説明

コンバイン

【課題】穀稈受け止め体の上下位置変更を良好に行えるように、電動モータの小型化ならびに低コスト化を図る。
【解決手段】穀稈受け止め体の姿勢を支持作用位置と支持解除位置との何れかに切換操作する単一の電動モータを備え、その電動モータに対して作動指令を出力する作動指令操作具の指令に基づいて、電動モータの一方向の回転作動にともなって穀稈受け止め体が支持解除位置に操作され、電動モータの逆方向の回転作動力によって穀稈受け止め体が支持作用位置に操作されるように構成してあり、電動モータの一方向の回動作動力によって力が蓄積され、電動モータの逆方向の回動にともなって穀稈受け止め体を持ち上げる側への操作力として蓄積された力を放出するように構成したアシスト機構60を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に対して受け止め支持部が上方側に突出した支持作用位置と、刈取処理装置からの刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して前記受け止め支持部が下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体を設けたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、穀稈受け止め体を設けたコンバインでは、その穀稈受け止め体の位置を脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出させた支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部の下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な電動モータを用いている。
このような技術としては、従来より下記[1]及び[2]に記載のものが知られている。
【0003】
[1] 穀稈受け止め体の位置を、脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出させた支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部の下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な電動モータを備え、その電動モータの作動を、脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上側に対向して搬送穀稈を挟持するフィードチェーンガイドの位置検出結果に基づいて行うように構成したもの(例えば、特許文献1参照)。
[2] 穀稈受け止め体の位置を、脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出させた支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部の下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な電動モータを備え、その電動モータの作動を、刈取部の上昇を検出するポテンショメータを備え、そのポテンショメータの検出結果に基づいて行うように構成したもの(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−266137号(段落「0020」、「0021」、図2、図3参照)
【特許文献2】特開平11−299335号(段落「0021」、「0025」、図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記[1]に記載の構造のものでは、フィードチェーンガイドの位置検出結果に基づいて電動モータを駆動し、穀稈受け止め体の位置変更操作を行うように構成したものであるから、前記フィードチェーンガイドを上方に退避させた姿勢では、電動モータが穀稈受け止め体を上方側へ移動させるように駆動され、穀稈受け止め体を脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出させた支持作用位置とすることができる。
このように、穀稈受け止め体を支持作用位置に操作すれば、その穀稈受け止め体の上側に脱穀対象穀稈を乗せた状態にして、枕こぎ作業を行う際に便利に用いることができる点で有用である。
しかしながら、この構造のものでは、穀稈受け止め体が脱穀フィードチェーンの搬送始端部の下方側に引退した支持解除位置から、脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出する支持作用位置にまで移動する際に、脱穀フィードチェーンの搬送始端部上に多量の穀稈が存在していると、その多量の穀稈も同時に持ち上げてしまうため、穀稈受け止め体を持ち上げ駆動するための電動モータに大きな負荷が作用することになる。
したがって、脱穀フィードチェーンの搬送始端部上に穀稈が全く存在していない、もしくは少量の穀稈しか存在していない状態であれば、電動モータに対する駆動負荷は比較的小さいものであるにも拘わらず、脱穀フィードチェーンの搬送始端部上に予測される最大量の穀稈が存在していることを想定して電動モータの出力を設定しなければならないので、電動モータの小型化を図りにくく、低コスト化の妨げになる虞があった。
【0006】
上記[2]に記載の構造のものでは、刈取部の上昇を検出するポテンショメータの検出結果に基づいて穀稈受け止め体を作動させるように電動モータを備えさせたものであるから、前記[1]に記載の構造のものと同様に、脱穀フィードチェーンの搬送始端部上に予測される最大量の穀稈が存在していることを想定して電動モータの出力を設定しなければならず、電動モータの小型化を図りにくいものである。
そして、この構造のものでは、刈取部の上昇を検出して電動モータを駆動し、穀稈受け止め体を持ち上げ駆動するように構成されているので、穀稈受け止め体が脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側に突出する支持作用位置では、刈取部が上昇位置にあって、脱穀フィードチェーンの搬送始端部の上方側の空間を狭めた状態となるので、機体を停止させての枕こぎ作業を行う際の作業用のスペースが狭められたり、上昇位置にある刈取部が不測に降下しないように気を配る必要もあって、枕こぎ作業に関しての作業性が低下する傾向がある。
【0007】
本発明の目的は、穀稈受け止め体の位置変更を電動モータで行えるようにするにあたり、小型軽量な電動モータを用いての穀稈受け止め体の上下位置変更を良好に行えるようにして、電動モータの小型化ならびに低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に対して受け止め支持部が上方側に突出した支持作用位置と、刈取処理装置からの刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して前記受け止め支持部が下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体を設けたコンバインであって、
前記穀稈受け止め体の姿勢を前記支持作用位置と前記支持解除位置との何れかに切換操作する単一の電動モータを備えるとともに、その電動モータに対して作動指令を出力する人為操作可能な作動指令操作具を設け、
この作動指令操作具の指令に基づいて、前記電動モータの一方向の回転作動にともなって前記穀稈受け止め体が支持解除位置に操作され、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって前記穀稈受け止め体が支持作用位置に操作されるように構成してあり、
前記電動モータの前記一方向の回動作動力によって力が蓄積され、前記電動モータの逆方向の回動にともなって穀稈受け止め体を持ち上げる側への操作力として蓄積された力を放出するように構成されたアシスト機構を備えていることを特徴とする。
【0009】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、穀稈受け止め体を持ち上げ側に操作する際には、電動モータによる穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力とともに、アシスト機構に蓄積された力も穀稈受け止め体を持ち上げる方向への作用力として作用する。
その結果、穀稈受け止め体を支持作用位置にまで持ち上げるために必要な力のうち、電動モータによる持ち上げ方向への必要な駆動力の割合を低減することができるので、電動モータとしては大きな出力を必要としない比較的小型のものを採用することが可能となる。
そして、アシスト機構に力を蓄積させるための動力としては、電動モータによる穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力を働かせるための回転駆動方向とは逆方向での電動モータの回転駆動力を利用するものであるから、つまり、穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力としては利用されていないところの前記逆方向での電動モータの回転駆動力を用いるので、電動モータによる持ち上げ方向への必要な駆動力を増大することなく、電動モータの駆動力をアシスト機構の蓄力手段として有効利用することができる。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、走行変速装置の変速操作を行う変速操作具と、刈取処理装置に対する駆動力の伝達を断続する刈取クラッチと、脱穀装置に対する駆動力の伝達を断続する脱穀クラッチを備え、
脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に対して受け止め支持部が上方側に突出した支持作用位置と、前記刈取処理装置からの刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して前記受け止め支持部が下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体を設けたコンバインであって、
前記脱穀クラッチ、前記刈取クラッチ、及び前記穀稈受け止め体を操作する単一の電動モータを備えるとともに、その電動モータに対して作動指令を出力する人為操作可能な作動指令操作具を設け、
この作動指令操作具の指令に基づいて、変速操作具が機体走行位置に操作されていると、前記電動モータの一方向の回転作動力によって、前記脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り操作し、前記穀稈受け止め体が支持解除位置に下降操作されるように構成してあり、前記変速操作具が機体停止位置に操作されていると、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって、前記刈取クラッチを切り操作し、脱穀クラッチを入り操作し、前記穀稈受け止め体が支持作用位置に持ち上げ操作されるように構成してあり、
さらに、前記電動モータの前記一方向の回動作動力によって力が蓄積され、前記電動モータの逆方向の回動にともなって蓄積された力を放出するように構成されたアシスト機構を備え、このアシスト機構による力の蓄積は前記穀稈受け止め体が支持解除位置に操作される際に行われ、蓄積された力の放出は前記穀稈受け止め体が支持作用位置に操作される際に行われるように構成してあることを特徴とする。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、脱穀クラッチ、刈取クラッチ、及び穀稈受け止め体の夫々の操作を、単一の電動モータに対して作動指令を出力する作動指令操作具による簡単な操作で行うことができる。
つまり、機体の走行操作状況と関連させて、機体走行中には、電動モータの一方向の回転作動力によって、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り操作し、穀稈受け止め体が支持解除位置に操作されるように構成してあり、機体停止時には、電動モータの逆方向の回転作動力によって、刈取クラッチを切り操作し、脱穀クラッチを入り操作し、穀稈受け止め体が支持作用位置に操作されるように構成してある。
これによって、機体走行中には走行中の刈取脱穀作業が適切に行えるように、脱穀クラッチ、刈取クラッチ、及び穀稈受け止め体の夫々の操作が一連の動作として行われ、機体停止時には、走行停止状態で枕こぎ作業を行う場合に適した脱穀クラッチ、刈取クラッチ、及び穀稈受け止め体の夫々の操作が行われることになる。
したがって、走行形態と作業形態とに応じての各装置の作動を、単一の電動モータを駆動源とした簡単な構造で、かつ機体走行形態と関連させての、電動モータの回転方向を制御する作動指令操作具による簡単な操作で適切に行える利点がある。
【0012】
また、上記解決手段2で示した構成によると、穀稈受け止め体を持ち上げ側に操作する際には、電動モータによる穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力とともに、アシスト機構に蓄積された力も穀稈受け止め体を持ち上げる方向への作用力として作用する。
その結果、穀稈受け止め体を支持作用位置にまで持ち上げるために必要な力のうち、電動モータによる持ち上げ方向への必要な駆動力の割合を低減することができるので、電動モータとしては大きな出力を必要としない比較的小型のものを採用することが可能となる。
そして、アシスト機構に力を蓄積させるための動力としては、電動モータによる穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力を働かせるための回転駆動方向とは逆方向での電動モータの回転駆動力を利用するものであるから、つまり、穀稈受け止め体を持ち上げる方向への駆動力としては利用されていないところの前記逆方向での電動モータの回転駆動力を用いるので、電動モータによる持ち上げ方向への必要な駆動力を増大することなく、電動モータの駆動力をアシスト機構の蓄力手段として有効利用することができる。
【0013】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、穀稈受け止め体を支持作用位置と支持解除位置とに位置変更する受け止め体操作機構を備え、
この受け止め体操作機構を、穀稈受け止め体を支持解除位置側に付勢する戻しバネと、穀稈受け止め体に連結されたカムフォロワと、カムフォロワを電動モータで操作するカム体とによって構成するとともに、前記電動モータによるカムフォロワの操作は、前記電動モータの一方向の回転に伴って前記穀稈受け止め体を支持解除位置側に操作し、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって前記戻しバネの付勢力に抗して穀稈受け止め体を支持作用位置側に復帰可能に操作するように構成してあり、
前記アシスト機構を、前記電動モータの回転によって駆動されるアシストカムと、そのアシストカムの回転によって位置変化するアシストカムフォロワと、アシストカムフォロワの位置変化に連動して伸縮作動するアシストバネとによって構成するとともに、
前記アシストカムは、前記電動モータの一方向の回転作動力によってアシストバネに力を蓄積するようにアシストカムフォロワを操作し、前記電動モータの逆方向の回転作動力によってアシストバネに蓄積されている力が放出されるようにアシストカムフォロワを操作するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、電動モータの回転方向のうちの一方向での回転駆動力を利用してアシストバネに力を蓄積するようしている。つまり、穀稈受け止め体を支持解除位置側へ操作する際には、穀稈受け止め体には、自重や、支持解除位置側に付勢する戻しバネの力が作用しており、この方向での電動モータの回転では、穀稈受け止め体を操作するための駆動力が必要とされていず、回転駆動力に十分な余力がある。そこで、この余力がある回転方向での電動モータの駆動力をアシストバネの力の蓄積のために利用するようにしている。
そして、アシストバネに蓄積された力は、電動モータの逆方向の回転駆動力とともに、穀稈受け止め体を支持作用位置へ操作するための力として放出され、電動モータに作用する負荷のうち、特に電動モータへの負荷が大きくなる傾向にある穀稈受け止め体を支持作用位置側へ持ち上げる際の負荷を低減するために役立つように利用されている。
これによって、カムとバネとを利用した構造的には簡単な構成を採用しながら、電動モータに対する負荷の少ない一方向での回転領域でアシスト機構に蓄力し、電動モータへの負荷が増大する逆方向での回転領域でアシスト機構から電動モータへの補助の動力となるようにバネに蓄積された力を作用させることができ、電動モータに対する最大負荷を比較的低くして、電動モータの耐久性を向上し得る利点がある。
【0015】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、刈取処理装置に対する駆動力の伝達を断続する刈取クラッチを備え、電動モータで駆動される回転駆動軸の回転駆動に伴ってアシストカムの回転駆動、及び刈取クラッチの入り切り操作を行うように構成してあるとともに、
前記回転駆動軸で回転駆動されるアシストカムによるアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域と、刈取クラッチが入り操作される際に回転駆動軸に作用する駆動トルクの作用領域とを、前記回転駆動軸の回転方向での前後に位置設定し、
前記アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域で、アシストカムの回転角度に対する回転駆動軸の駆動トルクの変動が、アシストカムによるアシストバネに対する力の蓄積初期における回転駆動軸の駆動トルクの増加率が緩やかで蓄積終期における回転駆動軸の駆動トルクの減少率が急であるようにアシストカムの形状を設定し、
アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域と、刈取クラッチが入り操作される際の回転駆動軸の駆動トルクの作用範囲とを、回転駆動軸の回転方向で位置ずれさせて、アシストバネの蓄圧作用の終了後に刈取クラッチが入り状態となるように構成してあることを特徴とする。
【0016】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域と、刈取クラッチが入り操作される際の回転駆動軸の駆動トルクの作用範囲とを、回転駆動軸の回転方向で位置ずれさせることにより、アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる際に回転駆動軸に作用するトルクと、刈取クラッチが入り操作される際に回転駆動軸に作用するトルクが完全に重複する場合のように、回転駆動軸に作用するトルクが大きくなりすぎるのを回避することができる。
そして、アシストカムによるアシストバネに対する力の蓄積初期における回転駆動軸の駆動トルクの増加率が緩やかで、蓄積終期における回転駆動軸の駆動トルクの減少率が急であるようにアシストカムの形状を設定したことにより、アシストバネに対する力の蓄積初期における回転駆動軸の回転角度に対するトルクの増加率は比較的緩やかにして、電動モータに対する駆動負荷の急増を抑制することができる。
それでいて、アシストバネに対する力の蓄積終期における回転駆動軸の駆動トルクの減少率が急であるようにアシストカムの形状を設定したことにより、回転駆動軸の駆動トルクが全体に緩やかに変化する場合に比べて、アシストカムの回転角度範囲に占めるアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転領域の角度範囲を比較的少なくすることができる。
したがってアシストカムの回転操作範囲が必要以上に大きくなって、アシストカムの回転操作範囲が広くなることによって関連部材の作動範囲が広がったり、装置全体が大型化するような不具合を避けて、全体をコンパクトに構成し得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動構造を示す説明図
【図3】操作系統を示す説明図
【図4】制御系統を示すブロック図
【図5】統合操作装置を示す左側面図
【図6】統合操作装置を示す正面図
【図7】統合操作装置を示す平面図
【図8】統合操作装置を示す右側面図
【図9】図8におけるIX-IX線断面図
【図10】図6におけるX-X線断面図
【図11】穀稈受け止め体とその操作機構を示す側面図
【図12】モータ制御手段の制御動作を示すフローチャート
【図13】モータ制御手段の制御動作を示すフローチャート
【図14】統合操作装置における動作順を示すタイムチャート
【図15】電動モータに作用する各装置の負荷とアシストバネの付勢力とを個別に示す図表
【図16】電動モータに作用する各装置の合成された負荷とアシストバネの付勢力との関係を示す図表
【図17】電動モータに作用する各装置の負荷とアシストバネの付勢力とを合成した状態を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るコンバインについて図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構造〕
図1にコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L、1Rを走行機体2の下部に備え、前記走行装置1L、1Rの駆動により走行機体2が走行自在に構成されている。
前記走行機体2の前部に、昇降操作自在でかつ圃場の植立穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に搬送する刈取処理装置3が設けられ、走行機体2上に、前記刈取処理装置3で刈り取られた穀稈を受け取って脱穀および選別処理する脱穀装置4と、脱穀装置4で脱穀および選別処理することにより得られた穀粒を貯留する穀粒タンク5とが搭載されるとともに、穀粒タンク5の前方箇所の走行機体2上に搭乗運転部6が形成されている。
【0019】
前記脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端側には、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持する状態と、刈取処理装置3から送り込まれる刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部に供給されるように引退した状態とに姿勢切換自在に構成された穀稈受け止め体18を設けてある。
この穀稈受け止め体18は、図11に示すように、上端縁が刈取り穀稈を下側から受け止め支持するための受け止め支持部18Aとして機能するように配設された板状体によって構成してあり、前記受け止め支持部18Aが、刈取り穀稈を前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部に対して受け止め支持部18Aが上方側に突出した支持作用位置Uと、刈取処理装置3から送り込まれる刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して受け止め支持部18Aが下方側に引退した支持解除位置Dとに、後述する受け止め体操作機構50によって切換え自在に構成してある。
【0020】
〔伝動系の構造〕
次に、このコンバインの伝動構造について説明する。
図2、図3に示すように、エンジンEの動力が伝動ベルト14及び伝動プーリ15を介して走行変速用の静油圧式無段変速装置7(走行変速装置に相当する)に伝達され、この静油圧式無段変速装置7からの変速出力は、ミッションケース9内の図示しない変速機構を経由して、走行装置1R、1Lの夫々に伝達されている。
エンジンEの動力は、脱穀クラッチ10を介して脱穀装置4に伝達され、脱穀クラッチ10には、その入り切り状態を検出する脱穀センサ11が付設されている。
又、刈取処理装置3に対しては、前記静油圧式無段変速装置7の入力軸を兼ねる伝動軸16からの動力が伝達されるように、伝動ベルト8、及び刈取クラッチ12を介して刈取処理装置3に伝達され、刈取クラッチ12には、その入り切りを検出する刈取センサ13が付設されている。
【0021】
静油圧式無段変速装置7は、コンバインの走行機体2に搭載されているエンジンEからの動力によって駆動される可変油圧ポンプ7A(図4参照)と、その可変油圧ポンプ7Aからの供給油で回転駆動される油圧モータ7B(図4参照)との対で構成された周知構造の静油圧式無段変速装置(HST)によって構成されている。前記エンジンEの動力は、伝動ベルト14及び伝動プーリ15を介して可変油圧ポンプ7Aのポンプ軸であるところの前記伝動軸16に伝達される。
【0022】
前記ミッションケース9は、その内部に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Bからの出力軸(図示せず)が内装され、この出力軸からの変速出力が左右一対の走行装置1R、1Lに伝達される構成となっている。前記刈取処理装置3には、前記静油圧式無段変速装置7からの変速出力ではなく、静油圧式無段変速装置7に対して入力される前記伝動軸16の回転動力がそのまま伝達される。
【0023】
前記静油圧式無段変速装置7を高低変速操作する主変速操作レバー22、及び旋回用の旋回操作レバー23は、前記搭乗運転部6の操作盤20上に露出させて設けてある。
前記主変速操作レバー22は、前後揺動操作で前進位置F、中立位置N、後進位置Rの各操作位置に位置変更操作自在に構成してあり、この主変速操作レバー22による変速操作は、図4に示すように、主変速操作レバー22の操作によって静油圧式無段変速装置7のポンプ斜板角を変更して静油圧式無段変速装置7からの出力を変速操作するように構成してあり、旋回操作レバー23による操向操作は、旋回操作レバー23の右旋回操作及び左旋回操作をポテンショメータ23aで検出して、ミッションケース9の変速機構内に備えられた図示しない旋回操作機構により、左右の走行装置1L,1Rを各別に制御して機体操向操作を行えるように構成してある。
【0024】
また、この搭乗運転部6における操作盤20には、エンジン回転数を人為的に高低調節する調速機構17を操作するためのアクセル操作レバー71も立設してあるとともに、後述する統合操作装置30を作動させるための統合スイッチ21(作動指令操作具の一例)も備えてある。
上記統合スイッチ21は、ワンタッチでの押し操作の度にオン・オフ状態が交互に切り換えられるプッシュオン・プッシュオフ形式の押しボタンスイッチを用いて構成してあり、押し操作されて入り状態であることが検出されると、制御装置100のモータ制御手段101に開始信号を入力するものである。
モータ制御手段101では、予め不揮発性メモリーに記憶されている所定プログラムにしたがって後述する統合操作装置30を作動させるために、統合操作装置30の動力源として備えられる電動モータ31の作動を制御するように構成されている。
【0025】
〔統合操作装置〕
図5乃至図10に示すように、統合操作装置30は、動力源となる電動モータ31を備えるとともに、その電動モータ31の動力で、作業クラッチとしての脱穀クラッチ10、及び刈取クラッチ12を入り切り操作するための作業クラッチ操作部40と、穀稈受け止め体18の位置を支持作用位置Uと支持解除位置Dとに位置変更するための受け止め体操作機構50と、電動モータ31に対して補助の力を与えられるようにするためのアシスト機構60、及びエンジンEの調速機構17を操作するアクセル操作部70を備えて構成されている。
前記統合スイッチ21は、この統合操作装置30を構成する各装置構成要素、すなわち電動モータ31、作業クラッチ操作部40、受け止め体操作機構50、アシスト機構60、及びアクセル操作部70の作動を、単一の操作具で行えるようにしたものである。
【0026】
統合操作装置30は、左右一対の横側壁32,33と、その横側壁32,33同士を接続する底壁34とで、ほぼU字型に形成され、かつ左右の横側壁32,33同士の間に中央隔壁35が立設されて支持枠30Aが構成されている。この支持枠30Aのうちの左側の横側壁32(図6中では右側)に駆動源となる電動モータ31を取り付けて、支持枠30Aを搭乗運転部6の操作盤20の下面側に内装してある。
前記中央隔壁35は、前後方向に沿う前後向き壁部分35Aとその後端側で左方に屈折して右側の横側壁33(図6中では左側)の後端側に接続される横向き壁部分35Bとを備えており、前記前後向き壁部分35Aよりも左側(図6中では右側)に区画された空間に、前記電動モータ31及び作業クラッチ操作部40を配設し、右側(図6中では左側)に区画された空間に受け止め体操作機構50、アシスト機構60、及びアクセル操作部70の夫々を配設してある。
【0027】
前記電動モータ31から作業クラッチ操作部40、受け止め体操作機構50、アシスト機構60、及びアクセル操作部70への動力伝達は次のようにして行われる。
すなわち、電動モータ31に備えた出力ギヤ31aと噛合する部分円弧状の駆動ギヤ41が回転操作軸36と一体回動するように設けられ、この回転操作軸36が左側の横側壁32と右側の横側壁33とにわたって架設され、回動自在に左側の横側壁32と右側の横側壁33とに支持されている。
電動モータ31で駆動される回転操作軸36には、前記駆動ギヤ41の他に、刈取クラッチ12を操作するための駆動アーム42と、穀稈受け止め体18を操作するためのカム体51と、アシスト機構60を構成するアシストカム61とが一体に溶接固定されている。
また、回転操作軸36の左端(図6中では右端)は、左側の横側壁32を貫通して支持枠30Aの外側に設けた固定ブラケット32aに取り付けたポテンショメータ37に連結されていて、電動モータ31による回転操作軸36の回転作動量を検出できるように構成してある。
【0028】
〔作業クラッチ操作部〕
前記駆動ギヤ41の一部には、脱穀クラッチ10を入り切り操作するための脱穀用リンク43が連結され、前記刈取クラッチ12を操作するための駆動アーム42には刈取用リンク44が連結されて、作業クラッチ操作部40が構成されている。
この作業クラッチ操作部40の左側面を図5に示す。この図5に示すように、脱穀用リンク43が湾曲した形状のもので構成してあり、脱穀用リンク43の一端と駆動ギヤ41との連結点p1が、前記脱穀用リンク43の他端側における連結策45との連結点p2と、前記駆動ギヤ41の回動軸芯でもある回転操作軸36の回動軸芯p0とを結ぶデッドポイント線DPLの一側に位置して、脱穀クラッチ10は入り状態に維持されている。
この状態では、脱穀用リンク43の他端側における連結策45との連結点p2に作用する連結索45からの引っ張り力(脱穀クラッチ10をクラッチ切り側へ戻し付勢する方向のバネ(図外)による力)は、前記連結点p1を、図5中において反時計回り(便宜上、本明細書では、この図5における反時計回りでの回転方向を回転駆動軸36の正転方向と称する)に回動させる方向に作用するが、この位置は駆動ギヤ41の反時計回り方向でのストロークエンドに設定されていて、これ以上は反時計回り方向には駆動されない。
電動モータ31の駆動力によって駆動ギヤ41が時計回り(便宜上、本明細書では、この図5における時計回りでの回転方向を回転駆動軸36の逆転方向と称する)に駆動回転されると、前記一端側の連結点p1がデッドポイント線DPLを越えてさらに時計回りに回転し、脱穀クラッチ10を切り側に操作することになる。
【0029】
前記回転操作軸36には、前記駆動ギヤ41の他に、刈取クラッチ12を操作するための駆動アーム42が一体に溶接固定されているので、電動モータ31による回転操作軸36の駆動にともなって駆動アーム42も同方向に回転駆動される。
この駆動アーム42の先端側には、刈取クラッチ12を入り切り操作するための刈取用リンク44の一端が連結点p3で連結され、刈取用リンク44の他端に刈取クラッチ12を入り切り操作するための連結索46が連結点p4で連結してある。
図5に示す状態で、駆動アーム42と刈取用リンク44との連結点p3はクラッチ入り位置にあり、この位置から前記連結点p3が時計回りに回動操作される。このとき、刈取用リンク44の他端における連結索46との連結点p4に作用する連結索46からの引っ張り力(刈取クラッチ12をクラッチ切り側へ戻し付勢する方向のバネ(図外)による力)は、前記連結点p3を、図5中において時計回りに回動させる方向に作用する。前記連結点p3は、前記デッドポイント線DPLの一側で回動し、刈取クラッチ12が切り側に操作される。
【0030】
図5中において、支持枠30Aの左側の横側壁32の上端縁側に形成された前後2箇所の凹入部32b,32bは、前記脱穀用リンク43の一端と駆動ギヤ41との連結点p1が前記駆動ギヤ41の反時計回り方向、及び時計回り方向での夫々のストロークエンド近くに達した状態で、前記脱穀用リンク43の一端と駆動ギヤ41との連結点p1を構成する連結ピン47の脱着操作を、左側の横側壁32の表裏両側から行い易くするためのものである。
【0031】
〔受け止め体操作機構〕
統合操作装置30の支持枠30Aの中央隔壁35の右側(図6中では左側)に区画された空間には、図6乃至図10に示すように、受け止め体操作機構50と、後述するアシスト機構60、及びアクセル操作部70の夫々を配設してある。
穀稈受け止め体18を操作するための受け止め体操作機構50は、電動モータ31で駆動される回転操作軸36と一体に回動するカム体51と、そのカム体51のカム面52に接当するカムローラ53を備えたカムフォロワ54と、穀稈受け止め体18を支持解除位置D側に付勢する戻しバネ55と、穀稈受け止め体18を機体側固定箇所としてのフィードチェーン支持枠4Bに対して前後一対のリンク部材56a、56bで平行移動自在に支持するリンク機構56と、そのリンク機構56と前記カムフォロワ54とを連結させる連結索57とを備えて構成してある。
【0032】
図8は、前記作業クラッチ操作部40を備えた統合操作装置30の左側面を示す図5とは逆に、統合操作装置30の右側面を示しており、前記図5での回転操作軸36の時計回りの回転方向(逆転方向)は、この図8では回転操作軸36及びカム体51の反時計回りの回転となり、前記図5での回転操作軸36の反時計回りの回転方向(正転方向)は、この図8では回転操作軸36及びカム体51の時計回りの回転となる。
前記カム体51に形成されるカム面52は、このカム体51が取り付けられた前記回転操作軸36の回動軸芯p0からの放射方向の仮想線分L1に対して図8における半径方向中心側ほど反時計回りで回転方向前方側に位置するように傾斜した第1カム面52aと、その第1カム面52aの前記回転方向での後方側に引き続いて前記回動軸芯p0を曲率中心とする円弧状に形成された第2カム面52bとを備えている。
また、前記第1カム面52aよりも前記回転方向での前方側には、カムフォロワ54のカムローラ53を、刈取脱穀作業位置で安定的に位置させるための第3カム面52c、さらに前方側でアクセル操作部70を操作するための第4カム面52d、及び第5カム面52eを形成してある。
【0033】
前記カムフォロワ54は、図7、図8、及び図11に示すように上端側が支持枠30Aの右側の横側壁33と中央隔壁35とにわたって架設した支持軸38に前後揺動自在に枢支連結され、下端側に穀稈受け止め体18のリンク機構56を操作するための連結索57が連結されている。
カムフォロワ54の上下方向の中間位置にはカムローラ53が支軸53a周りで回動自在に枢支してあり、図8に示すようにカムローラ53がカム体51の第3カム面52cに接した位置では、連結索57が緩められ、穀稈受け止め体18の受け止め支持部18Aが脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部の下方側に引退した支持解除位置D(図11における実線の状態)となる。
このとき、作業クラッチ操作部40では、前記回転操作軸36に装着された駆動ギヤ41及び駆動アーム42が図5に示す位置にあり、脱穀クラッチ10及び刈取クラッチ12が共に入り操作された刈取り脱穀作業状態となっている。
【0034】
図8に示す状態から、カム体51が反時計回りに回動すると、カムローラ53はカム体51の第1カム面52aに押されて第1カム面52a上を半径方向外方側へ移動するので、カムフォロワ54は上方側の支持軸38周りで図中右方向に揺動し、戻しバネ55の付勢力に抗して連結索57が図中右方向に引かれ、リンク機構56が穀稈受け止め体18を押し上げる方向に作用する。
カムローラ53がカム体51の第2カム面52bに乗り上げると、穀稈受け止め体18の受け止め支持部18Aは、刈取り穀稈を前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部に対して受け止め支持部18Aが上方側に突出した支持作用位置Uとなるように切り換えられる(図11における仮想線の状態)。
このとき、作業クラッチ操作部40では、前記回転操作軸36に装着された駆動ギヤ41及び駆動アーム42が図中時計回りに回動操作され、脱穀クラッチ10は入り状態のままで刈取クラッチ12が先に切り操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uに位置する枕こぎ作業可能な状態となる。
さらに前記カム体51が図8で反時計回りに回動すると、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uに位置したままで、刈取クラッチ12とともに脱穀クラッチ10も切り状態になる。
【0035】
〔アシスト機構〕
前記電動モータ31の駆動力が伝達される前記回転操作軸36に対して、前記受け止め体操作機構50による穀稈受け止め体18の支持作用位置U側への持ち上げ作用を補助するためのアシスト機構60が連係作動するように装備されている。
このアシスト機構60は、図6,7、及び図10に示すように、前記カム体51とは別に、前記回転操作軸36に一体回動するように装着されたアシストカム61と、そのアシストカム61のカム面62に接当するカムローラ63を備えたアシストカムフォロワ64と、アシストカムフォロワ64の位置変化に連動して伸縮作動するアシストバネ65とを備えて構成されている。
前記アシストカムフォロワ64は、前記受け止め体操作機構50のカムフォロワ54と同じ支持軸38に上端側を前後揺動自在に枢支連結され、下端側にアシストバネ65が連結されている。
【0036】
前記アシストカム61のカム面62は、図10における前記回転操作軸36の反時計回り(逆転方向)で回転方向前方側に位置する第1カム面62aと、その第1カム面62aの前記回転方向での後方側に引き続いて前記回転操作軸36の回動軸芯p0を曲率中心とする円弧状に形成された第2カム面62bとを備えている。そして、前記第1カム面62aは、前記回転操作軸36の反時計回りで回転方向前方側ほど漸次回転半径が増大する湾曲面に形成してある。
前記アシストカムフォロワ64の上下方向の中間位置には、カムローラ63が支軸63a周りで回動自在に枢支してあり、図10に示すようにカムローラ63がアシストカム61の第1カム面62aの最大半径部分付近に接した位置では、下端側に連結されたアシストバネ65が最大伸長状態に操作されている。
【0037】
図10に示すアシストカム61は、前記受け止め体操作機構50のカムフォロワ54のカムローラ53が、図8に示すようにカム体51の第3カム面52cに位置している状態で、アシストカムフォロワ64のカムローラ63が第1カム面62aの最大半径部分付近に接した状態に位置するように、受け止め体操作機構50のカム体51との相対的な位相を定めてある。
【0038】
したがって、図8に示す位置から受け止め体操作機構50のカム体51を反時計回りに回動させると、図10に示す位置からアシストカム61が反時計回りに回動し、受け止め体操作機構50のカムローラ53が第1カム面52aに接して回転操作軸36の回動軸芯p0から遠ざかる方向に押し出されるに伴い、アシストカム61のカムローラ63が第1カム面62aに接しながら回転操作軸36の回動軸芯p0に近付く方向に移動する。
この時、アシストカムフォロワ64の下端側に連結されているアシストバネ65の収縮方向への弾性復元力は、アシストカム61を反時計回りに回動操作する方向への作用力として有効に機能し、回転操作軸36を介して受け止め体操作機構50のカム体51を反時計回りに回動操作する方向への作用力として有効に機能する。
【0039】
上記アシスト機構60のアシストバネ65の伸長方向への操作は、電動モータ31で駆動される回転操作軸36の回動に伴う前記アシストカム61の図10における時計方向(正転方向)への回転によって行われる。つまり、アシストカム61の第1カム面62aがカムローラ63を回転操作軸36の回動軸芯p0から遠ざけるように操作することによって、アシストカムフォロワ64がアシストバネ65の一端側を図10における右方向に引っ張り操作することによって、アシストバネ65に弾性復元力が蓄積された状態となる。
【0040】
〔アクセル操作部〕
この統合操作装置30には、エンジンEの調速機構17を操作するアクセル操作部70も組み込まれている。
すなわち、図8及び図9に示すように、支持枠30Aの右側の横側壁33に固定して取り付けた枢支軸39を介して、ベルクランク状のアクセル操作レバー71と定格戻し操作体72とが同軸上で揺動可能に装着されている。
枢支軸39に枢支されたアクセル操作レバー71は、上端側に握り部71aを有し、この握り部71aが搭乗運転部6の操作盤20の上面側に露出して人為操作可能に構成してあり、主変速操作レバー22の後方側に主変速操作レバー22と前後に並んだ状態で配備され、アクセル操作レバー71の下端部71bには、エンジンEの調速機構17に連係された操作ワイヤ76が連結されている。
また、アクセル操作レバー71は、図9に示すように摩擦板73と皿ばね74とで挟み込まれた状態で前記右側の横側壁33に装着してあり、その人為操作は前記摩擦板73と皿ばね74とによる適度な摩擦抵抗に抗して行われるようにしてあり、握り部71aから手を離せばアクセル操作レバー71の操作位置が摩擦保持されるように構成してある。
【0041】
そして、前記枢支軸39には、前記アクセル操作レバー71を、刈取脱穀作業時にエンジンEの回転数を定格回転とするように、図8に実線で示す定格位置に自動的に操作するための定格戻し操作体72が装着されている。
この定格戻し操作体72は、図8及び図9に示すように、前記枢支軸39に外嵌したプレート72aから前記右側の横側壁33に形成された抜き穴33aを介してピン72bを貫通突出させてある。これによって、前記ピン72bが、前記プレート72aと右側の横側壁33との間で、前記受け止め体操作機構50のカム体51の回転軌跡と重複するように位置し、前記右側の横側壁33の抜き穴33aを貫通して外側へ突出した箇所で、前記アクセル操作レバー71の前記下端部71bを備える下方への延出部分の移動範囲と重複するように位置している。また、前記定格戻し操作体72は、枢支軸39の軸心方向視で短いベルクランク状に形成してあり、前記プレート72aには、前記枢支軸39を挟んで前記ピン72bが設けられた側とは反対側の延出端部に、前記右側の横側壁33から離れる側へ屈折された突片72cが一体に設けてある。
【0042】
そして、前記枢支軸39にコイルスプリング75を巻回して、そのコイルスプリング75の自由端である両端側が、前記右側の横側壁33に固定した規制ピン77を上下両側から挟むように設けてある。
このコイルスプリング75の自由端である両端側では、前記枢支軸39と規制ピン77との間に前記突片72cが入り込む状態に位置し、前記プレート72aの回動に伴って前記突片72cがコイルスプリング75の一方の端部に接当し、例えば図8で反時計回りに回動すると、コイルスプリング75の一方の端部は、反時計回りに回動する突片72cに押されてコイルスプリング75の一方の端部を上方側へ押し上げるが、コイルスプリング75の他方の端部は規制ピン77によって移動を規制されているため、突片72cに対して時計回りに戻す方向への付勢作用を与える。前記プレート72aが逆に時計回りに回動した場合にも、同様に、突片72cに押されてコイルスプリング75の一方の端部は下方側へ押し下げられるが、コイルスプリング75の他方の端部は規制ピン77によって移動を規制されているため、突片72cに対して反時計回りに戻す方向への付勢作用を与える。
これによって、前記コイルスプリング75の自由状態では、前記定格戻し操作体72のピン72bが図8に示す位置にあるように装着されている。
【0043】
したがって、前記受け止め体操作機構50のカム体51が図8で反時計回りに回動して前記ピン72bに接当しても、前記コイルスプリング75の変形によってピン72bがカム体51の第5カム面52eに押されて移動軌跡から退避した後、コイルスプリング75の弾性復元力で図8の位置に復帰する。
そして、そのピン72bよりもカム体51が反時計回りでの前方側に位置していて、その位置から時計回りに回動するときには、カム体51の第4カム面52dでピン72bが押され、そのピン72bによってアクセル操作レバー71の下端部71bが押されて、図8に示す定格操作位置にアクセル操作レバー71が自動的に復帰する。
つまり、アクセル操作レバー71は人為的にエンジン回転数を変更操作するように操作されるものであるが、上記のように定格戻し操作体72を利用したアクセル操作部によっても操作される。したがって、上述したように、例えばアクセル操作レバー71が人為的にアイドリング位置に操作されるなどして、定格回転位置に存在していないときには、アクセル操作レバー71の下端部71bが抜き穴33aの横側部でピン72bに近接して位置した状態となり、カム体51の第4カム面52dがピン72bよりも反時計回りでの前方側に位置している状態から、カム体51が時計回りに回動することによって、カム体51の第4カム面52dがピン72bを介してアクセル操作レバー71の下端部71bを押して、カム体51の第4カム面52dの回転軌跡からピン72bが外れる位置にまで押し戻すことにより、アクセル操作レバー71が図8に実線で示す定格回転位置に自動的に復帰されることになる。
【0044】
〔制御系の説明〕
図4はコンバインの制御系を示している。
制御装置100には、静油圧式無段変速装置7を高低変速操作する主変速操作レバー22の操作位置を判別するポテンショメータ22aの検出信号、前記統合操作装置30の作動を開始させるための統合スイッチ21(作動指令操作具の一例)、及び統合操作装置30に備えられた回転駆動軸36の回転角度を検出するポテンショメータ37の検出信号が入力されるように構成してあるとともに、それらの検出信号を入力されるモータ制御手段101が予め記憶された所定のプログラムとして備えてある。
このモータ制御手段101からの制御信号によって前記統合制御装置30の電動モータ31を制御するように構成してある。
【0045】
このモータ制御手段101による電動モータ31の制御は、次のようにして行われる。
すなわち、統合スイッチ21が押し操作されると、制御装置100が備えるメインルーチンの一部にサブルーチンとして備えられるモータ制御手段101が呼び出され、図12に示すように、まず、ポテンショメータ22aからの検出に基づいて主変速操作レバー22が前進位置Fにあるか否かが判断され、前進位置Fであれば統合操作装置30のポテンショメータ37により、回転駆動軸36の位置を判別する(ステップ#1、及びステップ#2)。
【0046】
ステップ#2では、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uにした、刈取脱穀作業を行わない位置であるところの非作業位置T1であると判別された場合には、電動モータ31を図5における回転駆動軸36の反時計回り(正転方向)に回転駆動する(ステップ#2、及びステップ#4)。そして、ポテンショメータ37により、回転駆動軸36が、脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持解除位置Dにした、機体走行を伴って刈取脱穀作業を行う位置であるところの作業位置T3であると判別された場合には、電動モータ31における回転駆動軸36の前記反時計回り(正転方向)の回転駆動を停止する(ステップ#5、及びステップ#6)。
【0047】
前記ステップ#2で前記ポテンショメータ37により、回転駆動軸36の位置が非作業位置T1でないと判別された場合にはステップ#3に進む。ステップ#3で、回転駆動軸36の位置が、脱穀クラッチ10は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uにある、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された場合には、前記回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uにした、非作業位置T1であると判別された場合と同様に、電動モータ31を図5における回転駆動軸36の反時計回り(正転方向)に回転駆動し(ステップ#2、ステップ#3、及びステップ#4)、ポテンショメータ37により、回転駆動軸36が、脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持解除位置Dにした、作業位置T3であると判別されると、電動モータ31における回転駆動軸36の前記反時計回り(正転方向)の回転駆動を停止する(ステップ#5、及びステップ#6)。
【0048】
前記統合スイッチ21が押し操作されて、前記ステップ#1で主変速操作レバー22が前進位置Fにあるか否かが判断され、前進位置Fではない(後進位置Rまたは中立位置N)と判断された場合には、ステップ#11に示すように、統合操作装置30のポテンショメータ37により、回転駆動軸36の位置を判別する(ステップ#1、及びステップ#11)。
このステップ#11では、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uにした、非作業位置T1であると判別された場合には、電動モータ31を図5における回転駆動軸36の反時計回り(正転方向)に回転駆動する(ステップ#11、及びステップ#12)。回転駆動軸36の位置が、脱穀クラッチ10は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uにある、枕扱ぎ位置T2であると判別された場合には、電動モータ31における回転駆動軸36の前記反時計回り(正転方向)の回転駆動を停止する(ステップ#13、及びステップ#6)。
【0049】
前記ステップ#11で、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uにした、非作業位置T1ではないと判断された場合には、ステップ#14で、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持解除位置Dにした、作業位置T3であるか否かを判断する(ステップ#11、及びステップ#14)。
このステップ#14で、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12をともに入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持解除位置Uにした、作業位置T3であると判別された場合には、電動モータ31を図5における回転駆動軸36の時計回り(逆転方向)に回転駆動する(ステップ#14、及びステップ#15)。そして、回転駆動軸36の位置が、脱穀クラッチ10は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uにある、枕扱ぎ位置T2であると判別された場合には、電動モータ31における回転駆動軸36の前記時計回り(逆転方向)の回転駆動を停止する(ステップ#17、及びステップ#6)。
【0050】
前記ステップ#14で、前記回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12をともに入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持解除位置Uにした、作業位置T3ではないと判断された場合には、回転駆動軸36の位置は、既に脱穀クラッチ10は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uにある、枕扱ぎ位置T2に相当する位置であるから、何の操作も行わず次のステップへ進む。
【0051】
次に、ステップ#17で、前記統合スイッチ21が再び押し操作されてモータ制御手段101による制御を停止する信号を検出されたか否かを判別し、モータ制御手段101による制御を停止する信号が検出されれば、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uにした、非作業位置T1とするように、電動モータ31を図5で回転駆動軸36の前記時計回り(逆転方向)に回転駆動駆動し、回転駆動軸36の位置が脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12が共に切り状態に操作され、穀稈受け止め体18が支持作用位置Uとなった、非作業位置T1で電動モータ31の作動を停止する(ステップ#7〜ステップ#10)。
【0052】
〔統合操作装置の動作説明〕
上記統合操作装置30における作業クラッチ操作部40と、受け止め体操作機構50と、アシスト機構60との連係動作を、図14乃至図17に基づいて説明する。
図14は、作業クラッチ操作部40による脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12との入り切り作動、受け止め体操作機構50による穀稈受け止め体18の位置変更操作、及びアシスト機構60におけるアシストバネ65のバネ圧の変更操作、に関するそれぞれの動作順をタイムチャートで表示している。図中左側の端部箇所が、回転駆動軸36を非作業位置T1に操作している状態を示す。
この位置では、脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12とが共に切り状態にあり、穀稈受け止め体18は支持作用位置Uにあり、アシストバネ65は、バネ圧を蓄積していない自由状態にある。
【0053】
この非作業位置T1から、電動モータ31の駆動力によって回転駆動軸36を正転方向(図5における反時計回り)に回転させると、回転作動範囲の途中に設定された枕扱ぎ位置T2に到達する前に脱穀クラッチ10が入り状態に切り替わり、刈取クラッチ12は未だ切り状態に維持され、穀稈受け止め体18は支持作用位置Uに位置したままで、アシストバネ65もバネ圧を蓄積していない自由状態のままに維持されている。この箇所が枕扱ぎ位置T2として用いられる。
【0054】
上記枕扱ぎ位置T2を越えてさらに回転駆動軸36を正転方向(図5における反時計回り)に回転させると、支持作用位置Uに位置していた穀稈受け止め体18が支持解除位置D側に切り替え操作され、このとき、電動モータ31で駆動される回転操作軸36と一体に回動するアシストカム61によってアシストバネ65が引き延ばされ、バネ圧が高い状態に操作される。つまり、アシストバネ65にアシストカム61を逆方向へ回転させるための力が蓄積された状態となる。
そして、回転駆動軸36の正転方向(図5における反時計回り)でのストロークエンドとなる作業位置T3に到達する前に刈取クラッチ12も入り状態に切り替えられて、作業位置T3では、脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12とが共に入り状態に操作され、穀稈受け止め体18は支持解除位置Dで、アシストバネ65はバネ圧が高い状態に操作された状態となる。
【0055】
次に、上記の作業位置T3から回転駆動軸36を逆転方向(図5における時計回り)に回転させると、回転作動範囲の途中に設定された枕扱ぎ位置T2に到達する前に刈取クラッチ12が切り状態に切り替わり、脱穀クラッチ10は未だ入り状態に維持され、穀稈受け止め体18は支持解除位置Dから支持作用位置Uに位置変更され、アシストバネ65は蓄積していたバネ圧よる力を放出して低圧状態に切り換えられる。
つまり、アシストバネ65に蓄積されていたアシストカム61を逆転方向へ回転させるための力が放出されることで、電動モータによるアシストカム61を逆転方向へ駆動するための力を補助することとなる。この箇所が枕扱ぎ位置T2として用いられる。
【0056】
上記枕扱ぎ位置T2を越えてさらに回転駆動軸36を逆転方向(図5における時計回り)に回転させると、脱穀クラッチ10が切り状態に切り替わり、刈取クラッチ12は切り状態のままに維持され、穀稈受け止め体18は支持作用位置Uに位置したままで、アシストバネ65もバネ圧を蓄積していない自由状態のままで非作業位置T1に復帰する。
この非作業位置T1は、脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12とが共に切り状態にあり、穀稈受け止め体18は支持作用位置Uにあり、アシストバネ65は、バネ圧を蓄積していない自由状態にある。
【0057】
次に、電動モータ31に作用する各装置の負荷とアシストバネ65の付勢力との関係を図15乃至図17に基づいて説明する。
図15は、電動モータ31に作用する各装置の負荷、つまり、脱穀クラッチ10や刈取クラッチ12を操作する際に必要な回転駆動軸36のトルク、及び、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uに切り換える際に必要な回転駆動軸36のトルクと、アシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクとを個別に示している。
また、この図15では、アクセル操作レバー71がアイドリング位置にある場合には、定格回転位置にまで操作するために要する力も回転駆動軸36のトルクとして作用するので、このときの力も表示している。
この図15では、符号aで示される破線がアクセル操作レバー71を操作する際のトルクを示している。符号bで示される一点鎖線が脱穀クラッチ10を操作する際のトルクを示している。符号cで示される二点鎖線が刈取クラッチ12を操作する際のトルクを示している。符号dで示されている太い実線が穀稈受け止め体18を支持作用位置Uに切り換える際のトルクで、穀稈受け止め体18上にある程度の穀稈が乗った状態で持ち上げる際に予測されるトルクを示している。符号d’で示されている細い実線は、穀稈受け止め体18のみを支持作用位置Uに切り換える際のトルクを示している。符号eで示される上向きに突出する実線は、アシストバネ65をアシストカム61の回転で蓄力側に操作する際のトルクを示している。
【0058】
図16は、アシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクeを別個に表示し、その他の前記各トルクa,b,c,dは合成して太い実線からなる単一の折れ線で示している。
また、図17に示す実線は、上記の全てのトルクa〜eを合成して単一の折れ線で示している。この図17に示す破線は、前記図16に示す各トルクa,b,c,dを合成したトルク折れ線を対比するために示したものである。
この図16及び図17から解るように、図16では電動モータ31の拘束トルク(電動モータ31の耐久性などから定常的に使用して差し支えない範囲のトルクを意味し、通常は最高出力トルクの1/2程度に定められている)を越えてしまう部分(図16中の斜線部分参照)が存在する可能性があるが、図17に示すように、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uに切り換える際に必要な回転駆動軸36のトルクdと、アシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクeとを合成することによって、電動モータ31に対する各トルクa〜eを、拘束トルクなどの所定範囲内に収めるようにしている。
【0059】
図15に示すように、前記アシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクeと、刈取クラッチ12を操作する際のトルクcとは、その低トルク部分が少し重複しているだけで、大部分は同時的に作用しないように離れて設定されている。これは、アシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクeの増減変化を表す折れ線が、電動モータ31の正転方向の回転では増加方向の線分が緩傾斜で、減少方向の線分が急傾斜であるように設定することで、刈取クラッチ12を操作する際のトルクcとの重なり代を少なくするように工夫されている。
このアシストバネ65の付勢力を得るために必要な回転駆動軸36のトルクeの増減変化の度合いは、アシストカム61のカム面62における第1カム面62の曲線と、穀稈受け止め体18を支持作用位置Uに切り換える際のリンク機構56のリンク部材56a、56bの起伏揺動角度の変化度合いによって適宜設定される。
【0060】
以上により、主変速操作レバー22の前進位置Fで統合スイッチ21を入り操作すると、自動的に、エンジンEが定格回転となるように駆動され、続いて脱穀クラッチ10が入り操作され、その後に刈取クラッチ12が入り操作され、アシストバネ65が蓄力側に操作された状態で穀稈受け止め体18は支持解除位置Dに切り換えられて、走行状態での刈取脱穀作業が可能な状態となる。
また、主変速操作レバー22の後進位置R、又は中立位置Nで統合スイッチ21を入り操作する際、脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12とが共に切り状態にある非作業状態にあるときは、自動的に、エンジンEを定格回転となるように駆動するとともに、脱穀クラッチ10が入り操作され、刈取クラッチ12は切り操作状態のままで、かつ穀稈受け止め体18も支持作用位置Uにある状態のままで枕扱き作業状態とする。
また、変速操作レバー22の後進位置R、又は中立位置Nで統合スイッチ21を入り操作する際で、前記脱穀クラッチ10と刈取クラッチ12とが共に入り状態にあるときには、自動的に、エンジンEを定格回転となるように駆動するとともに、脱穀クラッチ10の入り操作状態を維持したままで、刈取クラッチ12を切り操作し、かつ支持解除位置Dにある穀稈受け止め体18を、蓄力側に操作されていたアシストバネ65の力を加えながら支持作用位置Uに操作して枕扱き作業状態とする。
【0061】
〔別実施の形態〕
作動指令操作具としての統合スイッチ21の操作に伴って作動する電動モータ31で駆動される装置としては、上記実施形態で示した、脱穀クラッチ10、刈取クラッチ12、受け止め体操作機構50、アシスト機構60、及びアクセル操作部70の全てである必要はない。
例えば、前記受け止め体操作機構50と前記アシスト機構60のみであってもよく、この受け止め体操作機構50と前記アシスト機構60との組み合わせに他の脱穀クラッチ10、刈取クラッチ12、及びアクセル操作部7の何れか一つ、あるいは複数を組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、実施形態で示したような乗用型のコンバインに限らず、歩行型のコンバインにも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
3 刈取処理装置
4 脱穀装置
4A 脱穀フィードチェーン
7 走行変速装置(無段変速装置)
10 脱穀クラッチ
12 刈取クラッチ
18 穀稈受け止め体
18A 受け止め支持部
21 作動指令操作具
22 変速操作具
30 統合操作装置
31 電動モータ
36 回転駆動軸
40 作業クラッチ操作部
50 受け止め体操作機構
51 カム体
54 カムフォロワ
55 戻しバネ
60 アシスト機構
61 アシストカム
64 アシストカムフォロワ
65 アシストバネ
U 支持作用位置
D 支持解除位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に対して受け止め支持部が上方側に突出した支持作用位置と、刈取処理装置からの刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して前記受け止め支持部が下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体を設けたコンバインであって、
前記穀稈受け止め体の姿勢を前記支持作用位置と前記支持解除位置との何れかに切換操作する単一の電動モータを備えるとともに、その電動モータに対して作動指令を出力する人為操作可能な作動指令操作具を設け、
この作動指令操作具の指令に基づいて、前記電動モータの一方向の回転作動にともなって前記穀稈受け止め体が支持解除位置に操作され、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって前記穀稈受け止め体が支持作用位置に操作されるように構成してあり、
前記電動モータの前記一方向の回動作動力によって力が蓄積され、前記電動モータの逆方向の回動にともなって穀稈受け止め体を持ち上げる側への操作力として蓄積された力を放出するように構成されたアシスト機構を備えていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
走行変速装置の変速操作を行う変速操作具と、刈取処理装置に対する駆動力の伝達を断続する刈取クラッチと、脱穀装置に対する駆動力の伝達を断続する脱穀クラッチを備え、
脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取り穀稈を前記搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に対して受け止め支持部が上方側に突出した支持作用位置と、前記刈取処理装置からの刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部に供給されるように前記搬送始端部に対して前記受け止め支持部が下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体を設けたコンバインであって、
前記脱穀クラッチ、前記刈取クラッチ、及び前記穀稈受け止め体を操作する単一の電動モータを備えるとともに、その電動モータに対して作動指令を出力する人為操作可能な作動指令操作具を設け、
この作動指令操作具の指令に基づいて、変速操作具が機体走行位置に操作されていると、前記電動モータの一方向の回転作動力によって、前記脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り操作し、前記穀稈受け止め体が支持解除位置に下降操作されるように構成してあり、前記変速操作具が機体停止位置に操作されていると、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって、前記刈取クラッチを切り操作し、脱穀クラッチを入り操作し、前記穀稈受け止め体が支持作用位置に持ち上げ操作されるように構成してあり、
さらに、前記電動モータの前記一方向の回動作動力によって力が蓄積され、前記電動モータの逆方向の回動にともなって蓄積された力を放出するように構成されたアシスト機構を備え、このアシスト機構による力の蓄積は前記穀稈受け止め体が支持解除位置に操作される際に行われ、蓄積された力の放出は前記穀稈受け止め体が支持作用位置に操作される際に行われるように構成してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
穀稈受け止め体を支持作用位置と支持解除位置とに位置変更する受け止め体操作機構を備え、
この受け止め体操作機構を、穀稈受け止め体を支持解除位置側に付勢する戻しバネと、穀稈受け止め体に連結されたカムフォロワと、カムフォロワを電動モータで操作するカム体とによって構成するとともに、前記電動モータによるカムフォロワの操作は、前記電動モータの一方向の回転に伴って前記穀稈受け止め体を支持解除位置側に操作し、前記電動モータの逆方向の回転作動力によって前記戻しバネの付勢力に抗して穀稈受け止め体を支持作用位置側に復帰可能に操作するように構成してあり、
前記アシスト機構を、前記電動モータの回転によって駆動されるアシストカムと、そのアシストカムの回転によって位置変化するアシストカムフォロワと、アシストカムフォロワの位置変化に連動して伸縮作動するアシストバネとによって構成するとともに、
前記アシストカムは、前記電動モータの一方向の回転作動力によってアシストバネに力を蓄積するようにアシストカムフォロワを操作し、前記電動モータの逆方向の回転作動力によってアシストバネに蓄積されている力が放出されるようにアシストカムフォロワを操作するように構成してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
刈取処理装置に対する駆動力の伝達を断続する刈取クラッチを備え、電動モータで駆動される回転駆動軸の回転に伴ってアシストカムの回転駆動、及び刈取クラッチの入り切り操作を行うように構成してあるとともに、
前記回転駆動軸で回転駆動されるアシストカムによるアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域と、刈取クラッチが入り操作される際に回転駆動軸に作用する駆動トルクの作用領域とを、前記回転駆動軸の回転方向での前後に位置設定し、
前記アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域で、アシストカムの回転角度に対する回転駆動軸の駆動トルクの変動が、アシストカムによるアシストバネに対する力の蓄積初期における回転駆動軸の駆動トルクの増加率が緩やかで蓄積終期における回転駆動軸の駆動トルクの減少率が急であるようにアシストカムの形状を設定し、
アシストカムによってアシストバネに対する力の蓄積が行われる回転駆動軸の回転領域と、刈取クラッチが入り操作される際の回転駆動軸の駆動トルクの作用範囲とを、回転駆動軸の回転方向で位置ずれさせて、アシストバネの蓄圧作用の終了後に刈取クラッチが入り状態となるように構成してある請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−55209(P2012−55209A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200121(P2010−200121)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】