コンバイン
【課題】取部から受けた刈取穀稈を脱穀部に搬送するフィードチェーンの搬送速度を走行車速に対応して切替えることにより幅広い走行車速について安定した穀稈搬送を可能とするとともに、畦際に停車して穀稈の掻込みを行う場合についても安定した穀稈搬送が可能となるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、刈取部20から受けた刈取穀稈を脱穀部30に搬送するフィードチェーン33の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部Cを備えて構成され、この制御部Cには、走行停止時における掻込ペダル81の操作信号により、停車したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行とともに、フィードチェーン33を所定の搬送速度で動作させる連係機能を設けたものである。
【解決手段】コンバインは、刈取部20から受けた刈取穀稈を脱穀部30に搬送するフィードチェーン33の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部Cを備えて構成され、この制御部Cには、走行停止時における掻込ペダル81の操作信号により、停車したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行とともに、フィードチェーン33を所定の搬送速度で動作させる連係機能を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部から受けた刈取穀稈を脱穀部に搬送するフィードチェーンを備えて刈取脱穀走行が可能なコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコンバインは、刈取部から受けた刈取穀稈を一定速度で脱穀部に搬送するフィードチェーンを備え、このフィードチェーンは常に一定速度で穀稈を搬送するように制御することにより、高速刈取に対応して能率良く刈取脱穀走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第848876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低速走行で刈取を要する場合、例えば、倒れている穀稈を確実に引き起こすために低速で刈取走行する場合は、刈取部に受ける穀稈量が減少することに伴ってフィードチェーンによる搬送穀稈の厚さが変化し、穀稈の受け渡しが不安定となることがあるので、この問題を解消するために、フィードチェーンの送り速度を走行車速に対応して高速と低速に切替え可能に構成する例があるが、畦際の刈取のために停車したまま掻込むようして刈取を行う場合においては、機体の停車によって刈取部からの穀稈が途絶えるとともにフィードチェーンが低速搬送に切替えられ、その後の掻込ペダル等による掻込み操作で刈取部から大量の穀稈がフィードチェーンに渡されることにより、搬送穀稈の厚さの急激な変化によって搬送穀稈の受け渡し時に詰まりを招くという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、刈取部から受けた刈取穀稈を脱穀部に搬送するフィードチェーンの搬送速度を走行車速に対応して切替えることにより幅広い走行車速について安定した穀稈搬送を可能とするとともに、畦際に停車して穀稈の掻込みを行う場合についても安定した穀稈搬送が可能となるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、刈取部(20)から引き継いだ刈取穀稈を脱穀部(30)に供給するフィードチェーン(33)の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部(C)を備えるコンバインにおいて、該制御部(C)には、走行停止時における掻込ペダル(81)の操作に基づいて、走行停止状態のまま刈取部(20)を駆動して穀稈の掻込みを行うとともにフィードチェーン(33)を所定の搬送速度で駆動する連係機能を備えたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
上記制御部(C)は、刈取走行中は、車速に応じてフィードチェーン(33)の搬送速度を制御することから、高速から低速までの幅広い車速の刈取脱穀走行について刈取部(20)から脱穀部(30)に穀稈が安定して搬送され、また、停車時の掻込ペダル(81)の操作により、停車したまま刈取部(20)を駆動させて穀稈の掻込み及び刈り取りを行とともに、フィードチェーン(33)が所定の搬送速度で駆動して刈取穀稈が脱穀部(30)へ供給される。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記制御部(C)は、掻込ペダル(81)が戻された時点から所定時間に亘りフィードチェーン(33)の搬送速度を維持した後に走行車速に応じた搬送速度に戻す制御を実行する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
上記制御部(C)により、掻込ペダル(81)を元に戻してもフィードチェーン(33)の搬送速度が所定時間について維持される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、刈取走行中は、車速に応じてフィードチェーン(33)の搬送速度を制御することから、高速から低速までの幅広い車速での刈取脱穀走行において刈取部(20)から脱穀部(30)に穀稈が安定して搬送され、また、停車時の掻込ペダル(81)の操作により、停車したまま刈取部(20)を駆動させて穀稈の掻込み及び刈り取りを行とともに、フィードチェーン(33)が所定の搬送速度で駆動することから、畦際における穀稈の掻込み操作に対応して穀稈の詰まりを招くことなく、刈取部(20)から脱穀部(30)に安定して搬送することができ、この畦際での穀稈の刈取作業を能率よく行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、掻込ペダル(81)を元に戻してもフィードチェーン(33)の搬送速度が所定時間に亘って維持されることから、掻込み終了後の搬送穀稈の詰まりを防止しつつ、次の作業を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フィードチェーン制御に関するシステムの要部構成図
【図2】掻込制御処理のフローチャート
【図3】掻込制御の適用対象となるコンバインの一例を表した側面図
【図4】変速伝動部の要部側面図
【図5】図4の変速伝動部の軸線展開断面図
【図6】操縦部の俯瞰図
【図7】スイッチパネルの見取図
【図8】排出オーガ装置の制御システム構成図
【図9】排出動作の制御フローチャート
【図10】排出終了後の制御フローチャート
【図11】ズームオーガの機構図
【図12】ズームオーガの制御システム構成図
【図13】図12のシステムの制御フローチャート
【図14】オーガ伸縮制御のフローチャート
【図15】排出オーガ装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のコンバイン1は、図3の側面図に示すように、走行装置3を備えた機体フレーム2に、刈取部20、脱穀部30、操縦部5等を装荷し、刈取部20と脱穀部30との間にフィードチェーン33を備えるとともに、各機器の駆動を制御する制御装置を搭載して構成される。コンバイン1の全体構成は、別途詳述する。
【0013】
制御装置は、刈取部20から受けた刈取穀稈を脱穀部30に搬送するフィードチェーン33の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部Cを備えて構成される。詳細には、フィードチェーン制御に関するシステムの要部構成図を図1に示すように、制御部Cは、走行停止時における掻込ペダル81の操作信号により、走行装置3を停止したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行とともに、フィードチェーン33を所定の搬送速度で駆動させる連係制御機構を備える。
【0014】
上記制御部Cは、刈取走行中は、穀稈搬送の安定化のために、車速に応じてフィードチェーン33の搬送速度を切替え制御し、また、畦際等における掻込動作の際は、制御処理のフローチャートを図2に示すように、ステップ1(以下において、S1の如く略記する。)の掻込ペダル81の操作の判定処理を行い、ペダル操作の検出の際に刈脱レバー66が「オン」であることを条件(S2)に、フィードチェーン33を所定の搬送速度で駆動(S3a,S3b)させる。このフィードチェーン33の駆動は、掻込ペダル81の踏込み操作によるタイマのセット(S4)により、踏込み操作の終了から所定時間の経過(S5)まで維持されてから減速制御(S6a,S6b)によって元の低速搬送に戻される。
【0015】
このように、上記制御部Cにより、刈取走行中は、コンバイン1の車速に応じてフィードチェーン33の搬送速度を制御することにより、刈取部20から脱穀部30への穀稈搬送が安定化され、また、制御部Cの連係制御機構により、掻込ペダル81の操作に応じて走行装置3を停止したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行うとともに、フィードチェーン33が所定の搬送速度で駆動されることから、畦際における穀稈の掻込みに対応して穀稈が刈取部20から脱穀部30に安定して搬送される。また、掻込ペダル81を開放して元に戻してもフィードチェーン33の搬送速度が所定時間について維持されることから、掻込み終了後の搬送穀稈の詰まりを回避して次の作業を開始することができる。
【0016】
(コンバイン)
前記制御の適用対象となるコンバイン1は、その一例を表した側面図を図3に示すように、機体フレーム2を支持する左右一対の走行クローラによる走行装置3を備え、機体前部に刈取部20を昇降可能に設け、機体後半部に脱穀部30およびグレンタンク50を備え、グレンタンク50の前側で刈取部20に臨んで操縦部5を設け、操縦部5には走行操作用のHSTレバー62や旋回と刈取操作用のパワステレバー61等の操作具を配した操作パネル60が設けられ、操縦部5の下部後方に不図示のエンジン10を搭載している。
【0017】
刈取部20は分草具、穀稈引起装置、刈刃、搬送装置等を備え、扱深さを調節して穀稈を送り出し、この穀稈を始端部に受け継いで脱穀部30に搬送するフィードチェン33を設け、高速または低速に切替えるためのフィードチェン33の変速伝動部33aを脱穀部30の排塵ギヤボックスに付設する。
【0018】
フィードチェン33の変速伝動部33aは、その要部側面図と軸線展開断面図をそれぞれ図4、図5に示すように、排塵ギヤボックスのインプットシャフト121から排塵ファンシャフト121aを介して作業機動力を受ける切替シャフト122を設け、この切替シャフト122から電動式シフタ123によって選択伝動される高速用と低速用のギヤ122a、122bを介してフィードチェーンシャフト33bを高速と低速に切替え可能に構成する。
【0019】
電動式シフタ123は、シフタシャフト123bにシフトフォーク123aを軸支するとともに、モータ123cによって揺動動作するアーム123dからロッド123eを介してシフトフォーク123aと連結することにより、中立ポジションを挟んで高速と低速のポジションの範囲でシフトフォーク123aを電動制御可能に構成し、さらに、中立復帰用のモータ123fを設け、ケーブル123gを介してシフタシャフト123bと連結することによりシフトフォーク123aを中立位置に電動復帰可能に構成する。
【0020】
操縦部5には、その俯瞰図を図6に示すように、操作パネル60にパワステレバー61、HSTレバー62、刈脱レバー66等を配置し、床面に掻込ペダル81その他の操作ペダルを配置し、別途、スイッチパネル82を設ける。スイッチパネル82には、その見取図を図7に示すように、各種の設定スイッチ類、例えば、機器動作に連動してエンジン回転を制御するためのIQアクセルスイッチ70や、車高設定ダイヤル82b、ユーザー設定スイッチ82c、作業機切替スイッチ82d、選別制御ダイヤル82e、最高速設定ダイヤル82f、車速制御スイッチ82gが配置される。
【0021】
なお、走行部駆動用のHSTと刈取部駆動用のHSTを別々に設け、掻込ペダル81を踏込むと、これをスイッチで検出し、走行用HSTを停止のまま、刈取用HSTが駆動するように構成した場合でも、畦際で掻込み途中の穀稈を刈り取ることができる。
【0022】
(排出オーガ装置)
次に、排出オーガ装置について説明する。
グレンタンク50に付設した排出オーガ装置54は、一例として、図15の要部断面図に示すように、籾をオーガに送る量を調節できるシャッタ54aを設け、その開度を電動調節可能に構成する。シャッタ54aの制御は、その制御システム構成図を図8に示すように、シャッタ54aの開度調節のためにシャッター位置センサ54bを設けることにより、籾をオーガに送る量を調節可能に構成する。
【0023】
シャッタ54aの開度調節による排出動作の制御は、図9のフローチャートに示すように、エンジン回転10aが変化した場合に、その回転数に応じて目標速度設定(S11)に沿って排出速度を自動で調節(S12a〜S14a、S12b〜S14b)することにより、オーガの排出速度を自由に変えることができるので、エンジン回転が低いときでも、穀粒の排出詰まりを招くことなく、安心して排出できる。
【0024】
ズームオーガについては、上記オーガ排出速度制御におけるエンジン回転10aの代わりにズーム伸縮位置センサを用いてズームの伸縮に応じた目標速度設定として前記同様に制御することにより、ズーム54の伸縮に応じて排出速度を自動調節できることから、ズーム54が縮んでいるときでも、籾を傷めることなく、最適な速度で排出することができる。
【0025】
また、上記オーガ排出装置54の排出操作開始時においては、目標とする速度に到達するまで目標速度設定を徐々に上げていくようにして前記同様にシャッタ54aの開度を制御することにより、排出詰まりを防止することができ、排出クラッチの切操作による排出終了後においては、図10のフローチャートに示すように、目標速度設定(S21)により速度が最も遅い位置までシャッタを自動で動かし(S22〜S24)ておくことにより、排出詰まりを防止することができる。
【0026】
(ズームオーガ)
次に、伸縮可能なズームオーガの自動伸張制御について説明する。
ズームオーガは、図11のオーガ装置の機構図に示すように、固定搬送筒106の先端に移動搬送筒107をスライド可能に接続し、その中空部に、搬送螺旋114と直列して伝動軸116によって間隔調節が可能な多数の螺旋単体117を設け、モータ124により電動伸縮可能に構成する。
【0027】
上記ズームオーガの動作制御は、図12のシステム構成図に示すように、オーガ伸縮量の中間位置を検知できる中間位置センサ83、自動張出スイッチ68b等を設け、この自動張出スイッチ68bにより、図13のフローチャートに示すように、収納状態から自動的に最上げ状態にオーガを上昇(S31)後、ズームオーガを中間位置まで自動的に伸張させ(S33a〜S33c)てから排出位置まで旋回させるように制御部Cを構成することにより、籾排出時にズームオーガがあらかじめ中間位置まで伸張することで排出位置の調整時間を短縮することができ、また、自動伸ばしスイッチを設けてその適用を選択(S32)可能に構成することにより、状況に応じた対応が可能となる。
【0028】
また、上記中間位置センサ83の代わりにオーガ伸縮量を検知できるセンサを設け、図14のフローチャートに示すように、オーガを自動的に収納状態に移動させる自動収納スイッチを押して収納(S42)した時の前回のズームオーガ伸縮量を記憶(S41a、S41b)しておき、オーガを自動的に張出し状態に移動させる自動張出スイッチ68bを押してオーガを排出位置まで移動させる際に、記憶した位置までズームオーガを自動的に伸張させる(S44a、S44b、S44c)ようにすることで、籾排出時に排出位置の調整時間を短縮することができ、さらに、自動伸ばしスイッチを設けてその適用を選択可能(S43)に構成することにより、籾排出時の状況に応じた対応により、排出位置の調整時間を短縮することができる。
【0029】
上記ズームオーガにおける自動伸ばしスイッチを押す代わりに、自動張出スイッチ68bを一定時間内に2回以上押した場合に、中間位置までの伸張や前回収納時の伸縮位置までの伸張を行うように構成することにより、自動伸ばしスイッチのコスト負担を抑えつつ、その機能を確保することができる。
【0030】
また、自動張出スイッチ68bを押した回数に応じて、自動伸ばし無し・記憶位置まで伸ばす・中間位置まで伸ばす・最伸ばし位置まで伸ばす、等に自動伸ばし機能を切替え可能に構成することにより、多様な自動伸ばしスイッチのコスト負担を抑えつつ、多様な状況に応じた対応により、排出位置の調整時間を短縮することができ、その選択状態を確認できるようにモニタ等に表示する。
【符号の説明】
【0031】
20 刈取部
30 脱穀部
33 フィードチェーン
81 掻込ペダル
C 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部から受けた刈取穀稈を脱穀部に搬送するフィードチェーンを備えて刈取脱穀走行が可能なコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコンバインは、刈取部から受けた刈取穀稈を一定速度で脱穀部に搬送するフィードチェーンを備え、このフィードチェーンは常に一定速度で穀稈を搬送するように制御することにより、高速刈取に対応して能率良く刈取脱穀走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第848876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低速走行で刈取を要する場合、例えば、倒れている穀稈を確実に引き起こすために低速で刈取走行する場合は、刈取部に受ける穀稈量が減少することに伴ってフィードチェーンによる搬送穀稈の厚さが変化し、穀稈の受け渡しが不安定となることがあるので、この問題を解消するために、フィードチェーンの送り速度を走行車速に対応して高速と低速に切替え可能に構成する例があるが、畦際の刈取のために停車したまま掻込むようして刈取を行う場合においては、機体の停車によって刈取部からの穀稈が途絶えるとともにフィードチェーンが低速搬送に切替えられ、その後の掻込ペダル等による掻込み操作で刈取部から大量の穀稈がフィードチェーンに渡されることにより、搬送穀稈の厚さの急激な変化によって搬送穀稈の受け渡し時に詰まりを招くという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、刈取部から受けた刈取穀稈を脱穀部に搬送するフィードチェーンの搬送速度を走行車速に対応して切替えることにより幅広い走行車速について安定した穀稈搬送を可能とするとともに、畦際に停車して穀稈の掻込みを行う場合についても安定した穀稈搬送が可能となるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、刈取部(20)から引き継いだ刈取穀稈を脱穀部(30)に供給するフィードチェーン(33)の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部(C)を備えるコンバインにおいて、該制御部(C)には、走行停止時における掻込ペダル(81)の操作に基づいて、走行停止状態のまま刈取部(20)を駆動して穀稈の掻込みを行うとともにフィードチェーン(33)を所定の搬送速度で駆動する連係機能を備えたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
上記制御部(C)は、刈取走行中は、車速に応じてフィードチェーン(33)の搬送速度を制御することから、高速から低速までの幅広い車速の刈取脱穀走行について刈取部(20)から脱穀部(30)に穀稈が安定して搬送され、また、停車時の掻込ペダル(81)の操作により、停車したまま刈取部(20)を駆動させて穀稈の掻込み及び刈り取りを行とともに、フィードチェーン(33)が所定の搬送速度で駆動して刈取穀稈が脱穀部(30)へ供給される。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記制御部(C)は、掻込ペダル(81)が戻された時点から所定時間に亘りフィードチェーン(33)の搬送速度を維持した後に走行車速に応じた搬送速度に戻す制御を実行する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
上記制御部(C)により、掻込ペダル(81)を元に戻してもフィードチェーン(33)の搬送速度が所定時間について維持される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、刈取走行中は、車速に応じてフィードチェーン(33)の搬送速度を制御することから、高速から低速までの幅広い車速での刈取脱穀走行において刈取部(20)から脱穀部(30)に穀稈が安定して搬送され、また、停車時の掻込ペダル(81)の操作により、停車したまま刈取部(20)を駆動させて穀稈の掻込み及び刈り取りを行とともに、フィードチェーン(33)が所定の搬送速度で駆動することから、畦際における穀稈の掻込み操作に対応して穀稈の詰まりを招くことなく、刈取部(20)から脱穀部(30)に安定して搬送することができ、この畦際での穀稈の刈取作業を能率よく行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、掻込ペダル(81)を元に戻してもフィードチェーン(33)の搬送速度が所定時間に亘って維持されることから、掻込み終了後の搬送穀稈の詰まりを防止しつつ、次の作業を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フィードチェーン制御に関するシステムの要部構成図
【図2】掻込制御処理のフローチャート
【図3】掻込制御の適用対象となるコンバインの一例を表した側面図
【図4】変速伝動部の要部側面図
【図5】図4の変速伝動部の軸線展開断面図
【図6】操縦部の俯瞰図
【図7】スイッチパネルの見取図
【図8】排出オーガ装置の制御システム構成図
【図9】排出動作の制御フローチャート
【図10】排出終了後の制御フローチャート
【図11】ズームオーガの機構図
【図12】ズームオーガの制御システム構成図
【図13】図12のシステムの制御フローチャート
【図14】オーガ伸縮制御のフローチャート
【図15】排出オーガ装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のコンバイン1は、図3の側面図に示すように、走行装置3を備えた機体フレーム2に、刈取部20、脱穀部30、操縦部5等を装荷し、刈取部20と脱穀部30との間にフィードチェーン33を備えるとともに、各機器の駆動を制御する制御装置を搭載して構成される。コンバイン1の全体構成は、別途詳述する。
【0013】
制御装置は、刈取部20から受けた刈取穀稈を脱穀部30に搬送するフィードチェーン33の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部Cを備えて構成される。詳細には、フィードチェーン制御に関するシステムの要部構成図を図1に示すように、制御部Cは、走行停止時における掻込ペダル81の操作信号により、走行装置3を停止したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行とともに、フィードチェーン33を所定の搬送速度で駆動させる連係制御機構を備える。
【0014】
上記制御部Cは、刈取走行中は、穀稈搬送の安定化のために、車速に応じてフィードチェーン33の搬送速度を切替え制御し、また、畦際等における掻込動作の際は、制御処理のフローチャートを図2に示すように、ステップ1(以下において、S1の如く略記する。)の掻込ペダル81の操作の判定処理を行い、ペダル操作の検出の際に刈脱レバー66が「オン」であることを条件(S2)に、フィードチェーン33を所定の搬送速度で駆動(S3a,S3b)させる。このフィードチェーン33の駆動は、掻込ペダル81の踏込み操作によるタイマのセット(S4)により、踏込み操作の終了から所定時間の経過(S5)まで維持されてから減速制御(S6a,S6b)によって元の低速搬送に戻される。
【0015】
このように、上記制御部Cにより、刈取走行中は、コンバイン1の車速に応じてフィードチェーン33の搬送速度を制御することにより、刈取部20から脱穀部30への穀稈搬送が安定化され、また、制御部Cの連係制御機構により、掻込ペダル81の操作に応じて走行装置3を停止したまま刈取部20を駆動させて穀稈の掻込みを行うとともに、フィードチェーン33が所定の搬送速度で駆動されることから、畦際における穀稈の掻込みに対応して穀稈が刈取部20から脱穀部30に安定して搬送される。また、掻込ペダル81を開放して元に戻してもフィードチェーン33の搬送速度が所定時間について維持されることから、掻込み終了後の搬送穀稈の詰まりを回避して次の作業を開始することができる。
【0016】
(コンバイン)
前記制御の適用対象となるコンバイン1は、その一例を表した側面図を図3に示すように、機体フレーム2を支持する左右一対の走行クローラによる走行装置3を備え、機体前部に刈取部20を昇降可能に設け、機体後半部に脱穀部30およびグレンタンク50を備え、グレンタンク50の前側で刈取部20に臨んで操縦部5を設け、操縦部5には走行操作用のHSTレバー62や旋回と刈取操作用のパワステレバー61等の操作具を配した操作パネル60が設けられ、操縦部5の下部後方に不図示のエンジン10を搭載している。
【0017】
刈取部20は分草具、穀稈引起装置、刈刃、搬送装置等を備え、扱深さを調節して穀稈を送り出し、この穀稈を始端部に受け継いで脱穀部30に搬送するフィードチェン33を設け、高速または低速に切替えるためのフィードチェン33の変速伝動部33aを脱穀部30の排塵ギヤボックスに付設する。
【0018】
フィードチェン33の変速伝動部33aは、その要部側面図と軸線展開断面図をそれぞれ図4、図5に示すように、排塵ギヤボックスのインプットシャフト121から排塵ファンシャフト121aを介して作業機動力を受ける切替シャフト122を設け、この切替シャフト122から電動式シフタ123によって選択伝動される高速用と低速用のギヤ122a、122bを介してフィードチェーンシャフト33bを高速と低速に切替え可能に構成する。
【0019】
電動式シフタ123は、シフタシャフト123bにシフトフォーク123aを軸支するとともに、モータ123cによって揺動動作するアーム123dからロッド123eを介してシフトフォーク123aと連結することにより、中立ポジションを挟んで高速と低速のポジションの範囲でシフトフォーク123aを電動制御可能に構成し、さらに、中立復帰用のモータ123fを設け、ケーブル123gを介してシフタシャフト123bと連結することによりシフトフォーク123aを中立位置に電動復帰可能に構成する。
【0020】
操縦部5には、その俯瞰図を図6に示すように、操作パネル60にパワステレバー61、HSTレバー62、刈脱レバー66等を配置し、床面に掻込ペダル81その他の操作ペダルを配置し、別途、スイッチパネル82を設ける。スイッチパネル82には、その見取図を図7に示すように、各種の設定スイッチ類、例えば、機器動作に連動してエンジン回転を制御するためのIQアクセルスイッチ70や、車高設定ダイヤル82b、ユーザー設定スイッチ82c、作業機切替スイッチ82d、選別制御ダイヤル82e、最高速設定ダイヤル82f、車速制御スイッチ82gが配置される。
【0021】
なお、走行部駆動用のHSTと刈取部駆動用のHSTを別々に設け、掻込ペダル81を踏込むと、これをスイッチで検出し、走行用HSTを停止のまま、刈取用HSTが駆動するように構成した場合でも、畦際で掻込み途中の穀稈を刈り取ることができる。
【0022】
(排出オーガ装置)
次に、排出オーガ装置について説明する。
グレンタンク50に付設した排出オーガ装置54は、一例として、図15の要部断面図に示すように、籾をオーガに送る量を調節できるシャッタ54aを設け、その開度を電動調節可能に構成する。シャッタ54aの制御は、その制御システム構成図を図8に示すように、シャッタ54aの開度調節のためにシャッター位置センサ54bを設けることにより、籾をオーガに送る量を調節可能に構成する。
【0023】
シャッタ54aの開度調節による排出動作の制御は、図9のフローチャートに示すように、エンジン回転10aが変化した場合に、その回転数に応じて目標速度設定(S11)に沿って排出速度を自動で調節(S12a〜S14a、S12b〜S14b)することにより、オーガの排出速度を自由に変えることができるので、エンジン回転が低いときでも、穀粒の排出詰まりを招くことなく、安心して排出できる。
【0024】
ズームオーガについては、上記オーガ排出速度制御におけるエンジン回転10aの代わりにズーム伸縮位置センサを用いてズームの伸縮に応じた目標速度設定として前記同様に制御することにより、ズーム54の伸縮に応じて排出速度を自動調節できることから、ズーム54が縮んでいるときでも、籾を傷めることなく、最適な速度で排出することができる。
【0025】
また、上記オーガ排出装置54の排出操作開始時においては、目標とする速度に到達するまで目標速度設定を徐々に上げていくようにして前記同様にシャッタ54aの開度を制御することにより、排出詰まりを防止することができ、排出クラッチの切操作による排出終了後においては、図10のフローチャートに示すように、目標速度設定(S21)により速度が最も遅い位置までシャッタを自動で動かし(S22〜S24)ておくことにより、排出詰まりを防止することができる。
【0026】
(ズームオーガ)
次に、伸縮可能なズームオーガの自動伸張制御について説明する。
ズームオーガは、図11のオーガ装置の機構図に示すように、固定搬送筒106の先端に移動搬送筒107をスライド可能に接続し、その中空部に、搬送螺旋114と直列して伝動軸116によって間隔調節が可能な多数の螺旋単体117を設け、モータ124により電動伸縮可能に構成する。
【0027】
上記ズームオーガの動作制御は、図12のシステム構成図に示すように、オーガ伸縮量の中間位置を検知できる中間位置センサ83、自動張出スイッチ68b等を設け、この自動張出スイッチ68bにより、図13のフローチャートに示すように、収納状態から自動的に最上げ状態にオーガを上昇(S31)後、ズームオーガを中間位置まで自動的に伸張させ(S33a〜S33c)てから排出位置まで旋回させるように制御部Cを構成することにより、籾排出時にズームオーガがあらかじめ中間位置まで伸張することで排出位置の調整時間を短縮することができ、また、自動伸ばしスイッチを設けてその適用を選択(S32)可能に構成することにより、状況に応じた対応が可能となる。
【0028】
また、上記中間位置センサ83の代わりにオーガ伸縮量を検知できるセンサを設け、図14のフローチャートに示すように、オーガを自動的に収納状態に移動させる自動収納スイッチを押して収納(S42)した時の前回のズームオーガ伸縮量を記憶(S41a、S41b)しておき、オーガを自動的に張出し状態に移動させる自動張出スイッチ68bを押してオーガを排出位置まで移動させる際に、記憶した位置までズームオーガを自動的に伸張させる(S44a、S44b、S44c)ようにすることで、籾排出時に排出位置の調整時間を短縮することができ、さらに、自動伸ばしスイッチを設けてその適用を選択可能(S43)に構成することにより、籾排出時の状況に応じた対応により、排出位置の調整時間を短縮することができる。
【0029】
上記ズームオーガにおける自動伸ばしスイッチを押す代わりに、自動張出スイッチ68bを一定時間内に2回以上押した場合に、中間位置までの伸張や前回収納時の伸縮位置までの伸張を行うように構成することにより、自動伸ばしスイッチのコスト負担を抑えつつ、その機能を確保することができる。
【0030】
また、自動張出スイッチ68bを押した回数に応じて、自動伸ばし無し・記憶位置まで伸ばす・中間位置まで伸ばす・最伸ばし位置まで伸ばす、等に自動伸ばし機能を切替え可能に構成することにより、多様な自動伸ばしスイッチのコスト負担を抑えつつ、多様な状況に応じた対応により、排出位置の調整時間を短縮することができ、その選択状態を確認できるようにモニタ等に表示する。
【符号の説明】
【0031】
20 刈取部
30 脱穀部
33 フィードチェーン
81 掻込ペダル
C 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部(20)から引き継いだ刈取穀稈を脱穀部(30)に供給するフィードチェーン(33)の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部(C)を備えるコンバインにおいて、
該制御部(C)には、走行停止時における掻込ペダル(81)の操作に基づいて、走行停止状態のまま刈取部(20)を駆動して穀稈の掻込みを行うとともにフィードチェーン(33)を所定の搬送速度で駆動する連係機能を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御部(C)は、掻込ペダル(81)が戻された時点から所定時間に亘りフィードチェーン(33)の搬送速度を維持した後に走行車速に応じた搬送速度に戻す制御を実行する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
刈取部(20)から引き継いだ刈取穀稈を脱穀部(30)に供給するフィードチェーン(33)の搬送速度を走行車速に応じて制御する制御部(C)を備えるコンバインにおいて、
該制御部(C)には、走行停止時における掻込ペダル(81)の操作に基づいて、走行停止状態のまま刈取部(20)を駆動して穀稈の掻込みを行うとともにフィードチェーン(33)を所定の搬送速度で駆動する連係機能を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御部(C)は、掻込ペダル(81)が戻された時点から所定時間に亘りフィードチェーン(33)の搬送速度を維持した後に走行車速に応じた搬送速度に戻す制御を実行する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−207182(P2010−207182A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59499(P2009−59499)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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