説明

コンバイン

【課題】特段の冷却手段を要することなく、作動油の十分な冷却を確保することができるコンバインを提供する。
【解決手段】油圧駆動式の無段変速伝動部13を搭載した機体フレーム11の左側前部に、刈取部1を昇降可能に支持する前上がり傾斜姿勢の刈取懸架台12を設け、該刈取懸架台12と並んで機体フレーム11の右側前部に冷却ファン7bを有するエンジン7を設け、上記無段変速伝動部13をはじめとする油圧作動機器の作動油を貯留するオイルタンク14を上記刈取懸架台12の後部に沿って前上がり傾斜姿勢に取付け、同オイルタンク14の上面に前記冷却ファン7bからの冷却風が通過可能な隙間Aを隔てて油圧作動機器の複数の制御バルブを一体にユニット化したバルブブロック15を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動式の無段変速伝動部を含む油圧作動機器を搭載したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、変速走行のための油圧駆動式の無段変速伝動部や刈取部を昇降するリフトシリンダ等の油圧作動機器を備えて刈取走行を行うコンバインが知られている。このコンバインは、機体フレームに搭載した無段変速伝動部を介して走行部を変速可能に駆動するとともに、同機体フレーム前方の片側(未刈り側)に寄せて刈取部を昇降可能に懸架し、この刈取部を懸架支持する刈取懸架台、刈取部から刈取り穀稈を受けて後方の脱穀部まで搬送する搬送部等を機体フレームの片側に搭載し、また、上記刈取懸架台と並んで機体フレームの他側に機体側面からの冷却流線を有するエンジン等を搭載し、このエンジンから冷却風を受ける刈取懸架台の近傍にオイルタンクを取付けて構成したものである。
このような機体構成により、オイルタンクが側方のエンジンから冷却風を受けるので、変速伝動部等の油圧作動機器によって昇温された作動油について、特段の冷却手段を要することなく、効率的な冷却が可能となる。
【特許文献1】特開平10−155331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記オイルタンクによる作動油の冷却は、オイルクーラ等の専用の冷却手段には及ばず、必ずしも十分とは云えないので、別途、冷却手段を設けることは、そのためのコスト増加のみならず、冷却系の複雑化に伴うメンテナンスコストの増加を招くという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、特段の冷却手段を要することなく、作動油の十分な冷却を確保することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、油圧駆動式の無段変速伝動部13を搭載した機体フレーム11の左側前部に、刈取部1を昇降可能に支持する前上がり傾斜姿勢の刈取懸架台12を設け、機体フレーム11の右側前部に冷却ファン7bを有するエンジン7を設け、上記無段変速伝動部13をはじめとする油圧作動機器の作動油を貯留するオイルタンク14を上記刈取懸架台12の後部に沿って前上がり傾斜姿勢に取付け、同オイルタンク14の上面に前記冷却ファン7bからの冷却風が通過可能な隙間Aを隔てて油圧作動機器の複数の制御バルブを一体にユニット化したバルブブロック15を設けてなることを特徴とする。
【0006】
上記オイルタンク14とバルブブロック15は、その側方に配置されたエンジン7の冷却ファン7bからの送風を受けて共に冷却されるとともに、両者の間の隙間Aを通る冷却風によって個別に冷却作用を受けることから、オイルタンク14の冷却のほかに、無段変速伝動部13をはじめとする油圧作動機器に受ける高温高圧の作動油がバルブブロック15を通過する際に効率的に冷却される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成により、オイルタンク14とバルブブロック15は、両者の間の隙間を通るエンジン7の冷却ファン7bからの冷却風によって個別に冷却されることから、油圧作動機器の作動油は、オイルタンク14による貯留作動油の冷却効果と合わせ、バルブブロック15による高温高圧の作動油冷却効果により、特段の冷却手段を要することなく、効率よく、かつ、十分な冷却が可能となる。これによって、油圧作動機器の作動状態を安定させてコンバインの作業能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の適用対象となるコンバインは、例えば、機体側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示すように、圃場から穀稈を刈取る刈取部1、刈取った穀稈を受けて脱穀選別する脱穀部2、脱穀選別された穀粒を貯留する収容部3、貯留された穀粒を機外に排出するオーガ機構による排出部4等の作業機と、走行手段である左右のクローラ5,5と、機体走行および作業機を操作するための操縦部6等を備える。
【0009】
各機器の位置関係については、刈取部1が機体の片側(未刈側)に寄った位置に先行配置され、この刈取部1の圃場面からの刈取り高さを目視しうる他側(既刈側)に操縦部6が配置され、その座席6aの下にコンバインの原動部として側面吸気のラジエタ7aを含むエンジン7が配置される。また、刈取部1の後部には、刈取穀稈の株元側および穂先側をそれぞれ搬送しつつ穀稈を横倒し姿勢にする搬送装置8が配置され、これを受ける位置に脱穀部2のフィードチェーン2aが構成される。
【0010】
機体フレーム11の片側前端部には、作業機器の配置側面図を図3に示すように、前上がり傾斜姿勢の刈取懸架台12を設けてその懸架軸12aに刈取部1を油圧駆動で昇降調節可能に軸支する。刈取懸架台12の後部には、要部拡大図を図4に示すように、HSTと略称される静油圧式前後進無段変速装置を一体に構成した無段変速伝動部13をはじめとする油圧作動機器の作動油を貯留するオイルタンク14を刈取懸架台12の後部に沿って前上がり傾斜姿勢で取付ける。同オイルタンク14は上下の面14a、14bに放熱用波形を形成し、この後傾姿勢のオイルタンク14の上面14aに冷却風を通過させうる隙間Aを隔ててバルブブロック15を前上がり傾斜姿勢で取付ける。
【0011】
上記オイルタンク14およびバルブブロック15は、エンジン部背面図を図5に示すように、その側方に位置するエンジン7から側面吸気による冷却流線Bが機体を横断する線上に配置する。オイルタンク14には、その上面俯瞰方向の平面図を図6に示すように、刈取懸架台12に固定するためのフランジ14fを外周に形成し、作動油の戻り口14cおよびエンジン7に配置されて連結駆動されるポンプP(不図示)に連通する供給口14dを形成する。
【0012】
バルブブロック15は、油圧作動機器を駆動制御する油圧バルブその他の油圧機器を集合してユニット化したものであり、オイルタンク14の上面14aに取付けるための脚部21を備えたブロックベース22に、例えば、システム圧設定用のリリーフバルブ23、刈取高さ調節用のソレノイドバルブ24、旋回クラッチの旋回力制御バルブ25等を一体的に構成し、ポンプPおよび油圧作動機器との間を油圧接続するとともに、油圧作動機器からの戻り油路を合わせた低圧ホース26によってオイルタンク14の戻り口14cとの間を接続して作動油を戻す。リリーフバルブ23の位置は、機体外側からのリリーフ圧の変更操作を容易にするべく、機体外側に寄せてフィードチェーン2aの下方に配置する。低圧ホース26は、配索スペースのコンパクト化とエンジン冷却風による冷却効果を高め、かつ、藁屑が堆積しないように、ブロックベース22の下方にオイルタンク14の上面14aに沿って配索する。
【0013】
上述のようにオイルタンク14およびバルブブロック15を構成することにより、その側方に位置するエンジン7から側面吸気による冷却流線Bに沿う冷却風が機体を横断する際に、その冷却風によって両者が共に冷却され、このとき、両者の間に形成した隙間Aを通過する冷却風により、それぞれが効率よく冷却される。特に、高温高圧の作動油を受けるバルブブロック15の冷却により、効果的な昇温抑制が可能となる。
このように、変速伝動部13等の油圧作動機器によって昇温された作動油について、特段の冷却手段を要することなく、効率的でかつ十分な冷却が可能となる。
また、オイルタンク14の上面14aにバルブブロック15を配置することにより、バルブからの戻り油のホース配索を最短化することができる。
【0014】
上記バルブブロック15は、後ろ下がり傾斜となっているので、上から落ちてくる藁屑が堆積することなく滑り落ち、それのみならず、バルブブロック15をその後方の脱穀部2に接近して配置しても、バルブブロック15が後ろ傾斜となっているので、後述の揺動棚2dの着脱、メンテナンス等に際し、その上下高さおよび左右幅を越える大きさに開かれた唐箕風洞2bの開口部2eを覆うカバー2cの開閉に必要な空間を確保することができる。また、脱穀部2を機体フレーム11に組み付けする際は、オイルタンク14とバルブブロック15を刈取懸架台12に組み付けた後であっても、バルブブロック15の上方のV字状空間Cがあるので、バルブブロック15との干渉を招くことがなく、脱穀部2の着脱のための作業空間を確保することができる。
【0015】
上記揺動棚2dは、カバー2cによって閉じられた唐箕風洞2bの開口部2eに臨む位置に揺動選別動作のための駆動部2fを備える。この駆動部2fは、詳細には、揺動棚2dの前端部からアーム31を突出して備え、このアーム31を挿通するピン軸32を介して縦長配置の揺動アーム33の上部と連結し、この揺動アーム33は、その下部を下端枢支ピン34によって唐箕風洞2bに軸支するとともに、同揺動アーム33の中段を挿通する割りピン付きのピン35を介して揺動クランク軸36と連結して構成される。
また、揺動アーム33の上部のピン軸32は、その端部に保持部材33aを連結して一体的に抜き取り可能に構成するとともに、この保持部材33aを同揺動アーム33の中段のピン35の一端の割りピンによって抜けないように連結する。
【0016】
上記揺動棚2dは、揺動クランク軸36の回動によって揺動される揺動アーム33を介して揺動され、また、揺動棚2dのメンテナンスの際は、唐箕風洞2bの開口部2eのカバー2cを開き、この開口部2eの内方の揺動アーム33の中段のピン35から割りピンを外して同ピン35を抜き、保持部材33aを外すことにより揺動アーム33と揺動棚2dとの連結を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの側面図
【図2】図1のコンバインの平面図
【図3】作業機器の配置側面図
【図4】図3の要部拡大図
【図5】エンジン部背面図
【図6】オイルタンク部の上面俯瞰方向の平面図
【符号の説明】
【0018】
1 刈取部
2 脱穀部
2a フィードチェーン
7 エンジン
7a ラジエタ
8 搬送装置
11 機体フレーム
12 刈取懸架台
13 無段変速伝動部
14 オイルタンク
14a 上面
15 バルブブロック
21 脚部
22 ブロックベース
23 リリーフバルブ
24 ソレノイドバルブ
25 旋回力制御バルブ
26 低圧ホース
A 隙間
B 冷却流線
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動式の無段変速伝動部(13)を搭載した機体フレーム(11)の左側前部に、刈取部(1)を昇降可能に支持する前上がり傾斜姿勢の刈取懸架台(12)を設け、機体フレーム(11)の右側前部に冷却ファン(7b)を有するエンジン(7)を設け、上記無段変速伝動部(13)をはじめとする油圧作動機器の作動油を貯留するオイルタンク(14)を上記刈取懸架台(12)の後部に沿って前上がり傾斜姿勢に取付け、同オイルタンク(14)の上面に前記冷却ファン(7b)からの冷却風が通過可能な隙間(A)を隔てて油圧作動機器の複数の制御バルブを一体にユニット化したバルブブロック(15)を設けてなることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−165413(P2009−165413A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7643(P2008−7643)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】