部2が設けられている。前処理部2の右後方にはシート3を備えた運転席4が設けられている。運転席4の後方には、脱穀後の穀粒を貯粒する穀粒タンク6が設けられている。穀粒タンク6の左側方には脱穀部7が設けられている。
【0012】
脱穀部7の側方にはフィードチェン8が設けられている。脱穀部7の後方には、穀粒タンク6の後方に至るカッタ9が設けられている。脱穀部7の後方からカッタ9の上方に至り排わらを搬送するである排わらチェン11が設けられている。
【0013】
本コンバインは、従来同様、前処理部2によって穀稈を刈り取り、刈り取った刈取穀稈を後方に搬送してフィードチェン8に受け継がせ、刈取穀稈をフィードチェン8によって脱穀部7に供給して脱穀し、脱穀後の穀稈を排わらとしてフィードチェン8から排わらチェン11に受け継がせ、排わらチェン11によってカッタ9に供給して切断処理又はカッタ9に供給することなく排出処理する。
【0014】
図2は上記脱穀部7の側面概略断面図である。脱穀部7には、上方側の扱室12と、下方側の選別室13とが選別網14によって区切られて設けられている。扱室12内には扱胴16が回転駆動自在に設けられている。選別室13には、選別網14を通過して導入される扱降物を揺動選別する揺動選別体17と、選別風を送風する唐箕ファン18と、排塵を機外に排出する排塵ファン19とが設けられている。
【0015】
該脱穀部7は、従来同様フィードチェン8によって扱胴16に供給される穀稈を扱胴16によって脱穀し、選別室13において一番物と二番物とを選別し、一番物を穀粒タンク6に排出する。
【0016】
穀粒タンク6の後方には、カッタ支持フレーム21が配置されている。カッタ支持フレーム21は、図3に示されるように、機体フレーム1aに固定されている。カッタ支持フレーム21の左側方には、走行機体1の後方をカバーする後部カバー22が、機体フレーム1aに固定されて設けられている。
【0017】
前述のカッタ9は、カッタケース23を備えている。カッタ9はカッタケース23内にユニット化されて構成されている。カッタケース23の右端部にはアーム24が突設されている。アーム24はカッタ支持フレーム21に支点軸26を介して回動自在に取付けられている。これによりカッタ9は支点軸26を軸心としてカッタ支持フレーム21に回動自在に支持されている。
【0018】
カッタ9は上記回動によって、図4に示されるように左端部側が脱穀部7に対して閉じた作業姿勢Aと、図5に示されるように、脱穀部7に対して開いた開放姿勢Bとに姿勢切換が行われる。
【0019】
図2に示されるように、カッタケース23内には、排わらの切断用の刃27,28が設けられている。該刃27,28は回転駆動によって排わらの切断を行う。カッタケース23の上面は、後方が下がるような後方傾斜状態をなす。カッタケース23の上面は、カッタケース23内に排わらを落下させることができるように一部が開口している。
【0020】
カッタケース23の上面には、起伏揺動自在に切換板29が設けられている。該切換板29は後端側を支点として、前端側が上下に揺動する。切換板29は倒伏状態Xにおいてカッタケース23の上面に沿って開口部分を閉じて塞ぐ。切換板29は起立状態Yにおいてカッタケース23の上面の開口部分を開き、開口状態とする。
【0021】
切換板29を起伏状態Yとすることによって、排わらチェン11からカッタケース23の上方に搬送された排わらをカッタケース23内に導入し、切断処理することができる。切換板29を倒伏状態Xとすることによって、排わらチェン11からカッタケース23の上方に搬送された排わらは、切換板29の上面を滑り、カッタケース23内に導入されることなくカッタ9の後方に落下処理される。
【0022】
運転席4内には座席3の後方側の側方に上記切換板29の操作レバー31が設けられている。該操作レバー31と上記切換板29とはワイヤ32によって連結されている。図6に示されるように、該ワイヤ32の切換板29側のアウタ32Aは、ブラケット33を介してカッタケース23に固定されている。
【0023】
ワイヤ32の切換板29側のインナ32Bが切換板29を起伏操作する操作アーム34に連結されている。操作レバー31の前後揺動によってインナ32Bが操作され、操作アーム34によって切換板29が起伏操作される。
【0024】
上記ブラケット33には、脱穀部7側に延出する杆状のワイヤ支持ガイド36が設けられている。ワイヤ支持ガイド36は、弾力性を備えたバネ材等からなる。ワイヤ支持ガイド36は、支軸37を介してブラケット33に左右揺動自在に支持されている。
【0025】
前述の後部カバー22には、ワイヤ32及びワイヤ支持ガイド36を挿通させる孔からなる挿通部(挿通孔)38が設けられている。該挿通孔38にはゴムリング39が装着されている。ワイヤ32及びワイヤ支持ガイド36は、挿通孔38(ゴムリング39内)を通過して後部カバー22の前方側に突出又は延出している。
【0026】
ワイヤ支持ガイド36の後部カバー22の前方側に突出した前端側は、螺旋状に曲げ形成され、ワイヤ32の支持部36aを構成している。ワイヤ33は、アウタ33Aがワイヤ支持ガイド36の支持部36a(螺旋内)を通過することによって、後部カバー22より前方側においてワイヤ支持ガイド36に支持されている。
【0027】
ワイヤ33は、挿通孔38を通過して後部カバー22を抜け、上記のようにワイヤ支持ガイド36に支持された状態で上記操作レバー31側に延出し、操作レバー31に連結されている。
【0028】
本コンバインは上記のようにカッタ9が開閉回動しするため、カッタ9が開放姿勢Bにあるときと、カッタ9が作業姿勢Aのときとでは、操作レバー31から切換板29までの距離が異なる。このため本コンバインにおいてはワイヤ32の長さをカッタ9が開放姿勢Bにあるときに基づいて設定されている。
【0029】
このためカッタ9が作業姿勢Aに閉じられると、ワイヤ9には弛みが発生する。これに対して本実施形態においては、カッタ9の作業姿勢Aにおいて、ワイヤ支持ガイド36の先端側を平面視で穀粒タンク6の後方側の形状に沿うように湾曲させ、ワイヤ32を穀粒タンク6の後方側に沿わせながら穀粒タンク6と脱穀部7との間を通過するように案内し、弛みをとるようにワイヤ32の経路が設定されている。
【0030】
カッタ9を作業姿勢Aから開放姿勢Bに開くと、ワイヤ32は上記弛み分の余裕分が引き出され、カッタ9の開放姿勢Bへの切換を妨げることはない。カッタ9を開放姿勢Bから作業姿勢Aに閉じる場合は、ワイヤ支持ガイド36が、カッタ9の回動に伴って揺動しながらワイヤ32を案内する。
【0031】
ワイヤ支持ガイド36の揺動は通過孔38内(ゴムリング39内)に規制される。このためカッタ9の回動に伴ってワイヤ32を穀粒タンク6の後方側に沿わせながらワイヤ32の上記弛み部分を後部カバー22の前方側(穀粒タンク6側)に押し込み、ワイヤ32を上記経路に収める。以上によりカッタ9の開閉回動に伴うワイヤ32の移動時に、ワイヤ32が屈曲して破損したり、ワイヤ32が他の構造物の妨げになったりする不都合が防止される。
【0032】
ワイヤ32はカッタケース23におけるカッタ9の回動支点(支点軸26)側の側方から突出し、支点軸26の近傍を通過するため、カッタ9の開閉に伴い極端に大きく姿勢が変更されることはない。
【0033】
ワイヤ支持ガイド36の支持部36は、螺旋内にワイヤ32(アウタ32A)を通過させることによってワイヤ32を支持している。上記のようにカッタ9を開放姿勢Bから作業姿勢Aに閉じる際に、ワイヤ32を後部カバー22の前方側に押し込む場合、螺旋部分とワイヤ32との摩擦抵抗によりワイヤ32はワイヤ支持ガイド36の先端側に一体的に支持され、ワイヤ支持ガイド36とともに移動しながら上記のように所定経路に収められる。
【0034】
またカッタ9を作業姿勢Aから開放姿勢Bに開く際に、ワイヤ32を後部カバー22の後方側に引き出す場合も上記同様に、ワイヤ32はワイヤ支持ガイド36の先端側に一体的に支持され、ワイヤ支持ガイド36とともに移動しながら引き出される。
【0035】
ただしワイヤ支持ガイド36の支持部36a(螺旋部分)の内径と、ワイヤ32(アウタ32A)の外径との間には隙間があり、融通があるため、ワイヤ32の押し込み及び引き出しいずれの場合もワイヤ32側に強い力がかかったり、大きな抵抗が発生したりする場合は、ワイヤ32は支持部36aを滑り、上記抵抗等から逃げることができ、破損等は防止される。
【0036】
上記支持部36aの内径と、ワイヤ32の外径との間の隙間によって、ワイヤ32を中間部分において支持部36aに外側から巻き込み、支持部36aに簡単に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コンバインの平面図である。
【図2】脱穀部の側面概略断面図である。
【図3】穀粒タンクを取り外した状態において後部カバー部分を示す斜視図である。
【図4】カッタを作業姿勢に閉じた状態を示す要部平面図である。
【図5】カッタを開放姿勢に開いた状態を示す要部平面図である。
【図6】カッタ部分の右側面図である。
【符号の説明】
【0038】
9 カッタ
23 カッタケース(カッタ機枠)
29 切換板(切換装置)
31 操作レバー(操作具)
32 ワイヤ
36 ワイヤ支持ガイド(案内ガイド)
A 作業姿勢
B 開放姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排わらを切断処理するカッタ(9)と、搬送される排わらのカッタ(9)への供給と非供給とを切り換える切換装置(29)と、該切換装置(29)の操作を行う操作具(31)とを備え、上記カッタ(9)が、作業姿勢(A)と開放姿勢(B)とに開閉回動自在に装着され、上記切換装置(29)がカッタ(9)側に設けられ、前記操作具(31)と切換装置(29)とがワイヤ(32)を介して連結され、操作具(31)の操作に応じてワイヤ(32)によって切換装置(29)を切り換え作動させるコンバインにおいて、カッタ機枠(23)側に、カッタ(9)の開放姿勢(B)から作業姿勢(A)への姿勢変更の際に発生するワイヤ(32)の弛み部分を案内しながらワイヤ(32)をカッタ(9)の回動方向に押し込む案内ガイド(36)を設けたコンバイン。
【請求項2】
走行機体(1)の後方側に後部カバー(22)を設け、カッタ(9)を後部カバー(22)の後方に配置し、操作レバー(31)を後部カバー(22)の前方に配置し、後部カバー(22)にワイヤ(32)及び案内ガイド(36)を挿通状態で通過させる挿通部(38)を設け、案内ガイド(36)の後部カバー(22)より前方部分に、カッタ(9)の作業姿勢(A)への回動時に、案内ガイド(36)と一体的にワイヤ(32)を押し込み移動させるようにワイヤ(32)を支持する支持部(36A)を設けた請求項1のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−289024(P2007−289024A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118182(P2006−118182)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】