説明

コンバイン

【課題】 機体フレームに脱穀装置と穀粒回収部を並列して搭載支持するとともに、機体フレームの前部に刈取り部を上下揺動可能に連結支持し、機体フレームの下方に左右一対のクローラ走行装置を装備したコンバインにおいて、機体フレームに支持させる各部の性能および能力を低下させることなく機体の安定性を確保することができるコンバインを提供する。
【解決手段】 機体フレーム2に前後方向に向かう左右一対の主フレーム30を備え、左右の主フレーム30の前部に亘って前部横フレーム31を横架連結し、この前部横フレーム31に、刈取り部の基端を上下揺動可能に支持する基台14を設け、脱穀装置4の下端が前部横フレーム31の上面より低くなるように、脱穀装置4を主フレーム30に支持してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームに脱穀装置と穀粒回収部を並列して搭載支持するとともに、機体フレームの前部に刈取り部を上下揺動可能に連結支持し、機体フレームの下方に左右一対のクローラ走行装置を装備したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
機体フレームに脱穀装置と穀粒回収部を並列して搭載支持するとともに、機体フレームの前部に刈取り部を上下揺動可能に連結支持し、機体フレームの下方に左右一対のクローラ走行装置を装備したコンバインとしては、角パイプ材などで組み上げられた機体フレームの前部に、刈取り部の基端を上下揺動自在に支持する基台を立設するとともに、基台の後方において機体フレームに脱穀装置を搭載するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−83447号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば2条あるいは3条刈りを行う小型のコンバインにおいては、クローラ走行装置も小型で左右の踏み幅も小さいので、各部の小型化や軽量化を図ることで機体の安定性を得る努力が払われているのであるが、各部の性能および能力を低下させることなく小型軽量化を図るにも限度がある。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、機体構造に合理的な工夫を加えることで、各部の性能および能力を低下させることなく機体の安定性を確保することができるコンバインを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、機体フレームに脱穀装置と穀粒回収部を並列して搭載支持するとともに、機体フレームの前部に刈取り部を上下揺動可能に連結支持し、機体フレームの下方に左右一対のクローラ走行装置を装備したコンバインにおいて、
前記機体フレームに前後方向に向かう左右一対の主フレームを備え、左右の主フレームの前部に亘って前部横フレームを横架連結し、この前部横フレームに、前記刈取り部の基端を上下揺動可能に支持する基台を設け、前記脱穀装置の下端が前記前部横フレームの上面より低くなるように、脱穀装置を前記主フレームに支持してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、前部横フレームに任意の寸法の部材を利用することで、高さ、および、剛性の高い前部横フレームを構成することができ、刈取り部の重量負荷や刈取り走行時に刈取り部に作用する推進抵抗、などの大きい負荷を受ける基台を、高い強度をもって前部横フレームで支持することができる。
このように、前部横フレームを任意に背の高いものにしても、脱穀装置を前部横フレームの上面より低く配置することで、脱穀装置を無理に小型化することなく重心低く搭載することが可能となる。
【0007】
従って、第1の発明によると、各部の性能および能力を低下させることなく機体の安定性を確保することができるコンバインを提供することが可能となった。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記前部横フレームより後方の前後複数箇所において、左右の前記主フレームに亘って後部横フレームを横架連結し、この後部横フレームを前部横フレームより低く設定するとともに、前記後部横フレームに脱穀装置を搭載連結してあるものである。
【0009】
上記構成によると、フレーム搭載仕様の旧来の脱穀装置を低重心に搭載することができ、新たな仕様の脱穀装置を開発することなく、低コストで安定性の優れたコンバインを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図4に、自脱型のコンバインの全体がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体フレーム2の前部に刈取り部3が連結されるとともに、機体フレーム2に脱穀装置4と穀粒回収部5とが左右に並列して搭載され、この穀粒回収部5の前方に原動部6を備えた運転部7が配置された構造となっている。
【0011】
刈取り部3には前下がり傾斜姿勢の刈取り部フレーム10が備えられており、この刈取り部フレーム10に、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置11、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置12、引起し刈り取った穀稈を刈り幅中間に合流した後、脱穀装置6の機体左側外方に備えられたフィードチェーン8に横倒れ姿勢で送り込む穀稈搬送装置13、等が装備されている。
【0012】
刈取り部フレーム10の後端基部が、機体フレーム2の前端部に立設配備された基台14の上部に、横向きの支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されるとともに、刈取り部フレーム10と機体フレーム2との間に単動型の油圧シリンダ15が架設され、油圧シリンダ15の伸長作動によって刈取り部3が駆動上昇され、油圧シリンダ15の自由短縮作動によって刈取り部3が自重下降されるようになっている。
【0013】
図5に示すように、機体フレーム2の前部には、刈取り部3が刈取り作業高さ域まで自重下降されると刈取り部フレーム10に備えられた横向きロッド16を受け止めて弾性的に接当支持する弾性サスペンション機構17が備えられている。この弾性サスペンション機構17はコイルバネを初期圧縮して、刈取り部重量よりも少し小さい初期弾発力を持たせたものに構成されており、刈取り部3が弾性サスペンション機構17で受け止められることで、刈取り部重量の多くが相殺され、刈取り部3が小さい接地圧で接地するように構成されている。このように、刈取り部3を弾性サスペンション機構17に弾性支持させて自重下降させることで、刈取り部3が圃場の凹凸に接地追従して自動的に上下同して、所定の刈高さが維持されるようになっている。
【0014】
図3に示すように、前記原動部6は、箱形に形成されたボンネット18にエンジン9を収容配備して構成されており、ボンネット18の上に運転座席19が装備されている。運転座席19の前方に操縦塔20およびアーチ形の固定ハンドル21が立設されるとともに、運転座席19の機体内側にサイド操作パネル22が配備されて前記運転部7が構成されている。操縦塔20の右寄り箇所には操縦レバー23が十字揺動操作可能に立設されており、操縦レバー23の左右揺動操作によってレバー倒し方向への機体操向を行い、操縦レバー23の前方および後方への揺動操作によって、刈取り部3の下降および上昇操作を行うよう構成されている。
【0015】
サイド操作パネル22には、走行伝動系に備えられたい静油圧式無段変速装置(図示せず)にリンク連係された変速レバー24、エンジン9の調速機構(図示せず)にワイヤ連係されたアクセルレバー25、などの操作具が備えられるとともに、サイド操作パネル22の前部は、パネルタッチ式の各種操作スイッチやモニターランプ、等の電装機器26が備えられている。
【0016】
図12に示すように、前記エンジン9は、その出力軸9aが機体内方に向かうよう横向きに配置され、出力軸9aから取り出された動力の一部が、走行伝動系にベルト伝達されてクローラ走行装置1が駆動されるとともに、走行伝動系から分岐された動力が前記支点Pを経て刈取り部3の各部に伝達される。エンジン動力の他の一部が脱穀装置4、および、穀粒回収部5の穀粒搬出系に伝達されるようになっている。
【0017】
図5〜図7に示すように、機体フレーム2は、角パイプからなる左右一対の主フレーム30、主フレーム30の前端近くにおいて主フレーム30の上面に亘って横架連結された角パイプ製の前部横フレーム31、前部横フレーム31の後方箇所と主フレーム30の後端との前後2箇所において主フレーム30の上面に亘って横架連結された角パイプ製の後部横フレーム32a,32b、前部横フレーム31の機体右側への張り出し部位と前側の後部横フレーム32aの機体右側への張り出し部位とに亘って連結された運転部フレーム33、および、機体右側の主フレーム30の右横外方に張り出された穀粒回収部フレーム34、等によって構成されている。
【0018】
図5及び図6に示すように、後部横フレーム32a,32bの上面が、前部横フレーム
31の上面よりも低い位置となるように構成されている(前部横フレーム31の上面が、
後部横フレーム32a,32bの上面よりも高い位置となるように構成されている)。脱殻装置4の下端が、後部横フレーム32a,32bの上面に乗せ付けられてボルト連結されており、脱殻装置4の下端が前部横フレーム31の上面よりも低い位置に配置されている。
【0019】
この場合に、前部横フレーム31の下面と主フレーム30との間にスペーサを入れ込んで、前部横フレーム31の下面と主フレーム30とを連結することにより、前部横フレーム31の上面が、後部横フレーム32a,32bの上面よりも高い位置となるように構成してもよい。このように構成すれば、後部横フレーム32a,32b等と同じ断面形状を備えた素材を使用して、前部横フレーム31を構成することができる。
前述のスペーサを使用しなければ、前部横フレーム31を縦長の長方形状の断面を備え
た角パイプ状に構成して、前部横フレーム31を主フレーム30に直接に連結することに
より、前部横フレーム31の上面が、後部横フレーム32a,32bの上面よりも高い位置となるように構成してもよい。
【0020】
機体フレーム2における下方の前後2箇所において、山形に屈曲形成された板金構造の脚部35a,35bが左右の主フレーム30に亘って連結され、両脚部35a,35bの両端に亘ってクローラ走行装置1のトラックフレーム36が連結されている。
【0021】
図7に示すように、機体フレーム2の前端部にミッションケース37が連結され、ミッションケース37の下部から左右に延出された車軸ケース37aが、各トラックフレーム36の前端部に連結支持されている。各トラックフレーム36の前後複数箇所(この例では3箇所)に外転輪型の接地転輪38が片持ち状に軸支されるとともに、各トラックフレーム36の後端部に内転輪型のテンション輪39が前後位置調節可能に装備されている。前記車軸ケース37aに挿通支持された車軸40の外端に駆動スプロケット41が装備され、この駆動スプロケット41、複数の接地転輪38、および、テンション輪39に亘ってゴム製のクローラベルト42が巻回張設されて前記クローラ走行装置1が構成されている。
【0022】
図5および図8に示すように、後側の脚部35bの外側にはブラケット43が設けられて、このブラケット43に、クローラベルト42の内周面に摺接する硬質ゴム板製のスクレーパ44が脱着可能に取り付けられており、クローラベルト42の内周面に付着して回動する泥やワラ屑をスクレーパ44で掻き落として、トラックフレーム36に泥やワラ屑が堆積して走行負荷が増大することが抑制されている。
【0023】
図9,10に示すように、前記接地転輪38は支軸付きのローラアッシ45として先組みされて、トラックフレーム36から外向き片持ちに突設されたボス部46に軸支装着されるようになっている。前記ローラアッシ45は、椀型にプレス加工されて背中合わせに接合連結される一対のローラ素材47a,47b、これらの中心に挿通される支軸48、支軸48にストッパリング49を介して抜け出し不能に外嵌装着される一対のベアリング50、支軸48に外嵌圧入されて固定されるブッシュ51、内側のローラ素材47bの支軸挿通部に内嵌支持されて前記ブッシュ51の外周面に摺接するオイルシール52、両ローラ素材47a,47bの接合部内周とベアリング50との間に挟持装着される防水用の0リング53、等によって構成されている。このローラアッシ45を組み付けるに際しては、ローラアッシ45から突出する支軸48を前記ボス部46に外方から挿通した後、トラックフレーム36の内側から支軸48に大径頭部付きのボルト54を締め込むことで、支軸48をトラックフレーム36に固定することができる。
【0024】
前記ボス部46は、板金プレス材を溶接して前後にリブ46aを備えた角筒状に構成されており、トラックフレーム36に形成した角形の組付け孔55にボス部46の基部を貫通して溶接固定するとともに、リブ46aをトラックフレーム36の外面に当て付けて溶接固定することで、上下および前後方向への曲げ強度の高い片持ち状のボス部46が構成されるようになっている。
【0025】
図11に示すように、ボス部46の内面は支軸48にガタなく接する正方形に形成されるとともに、支軸48の外周適所につまみ加工された突起56がボス部46の内角空間に係入されることで、支軸48のボス部46に対する回り止めがなされている。
【0026】
刈取り部3の基端部を上下揺動可能に支持する前記基台14は板金構造に構成されて、前記前部横フレーム31に立設されている。この基台14の下部の前面に前記弾性サスペンション機構17が前上がりに傾斜した片持ち姿勢で装備されるとともに、基台14における運転部側の上部にはエンジン動力を脱穀装置4に中継伝達するための脱穀駆動ケース57が連結支持されている。
【0027】
脱穀駆動ケース57には横向きに入力軸58が備えられ、この入力軸58とエンジン9の出力軸9aとがベルト連動されるとともに、入力軸58と脱穀装置4の前部下方に横架された唐箕駆動軸59の右端とがベルト連動されている。唐箕駆動軸59に伝達された動力は機体左側において脱穀装置内の各作動部にベルト伝達される。
【0028】
脱穀駆動ケース57には後向きに出力軸60が備えられており、この出力軸60と脱穀装置4の上部に前後向きに軸支された扱胴61の支軸62がベルト連動されている。図6に示すように、脱穀駆動ケース57の一部はサイド操作パネル22の後部下方に入り込むよう配置されて、脱穀装置4に対して運転部7および原動部6が機体内側に接近して配置されている。これによって、機体横幅の節減が図られるとともに、左右重量バランスが好適に保たれるようになっている。
【0029】
前記運転部フレーム33は、後半部の原動部フレーム65と、前半部のステップフレーム66とで構成されている。原動部フレーム65の外端部に、前記ボンネット18を支点a周りに揺動可能に連結する支点部65aが備えられるとともに、ステップフレーム66の前端部に前記操縦塔20と固定ハンドル21とが立設されるようになっている。ステップフレーム66は、1枚の板材を下向き開放されたコの字形に屈折プレスされて、原動部フレーム65の前端に前向き片持ち状に溶接連結されている。なお、ステップフレーム66の内部空間には燃料タンク27が配備されるとともに、前部横フレーム31の左端近くにバッテリ搭載台28が備えられる。
【0030】
前記エンジン9は、前部横フレーム31と前側の後部横フレーム32aに支持されている。図6に示すように、前部横フレーム31と前側の後部横フレーム32aに機体右寄り箇所にはそれぞれブラケット67,68が左右一対づつ付設され、図13に示すように、前後左右のブラケット67,68に亘ってエンジン9が防振ゴム69を介して搭載支持されている。
【0031】
前記回収部フレーム34は、図示のように、アンローダ70付きの穀粒タンク71を設置するタンク回収仕様の穀粒回収部5と、脱穀された穀粒を一旦ホッパに貯留した後、袋詰めして放出する袋詰め回収仕様の穀粒回収部5とに共用できる構造に構成されている。
【0032】
〔他の実施例〕
(1)図14に示すように、前記機体フレーム2を構成する主フレーム30を、クローラ走行装置1の上面における傾斜の合わせて後下り傾斜して配置することで、脱穀装置4を前部横フレーム31の上面より低く搭載支持することも可能である。
【0033】
(2)図15に示すように、脱穀装置4の下端に下向きに開放した凹部4aを形成し、この凹部4aを後部横フレーム32a,32bに係合させることで、脱穀装置4を一層低く支持することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの右側面図
【図4】コンバインの正面図
【図5】機体フレーム構造の側面図
【図6】機体フレーム構造の平面図
【図7】機体フレーム構造の正面図
【図8】機体フレーム構造の一部を示す縦断正面図
【図9】接地転輪の縦断正面図
【図10】接地転輪支持構造の分解斜視図
【図11】接地転輪支持用のボス部を示す縦断面図
【図12】伝動系統図
【図13】エンジン支持構造の側面図
【図14】脱穀装置搭載構造の別実施例を示す側面図
【図15】脱穀装置搭載構造の更に別の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0035】
1 クローラ走行装置
2 機体フレーム
3 刈取り部
4 脱穀装置
5 穀粒回収部
14 基台
30 主フレーム
31 前部横フレーム
32a 後部横フレーム
32b 後部横フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに脱穀装置と穀粒回収部を並列して搭載支持するとともに、機体フレームの前部に刈取り部を上下揺動可能に連結支持し、機体フレームの下方に左右一対のクローラ走行装置を装備したコンバインにおいて、
前記機体フレームに前後方向に向かう左右一対の主フレームを備え、左右の主フレームの前部に亘って前部横フレームを横架連結し、この前部横フレームに、前記刈取り部の基端を上下揺動可能に支持する基台を設け、前記脱穀装置の下端が前記前部横フレームの上面より低くなるように、脱穀装置を前記主フレームに支持してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記前部横フレームより後方の前後複数箇所において、左右の前記主フレームに亘って後部横フレームを横架連結し、この後部横フレームを前部横フレームより低く設定するとともに、前記後部横フレームに脱穀装置を搭載連結してある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−11264(P2009−11264A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178232(P2007−178232)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】