説明

コンバイン

【課題】小型化しても再脱穀された二番物の選別ロスを少なくしたコンバインを提供する。
【解決手段】 二番処理ケース80における脱穀装置5内に位置した放出口89より外周側に、遮断板90を、少なくとも揺動選別機構18による脱穀物の搬送方向下流側を覆うように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取られた穀稈を脱穀して、該脱穀物から精粒を選別・収集するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインの走行機体には、フィードチェーンにて挟持搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、当該扱胴の下方に配置された揺動選別機構及び風選別機構とを有する脱穀装置が搭載されている。脱穀装置の一側部には、一番物(脱穀後の精粒)搬送用の揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒と、二番物(枝梗付き穀粒や穂切れ粒等)搬送用の還元コンベヤを内蔵した還元筒とが設けられている。この還元筒の終端部と前記脱穀装置の一側部のうち揺動選別機構の上方箇所とは、揺動選別機構による脱穀物の搬送方向と平面視で交差する方向に延びる軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵された二番処理ケースを介して連通している。脱穀後の藁屑は、風選別機構からの選別風等にて、脱穀装置の後部に設けられた排出口から機外に排出される(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2003−92919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年は脱穀装置の選別性能向上の要請だけでなく、脱穀装置ひいてはコンバインの小型化の要請も高まっている。かかる要請に対応する一方策としては、例えば特許文献1に記載のコンバインにおいて、送塵口二番処理胴をなくし脱穀装置の前後長さ(前記搬送方向に沿った長さ)を短くすることが挙げられる。
【0004】
しかし、ただ単に上記構成を採用しただけでは、二番処理ケースにおける脱穀装置内に位置した放出口と脱穀装置の排出口との前後距離が短くなるため、せっかく二番処理ケースを経由して再脱穀された精粒が、二番処理胴の回転にて形成される風や風選別機構からの選別風等の影響で藁屑と共に機外に排出され易くなる。そうすると、再脱穀された二番物の選別ロスが増大すると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、小型化しても再脱穀された二番物の選別ロスを少なくしたコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、走行機体に、フィードチェーンにて挟持搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、当該扱胴の下方に配置された揺動選別機構及び風選別機構とを有する脱穀装置が備えられている一方、前記脱穀装置の一側部には、二番物搬送用の還元コンベヤが内蔵された還元筒が設けられ、この還元筒の終端部と前記脱穀装置の一側部のうち前記揺動選別機構の上方箇所とを、前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向と平面視で交差する方向に延びる軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵された二番処理ケースを介して連通させているコンバインであって、前記二番処理ケースにおける前記脱穀装置内に位置した放出口より外周側には、遮断板が、少なくとも前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向下流側を覆うように設けられているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記遮断板は、側面視で前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態に形成されているというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、前記遮断板は前記二番処理ケースにおける前記放出口側の端部に一体的に連設され、前記二番処理ケースは、前記脱穀装置の一側部のうち前記揺動選別機構の上方箇所に形成された嵌合穴に嵌め込み、前記脱穀装置の一側部に対して締結されているというものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、還元筒の終端部と脱穀装置の一側部のうち揺動選別機構の上方箇所とを、前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向と平面視で交差する方向に延びる軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵された二番処理ケースを介して連通させているので、前記還元筒の終端部から前記二番処理ケース内に送り込まれた二番物は、前記二番処理胴の回転にて再脱穀されたのち、前記二番処理ケースの放出口から前記脱穀装置内に向けて放出される。
【0010】
請求項1の発明によると、前記二番処理ケースにおける前記脱穀装置内に位置した放出口より外周側には、遮断板が、少なくとも前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向下流側を覆うように設けられているので、前記二番処理ケース内で再脱穀された二番物は、前記二番処理胴の回転にて形成される風等の影響で、前記二番処理ケースの前記放出口から前記揺動選別機構による二番物の搬送方向下流側に移動しようとしても、前記遮断板の存在にてその移動を遮られ、前記揺動選別機構上に落下することになる。
【0011】
これにより、前記二番処理ケース内で再脱穀された二番物のほとんどは、スムーズに前記揺動選別機構上に落下して、前記揺動選別機構及び前記風選別機構にて再選別を受けることができる。従って、前記脱穀装置ひいてはコンバインを小型化した場合においても、再脱穀後の二番物に対する前記揺動選別機構及び前記風選別機構の選別機能が効果的に発揮され、藁屑と共に再脱穀後の精粒を機外に排出してしまうという選別ロスを少なくできるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の発明によると、前記遮断板は、側面視で前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態に形成されているので、脱穀後の二番物を前記二番処理ケースから前記脱穀装置内に放出する際に、前記二番処理胴の回転により、前記二番物を、前記放出口の周囲に無造作に飛散させることなく、前記遮断板に沿わせて前記揺動選別機構の前記搬送方向上流側にスムーズに案内する(落下させる)ことができる。
【0013】
従って、再脱穀後の二番物が前記揺動選別機構上を移動する距離は十分に確保され、前記揺動選別機構及び前記風選別機構の選別性能が向上するという効果を奏する。
【0014】
請求項3の発明によると、前記遮断板は前記二番処理ケースにおける前記放出口側の端部に一体的に連設され、前記二番処理ケースは、前記脱穀装置の一側部のうち前記揺動選別機構の上方箇所に形成された嵌合穴に嵌め込み、前記脱穀装置の一側部に締結されているので、前記遮断板付きの前記二番処理ケースを前記脱穀装置に取り付ける作業が至極簡単である。その上、前記二番処理ケースと前記遮断板とが一度に前記脱穀装置に取り付けられるので、前記遮断板を前記二番処理ケースとは別体に構成した場合に比べて、取り付け作業の手間を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図9)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの正面図、図4は脱穀装置の側面断面図、図5はコンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図、図6は脱穀装置の正面断面図、図7は脱穀装置における右側部付近の平面断面図、図8は脱穀装置に対する二番処理ケースの配置態様を示す斜視図、図9は揚穀筒と還元筒との配置関係を示す斜視図である。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
はじめに、図1〜図4を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。
【0017】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。穀粒タンク7は、走行機体1の後部に設けられた縦軸(実施形態では後述する排出オーガ8の縦オーガ筒9、図1及び図2参照)回りに水平回動可能に構成されている。刈取前処理装置3と穀粒タンク7との間には、操向レバーや運転座席等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されている。
【0018】
刈取前処理装置3には、下部フレームの下方に、バリカン式の刈刃装置12が設けられている。下部フレームの前方には、3条分の穀稈引起装置13が配置されている。穀稈引起装置13とフィードチェーン6の前端部との間には、穀稈搬送装置14が配置されている。穀稈引起装置13の下部前方には分草体15が突設されている。
【0019】
脱穀装置5は、扱室16内に配置された穀稈脱穀用の扱胴17と、扱室16の下方に配置された揺動選別機構18及び風選別機構19とを備えている。扱胴16の回転軸20(図4〜図6参照)はフィードチェーン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。脱穀装置5の下部には、両選別機構18,19にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物が集まる一番受け樋21と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物が集まる二番受け樋22とが設けられている。本実施形態の両受け樋21,22は、走行機体1の進行方向前側から一番受け樋21、二番受け樋22の順で、側面視において走行クローラ2,2の後部上方に横設されている。
【0020】
刈取前処理装置3から搬送された穀稈の根元部はフィードチェーン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先部が扱室16内の扱胴17にて脱穀される。
【0021】
揺動選別機構18は、扱胴17の下方に張設された扱網23、前後一対のフィードパン24,25及びチャフシーブ26等による脱穀物の搖動選別を行うためのものである。風選別機構19は、フィードパン24,25群の下方に設けられた唐箕ファン27による脱穀物の風選別を行うためのものである。
【0022】
扱胴17にて脱穀され扱網23から漏れ落ちた脱穀物は、扱網23の下方で前後揺動する前後一対のフィードパン24,25上に落下して揺動選別をされながら、後方のチャフシーブ26に送られる。このとき、フィードパン24,25やチャフシーブ26上の脱穀物は唐箕ファン27から後ろ向きに流れる選別風を受ける。かかる揺動選別と風選別との相互作用により、脱穀物は穀粒と藁屑とに分離される。
【0023】
穀粒のうち精粒等の一番物は、チャフシーブ26の下方に設けられたグレンシーブ28を通過して、流穀板等に案内されながら一番受け樋21内に集められる。枝梗付き穀粒等の二番物は、グレンシーブ28を通り抜けできずに、一番受け樋21の後方にある二番受け樋22に集められる。藁屑は、脱穀装置5の後部に配置された吸引ファン29に吸い込まれたのち、脱穀装置5の後部に設けられた排出口30から機外へ排出される。
【0024】
一番受け樋21には、これに沿う横方向に一番物を搬送する一番コンベヤ31が内装されている。二番受け樋22には、これに沿った横方向に二番物を搬送する二番コンベヤ32が内装されている。
【0025】
一番受け樋21のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5a(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒33が連通接続されている。二番受け樋22のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5aから外向きに突出した終端部には、環状の取り付け座76(図7参照)を介して、揚穀筒33と交差して前後方向に延びる還元筒34が連通接続されている。従って、揚穀筒33及び還元筒34は脱穀装置5と穀粒タンク7との間に位置している。
【0026】
本実施形態では、揚穀筒33と還元筒34とが互いに干渉しないように、脱穀装置5の一側壁5aに近い側に揚穀筒33が配置され、穀粒タンク7に近い側(脱穀装置5の一側壁5aから遠い側)に還元筒34が配置されている(図6、図7及び図9参照)。
【0027】
揚穀筒33内には、一番物を穀粒タンク7に向けて運ぶための揚穀コンベヤ35が設けられている。還元筒34内には、二番物を揺動選別機構18に向けて運ぶための還元コンベヤ36が設けられている。
【0028】
揚穀筒33の終端部(上端部)は、穀粒タンク7を脱穀装置5に近接するように水平回動させた作業姿勢のときに、穀粒タンク7における脱穀装置5寄りの一側部(実施形態では左側部)に形成された受け入れ口(図示せず)に連通するように構成されている。
【0029】
還元筒34の終端部(前端部)と、脱穀装置5の一側壁5a(実施形態では右側壁)のうち第1フィードパン24の上方箇所とは、二番物を再脱穀する二番処理胴81が内蔵された二番処理ケース80を介して連通している。
【0030】
一番受け樋21に集められた一番物は、一番コンベヤ31及び揚穀コンベヤ35を介して穀粒タンク7に集積される。穀粒タンク7内の一番物は、排出オーガ8を介して機外(例えばトラックの荷台等)に搬出される。二番受け樋22に集められた二番物は、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36及び二番処理胴81を介して、脱穀装置5内の第1フィードパン24上に戻され再選別される。
【0031】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン37に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ38(図5参照)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0032】
次に、図5を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0033】
エンジン11の動力は、該エンジン11に突設された出力軸41から、左右両走行クローラ2,2を駆動させる走行ミッション装置42、脱穀装置5及び刈取前処理装置3、並びに排出オーガ8という3つの方向に分岐して伝達される。
【0034】
走行ミッション装置42は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる走行用HST式変速機構43と、同じく油圧ポンプ及び油圧モータからなる旋回用HST式変速機構44とを備えている。エンジン11の出力軸41から走行ミッション装置42に向かう分岐動力は、走行用HST式変速機構43の走行用ポンプ軸45に伝達され、この走行用ポンプ軸45から旋回用HST式変速機構44の旋回用ポンプ軸46に動力伝達される。
【0035】
走行用及び旋回用のいずれのHST式変速機構43,44においても、ポンプ軸45,46に伝達された動力にて、油圧ポンプから油圧モータに向けて圧油が適宜送り込まれる。そして、運転部10に設けられた操向レバーの操作量に応じて油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度を調節することにより、油圧モータへの圧油の吐出方向及び吐出量が変更され、走行用又は旋回用モータ軸(図示せず)の回転方向及び回転数、ひいては左右の走行クローラ2,2の駆動速度及び駆動方向が任意に調節される。
【0036】
エンジン11の出力軸41から排出オーガ8への分岐動力は、タンク入力軸47を介して、穀粒タンク7内の底コンベヤ48及び排出オーガ8における縦オーガ筒9内の縦コンベヤ49に動力伝達され、次いで、受け継ぎスクリュー50を介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ51に動力伝達される。
【0037】
エンジン11の出力軸41から脱穀装置5及び刈取前処理装置3に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ52を介して唐箕ファン27の唐箕軸53に伝達され、この唐箕軸53から2つの方向に分岐して動力伝達される。
【0038】
唐箕軸53からの動力の一方は、一番コンベヤ31及び揚穀コンベヤ35、二番コンベヤ32及び還元コンベヤ36、吸引ファン29の吸引軸54、並びに排稈カッタ38に動力伝達される。
【0039】
唐箕軸53からの他の動力は、扱胴入力軸55を介して刈取前処理装置3、扱胴17、及び二番処理胴81という更に3つの方向に分岐して伝達される。
【0040】
扱胴入力軸55から刈取前処理装置3への分岐動力は一旦刈取変速機構56に伝達され、その一部が揺動軸57及びフィードチェーン軸58を経て、フィードチェーン6の前端に動力伝達される。残りの分岐動力は刈取軸59から刈取クラッチ60を介して刈取入力軸61に伝達され、刈取入力軸61から刈取前処理装置3の各部に動力伝達される。
【0041】
本実施形態では、刈取入力軸61に伝達された動力は、縦伝動軸62を介して横伝動軸63に伝達され、次いで、横伝動軸63から、3つの引起伝動軸64と刈刃駆動軸65とに動力伝達される。各引起伝動軸64に伝達された動力は、引起スプロケット軸66及びこれに固定された引起スプロケット67を介して、穀稈引起装置13の各引起タイン(図示せず)を駆動させる。刈刃駆動軸65に伝達された動力は、刈刃装置12を駆動させることになる。
【0042】
左右の引起伝動軸64からは、隣接する引起伝動軸64,64の間に配置された下部搬送駆動軸68にも動力が分岐して伝達される。左下部搬送駆動軸68に伝達された動力は、これに固定された左駆動スプロケット69を介して、穀稈搬送装置14の左下部搬送チェーン70、穀稈引起装置13における左側のスターホイル71及び掻き込みベルト72を駆動させる。右下部搬送駆動軸68に伝達された動力は、これに固定された右駆動スプロケット69を介して、穀稈搬送装置14の右下部搬送チェーン70、穀稈引起装置13における右側と中央とのスターホイル71及び掻き込みベルト72を駆動させる。
【0043】
また、刈取入力軸61に伝達された動力は、縦軸73を経由して、穀稈搬送装置14の縦搬送チェーン、上部搬送タイン(共に図示せず)、及び穂先搬送タイン74にも分岐して伝達される。
【0044】
一方、扱胴入力軸55から扱胴17に向かう分岐動力は、扱胴17の回転軸20、及び排稈チェーン37に伝達される。扱胴入力軸55から二番処理胴81に向かう分岐動力は、処理胴入力軸75から、ベルト77及びプーリ78伝動により二番処理胴81の回転軸82に伝達される(図5、図7及び図9参照)。
【0045】
次に、図6〜図9を参照しながら、脱穀装置と二番処理ケースとの連結構造について説明する。
【0046】
還元筒34の終端部と、脱穀装置5の一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所とを連通接続する二番処理ケース80は、横長筒状のものである。図6及び図7に示すように、二番処理ケース80は、脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所に形成された嵌合穴85に嵌め込んで、脱穀装置5の内外に跨るように配置されている。この場合、二番処理ケース80の軸線80aは、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと平面視で交差する方向(横方向)に延びている(図7参照)。
【0047】
二番処理ケース80のうち脱穀装置5より外側に位置する側端部は蓋板84で塞がれている。また、二番処理ケース80における脱穀装置5より外側の外周上部には、上向きに開口する投入口(図示せず)が形成されている。この投入口に対して還元筒34の終端部が連通接続されている。この構成により、還元コンベヤ36にて還元筒34の終端部まで運ばれた二番物は二番処理ケース80内にスムーズに落下することになる。
【0048】
二番処理ケース80のうち脱穀装置5の内部に位置する側端部には、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと平面視で交差する方向(横方向)に開口する放出口89を備えている。そして、かかる放出口89より外周側に、少なくとも第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wの下流側を覆う遮断板90が設けられている。この遮断板90は、二番処理胴81の回転にて形成される風等の影響で、再脱穀後の二番物が二番処理ケース80の放出口89から前記搬送方向Wの下流側に流れることを遮るためのものである。
【0049】
本実施形態では、遮断板90は二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部から前記搬送方向Wに平面視で交差する方向(横方向)に延出している。すなわち、遮断板90は二番処理ケース80における放出口89側の側端部(放出口89の周縁部)に一体的に連設されている。
【0050】
また、脱穀装置5内から遮断板90を見ると、遮断板90は第1フィードパン24における前記搬送方向Wの上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態となっている。特に、本実施形態における遮断板90の側面視形状は、放出口89の外周をほぼ囲うようにC字状に形成されている(図6〜図8参照)。換言すると、遮断板90の側面視形状は、二番処理胴81の回転方向R(詳細は後述する)に沿った円弧状となっている。遮断板90における周方向の両縁部間には、二番処理ケース80の内部を第1フィードパン24の前部表面に臨ませるための切欠き部91が、第1フィードパン24における前記搬送方向Wの上流側(前方)に向けて斜め下向きに開口している。本実施形態の遮断板90は、側面視において放出口89の外周のうち切欠き部91を除く270°前後の範囲を囲っている。
【0051】
さらに、本実施形態では、二番処理ケース80における放出口89側の側端部(遮断板90を延出した側)が、脱穀装置5の一側壁5aに形成された嵌合穴85に対して外側から嵌め込まれている。そして、二番処理ケース80は脱穀装置5に対して着脱可能に締結されている。この場合、二番処理ケース80の外周面に形成されたフランジ86を脱穀装置5の一側壁5aに当接させ、フランジ86の外面側(脱穀装置5と反対側に位置する端面側)から脱穀装置5の一側壁5aに向けて取り付けボルト87をねじ込んでいる。
【0052】
二番処理ケース80の内部には、二番物を再脱穀するための二番処理胴81が設けられている。二番処理胴81は、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと交差する方向(扱胴17の回転軸20と交差する方向)に延びる回転軸82を備えている。二番処理胴81はその回転軸82回りに回転可能に構成されている。二番処理胴81の回転方向Rは図8で反時計回りとなるように設定されている。二番処理胴81の外周面には多数の回転歯83が半径方向外向きに突設されている一方、二番処理ケース80の内周面には複数のツースバー88(図7参照)が半径内向きに突設されている。回転歯83とツースバー88とは、二番処理胴81をその回転軸82回りに回転させたときに互いに干渉しない位置関係となるように設定されている。
【0053】
本実施形態では、二番処理胴81における回転軸82の一端部は、蓋板84に対して回転可能に軸支されている。回転軸82のうち蓋板84から外向きに突出する部分には、動力伝達用のプーリ78が固着されている。回転軸82の他端部は、遮断板90の内周側にボルト締めにて固定された支持アーム93に対して回転可能に軸支されている。すなわち、二番処理胴81の回転軸82は、蓋板84と支持アーム93との間に両持ち梁状に架け渡された状態で安定的に支持されている。
【0054】
また、前述の通り、回転軸82の他端部が遮断板90の内周側に固定された支持アーム93に対して回転可能に軸支される構成なので、二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部から遮断板90が延出する長さ分だけ、二番処理胴81の回転軸82の長さや、二番処理ケース80全体としての軸線80a方向の長さを長くすることができる。これにより、二番処理胴81による二番物の再脱穀機能の向上を図ることができる。
【0055】
脱穀装置5における一側壁5aの内面のうち二番処理ケース80の上方箇所には、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに突出する庇状部材92が設けられている。庇状部材92は、平面視において二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部(遮断板90を含む)のほぼ全体を覆い隠している。この庇状部材92の存在により、二番処理ケース80における脱穀装置5内への突出部分上に脱穀物や塵埃が堆積するのを防止している。庇状部材92自身は、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに傾斜しているので、庇状部材92の傾斜面に載ろうとした脱穀物や塵埃のほとんどは、第1フィードパン24上に滑り落ちることになる。
【0056】
なお、本実施形態の庇状部材92は、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに傾斜すると共に、後方斜め下向きにも傾斜している。かかる傾斜により、庇状部材92に向けて飛んできた脱穀物を第1フィードパン24の後部に向けて落下させて、第1フィードパン24上に落下する脱穀物の分散化を図っている。
【0057】
以上の構成において、還元筒34の終端部から二番処理ケース80内に送り込まれた二番物は、二番処理胴81の回転により、二番処理胴81の回転歯83と二番処理ケース80内のツースバー88とで再脱穀されたのち、二番処理ケース80の放出口89から脱穀装置5内に向けて放出される。
【0058】
この場合、二番処理ケース80における脱穀装置5内に位置した放出口89より外周側に、少なくとも第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wの下流側を覆う遮断板90が設けられているので、二番処理ケース80内で再脱穀された二番物(精粒と藁屑)は、二番処理胴81の回転にて形成される風や風選別機構19による選別風等の影響で、二番処理ケース80の放出口89から第1フィードパン24による二番物の搬送方向Wの下流側に移動しようとしても、遮断板90の存在にてその移動を遮られ、第1フィードパン24上に落下することになる。
【0059】
しかも、本実施形態の遮断板90は二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部から前記搬送方向Wに平面視で交差する方向に延出しているので、再脱穀後の二番物を第1フィードパン24の中央に近い位置に送り込む(案内する)ことができる。
【0060】
これにより、二番処理ケース80内で再脱穀された二番物のほとんどは、スムーズに第1フィードパン24における中央寄りの表面に落下して、揺動選別機構18及び風選別機構19にて再選別を受けることができる。従って、脱穀装置5ひいてはコンバインを小型化した場合においても、再脱穀後の二番物に対する揺動選別機構18及び風選別機構19の選別機能を効果的に発揮して、藁屑と共に再脱穀後の精粒を機外に排出してしまうという選別ロスを少なくすることができる。
【0061】
また、遮断板90は第1フィードパン24の前記搬送方向W上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態となっているので、再脱穀後の二番物を二番処理ケース80から放出する際に、当該二番物を、放出口89の周囲に無造作に飛散させることなく、遮断板90における円弧状の内面に沿わせて第1フィードパン24の前記搬送方向W上流側にスムーズに案内する(落下させる)ことができる。
【0062】
特に、本実施形態の遮断板90は、放出口89の外周のうち切欠き部91を除く270°前後の範囲を囲う側面視C字状に形成されているので、遮断板90による第1フィードパン24への二番物案内機能が極めて優れている。
【0063】
従って、再脱穀後の二番物が第1フィードパン24上を移動する距離は十分に確保されることになり、揺動選別機構18及び風選別機構19の選別性能が向上するのである。なお、本実施形態の遮断板90は側面視において放出口89の外周のうち切欠き部91を除く270°前後の範囲を囲っているので、二番処理胴81の回転方向Rが図8において時計回り又は反時計回りのいずれであっても、遮断板90の切欠き部91から第1フィードパン24の前部表面に向けて二番物を案内する機能はほとんど変わらない。
【0064】
さらに、二番処理ケース80及び遮断板90を脱穀装置5に取り付ける際には、二番処理ケース80における放出口89側の側端部(遮断板9を含む)を、脱穀装置5の一側壁5aに形成された嵌合穴85に嵌め込んだのち、二番処理ケース80におけるフランジ86の外面側から脱穀装置5の一側壁5aに向けて取り付けボルト87をねじ込めばよいので、取り付け作業が至極簡単である。その上、二番処理ケース80と遮断板90とを一度に脱穀装置5に取り付けることができるので、遮断板90を二番処理ケース80とは別体に構成した場合に比べて、取り付け作業の手間を軽減することができる(取り付け作業の効率化を図ることができる)。
【0065】
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば遮断板は、二番処理ケース80における放出口89側の側端部に一体的に連設したものに限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、二番処理ケース80とは別体に構成した遮断板を二番処理ケース80における放出口89側の側端部に取り付ける構成でもよいし、二番処理ケース80とは別体に構成した遮断板を、二番処理ケース80の放出口89より外周側に取り付ける構成でもよい。但し、いずれの場合も、少なくとも二番処理ケース80の放出口89より後方(揺動選別機構18による脱穀物の搬送方向W下流側)が遮断板にて覆われるようにしなければならない。
【0066】
また、遮断板90の形態についても、前述の実施形態のものに限らず、矩形板状や側面視V字状、側面視U字状など、様々な形態を採用できることはいうまでもない。要するに、遮断板90は、二番処理ケース80から放出される二番物がそのまま脱穀装置5の後方に流れて排出口30から機外へ排出されるのを遮るものであればよく、特にその形状は問わないのである。
【0067】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】脱穀装置の側面断面図である。
【図5】コンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図である。
【図6】脱穀装置の正面断面図である。
【図7】脱穀装置における右側部付近の平面断面図である。
【図8】脱穀装置に対する二番処理ケースの配置態様を示す斜視図である。
【図9】揚穀筒と還元筒との配置関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1 走行機体
2 走行クローラ
5 脱穀装置
5a 一側壁
6 フィードチェーン
17 扱胴
18 揺動選別機構
19 風選別機構
24 第1フィードパン
25 第2フィードパン
26 チャフシーブ
27 唐箕ファン
28 グレンシーブ
30 排出口
31 一番コンベヤ
32 二番コンベヤ
33 揚穀筒
34 還元筒
35 揚穀コンベヤ
36 還元コンベヤ
80 二番処理ケース
81 二番処理胴
82 二番処理胴の回転軸
90 遮断板
91 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、フィードチェーンにて挟持搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、当該扱胴の下方に配置された揺動選別機構及び風選別機構とを有する脱穀装置が備えられている一方、前記脱穀装置の一側部には、二番物搬送用の還元コンベヤが内蔵された還元筒が設けられ、この還元筒の終端部と前記脱穀装置の一側部のうち前記揺動選別機構の上方箇所とを、前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向と平面視で交差する方向に延びる軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵された二番処理ケースを介して連通させているコンバインであって、
前記二番処理ケースにおける前記脱穀装置内に位置した放出口より外周側には、遮断板が、少なくとも前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向下流側を覆うように設けられていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記遮断板は、側面視で前記揺動選別機構による脱穀物の搬送方向上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記遮断板は前記二番処理ケースにおける前記放出口側の端部に一体的に連設され、
前記二番処理ケースは、前記脱穀装置の一側部のうち前記揺動選別機構の上方箇所に形成された嵌合穴に嵌め込み、前記脱穀装置の一側部に対して締結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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