コンバイン
【課題】走行機体と走行部の間に前後傾斜用油圧シリンダ等を低コスト且つコンパクトに配置できるものでありながら、走行機体の左右傾斜制御機能が損なわれることがないようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】左右の走行部2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成したコンバインにおいて、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側に配置した構造であって、左右の車高調節油圧シリンダ38の間で、左右の車高調節油圧シリンダ38と並列状に、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置したものである。
【解決手段】左右の走行部2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成したコンバインにおいて、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側に配置した構造であって、左右の車高調節油圧シリンダ38の間で、左右の車高調節油圧シリンダ38と並列状に、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に脱穀装置等を搭載したコンバインに係り、より詳しくは、走行機体の左右方向の傾斜角度と、走行機体の前後方向の傾斜角度を変更可能に構成したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動させる技術がある(特許文献1)。また、前後傾斜用油圧シリンダによって走行機体が前後方向に傾動したときに、車高調節油圧シリンダの支持位置が修正される技術も公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304399号公報
【特許文献2】特開2006−204171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、前部ローリングアームと後部ローリングアームをローリングフレームにて連結した場合、後部ローリングアームの回動によって走行機体の前後方向の傾斜角度が修正されるときに、後部ローリングアームに連結された車高調節油圧シリンダの連結長さが変化する等の問題がある。即ち、前後傾斜用油圧シリンダが作動したときに、車高調節油圧シリンダのピストンを進出又は退入させる力が発生し、車高調節油圧シリンダの連結支軸と、ピストンの連結支軸との間の長さが変化して、車高調節油圧シリンダに作動油が吸入されたり排出されることによって、車高調節油圧シリンダの作動油に空気が混入したり漏れる等の問題がある。したがって、前記従来技術に示す如く、ローリングシリンダの連結長さの変化量が少なくなるように、ローリングリンク機構又はピッチングリンク機構を構成する必要がある。車高調節油圧シリンダ又は前後傾斜用油圧シリンダ等を簡単に組付けることができない等の問題がある。なお、前後及び左右の4本の油圧シリンダを設けて、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動させる技術もあるが、左右傾斜制御構造と前後傾斜制御構造を一体的に取扱う必要があり、油圧制御構造等の製造コストを簡単に低減できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、走行機体と走行部の間に前後傾斜用油圧シリンダ等を低コスト且つコンパクトに配置できるものでありながら、走行機体の左右傾斜制御機能が損なわれることがないようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したものであるから、前記走行機体の下面側で、前記左右の車高調節油圧シリンダと前記前後傾斜用油圧シリンダを左右幅方向に並列にコンパクトに支持できる。前記走行機体とトラックフレームの間の機体底部に前記車高調節油圧シリンダの連結構造や前後傾斜用油圧シリンダのピッチングリンク機構を簡単に組付けることができる。また、前記車高調節油圧シリンダの連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、前記走行機体の前後方向の傾斜角度を変更できる。前記車高調節油圧シリンダの左右傾斜制御機能を損なうことなく、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後傾斜制御できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したものであるから、前記走行機体の下面と前記走行クローラの上面との間隔を簡単に確保できるものでありながら、前記車高調節油圧シリンダ機構と前後傾斜用油圧シリンダ機構をコンパクトに支持できる。また、前記走行機体に対して、前記走行部の後側を接離させて前記走行機体を大きく前後傾動できる。前記走行機体の下面と前記走行部の前側上面との間から、前記走行部が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。前記走行機体に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたものであるから、前記走行機体の下面と前記走行クローラの前部上側との間隔(駆動スプロケット側の間隔)を簡単に確保できる。前記走行機体を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な前記走行クローラの迎え角を形成できる。前記走行クローラの走破性能を向上できる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したものであるから、前記車高調節油圧シリンダを含む左右傾斜制御構造と、前記前後傾斜用油圧シリンダを含む前後傾斜制御構造を、前記走行機体の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、前記走行機体の上面側の脱穀装置等又は前記前後傾斜用油圧シリンダ等が、互いに制限されることがないから、前記走行部又は脱穀装置の組立分解作業性等を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】走行部の側面説明図である。
【図4】走行部の平面説明図である。
【図5】左右傾斜制御構造及び前後傾斜制御構造の側面説明図である。
【図6】走行部の側面説明図である。
【図7】走行部の平面説明図である。
【図8】左右傾斜制御構造及び前後傾斜制御構造の側面説明図である。
【図9】走行機体の上昇動作説明図である。
【図10】走行機体の前傾動作説明図である。
【図11】走行機体の上昇及び前傾動作説明図である。
【図12】走行機体の上昇及び後傾動作説明図である。
【図13】左右傾斜制御及び前後傾斜制御及び刈取高さ制御のブロック図である。
【図14】コンバインの姿勢制御のフローチャートである。
【図15】刈取高さ制御のフローチャートである。
【図16】左右傾斜制御及び前後傾斜制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の刈取昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。図2に示す如く、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な穀粒排出オーガ8が設けられている。穀粒タンク7の内部に収集された穀粒が、穀粒排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0017】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11及び運転座席12等が配置されている。なお、運転キャビン10には、図示しないが、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドル11を設けるハンドルコラムと、運転座席12の左側方のレバーコラムに設ける走行主変速レバー、及び走行副変速レバー、刈取クラッチ及び脱穀クラッチ等の作業クラッチを入り切り操作する作業クラッチレバー等が、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。
【0018】
図1及び図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にディーゼルエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。ディーゼルエンジン20の出力がミッションケース19に伝達され、ミッションケース19によってディーゼルエンジン20の出力が変速され、ミッションケース19の変速出力によって走行クローラ2が駆動される。
【0019】
図1及び図2に示す如く、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0020】
図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する選別機構としての揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0021】
図1及び図2に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227によって選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。なお、前記各コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。また、揺動選別盤227は、揺動駆動軸(図示省略)によって、略一定速度で前後方向及び上下方向に往復揺動する。その結果、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、揺動選別盤227のフィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)される。
【0022】
前記揺動選別盤227によって脱穀物が搖動選別されることによって、脱穀物中の穀粒が、揺動選別盤227のグレンシーブ(図示省略)から下方に落下する。前記グレンシーブから落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
【0023】
また、図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0024】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0025】
次に、図3乃至図5を参照しながら、第1実施形態の走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図3及び図4に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着された走行ブラケット1aに、左右一対の前側軸受体27を介して、左右一対のローリング支点フレーム26の前端側が連結されている。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28がそれぞれ配置されている。左右の前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29をそれぞれ貫通させ、左右の後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30をそれぞれ貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行ブラケット1aを介して駆動スプロケット22(ミッションケース19)が配置されている。
【0026】
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。一方、左右一対の上側後部ローリングアーム32と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。
【0027】
図3及び図4に示す如く、ターンバックル付きで伸縮調節可能な左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37(連結リンクフレーム42)を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
【0028】
図3及び図4に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。左右一対の前部ローリング支点軸29に左右一対のシリンダ支持フレーム39の一端側を回動可能にそれぞれ連結させている。左右一対のシリンダ支持フレーム39の他端側に、軸体を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の前後連結ローリングフレーム36に、連結リンクフレーム42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
【0029】
図5に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
【0030】
また、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平に支持されるように構成している。
【0031】
次に、図3及乃至図5を参照して、走行機体1の行機体1の前後方向の傾斜角の調節構造について説明する。図3及び図4に示す如く、走行機体1の下面側に左右一対のピッチング軸受体48が配置されている。左右一対のピッチング軸受体48にピッチング支点軸49の左右両端部を回動可能に軸支させている。左右一対の後部ローリング支点軸30にピッチング支点軸49を連結するピッチングリンク機構50を備えている。ピッチングリンク機構50は、前後傾斜用アーム58が一体形成された主動リンク51と、後側軸受体28が一体形成された従動リンク52を有する。ピッチング支点軸49に主動リンク51の下端側を回動可能に軸支している。従動リンク52の一端側に後側軸受体28を介して後部ローリング支点軸30を回動可能に軸支させている。主動リンク51の前端側と従動リンク52の他端側を、連動軸体53にて折り曲げ可能に連結している。
【0032】
即ち、図3及び図5に示す如く、走行機体1の下面側にピッチング支点軸49を介して主動リンク51が配置されている。主動リンク51に連動軸体53を介して従動リンク52が回動可能に連結されている。上側後部ローリングアーム32及び下側後部ローリングアーム34が後部ローリング支点軸30を介して従動リンク52に連結されている。主動リンク51と前後傾斜用アーム58が一体揺動することによって、連動軸体53が上下方向に移動して、左右一対の後側軸受体28と左右一対の後部ローリング支点軸30が上下動して、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が回動する。また、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が回動して、走行機体1の後部と中間ローラ25が上下動することによって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が変更されるように構成している。
【0033】
図3及び図4に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備える。走行機体1の高剛性フレーム1bにシリンダ台56を固着し、シリンダ台56に軸体57を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結している。また、ピッチング支点軸49に前後傾斜用アーム58(主動リンク51)の基端側を回動可能に軸支し、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59に、連結リンクフレーム60を介して前後傾斜用アーム58の先端側を連結している。なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸64に回転自在に軸支している。
【0034】
なお、図3に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55は、コンバインの機体全体の前後方向の重心位置に、側面視で上下に並列状に配置されている。また、ディーゼルエンジン20の前後方向の重心位置が、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55と、前部ローリング支点軸29の間になるように、走行機体1の上面側にディーゼルエンジン20が搭載される。
【0035】
図5に示す車高が高いピストンロッド41進出状態(又は車高が低いピストンロッド41退入状態)で、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を退入させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右の後部ローリング支点軸30が下方に押下げられ、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に下動する。その結果、下側前部ローリングアーム33及び下側後部ローリングアーム34の平行姿勢を変更させることなく、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側が押下げられ、走行機体1の後端側の車高が高くなり、走行機体1が前下がりに傾斜するように構成している。なお、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を進出させることによって、前記とは逆に、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に上動し、走行機体1の後端側の車高が低くなり、走行機体1が後下がりに傾斜することは云うまでもない。
【0036】
即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢(前下がり傾斜姿勢)に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。前後傾斜用油圧シリンダ55が作動しても、各ローリングアーム31,32,33,34の平行姿勢が一定姿勢に維持され、車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41を進退させる外力が付加されないから、各ローリングアーム31,32,33,34の変形損傷又は車高調節油圧シリンダ38の油漏れ等を防止でき、それらの耐久性を向上できる。
【0037】
次に、図6乃至図9を参照しながら、第2実施形態の走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着された走行ブラケット1aに、左右一対の前側軸受体27を介して、左右一対のローリング支点フレーム26の前端側が連結されている。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28がそれぞれ配置されている。前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29を貫通させ、後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30を貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行ブラケット1aを介して駆動スプロケット22が配置される。
【0038】
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。一方、左右一対の上側後部ローリングアーム32と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。
【0039】
図6及び図7に示す如く、ターンバックル付きで伸縮調節可能な左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
【0040】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。左右一対の前部ローリング支点軸29に左右一対のシリンダ支持フレーム39の一端側を回動可能にそれぞれ連結させている。左右一対のシリンダ支持フレーム39の他端側に、軸体を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の前後連結ローリングフレーム36に、連結リンクフレーム42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
【0041】
図9に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
【0042】
図8に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平に支持されるように構成している。
【0043】
次に、図6及び図7、図7乃至図12を参照して、走行機体1の行機体1の前後方向の傾斜角の調節構造について説明する。図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側の走行ブラケット1aに左右一対の前側軸受体27を介して連結された左右一対のローリング支点フレーム26は、前側軸受体27回りに回動可能に支持されている。即ち、左右一対のローリング支点フレーム26の後端側が上下方向に揺動移動して、左右一対の後側軸受体28と左右一対の後部ローリング支点軸30が、上下動するように構成している。
【0044】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側に左右一対のピッチング軸受体48が配置されている。左右一対のピッチング軸受体48にピッチング支点軸49の左右両端部を回動可能に軸支させている。左右一対の後部ローリング支点軸30にピッチング支点軸49を連結するピッチングリンク機構50を備えている。ピッチングリンク機構50は、主動リンク51と、従動リンク52を有する。ピッチング支点軸49に主動リンク51の基端側を固着している。後部ローリング支点軸30に従動リンク52の基端側を回動可能に軸支させている。主動リンク51の先端側と従動リンク52の先端側を、連動軸体53にて折り曲げ可能に連結している。
【0045】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備える。走行機体1の高剛性フレーム1bにシリンダ台56を固着し、シリンダ台56に軸体57を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結している。また、ピッチング支点軸49に前後傾斜用アーム58の基端側を固着し、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59に、連結リンクフレーム60を介して前後傾斜用アーム58の先端側を連結している。なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸64に回転自在に軸支している。
【0046】
なお、図8に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55は、コンバインの機体全体の前後方向の重心位置に、側面視で上下に並列状に配置されている。また、ディーゼルエンジン20の前後方向の重心位置が、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55と、前部ローリング支点軸29の間になるように、走行機体1の上面側にディーゼルエンジン20が配置されている。
【0047】
図10に示す車高が低いピストンロッド41退入状態、又は図11に示す車高が高いピストンロッド41進出状態のいずれの状態であっても、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を退入させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に下動し、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側を押し下げ、走行機体1の後端側の車高を高くするように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
【0048】
一方、図12に示す如く、図11とは逆の方向に前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を進出させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に上動し、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側を押し上げ、走行機体1の後端側の車高を低くするように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を下動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも低くなる後方傾斜姿勢に傾動させるように構成している。その結果、車高が低いピストンロッド41退入状態、又は車高が高いピストンロッド41進出状態のいずれの状態であっても、前下がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
【0049】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行クローラ2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成している。また、前部ローリング支点軸29又は後部ローリング支点軸30のいずれか一方に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前後傾斜用油圧シリンダ55にピッチングリンク機構50を介して後部ローリング支点軸29又は前部ローリング支点軸30のいずれか他方を連結させ、車高調節油圧シリンダ38が連結された前部ローリング支点軸28又は後部ローリング支点軸30回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。
【0050】
したがって、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ38本体とピストンロッド42の全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55の油圧構造等を簡単に構成でき、走行機体1と走行クローラ2の間に車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55等を低コスト且つコンパクトに配置できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0051】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前後傾斜用油圧シリンダ55にピッチングリンク機構50を介して後部ローリング支点軸30を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。したがって、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1の後側を持上げて、走行機体1の後側と走行クローラ2を離間させることによって、前側が低くなる姿勢に走行機体1が大きく傾斜した場合であっても、走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出させることができる。例えば、走行クローラ2の前側の走行機体1に、走行クローラ2に走行駆動力を伝達するためのミッションケース19等を簡単に設置できる。また、走行機体1に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0052】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置された構造であって、走行クローラ2の駆動スプロケット22から遠い側の後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構50を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、駆動スプロケット22に近い側の前部ローリング支点軸29回りに走行機体1を回動させて、走行機体1を前後方向に傾動させるように構成している。
【0053】
したがって、走行機体1に中間ローラ25を支持したことによって、走行機体1が前後方向に大きく傾斜した場合であっても、走行クローラ2の前側の上面が走行機体1に近接するのを防止できるから、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できるものでありながら、走行機体1を前後方向に大きく傾斜させて、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正できる。即ち、走行機体1の下面と、走行クローラ2の駆動スプロケット22設置側との間隔が充分に確保され、走行クローラ2に走行駆動力を伝達するミッションケース19又は走行機体1等に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0054】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29及び後部ローリング支点軸30を介して、上側前部ローリングアーム31及び下側前部ローリングアーム33と、上側後部ローリングアーム32及び下側後部ローリングアーム34を支持させるローリング支点フレーム26を備えている。また、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させ、ピッチングリンク機構50及び後部ローリング支点軸30を介して走行機体1にローリング支点フレーム26の後端側を連結させ、上側前部ローリングアーム31に上側後部ローリングアーム32を連結する前後連結ローリングフレーム36と、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置している。
【0055】
したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、走行機体1の上面側の脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55等が、互いに制限されて配置されることがないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【0056】
次に、図13を参照しながら、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御と、前後方向の傾斜制御と、刈取装置3の昇降制御について説明する。図13は、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御手段、及び前後方向の傾斜制御手段、及び刈取装置3の昇降制御手段の機能ブロック図であり、マイクロコンピュータ等によって形成した作業コントローラ71を備える。作業コントローラ71は、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有する。
【0057】
図13に示す如く、作業コントローラ71には、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、刈取装置3によって刈取った刈取穀稈を検出する作物センサ72と、刈取装置3の作動を検出する作業スイッチ73と、走行機体1の左右方向の傾斜角度を検出する振子式の左右傾斜センサ74と、走行機体1と左側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の左車高センサ75と、走行機体1と右側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の右車高センサ76と、走行機体1の左右方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の左右傾斜設定器77が接続されている。
【0058】
また、作業コントローラ71には、出力系の各種電磁油圧バルブ、即ち、左傾斜変更バルブ90と、右傾斜変更バルブ91が接続されている。この構成により、傾斜センサ64の検出値と、左車高センサ65の検出値と、右車高センサ66の検出値とに基づき、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換えて、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させ、走行機体1の左右方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0059】
さらに、図13に示す如く、作業コントローラ71には、走行機体1の前後方向の傾斜角度を検出する振子式の前後傾斜センサ81と、走行機体1の後部とトラックフレーム21の後端側との相対間隔(トラックフレーム21の前後方向の対本機傾斜角度)を検出するポテンショメータ形の本機傾斜センサ82と、走行機体1の前後方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の前後傾斜設定器83が接続されている。
【0060】
また、作業コントローラ71には、前側下降バルブ92と、前側上昇バルブ93が接続されている。この構成により、前後傾斜センサ81の検出値と、本機傾斜センサ82の検出値と、前後傾斜設定器83の設定値とに基づき、前側下降バルブ92又は前側上昇バルブ93を切換えて、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させ、走行機体1の前後方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0061】
一方、図13に示す如く、作業コントローラ71には、走行クローラ2の回転速度(車速)を検出する車速センサ85と、刈取装置3の対地高さを検出するポテンショメータ形の刈取高さセンサ86と、刈取装置3の対地高さの基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の刈取高さ設定器87が接続されている。
【0062】
また、作業コントローラ71には、刈取下降バルブ94と、刈取上昇バルブ95が接続されている。この構成により、車速センサ85の検出値と、刈取高さセンサ86の検出値と、刈取高さ設定器87の設定値とに基づき、刈取下降バルブ94又は刈取上昇バルブ95を切換えて、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させ、刈取装置3の対地高さを修正して、刈取装置3の穀稈刈取高さが略一定になるように自動制御する。
【0063】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行クローラ2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成している。また、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側で、トラックフレーム21の上面よりも上方側に配置している。
【0064】
したがって、走行機体1の下面側に左右の車高調節油圧シリンダ38や前後傾斜用油圧シリンダ55をコンパクトに支持できる。車高調節油圧シリンダ38の連結構造や前後傾斜用油圧シリンダ55のピッチングリンク機構50等を簡単に構成できる。また、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0065】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部は走行クローラ2とトラックフレーム21をそれぞれ有し、前後傾斜用油圧シリンダ55によって作動させるピッチングリンク機構50を備える構造であって、走行機体1に前部ローリング支点軸29を介してローリング支点フレーム26の前端側を回動可能に連結させ、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を配置し、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を介してピッチングリンク機構50を連結させる一方、前部ローリング支点軸29に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。
【0066】
したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の上面との間隔を簡単に確保でき、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1を前後傾動させるピッチング動作性能を向上できる。例えば、走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。
【0067】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置され、走行クローラ2の前端側に駆動スプロケット22が配置された構造であって、駆動スプロケット22から遠い後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構50を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、駆動スプロケット22に近い前部ローリング支点軸29回りに走行機体1を回動させて、走行機体1を前後方向に傾動させるように構成している。
【0068】
したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の前部上側との間隔(駆動スプロケット22側の間隔)を簡単に確保できる。また、走行機体1を上方に持上げて、車高を高くした状態のときにも、テンションローラ23側の走行クローラ2の迎え角を簡単に確保できる。例えば、走行機体1を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な大きさに走行クローラ2の迎え角を形成できる。走行クローラ2の走破性能を維持できる。
【0069】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29及び後部ローリング支点軸30を介して前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、脱穀装置5の下面側に配置する走行機体1の高剛性フレーム1bに前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、左右の走行クローラ2の間に前後傾斜用油圧シリンダ55を配置し、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させる一方、走行機体1にローリング支点フレーム26の後端側を連結させている。
【0070】
したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側にコンパクトに設置できる。例えば、脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55の取付け位置等が互いに制約されないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【0071】
次に、図14乃至図16に示すフローチャートを参照しながら、刈取装置3の穀稈刈取高さ制御態様、及びコンバイン(走行機体1)の左右方向及び前後方向の傾斜制御態様を説明する。図14のフローチャートに示す如く、エンジン20が始動された場合、作物センサ72値、左右傾斜センサ74値、左車高センサ75値、右車高センサ76値、左右傾斜設定器77値、前後傾斜センサ81値、本機傾斜センサ82値、前後傾斜設定器83値、車速センサ85値、刈取高さセンサ86値、刈取高さ設定器87値が読込まれる。作業スイッチ73がオンの刈取作業中、図15のフローチャートに示す刈取高さ制御が実行される。また、作業スイッチ73がオン又はオフのいずれであっても、図16のフローチャートに示す傾斜制御が実行される。
【0072】
図15のフローチャートに示す如く、作業スイッチ73がオンの刈取作業中に、作物センサ72がオンになっていると、車速センサ85値と、刈取高さセンサ86値と、刈取高さ設定器87値に基づき、刈取装置3の穀稈刈取高さが低いと判断された場合、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を上昇制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。一方、刈取装置3の穀稈刈取高さが高いと判断された場合、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を下降制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。図15の刈取高さ制御によって、刈取高さ設定器87によって設定された刈取装置3の穀稈刈取高さを自動的に維持できる。
【0073】
図16のフローチャートに示す如く、左右傾斜センサ74値と、左車高センサ75値と、右車高センサ76値と、左右傾斜設定器77値に基づき、走行機体1が左側に傾斜していると判断された場合は、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換え、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の左側を上昇させるか、又は走行機体1の右側を下降させる。一方、走行機体1が右側に傾斜していると判断された場合は、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換え、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側を上昇させるか、又は走行機体1の左側を下降させる。図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御によって、走行機体1の左右方向の傾斜角度が自動的に修正されて、左右傾斜設定器77値に基づき、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を維持できる。
【0074】
また、図16のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ81値と、本機傾斜センサ82値と、前後傾斜設定器83値に基づき、走行機体1が前側方に下り傾斜していると判断された場合は、前側上昇バルブ93を切換え、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。一方、走行機体1が後側方に下り傾斜していると判断された場合は、前側下降バルブ92を切換え、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。図16のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御によって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が自動的に修正されて、前後傾斜設定器83値に基づき、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を維持できる。
【0075】
穀稈の刈取作業中は、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御に優先して、図15の刈取高さ制御が実行されることによって、分草体225が田面の泥土に突込むのを防止できる。図15の刈取高さ制御が実行された後に、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、圃場の枕地等の乱れた田面の泥土に分草体225が突込むのを防止できる。図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、走行機体1の対地高さが高くなった場合でも(図9乃至図12参照)、テンションローラ23と最後部のトラックローラ24によって支持された走行クローラ2の対地迎え角が適正大きさに維持され、走行クローラの走破性能が保持される。
【0076】
また、図16のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御に優先して、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御が実行されることによって、刈取装置3の左側又は右側の分草体225の対地高さを所定以上に維持しながら、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御を実行できる。その結果、刈取装置3の対地高さが低い刈取作業のときにも、前後方向の傾斜制御によって、刈取装置3の左側又は右側の分草体225が田面の泥土に突込むのを防止できる。
【0077】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行部2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成したコンバインにおいて、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側に配置した構造であって、左右の車高調節油圧シリンダ38の間で、左右の車高調節油圧シリンダ38と並列状に、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置している。したがって、走行機体1の下面側で、左右の車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ55を左右幅方向に並列にコンパクトに支持できる。走行機体1とトラックフレーム21の間の機体底部に車高調節油圧シリンダ38の連結構造や前後傾斜用油圧シリンダ55のピッチングリンク機構50を簡単に組付けることができる。また、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0078】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部は走行クローラ2とトラックフレーム21をそれぞれ有し、前後傾斜用油圧シリンダ38によって作動させるピッチングリンク機構50を備える構造であって、走行機体1に回動可能に連結させるローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を配置し、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を介してピッチングリンク機構50を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の上面との間隔を簡単に確保できる。車高調節油圧シリンダ38機構と前後傾斜用油圧シリンダ55機構をコンパクトに支持できる。また、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。走行機体1に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0079】
図6及び図7に示す如く、前記走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置され、走行クローラ2の前端側に駆動スプロケット22とミッションケース19が配置され、前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、駆動スプロケット22から遠い後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構55を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させている。したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の前部上側との間隔(駆動スプロケット22側の間隔)を簡単に確保できる。走行機体1を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な走行クローラ2の迎え角を形成できる。走行クローラ2の走破性能を向上できる。
【0080】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させる一方、走行機体1の高剛性フレーム1bに前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、左右の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41の突出方向と同一方向に向けて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を突出させるように構成している。したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、走行機体1の上面側の脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55等が、互いに制限されることがないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【符号の説明】
【0081】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
5脱穀装置
19ミッションケース
21トラックフレーム
22駆動スプロケット
25中間ローラ
26ローリング支点フレーム
29前部ローリング支点軸
30後部ローリング支点軸
31上側前部ローリングアーム
32上側後部ローリングアーム
33下側前部ローリングアーム
34下側後部ローリングアーム
38車高調節油圧シリンダ
41車高調節油圧シリンダのピストンロッド
50ピッチングリンク機構
55前後傾斜用油圧シリンダ
59前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に脱穀装置等を搭載したコンバインに係り、より詳しくは、走行機体の左右方向の傾斜角度と、走行機体の前後方向の傾斜角度を変更可能に構成したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動させる技術がある(特許文献1)。また、前後傾斜用油圧シリンダによって走行機体が前後方向に傾動したときに、車高調節油圧シリンダの支持位置が修正される技術も公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304399号公報
【特許文献2】特開2006−204171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、前部ローリングアームと後部ローリングアームをローリングフレームにて連結した場合、後部ローリングアームの回動によって走行機体の前後方向の傾斜角度が修正されるときに、後部ローリングアームに連結された車高調節油圧シリンダの連結長さが変化する等の問題がある。即ち、前後傾斜用油圧シリンダが作動したときに、車高調節油圧シリンダのピストンを進出又は退入させる力が発生し、車高調節油圧シリンダの連結支軸と、ピストンの連結支軸との間の長さが変化して、車高調節油圧シリンダに作動油が吸入されたり排出されることによって、車高調節油圧シリンダの作動油に空気が混入したり漏れる等の問題がある。したがって、前記従来技術に示す如く、ローリングシリンダの連結長さの変化量が少なくなるように、ローリングリンク機構又はピッチングリンク機構を構成する必要がある。車高調節油圧シリンダ又は前後傾斜用油圧シリンダ等を簡単に組付けることができない等の問題がある。なお、前後及び左右の4本の油圧シリンダを設けて、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動させる技術もあるが、左右傾斜制御構造と前後傾斜制御構造を一体的に取扱う必要があり、油圧制御構造等の製造コストを簡単に低減できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、走行機体と走行部の間に前後傾斜用油圧シリンダ等を低コスト且つコンパクトに配置できるものでありながら、走行機体の左右傾斜制御機能が損なわれることがないようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したものであるから、前記走行機体の下面側で、前記左右の車高調節油圧シリンダと前記前後傾斜用油圧シリンダを左右幅方向に並列にコンパクトに支持できる。前記走行機体とトラックフレームの間の機体底部に前記車高調節油圧シリンダの連結構造や前後傾斜用油圧シリンダのピッチングリンク機構を簡単に組付けることができる。また、前記車高調節油圧シリンダの連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、前記走行機体の前後方向の傾斜角度を変更できる。前記車高調節油圧シリンダの左右傾斜制御機能を損なうことなく、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後傾斜制御できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したものであるから、前記走行機体の下面と前記走行クローラの上面との間隔を簡単に確保できるものでありながら、前記車高調節油圧シリンダ機構と前後傾斜用油圧シリンダ機構をコンパクトに支持できる。また、前記走行機体に対して、前記走行部の後側を接離させて前記走行機体を大きく前後傾動できる。前記走行機体の下面と前記走行部の前側上面との間から、前記走行部が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。前記走行機体に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたものであるから、前記走行機体の下面と前記走行クローラの前部上側との間隔(駆動スプロケット側の間隔)を簡単に確保できる。前記走行機体を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な前記走行クローラの迎え角を形成できる。前記走行クローラの走破性能を向上できる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したものであるから、前記車高調節油圧シリンダを含む左右傾斜制御構造と、前記前後傾斜用油圧シリンダを含む前後傾斜制御構造を、前記走行機体の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、前記走行機体の上面側の脱穀装置等又は前記前後傾斜用油圧シリンダ等が、互いに制限されることがないから、前記走行部又は脱穀装置の組立分解作業性等を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】走行部の側面説明図である。
【図4】走行部の平面説明図である。
【図5】左右傾斜制御構造及び前後傾斜制御構造の側面説明図である。
【図6】走行部の側面説明図である。
【図7】走行部の平面説明図である。
【図8】左右傾斜制御構造及び前後傾斜制御構造の側面説明図である。
【図9】走行機体の上昇動作説明図である。
【図10】走行機体の前傾動作説明図である。
【図11】走行機体の上昇及び前傾動作説明図である。
【図12】走行機体の上昇及び後傾動作説明図である。
【図13】左右傾斜制御及び前後傾斜制御及び刈取高さ制御のブロック図である。
【図14】コンバインの姿勢制御のフローチャートである。
【図15】刈取高さ制御のフローチャートである。
【図16】左右傾斜制御及び前後傾斜制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の刈取昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。図2に示す如く、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な穀粒排出オーガ8が設けられている。穀粒タンク7の内部に収集された穀粒が、穀粒排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0017】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11及び運転座席12等が配置されている。なお、運転キャビン10には、図示しないが、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドル11を設けるハンドルコラムと、運転座席12の左側方のレバーコラムに設ける走行主変速レバー、及び走行副変速レバー、刈取クラッチ及び脱穀クラッチ等の作業クラッチを入り切り操作する作業クラッチレバー等が、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。
【0018】
図1及び図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にディーゼルエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。ディーゼルエンジン20の出力がミッションケース19に伝達され、ミッションケース19によってディーゼルエンジン20の出力が変速され、ミッションケース19の変速出力によって走行クローラ2が駆動される。
【0019】
図1及び図2に示す如く、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0020】
図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する選別機構としての揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0021】
図1及び図2に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227によって選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。なお、前記各コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。また、揺動選別盤227は、揺動駆動軸(図示省略)によって、略一定速度で前後方向及び上下方向に往復揺動する。その結果、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、揺動選別盤227のフィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)される。
【0022】
前記揺動選別盤227によって脱穀物が搖動選別されることによって、脱穀物中の穀粒が、揺動選別盤227のグレンシーブ(図示省略)から下方に落下する。前記グレンシーブから落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
【0023】
また、図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0024】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0025】
次に、図3乃至図5を参照しながら、第1実施形態の走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図3及び図4に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着された走行ブラケット1aに、左右一対の前側軸受体27を介して、左右一対のローリング支点フレーム26の前端側が連結されている。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28がそれぞれ配置されている。左右の前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29をそれぞれ貫通させ、左右の後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30をそれぞれ貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行ブラケット1aを介して駆動スプロケット22(ミッションケース19)が配置されている。
【0026】
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。一方、左右一対の上側後部ローリングアーム32と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。
【0027】
図3及び図4に示す如く、ターンバックル付きで伸縮調節可能な左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37(連結リンクフレーム42)を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
【0028】
図3及び図4に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。左右一対の前部ローリング支点軸29に左右一対のシリンダ支持フレーム39の一端側を回動可能にそれぞれ連結させている。左右一対のシリンダ支持フレーム39の他端側に、軸体を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の前後連結ローリングフレーム36に、連結リンクフレーム42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
【0029】
図5に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
【0030】
また、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平に支持されるように構成している。
【0031】
次に、図3及乃至図5を参照して、走行機体1の行機体1の前後方向の傾斜角の調節構造について説明する。図3及び図4に示す如く、走行機体1の下面側に左右一対のピッチング軸受体48が配置されている。左右一対のピッチング軸受体48にピッチング支点軸49の左右両端部を回動可能に軸支させている。左右一対の後部ローリング支点軸30にピッチング支点軸49を連結するピッチングリンク機構50を備えている。ピッチングリンク機構50は、前後傾斜用アーム58が一体形成された主動リンク51と、後側軸受体28が一体形成された従動リンク52を有する。ピッチング支点軸49に主動リンク51の下端側を回動可能に軸支している。従動リンク52の一端側に後側軸受体28を介して後部ローリング支点軸30を回動可能に軸支させている。主動リンク51の前端側と従動リンク52の他端側を、連動軸体53にて折り曲げ可能に連結している。
【0032】
即ち、図3及び図5に示す如く、走行機体1の下面側にピッチング支点軸49を介して主動リンク51が配置されている。主動リンク51に連動軸体53を介して従動リンク52が回動可能に連結されている。上側後部ローリングアーム32及び下側後部ローリングアーム34が後部ローリング支点軸30を介して従動リンク52に連結されている。主動リンク51と前後傾斜用アーム58が一体揺動することによって、連動軸体53が上下方向に移動して、左右一対の後側軸受体28と左右一対の後部ローリング支点軸30が上下動して、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が回動する。また、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が回動して、走行機体1の後部と中間ローラ25が上下動することによって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が変更されるように構成している。
【0033】
図3及び図4に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備える。走行機体1の高剛性フレーム1bにシリンダ台56を固着し、シリンダ台56に軸体57を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結している。また、ピッチング支点軸49に前後傾斜用アーム58(主動リンク51)の基端側を回動可能に軸支し、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59に、連結リンクフレーム60を介して前後傾斜用アーム58の先端側を連結している。なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸64に回転自在に軸支している。
【0034】
なお、図3に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55は、コンバインの機体全体の前後方向の重心位置に、側面視で上下に並列状に配置されている。また、ディーゼルエンジン20の前後方向の重心位置が、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55と、前部ローリング支点軸29の間になるように、走行機体1の上面側にディーゼルエンジン20が搭載される。
【0035】
図5に示す車高が高いピストンロッド41進出状態(又は車高が低いピストンロッド41退入状態)で、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を退入させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右の後部ローリング支点軸30が下方に押下げられ、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に下動する。その結果、下側前部ローリングアーム33及び下側後部ローリングアーム34の平行姿勢を変更させることなく、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側が押下げられ、走行機体1の後端側の車高が高くなり、走行機体1が前下がりに傾斜するように構成している。なお、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を進出させることによって、前記とは逆に、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に上動し、走行機体1の後端側の車高が低くなり、走行機体1が後下がりに傾斜することは云うまでもない。
【0036】
即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢(前下がり傾斜姿勢)に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。前後傾斜用油圧シリンダ55が作動しても、各ローリングアーム31,32,33,34の平行姿勢が一定姿勢に維持され、車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41を進退させる外力が付加されないから、各ローリングアーム31,32,33,34の変形損傷又は車高調節油圧シリンダ38の油漏れ等を防止でき、それらの耐久性を向上できる。
【0037】
次に、図6乃至図9を参照しながら、第2実施形態の走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着された走行ブラケット1aに、左右一対の前側軸受体27を介して、左右一対のローリング支点フレーム26の前端側が連結されている。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28がそれぞれ配置されている。前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29を貫通させ、後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30を貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行ブラケット1aを介して駆動スプロケット22が配置される。
【0038】
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。一方、左右一対の上側後部ローリングアーム32と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。
【0039】
図6及び図7に示す如く、ターンバックル付きで伸縮調節可能な左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
【0040】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。左右一対の前部ローリング支点軸29に左右一対のシリンダ支持フレーム39の一端側を回動可能にそれぞれ連結させている。左右一対のシリンダ支持フレーム39の他端側に、軸体を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の前後連結ローリングフレーム36に、連結リンクフレーム42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
【0041】
図9に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
【0042】
図8に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド39を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平に支持されるように構成している。
【0043】
次に、図6及び図7、図7乃至図12を参照して、走行機体1の行機体1の前後方向の傾斜角の調節構造について説明する。図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側の走行ブラケット1aに左右一対の前側軸受体27を介して連結された左右一対のローリング支点フレーム26は、前側軸受体27回りに回動可能に支持されている。即ち、左右一対のローリング支点フレーム26の後端側が上下方向に揺動移動して、左右一対の後側軸受体28と左右一対の後部ローリング支点軸30が、上下動するように構成している。
【0044】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の下面側に左右一対のピッチング軸受体48が配置されている。左右一対のピッチング軸受体48にピッチング支点軸49の左右両端部を回動可能に軸支させている。左右一対の後部ローリング支点軸30にピッチング支点軸49を連結するピッチングリンク機構50を備えている。ピッチングリンク機構50は、主動リンク51と、従動リンク52を有する。ピッチング支点軸49に主動リンク51の基端側を固着している。後部ローリング支点軸30に従動リンク52の基端側を回動可能に軸支させている。主動リンク51の先端側と従動リンク52の先端側を、連動軸体53にて折り曲げ可能に連結している。
【0045】
図6及び図7に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備える。走行機体1の高剛性フレーム1bにシリンダ台56を固着し、シリンダ台56に軸体57を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結している。また、ピッチング支点軸49に前後傾斜用アーム58の基端側を固着し、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59に、連結リンクフレーム60を介して前後傾斜用アーム58の先端側を連結している。なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸64に回転自在に軸支している。
【0046】
なお、図8に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55は、コンバインの機体全体の前後方向の重心位置に、側面視で上下に並列状に配置されている。また、ディーゼルエンジン20の前後方向の重心位置が、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55と、前部ローリング支点軸29の間になるように、走行機体1の上面側にディーゼルエンジン20が配置されている。
【0047】
図10に示す車高が低いピストンロッド41退入状態、又は図11に示す車高が高いピストンロッド41進出状態のいずれの状態であっても、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を退入させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に下動し、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側を押し下げ、走行機体1の後端側の車高を高くするように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
【0048】
一方、図12に示す如く、図11とは逆の方向に前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を進出させた場合、ピッチングリンク機構50が作動して、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時に上動し、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側を押し上げ、走行機体1の後端側の車高を低くするように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を下動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも低くなる後方傾斜姿勢に傾動させるように構成している。その結果、車高が低いピストンロッド41退入状態、又は車高が高いピストンロッド41進出状態のいずれの状態であっても、前下がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
【0049】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行クローラ2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成している。また、前部ローリング支点軸29又は後部ローリング支点軸30のいずれか一方に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前後傾斜用油圧シリンダ55にピッチングリンク機構50を介して後部ローリング支点軸29又は前部ローリング支点軸30のいずれか他方を連結させ、車高調節油圧シリンダ38が連結された前部ローリング支点軸28又は後部ローリング支点軸30回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。
【0050】
したがって、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ38本体とピストンロッド42の全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55の油圧構造等を簡単に構成でき、走行機体1と走行クローラ2の間に車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ55等を低コスト且つコンパクトに配置できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0051】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前後傾斜用油圧シリンダ55にピッチングリンク機構50を介して後部ローリング支点軸30を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。したがって、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1の後側を持上げて、走行機体1の後側と走行クローラ2を離間させることによって、前側が低くなる姿勢に走行機体1が大きく傾斜した場合であっても、走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出させることができる。例えば、走行クローラ2の前側の走行機体1に、走行クローラ2に走行駆動力を伝達するためのミッションケース19等を簡単に設置できる。また、走行機体1に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0052】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置された構造であって、走行クローラ2の駆動スプロケット22から遠い側の後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構50を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、駆動スプロケット22に近い側の前部ローリング支点軸29回りに走行機体1を回動させて、走行機体1を前後方向に傾動させるように構成している。
【0053】
したがって、走行機体1に中間ローラ25を支持したことによって、走行機体1が前後方向に大きく傾斜した場合であっても、走行クローラ2の前側の上面が走行機体1に近接するのを防止できるから、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できるものでありながら、走行機体1を前後方向に大きく傾斜させて、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正できる。即ち、走行機体1の下面と、走行クローラ2の駆動スプロケット22設置側との間隔が充分に確保され、走行クローラ2に走行駆動力を伝達するミッションケース19又は走行機体1等に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0054】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29及び後部ローリング支点軸30を介して、上側前部ローリングアーム31及び下側前部ローリングアーム33と、上側後部ローリングアーム32及び下側後部ローリングアーム34を支持させるローリング支点フレーム26を備えている。また、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させ、ピッチングリンク機構50及び後部ローリング支点軸30を介して走行機体1にローリング支点フレーム26の後端側を連結させ、上側前部ローリングアーム31に上側後部ローリングアーム32を連結する前後連結ローリングフレーム36と、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置している。
【0055】
したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、走行機体1の上面側の脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55等が、互いに制限されて配置されることがないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【0056】
次に、図13を参照しながら、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御と、前後方向の傾斜制御と、刈取装置3の昇降制御について説明する。図13は、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御手段、及び前後方向の傾斜制御手段、及び刈取装置3の昇降制御手段の機能ブロック図であり、マイクロコンピュータ等によって形成した作業コントローラ71を備える。作業コントローラ71は、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有する。
【0057】
図13に示す如く、作業コントローラ71には、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、刈取装置3によって刈取った刈取穀稈を検出する作物センサ72と、刈取装置3の作動を検出する作業スイッチ73と、走行機体1の左右方向の傾斜角度を検出する振子式の左右傾斜センサ74と、走行機体1と左側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の左車高センサ75と、走行機体1と右側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の右車高センサ76と、走行機体1の左右方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の左右傾斜設定器77が接続されている。
【0058】
また、作業コントローラ71には、出力系の各種電磁油圧バルブ、即ち、左傾斜変更バルブ90と、右傾斜変更バルブ91が接続されている。この構成により、傾斜センサ64の検出値と、左車高センサ65の検出値と、右車高センサ66の検出値とに基づき、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換えて、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させ、走行機体1の左右方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0059】
さらに、図13に示す如く、作業コントローラ71には、走行機体1の前後方向の傾斜角度を検出する振子式の前後傾斜センサ81と、走行機体1の後部とトラックフレーム21の後端側との相対間隔(トラックフレーム21の前後方向の対本機傾斜角度)を検出するポテンショメータ形の本機傾斜センサ82と、走行機体1の前後方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の前後傾斜設定器83が接続されている。
【0060】
また、作業コントローラ71には、前側下降バルブ92と、前側上昇バルブ93が接続されている。この構成により、前後傾斜センサ81の検出値と、本機傾斜センサ82の検出値と、前後傾斜設定器83の設定値とに基づき、前側下降バルブ92又は前側上昇バルブ93を切換えて、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させ、走行機体1の前後方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0061】
一方、図13に示す如く、作業コントローラ71には、走行クローラ2の回転速度(車速)を検出する車速センサ85と、刈取装置3の対地高さを検出するポテンショメータ形の刈取高さセンサ86と、刈取装置3の対地高さの基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の刈取高さ設定器87が接続されている。
【0062】
また、作業コントローラ71には、刈取下降バルブ94と、刈取上昇バルブ95が接続されている。この構成により、車速センサ85の検出値と、刈取高さセンサ86の検出値と、刈取高さ設定器87の設定値とに基づき、刈取下降バルブ94又は刈取上昇バルブ95を切換えて、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させ、刈取装置3の対地高さを修正して、刈取装置3の穀稈刈取高さが略一定になるように自動制御する。
【0063】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行クローラ2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成している。また、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側で、トラックフレーム21の上面よりも上方側に配置している。
【0064】
したがって、走行機体1の下面側に左右の車高調節油圧シリンダ38や前後傾斜用油圧シリンダ55をコンパクトに支持できる。車高調節油圧シリンダ38の連結構造や前後傾斜用油圧シリンダ55のピッチングリンク機構50等を簡単に構成できる。また、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0065】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部は走行クローラ2とトラックフレーム21をそれぞれ有し、前後傾斜用油圧シリンダ55によって作動させるピッチングリンク機構50を備える構造であって、走行機体1に前部ローリング支点軸29を介してローリング支点フレーム26の前端側を回動可能に連結させ、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を配置し、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を介してピッチングリンク機構50を連結させる一方、前部ローリング支点軸29に車高調節油圧シリンダ38を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。
【0066】
したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の上面との間隔を簡単に確保でき、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1を前後傾動させるピッチング動作性能を向上できる。例えば、走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。
【0067】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置され、走行クローラ2の前端側に駆動スプロケット22が配置された構造であって、駆動スプロケット22から遠い後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構50を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、駆動スプロケット22に近い前部ローリング支点軸29回りに走行機体1を回動させて、走行機体1を前後方向に傾動させるように構成している。
【0068】
したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の前部上側との間隔(駆動スプロケット22側の間隔)を簡単に確保できる。また、走行機体1を上方に持上げて、車高を高くした状態のときにも、テンションローラ23側の走行クローラ2の迎え角を簡単に確保できる。例えば、走行機体1を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な大きさに走行クローラ2の迎え角を形成できる。走行クローラ2の走破性能を維持できる。
【0069】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリング支点軸29及び後部ローリング支点軸30を介して前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、脱穀装置5の下面側に配置する走行機体1の高剛性フレーム1bに前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、左右の走行クローラ2の間に前後傾斜用油圧シリンダ55を配置し、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させる一方、走行機体1にローリング支点フレーム26の後端側を連結させている。
【0070】
したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側にコンパクトに設置できる。例えば、脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55の取付け位置等が互いに制約されないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【0071】
次に、図14乃至図16に示すフローチャートを参照しながら、刈取装置3の穀稈刈取高さ制御態様、及びコンバイン(走行機体1)の左右方向及び前後方向の傾斜制御態様を説明する。図14のフローチャートに示す如く、エンジン20が始動された場合、作物センサ72値、左右傾斜センサ74値、左車高センサ75値、右車高センサ76値、左右傾斜設定器77値、前後傾斜センサ81値、本機傾斜センサ82値、前後傾斜設定器83値、車速センサ85値、刈取高さセンサ86値、刈取高さ設定器87値が読込まれる。作業スイッチ73がオンの刈取作業中、図15のフローチャートに示す刈取高さ制御が実行される。また、作業スイッチ73がオン又はオフのいずれであっても、図16のフローチャートに示す傾斜制御が実行される。
【0072】
図15のフローチャートに示す如く、作業スイッチ73がオンの刈取作業中に、作物センサ72がオンになっていると、車速センサ85値と、刈取高さセンサ86値と、刈取高さ設定器87値に基づき、刈取装置3の穀稈刈取高さが低いと判断された場合、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を上昇制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。一方、刈取装置3の穀稈刈取高さが高いと判断された場合、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を下降制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。図15の刈取高さ制御によって、刈取高さ設定器87によって設定された刈取装置3の穀稈刈取高さを自動的に維持できる。
【0073】
図16のフローチャートに示す如く、左右傾斜センサ74値と、左車高センサ75値と、右車高センサ76値と、左右傾斜設定器77値に基づき、走行機体1が左側に傾斜していると判断された場合は、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換え、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の左側を上昇させるか、又は走行機体1の右側を下降させる。一方、走行機体1が右側に傾斜していると判断された場合は、左傾斜変更バルブ90又は右傾斜変更バルブ91を切換え、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側を上昇させるか、又は走行機体1の左側を下降させる。図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御によって、走行機体1の左右方向の傾斜角度が自動的に修正されて、左右傾斜設定器77値に基づき、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を維持できる。
【0074】
また、図16のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ81値と、本機傾斜センサ82値と、前後傾斜設定器83値に基づき、走行機体1が前側方に下り傾斜していると判断された場合は、前側上昇バルブ93を切換え、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。一方、走行機体1が後側方に下り傾斜していると判断された場合は、前側下降バルブ92を切換え、前後傾斜用油圧シリンダ55を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。図16のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御によって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が自動的に修正されて、前後傾斜設定器83値に基づき、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を維持できる。
【0075】
穀稈の刈取作業中は、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御に優先して、図15の刈取高さ制御が実行されることによって、分草体225が田面の泥土に突込むのを防止できる。図15の刈取高さ制御が実行された後に、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、圃場の枕地等の乱れた田面の泥土に分草体225が突込むのを防止できる。図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、走行機体1の対地高さが高くなった場合でも(図9乃至図12参照)、テンションローラ23と最後部のトラックローラ24によって支持された走行クローラ2の対地迎え角が適正大きさに維持され、走行クローラの走破性能が保持される。
【0076】
また、図16のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御に優先して、図16のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御が実行されることによって、刈取装置3の左側又は右側の分草体225の対地高さを所定以上に維持しながら、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御を実行できる。その結果、刈取装置3の対地高さが低い刈取作業のときにも、前後方向の傾斜制御によって、刈取装置3の左側又は右側の分草体225が田面の泥土に突込むのを防止できる。
【0077】
図1、図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を配置した走行機体1と、走行機体1を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダ55を備え、前部及び後部ローリング支点軸29,30又はピッチングリンク機構50を介して、左右の走行部2に走行機体1を連結して、左右方向又は前後方向に走行機体1を傾動可能に構成したコンバインにおいて、左右の車高調節油圧シリンダ38及び前後傾斜用油圧シリンダ55を、走行機体1の前後方向に向けて、トラックフレーム21の前後幅内で、走行機体1の上面よりも下方側に配置した構造であって、左右の車高調節油圧シリンダ38の間で、左右の車高調節油圧シリンダ38と並列状に、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後方向に向けて配置している。したがって、走行機体1の下面側で、左右の車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ55を左右幅方向に並列にコンパクトに支持できる。走行機体1とトラックフレーム21の間の機体底部に車高調節油圧シリンダ38の連結構造や前後傾斜用油圧シリンダ55のピッチングリンク機構50を簡単に組付けることができる。また、車高調節油圧シリンダ38の連結長さ(シリンダ本体とピストンロッドの全長)を変化させることなく、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更できる。車高調節油圧シリンダ38の左右傾斜制御機能を損なうことなく、前後傾斜用油圧シリンダ55を前後傾斜制御できる。
【0078】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、左右の走行部は走行クローラ2とトラックフレーム21をそれぞれ有し、前後傾斜用油圧シリンダ38によって作動させるピッチングリンク機構50を備える構造であって、走行機体1に回動可能に連結させるローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を配置し、ローリング支点フレーム26の後端側に後部ローリング支点軸30を介してピッチングリンク機構50を連結させ、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1が前後方向に傾動するように構成している。したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の上面との間隔を簡単に確保できる。車高調節油圧シリンダ38機構と前後傾斜用油圧シリンダ55機構をコンパクトに支持できる。また、走行機体1に対して、走行クローラ2の後側を接離させて走行機体1を大きく前後傾動できる。走行機体1の下面と走行クローラ2の前側上面との間から、走行クローラ2が持ち回る泥土を前方に向けてスムーズに排出できる。走行機体1に付着する泥土の堆積量を低減して、メンテナンス作業性等を向上できる。
【0079】
図6及び図7に示す如く、前記走行部としての走行クローラ2の非接地側を支持する中間ローラ25が走行機体1側に配置され、走行クローラ2の前端側に駆動スプロケット22とミッションケース19が配置され、前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、駆動スプロケット22から遠い後部ローリング支点軸30に、ピッチングリンク機構55を介して前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させている。したがって、走行機体1の下面と走行クローラ2の前部上側との間隔(駆動スプロケット22側の間隔)を簡単に確保できる。走行機体1を上方に持上げて畦越えするときに、畦越えに必要な走行クローラ2の迎え角を形成できる。走行クローラ2の走破性能を向上できる。
【0080】
図3、図4及び図6、図7に示す如く、前部ローリングアーム31,33及び後部ローリングアーム32,34を支持させるローリング支点フレーム26を備えた構造であって、前部ローリング支点軸29回りに回動可能に走行機体1にローリング支点フレーム26の前端側を連結させる一方、走行機体1の高剛性フレーム1bに前後傾斜用油圧シリンダ55を連結させ、左右の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41の突出方向と同一方向に向けて、前後傾斜用油圧シリンダ55のピストンロッド59を突出させるように構成している。したがって、車高調節油圧シリンダ38を含む左右傾斜制御構造と、前後傾斜用油圧シリンダ55を含む前後傾斜制御構造を、走行機体1の下面側の低い位置にコンパクトに設置できる。例えば、走行機体1の上面側の脱穀装置5等又は前後傾斜用油圧シリンダ55等が、互いに制限されることがないから、走行クローラ2又は脱穀装置5の組立分解作業性等を向上できる。
【符号の説明】
【0081】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
5脱穀装置
19ミッションケース
21トラックフレーム
22駆動スプロケット
25中間ローラ
26ローリング支点フレーム
29前部ローリング支点軸
30後部ローリング支点軸
31上側前部ローリングアーム
32上側後部ローリングアーム
33下側前部ローリングアーム
34下側後部ローリングアーム
38車高調節油圧シリンダ
41車高調節油圧シリンダのピストンロッド
50ピッチングリンク機構
55前後傾斜用油圧シリンダ
59前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、
前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項1】
左右の走行部を配置した走行機体と、前記走行機体を左右方向に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダと、前記走行機体を前後方向に傾動させる前後傾斜用油圧シリンダを備え、前部及び後部ローリング支点軸又はピッチングリンク機構を介して、前記左右の走行部に前記走行機体を連結して、左右方向又は前後方向に前記走行機体を傾動可能に構成したコンバインにおいて、
前記左右の車高調節油圧シリンダ及び前記前後傾斜用油圧シリンダを、走行機体の前後方向に向けて、前記トラックフレームの前後幅内で、前記走行機体の上面よりも下方側に配置した構造であって、前記左右の車高調節油圧シリンダの間で、前記左右の車高調節油圧シリンダと並列状に、前記前後傾斜用油圧シリンダを前後方向に向けて配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記左右の走行部は走行クローラとトラックフレームをそれぞれ有し、前記前後傾斜用油圧シリンダによって作動させる前記ピッチングリンク機構を備える構造であって、前記走行機体に回動可能に連結させるローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を配置し、前記ローリング支点フレームの後端側に前記後部ローリング支点軸を介して前記ピッチングリンク機構を連結させ、前記前部ローリング支点軸回りに前記走行機体が前後方向に傾動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行部としての走行クローラの非接地側を支持する中間ローラが前記走行機体側に配置され、前記走行クローラの前端側に駆動スプロケットとミッションケースが配置され、前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記駆動スプロケットから遠い前記後部ローリング支点軸に、前記ピッチングリンク機構を介して前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前部ローリングアーム及び後部ローリングアームを支持させるローリング支点フレームを備えた構造であって、前記前部ローリング支点軸回りに回動可能に前記走行機体に前記ローリング支点フレームの前端側を連結させる一方、前記走行機体の高剛性フレームに前記前後傾斜用油圧シリンダを連結させ、前記左右の車高調節油圧シリンダのピストンロッドの突出方向と同一方向に向けて、前記前後傾斜用油圧シリンダのピストンロッドを突出させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−200686(P2010−200686A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50632(P2009−50632)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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