説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて、サイドコラムを各操作部の使用頻度に応じた操作部構成とすることにより、操作性を向上する。
【解決手段】シート19の左側に設けられたサイドコラム20上に、各操作レバー35・36・37・38等を配置したサイドパネル22を備えるコンバイン1において、前記サイドコラム20の上面の、進行方向左側及び前側に壁部22を形成し、該壁部22の後部壁部22の上部に分草杆17の操作レバー31を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのサイドコラム構成、詳しくは、サイドコラム上の操作レバーの配置構成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲の刈り取り・脱穀・藁の処理(裁断等)の作業を同時に行う農業機械として、コンバインは公知である。これら一連の作業は、コンバイン本体で行われる。操縦者は、コンバインに乗って運転をしたまま、これらの作業を操作する必要がある。そのため、刈り取り・脱穀・排藁処理の各操作部は、運転席の左側の設けられるサイドコラム上に配置されている。
【0003】
また、コンバインの刈取り部に備えられる分草杆(サイドデバイダー)も公知である。分草杆は、刈り取り部の左右側面にそれぞれ備えられている。分草杆は、作業時には張り出されて(広げて)使用される。分草杆は、刈り取る稲と未刈り取りの稲とのもつれを分離し、未刈り取りの稲がコンバイン本体に巻き込まれることを防止する装置である。
さらに、例えば、特許文献1で開示されるように、運転席から遠隔操作できる分草杆も公知である。
【特許文献1】特開2006−42650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コンバインは、高効率化、コンパクト化されつつある。しかし、同時に、運転操作部の居住性及び操作性の向上も求められている。現在、コンバイン各装置の操作は、ほとんど運転席に居ながらにして行うことができる。
しかし、運転中に常に操作を必要とする装置もあれば、運転中であってもほとんど操作を必要としない装置もある。例えば、上記分草杆は、通常、作業開始と終了の際に操作されるのみの装置である。
そこで、解決しようとする課題は、サイドコラムを各操作部の使用頻度に応じた操作部構成とし、コンバインの操作性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、運転席の左側に設けられたサイドコラム上に、操作レバー等を配置したサイドパネルを備えるコンバインにおいて、前記サイドコラムの上面の、進行方向左側及び前側に壁部を形成し、該壁部の後部壁部の上部に分草杆の操作レバーを配設するものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載のコンバインにおいて、前記操作レバーをガイドするガイド孔に複数のノッチを形成するものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1記載のコンバインにおいて、前記サイドコラム及び前記サイドパネルは、一体成形による樹脂部品とするものである。
【0009】
請求項4においては、請求項1記載のコンバインにおいて、前記操作レバーは、壁部に設けられる把持部の後方に配設されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、コンバインのサイドコラムにおいて、分草杆の操作部以外の各操作部を、ゆとりを持って配置することができる。すなわち、コンバインの操作性を向上できる。また、サイドコラム後部上の使用されていなかった空間を有効に利用できる。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加え、分草杆の操作性を向上できる。また、簡単な構成で分草杆の張り出し量を調整できる。
【0013】
請求項3においては、請求項1の効果に加え、コンバインの部品点数を削減できる。
【0014】
請求項4においては、請求項1の効果に加え、オペレーターは、左の分草杆を目視した際に、自然に分草杆レバーを視認できる。また、分草杆レバーのみを高い位置とすることで、分草杆レバーとその他レバーとの誤操作を防止できる。すなわち、方向分草杆の操作性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図、図2は同じく平面図、図3は本発明に係わるサイドコラムの平面図である。図4は同じく斜視図、図5は同じく別角度からの斜視図である。
【0016】
まず、図1及び図2を用いて、コンバインの全体構成について説明する。なお、説明を解り易くするために、以後、コンバイン1の進行方向を前側として説明する。
図1、図2に示すように、コンバイン1は機体フレーム2を左右のクローラ式走行装置3・3で支持し、両クローラ式走行装置3・3を機体フレーム2上に搭載したエンジンで駆動させることにより、前進または後進走行可能に構成されている。機体フレーム2の前部には穀稈を刈り取って機体後方へ搬送する刈取部4が昇降可能に設けられ、機体フレーム2の左側部上には刈取部4からの刈取穀稈を脱穀する脱穀部5と、該脱穀部5で脱穀された穀粒を選別する選別部6とが上下に配設されている。脱穀部5の後方には、脱穀部5で脱穀された穀稈を排藁として機外へ排出する排藁処理部7が設けられている。
【0017】
また、前記機体フレーム2の右側後部上には選別部6から揚穀筒で搬送される穀粒を貯溜するグレンタンク8が設けられ、該グレンタンク8の後方から上方にかけてグレンタンク8内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ9が配設されている。グレンタンク8の前方で機体フレーム2の右側前部上には操向ハンドル11や後述する排出クラッチレバーを含む種々の操作レバーなどからなる操作装置や、シート19を備える運転操作部15が設けられ、該運転操作部15の下方にエンジンやトランスミッションが配設されている。
【0018】
次に、図3乃至図5を用いて、本発明に係わるサイドコラム20について説明する。
図1及び図2に示すように、サイドコラム20は、シート19の左側に配置されている。
図3乃至図5に示すように、サイドコラム20は、大きくは、サイドパネル21とサイドコラム側壁部22とを一体成形した合成樹脂にて形成されている。ここで、サイドパネル21は平面にて、サイドコラム側壁部22は中空山型にて形成されている。
【0019】
サイドパネル21は、サイドコラム20上面の右側すなわちシート19左側近傍に位置する平坦なパネルである。図2示すように、サイドパネル21上には、主変速レバー35・副変速レバー36・作業切り替えクラッチレバー37・刈り取り変速レバー38が配置されている。なお、図3乃至図5においては、後に説明するサイドコラム側壁部22をわかり易くするために、各操作レバー35・36・37・38のガイド孔35a・36a・37a・38aのみ記している。
主変速レバー35は、コンバイン1本体の前進速度と後進速度を変速操作するレバーである。副変速レバー36は、作業速度と路上走行速度を切り換えるレバーである。作業切り替えクラッチレバー37は、刈取部4又は脱穀部5の駆動伝達をON/OFF切り換え操作するレバーである。刈り取り変速レバー38は、刈取部4の掻き込み・搬送速度を変速操作するレバーである。
このような構成とすることで、オペレーターは、左手でたやすく各操作レバー35・36・37・38を操作できる。また、これらの各操作レバー35・36・37・38は、コンバイン1運転中において、とりわけ使用頻度の高いレバーである。
【0020】
サイドコラム側壁部22は、サイドコラム20の左側及び前側において、平面視略「く」字状(またはL字状)に連続して形成される側壁である。また、サイドコラム側壁部22は、操作スイッチ23、表示パネル50、分草杆操作レバー31が配置され、把持部24が形成されている。以下に、サイドコラム側壁部22の形状について、後方から説明する。
【0021】
まず、サイドコラム側壁部22に設けられる分草杆操作レバー31について説明する。
サイドコラム側壁部22の後部上面には、分草杆操作レバー31が配置されている。分草杆操作レバー31は、刈取部4の左側下部に前後方向に配置した分草杆17を外側方への張出・収納を遠隔操作するレバーである。
該分草杆17は、刈取部4の左右両側の前端に配置する分草板の下側部よりそれぞれ斜め外後方へ延出され、左側のみ張出・収納可能としている。分草杆17は、刈り取る稲と未刈り取りの稲とを分離し、未刈り取りの稲がコンバイン1本体に巻き込まれることを防止する装置である。
同じく、サイドコラム側壁部22は、後部上面に水平面部を形成して分草杆ガイド孔32が開口されている。分草杆操作ガイド孔32は、分草杆操作レバー31の操作時にガイドして所望の位置に掛止するガイド孔である。また、分草杆操作ガイド孔32は、本実施例において、掛止するために3段のノッチ孔が形成されている。より具体的には、分草杆操作ガイド孔32は、分草杆17の収納位置と、作業位置(a)及び作業位置(b)の3段階の操作位置を示すノッチ形状とされている。なお、作業位置(a)及び作業位置(b)は、分草杆17の張り出し量の異なる操作状態である。
【0022】
分草杆操作ガイド孔32は、サイドコラム側壁部22自体が合成樹脂であるため、剛性が低い。そのため、分草杆操作レバー31を固定又は操作させる場合には、破損する可能性がある。
そこで、分草杆操作ガイド33が、サイドコラム側壁部22内部に設けられている(図4及び図5参照)。分草杆操作ガイド33は、サイドコラム側壁部22は中空山型にて形成されているため、その内部に設けることができる。この分草杆操作ガイド33は、金属等の剛性の高い材質とされている。分草杆操作ガイド33は、分草杆操作レバー31を確実に固定又は操作させることができる。
このような構成とすることで、分草杆操作レバー31操作時において、分草杆操作ガイド孔32に対して、分草杆操作レバー31の無理な負担が回避される。
【0023】
従来、コンバインにおいては、各装置の操作レバーは、サイドパネル21上に配置されていた。近年、コンバイン本体は、コンパクト化されつつある。しかし、同時に、運転席居住性及び操作性の向上が求められている。
一方、運転中に常に操作を必要とする装置もあれば、運転中であってもほとんど操作を必要としない装置もある。例えば、上記分草杆は、通常、作業開始と終了の際に操作されるのみの装置である。
本発明は、分草杆操作レバー31を、サイドパネル21に比較して手の届きにくい位置となるサイドコラム側壁部22上面に配置している。しかし、手の届きにくい位置にあっても、分草杆操作レバー31は運転中の使用頻度が低くオペレーターの操作性を妨げることはない。
また、オペレーターは、左の分草杆17を目視した際に、自然に分草杆操作レバー31を視認できる。
さらに、分草杆操作レバー31のみを高い位置とすることで、分草杆操作レバー31とその他各操作レバー35・36・37・38との誤操作を防止できる。すなわち、方向分草杆17の操作性を向上できる。
他方、このような構成とすることで、その他の各操作レバー35・36・37・38がゆとりを持ってサイドパネル21上に配置することができる。そのため、オペレーターは、運転中に使用頻度の高い各操作レバー35・36・37・38を誤認識することがない。このようにして、コンバイン1の操作性を向上している。
【0024】
次に、サイドコラム側壁部22に形成される操作パネル40及び把持部24について説明する。
サイドコラム側壁部22の前後中途部の上部に前後に長い貫通孔24aが、左右方向に開口され、その上部を把持部24とし、貫通孔24aの上部の把持部24には緩やかな溝部24bを前後に複数形成して、握り易く滑らないようにしている。貫通孔24aの下方側面をシート19側に下がる傾斜面として、平面視で所定範囲にわたって横方向に凹形状としている。
このような形状とすることで、コンバイン1運転時等で体を支える時に、オペレーターは、サイドコラム側壁部22の外側から貫通孔24aに手を差し込んで把持部24の溝部24bを把持できるようにしている。
このようにして、オペレーターの操作性、居住性を向上している。また、別部品としての把持部を製作する必要がない。このようにして、コンバイン1の部品コスト及び製造工数を削減できる。
【0025】
一方、凹形状のシート19側の傾斜面上には、こぎ深さ自動スイッチ41・こぎ深さ調整スイッチ42・ウィンカースイッチ43・作業灯スイッチ44等が配置される操作パネル40が設けられている。操作パネル40は、オペレーターがシート19に着座した状態で視認しやすいように、斜め上向きに設けられている。
このような構成とすることで、オペレーターは、把持部24で体を支えながら各操作スイッチ41・42・43・44を操作できる。すなわち、コンバイン1の操縦性を向上できる。
【0026】
他方、上記サイドコラム側壁部22の略後半部(左側)及び後述する張り出し部26は、後述する凹部25に比較して高く形成されている。
このような構成とすることで、コンバインの刈取部4からの塵が運転操作部15に侵入することを防止できる。
このようにして、オペレーターの居住性を向上できる。なお、サイドコラム側壁部22の左側は、刈取部4があるのみで、視認性は問題にならない。
また、張り出し部26には表示パネル50を配置するため、サイドコラム側壁部22を高く形成することで、表示パネル50の配置面積を大きくとることができる。つまり、面積の大きい表示パネル50を配置できる。
このようにして、コンバイン1の操作性を向上できる。なお、張り出し部26の前面は引起しケース(図示略)の背面であり、視認性は問題にならない。
【0027】
次に、サイドコラム側壁部22の平面視における屈曲部(左前上部、または、前上角部)に形成される凹部25について説明する。
サイドコラム側壁部22における、サイドコラム20の前左側において、サイドコラム側壁部22の高さを他よりも低い高さ形状として、正面視、及び、側面視において凹部25を設けている。サイドコラム側壁部22は、合成樹脂を断面視において中空山型形状として形成されているため、凹部25は緩やかな曲線にて形成されている。つまり、前記把持部24とサイドコラム側壁部22の前部に配置される表示パネル50との間の上面が低く略U字状に開放される凹部25を形成している。
【0028】
このような構成とすることで、オペレーターがシート19に着座した状態において、左前下方向の視認性を向上している。
すなわち、オペレーターがシート19に着座した状態では、左前下方向には、刈取部4の右端の分草板16が位置して視認できる。コンバイン1による作業時において、刈り取り位置が正確であるか否かは、刈取部4の右端の分草板16が所望の条間に位置しているか否かによって確認する。このため、分草板16の視認性は、コンバイン1の作業性に影響する。
つまり、オペレーターは、刈取作業中に、常に、刈取部4の右端の分草板16と刈取穀稈の株元を確認でき、正確な刈り取り作業を行うことができる。このようにして、コンバイン1の操作性を向上している。
【0029】
次に、サイドコラム側壁部22の前右側端における張り出し部26について説明する。
サイドコラム側壁部22の前部は、シート19側に向かって下がる傾斜面にて形成されている。サイドコラム20は運転操作部15におけるシート19及びその前部のステップの左側に立設され、サイドコラム側壁部22の前右側端はサイドコラム20の右側板28よりも右側に突出して張り出し部26が形成されている。つまり、張り出し部26は、サイドコラム側壁部22がサイドコラム20より延出される部分である。表示パネル50は、張り出し部26まで含めたサイドコラム側壁部22の前側全体の前傾斜面に配置されている。張り出し部26の右前下方は、切り欠いた形状とされている。つまり、張り出し部26の下方は空間である。そのため、サイドパネル21の右前側は、オペレーターにとって、足元空間27が確保されることになり、左足がサイドコラム側壁部22に当たることがない。
また、前記張り出し部26の後面はサイドパネル21から右前方へ伸びる斜めの面として、図2に示すように、平面視でステアリングコラムカバー29(図2参照)の後面の延長上に位置するように配設して、張り出し部26とステアリングコラムカバー29が連続的に配置される構成として、意匠性を高めている。
【0030】
このような構成とすることで、以下の効果を得ることができる。
まず、表示パネル50の配置に対して、張り出し部26まで含めたサイドコラム側壁部22に配置できるため、大きな面積を設けることができる。このようにして、コンバイン1の操作性を向上している。
次に、サイドコラム側壁部22は、張り出し部26を形成しつつも右前下方を切り欠いているため、オペレーターがシート19に着座した状態において、十分な足元空間27が得られる。このため、オペレーターは、十分な居住空間を得ることができる。また、コンバイン1の旋回時においてオペレーターの体が不安定になることがあっても、足元空間27によって左膝を支えることができる。さらに、オペレーターがシート19で立ち上がった状態において、足元空間27によって左膝を支えることができる。
このようにして、運転席の安全性及び居住性を向上している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明に係わるサイドコラムの平面図。
【図4】同じく斜視図。
【図5】同じく別角度からの斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 コンバイン
4 刈取部
16 分草板
17 分草杆
19 運転席
20 サイドコラム
21 サイドパネル
22 サイドコラム側壁部
25 凹部
26 張り出し部
27 足元空間
31 分草杆操作レバー
50 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の左側に設けられたサイドコラム上に、操作レバー等を配置したサイドパネルを備えるコンバインにおいて、
前記サイドコラムの上面の、進行方向左側及び前側に壁部を形成し、該壁部の後部壁部の上部に分草杆の操作レバーを配設することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1記載のコンバインにおいて、
前記操作レバーをガイドするガイド孔に複数のノッチを形成することを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1記載のコンバインにおいて、
前記サイドコラム及び前記サイドパネルは、一体成形による樹脂部品とすることを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項1記載のコンバインにおいて、
前記操作レバーは、壁部に設けられる把持部の後方に配設されることを特徴とするコンバイン。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−104388(P2008−104388A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289280(P2006−289280)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】