説明

コンバイン

【課題】カメラを取付ブラケットを介して、カッタ上部カバー体に安定よく取付けると共に、背面カバーから大きく突出させることなく、背面カバーに設けたフードによって覆うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀部の後部に脱穀済みの排稈を切断排出するカッタ装置を備え、該カッタ装置の上方を覆うカッタ上部カバー体17に、機体後方を撮影するカメラ9を設けたコンバインであって、前記カメラ9を支持する取付ブラケット37を、カッタ上部カバー体17を構成する上面カバー25の下面と、該上面カバー25の背後に固着される背面カバー27の前面とに取付けると共に、カメラ9を背面カバー27に切欠した切欠部30に沿って後方に向けて突設したフード31内に臨設し、フード31によってカメラ9の上方及び側方を覆う構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタ装置の上方を覆うカッタ上部カバー体に、機体後方を撮影するカメラを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取られた穀稈を脱穀部によって脱穀し、脱穀済みの排稈(排藁)を後方に設置されるカッタ装置によって切断排出するコンバインは、機体後方を撮影するカメラ(撮像手段)を、カッタ装置の上方を覆うカッタ上部カバー体から後方に向けて突設し、カメラで撮影した撮像情報をキャビン内に設置されるモニタに表示し、その映像を監視しながら操縦を行うことができるようにしている(例えば特許文献1及び特許文献2。)。
上記コンバインは、いずれもカッタ上部カバー体の上面カバーと背面カバーとが接合されるコーナー部から、カメラを後方に向けて突設した帯板状の取付部材の先端に取付けると共に、カメラにフードを取付けて覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−17142号公報
【特許文献2】特開2008−5711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2で示されるカメラ設置構造は、カメラが後方に延設される取付部材を介して設置されるため、機体走行時に振動し易く振動防止構造が煩雑になると共に、カメラ全体が外部に露出しているため、雨水や塵埃に曝され劣損し易いこと及び機体後部の外観を損なう等の欠点がある。
またコンバインをビニール製等のシートで覆うとき、カッタ上部カバー体のコーナー部から後方又は上方に突出するカメラは、シートと強く接触したり引っ掛かり易く、さらに機体全体に覆い被せたシートを取り去るときシートに隠され外観できないことから、カメラの存在が失念されたままの状態で、シートが他方から強く引っ張られることがある。このような場合に、カメラは当該シートと強く接触することになるため、カメラ破損を生じたり取付部材に変形を伴うトラブルや、シートの裂損を生じ易い等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるコンバインは係る課題を解決するために、脱穀部3の後部に脱穀済みの排稈を切断排出するカッタ装置7を備え、該カッタ装置7の上方を覆うカッタ上部カバー体17に、機体後方を撮影するカメラ9を設けたコンバイン1において、前記カメラ9を支持する取付ブラケット37を、カッタ上部カバー体17を構成する上面カバー25の下面と、該上面カバー25の背後に固着される背面カバー27の前面とに取付けると共に、カメラ9を背面カバー27に切欠した切欠部30に沿って後方に向けて突設したフード31内に臨設し、フード31によってカメラ9の上方及び側方を覆うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、カメラをカッタ上部カバー体に設置するに、取付ブラケットを上面カバーと背面カバーとに取付けて、カメラを背面カバーの切欠部に突設したフード内に臨設し、フードによってカメラの上方及び側方を覆うようにしたことにより、取付ブラケットは上面カバーと背面カバーとを連結した状態で複数箇所が支持されるので、カメラを背面カバーの切欠部内に安定よく支持しフードによって覆うことができる。従って、コンバインの走行に伴う振動によっても、カメラのぶれを防止した撮像をモニタに表示することができる。
またカッタ上部カバー体内に、取付ブラケットを取付けてカメラを切欠部に臨ませるので、カメラを背面カバーから大きく突出させることなくフードによって覆うことができるため、コンバインのシート掛け及び取り去り作業を、シートの引っ掛かりを防止し能率よく行うと共に、カメラ等の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明が適用されたコンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】キャビン内に設置されるモニタの配置構造を示す背面図である。
【図4】モニタの構造を示す正面図である。
【図5】カッタ装置のカッタ上部カバー体及びカメラ設置構造を分解して示す分解斜視図である。
【図6】図5の要部の構造を拡大して示す分解斜視図である。
【図7】カメラ設置構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2で示すコンバイン1は、走行機台1aの前部に前処理部2を昇降自在に設け、その後方左右に脱穀部3とキャビン4aで囲われた操縦部4を配設し、該操縦部4の後方に穀粒搬送オーガ5aを有するグレンタンク5を配設している。上記走行機台1aは左右の下部にクローラ方式の走行装置6を備え、脱穀部3は脱穀機体の後部に着脱可能に装着される排藁処理装置として、脱穀済みの排稈を短く切断するカッタ装置7を備えている。
【0009】
そして、上記コンバイン1は、機体の前部側を撮影するカメラ8を穀粒搬送オーガ5aの先端部で穀粒排出口5bの後部に設け、且つ機体後方を撮影するカメラ(リヤカメラ)9を本発明に係るカメラ設置構造によってカッタ装置7の後部に設置している。
これによりコンバイン1は、カメラ8,9で撮影した画像をキャビン4a内に設けられるモニタ10によって、オペレータが操縦しながら容易に視認することができるようにしている。
【0010】
このモニタ10は図3,図4で示すように、キャビン4aの天井パネル11の右側に取付けられるスイッチボックス12から、下向きに延設したアーム13に支持されている。スイッチボックス12は、左右に傾倒操作することにより前部のカメラ8と後部のカメラ9とで撮影される映像を択一的に切換えるスイッチ15を備えている。尚、図4で示されるモニタ映像は、スイッチ15を右側に切換えたとき、トラックに搭乗したコンバイン1の後部と歩み板との関係が撮影された映像を示しており、オペレータはこの画像を参考にコンバイン1を歩み板を利用して降車作業を行い易くすることができる。
【0011】
以下、カッタ装置7に設置されるカメラの設置構造について説明する。先ず図1,図2,図5,図6で示すようにカッタ装置7は、脱穀部3から横向きの姿勢で搬送供給される排稈を切断する切断部を備えたカッタ本体16と、該カッタ本体16の上部と下部に着脱自在に装着される、カッタ上部カバー体17とカッタ下部カバー体18とからなる。カッタ本体16は、箱型のカッタ枠20内に対をなす複数の回転切断刃と回転受歯とからなる切断部を軸支しており、カッタ枠20の両側に所定高さの本体側壁21,21を立設し、該本体側壁21,21の間で切断部の上方に形成される排稈供給口を、排稈の搬送経路を切換える切換カバー22によって開閉回動自在に覆っている。
【0012】
カッタ上部カバー体17は、前記本体側壁21,21に着脱自在に固設される支脚を兼ねる縦カバー23,23の上部を、上面カバー25で接続した門型状をなす上部カバー本体26と、該上部カバー本体26の後部上方を覆う背面カバー(上部後壁カバー)27とからなる。図示例の背面カバー27は、下部を鈎型に切欠した形状の平板となしており、その左右端と上端とに内向きに突設した複数のボルト28を、縦カバー23,23と上面カバー25に内向きに折り曲げたリブ片の取付孔に挿入し、内部からナット28aによって締着することにより着脱自在に取付けられる。さらに背面カバー27は、下辺の中途部に突設したボルト28bを、前記上面カバー25の内面から下方に向けて突設したカバーステー29に挿入し締着固定される。
【0013】
またカッタ上部カバー体17は軽量にするうえで、上面カバー25及び背面カバー27を共に厚さ1ミリ以下の薄鉄板にしながら、向きを異にして直交する両者の接合によって剛性を有した構造にしている。これによりカッタ上部カバー体17は、脱穀部3から排稈を引き継いでカッタ本体16側に供給する排稈搬送体3aの終端部を覆う。この構成において背面カバー27は、その下辺の中途部を下方から下向きコ字状に切欠したカメラ設置用の切欠部30を形成しており、該切欠部30の輪郭に沿ってカメラガード用のフード31の基部を固設し、先端を後方に向けて突設している。このフード31は、切欠補強用のリブになるため背面カバー27のカバー剛性を高めることができる。
【0014】
これにより背面カバー27は、切欠部30内に後述するカメラ設置構造によって設置されるカメラ9を、背面カバー27の下辺から大きく突出させることなく、且つフード31によってカメラ9の上方及び側方を覆うことができる。
またフード31は、図7で示すように側面視において、くの字状をなすように形成しており、シートを覆ったり取り去る際に、その下り傾斜の上面と上り傾斜の側面とにより、シートを引っ掛けたりすることのない滑り案内作用をさせると共に、カッタ装置7の外観形状も在来のカメラ設置構造に比して向上させることができる。
【0015】
カッタ下部カバー体18は、前記切断部を内装する箱型のカッタ枠20の下部形状に沿った、平面視で前向きのコ字状断面をなすスカート部18aを形成するようにしており、その左右側壁の下部に、切断された切藁を左右に排出案内する切藁案内板32,33を調節自在に取付けている。これによりカッタ下部カバー体18は、切断された切藁をカッタ枠20から周囲に飛散させることなく、地表に向けて排出誘導する。
以上の構成により、カッタ本体16の上下にカッタ上部カバー体17とカッタ下部カバー体18とを一体的に組付けてなるカッタ装置7は、カッタ本体16の右側に設けたヒンジ等からなる回動取付部35を介して、脱穀部3の後部に着脱可能に装着される。
またコンバイン1は、機体後部の左右に配置するフラッシャランプ36,36aを、それぞれカッタ上部カバー体17の左側コーナー部と、グレンタンク5の後部フレームに強度を有して取付けていると共に、カッタ上部カバー体17の右側コーナー部に作業灯36bを取付けている。
【0016】
次に、図5〜図7を参照しカメラ設置構造について説明する。このカメラ9は、上面カバー25と背面カバー27に取付固定される取付ブラケット37の下部に支持され、背面カバー27に形成される前記切欠部30に、フード31に接当することなく内嵌状態で安定よく臨設されると共に、カメラ9の取付け角度をフード31内で調整自在にすることができる。
【0017】
即ち、図6,図7で示すように取付ブラケット37は、カメラ9を安定よく取付けるように形成された箱枠状の取付部37aと、その左右から上方に向けて延設した取付腕37bとからなり、取付部37aの背側壁面に取付孔37cを形成し、該背側壁面に連なる下部に斜面状の取付座37dを形成し、斜面にカメラブラケット38を取付けるボルト39を挿入する挿入孔37eを穿設している。これにより取付ブラケット37は、予めカメラ9を取付けたカメラブラケット38にボルト39を挿入し、該ボルト39を挿入孔37eに挿入しナット39aを締着すると、カメラ9を着脱自在に下向き傾斜姿勢で取付支持することができる。
【0018】
カメラブラケット38は、下向きコ字状に形成された取付片にボルト40を挿入してカメラ9を回動自在に支持すると共に、ボルト40を中心に半円弧状に穿設した調節孔38aに挿入され、調節ボルト41によって上下方向の取付け角度を変更し、カメラ9の撮影角度を調節可能にしている。
そして、カメラ9をカメラブラケット38を介して備える取付ブラケット37は、カッタ上部カバー体17に対し、上面カバー25に内向きに突設した2本のボルト25aに各取付腕37bを挿入しナット25bによって締着すると共に、背面カバー27から突設したボルト28cに前記取付孔37cを挿入してナット28dによって締着する。
これにより取付ブラケット37は、上面カバー25と背面カバー27とによって取付部37aを強固に取付けることができ、カメラ9を安定よく支持する。
【0019】
以上のようにしてカメラ9を備えるコンバインは、前処理部2によって刈取った穀稈を後方の脱穀部3に搬送供給して脱穀し、排稈を脱穀部3の後方に設置されるカッタ装置7に供給し、切断された切藁をカッタ下部カバー体18を介して機体後方の刈取跡地に拡散排出する。このようなコンバイン作業において、カメラ9はスイッチ15の切換操作によって機体後方の映像、即ち、カッタ下部カバー体18の下部及び切藁の排出状況や刈取跡地の地面並びに穀稈刈取り状況等の撮像をモニタ10に表示する。またトラックに乗車したコンバイン1を降車させる際には、トラックの荷台後部並びに歩み板等を表示する。これによりオペレータはモニタ10を見ながらコンバイン作業の精度及び能率を高めることができると共に、機体の後進走行等を行い易くすることができる。
【0020】
この際に、カッタ上部カバー体17に対し取付ブラケット37が、直交して接合される上面カバー25と背面カバー27とに取付けられて、薄肉鉄板からなる両者を連結した状態で強度を有して支持されるので、カメラ9は背面カバー27の切欠部30に内嵌させた状態で安定よく支持されて、背面カバー27から突設したフード31で覆うことができる。従って、コンバイン1の走行に伴う振動によっても、カメラ9は従来のもののように長い取付部材を介して単独的に振動することがないため、カメラぶれを防止した撮像をモニタ10に表示することができる。
【0021】
またカメラ9の撮影角度を変更又は調節したい場合に、機体の後方からフード31とカメラ9の側面に形成される隙間にスパナを挿入し、調節ボルト41を緩めボルト40を支点にカメラ9を上下方向に回動し所望の撮影角度にすることができる。そして、この際に調節ボルト41をスパナで強く回動したとしても、取付ブラケット37は取付け強度を有しているので、カメラ9の支持位置の変動を防止することができる等の特徴がある。
【0022】
そして、このカメラ設置構造によればカメラ9を、カッタ上部カバー体17のコーナー部から後方又は上方に突出させて設けることなく、下方において背面カバー27から突設させるフード31内に臨設させていることにより、コンバイン1にシートを被せるとき、上方から垂れ下がるシート部分をフード31の上面の傾斜に沿って滑らせることができ、シートの覆い作業をスムーズに行うことができる。またシートを取り去るとき、フード31はその突出量が小さいこと及び背面カバー27から上方に向けて傾斜しているので、シートを上方から引っ張りながら剥ぐようにしたとしても、フード31及びカメラ9に引っ掛けることなく能率よく取り去ることができる。
【0023】
従って、カメラ9を備えたコンバイン1は、シートを被せたり取り去るとき、機体後方に設置されるカメラ9によって、シートの覆い作業及び取り外し作業に支障をきたすことなく、またシートとの接触によるカメラ9の損傷や取付け姿勢の変動を簡単な構成によって防止することができる。またシートはフード31に引っ掛かることなく、スムーズに摺動することができるためシートの裂損等も防止される。
【符号の説明】
【0024】
1 コンバイン
3 脱穀部
7 カッタ装置
9 リヤカメラ
10 モニタ
17 カッタ上部カバー体
25 上面カバー
27 背面カバー
30 切欠部
31 フード
37 取付ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部(3)の後部に脱穀済みの排稈を切断排出するカッタ装置(7)を備え、該カッタ装置(7)の上方を覆うカッタ上部カバー体(17)に、機体後方を撮影するカメラ(9)を設けたコンバイン(1)において、前記カメラ(9)を支持する取付ブラケット(37)を、カッタ上部カバー体(17)を構成する上面カバー(25)の下面と、該上面カバー(25)の背後に固着される背面カバー(27)の前面とに取付けると共に、カメラ(9)を背面カバー(27)に切欠した切欠部(30)に沿って後方に向けて突設したフード(31)内に臨設し、フード(31)によってカメラ(9)の上方及び側方を覆うことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60931(P2012−60931A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207954(P2010−207954)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】