説明

コンバイン

【課題】圃場での穀稈収穫作業中に旋回を行っても切断排稈の圃場散布が圃場の全面で行われるようにする。
【解決手段】機体の後部に脱穀後の排藁を切断するカッター(8)を装着したコンバインにおいて、刈取前処理装置(3)からフィードチェン(13)への引き継ぎ位置近傍に穀稈を検出する穀稈引継センサ(11)を設け、刈取前処理装置(3)を一定高さ以上に上昇させても、穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出している場合にはフィードチェン(13)を駆動し続け、穀稈引継センサ(11)による穀稈検出が途絶えると直ちにフィードチェン(13)の駆動を停止させる制御を行ない、刈取前処理装置(3)を下降させて刈取を再開して前記穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出するとフィードチェン(13)を駆動する制御を行なう構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の後部にカッターを設けて脱穀済み穀稈を短く切断して圃場へ散布する自脱型のコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインは、回り刈りの途中で方向変換のために機体を旋回する場合に、車台の前部に装着している刈取前処理装置を非作業位置に上昇すると、刈取前処理装置の回転各部と脱穀装置のフィ−ドチエンとを停止させるようにしている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、刈取前処理装置とフィードチェンとの間の引継ぎ部において、搬送される穀稈が常時一定量となるようにするために、刈取前処理装置の昇降位置を検出する昇降位置検出手段を設け、該昇降位置検出手段が刈取前処理装置の上昇を検出すると、刈取装置の動力を入り切りする刈取動力断続手段による刈取前処理装置の停止と、フィードチェンへの動力を入り切りするフィードチェン動力断続手段によるフィードチェンの停止が略同時となるように、フィードチェンの回転力に制動を与える制動手段を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−98646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインは、圃場内を平面視で四角形に走行しながらの回り刈りで穀稈の刈取収穫作業を行うが、四角形の角部で旋回して直角に方向変換する際に刈取前処理装置を上昇させて穀稈の刈取を中断し、刈取前処理装置の上昇に伴って刈取前処理装置とフィードチェンを同時に停止し、旋回が終わって刈取前処理装置を下降させて刈取を再開すると刈取前処理装置とフィードチェンが同時に駆動される従来の駆動制御構成では、刈取前処理装置とフィードチェンの穀稈が一旦無くなって新たに刈り取った穀稈が刈取前処理装置を通ってフィードチェンに供給されて脱穀された後にカッターで排藁の切断が開始されるまでの間は機体が走行しても切断排藁が圃場へ排出されない状態となって、圃場面に切断排藁が散布されない刈り跡地が出来る。
【0006】
切断排藁散布は圃場の肥しになるために圃場へなるべく均等に散布されることが望まれるので、このような切断排藁非散布刈り跡地ができるコンバインの収穫作業は良くない。
【0007】
そこで、本発明では、圃場での穀稈収穫作業中に旋回を行っても切断排藁の圃場散布が圃場の全面で行われるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0009】
請求項1に記載の発明は、機体の後部に脱穀後の排藁を切断するカッター(8)を装着したコンバインにおいて、刈取前処理装置(3)からフィードチェン(13)への引き継ぎ位置近傍に穀稈を検出する穀稈引継センサ(11)を設け、刈取前処理装置(3)を一定高さ以上に上昇させても、穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出している場合にはフィードチェン(13)を駆動し続け、穀稈引継センサ(11)による穀稈検出が途絶えると直ちにフィードチェン(13)の駆動を停止させる制御を行ない、刈取前処理装置(3)を下降させて刈取を再開して前記穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出するとフィードチェン(13)を駆動する制御を行なう構成としたことを特徴とするコンバインとした。
【0010】
この構成で、刈取前処理装置(3)を一定高さ以上に上昇させても、刈り取った穀稈を刈取前処理装置3からフィードチェン13へ送っていることを穀稈引継センサ11で検出している間はフィードチェン13を駆動し、脱穀後の排藁をカッター8で切断して切断排藁を圃場へ放出し続けるが、刈取前処理装置3から穀稈がなくなったことを穀稈引継センサ11が検出すると直ちにフィードチェン13を停止して穀稈をフィードチェン13の始端まで挟持した状態にし、刈取を再開して穀稈引継センサ11が穀稈を感知するとフィードチェン13を駆動するので、フィードチェン13が駆動し始めると穀稈の流れが中断することなく、圃場面への切断排藁の散布が継続して行われて圃場全面に切断排藁を散布する。なお、刈取の再開時にはフィードチェン13が駆動されず切断排藁の散布が開始されないが、旋回を終了して刈取を再開する時には機体が切断排藁を散布した既刈地まで後退しているために、切断した排藁の全面散布に支障がない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記穀稈引継センサ(11)の接触子(11a)を、供給チェン(10)と株元ガイド(15)の間から、穀稈搬送方向に後退する姿勢で外側上方へ突出させて設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとした。
【0012】
この構成で、供給チェン10と株元ガイド15で後方へ送られる穀稈の株元側で接触子11aが後方へ倒されて穀稈の通過を確実に感知する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記株元ガイド(15)の上側に接近させて、補助チェン(12)に対向する挟持スプリング(17)を設け、該挟持スプリング(17)と株元ガイド(15)との間に穀稈を挟持する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバインとした。
【0014】
この構成で、株元ガイド15と挟持スプリング17で挟持した穀稈を穀稈引継センサ11が確実に感知する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によると、切断した排藁を圃場面の全面に散布することができ、土質の改善効果を圃場面に均一に与えて翌年の米や麦の生育状態を良くし、収益性を高めることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、供給チェン10と株元ガイド15の上を搬送される穀稈を穀稈引継センサ11の接触子11aで確実に検出することができ、誤検出を防いでフィードチェン(13)の駆動制御を適確に行なうことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明で、上記請求項2記載の発明の効果に加え、穀稈の株元を株元ガイド15と挟持スプリング17で挟持した状態で穀稈引継センサ11の接触子11aが感知するので、軟弱な穀稈でも確実に検出することができ、圃場条件への適応性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】第一実施例の一部拡大側面図である。
【図3】第一実施例の一部拡大正面図である。
【図4】第一実施例の一部拡大平面図である。
【図5】第二実施例の一部拡大側面図である。
【図6】第二実施例の一部拡大平面図である。
【図7】第三実施例の一部拡大側面図である。
【図8】第四実施例の一部拡大平面図である。
【図9】第五実施例の側面図である。
【図10】(A),(B),(C),(D),(E)刈り取り作業の進行状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、コンバインの全体側面図を示し、クローラ走行装置1で走行する車台2に脱穀装置5とキャビン4及びグレンタンク6を搭載し、脱穀装置5の前側に刈取前処理装置3をその先端側を昇降するように設けている。
【0021】
キャビン4は、作業者が搭乗して操縦操作を行い、グレンタンク6は脱穀装置5で収穫した穀粒を一時的に貯留し、オーガ7でグレンタンク6内の穀粒を機外の穀粒タンクへ排出する。
【0022】
脱穀装置5は、機体側部に設けるフィードチェン13で株元を挟持して搬送する穀稈の穂先側を脱穀して穀粒を内部の選別部で選別してグレンタンク6内に蓄える。脱穀装置5の後部にカッター8を装着し排藁を短く切断して機体の下方から圃場の既刈地に散布する。
【0023】
刈取前処理装置3は、前下端部に穀稈の株元を切断する刈刃9を設け、この刈刃9で刈り取った穀稈を持上げ搬送装置(図示省略)で供給チェン10に送る。
【0024】
供給チェン10の後端からシンクロチェン(補助チェン)12でフィードチェン13に穀稈を受け渡し、フィードチェン13で穀稈の株元を挟持して搬送しながら脱穀装置5で脱穀し、脱穀済の排藁を排藁チェン(図示省略)でさらに後送してカッター8に送り込み、このカッター8の下部から短く切断した排藁を圃場へ散布する。
【0025】
刈取前処理装置3とフィードチェン13の穀稈引継部に穀稈に接触して穀稈の存在を検出する穀稈引継センサ11を設けているが、図2乃至図4に示す第一実施例では、フィードチェン13の始端直前で供給チェン枠10aの側部に穀稈の株元を下から受ける株元ガイド15を設け、この株元ガイド15から外側上方に接触子11aを突出させて穀稈引継センサ11を設けている。穀稈引継センサ11の取り付けは、株元ガイド15と一体として、着脱を同時に行えるようにしても良い。供給チェン10の株元側には扱ぎ深さ調節チェン16が設けられ、穂先側には刈取前処理装置3の穂先チェン14が設けられている。
【0026】
図5と図6に示す第二実施例では、穀稈株元を挟持するように挟持スプリング17を株元ガイド15に接近させて供給チェン支持フレーム19に設け、この株元ガイド15と挟持スプリング17で挟持した穀稈に穀稈引継センサ11の接触子11aが接触するようにしている。また、シンクロチェン12の上側にも挟持ガイド18を設けて穀稈を挟持して移送するようにしている。
【0027】
図7に示す第三実施例では、穀稈引継センサ11を供給チェン10と穂先チェン14の間に設け、接触子11aを供給上カバー20から上方へ突出させている。
【0028】
図8に示す第四実施例では、穀稈引継センサ11をフィードチェン13の上側を覆うフィードチェンカバー21内に設け、接触子11aをフィードチェン13に向けて下方へ突出している。
【0029】
図9に示す第五実施例では、穀稈引継センサ11をフィードチェン13の取付機枠22内に設け、接触子11aをフィードチェン13に向けて上方へ突出している。
【0030】
以上の第一実施例から第五実施例までに示す穀稈引継センサ11はフィードチェン13の始端部に穀稈があることを検出するもので、この穀稈引継センサ11が穀稈を検出するとフィードチェン13を駆動するように制御する。尚、車台2に対する刈取前処理装置3の昇降高さを検出するポテンショメータ(図示省略)を設けている。
【0031】
例えば、刈取前処理装置3を下降させて穀稈の刈り取り作業を行っている場合(この刈取前処理装置3が下降位置になることを、ポテンショメータで検出している場合)には、刈取前処理装置3とフィードチェン13を駆動している。そして、回り刈りの角部で機体を旋回させるために刈取前処理装置3を一定高さ以上に上昇させた場合(この刈取前処理装置3が非刈取作業高さまで上昇したことをポテンショメータで検出した場合)でも、刈り取った穀稈を刈取前処理装置3からフィードチェン13へ送っていることを穀稈引継センサ11で検出している間は、フィードチェン13の駆動を継続し、刈取前処理装置3を駆動させたままで刈取穀稈を後送りさせフィードチェン13も駆動したままとする。そして、やがて穀稈引継センサ11が穀稈の送りが無くなったことを検出すると、フィードチェン13を直ちに停止して穀稈をフィードチェン13の始端部から終端部まで挟持したままとする。
【0032】
そして、機体の旋回が終了して刈取前処理装置3を下降させ(刈取前処理装置3が下降位置になることを、ポテンショメータで検出し)、機体を走行させて刈刃9で穀稈の刈取を開始し、穀稈が穀稈引継センサ11まで移送されるとフィードチェン13の駆動を開始し、排藁がカッター8に達すると切断排藁の散布が再開される。なお、刈取再開当初は、切断排藁の散布が行われないが、機体が既に切断排藁の散布を行った位置まで後退しているので、切断排藁の未散布地が生じることがない。
【0033】
このように刈り取り作業中にフィードチェン13の穀稈の流れが途切れることなく、カッター8に排藁が供給されて切断排藁の散布が継続し、切断排藁の非散布地が無くなる。
【0034】
本発明を実施したコンバインKBでの収穫作業の進行状況を図10で説明する。
(A)は、未刈地MHを機体の左側として左回りで刈取走行を行っている状態で、切断排藁散布地KHが機体の走行跡に形成される。この状態は従来と同一である。
(B)は、直進刈取走行が終わった状態で、刈取前処理装置3を上昇させながら左旋回を開始している。刈取前処理装置3とフィードチェン13は駆動され、切断排藁の排出が継続している。この状態も従来と同一である。
(C)は、機体の左旋回と少し後退が終わって刈取前処理装置3を下降させ再度刈取走行を開始する状態で、刈取前処理装置3を駆動しているが穀稈引継センサ11が穀稈供給を感知するまでフィードチェン13は穀稈を挟持したままで駆動を停止している。
(D)は、穀稈の刈取を再開して少し経った状態で、刈取前処理装置3が刈り取る穀稈がフィードチェン13まで達して穀稈引継センサ11が穀稈を感知してフィードチェン13が駆動され、切断排藁の放出も開始される。
(E)は(A)と同様に直進刈取状態で、切断排藁散布地KHが機体の走行跡に形成される。
(F)は、刈り取り作業が終了した圃場面で、圃場の全面が切断排藁散布地KHとなっている。
【0035】
以上に説明した穀稈引継センサ11の穀稈検出信号でフィードチェン13の駆動をオン・オフする搬送制御は、切断排藁未散布地が生じても良いコンバインの使用者のために、働かなくして、刈取前処理装置3の一定高さ以上の上昇で刈取前処理装置3とフィードチェン13を共に駆動停止するように制御部を変更できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
3 刈取前処理装置
8 カッター
11 穀稈引継センサ
11a 接触子
13 フィードチェン
17 挟持スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に脱穀後の排藁を切断するカッター(8)を装着したコンバインにおいて、刈取前処理装置(3)からフィードチェン(13)への引き継ぎ位置近傍に穀稈を検出する穀稈引継センサ(11)を設け、刈取前処理装置(3)を一定高さ以上に上昇させても、穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出している場合にはフィードチェン(13)を駆動し続け、穀稈引継センサ(11)による穀稈検出が途絶えると直ちにフィードチェン(13)の駆動を停止させる制御を行ない、刈取前処理装置(3)を下降させて刈取を再開して前記穀稈引継センサ(11)が穀稈を検出するとフィードチェン(13)を駆動する制御を行なう構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀稈引継センサ(11)の接触子(11a)を、供給チェン(10)と株元ガイド(15)の間から、穀稈搬送方向に後退する姿勢で外側上方へ突出させて設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記株元ガイド(15)の上側に接近させて、補助チェン(12)に対向する挟持スプリング(17)を設け、該挟持スプリング(17)と株元ガイド(15)との間に穀稈を挟持する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188813(P2011−188813A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57878(P2010−57878)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】