説明

コンバイン

【課題】コンバインの脱穀装置の後部に回動自在に連結される後処理装置を脱穀装置に着脱する際、回動支持部の上方の位置に設けられた後部方向指示器が、後処理装置の着脱の障害になる。
【解決手段】後処理装置11は、脱穀装置7の後方にボス部43により回動自在に、かつ該ボス部43からピン59を上方に向けて抜くことにより取り外される。上記ボス部43の上方の位置に配置される一方の後部方向指示器ユニット52は、扱室の側方を開閉自在に覆うサイドカバー47の端部に一体に形成される。上記後処理装置11を着脱する際、上記一方の後部方向指示器ユニット52は、サイドカバー47を開放することにより、上記後処理装置11の着脱に干渉することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの後部に取付けられる方向指示器の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインには、一般車両と同様に公道を走行するために尾灯や方向指示器などの保安部品が取付けられており、コンバインで公道を走行する際は、一般車両と同じく尾灯や方向指示器を点灯、点滅させて走行する。
【0003】
また、コンバインには、脱穀装置で脱穀処理された排稈等を堆肥として圃場に散布するためカッター等の後処理装置が機体の後方に取付けられ、この後処理装置で細断した排稈等を圃場に排出しながら刈取り作業が行われる。
【0004】
従来、後処理装置が機体の後部側端に設けられた回動支点軸により脱穀装置の後方に回動自在に連結されたコンバインが案出されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−215658号公報
【特許文献2】特開2006−109706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載のコンバインのような、後処理装置を脱穀装置の後方に連結するコンバインにあっては、方向指示器ユニットを回動支点軸の上方に設けると、メンテナンス等により後方処理装置を回動支点軸に取付け、取外す際に、方向指示器ユニットによってその取付け、取外し作業が困難となって、後処理装置を脱穀装置に着脱することが面倒であり、また該脱穀処理装置をカッターに代えてノッタやドロッパ等の他のものに交換することが面倒であった。
【0007】
そこで本発明は、後処理装置との干渉を回避するように方向指示器ユニットを退避可能に設け、もって上記課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、穀稈を刈取る前処理部(5)と、該前処理部(5)で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置(7)と、該脱穀装置(7)で脱穀された排稈を後処理する後処理装置(11)と、機体の後方に配置される後部方向指示器ユニット(52)と、を備えるコンバイン(1)において、
前記後処理装置(11)は、その一端部を前記脱穀装置(7)の後方側端に設けられた回動支持部(43)で軸支されると共に、前記脱穀装置(7)の後部に着脱自在に連結され、
前記回動支持部(43)の上方に配置される一方の前記後部方向指示器ユニット(52)は、前記回動支持部(43)の上方の位置から、前記後処理装置(11)を着脱する際の前記後処理装置(11)との接触を回避する位置に移動可能に設けられてなる。
【0009】
また、一方の後部方向指示器(50)は、前記脱穀装置(7)の側方を覆う開閉自在なサイドカバー(47)に設けられる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、後処理装置を脱穀装置の後部に着脱する際に、回動支持部の上方に配置される後部方向指示器ユニットを、後処理装置との接触を回避する位置に退避可能に設けたので、後処理装置を脱穀装置の後部に取付け、取り外しする際に、後部方向指示器が取付け、取り外し作業の障害になることなく容易に脱穀装置を着脱することができ、また、後処理装置のメンテナンス及び交換を容易に行うことができる。
【0012】
請求項2に係る発明によると、一方の後部方向指示器を脱穀装置の側方を覆う開閉自在なサイドカバーに設けたので、容易に後部方向指示器を後処理装置との接触を回避する位置に退避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係るコンバインの左側側面図。
【図2】後処理装置を脱穀装置に取付ける前の状態を示したコンバインの背面図。
【図3】後処理装置を脱穀装置に取付けた後の状態を示したコンバインの背面図。
【図4】その平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るコンバインについて図面に沿って説明する。本実施の形態に係るコンバインは、図1に示すように、汎用型コンバインであり、左右一対の走行装置であるクローラ2に支持された機体3を有している。該機体3の前方には、穀稈を刈取る前処理部5が昇降自在に設けられており、該前処理部5の後方には、コンバイン1を操作するための運転操作部6が設けられている。運転操作部6の後方には、前処理部5で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置7が設けられており、該脱穀装置7の隣には、図2に示すように、脱穀した穀粒を貯蔵するグレンタンク9が設けられている。該グレンタンク9の上方には、グレンタンク9内の穀粒を排出する排出オーガ10が設けられており、脱穀装置7の後部には、脱穀処理された排稈を細断する後処理装置11が設けられている。
【0015】
前処理部5は、刈取作物と未刈取作物とに分けるデバイダ12を前方に有しており、該デバイダ12の上方には、複数のタインが取付けられた掻き込みリール13が設けられている。該掻き込みリール13の後方には、穀稈を搬送するプラットホームオーガ15が進行方向と直交する横向きの状態で配設されており、該プラットホームオーガ15の後方には、プラットホームオーガ15によって搬送された穀稈を脱穀装置7まで搬送する搬送フィーダ16が設けられている。
【0016】
運転操作部6には、運転者が着座するための運転席17が設けられている。該運転席17の前方には操作パネル19が設けられており、該操作パネル19には、コンバイン1を操舵するための操作レバー20が設けられている。また、運転席17の側方には、サイドパネル22が設けられており、該サイドパネル22には、主変速レバー23が設けられている。
【0017】
脱穀装置7は、扱室25を有しており、該扱室25には、刈取られた穀稈を脱穀する扱胴26が回転自在で内装されている。該扱胴26には、ラセン形状した扱歯27が巻回されている。該扱胴26の下方には、唐箕ファン30や揺動移動板31、チャフシーブ32、ラック33、ストローラック35、及びグレンシーブ36等で構成される揺動選別体37等を内装する選別室39が設けられており、該選別室39には、一番ラセン40及び二番ラセン41が進行方向に直交する横向きにそれぞれ配設されている。脱穀装置7は、主に、この扱室25及び選別室39から構成されており、また、脱穀装置7の後端左側には、後処理装置11を脱穀装置7の後方に回動自在に連結するための回動支持部であるボス部43が設けられている。
【0018】
扱室25の上方は回動自在に設けられた天板45で覆われており、扱室25の後部はリヤカバー46で覆われている。扱室25の左側側方は、略矩形形状したサイドカバー47で覆われている。該サイドカバー47の上端部には、ヒンジ部48が設けられており、サイドカバー47は、該ヒンジ部48によって回動自在に設けられていると共に、扱室25の左側側方はサイドカバー47によって開閉自在に設けられている。また、サイドカバー47には、図2及び図3に示すように、サイドカバー47を上方(開き方向)に付勢するガススプリング49が取付けられており、サイドカバー47の後方側端部には、後部方向指示器50及び尾灯51を取り付けるための略矩形形状した取付カバー53がサイドカバー47と一体に形成されている。該取付カバー53には、後部方向指示器50及び尾灯51が一体形成されて、正面視楕円形状に形成されたテールランプアッシ(後部方向指示器ユニット)52が取付けられている。なお、テールランプアッシは機体後部に左右一対で配置されているが、上記テールランプアッシ52は左側のアッシである。
【0019】
後処理装置であるスプレッダーチョッパー11は、脱穀装置7の後部に取付けた際に、脱穀装置7に面する一面及び圃場面と面する一面が開放された略立方体形状のカバー体54を有しており、該カバー体54内には、図2及び図3に示すように、脱穀装置7で脱穀処理された排稈を細断するロータリ細断爪55が設けられている。該ロータリ細断爪55は、カバー体54内で回転自在に支持された回転軸56に上下左右それぞれ対向するように複数の細断爪57が取付けられている。また、カバー体54の左側の一端部には、ボス部43に嵌合する軸部であるピン59が設けられており、スプレッダーチョッパー11は、該ピン59をボス部43に下方に向けて挿入してピン59とボス部43とを嵌合することで脱穀装置7に回動自在に連結し、またピン59をボス部43から上方に向けて抜きその嵌合を解除することで脱穀装置7から取外すことができるように着脱自在に設けられている。その対向側の端部である右側端部には、図4に示すように、スプレッダーチョッパー11を連結した際に、スプレッダーチョッパー11を脱穀装置7の後部に固定するための固定ピン60が設けられている。
【0020】
次に、上記のように構成されたコンバイン1の動作について説明する。作業者は、コンバイン1で圃場での刈取り作業を行うが、この際刈取った排稈等を堆肥として圃場に散布するために、脱穀装置7の後部にスプレッダーチョッパー11がアタッチメントとして取付けられている。
【0021】
スプレッダーチョッパー11の取付けは、図2に示す脱穀装置7に設けられたボス部43にスプレッダーチョッパー11に設けられたピン59を嵌合させることで行われるが、この際作業者は、ボス部43の上方に配置されたテールランプアッシ52をスプレッダーチョッパー11との接触を回避する位置である上方に移動させるためサイドカバー47を開く。サイドカバー47を開くとテールランプアッシ52は、サイドカバー47の回動と共に、上方に向って旋回しながら回避位置へと移動する。そして、作業者は、扱室25を開放した状態(サイドカバー47の開いた状態)で取付け作業を行う。
【0022】
作業者は、スプレッダーチョッパー11を脱穀装置7側に回動させて、固定ピン60で脱穀装置7の後部に固定する。スプレッダーチョッパー11を脱穀装置7に連結固定した後、作業者は、回避位置に移動させていたテールランプアッシ52を元の位置に復帰(移動)させるためサイドカバー47を閉じる。テールランプアッシ52は、サイドカバー47を閉じるとサイドカバー47の回動と共に、上方の位置から下方に向って旋回しながら元の位置へと移動する。
【0023】
スプレッダーチョッパー11の連結後、作業者は、コンバイン1を圃場まで移動させて、作業開始位置から刈取り作業を開始する。刈取作業は、掻き込みリール13を回転させながら行われ、掻き込みリール13は、回転しながら穀稈を引き起こす。引き起された穀稈は刈刃で刈取られ、刈取られた穀稈は、プラットホームオーガ15から搬送フィーダ16に搬送された後、該搬送フィーダ16よって扱室25に搬送さる。扱室25に搬送された穀稈は、回転する扱胴26の扱歯27によって籾等が扱ぎ落され、扱ぎ落された籾等は揺動選別体37に落下する。
【0024】
揺動選別体37に落下した籾などの穀粒は、揺動選別体37による揺動選別及び唐箕ファン30等による風選別による選別によって、一番物と二番物とにそれぞれ選別される。ここで一番物とは、選別処理された穀粒であり、二番物とは、選別不十分でワラ屑や穂切れ粒などの夾雑物と穀粒とが混合した混合物である。一番物は、一番ラセン40から一番揚穀装置(不図示)に搬送された後、該一番揚穀装置によってグレンタンク9まで搬送され、二番物は、二番ラセン41から二番還元装置(不図示)に搬送された後、該二番還元装置によって二番還元ラセン(不図示)に搬送される。二番還元ラセンに搬送された二番物は、再選別を行うため、二番還元ラセンによって再び扱室25に還元される。
【0025】
脱穀装置7で脱穀処理された排稈等は、排塵口(不図示)からスプレッダーチョッパー11に搬送され、搬送された排稈等は、回転するロータリ細断爪55によって細かく細断されて排出口から圃場へと排出される。
【0026】
スプレッダーチョッパー11を脱穀装置7から取り外す際も、取付ける時と同様にサイドカバー47を開けて、テールランプアッシ52をスプレッダーチョッパー11との接触を回避する位置に移動させた後、スプレッダーチョッパー11の取外し作業を行い、作業終了後、サイドカバー47を閉じてテールランプアッシ52を元の位置へと移動させる。
【0027】
上述のように、スプレッダーチョッパー11をコンバイン1の脱穀装置7の後部に着脱する際に、ボス部43の上方に配置されたテールランプアッシ52を、更に上方の位置であるスプレッダーチョッパー11との接触を回避する位置に移動可能に設けたので、スプレッダーチョッパー11をテールランプアッシ52に接触させることなく、容易に脱穀装置7の後部に着脱することができ、容易にスプレッダーチョッパー11のメンテナンス及びその交換を行うことができる。また、テールランプアッシ52を適正な位置に配置することもできる。
【0028】
また、テールランプアッシ52が取付けられる取付けカバー53をサイドカバー47の端部と一体に形成したので、テールランプアッシ52をスプレッダーチョッパー11との接触を回避する位置に容易に移動することができて、スプレッダーチョッパー11の取付け、取り外し作業を迅速に行うことができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、テールランプアッシ52が取付けられる取付カバー53をサイドカバー47の端部に一体に形成する構成としたが、これに限らず、例えばテールランプアッシ52が取付けられた取付カバー53を扱室25の後部を覆うリヤカバー46と一体に形成し、リヤカバーを開閉自在に設けることでテールランプアッシ52をスプレッダーチョッパー11との接触を回避する位置に移動可能に設ける構成であってもよい。
【0030】
また、テールランプアッシ52が取付けられた取付カバー53をサイドカバー47の端部に一体に形成する構成としたが、これに限らず、例えばテールランプアッシ52自体を直接サイドカバー47の端部と一体に形成する構成であってもよい。
【0031】
また、後部方向指示器ユニット(テールランプアッシ)は、後部方向指示器50と尾灯51とのユニットからなるが、これに限らず、例えば後部方向指示器50のみの構成であってよい。
【符号の説明】
【0032】
1 コンバイン
5 前処理部
7 脱穀装置
11 後処理装置(スプレッダーチョッパー)
43 回動支持部(ボス部)
47 サイドカバー
50 後部方向指示器
52 後部方向指示器ユニット(テールランプアッシ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈取る前処理部と、該前処理部で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置と、該脱穀装置で脱穀された排稈を後処理する後処理装置と、機体の後方に配置される後部方向指示器と、を備えるコンバインにおいて、
前記後処理装置は、その一端部を前記脱穀装置の後方側端に設けられた回動支持部で軸支されると共に、前記脱穀装置の後部に着脱自在に連結され、
前記回動支持部の上方に配置される一方の前記後部方向指示器は、前記回動支持部の上方の位置から、前記後処理装置を着脱する際の前記後処理装置との接触を回避する位置に移動可能に設けられてなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記一方の後部方向指示器は、前記脱穀装置の側方を覆う開閉自在なサイドカバーに設けられた、
請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−81378(P2013−81378A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221399(P2011−221399)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】