説明

コンバイン

【課題】刈取クラッチ用の電動モータと前記テンションプーリーとの間の連結構造のメンテナンス性及び組立作業性を従来技術に比して向上させ得るコンバインを提供する。
【解決手段】テンションプーリー505及び前記刈取クラッチ電動モータ502を前記運転席支持フレームFで支持するようにしたので、前記運転席の近傍の例えばサイドコラムに前記刈取クラッチ電動モータが502が取り付けられている従来構成に比して、前記刈取クラッチ電動モータ502と前記テンションプーリー505との間の連結構造を簡略させることができ、その結果、前記刈取クラッチ電動モータ502と前記テンションプーリー505との間の連結構造の組立作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の走行クローラを装設して移動し、圃場の穀稈を連続的に刈取って脱穀するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀稈を刈取部で刈り取り、該刈り取られた穀稈を脱穀部で脱穀し、穀粒や排屑などを含む脱穀物から穀粒を選別部で選別し、この選別された穀粒をグレンタンク内に供給して貯留し、この貯留された穀粒を穀物排出装置でグレンタンクから外部に排出するという一連の収穫作業を行うコンバインが広く知られている。
【0003】
この種のコンバインのうち、エンジンからの回転動力をトランスミッションを介して走行部へ伝達すると共に、前記トランスミッションから刈取入力軸を介して車速同調回転動力を前記刈取部へ伝達するように構成されたものがある(例えば下記特許文献1)。
【0004】
下記特許文献1には、エンジン出力が変速装置を介して伝達される刈取装置駆動プーリーと、刈取入力軸と一体回転する刈取入力プーリーと、前記刈取装置駆動プーリと前記刈取入力プーリーとの間に架け渡された無端ベルトと、前記無端ベルトの張力を調整するためのテンションプーリーとを備えた刈取クラッチを有するとともに、電動モータと、該電動モータの回転動力によって押し引きされるワイヤと、前記ワイヤの一端に連結されたバネと、前記ワイヤの押し引きに起因するバネの上下移動に応じて前記無端ベルトに対する前記テンションプーリの押し付け状態を変化させる機構と、前記電動モータとは別系統で前記ワイヤを押し引きさせるための刈取レバーとを備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−300894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来構成においては、前記電動モータが前記運転席の近傍に配設されているため、前記電動モータと前記テンションプーリーとの間をワイヤー等の可撓部材で連結させる必要がある。したがって、前記電動モータと前記テンションプーリーとの間の連結構造の組立作業性やメンテナンス性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、前記刈取クラッチ用の電動モータと前記テンションプーリーとの間の連結構造のメンテナンス性及び組立作業性を従来技術に比して向上させ得るコンバインの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、機体フレームの前側部分における車輌幅方向一方側に支持されたエンジンから前記エンジンの前方に位置するトランスミッションを介して左右一対の走行部に走行系回転動力が伝達されると共に、前記エンジンより車輌幅方向他方側において前記機体フレームに立設された刈取支持フレームに刈取入力軸が車輌幅方向に沿って支持され、前記走行系回転動力に同調した車速同調回転動力が前記トランスミッションから刈取用プーリー伝動機構を介して前記刈取入力軸に伝達され、前記刈取用プーリー伝動機構の伝動状態がテンションプーリー及び前記テンションプーリーを移動させる刈取クラッチ電動モータを含む刈取クラッチ機構によって切り換えられるコンバインであって、前記テンションプーリーは、車輌幅方向に沿った回動基準軸線回りに前記刈取用プーリー伝動機構の無端帯に対して張力を付加するクラッチ係合位置及び前記張力を解除するクラッチ解除位置を取り得る状態で前記エンジンの上方に運転席を設置する為の運転席支持フレームに直接又は間接的に支持され、前記刈取クラッチ電動モータは、モータ出力軸が車輌幅方向に沿った状態で前記運転席支持フレームに直接又は間接的に支持されていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、前記テンションプーリー及び前記刈取クラッチ電動モータが共に前記運転席支持フレームに直接又は間接的に支持されているので、前記運転席の近傍の例えばサイドコラムに前記刈取クラッチ電動モータが取り付けられている従来構成に比して、前記刈取クラッチ電動モータと前記テンションプーリーとの間の連結構造を簡略させることができる。
【0010】
その結果、前記刈取クラッチ電動モータと前記テンションプーリーとの間の連結構造の組立作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
請求項1に記載のコンバインにおいて、前記刈取クラッチ電動モータの具体的な設置位置としては、請求項2に記載の発明のように、前記エンジンが、エンジン本体と前記エンジン本体から車輌幅方向他方側へ突出されたエンジン出力軸とを有し、前記トランスミッションが、ミッションケースと前記ミッションケースから車輌幅方向他方側へ突出されたトランスミッション入力軸及び作業機系出力軸とを有し、車輌幅方向に関し前記エンジン本体及び前記刈取支持フレームの間の空間に、前記エンジン出力軸から前記トランスミッション入力軸へ回転動力を伝達するトランスミッション用プーリー伝動機構と前記トランスミッション用プーリー伝動機構より車輌幅方向他方側に位置する前記刈取用プーリー伝動機構とが車輌幅方向に沿って並設されている場合には、前記刈取クラッチ電動モータを、前記トランスミッション用プーリー伝動機構より上方において取付ブラケットを介して前記運転席支持フレームに支持するとよい。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記回動基準軸線を画する枢支軸が前記運転席支持フレームに固着されており、前記テンションプーリーは、前記枢支軸に軸線回り回転自在に外挿された回動部と、前記回動部から径方向外方へ延在されたアーム部と、前記無端帯に対して作用し得るように前記アーム部の自由端部に支持されたテンションプーリー本体とを有し、前記刈取クラッチ機構には、前記刈取クラッチ電動モータ及び前記テンションプーリーを作動連結するリンク機構が備えられ、前記リンク機構は、前記モータ出力軸に相対回転不能に支持された駆動側アームと、前記回動部に相対回転不能に支持された従動側アームと、前記駆動側アーム及び前記従動側アームを連結するリンク部材とを有し、前記モータ出力軸の軸線回りの回転に応じて前記駆動側アームが前記モータ出力軸の軸線回り一方側の第1位置及び他方側の第2位置に位置されると前記テンションプーリーをそれぞれクラッチ係合位置及びクラッチ解除位置に位置させるように構成され、前記刈取クラッチ機構には、さらに、基端部が固定され且つ先端部が前記駆動側アームに連結された保持バネが備えられ、前記駆動側アームが第1位置及び第2位置に位置する際に前記保持バネが前記駆動側アームをそれぞれ前記モータ出力軸の軸線回り一方側及び他方側に付勢するように、前記保持バネの基端部の位置が設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、前記モータ出力軸の軸線回り一方側の第1位置に位置されると、前記駆動側アームは前記モータ出力軸に相対回転不能に支持されているから、前記駆動側アームが前記モータ出力軸の回転に連動し、また、前記リンク部材を介し、その駆動側アームの移動に連動して前記従動側アームが移動する。
【0014】
前記従動側アームは、前記回動部に相対回転不能に支持されているから、前記回動部及び前記アーム部が前記従動側アームの移動に連動し、その結果、テンションプーリー本体が前記無端帯に係合する。このとき、前記保持バネの基端部の位置設定により、前記駆動側アームは、前記保持バネによって前記モータ出力軸の軸線回り一方側に付勢される。
【0015】
一方、前記モータ出力軸の軸線回り他方側の第2位置に位置されると、前記駆動側アームは前記モータ出力軸に相対回転不能に支持されているから、前記駆動側アームが前記モータ出力軸の回転に連動し、また、前記リンク部材を介し、その駆動側アームの移動に連動して前記従動側アームが移動する。
【0016】
前記従動側アームは、前記回動部に相対回転不能に支持されているから、前記回動部及び前記アーム部が前記従動側アームの移動に連動し、その結果、テンションプーリー本体と前記無端帯との係合が解除される。このとき、前記保持バネの基端部の位置設定により、前記駆動側アームは、前記保持バネによって前記モータ出力軸の軸線回り他方側に付勢される。
【0017】
このように、モータの駆動力を前記テンションプーリー本体に伝達し、且つ、前記クラッチ係合状態及びクラッチ解除状態に保持する具体的な構造が提供される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載のコンバインにおいて、前記リンク部材は、前記保持バネよりも高剛性のリンクバネを有し、前記リンクバネは、基端部が前記駆動側アームに作動的に連結され且つ先端部が前記従動側アームに作動的に連結されて前記従動側アームを前記駆動側アームに連動させる第1使用状態と、基端部が前記取付ブラケットに固定され且つ先端部が前記従動側アームに作動連結されて前記テンションプーリーがクラッチ係合位置に位置するように前記従動側アームを付勢する第2使用状態とを選択的に取り得ることを特徴とするものである。
【0019】
この発明によれば、前記リンクバネは、前記第1使用状態と前記第2使用状態とを選択的に取り得るようにしたので、何らかの原因により前記駆動側アームが移動しない状況が発生しても、前記第2使用状態に設定することで、前記テンションプーリーをクラッチ係合位置に位置させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、前記テンションプーリー及び前記刈取クラッチ電動モータを共に前記運転席支持フレームに直接又は間接的に支持したので、前記運転席の近傍の例えばサイドコラムに前記刈取クラッチ電動モータが取り付けられている従来構成に比して、前記刈取クラッチ電動モータ及び前記テンションプーリー間の連結構造を簡略させることができ、もって、前記刈取クラッチ電動モータ及び前記テンションプーリー間の連結構造の組立作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの左側面図である。
【図3】コンバインの伝動模式図である。
【図4】クローラ,エンジン及びトランスミッションが機体フレームに組み付けられてなるコンバインのプーリーアッセンブリの平面図である。
【図5】プーリーアッセンブリの正面図である。
【図6】プーリーアッセンブリの側面図である。
【図7】エンジンの前方斜視図である。
【図8】エンジンの平面図である。
【図9】エンジンの正面図である。
【図10】(a)はトランスミッションの正面図、(b)はトランスミッションの平面図、(c)は、トランスミッションの右側面図である。
【図11】トランスミッションの伝動模式図である。
【図12】刈取用プーリー伝動機構及び刈取クラッチ機構周辺の構成を示す斜視図である。
【図13】刈取用プーリー伝動機構及び刈取クラッチ機構周辺の構成を示す側面図である。
【図14】クラッチ解除状態の刈取クラッチ機構の状態を示す図である。
【図15】第1スプリングの機能を説明するための図である。
【図16】クラッチ係合状態の刈取クラッチ機構の状態を示す図である。
【図17】第1スプリングの機能を説明するための図である。
【図18】コンバインのうち刈取クラッチ機構の制御に係る電気的な構成を示す図である。
【図19】制御部(刈取クラッチ電動モータ制御部)の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るコンバインの好ましい実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に、それぞれ本実施形態に係るコンバイン1の右側面図及び左側面図を示す。図3に、前記コンバイン1の伝動模式図を示す。
【0023】
図1及び図2に示すように、前記コンバイン1は、機体フレーム2を含む走行機体と、前記機体フレーム2に連結された左右一対のクローラ12の形態をなす走行部3と、前記機体フレーム2の前方に配置され且つ前記機体フレーム2に昇降可能に連結された刈取部4と、前記刈取部4によって刈り取られた穀稈に対して脱穀処理を行う脱穀部5と、前記脱穀部5によって脱穀された脱穀物に対して選別処理を行う選別部6と、前記選別部6によって選別された穀粒を貯留する穀粒貯留部7と、前記脱穀部5によって脱穀処理された後の排藁を処理する排藁処理部8と、動力源となるエンジン31を含むエンジン部9と、前記エンジン31から入力される回転動力を変速するトランスミッション25を含むミッション部10と、運転席26及びステアリングハンドル27を含む操縦部11とを備えている。
【0024】
前記刈取部4は、図1〜図3に示すように、圃場の穀稈を分草する分草具13と、前記分草具13によって分草された穀稈を引き起こす引起装置14と、前記引起装置14によって引き起こされた後の穀稈を切断する切断装置15と、前記切断装置15によって切断された後の穀稈を前記脱穀部5へ向けて搬送する刈取搬送装置16とを含んでいる。前記刈取部4は、前記機体フレーム2に対して後述する刈取入力軸400(図3参照)の軸線回りに昇降可能とされる。
【0025】
前記脱穀部5は、前記刈取部4から刈り取り穀稈を受け継ぐように、前記刈取部4の後方側で且つ前記機体フレーム2の左側部分に配置されている。前記脱穀部5は、図1〜図3に示すように、扱室内に配設された扱胴18(図3参照)と、前記刈取搬送装置16から刈取穀稈を受け継ぎ且つ前記刈取穀稈の穂先側を前記扱室内に突入させつつ後方へ搬送する脱穀搬送装置17と、前記扱胴18の下方に配設された受網(図示せず)とを有している。
【0026】
前記選別部6は、前記脱穀部5の下方に位置するように前記機体フレーム2の左側部分に配置されている。前記選別部6は、図3に示すように、前記受網から流下する脱穀物に対して揺動選別を行う揺動選別装置61と、前記脱穀物に対して風選別を行う風選別装置62と、前記揺動選別装置61及び前記風選別装置62によって選別された穀粒を前記穀粒貯留部7に搬送する穀粒搬送装置63と、前記揺動選別装置61及び前記風選別装置62によって脱穀物から取り除かれた藁屑や塵埃等の不要物を外部へ排出する藁屑排出装置(図示せず)とを有している。
【0027】
前記穀粒貯留部7は、前記操縦部11の後方側で且つ前記脱穀部5及び前記選別部6の右側に位置するように前記機体フレーム2の右側部分に配設されている。前記穀粒貯留部7は、図1〜図3に示すように、前記穀粒搬送装置63によって搬送されてくる穀粒を貯留可能な穀粒タンク21と、前記穀粒タンク21内に貯留されている穀粒を外部へ排出可能な穀粒排出装置22とを有している。
【0028】
前記排藁処理部8は、前記脱穀搬送装置17から送られてくる脱穀処理後の排藁を受け継ぐように、前記脱穀部5の後方側に配設されている。前記排藁処理部8は、図3に示すように、前記脱穀搬送装置17から送られてくる脱穀処理後の排藁を受け継いで外部へ排出する排藁搬送装置81を有している。好ましくは、前記排藁処理部8は、前記排藁を切断する排藁切断装置82をさらに有し得る。
【0029】
図4〜図6に、それぞれ、前記クローラ12,前記エンジン31及び前記トランスミッション25が前記機体フレーム2に組み付けられてなるプーリーアッセンブリの平面図、正面図及び側面図を示す。
【0030】
図4〜図6に示すように、前記エンジン31は、前記穀粒貯留部7(図1及び図2参照)の前方に位置するように、前記機体フレーム2の前側部分における車輌幅方向一方側(本実施形態においては右側)に支持されている。
【0031】
図7〜図9に、それぞれ、前記エンジン31の前方斜視図、平面図及び正面図を示す。図10に、前記エンジンの模式平面図を示す。
【0032】
図7〜図9に示すように、前記エンジン31は、シリンダブロック31b及びシリンダヘッド31cを含むエンジン本体310と、車輌幅方向他方側の端部が外方へ突出された状態で前記エンジン本体310に支持されたエンジン出力軸320とを備えている。前記エンジン出力軸320の車輌幅方向他方側の端部には、図3〜図6に示すように、該エンジン出力軸320の回転動力を前記トランスミッション25のトランスミッション入力軸210に向けて出力する為のエンジン駆動側プーリー(エンジン側出力プーリー)330が相対回転不能に支持されている。
【0033】
なお、本実施形態においては、図3〜図5に示すように、前記エンジン出力軸320の車輌幅方向他方側の端部には、さらに、前記エンジン駆動側プーリー330より車輌幅方向他方側に第2エンジン駆動側プーリー335が相対回転不能に支持されている。前記第2エンジン駆動側プーリー335は、図3に示すように、前記脱穀部5,前記選別部6及び前記排藁処理部8へ向けて回転動力を出力する。
【0034】
前記エンジン部9は、前記エンジン31に加えて、ラジエター32及び冷却ファン31dを備えている。詳しくは、図7〜図9に示すように、前記ラジエター32は、前記エンジン本体310の車輌幅方向一方側(本実施形態においては右側)に配設されている。
【0035】
前記冷却ファン31dは、前記エンジン出力軸320によって作動的に駆動される状態で前記ラジエター32と前記エンジン本体310との間に配設されている。本実施形態においては、前記エンジン出力軸320は、車輌幅方向一方側の端部も前記エンジン本体310から外方へ延在されており、前記冷却ファン31dは前記エンジン出力軸320の車輌幅方向一方側の端部によってプーリー伝動機構340を介して作動的に駆動されている。
【0036】
なお、前記ラジエター32の車輌幅方向外方側には、図2に示すように、エンジンカバー45が配設されており、前記エンジンカバー45には前記冷却ファン31dの外気取り入れ口60が設けられている。
【0037】
さらに、前記エンジン部9は、図1〜図2,図4〜図9に示すように、前記エンジン31の吸気側に流体接続されたエアクリーナ34及びプレクリーナ42を有するとともに、排気側に流体接続されたマフラー36を有している。
【0038】
詳しくは、前記エンジン本体310は、前記シリンダヘッド31cの吸気側及び排気側にそれぞれ流体接続された吸気マニホールド31e及び排気マニホールド31fを有している。本実施形態においては、図7〜図9に示すように、前記吸気マニホールド31eは前記シリンダヘッド31cの後方側に連結され、前記排気マニホールド31fは前記シリンダヘッド31cの前面側に連結されている。
【0039】
そして、前記エアクリーナ34は出口側が吸気通路33を介して前記吸気マニホールド31eに流体接続され且つ入口側が吸気ダクト43を介して前記プレクリーナ42に流体接続されている。
【0040】
なお、本実施形態においては、前記エアクリーナ34は前記シリンダヘッド31cの車輌幅方向一方側(右側)の上方に配置され、前記プレクリーナ42は前記操縦部11及び前記穀粒貯留部7の間において前記穀粒貯留部7の前記貯留タンク21より上方に配置されている。
【0041】
図7,図8に示すように、前記マフラー36は、入口側が図略の排気通路を介して前記排気マニホールド31fに流体接続され且つ出口側にはテールパイプ49が接続されている。前記テールパイプ49の下流側の端部は、前記脱穀部5よりも高く且つ前記プレクリーナ42よりも低い位置で、好ましくは、前記プレクリーナ42から離間する方向に開口される。
【0042】
図4〜図9に示すように、前記エンジン31には、さらに、排気側から吸気側へ排気ガスの一部を還流させる為の排気ガス再循環装置37が備えられている。
【0043】
図7に示すように、前記排気ガス再循環装置37は、前記エンジン本体310の排気側及び吸気側を流体接続する連通手段38と、前記連通手段38を選択的に連通又は遮断させる制御弁39とを有している。
【0044】
前記連通手段38は、例えば、図略の排気通路及び前記吸気通路33の間を流体接続する配管とされ得る。
【0045】
前記制御弁39は、例えば、前記連通手段38に介挿される電磁弁とされ、エンジンコントローラ(図示せず)からの制御信号に基づき前記連通手段38を選択的に連通又は遮断させる。
【0046】
好ましくは、前記排気ガス再循環装置37は、前記連通手段38によって前記エンジン31の排気側から吸気側へ還流される排気ガスを冷却させる冷却手段40を有することができる。前記冷却手段40は、前記エンジン31を冷却する為のエンジン冷却水を利用して前記連通手段38を冷却するように構成される。
【0047】
前記トランスミッション25は、前記エンジン31の前方に位置する(図1参照)ように前記機体フレーム2に支持されており、前記エンジン31からの回転動力を変速して前記走行部3へ向けて出力すると共に、車速同調回転動力をプーリーを用いた伝動機構(後述する刈取用プーリー伝動機構)を介して前記刈取部4の刈取入力軸400へ向けて出力し得るように構成されている。
【0048】
図10(a)〜(c)に、それぞれ、前記トランスミッション25の正面図,平面図及び右側面図を示す。図11に、前記トランスミッション25の伝動模式図を示す。
【0049】
図4〜図6,図10,図11に示すように、前記トランスミッション25は、トランスミッションケース200と、前記トランスミッションケース200から車輌幅方向他方側へ突出された状態で前記トランスミッションケース200に直接又は間接的に支持された前記トランスミッション入力軸210と、前記トランスミッション入力軸210に入力された回転動力を変速する変速機構220と、前記変速機構220によって変速された回転動力を前記走行部へ向けて出力する走行系出力軸230と、前記走行系出力軸230から出力される回転動力に同調した車速同調回転動力を出力する作業機系出力軸240とを含んでいる。
【0050】
本実施形態においては、前記変速機構220は、図11に示すように、主変速機構として作用する走行用HST221と、副変速機構として作用するギヤ式変速機構225とを含んでいる。
【0051】
さらに、前記トランスミッション25は、図11に示すように、前記左右一対のクローラ12間に速度差を生じさせる為の旋回用回転動力を出力する旋回用HST250と、前記変速機構220からの回転動力及び前記旋回用HST250からの回転動力を合成して左右一対の走行系出力軸230に出力する左右一対の遊星ギヤ機構260とを有している。なお、図11においては、理解容易化の為に前記旋回用HST250を2カ所において示している。
【0052】
前記変速機構220からの回転動力は同一回転方向且つ同一回転速度で前記一対の遊星ギヤ機構260に伝達され、前記旋回用HST250からの回転動力は同一回転速度で回転方向が反対とされた状態で前記一対の遊星ギヤ機構260に伝達される。
【0053】
図4〜図6、図10〜図11に示すように、前記トランスミッション入力軸210の車輌幅方向他方側の端部にはトランスミッション側入力プーリー215が相対回転不能に支持されている。前記トランスミッション側入力プーリー215は無端帯216(図3参照)を介して前記エンジン駆動側プーリー330に連結されている。なお、本実施形態においては、前記旋回用HST250のポンプ軸が前記トランスミッション入力軸210として作用している。
【0054】
前記作業機系出力軸240は、図11に示すように、前記走行用HST221のモータ軸に作動連結されており、且つ、図4〜図5、図10に示すように、車輌幅方向他方側の端部が前記トランスミッションケース200より外方へ延在されている。
【0055】
図3〜図5,図10に示すように、前記作業機系出力軸240の車輌幅方向他方側の端部には、前記刈取部4へ車速同調回転動力を出力する為のトランスミッション側駆動プーリー245が相対回転不能に支持されている。
【0056】
本実施形態においては、図4,図10等に示すように、前記作業機系出力軸240は、前記トランスミッション側入力軸210よりも前方に配置されており、且つ、車輌幅方向他方側の端部が前記トランスミッション側入力プーリー215よりも車輌幅方向他方側へ延在されている。そして、前記トランスミッション側駆動プーリー245は、前記トランスミッション側入力プーリー215よりも車輌幅方向他方側の位置において前記作業機系出力軸240に支持されている。
【0057】
前記トランスミッション側駆動プーリー245は、図3〜図6に示すように、前記刈取入力軸400に相対回転不能に支持された刈取入力側従動プーリー405に無端帯246を介して連結されている。
【0058】
詳しくは、図4〜図6に示すように、前記刈取入力軸400は、前記エンジン31の車輌幅方向他方側(左側)において車輌幅方向に沿うように配設されている。
【0059】
本実施形態においては、図4〜図6に示すように、前記走行機体は、前記エンジン31の車輌幅方向他方側に位置するように前記機体フレーム2に立設された刈取支持フレーム2aを有している。
【0060】
前記刈取支持フレーム2aの上部にはパイプ状の回動支点部材(図示せず)が設けられ、前記刈取入力軸400は前記回動支点部材に軸線回り回転自在に内挿され、前記刈取部4の刈取フレーム29(図1参照)が前記回動支点部材回り昇降可能に連結される。
【0061】
図4〜図6に示すように、前記刈取入力軸400の車輌幅方向一方側の端部には前記刈取入力側従動プーリー405が相対回転不能に支持されており、前記刈取入力側従動プーリー405が前記無端帯246(図3参照)を介して前記トランスミッション側駆動プーリー245に連結されている。前記トランスミッション側駆動プーリー245、無端帯246及び刈取入力側従動プーリー405は、刈取用プーリー伝動機構を構成する。
【0062】
前記刈取用プーリー伝動機構は、その動力の伝動状態(クラッチ係合状態及びクラッチ解除状態)が以下に詳述する前記刈取クラッチ機構500(図3参照)によって切り換えられるようになっている。図12は、前記刈取用プーリー伝動機構及び前記刈取クラッチ機構500周辺の構成を示す斜視図、図13は、前記刈取用プーリー伝動機構及び前記刈取クラッチ機構500周辺の構成を示す側面図、図14は、前記刈取クラッチ機構500による動力の遮断状態を示す図である。なお、図12では、刈取用プーリー伝動機構(前記トランスミッション側駆動プーリー245、無端帯246、刈取入力側従動プーリー405)の図示は省略している。
【0063】
図12,図13に示すように、前記刈取クラッチ機構500は、取付ブラケット501と、刈取クラッチ電動モータ502と、第1スプリング503と、リンク機構504と、テンションプーリー505とを備える。
【0064】
取付ブラケット501は、車輌左右方向に延びる比較的短尺のバー(図示せず)と、該バーの各端部に互いに平行となるように取り付けられた一対の第1支持板5011及び第2支持板5012(図12参照)とを有してなり、当該コンバイン1に複数設けられている前記運転席支持フレームFのうちの1つの運転席支持フレームFを、前記第1、第2支持板5011,5012によって挟み込む態様で前記運転席支持フレームFに取り付けられている。運転席支持フレームFは、前記エンジン31の上方で運転席26を支持するためのフレームである。
【0065】
刈取クラッチ電動モータ502は、そのモータ出力軸5021(図15参照)が車輌幅方向に沿うように前記取付ブラケット501の前記第1支持板5011と第2支持板5012との間に配置された状態で前記取付ブラケット501に支持されている。なお、本実施形態における刈取クラッチ電動モータ502は、前記取付ブラケット501を介して間接的に前記運転席支持フレームFに取り付けられているが、前記運転席支持フレームFに直接支持される形態を採用することも可能である。
【0066】
前記取付ブラケット501の前記第1支持板(前記モータ出力軸5021が突出する側の支持板)5011の適所には、貫通孔5011aが形成されており、前記モータ出力軸5021は、前記第1支持板5011の内側(前記第1支持板5011の前記刈取クラッチ電動モータ502と対向する側)から前記貫通孔5011aを通って外側に突出している。
【0067】
前記取付ブラケット501における前記第1支持板5011の外側の面には、第1スプリング取付用バー部5013が設けられている。第1スプリング取付用バー部5013は、その基端部が前記取付ブラケット501における前記第1支持板5011の適所において例えば溶接等により固着されており、車輌前方斜め下方向に向けて所定長さだけ延びる態様を有している。
【0068】
前記第1スプリング取付用バー部5013の先端部には、当該第1スプリング取付用バー部5013のバー本体に対して直交し、前記モータ出力軸5021と略平行に延びるピン状の被係合部5013aが形成されている。この被係合部5013aには、後述する第1スプリング503の一端部が係合されている。
【0069】
また、前記第1支持板5011の前記外側面には、前記第1スプリング取付用バー部5013の他に規制部5014が設けられている。前記規制部5014は、前記第1支持板5011の前記外側面から起立するボルト取付用プレート5014aと、該ボルト取付用プレート5014aに直交する態様で取り付けられた規制用ボルト5014bとを備えてなり、前記規制用ボルト5014bの頭部で後述する第1アーム部材506(図15参照)の回動を規制する。したがって、前記第1アーム部材506が規制される位置は、前記規制用ボルト5014aの頭部の位置によって定まる。
【0070】
前記モータ出力軸5021の先端には、前記リンク機構504の一構成要素である駆動側アームの一例としての前記第1アーム部材506(図15参照)が取り付けられている。具体的には、前記第1アーム部材506は、短尺平板形状を有し、前記第1アーム部材506の板面と前記モータ出力軸5021とが直交するように当該第1アーム部材506の一端部が前記モータ出力軸5021の先端に固着されることにより前記モータ出力軸5021に相対回転不能に支持されている。
【0071】
前記モータ出力軸5021の先端は、前記第1支持板5011から外方に突出しており、前記第1アーム部材506は、このモータ出力軸5021の前記先端部分に取り付けられているので、前記第1アーム部材506は、前記第1支持板5011に対して前記刈取クラッチ電動モータ502と反対側のスペースに配設されている。以下、前記第1アーム部材506の前記一端部を揺動基端部、前記他端部を自由端部というものとする。第1アーム部材506は、前記自由端部において前記モータ出力軸5021と略平行に突出形成されたピン部5061を有する。
【0072】
第1スプリング503は、本実施形態では、両端にそれぞれ係合構造を有するつるまきバネであり、自然長より長い状態で、一端部(以下、自由端部という)が前記第1アーム部材506の前記ピン部5061に対して該ピン部5061の軸周り方向に相対移動可能に係合され、また、他端部(以下、回動支点側端部という)が前記第1スプリング取付用バー部5013の前記被係合部5013aに対して該被係合部5013aの軸周り方向に相対移動可能に係合されている。これにより、第1スプリング503は、前記第1アーム部材506の前記自由端部を前記被係合部5013a側に引き込むように付勢する。第1スプリング503は、保持バネの一例である。
【0073】
リンク機構504は、前記刈取クラッチ電動モータ502及び前記テンションプーリー505を作動連結するものであり、前記第1アーム部材506と、第2スプリング507と、バー部材508と、第2アーム部材509とを有する。
【0074】
第2スプリング507は、本実施形態では両端にそれぞれ係合構造を有するつるまきバネであり、前記第1スプリング503よりも高い剛性を有する。第2スプリング507は、略自然長の状態で、一端部が前記第1アーム部材506の前記ピン部5061に対して該ピン部5061の軸周り方向に相対移動可能に係合され、また、他端部が、後述するバー部材508の一端部に形成された図略の係合孔を有する係合部に相対回転自在に係合されている。第2スプリング507は、リンクバネの一例である。なお、図13に示す第2スプリング507の上方に記載されているスプリングについては本実施形態では関係の無いものであり、変形形態に係る部材であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
バー部材508は、棒状の部材であり、前述したように、一端部に形成された図略の係合孔に前記第2スプリング507の前記他端部が係合されている。また、バー部材508の他端部は、当該バー部材508と前記第2アーム部材509とを連結する回動ピン510に対して該回動ピン510の軸周り方向に相対回転自在に支持されている。
【0076】
第2アーム部材509は、一端部が前記運転席支持フレームFに固着された回動枢支軸511に対して軸線周りに回転自在に外挿された基端部とされており、また、他端部が、前記回動ピン510に対して該回動ピン510の軸周りに相対回転自在に支持されている。前記第2アーム部材509は、従動側アームの一例である。
【0077】
テンションプーリー505は、前記回動枢支軸511に軸線回りに回転自在に外挿された回動部5051と、前記回動部5051から径方向外方へ延在されたアーム部5052と、前記アーム部5052の自由端部に回転自在に支持されたプーリー本体5053とを有する。前記アーム部5052と前記第2アーム部材509とは、互いに相対回転不能となっている。
【0078】
以上のような構成を有する刈取クラッチ機構500は、クラッチ解除状態では、図14に示すように、前記第1アーム部材506の自由端部が該第1アーム部材506の固定端部より後方(図14の右側)の位置に位置し、前記第1スプリング503の自由端部が前記第1アーム部材506の固定端部より後方の位置に位置する。
【0079】
このとき、前記第1アーム部材506の自由端部が前記規制部5014の前記規制用ボルト5014bに当接し、前記第1アーム部材506が前記規制用ボルト5014bを押圧する方向の回動が規制される。この第1アーム部材506の位置を規制位置(第2位置に相当)という。
【0080】
ここで、図15に示すように、前記第1アーム部材506と前記モータ出力軸5021との連結点をO、第1スプリング503と前記第1スプリング取付用バー部5013の前記被係合部5013aとの係合点をP、前記第1スプリング503と前記第1アーム部材506のピン部5061との係合点をQというものとする。
【0081】
このとき、図15に示すように、第1スプリング503が前記第1アーム部材506に及ぼす付勢力Fを、前記連結点Oと前記係合点Qとを通る線分L1が延びる第1の方向と、前記係合点Qを通り且つ前記線分L1に直交する線分L2が延びる第2の方向とに分解すると、前記付勢力Fは、前記第1の方向の分力F1と、前記第2の方向の分力F2とに分解され、前記第1アーム部材506には、該第1アーム部材506を前記連結点O側に引っ張る分力F1の他に、前記第1アーム部材506の姿勢保持に関わる分力F2が作用する。その分力F2は、前記第1アーム部材506を前記規制位置に保持する方向のモーメントとして作用するため、図15に示す前記規制位置に弾性的に保持される。
【0082】
そして、このとき、前記プーリー本体5053は、前記刈取用プーリー伝動機構の無端帯246から一定距離だけ離間し、前記無端帯246に動力を伝達させるための所要の張力を該無端帯246に付加しないクラッチ解除位置に位置する。
【0083】
この状態から、前記刈取クラッチ電動モータ502に前記モータ出力軸5021を所定方向に所定角度だけ回転(以下、正転という)させると、図16に示すように、前記第1アーム部材506は、前記規制位置から該アーム部材506の自由端部が固定端部の上方を通る方向に回動し、前記第1アーム部材506の自由端部が、前記第1アーム部材506の固定端部に対して前方側の位置(以下、駆動位置という;第1位置に相当)に位置し、前記第1スプリング503の自由端部が前記第1アーム部材506の固定端部より前方の位置に位置する。
【0084】
このとき、図17に示すように、第1スプリング503が前記第1アーム部材506に及ぼす付勢力Fを、前記連結点Oと前記係合点Qとを通る線分L1が延びる第3の方向と、前記係合点Qを通り且つ前記線分L1に直交する線分L2が延びる第4の方向とに分解すると、前記付勢力Fは、前記第3の方向の分力F3と前記第4の方向の分力F4とに分解され、前記第1アーム部材506には、該第1アーム部材506を前記係合点Qで前記連結点Oと反対側の方向に引っ張る分力F3の他に、前記第1アーム部材506の姿勢保持に関わる分力F4が作用する。その分力F4は第1アーム部材506を前記駆動位置に保持する方向のモーメントとして作用するため、図17に示す前記駆動位置に弾性的に保持される。
【0085】
また、前記第1アーム部材506の移動に連動して、前記アーム部5052及びその自由端部に支持されたプーリー本体5053は、前記第2スプリング507、前記バー部材508、前記第2アーム部材509及び前記テンションプーリー505の回動部5051を介し、前記テンションプーリー505の前記アーム部5052とプーリー本体5053とが前記刈取用プーリー伝動機構の無端帯246に向けて一体的に回動する。
【0086】
すなわち、前記第2スプリング507は、前記一端部が前記第1アーム部材506の前記ピン部5061に係合されているため、前記第1アーム部材506の自由端部の回動に伴って前記第2スプリング507の前記一端部の位置が前方側に移動する。また、第2スプリング507は、高剛性のスプリング体であって前記バー部材508の係合部に遊嵌状態で係合しているとともに、前記第1アーム部材506により引っ張られているから、前記第2スプリング507及び前記バー部材508は、略直線状に並ぶ状態(直列状態)を維持したまま、前記リンク機構504における第2アーム部材509の自由端部を前記第1アーム部材506の前記ピン部5061側に引っ張る。
【0087】
さらに、前記第2アーム部材509と前記テンションプーリー505のアーム部5052とは互いに相対回転不能となっているから、前記第2アーム部材509の自由端部が前記第1アーム部材506の前記ピン部5061側に引っ張られることで、前記テンションプーリー505のアーム部5052が前記第2アーム部材509に対する相対位置関係を維持したまま前記第2アーム部材509と同一方向(矢印Aの方向)に同一角度だけ回動する。
【0088】
このとき、前記プーリー本体5053は、前記刈取用プーリー伝動機構の前記無端帯246を予め定められた力で押圧し、前記無端帯246に動力を伝達させるための所要の張力を該無端帯246に付加するクラッチ係合位置に位置する。
【0089】
図18は、コンバイン1のうち前記刈取クラッチ機構500の制御に係る電気的な構成を示す図である。
【0090】
図18に示すように、コンバイン1は、前記刈取クラッチ機構500(刈取クラッチ電動モータ502)の制御に係る電気的な構成として、刈取クラッチ操作部601と、制御部602とを有する。
【0091】
刈取クラッチ操作部601は、図略の操作レバーを有し、該操作レバーの操作位置として、前記刈取クラッチ機構500をクラッチ解除状態に設定する解除設定操作位置と、前記刈取クラッチ機構500をクラッチ係合状態に設定する係合設定操作位置とを有する。
【0092】
また、刈取クラッチ操作部601は、前記操作レバーの操作位置を検出するための刈取クラッチ操作位置センサ6011を有する。刈取クラッチ操作位置センサ6011は、前記操作レバーが前記解除設定操作位置に位置するときには、その旨(前記操作レバーが前記解除設定操作位置に位置する旨)を示す解除設定操作信号を前記制御部602に出力する一方、前記操作レバーが前記係合設定操作位置に位置するときには、その旨(前記操作レバーが前記係合設定操作位置に位置する旨)を示す係合設定操作信号を前記制御部602に出力する。
【0093】
制御部602は、制御装置に相当するものであり、コンバイン1の全体的な処理の制御を司るCPUと、データを一時的に保管する機能や作業領域としての機能を有するRAM(Random Access Memory)、プログラムを予め記憶するROMを備えて構成されている。制御部602には、刈取クラッチ操作部601(刈取クラッチ操作位置センサ6011)及び刈取クラッチ電動モータ502が電気的(通信可能)に接続されている。
【0094】
そして、制御部602は、前記ROMに格納された本実施形態特有のプログラムを前記CPUが実行することによって、刈取クラッチ電動モータ制御部6021としての機能を有する。
【0095】
刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011及び前記刈取クラッチ電動モータ502の動作を関連付けて制御するものである。すなわち、刈取クラッチ電動モータ制御部602は、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記係合設定操作信号を受信したときには、クラッチ解除状態に設定されている前記刈取クラッチ機構500をクラッチ係合状態とするべく、正転方向に所定量だけ前記刈取クラッチ電動モータ502を作動させる一方、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記解除設定操作信号を受信したときには、クラッチ係合状態に設定されている前記刈取クラッチ機構500をクラッチ解除状態とするべく、前記正転方向と反対の逆転方向に所定量だけ前記刈取クラッチ電動モータ502を作動させる。
【0096】
図19は、前記制御部602(刈取クラッチ電動モータ制御部6021)の制御を示すフローチャートである。なお、図19に示すフローチャートの各処理を行う前の前記刈取クラッチ機構500はクラッチ解除状態に設定されているものとする。
【0097】
図19に示すように、作業者によって、コンバイン1の各部(刈取クラッチ機構500及び刈取クラッチ操作部601を含む)に対する電源供給のオンオフを行う電源スイッチ(図示せず)をオンする操作が行われると(ステップ♯1でYES)、前記刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記解除設定操作信号を受信したか否かを判断する(ステップ♯2)。
【0098】
前記刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記係合設定操作信号を受信していないと判断した場合には(ステップ♯2でNO)、前記係合設定操作信号を受信したと判断するまでステップ♯2の処理を一定周期で繰り返し実行し、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記係合設定操作信号を受信したと判断すると(ステップ♯2でYES)、前記刈取クラッチ電動モータ502を前記正転方向に所定量だけ作動させる(ステップ♯3)。これにより、前記プーリー本体5053は、前記刈取用プーリー伝動機構の前記無端帯246を予め定められた力で押圧し、前記無端帯246に動力を伝達させるための所要の張力を該無端帯246に付加するクラッチ係合位置に位置する。
【0099】
その後、前記刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記解除設定操作信号を受信したか否かを判断し(ステップ♯4)、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記解除設定操作信号を受信していないと判断した場合には(ステップ♯4でNO)、前記解除設定操作信号を受信するまでステップ♯4の処理を一定周期で繰り返し実行し、前記刈取クラッチ操作位置センサ6011から前記解除設定操作信号を受信したと判断すると(ステップ♯4でYES)、刈取クラッチ電動モータ502を前記逆転方向に所定量だけ作動させる(ステップ♯5)。これにより、前記プーリー本体5053は、前記刈取用プーリー伝動機構の無端帯246から一定距離だけ離間し、前記無端帯246に動力を伝達させるための所要の張力を該無端帯246に付加しないクラッチ解除位置に位置する。
【0100】
そして、前記電源スイッチをオフする操作がまだ行われていない場合には(ステップ♯6でNO)、刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、ステップ♯2の処理に戻る一方、前記電源スイッチをオフする操作が行われた場合には(ステップ♯6でYES)、刈取クラッチ電動モータ制御部6021は、一連の処理を終了する。
【0101】
以上のように、本実施形態では、前記テンションプーリー505及び前記刈取クラッチ電動モータ502を前記運転席支持フレームFで支持するようにしたので、前記運転席の近傍の例えばサイドコラムに前記刈取クラッチ電動モータが502が取り付けられている従来構成に比して、前記刈取クラッチ電動モータ502と前記テンションプーリー505との間の連結構造を簡略させることができる。
【0102】
その結果、前記刈取クラッチ電動モータ502と前記テンションプーリー505との間の連結構造の組立作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0103】
本件は、前記実施形態の他、次のような変形形態も採用可能である。
【0104】
(1)前記第1の実施形態においては、前記刈取クラッチ電動モータ502の故障等の原因によって前記第1アーム部材506が前記規制位置から前記駆動位置まで回動しないという状況が発生し得ることが考えられる。
【0105】
そこで、図12〜図14,図16に示すように、前記第1支持板5011の前記外側の面の適所に非常用係合ピン部5015を形成しておく。この非常用係合ピン部5015の形成位置は、第2スプリング507の各端部のうち前記第1アーム部材506の前記ピン部5061に係合されている方の端部を前記非常用係合ピン部5015に係合させたときのテンションプーリー505の位置が、前記第1アーム部材506が前記駆動位置に位置する場合のテンションプーリー505の位置(前記係合解除位置)と同一位置となるような形成位置である。
【0106】
そして、前記第1アーム部材506が回動しない状況が発生すると、作業者に、非常用の措置として、第2スプリング507の各端部のうち、前記第1アーム部材506の前記ピン部5061に係合されている方の端部を該ピン部5061から取り外し、図13に示すように、該端部を前記非常用係合ピン部5015に係合させる作業を行わせることで、テンションプーリー505の位置が前記係合解除位置に手動で設定される。これにより、前記トランスミッション側駆動プーリー245の出力が前記刈取入力側従動プーリー405に伝達されない状況が生じるのを回避することができる。
【0107】
なお、前記非常用係合ピン部5015の形成位置は、1点に限定されるものではなく、前記テンションプーリー505が結果的に係合解除位置となるような位置であればどのような位置でもよい。
【0108】
(2)前記第1の実施形態では、前記第1アーム部材506と前記第2アーム部材509とを連結する連結構造を、前記第2スプリング507と前記バー部材508とを用いて構成したが、前記第2スプリング507を設けないで1本のバー部材(剛体)のみで構成することも可能である。ただし、何らかの原因により第2アーム部材509が回動しなくなった場合を想定して、前記第2スプリング507を介在させる方が好ましい。
【0109】
すなわち、前記連結構造を仮に1本のバー部材(剛体)のみで構成すると、何らかの原因により第2アーム部材509等が回動しなくなったときに、そのバー部材や前記第1アーム部材506の位置が固定されることとなるにも拘らず、前記刈取クラッチ電動モータ502がモータ出力軸5021(前記第1アーム部材506)を所定量回動させようとする結果、刈取クラッチ電動モータ502内に過電流が流れるという現象が発生する。
【0110】
そこで、本実施形態のように、前記連結構造にスプリング体(前記第2スプリング507)を採用することで、何らかの原因により第2アーム部材509が回動しなくなっても、前記スプリング体が伸縮するため、前記第1アーム部材506及びモータ出力軸5021が回動可能となり、刈取クラッチ電動モータ502内に過電流が流れるのを回避することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 コンバイン
2 機体フレーム
2a 刈取支持フレーム
3 走行部
4 刈取部
9 エンジン部
10 ミッション部
11 操縦部
25 トランスミッション
26 運転席
29 刈取フレーム
31 エンジン
320 エンジン出力軸
330 エンジン駆動側プーリー
335 第2エンジン駆動側プーリー
340 プーリー伝動機構
200 トランスミッションケース
210 トランスミッション入力軸
215 トランスミッション側入力プーリー
230 走行系出力軸
240 作業機系出力軸
245 トランスミッション側駆動プーリー
246 無端帯
400 刈取入力軸
405 刈取入力側従動プーリー
500 刈取クラッチ機構
501 取付ブラケット
5011 第1支持板
5011a 貫通孔
5012 第2支持板
5013 第1スプリング取付用バー部
5013a 被係合部
5014 規制部
5014a ボルト取付用プレート
5014b 規制用ボルト
5015 非常用係合ピン部
502 刈取クラッチ電動モータ
5021 モータ出力軸
503 第1スプリング
504 リンク機構
505 テンションプーリー
5051 回動部
5052 アーム部
5053 プーリー本体
506 第1アーム部材
5061 ピン部
507 第2スプリング
508 バー部材
509 第2アーム部材
510 回動ピン
511 回動枢支軸
601 刈取クラッチ操作部
602 制御部
6011 刈取クラッチ操作位置センサ
6021 刈取クラッチ電動モータ制御部
F 運転席支持フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの前側部分における車輌幅方向一方側に支持されたエンジンから前記エンジンの前方に位置するトランスミッションを介して左右一対の走行部に走行系回転動力が伝達されると共に、前記エンジンより車輌幅方向他方側において前記機体フレームに立設された刈取支持フレームに刈取入力軸が車輌幅方向に沿って支持され、前記走行系回転動力に同調した車速同調回転動力が前記トランスミッションから刈取用プーリー伝動機構を介して前記刈取入力軸に伝達され、前記刈取用プーリー伝動機構の伝動状態がテンションプーリー及び前記テンションプーリーを移動させる刈取クラッチ電動モータを含む刈取クラッチ機構によって切り換えられるコンバインであって、
前記テンションプーリーは、車輌幅方向に沿った回動基準軸線回りに前記刈取用プーリー伝動機構の無端帯に対して張力を付加するクラッチ係合位置及び前記張力を解除するクラッチ解除位置を取り得る状態で前記エンジンの上方に運転席を設置する為の運転席支持フレームに直接又は間接的に支持され、
前記刈取クラッチ電動モータは、モータ出力軸が車輌幅方向に沿った状態で前記運転席支持フレームに直接又は間接的に支持されていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンは、エンジン本体と前記エンジン本体から車輌幅方向他方側へ突出されたエンジン出力軸とを有し、
前記トランスミッションは、ミッションケースと前記ミッションケースから車輌幅方向他方側へ突出されたトランスミッション入力軸及び作業機系出力軸とを有し、
車輌幅方向に関し前記エンジン本体及び前記刈取支持フレームの間の空間に、前記エンジン出力軸から前記トランスミッション入力軸へ回転動力を伝達するトランスミッション用プーリー伝動機構と前記トランスミッション用プーリー伝動機構より車輌幅方向他方側に位置する前記刈取用プーリー伝動機構とが車輌幅方向に沿って並設され、
前記刈取クラッチ電動モータは、前記トランスミッション用プーリー伝動機構より上方において取付ブラケットを介して前記運転席支持フレームに支持されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記回動基準軸線を画する枢支軸が前記運転席支持フレームに固着されており、
前記テンションプーリーは、前記枢支軸に軸線回り回転自在に外挿された回動部と、前記回動部から径方向外方へ延在されたアーム部と、前記無端帯に対して作用し得るように前記アーム部の自由端部に支持されたテンションプーリー本体とを有し、
前記刈取クラッチ機構には、前記刈取クラッチ電動モータ及び前記テンションプーリーを作動連結するリンク機構が備えられ、
前記リンク機構は、前記モータ出力軸に相対回転不能に支持された駆動側アームと、前記回動部に相対回転不能に支持された従動側アームと、前記駆動側アーム及び前記従動側アームを連結するリンク部材とを有し、前記モータ出力軸の軸線回りの回転に応じて前記駆動側アームが前記モータ出力軸の軸線回り一方側の第1位置及び他方側の第2位置に位置されると前記テンションプーリーをそれぞれクラッチ係合位置及びクラッチ解除位置に位置させるように構成され、
前記刈取クラッチ機構には、さらに、基端部が固定され且つ先端部が前記駆動側アームに連結された保持バネが備えられ、
前記駆動側アームが第1位置及び第2位置に位置する際に前記保持バネが前記駆動側アームをそれぞれ前記モータ出力軸の軸線回り一方側及び他方側に付勢するように、前記保持バネの基端部の位置が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記リンク部材は、前記保持バネよりも高剛性のリンクバネを有し、
前記リンクバネは、基端部が前記駆動側アームに作動的に連結され且つ先端部が前記従動側アームに作動的に連結されて前記従動側アームを前記駆動側アームに連動させる第1使用状態と、基端部が前記取付ブラケットに固定され且つ先端部が前記従動側アームに作動連結されて前記テンションプーリーがクラッチ係合位置に位置するように前記従動側アームを付勢する第2使用状態とを選択的に取り得ることを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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