説明

コンバイン

【課題】圃場の隅部で未刈穀稈を刈り取るコンバインの隅刈作業を行う場合、隅刈作業を自動的に行うことを可能として、操縦者の操作負担を軽減する。すなわち操縦者の操作技術に拘らず円滑な隅刈作業を行うことを可能とし、圃場の隅部での作業性を向上することが可能なコンバインを提供する。
【解決手段】コンバイン1において、圃場の隅刈りを自動的に行うモードである自動隅刈りモードを実行する手段であって、制御装置200と接続されるスタートボタン153(隅刈り操作手段)を備え、自動隅刈りモードにおいて制御装置200は、刈取部4を上昇させてから、機体を所定距離後進させて停止させ、刈取部4を下降させてから、機体を所定角度旋回させて刈り取りしながら所定距離前進させて停止させる作業動作を、設定回数行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取作業、さらに詳しく言えば隅刈作業の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの刈取装置の分草杆近傍に穀稈検知センサを設けて穀稈を検知し、この検知結果に基づいて、前記コンバインを自動的に殻稈の列(条)に沿って走行するように制御する刈取操向制御装置の技術が公知となっている(例えば、技術文献1参照)。
特許文献1記載のコンバインでは、殻稈検知センサによって縦条または横方向の殻稈を検知し、この検知結果に基づいて刈取操向制御装置が電磁バルブによりコンバインの左右のサイドクラッチを作動させて、前記コンバインを自動的に所望の方向へ走行するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−312502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場の四隅(隅部)におけるコンバインの隅刈作業は自動化されておらず、依然として操縦者が機体を低速で前後進させながら複数回の切返し操作を行う必要がある。また、その際に、切返し操作による機体の旋回角度が小さいと、その機体の前後進の往復回数が多くなり、逆に機体の旋回角度が大きいと、その機体が穀稈を踏み倒す可能性が高くなる。すなわち、操縦者の操作技術が未熟である場合には、円滑に隅刈作業を行うことは困難であり、圃場の隅部での作業性がよくなかった。
【0005】
そこで本発明は、圃場の隅部で未刈穀稈を刈り取るコンバインの隅刈作業を行う場合、隅刈作業を自動的に行うことを可能として、操縦者の操作負担を軽減する。すなわち操縦者の操作技術に拘らず円滑な隅刈作業を行うことを可能とし、圃場の隅部での作業性を向上することが可能なコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、機体の走行距離検出手段と、前記機体の走行手段を前進駆動させる前進アクチュエータと、前記走行手段を後進駆動させる後進アクチュエータと、前記機体の旋回角度検出手段と、前記走行手段の左右出力を変更する操向アクチュエータと、前記機体の刈取部を昇降作動させる昇降アクチュエータと、前記各アクチュエータを制御する制御手段と、を備えるコンバインにおいて、圃場の隅刈りを自動的に行うモードである自動隅刈りモードを実行する手段であって、前記制御手段と接続される隅刈り操作手段を備え、自動隅刈りモードにおいて前記制御手段は、前記刈取部を上昇させてから、前記機体を所定距離後進させて停止させ、前記刈取部を下降させてから、前記機体を所定角度旋回させて刈り取りしながら所定距離前進させて停止させる作業動作を、設定回数行うように制御するものである。
【0008】
請求項2においては、前記制御手段は、前記自動隅刈りモードの実行中に前記機体の操作具が操作された場合、前記自動隅刈りモードの実行を停止させるように制御するものである。
【0009】
請求項3においては、前記自動隅刈りモードにおける前記作業動作の回数は任意に設定可能とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、隅刈作業をコンバインが自動的に行うことが可能となり、操縦者の操作の負担を解消し、操縦者の操作技術に拘らず円滑な隅刈作業を行うことが可能となる。よって、圃場の隅部での作業性を向上することができる。
【0012】
請求項2においては、障害物が機体の前に発見された場合等の緊急時に、自動隅刈りモードの制御を停止し、機体の動作を停止することできる。その後、操縦者は刈取作業を手動で行うことが可能となり、圃場の隅部での作業性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3においては、圃場の隅部において、その広さや機体の大きさ等にあわせて、刈取作業を適切に行うことが可能となり、圃場の隅部での作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく走行系トランスミッションの伝動模式図。
【図3】同じく制御ブロック図。
【図4】自動隅刈りモード全体のフローチャート。
【図5】(a)機体の後進を示すフローチャート、(b)機体の前進(旋回)走行を示すフローチャート。
【図6】自動隅刈りモードに係る機体の走行軌跡を示す図。(a)1回目の前進に至る走行軌跡を示す図、(b)2回目の前進に至る走行軌跡を示す図。
【図7】自動隅刈りモードに係る機体の走行軌跡を示す図。(c)3回目の前進に至る走行軌跡を示す図、(d)自動隅刈りモード終了後に圃場の隅部(停止位置P1)に至る走行軌跡を示す図。
【図8】別実施形態に係る自動隅刈りモード全体のフローチャート。
【図9】(a)別実施形態に係る機体の前後進を示すフローチャート、(b)別実施形態における旋回を示すフローチャート
【図10】別実施形態に係る自動隅刈りモードにおける機体の走行軌跡を示す図。(a)1回目の前進に至る走行軌跡を示す図、(b)2回目の前進に至る走行軌跡を示す図。
【図11】別実施形態に係る自動隅刈りモードにおける機体の走行軌跡を示す図。(c)3回目の前進に至る走行軌跡を示す図、(d)自動隅刈りモード終了後に至る走行軌跡を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のコンバインの一実施形態に係るコンバイン1について説明する。
なお、以下において、図中における矢印Aの指す方向を前とし、前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0016】
まず、コンバイン1の全体構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、コンバイン1には、機体フレーム2に対して、走行部3、刈取部4、脱穀部5、選別部6、穀粒貯溜部7、排藁処理部8、エンジン部9、ミッション部10、操縦部11等が設けられる。
【0018】
走行部3は機体フレーム2の下部に設けられる。走行部3は走行手段として左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置12・12等を有し、左右のクローラ式走行装置12により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
刈取部4は機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部4は分草具13、引起装置14、切断装置15、搬送装置16等を有し、分草具13により圃場の穀稈を分草し、引起装置14により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置15により引き起こし後の穀稈を切断し、搬送装置16により切断後の穀稈を脱穀部5側へ搬送することができるように構成される。刈取部4は、昇降アクチュエータである刈取部昇降油圧シリンダ140により機体に対して昇降可能に構成される。
【0020】
脱穀部5は機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部4の後方に配置される。脱穀部5は搬送装置17や、図示せぬ扱胴や受網等を有して、搬送装置17により刈取部4から搬送されてくる穀稈を受け継いで排藁処理部8側へ搬送し、前記扱胴および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0021】
選別部6は機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部5の下方に配置される。選別部6は図示せぬ揺動選別装置、風選別装置、穀粒搬送装置、藁屑排出装置等を有し、前記揺動選別装置により脱穀部5から落下する脱穀物を穀粒と、藁屑や塵埃等と、に揺動選別し、前記風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と、藁屑や塵埃等と、に風選別し、前記穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部7側へ搬送する一方、前記藁屑排出装置により藁屑や塵埃等を外部へ排出することができるように構成される。
【0022】
穀粒貯溜部7は機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部5および選別部6の右側方に配置される。穀粒貯溜部7はグレンタンク21、穀粒排出装置22等を有し、グレンタンク21により選別部6から搬送されてくる穀粒を一時的に貯溜し、穀粒排出装置22により貯溜中の穀粒をグレンタンク21から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0023】
排藁処理部8は機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部5の後方に配置される。排藁処理部8は図示せぬ排藁搬送装置、排藁切断装置等を有し、前記排藁搬送装置により脱穀部5の搬送装置17からの脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、または前記排藁切断装置へ搬送し、前記排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0024】
エンジン部9は機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部7の前方に配置される。エンジン部9はエンジン23等を有し、動力をエンジン23からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の伝達機構を介して供給し、エンジン23により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0025】
ミッション部10は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9の前方に配置される。ミッション部10はトランスミッション26等を有し、エンジン部9のエンジン23の動力が走行部3や、刈取部4等の各装置へ供給される前に、トランスミッション26等により前記動力を変速することができるように構成される。
なお、ミッション部10については、後述にてさらに詳しく説明する。
【0026】
操縦部11は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9およびミッション部10の上方に配置される。操縦部11は操縦席24、ステアリングハンドル25を含む操作具類、図示せぬステップ等を有して、操縦席24にステップ上の操縦者を着座させ、操作具類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0027】
このようにして、コンバイン1は、操縦部11での操作具類の操作によって、エンジン部9からエンジン23の動力を各部の装置に供給して、走行部3にて機体を走行させながら、刈取部4で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部5で刈取部4からの穀稈を脱穀し、選別部6で脱穀部5からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部7で選別部6からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部8で脱穀部5からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0028】
次に、ミッション部10の構成について、さらに詳しく説明する。
【0029】
ミッション部10においては、図2に示すように、トランスミッション26に、走行用油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)40、操向用油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)50、伝動機構70、ミッションケースが設けられる。そして、ミッションケースに走行用HST40、操向用HST50、伝動機構70が収容され、これらによりコンバイン1の走行系の伝動機構が構成される。
【0030】
走行用HST40には、可変容積型の走行ポンプ40P、可変容積型の走行モータ40Mが設けられる。走行ポンプ40Pと走行モータ40Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、走行ポンプと走行モータとは少なくとも一方が可変容積型であればよい。本実施形態においては、前述したように走行ポンプ40Pと走行モータ40Mとは、共に可変容積型で構成されている。
【0031】
走行ポンプ40Pには、走行ポンプ軸41、走行ポンプ本体42、走行ポンプ容積調整手段43が設けられる。走行ポンプ軸41はエンジン23の出力軸と連動連結され、走行ポンプ本体42は走行ポンプ軸41に相対回転不能に支持される。走行ポンプ容積調整手段43は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることにより走行ポンプ40Pの容積量を変更することができるように構成される。
【0032】
走行モータ40Mには、走行モータ本体44、走行モータ軸45、走行モータ容積調整手段46が設けられる。走行モータ本体44は走行ポンプ本体42と流体接続され、走行モータ軸45に相対回転不能に支持される。走行モータ容積調整手段46は、可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることにより走行モータ40Mの容積量を変更することができるように構成される。
【0033】
走行用HST40は変速操作装置によって操作可能とされる。変速操作装置には、変速レバー等の人為操作可能な変速操作手段151、変速操作手段151の操作位置を検出する操作位置検出センサ161、走行ポンプ40P用の作動装置である変速アクチュエータ141P、走行モータ40M用の作動装置である変速アクチュエータ141Mが設けられる。図3に示すように、操作位置検出センサ161、変速アクチュエータ141P、変速アクチュエータ141Mはコンバイン1に設けられる制御装置200と接続され、変速アクチュエータ141Pと変速アクチュエータ141Mとは制御装置200により作動制御される。
【0034】
走行ポンプ40Pの走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43は、作動装置である変速アクチュエータ141Pにより作動される。変速アクチュエータ141Pは前進アクチュエータと後進アクチュエータとを兼ねるものであり、本実施形態においては電磁弁や、油圧シリンダや、電磁弁を作動させるソレノイド等により構成されている。但し、変速アクチュエータは電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能であり、ソレノイドに限定するものではない。変速アクチュエータ141Pは、操作位置検出センサ161からの検出結果に基づいて制御装置200により制御され、走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43に油圧シリンダのピストンが連結され、前記油圧シリンダが電磁弁の切り換えにより伸縮される。
【0035】
前進側に変速操作手段151である変速レバーを回動すると、制御装置200により電磁弁の前進側のソレノイドが作動されて増速側に電磁弁が切り換えられて油圧シリンダはその回動角に応じた長さに伸長され、走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43が中立位置から前進側に傾転され、コンバイン1は設定した走行速度に増速される。
減速側(中立側)に変速レバーを回動すると電磁弁は減速側に切り換えられて油圧シリンダは縮小し、その回動角に応じた位置に走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43が中立側に傾転される。
【0036】
また、後進させる場合も前記同様に、中立位置から変速レバーを後進側に回動した回動角に応じて走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43が傾転される。
【0037】
こうして、走行用HST40では、走行ポンプ40Pの駆動時に、走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43の傾転に応じて走行ポンプ40Pの容積量が変更されることによって、走行ポンプ40Pから走行モータ40Mへ吐出される作動油の吐出量および吐出方向が変更され、走行モータ軸45の回転方向が正または逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。さらに、走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43の傾転に応じて走行モータ40Mの容積量が変更されることによって、走行モータ40Mにおける走行モータ軸45の回転数が変更される。
【0038】
操向用HST50には、可変容積型の操向ポンプ50P、固定容積型の操向モータ50Mが設けられる。操向ポンプ50Pと操向モータ50Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、操向ポンプと操向モータとは少なくとも一方が可変容積型であればよい。本実施形態においては、操向ポンプ50Pが可変容積型、操向モータ50Mが固定容積型で構成されている。
【0039】
操向ポンプ50Pには、操向ポンプ軸51、操向ポンプ本体52、操向ポンプ容積調整手段53が設けられる。操向ポンプ軸51はエンジン23と連動連結され、操向ポンプ本体52は操向ポンプ軸51に相対回転不能に支持される。操向ポンプ容積調整手段53は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることにより操向ポンプ50Pの容積量を変更することができるように構成される。
【0040】
操向モータ50Mには、操向モータ本体54、操向モータ軸55、固定斜板が設けられる。操向モータ本体54は操向ポンプ本体52と流体接続され、操向モータ軸55に相対回転不能に支持される。固定斜板は操向モータ本体54に固定され、操向モータ50Mの容積量を固定するように構成される。
【0041】
操向用HST50は操向操作装置によって操作可能とされる。操向操作装置には、ステアリングハンドル25等の人為操作可能な操向操作手段、操向操作手段の操作位置を検出する操向位置検出センサ160、操向ポンプ50P用の差動装置である操向アクチュエータ142が設けられる。図3に示すように、操向位置検出センサ160、操向アクチュエータ142はコンバイン1に設けられる制御装置200と接続され、操向アクチュエータ142は制御装置200により作動制御される。
【0042】
操向ポンプ50Pの操向ポンプ容積調整手段(可動斜板)53は、作動装置である操向アクチュエータ142により作動される。操向アクチュエータ142は、本実施形態においては電磁弁や、油圧シリンダや、電磁弁を作動させるソレノイド等により構成されている。但し、操向アクチュエータは電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能であり、ソレノイドに限定するものではない。操向アクチュエータ142は、操向位置検出センサ160からの検出結果に基づいて制御装置200により制御され、操向ポンプ容積調整手段(可動斜板)53に油圧シリンダのピストンが連結され、前記油圧シリンダが電磁弁の切り換えにより伸縮される。
【0043】
ステアリングハンドル25を回動すると、制御装置200により電磁弁のソレノイドが作動されて操向ポンプ50Pの操向ポンプ容積調整手段(可動斜板)53が傾転される。この操向ポンプ容積調整手段(可動斜板)53の傾転角度に応じて操向ポンプ本体52の容積量が変更され、回転方向と回転数が無段階に変更される。
【0044】
また、伝動機構70には、一対の遊星ギヤ機構である第一遊星ギヤ機構80aおよび第二遊星ギヤ機構80b、走行用出力伝動機構100、操向用出力伝動機構110が設けられる。
【0045】
第一遊星ギヤ機構80aには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が設けられる。サンギヤ81は回転軸86に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第一出力軸60aと固定される。
【0046】
同様に、第二遊星ギヤ機構80bには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が設けられる。サンギヤ81は回転軸86に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第二出力軸60bと固定される。
【0047】
走行用出力伝動機構100には、出力軸101、分岐軸105、第一走行用出力ギヤ列106a、第二走行用出力ギヤ列106b、副変速機構107、駐車用ブレーキ装置102が設けられる。出力軸101は走行用HST40における走行モータ40Mの走行モータ軸45と連動連結され、分岐軸105は出力軸101に副変速機構107を介して連動連結される。
【0048】
副変速機構107は走行用の走行モータ軸45の回転動力を出力軸101と分岐軸105との間で多段変速させることができるように構成される。なお、走行モータ40Mの走行モータ軸45にはPTOプーリ48が固定され、このPTOプーリ48から走行モータ40Mの回転動力が刈取部4の伝動機構に伝達可能とされる。
【0049】
第一走行用出力ギヤ列106aは分岐軸105の回転動力を第一遊星ギヤ機構80aのインターナルギヤ84に伝達し、第二走行用出力ギヤ列106bは分岐軸105の回転動力を第二遊星ギヤ機構80bのインターナルギヤ84に伝達するものとされる。第一走行用出力ギヤ列106aと第二走行用出力ギヤ列106bの各伝動方向および伝動比は、互いに同一に設定される。
【0050】
駐車用ブレーキ装置102は、ブレーキ軸103、ブレーキユニット104を有し、ブレーキ軸103により出力軸101から回転動力を受けて分岐軸105へ出力し、ブレーキユニット104によりブレーキ軸103に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。つまり、駐車用ブレーキ装置102は走行モータ軸45に作動的に制動力を付加し得るものとされる。
【0051】
操向用出力伝動機構110には、出力軸111、共通軸112、第一操向用出力ギヤ列113a、第二操向用出力ギヤ列113b、クラッチ装置115、操向用ブレーキ装置114が設けられる。
【0052】
出力軸111は操向用HST50における操向モータ50Mの操向モータ軸55と連動連結され、共通軸112は出力軸111にクラッチ装置115を介して連動連結される。クラッチ装置115は出力軸111から共通軸112への回転動力を伝動または遮断することができるように構成される。
【0053】
第一操向用出力ギヤ列113aは共通軸112の回転動力を回転軸86等を介して第一遊星ギヤ機構80aのサンギヤ81に伝達し、第二操向用出力ギヤ列113bは共通軸112の回転動力を回転軸86等を介して第二遊星ギヤ機構80bのサンギヤ81に伝達するものとされる。第一操向用出力ギヤ列113aと第二操向用出力ギヤ列113bの伝動比は同一に設定され、伝動方向は互いに反対方向に設定される。
【0054】
操向用ブレーキ装置114は出力軸111に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。つまり、操向用ブレーキ装置114は操向モータ50Mの操向モータ軸55に作動的に制動力を付加し得るものとされる。
【0055】
このような構成において、操向用HST50の操向モータ50Mが停止し、走行用HST40の走行モータ40Mが駆動する場合、走行モータ40Mの回転動力が、走行モータ軸45から、走行用出力伝動機構100の出力軸101、分岐軸105、第一および第二走行用出力ギヤ列106a・106b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのインターナルギヤ84、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0056】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置12に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が駆動され、機体の前後方向における直進走行が行われる。
【0057】
機体の直進走行における前後方向の切り替えは、変速操作手段151である変速レバーを中立位置から逆方向に回動させることにより、前進アクチュエータまたは後進アクチュエータ(変速アクチュエータ141P)が作動され、走行ポンプ40Pから走行モータ40Mへ吐出される作動油の吐出方向が変更され、走行モータ軸45の回転方向が逆方向に変更されることにより行われる。
【0058】
走行用HST40の走行モータ40Mが停止し、操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、操向モータ50Mの回転動力が、操向モータ軸55から、操向用出力伝動機構110の出力軸111、共通軸112、第一および第二操向用出力ギヤ列113a・113b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのサンギヤ81、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0059】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが互いに反対方向に回転され、ひいては左右一方のクローラ式走行装置12の駆動輪が正または逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置12の駆動輪が逆または正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、例えば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
【0060】
走行用HST40における走行モータ40Mが駆動するとともに、操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、走行モータ40Mから走行用出力伝動機構100を介して伝達される回転動力と、操向モータ50Mから走行用出力伝動機構100を介して伝達される回転動力とが、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bでそれぞれ合成された後、第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0061】
この回転動力の伝達によって、第一および第二出力軸60a・60bが互いに異なる回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置12の駆動輪が互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が速度差をもって駆動され、機体の走行と左または右方向への旋回とが同時に行われる。旋回方向および旋回半径は左右のクローラ式走行装置12の速度差に応じて決定される。また、機体の旋回角度を検出する旋回角度検出手段172(図3参照)がコンバイン1に設けられ、旋回角度検出手段172は制御装置200に接続されている。
【0062】
次に、制御装置200について説明する。
制御装置200は、図3に示すように、主として演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)等の演算部、記憶装置(RAMやROM)、インターフェース等からなり、種々のセンサ等から信号が入力され、各アクチュエータ等へ出力する制御プログラムがROMに格納される。
制御装置200は、制御手段の一例である。
【0063】
本実施形態における制御装置200には、圃場の隅部における隅刈作業を行う場合に、コンバイン1を予め設定したように自動的に作動(走行)させ、刈取作業を行わせる「自動隅刈りモード」の制御プログラムが格納されている。なお、ここで「圃場の隅部」とは、圃場の四隅、すなわち圃場が略四角形状に区画されている場合のそれぞれの角部分を意味する。
【0064】
次に、図4から図7を用いて、自動隅刈りモードの制御について具体的に説明する。
【0065】
図6(a)に示すように、コンバイン1による刈取作業において、コンバイン1は圃場に入って直進刈りを行い、圃場の隅部の端(以下、「停止位置P1」とする。)に到達したならば機体を停止させる。次に、図4に示すように、操縦者は自動的に隅刈作業を行う場合には、自動隅刈りモードを実行する隅刈り操作手段であるスタートボタン153(図3参照)をON側に操作する(S1)。すると、スタートボタン153のON・OFFの操作位置を検出する隅刈り操作位置検出センサ163(図3参照)によりON操作、すなわち自動隅刈りモードが選択されたことが検出され(S2)、その検出結果に基づいて制御装置200により自動隅刈りモードの制御が開始される。
なお、スタートボタン153は、隅刈り操作手段の一例であり、押しボタン式やタッチセンサ式等形式に限定されず、レバー等で構成してもよい。また、隅刈り操作手段と隅刈り操作位置検出センサ163とは一つのスイッチにより構成してもよい。
【0066】
自動隅刈りモードにおいて、機体の前進時に作業クラッチ(脱穀クラッチと刈取クラッチ)は「入」とされ、後進時には「切」とされる。この作業クラッチの「入」「切」の切り替えは、手動であっても自動であってもよい。
なお、本実施形態において前記作業クラッチは、作業操作手段である作業クラッチレバー155(図3参照)が回動操作された場合に、その操作位置を検出する操作位置検出センサ165(図3参照)の検出結果に基づいて、制御装置200により「入」「切」が切り替え制御されるように構成される。
【0067】
自動隅刈りモードの制御が開始されると、まず、制御装置200により昇降アクチュエータである刈取部昇降油圧シリンダ140(図3参照)が作動されて、刈取部4が機体に対して上昇される(S3)。
【0068】
刈取部4の上昇後、後進アクチュエータ(変速アクチュエータ141P)が作動され、図6(a)矢印D1に示すように、機体は真っ直ぐ後進する(S4)。そして図5(a)に示すように、機体の後進の走行距離が走行距離検出手段171(図3参照)により検出され(S41)、機体の走行距離が予め設定された距離に到達すると(S42)、その検出結果に基づいて制御装置200により変速アクチュエータ141P(図3参照)が作動されて、走行ポンプ容積調整手段(可動斜板)43が中立側に傾転して、機体は後進を停止する(S43)。なお、図6(a)に示すように、ここで機体が停止した位置を「停止位置P2」とし、この後進時の走行距離(停止位置P1から停止位置P2の距離)は、機体の前後長よりも長くなる。
【0069】
機体の後進の停止後、図4に示すように、制御装置200により昇降アクチュエータである刈取部昇降油圧シリンダ140が作動されて、刈取部4が機体に対して下降される(S5)。
【0070】
刈取部4の下降後、図6(a)矢印D2に示すように、コンバイン1は設定角度左側に向かって機体を旋回しつつ前進する(S6)。すなわち、前進アクチュエータ(変速アクチュエータ141P)が作動されて設定速度(低速)で前進すると同時に、操向アクチュエータ142(図3参照)が作動されて左方向に機体の向きを変えることにより、コンバイン1は左側に向かって機体を旋回しつつ前進して刈取作業を行う。その後、図5(b)に示すように、機体の旋回角度が旋回角度検出手段172(図3参照)により検出され(S61)、機体の旋回角度が予め設定された角度に到達すると(S62)、その検出結果に基づいて操向アクチュエータ142が作動されて、機体は真っ直ぐ(左側に向かって機体を旋回することをやめて)前進しながら刈取作業を行う(S63)。
【0071】
なお、自動隅刈りモードにおいて、刈取部4の地表からの高さにより設定される刈り高さは、操縦者が、刈り高さ調整手段である刈り高さ調整ダイヤル154(図3参照)により設定することができるものとする。つまり、操縦者が、刈り高さ調整ダイヤル154を回動操作して刈り高さを設定すると、その操作位置を検出する操作位置検出センサ164(図3参照)の検出結果に基づいて刈取部昇降油圧シリンダ140が作動されて、刈取部4が機体に対して昇降し、設定の刈り高さとするものである。
【0072】
また、刈取部4には刈り高さを検出する刈り高さ検出センサ173(図3参照)が設けられる。そして、コンバイン1は、自動隅刈りモードにおいて、刈り高さ検出センサ173により検出された検出結果(刈り高さ)が刈り高さ調整ダイヤル154で設定した刈り高さ以下になれば、その検出結果に基づいて制御装置200により刈取部昇降油圧シリンダ140が作動されて、刈取部4が機体に対して上昇するように制御される。これにより、刈取部4が設定した刈り高さ以下になるのを防ぎ、刈取部4が誤って地面に突っ込むことを防止することができる。
【0073】
コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進において、図5(b)に示すように、走行距離検出手段171により機体の走行距離が検出され(S64)、その走行距離が予め設定された距離に到達すると(S65)、その検出結果に基づいて制御装置200により変速アクチュエータ141Pが作動されて、機体は前進を停止する(S66)。こうして、コンバイン1は、平面視で当初は左方向に向かって略曲線状に、中途からは略直線状に機体を前進して刈取作業を行う。
なお、機体の旋回角度は、図6および図7に示すように、機体が前進を停止した位置における刈幅L1が、コンバイン1の刈取部4の刈幅と略一致するようにしている。こうして圃場端に至った時の最大刈幅が刈取部4の刈幅と略一致させることで、斜め方向の刈取作業の刈取効率を高めることができる。
【0074】
機体の前進の停止後、図4に示すように、制御装置200により昇降アクチュエータである刈取部昇降油圧シリンダ140が作動されて、刈取部4が機体に対して上昇される(S7)。
【0075】
そして、コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進の回数を検出する前進回数検出手段174(図3参照)によりその刈取作業を伴う前進の回数が検出され(S8)、その前進の回数が予め設定された回数に到達していなければ(S9)、コンバイン1は前述したようなS3からS9までの動作が繰り返されることとなる。
【0076】
すなわち、制御装置200により刈取部4を上昇させ(S3)、図6(b)矢印D2に示すように、機体は真っ直ぐ後進(S4)し、機体の走行距離が走行距離検出手段171により検出され(S41)、検出された走行距離が予め設定された距離に到達すると(S42)、その検出結果に基づいて制御装置200により変速アクチュエータ141Pが作動されて、機体は後進を停止する(S43)。なお、図6(b)に示すように、機体の停止位置は前記停止位置P2よりも若干前方となる。
なお、本実施形態において、コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進の回数を図6(a)矢印D2、図6(b)矢印D3、図7(c)矢印D4に示すように合計3回繰り返しているが、この回数に限定されるものではない。
【0077】
一方、コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進の回数が、予め設定された回数に到達したならば、前進回数検出手段174のその検出結果に基づいて制御装置200により自動隅刈りモードが終了するように制御される。図4に示すように、その際に音またはランプ等の報知手段を作動させて(S10)、操縦者に隅刈作業が終了した(自動隅刈りモードが終了した)ことを認識させる。なお、前述したような予め設定された回数とは、自動隅刈りモードが終了することにより、コンバイン1が自動隅刈りモードの開始時に停止位置P1に停止した方向(縦方向)に対して機体を横方向に向くことが可能な広さを刈り取ることができる回数である。
【0078】
このとき、コンバイン1が、まだ十分に機体を横方向に向けることが可能な広さを刈り取ることができていない場合には、さらに、隅刈り操作手段であるスタートボタン153を「継続」側に操作することで一往復づつ斜め刈り(前述したようなS3からS9までの動作)が行われる。なお、前記「継続」側に操作する操作手段はスタートボタン153に限定されず、別途に継続ボタン等を設けてもよい。
【0079】
なお、前述したような予め設定された機体の旋回角度や走行距離は設定手段157(図3参照)で変更可能とする。つまり、操縦者が、設定手段157を操作して機体の旋回角度や走行距離を設定すると、その操作位置を検出する設定検出センサ167(図3参照)の検出結果に基づいて制御装置200により自動隅刈りモードにおける機体の旋回角度や走行距離を設定制御するように構成される。
【0080】
そして、自動隅刈りモードが終了した位置を最終刈取位置とし、最終刈取位置(本実施形態においては、図7(c)矢印D4)まで刈取作業が行われると、コンバイン1は動作を停止する。なお、その最終刈取位置を「停止位置P3」とする。
【0081】
この停止位置P3からコンバイン1は、手動で変速および操向操作される。つまり、コンバイン1は、図7(d)矢印D5に示すように、機体を右方向に旋回しながら後進して隅位置(停止位置P1)で停止位置P1の向きに対して横向きとする。そして、そのまま直進しながら通常の刈取作業を継続して行うことができる(図7(d)矢印D6)。
但し、GPS等を用いて機体の進行方向を検出できるものであれば、制御装置200により、前記図7(d)矢印D5に示されるコンバイン1の変速および操向操作は自動的に行うことが可能である。また、前記図6および図7に示される矢印D1からD4の刈取作業において、軟弱な圃場で旋回角度に誤差が生じても、機体の進行方向の旋回角度がわかるため機体の角度を容易に補正することが可能となる。
【0082】
以上ように、本実施形態においてコンバイン1は、機体の走行距離検出手段171と、機体のクローラ式走行装置12・12等を前進駆動させる変速アクチュエータ141P(前進アクチュエータ)と、クローラ式走行装置12・12等を後進駆動させる変速アクチュエータ141P(後進アクチュエータ)と、機体の旋回角度検出手段172と、クローラ式走行装置12・12等の左右出力を変更する操向アクチュエータ142と、機体の刈取部4を昇降作動させる刈取部昇降油圧シリンダ140(昇降アクチュエータ)と、前記各アクチュエータを制御する制御装置200(制御手段)と、を備え、圃場の隅刈りを自動的に行うモードである自動隅刈りモードを実行する手段であって、制御装置200と接続されるスタートボタン153(隅刈り操作手段)を備え、自動隅刈りモードにおいて制御装置200は、刈取部4を上昇させてから、機体を所定距離後進させて停止させ、刈取部4を下降させてから、機体を所定角度旋回させて刈り取りしながら所定距離前進させて停止させる作業動作を、設定回数行うように制御するものである。
【0083】
このように構成することにより、隅刈作業をコンバイン1が自動的に行うことが可能となり、操縦者の操作の負担を解消し、操縦者の操作技術に拘らず円滑な隅刈作業を行うことが可能となる。よって、圃場の隅部での作業性を向上することができる。
【0084】
次に、図8から図11を用いて、本発明の別実施形態に係る自動隅刈りモードの制御について具体的に説明する。なお、前述したような自動隅刈りモードと同一の構成である部分には同一の符号を付することでその説明を省略する。
【0085】
図8および図10に示すように、停止位置P1においてスタートボタン153が操作され(S1)、自動隅刈りモードが選択されたことが検出されると(S2)、別実施形態における自動隅刈りモードの制御が開始される。そして、刈取部4が機体に対して上昇され(S3)、機体は真っ直ぐ後進する(S4)。そして、図9(a)に示すように、その走行距離(S41)が予め設定された距離に到達すると(S42)、機体は後進を停止する(S43)。そして、図8に示すように、刈取部4が機体に対して下降される(S5)。なお、図10に示すように、機体の後進が停止した停止位置P2とする。
【0086】
図8に示すように、刈取部4の下降後、機体は停止位置P2の上で、すなわち前後進しないで、設定角度左側に向かって(反時計回りに)旋回を開始する(S100)。そして、図9(b)に示すように、機体の旋回角度が検出され(S61)、検出された旋回角度が予め設定された角度に到達すると(S62)、その検出結果に基づいて、機体は旋回を停止する(S63)。
【0087】
機体の旋回停止後、機体は、図10(a)矢印D12に示すように、真っ直ぐ前進しながら刈取作業を行う(S110)。そして、図9(a)に示すように、その走行距離(S41)が予め設定された距離に到達すると(S42)、機体は前進を停止する(S43)。そして、図8に示すように、刈取部4が機体に対して上昇される(S7)。
すなわち、前述したような実施形態においてコンバイン1は、機体を旋回しつつ前進して刈取作業を行っていたが、当該別実施形態においてコンバイン1は、前進して刈取作業を行う際に、機体を旋回させない(真っ直ぐ前進する)点で異なっている。
【0088】
そして、コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進の回数が検出され(S8)、検出された回数が予め設定された回数に到達していなければ(S9)、前述したようなS3からS9までの動作が繰り返されることになる。すなわち、コンバイン1は、図8および図10(b)矢印D12に示すように、刈取部4を上昇させ(S3)、で真っ直ぐ後進する(S4)。そして、図9(a)に示すように、その走行距離(S41)が予め設定された距離に到達すると(S42)、機体は後進を停止する(S43)。
この場合、機体は停止位置P2の上で停止するように設定されている。すなわち、図10(a)矢印D12に示される前進および図10(b)矢印D12に示される後進は、機体が略同一距離を走行するものである。
【0089】
なお、本別実施形態において自動隅刈りモードは、前述したような刈取作業を伴う前進を、図10(a)矢印D12、図10(b)矢印D13、図11(c)矢印D14に示すように合計3回繰り返しているが、この回数に限定されるものではない。
【0090】
一方、コンバイン1は前述したような刈取作業を伴う前進の回数が、予め設定された回数に到達したならば、図8に示すように、刈取部4が機体に対して上昇され(S120)、機体は真っ直ぐ後進し(S130)。そして、図9(a)に示すように、その走行距離(S41)が予め設定された距離に到達すると(S42)、機体は後進を停止する(S43)。そして、図8に示すように、刈取部4が機体に対して下降される(S140)。
【0091】
刈取部4の下降後、機体は停止位置P2の上で、すなわち機体は前後進しないで、設定角度右側に向かって(時計回りに)旋回を開始する(S150)。そして、図9(b)に示すように、機体の旋回角度が検出され(S61)、検出された旋回角度が予め設定された角度に到達すると(S62)、その検出結果に基づいて、機体は旋回を停止する(S163)。なお、その旋回停止後、機体の向きは、縦向き、すなわち図10(a)矢印11に示すように機体が停止位置P1から停止位置P2に後進して停止したときと同一の向きとなるように構成される。
【0092】
機体の旋回停止後、図11(d)矢印D15に示すように、機体は真っ直ぐ前進し(S160)、図9(a)に示すように、その走行距離(S41)が予め設定された距離に到達すると(S42)、機体は前進を停止する(S43)。なお、その前進には刈取作業は行われない。また、機体の停止位置は、停止位置P1となるように構成される。
【0093】
図11(d)に示すように、機体の前進の停止後、機体は停止位置P1の上で、すなわち機体は前後進しないで、設定角度(90度)左側に向かって(反時計回りに)機体の旋回を開始する(S170)。そして、図9(b)に示すように、機体の旋回角度が検出され(S61)、検出された旋回角度が設定角度(90度)に到達すると(S62)、その検出結果に基づいて、機体は旋回を停止する(S63)。機体の旋回停止後、本別実施形態における自動隅刈りモードは終了し、図8に示すように、報知手段が作動される(S10)。
なお、前述したように本別実施形態においてコンバイン1は機体を90度旋回するものであり、その旋回の停止後、機体は停止位置P1の向きに対して横向きとする。そして、そのまま直進しながら通常の刈取作業を継続して行うことができる(図11(d)矢印D16)。
【0094】
このように構成することにより、隅刈作業をコンバイン1が自動的に行うことが可能となり、操縦者の操作の負担を解消し、操縦者の操作技術に拘らず円滑な隅刈作業を行うことが可能となる。また、圃場の隅部での作業性を向上することができる。
また、コンバイン1は機体の旋回を伴う刈取作業を行わない(機体は前後進しながら旋回しない)ので、圃場の状況に拘らず機体の旋回角度に誤差が生じにくい。
【0095】
そして、機体の前方、あるいは圃場の隅に障害物がある場合や、圃場の隅部での刈取作業が台形や三角形等の変形した圃場で行われる場合等、自動隅刈りモードの制御が行われている時に、機体が操縦者の意図しない方向や意図しない距離を走行する可能性があるので、これらのときは隅刈り操作手段であるスタートボタン153をOFF側に操作し、または、緊急停止手段として走行停止スイッチ156(図3参照)を設け、その走行停止スイッチ156をON側に操作する。走行停止スイッチ156をON側に操作すると、その操作位置を検出する操作位置検出センサ166(図3参照)の検出結果に基づいて制御装置200により機体の走行が停止する構成とすることができる。
【0096】
また、制御装置200は、自動隅刈りモードの制御中(実行中)、すなわち機体の前後進および旋回と、刈取部4の昇降との制御中に操作具が操作された場合、この制御を停止する構成とすることができる。
具体的には、コンバイン1の制御装置200は、自動隅刈りモードにおける前進アクチュエータおよび後進アクチュエータ(変速アクチュエータ141P)による機体の前後進、操向アクチュエータ142による機体の左右方向への旋回、昇降アクチュエータである刈取部昇降油圧シリンダ140による刈取部4の昇降の各制御中に、操作具であるステアリングハンドル25や前記変速レバー等が操縦者により操作された場合に、各制御を停止するように構成することができる。
【0097】
以上ように、本実施形態において、制御装置200は、自動隅刈りモードの制御中(実行中)に機体の操作具が操作された場合、自動隅刈りモードの制御(実行)を停止させるように制御するものである。
【0098】
このように構成することにより、障害物が機体の前に発見された場合等の緊急時に、自動隅刈りモードの制御を停止し、機体の動作を停止することできる。その後、操縦者は刈取作業を手動で行うことが可能となり、圃場の隅部での作業性の向上を図ることができる。
【0099】
また、コンバイン1の制御装置200は自動隅刈りモードにおいて、刈取作業を伴う前進アクチュエータ(変速アクチュエータ141P)の作動による機体の前進の回数は、走行回数設定手段である回数設定ダイヤル152(図3参照)により設定するように構成することができる。
【0100】
回数設定ダイヤル152は、操縦者が作業時に任意に回数設定可能なように操縦部11内に設けられる。回数設定ダイヤル152により回数の設定をすると、その設定回数を検出する走行回数設定検出センサ162(図3参照)の検出結果に基づいて制御装置200により、コンバイン1は、その回数だけ前進しての刈取作業に至る作業動作(すなわち、図8に示すようなS3からS9までの動作)を繰り返すように制御される。なお、回数設定ダイヤル152は、走行回数設定手段の一例であり、ダイヤル式に限定されるものでなく、回数を設定できる操作具であればよい。
【0101】
以上のように、本実施形態において、自動隅刈りモードにおける作業動作の回数は任意に設定可能とするものである。
【0102】
このように構成することにより、圃場の隅部において、その広さや機体の大きさ等にあわせて、刈取作業を適切に行うことが可能となり、圃場の隅部での作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 コンバイン
4 刈取部
40 走行用油圧式無断変速装置(走行用HST)
40P 走行ポンプ
40M 走行モータ
50 操向用油圧式無断変速装置(操向用HST)
50P 操向ポンプ
50M 操向モータ
70 伝動機構
100 走行用出力伝動機構
110 操向用出力伝動機構
140 刈取部昇降油圧シリンダ(昇降アクチュエータ)
141P 変速アクチュエータ(前進アクチュエータおよび後進アクチュエータ)
141M 変速アクチュエータ
152 回数設定ダイヤル(走行回数設定手段)
153 スタートボタン(隅刈り操作手段)
154 刈り高さ調整ダイヤル(刈り高さ調整手段)
200 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の走行距離検出手段と、
前記機体の走行手段を前進駆動させる前進アクチュエータと、
前記走行手段を後進駆動させる後進アクチュエータと、
前記機体の旋回角度検出手段と、
前記走行手段の左右出力を変更する操向アクチュエータと、
前記機体の刈取部を昇降作動させる昇降アクチュエータと、
前記各アクチュエータを制御する制御手段と、
を備えるコンバインにおいて、
圃場の隅刈りを自動的に行うモードである自動隅刈りモードを実行する手段であって、前記制御手段と接続される隅刈り操作手段を備え、
自動隅刈りモードにおいて前記制御手段は、
前記刈取部を上昇させてから、前記機体を所定距離後進させて停止させ、
前記刈取部を下降させてから、前記機体を所定角度旋回させて刈り取りしながら所定距離前進させて停止させる作業動作を、設定回数行うように制御する、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記自動隅刈りモードの実行中に前記機体の操作具が操作された場合、
前記自動隅刈りモードの実行を停止させるように制御する、
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記自動隅刈りモードにおける前記作業動作の回数は任意に設定可能とする、
請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−24427(P2011−24427A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170569(P2009−170569)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】