説明

コンバイン

【課題】確実に機体前方及びデバイダ周辺を照らすと共に、デザイン性の高いライトユニットを備えたコンバインを提供する。
【解決手段】コンバイン1は、前処理部5の上部両端部に左右のライトユニット23L,23Rを設けており、ライトユニット23L,23Rには前照灯25及び作業灯26が機体左右方向に並設されている。前照灯25及び作業灯26はそれぞれ機体前方及びデバイダ6周辺を照らすように照射角度が設定されていると共に、作業灯26は前照灯25と比して上方に張り出して配置されている。これにより作業灯26及び前照灯25は補助引起し装置50が取付けられた状態においても確実に前方及びデバイダ周辺を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈取りつつ脱穀するコンバインに係り、詳しくは該コンバインの前処理部に配置されるライトの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理部に圃場の穀稈を引起す引起し装置を備えたコンバインは、該引起し装置の左右のサイドカバーにライト(前照灯及び作業灯)をそれぞれ上下に並設し、機体前部及び引起し装置下部のデバイダ周辺を照らしている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−6319号公報
【特許文献2】特開2006−81409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者は、圃場の穀稈が倒伏している場合、上記前処理部の中央部及び両端部に補助引起し装置を取付けるが、特許文献1及び2記載のコンバインは前処理部のサイドカバーにライトを配設しているため、該補助引起し装置がこれらライトの前方を覆ってしまっていた。そのため、補助引起し装置が壁となって機体前方やデバイダ周辺を照らすことができず、別途それらを照らすライト(補助灯)を設ける必要があった。
【0005】
そこで本発明は、引起し装置の横伝動筒の前方を覆うカバーの両端部にライトを配設することによって、上記課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、走行機体の前方に、複数の引起し装置(7)及びデバイダ(6)を有する前処理部(5)を昇降自在に支持し、前記走行機体(2)に配置したエンジン(12)からの動力を、前記前処理部(5)の上方に機体の左右方向に配置した横伝動筒(30)に内蔵された伝動軸を介して前記引越し装置(7)に動力伝達してなる、コンバイン(1)において、
前記横伝動筒(30)の前方を覆うカバー(22)の両端部分に、それぞれ前方を照射するライト(25)と前記デバイダ(6)周辺を照らすライト(26)とを左右方向に並設した、
ことを特徴とするコンバイン(1)にある。
【0007】
請求項2に係る発明は、左右方向内側の2個の前記ライト(25)が、前方を照射するように照射角度を設定されて前照灯となり、かつ左右方向外側の2個の前記ライト(26)が、前記デバイダ(6)の周辺を照らすように照射角度を設定されて作業灯となる、
請求項1記載のコンバイン。
【0008】
請求項3に係る発明は、左右方向内側の前記ライト(25)に対して外側の前記ライト(26)が、前方上方に張り出して配置された、
請求項1又は2記載のコンバインにある。
【0009】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、引起し装置の上部前面に設けられた横伝動筒のカバーの両端部にライトを配設したことによって、補助引起し装置を取付けたとしても機体前方及びデバイダ周辺を照らすことができ、これにより補助引起し装置の取付けに際し、通常設けられているライトの他に、別途新たなライトを取付ける必要もなくなる。また、外観のデザイン性も向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、複数のデバイダにより近い左右方向外側のライトを作業灯としたことにより、効率よくデバイダ周辺を照らすことができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、機体外側に配設されたライトが、内側に配設されたライトよりも上方に張り出して配置されていることによって、作業者の視界を妨げることなくライトを配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面に沿って、本発明の実施の形態について説明をする。図1乃至図3に示すように、コンバイン1は、クローラ走行装置3に支持された走行機体2を有しており、該走行機体2の前方にはデバイダ6及び穀稈を引起す複数の引起し装置7を備えた前処理部5が設けられている。該前処理部5によって刈取られた穀稈は、その後方に配設された脱穀部9によって脱穀されると共に、後処理部10によって排藁の処理が行われる。また、前処理部5の側方には運転操作部11及びエンジン12が配設されており、該運転操作部11の後方かつ脱穀部9の側方には、脱穀された穀粒を一時的に貯留するグレンタンク13が設けられている。該グレンタンク13に貯留された穀粒は、排出オーガ15によって機体外へと排出されるように構成されている。
【0014】
上記前処理部5は、上述した穀稈を分草するデバイダ6及び4つの引起し装置7と、デバイダ6の後方に配設された刈取り部16と、該刈取り部16によって刈取られた穀稈を脱穀部9へと受け渡す搬送部17とから構成されており、その側部は左右のサイドカバー19L,19Rによって覆われている。
【0015】
上記サイドカバー19L,19Rの内、機体進行方向左側の左サイドカバー19L上部には左上部サイドカバー20が取付けられており、該左上部サイドカバー20は、前処理部5の上部から後方に延びた防塵カバー21と共に穀稈の搬送経路を覆って藁屑などの飛散を防止している。
【0016】
また、前処理部5の上部前面には、詳しくは後述する横伝動筒30を覆う上部カバー22が取付けられており、その両端部にはそれぞれ、左右のライトユニット23L,23Rが配設されている。このライトユニット23L,23Rは前照灯25及び作業灯26を機体左右方向に並設しており、機体内側に前照灯25を配置し、機体外側に作業灯26を配置している。
【0017】
これにより、機体外側に配設された作業灯26は、デバイダ6間の略々中間に位置し、機体内側に配置された前照灯25と比して複数のデバイダ6からの距離が近くなっており、効率よくデバイダ6周辺を照らすことができるように構成されている。なお、上記ライトユニット23L,23Rは、運転操作部11に配設されたライトスイッチ24(図3参照)によって操作され、消灯状態、前照灯点灯状態、前照灯及び作業灯点灯状態の3形態に切換えることができる。
【0018】
また、図4に示すように、前処理部5の機体進行方向左端からは縦伝動筒27が立ち上がっており、引起し変速装置29を介して、走行機体2に設けられたエンジン12からの動力を上記横伝動筒30へと分岐している。該引起し変速装置29は、縦伝動筒27の上端部に設けられており、その上面には横伝動筒30が連結する連結ケース29aが上方に向って突設されている。
【0019】
上記横伝動筒30は、前処理部5の上方において機体幅方向の略々全長に亘って配設されていると共に、4本の引起し伝動筒31が下方に向って分岐しており、内蔵された伝動軸によって引起し装置7へと動力を伝達している。該引起し伝動筒31下部には引起しスプロケット32が設けられており、引起しケース33に格納された爪付きチェーン35が巻着される。また、引起し装置7を覆う引起しカバー34には、該引起しスプロケット32と対応した位置に補助引起し装置50の取付け部37が形成されている。
【0020】
次に上記ライトユニット23L,23Rの構成について説明をする。図5に示すように、左右のライトユニット23L,23Rは、ライトカバー36と、作業灯26と、前照灯25と、ライトカバー係止プレート37とから構成されており、ライトカバー36の機体外側にはボルト固定部36aが形成されている。また、該ライトカバー36の内周には作業灯26及び前照灯25を取付ける溝部36c,36dを有したライト固定部36b及び、ライトカバー係止プレート37を取付けるネジ穴36eが形成されている。
【0021】
上記作業灯26及び前照灯25は、ライト本体39と、U字状のステー40とからなり、ライト本体39は固定ボルト41によってステー40に支持されている。上記ライト本体39はその枠体39aとステー40の両端とを当接させることによって位置決めされており、このステー40両端の当接面には、傾斜面40aと、平坦面40bとが形成されてライトの照射角度を決める位置決め部40a,40bを構成している。
【0022】
図6に示すように、上記傾斜面40aは前照灯位置決め部となっており、該前照灯位置決め部40aとライト本体39の枠体39aとを当接させることによって、前方を照らすように照射角度を設定され、ライト本体39が前照灯位置となるように構成されている。また、図7に示すように、上記平坦面40bは作業灯位置決め部となっており、該作業灯位置決め部40bとライト本体39の枠体39aとを当接させることによって、デバイダ6周辺を照らすように照射角度を設定され、ライト本体39が作業灯位置となるように構成されている。
【0023】
上記ライト本体39は、それぞれライト固定部36bの溝部36c,36dにステー40の背部に設けられたボルト42を差込み、該ボルト42を締めることによって取付けられる。また、ライトカバー36は機体外側が前方上部へと膨出しており、作業灯26は前照灯25よりも上方に位置するようにライト固定部36bは形成されている。
【0024】
次にライトユニット23L,23Rの取付け構造について説明する。図8に詳示するように、上記横伝動筒30の機体中央部には、機体内側の引起し伝動筒31aを取付ける中央引起し伝動筒取付け部30aが設けられており、これら中央引起し伝動筒取付け部30aには、L字状に屈曲した鍔状プレート43がボルトによって固設されている。また、横伝動筒30の中央部に設けられたブラケット30c(図9参照)に取付けられた連結プレート45からも同様にL字状に屈曲した鍔状プレート43が設けられており、上述した断面コ字状の上部カバー22はこれら鍔状プレート43の鍔部にレールのように差し込まれて固定されている。
【0025】
一方、横伝動筒30の両端部にはプレートナット46L,46Rからなるライトユニット23L,23Rの取付け部44が設けられており、機体進行方向右側では、支柱48に支持された横伝動筒30の右端部に上記プレートナット46Rが設けられ、機体進行方向左側では、機体外側の引起し伝動筒取付け部30b及び引起し変速装置29に上記プレートナット46Lが設けられている。左右のライトユニット23L,23Rの機体外側は、上記ライトカバー36のボルト固定部36aにボルト47が嵌挿され、これらのボルト47と上記プレートナット46L,46Rとが螺合することによって、固定されている。
【0026】
また、左右のライトユニット23L,23Rの機体内側は、上記上部カバー22の端部に係止されており、図10及び図11に示すように、ライトカバー36の内側には上部カバー22の端部が差し込まれている。該ライトカバー36の内周にはライトカバー係止プレート37がビス37aによって固定されており、このライトカバー係止プレート37によって、上部カバー22端部をライトカバー36の内周面との間に挟んで固定している。
【0027】
上記左右のライトユニット23L,23Rの取付け部44は、図4に特に示すように、取付け状態において右サイドカバー19R及び左上部サイドカバー20によって覆われており、外部にボルト47が露出することがないように構成されている。また、左右ライトユニット23L,23Rは、上述したように機体内側もライトカバー36に上部カバー22端部が差し込まれて係止されており、これにより、ボルト及びナットなどの接続部材が機体外部に露出しない取付け構造となっている。
【0028】
更に、左ライトユニット23Lの作業灯26の下方には、上方に突出した引起し変速装置29の連結ケース29aが位置しているが(図9参照)、上述したように作業灯26が前照灯25よりも上方に張り出すことによって、これら前照灯25及び作業灯26は左右に並設した状態で取付けられている。
【0029】
なお、上記サイドカバー19L,19R,20はロックハンドル49によって着脱自在に設けられており、ライトユニット23L,23Rのバルブ交換時などには容易にサイドカバー19L,19R,20及びライトユニット23L,23Rが取り外し可能に構成されている。
【0030】
次に本発明に係るコンバインの作用について説明をする。作業者は、圃場の穀稈が倒伏していると、図12に示すように、補助引起し装置50を引起し装置7の取付け部37に装着して倒伏した穀稈を引起しながら収穫作業を行い、収穫作業中に日没が近づくと、運転操作部11のライトスイッチ24を操作して前照灯25及び作業灯26を点灯させる。
【0031】
上記作業灯26が点灯すると、機体外側に配置された2個の作業灯26によって、デバイダ6周辺が照らされ、上記前照灯25が点灯すると、機体内側に配置された2個の前照灯25によって機体前方が照射される。この時、前照灯25及び作業灯26は、前処理部5の上部左右端に左右に並設されているため、上記補助引起し装置50に阻害されることなく、機体前方及びデバイダ6周辺を照射する。
【0032】
これにより、作業者は日没後も作業灯26によって照らされたデバイダ6周辺を見て、作業状態を確認しながら収穫作業を続ける。収穫作業が終わると作業灯26を消し、前照灯25によって機体前方を照らしながら移動して、コンバイン1を車庫へと格納する。該コンバイン1が車庫へ格納されると作業者は前照灯25も消し、降車する。
【0033】
上記のようにコンバイン1を構成したことにより、左右ライトユニット23L,23Rを前処理部5の上方端部にそれぞれ配設し、前照灯25及び作業灯26を機体幅(左右)方向に並設したことによって、補助引起し装置50を取付けたとしても別途補助灯を設けることなく、機体前方及びデバイダ6周辺を確実に照射することができる。
【0034】
また、位置決め部40a,40bによって前照灯25及び作業灯26の照射角度を設定することによって、確実に機体の前方及びデバイダ周辺を照射することができ、上記作業灯26を機体外側に配置し、複数のデバイダ6から近接した位置に配設したことによって、効率よくデバイダ周辺を照射することができる。
【0035】
更に、機体外側に配置された作業灯26を機体内側に配置された前照灯25よりも上方に張り出して構成しているため、引起し変速装置29の連結ケース29aが配設されていても、前照灯25及び作業灯26を並設することができると共に、作業者は左右ライトユニット23L,23Rに阻害されることなく、運転操作部11からデバイダ6周辺を確認することができる。
【0036】
また、前照灯25及び作業灯26がライトユニット23L,23Rに埋め込まれて一体となっていることによって、外観品質を向上させることができる。更にライトユニット23L,23Rの機体内側を上部カバー22の両端部に係止し、
機体外側のボルト固定部36aを取付ける取付け部44(プレートナット46L,46R)を、右サイドカバー19R及び左上部サイドカバー20によって覆うことによって、機体外部にボルトが露出しないように構成し、コンバイン1の外観品質をより高いものにすることができる。
【0037】
また、サイドカバー19L,19R,20がロックハンドル49によって脱着することができるため、容易にバルブ交換等の整備をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るコンバインの斜視図。
【図2】本発明に係るコンバインの右側面図。
【図3】本発明に係るコンバインの平面図。
【図4】図1のコンバインの前処理部を示す正面透視図。
【図5】本発明に係るコンバインの右ライトユニットの分解背面図。
【図6】本発明に係るコンバインの前照灯の側面図。
【図7】本発明に係るコンバインの作業灯の側面図。
【図8】本発明に係るコンバインのライトユニットの取付け構造を示す分解斜視図。
【図9】本発明に係る左ライトユニットの平面透視図。
【図10】図9の左ライトユニットの右側面図。
【図11】図9の左ライトユニットの左側面図。
【図12】補助引起し装置を取付けた状態の本発明に係るコンバインの前処理部を示す正面図。
【符号の説明】
【0039】
1 コンバイン
2 走行機体
5 前処理部
6 デバイダ
7 引起し装置
12 エンジン
22 カバー(上部カバー)
25 前照灯(左右方向内側のライト)
26 作業灯(左右方向外側のライト)
30 横伝動筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に、複数の引起し装置及びデバイダを有する前処理部を昇降自在に支持し、前記走行機体に配置したエンジンからの動力を、前記前処理部の上方に機体の左右方向に配置した横伝動筒に内蔵された伝動軸を介して前記引起し装置に動力伝達してなる、コンバインにおいて、
前記横伝動筒の前方を覆うカバーの両端部分に、それぞれ前方を照射するライトと前記デバイダ周辺を照らすライトとを左右方向に並設した、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
左右方向内側の2個の前記ライトが、前方を照射するように照射角度を設定されて前照灯となり、かつ左右方向外側の2個の前記ライトが、前記デバイダの周辺を照らすように照射角度を設定されて作業灯となる、
請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
左右方向内側の前記ライトに対して外側の前記ライトが、前方上方に張り出して配置された、
請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−136178(P2009−136178A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313860(P2007−313860)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】