説明

コンバイン

【課題】刈取クラッチ操作具と脱穀クラッチ操作具とが切り操作位置に位置する状態を検出する検出構造の簡素化を図り、検出情報に基づく信号処理も簡単なものにして、エンジン始動に対する有効な牽制構造を構築する。
【解決手段】脱穀クラッチレバー11を切り操作位置に操作すると、刈取クラッチレバー9を切り操作位置に連動させる連係ロッド9Dを設ける。脱穀クラッチレバー11が切り操作位置に操作されたことを検出する単一のリミットスイッチ16を設ける。リミットスイッチ16の検出結果に基づいてエンジン始動を許容する制御手段21を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀クラッチと刈取クラッチとを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀クラッチと刈取クラッチとを備えたものにおいて、これら両方のクラッチが切り状態にあるときに、エンジン始動を行うことが可能になるものがある(特許文献1の段落番号〔0002〕参照)。
そして、脱穀クラッチと刈取クラッチとには、夫々、クラッチの入切状態を検出する刈取センサ(公報内番号:11)と脱穀センサ(公報内番号:13)とが設けてあった(例えば特許文献1の段落番号〔0036〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212153号公報(図2、図15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成にあっては、刈取クラッチと脱穀クラッチとの操作状態を把握するのに、夫々、検出手段が必要で検出構造が複雑になる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、人為的に操作される刈取クラッチ操作具と脱穀クラッチ操作具とが切り操作位置に位置する状態を検出する検出構造の簡素化を図り、エンジン始動に対する有効な牽制構造を構築する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る本願発明の特徴構成は、人為的に操作される脱穀クラッチ操作具と刈取クラッチ操作具とを入り操作位置と切り操作位置とに切換可能に構成し、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との一方を前記切り操作位置に操作すると、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との他方を前記切り操作位置に連動させる連係機構を設け、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との一方が前記切り操作位置に操作されたことを検出する単一の検出手段を設け、前記検出手段の前記切り操作位置への検出結果に基づいてエンジン始動を許容する制御手段を設けている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
脱穀クラッチ操作具と刈取クラッチ操作具との一方を切り操作位置に操作すると、連係機構によって脱穀クラッチ操作具と刈取クラッチ操作具との他方も切り操作位置に操作することができる。したがって、脱穀クラッチ操作具或いは刈取クラッチ操作具の一方が切り操作位置に操作されたことを検出する単一の検出手段を設けたので、この単一の検出手段によって、脱穀クラッチ操作具のみならず刈取クラッチ操作具が切り操作位置に操作されたことを検出することが可能になった。
【0008】
〔効果〕
したがって、検出構造を簡素にできるエンジンの始動牽制構造を備えたコンバインを提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る本願発明の特徴構成は、前記連係機構によって、前記脱穀クラッチ操作具が前記切り操作位置に切換わることに連動して、前記刈取クラッチ操作具を前記切り操作位置に切換えるべく構成し、前記単一の検出手段を、前記脱穀クラッチ操作具が前記切り操作位置に操作されたことを検出すべく構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
脱穀クラッチ操作具を切り操作位置に操作すると、連係機構によって、刈取クラッチ操作具も切り操作位置に操作される。そうすると、脱穀クラッチ操作具が切り操作位置に操作されたことを単一の検出手段が検出作動して、制御手段に情報を伝達する。
このように、脱穀クラッチ操作具を切り操作位置に操作する際には、刈取クラッチ操作具を切り操作位置に切換える構成によって、脱穀装置が作動しない状態で、刈取装置のみを作動させる事態を回避している。
このような構成を利用して単一の検出手段を、脱穀クラッチ操作具に対応して配置するだけで、検出構造を簡素にできるエンジンの始動牽制構造を備えたコンバインを提供することができた。
【0011】
〔構成〕
請求項3に係る本願発明の特徴構成は、前記脱穀クラッチ操作具を前記入り操作位置に位置させた状態で、前記刈取クラッチ操作具を前記入り操作位置と前記切り操作位置とに亘って操作可能に、前記連係機構を構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
連係機構の構成として、脱穀クラッチ操作具を切り操作位置に操作すると、刈取クラッチ操作具も切り操作位置に操作される構成に加えて、脱穀クラッチ操作具を前記入り操作位置に位置させた状態で、前記刈取クラッチ操作具を前記入り操作位置と前記切り操作位置とに亘って操作可能に構成してある。
このような構成を採っているのは、所定の圃場で刈取作業を終了し、隣接する圃場に移動する際には、脱穀クラッチを入り状態にして、脱穀処理を継続しながら、刈取クラッチだけを切り状態とする必要があるからである。
また、手刈りした穀稈をフィードチェーンに挾持させて脱穀する場合には、刈取クラッチを切り状態にし、かつ、脱穀クラッチを入り状態にする必要があるので、その場合にもこのような構成は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの運転操縦部を示す平面図である。
【図3】脱穀クラッチレバーと刈取クラッチレバー、及び、脱穀クラッチと刈取クラッチへの連係機構を示し、リミットスイッチを操作する前の状態を示す側面図である。
【図4】脱穀クラッチレバーと刈取クラッチレバー、及び、脱穀クラッチと刈取クラッチへの連係機構を示し、脱穀クラッチレバーでリミットスイッチを操作した状態を示す側面図である。
【図5】脱穀クラッチレバーと刈取クラッチレバー、及び、脱穀クラッチと刈取クラッチへの連係機構を示し、脱穀クラッチレバーでリミットスイッチを操作した状態を示す正面図である。
【図6】脱穀クラッチレバーと刈取クラッチレバーとの連係機構を示す平面図である。
【図7】脱穀クラッチレバーの入り操作で、エンジン始動を牽制し、脱穀クラッチレバーの切り操作でエンジン始動を許容することを示す制御構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
コンバインは、図1及び図2に示すように、植立穀稈を引き起こす引起装置1、引き起こした穀稈を刈り取る刈取装置2、刈り取られた穀稈を後方の脱穀装置Cに搬送する縦搬送装置3とを備えた刈取前処理部Aと、脱穀装置Cの右側方に脱穀穀粒を貯留する貯留タンク23と、貯留タンク23に貯めた穀粒を機外に搬出する穀粒搬出装置24とを、クローラ走行装置5で走行する運転操縦部6を備えた走行機体Bに装備して構成されている。
【0015】
運転操縦部6には、運転座席25の前方にフロント操作パネル26が配置してあり、フロント操作パネル26に刈取前処理部Aに対する昇降レバー29を配置してある。一方、サイド操作パネル13の前端部には主変速レバー27が配置してあり、運転座席25の後方には、プレエアークリナー28が立設してある。
【0016】
エンジンEから刈取装置2へのベルト伝動系(図示せず)にベルトテンション式の刈取クラッチ7を設けるとともに、エンジンEから脱穀装置Cへのベルト伝動系(図示せず)にベルトテンション式の脱穀クラッチ8を設けてある。
図3〜図5に示すように、刈取クラッチ7と刈取クラッチ操作具としての刈取クラッチレバー9とは操作用の連係リンク機構10によって連係してあり、脱穀クラッチ8と脱穀クラッチ操作具としての脱穀クラッチレバー11とは操作用の連係リンク機構12によって連係してある。
連係リンク機構12は、取付ボス部11Aの前記した揺動アーム14a側の他方の側端部に揺動アーム11Cを取り付け、この揺動アーム11Cに弦月杆17及び連係ロッド18を介して脱穀クラッチ8を連係して、構成してある。
【0017】
次に、脱穀クラッチレバー11と刈取クラッチレバー9との取付構造について説明する。図3〜図5に示すように、運転操縦部6のサイド操作パネル13の内部に左右向き姿勢の回転自在な取付軸14を左右一対のブラケット15で支持する。左右一対のブラケット15のうちの一方の内部ブラケット15Aは、サイド操作パネル13の内部から吊り下げられており、内部ブラケット15Aの下端ボス部15aが直接取付軸14を支持している。左右一対のブラケット15のうちの他方の外部ブラケット15Bは、サイド操作パネル13の外側壁13Aに取付てあり、下端に形成した下端ボス部15bに後記する脱穀クラッチレバー11の取付ボス部11Aを挿入して支持し、その取付ボス部11A内に取付軸14を挿入して、取付ボス部11Aを介して取付軸14を支持している。外部ブラケット15Bより突出する軸端部14Aに一体回転する状態で刈取クラッチレバー9の取付ボス部9Aが外嵌装着してある。
一方、サイド操作パネル13より突出した取付軸14の他方の軸端部14Bには、揺動アーム14aが取り付けてあり、この揺動アーム14aを刈取クラッチ7に連係してある。
【0018】
取付ボス部11Aから上方に向けて脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bが延出してある。取付ボス部11Aの一方の側端部には、板状の操作片11aが延設してあり、操作片11aは、脱穀クラッチレバー11が切り操作位置へ切り換えられた状態を検出する後記するリミットスイッチ(検出手段の一例)16を操作すべく設けてある。
【0019】
リミットスイッチ16の取付構造について説明する。図3〜図5に示すように、内部ブラケット15Aより取付ボス部11Aに沿って板状のブラケット20を延設し、このブラケット20に下端から上方に向かう凹入部を形成し、この凹入部内にリミットスイッチ16の軸部16aを位置させて、その軸部16aに螺合させたナット16bを両面側に配置し、そのナット16bで挟み込む状態でリミットスイッチ16を装着固定してある。
【0020】
脱穀クラッチレバー11と刈取クラッチレバー9との連係機構Dについて説明する。図5及び図6に示すように、操作用ガイド孔13aに沿って操作される刈取クラッチレバー9の取付ボス部9Aから延出された棒状本体部9Bに、上下方向視でチャンネル状のブラケット9Cを取付固定してある。このブラケット9Cの両フランジ部9cを貫通する状態で連係ロッド9Dが、連結ピン19を介して抜止装着されている。この連係ロッド9Dは、操作用ガイド孔13bに沿って操作される脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bに向けて、片持ち状態で延出してある。連係ロッド9Dは、脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bにおける切り操作位置側の側面に当接する状態で配置されている。
刈取クラッチレバー9及び脱穀クラッチレバー11は、その棒状本体部9B,11Bが側面視でV字状に屈曲した形状に形成されており、その揺動操作によって、前方に倒伏してサイド操作パネル13の上面に沿った入り操作位置と、後方に倒伏して斜め後方上方に向いた切り操作位置とに位置変更自在に構成されている。
【0021】
このような構成によって、次のような使用形態となる。
(1) 両クラッチレバー9、11を入り操作位置に位置させた状態で、刈取クラッチレバー9を切り操作位置に操作すると、連係機構Dの連係ロッド9Dが脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bから離間して、脱穀クラッチレバー11とは独立して切り操作位置に操作することができる。また、独立して入り操作位置に戻すことができる。
このような構成を採っているのは、脱穀クラッチ8を入り状態に維持した状態で、刈取クラッチ7を入切操作することを可能にするためである。所定の圃場で刈取作業を終了し、隣接する圃場に移動する際には、脱穀クラッチ8を入り状態にして、脱穀処理を継続しながら、刈取クラッチ7だけを切り状態とする必要があるからである。
【0022】
(2) 図6に示すように、両クラッチレバー9、11を入り操作位置に操作した状態で、脱穀クラッチレバー11を切り操作位置に操作すると、連係ロッド9Dに脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bが当接し、脱穀クラッチレバー11とともに刈取クラッチレバー9も切り操作位置に操作することができる。
【0023】
(3)両クラッチレバー9、11を切り操作位置に位置させた状態で、脱穀クラッチレバー11を入り操作位置に操作すると、脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bが連係ロッド9Dから離間して、独立して脱穀クラッチレバー11を入り操作位置に操作することができる。また、独立して切り操作位置に戻すことができる。
【0024】
(4)図6に示すように、両クラッチレバー9、11を切り操作位置に位置させた状態で、刈取クラッチレバー9を入り操作位置に操作すると、連係ロッド9Dに脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bが当接し、刈取クラッチレバー9とともに脱穀クラッチレバー11も入り操作位置に操作することができる。
【0025】
エンジンEに対する始動構造について説明する。図7に示すように、リミットスイッチ16からの信号を受ける制御手段21を設け、制御手段21にエンジンEのガバナー22を連係してある。
このような構成によって、刈取クラッチレバー9及び脱穀クラッチレバー11が切り操作位置に操作された状態で、リミットスイッチ16がその状態を検出すると、制御手段21によって、エンジン始動が可能となる。リミットスイッチ16が検出していない状態では、エンジン始動は行えない。
【0026】
〔別実施形態〕
(1) 上記した実施形態においては、連係機構Dとして、脱穀クラッチレバー11を切り操作位置に位置した場合に、刈取クラッチレバー9を切り操作位置に操作する形態について説明した。これとは反対に連係ロッド9Dを脱穀クラッチレバー11に備え、刈取クラッチレバー9を切り操作位置に操作した場合に、脱穀クラッチレバー11を切り操作位置に操作する構造を採用してもよい。
具体的には、連係ロッド9Dが脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bの前側に位置する状態で、連係ロッド9Dのブラケット9Cを脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bに固定する。そして、連係ロッド9Dを刈取クラッチレバー9の棒状本体部9Bの前側まで延出し、脱穀クラッチレバー11を入り操作位置から切り操作位置に操作すると、連係ロッド9Dが刈取クラッチレバー9の棒状本体部9Bに前側から接当して刈取クラッチレバー9が脱穀クラッチレバー11に連動して切り操作位置に操作されるように構成する。
(2)連係機構Dをサイド操作パネル13の上面より上側に位置する状態で刈取クラッチレバー9及び脱穀クラッチレバー11の握り部に近い位置に配置した例を示したが、連係機構Dをサイド操作パネル13の上面に近接する状態で配置してもよく、連係機構Dをサイド操作パネル13の下側に位置する状態で又はサイド操作パネル13の下面に近接する状態で配置してもよい。これにより、連係機構Dが両クラッチレバー9,11の操作の妨げになり難くなる。ここで、連係機構Dをサイド操作パネル13の下側に配置した場合には、内部ブラケット15A、下端ボス部15a、操作片11a等を棒状本体部9B,11Bの左右方向での外側に配置することで、刈取クラッチレバー9の棒状本体部9Bと脱穀クラッチレバー11の棒状本体部11Bとに亘って、連係機構Dを他の部材と干渉することなく取り付けることができる。
(3) 連係機構Dとしては、連係ロッド9Dを刈取クラッチレバー9から脱穀クラッチレバー11に当接する状態で延出したが、連係ロッドではなく、弾性を有するバネ板材やリンク機構を採用してもよい。
(4) 単一の検出手段としては、リミットスイッチ16を採用したが、近接センサ、光センサ、磁気センサ等の非接触式スイッチを利用してもよい。
(5) 脱穀クラッチ操作具11、及び、刈取クラッチ操作具9としては、操作レバーだけでなく、ペダルを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は、穀粒を貯留する貯留タンク23に代えてホッパーを装備するコンバインや結束装置等を搭載していないコンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
9 刈取クラッチレバー(刈取クラッチ操作具)
11 脱穀クラッチレバー(脱穀クラッチ操作具)
16 リミットスイッチ(検出手段)
21 制御手段
D 連係機構




【特許請求の範囲】
【請求項1】
人為的に操作される脱穀クラッチ操作具と刈取クラッチ操作具とを入り操作位置と切り操作位置とに切換可能に構成し、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との一方を前記切り操作位置に操作すると、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との他方を前記切り操作位置に連動させる連係機構を設け、前記脱穀クラッチ操作具と前記刈取クラッチ操作具との一方が前記切り操作位置に操作されたことを検出する単一の検出手段を設け、前記検出手段の検出結果に基づいてエンジン始動を許容する制御手段を設けているコンバイン。
【請求項2】
前記連係機構によって、前記脱穀クラッチ操作具が前記切り操作位置に切換わることに連動して、前記刈取クラッチ操作具を前記切り操作位置に切換えるべく構成し、前記単一の検出手段を、前記脱穀クラッチ操作具が前記切り操作位置に操作されたことを検出すべく構成してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記脱穀クラッチ操作具を前記入り操作位置に位置させた状態で、前記刈取クラッチ操作具を前記入り操作位置と前記切り操作位置とに亘って操作可能に、前記連係機構を構成してある請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−246489(P2010−246489A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101219(P2009−101219)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】