説明

コンバイン

【課題】コンバインにおける刈取作業の能率を向上させる。
【解決手段】右端の第1掻込輪体(53a)と刈取支持フレーム(25)に設けた第1駆動スプロケット(58)を連動する第1株元搬送チェン(59)を設け、左端の第7掻込輪体(53g)と引起伝動筒(57a)に設けた第3駆動スプロケット(63)を連動する第4株元搬送チェン(64)を設け、第1株元搬送チェン(59)の搬送終端部と第4株元搬送チェン(64)の搬送終端部の間に穀稈合流部(65)を形成し、右端から3番目の第3掻込輪体(53c)に連動した第2株元搬送チェン(60)の搬送終端部を第1株元搬送チェン(59)の搬送方向での中間部に合流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、商品化されている自脱型コンバインは、一行程で6条の植立穀稈を刈り取る6条刈の刈取装置を備えたものが最大とされている。
しかしながら、近年、刈取作業の更なる高能率化を目的として、7条刈または8条刈まで刈幅を拡大した営農業者向けのコンバインの商品化が要望されている。
【0003】
このようなコンバインとして、例えば特許文献1に記載された8条刈の刈取装置を備えたコンバインがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−44991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された刈取装置のように、偶数の条列を刈り取る刈取装置の場合には、その刈幅の中心位置を、コンバインの機体側から設けた刈取支持フレームの先端に支持させることで、刈取装置の左右方向の重量バランスを適正に維持することが可能である。
【0006】
しかしながら、前記の刈取支持フレームは操縦部の左側に設けられており、この刈取支持フレームの先端に8条もの広幅の刈取装置の中心位置を支持した場合、機体の左外側に刈取装置の左側端部が大きく突出してしまう。
【0007】
このため、機体の右側に設けられる操縦部から、刈取装置の左側端部が監視しにくくなり、刈取作業における条合わせ(刈取装置の最も左側の分草体と植立穀稈の条列との位置合わせ)を容易に行なうことができず、刈取作業の能率が低下する問題がある。
【0008】
そして、このように刈幅が機体幅から外側へ大きく突出すると、コンバインをトラックの荷台に積載できなくなり、トラックでの輸送が不可能となってしまう。このため、圃場間を自走によって移動するしかなくなり、圃場間移動に時間を要して作業能率が低下してしまう問題が生じる。また、走行中に、刈取装置が障害物に衝突して破損する恐れがある。
【0009】
また、通常、刈取装置の各分草フレームの間に夫々形成される穀稈導入経路には、該穀稈導入経路ごとに1つの掻込輪体を必要とする。このため、刈幅を拡大するほどこの掻込輪体が増え、各掻込輪体を駆動するための伝動機構が複雑化し、この伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなって刈取作業の能率が低下する問題が生じる。
【0010】
また、通常の刈取作業では、コンバインを、圃場の四辺を左方向に回るように刈取走行させる。このため、刈取装置の右側端部が機体幅から外側へ大きく突出していると、最も右側の分草フレームが畦に衝突して破損や変形を来たし易くなる不具合が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するために、以下の技術的手段を講じる。
請求項1記載の発明は、走行装置(1)を備えた機台(2)の左側の部位に脱穀装置(3)を設け、機台(2)の右側の部位には穀粒貯留装置(4)を設け、該穀粒貯留装置(4)の前側に操縦部(5)を設け、該操縦部(5)と前記脱穀装置(3)の前側に刈取装置(6)を配置し、前記操縦部(5)は、機台(2)の右側前部に搭載されたエンジン(15)を覆うエンジンカバー(16)の上部に操縦席(17)を備え、該操縦席(17)の前方にはモニター用のメータパネル(21)を有する前部操作台(18)を設けた構成とし、前記刈取装置(6)を支持する刈取支持フレーム(25)の先端部に、左右方向を向く下部伝動ケース(38)を連結し、該下部伝動ケース(38)の前側に、前後方向を向く8本の分草フレーム(43)を左右方向に夫々間隔をおいて配置し、該各分草フレーム(43)の間に7つの穀稈導入経路(44)を夫々形成し、該各穀稈導入経路(44)ごとに単一の掻込輪体(53)を設け、該7つの掻込輪体(53)のうちの右端に位置する第1掻込輪体(53a)と刈取支持フレーム(25)に設けた第1駆動スプロケット(58)を連動する第1株元搬送チェン(59)を設け、前記7つの掻込輪体(53)のうちの左端に位置する第7掻込輪体(53g)と下部伝動ケース(38)から立ち上がる引起伝動筒(57a)に設けた第3駆動スプロケット(63)を連動する第4株元搬送チェン(64)を設け、該第1株元搬送チェン(59)の搬送終端部と第4株元搬送チェン(64)の搬送終端部の間に穀稈合流部(65)を形成し、前記7つの掻込輪体(53)のうちの右端から3番目に位置する第3掻込輪体(53c)に連動した第2株元搬送チェン(60)の搬送終端部を前記第1株元搬送チェン(59)の搬送方向での中間部に合流させたコンバインとしたものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記第2株元搬送チェン(60)と第4株元搬送チェン(64)との間に、前後方向に沿う巻回域を有した第3株元搬送チェン(62)を設けた請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記7つの掻込輪体(53)のうちの右端から5番目に位置する第5掻込輪体(53e)と刈取支持フレーム(25)の先端部近傍に設けた第2駆動スプロケット(61)を第3株元搬送チェン(62)で連動した請求項1または請求項2記載のコンバインとしたものである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記第1掻込輪体(53a)と該第1掻込輪体(53a)の左側に隣接する第2掻込輪体(53b)を噛み合わせて連動して回転する構成とし、前記第2掻込輪体(53b)の左側に間隔をおいて配置した第3掻込輪体(53c)と該第3掻込輪体(53c)の左側に隣接する第4掻込輪体(53d)と該第4掻込輪体(53d)の左側に隣接する第5掻込輪体(53e)を夫々噛み合わせて連動して回転する構成とし、前記第5掻込輪体(53e)の左側に間隔をおいて配置した第6掻込輪体(53f)と該第6掻込輪体(53f)の左側に隣接する第7掻込輪体(53g)を噛み合わせて連動して回転する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバインとしたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によると、7つの穀稈導入経路(44)ごとに設けた7つの掻込輪体(53)のうちの右端に位置する第1掻込輪体(53a)と刈取支持フレーム(25)に設けた第1駆動スプロケット(58)を連動する第1株元搬送チェン(59)を設け、左端に位置する第7掻込輪体(53g)と下部伝動ケース(38)から立ち上がる引起伝動筒(57a)に設けた第3駆動スプロケット(63)を連動する第4株元搬送チェン(64)を設け、これら第1株元搬送チェン(59)の搬送終端部と第4株元搬送チェン(64)の搬送終端部の間に穀稈合流部(65)を形成し、右端から3番目に位置する第3掻込輪体(53c)に連動した第2株元搬送チェン(60)の搬送終端部を第1株元搬送チェン(59)の搬送方向での中間部に合流させることで、7つの掻込輪体とこれに続く各株元搬送チェンの伝動機構を簡素化できる。これによって、これら掻込輪体の伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなりにくくなり、コンバインの刈取作業の能率を向上させることができる。
【0016】
また、刈取支持フレーム(25)の先端部に、左右方向を向く下部伝動ケース(38)の左右方向での中心位置よりも左側に偏倚した部位を連結すれば、刈取装置(6)の左側端部がコンバインの機体から左外側へ大きく突出しにくくなる。これによって、コンバインの機台(2)の右側前部に設けられる操縦部(5)から、刈取装置(6)の左側端部が監視しやすくなり、刈取作業における条合わせを容易に行なえ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、第2株元搬送チェン(60)と第4株元搬送チェン(64)との間に、前後方向に沿う巻回域を有した第3株元搬送チェン(62)を設けることで、刈取作業の能率を向上させることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果に加え、右端から5番目に位置する第5掻込輪体(53e)と刈取支持フレーム(25)の先端部近傍に設けた第2駆動スプロケット(61)を第3株元搬送チェン(62)で連動することで、掻込輪体とこれに続く各株元搬送チェンの伝動機構を簡素化でき、これら掻込輪体の伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなりにくくなり、刈取作業の能率を更に向上させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によると、上記請求項1または請求項2または請求項3記載の発明の効果に加え、第1掻込輪体(53a)とこの第1掻込輪体(53a)の左側に隣接する第2掻込輪体(53b)を噛み合わせて連動して回転する構成とし、第2掻込輪体(53b)の左側に間隔をおいて配置した第3掻込輪体(53c)とこの第3掻込輪体(53c)の左側に隣接する第4掻込輪体(53d)とこの第4掻込輪体(53d)の左側に隣接する第5掻込輪体(53e)を夫々噛み合わせて連動して回転する構成とし、第5掻込輪体(53e)の左側に間隔をおいて配置した第6掻込輪体(53f)とこの第6掻込輪体(53f)の左側に隣接する第7掻込輪体(53g)を噛み合わせて連動して回転する構成とすることで、7つの掻込輪体を駆動するための伝動機構を簡素化できる。これによって、この掻込輪体の伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなりにくくなり、刈取作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの左側面図である。
【図3】刈取装置のフレーム構造を示す説明用平面図である。
【図4】刈取装置の株元搬送装置を示す説明用平面図である。
【図5】図4の一部の拡大図である。
【図6】図4の一部の拡大図である。
【図7】第1掻込輪体周辺の構造を示す右側面図である。
【図8】第3掻込輪体周辺の構造を示す右側面図である。
【図9】第6掻込輪体周辺の構造を示す左側面図である。
【図10】刈取装置の穂先および株元の搬送装置を示す説明用平面図である。
【図11】刈取装置の伝動構成を展開して示す断面図である。
【図12】刈取支持フレーム部分の伝動構成を展開して示す断面図である。
【図13】刈取装置の主要伝動部の説明用側面図である。
【図14】刈取装置の伝動機構図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明を実施するコンバインの構成について説明する。尚、以下の記述における「左側」および「右側」とは、コンバインの前進方向に沿う方向を基準とするものであり、操縦部に搭乗した操縦者の視点に立って表現している。
【0022】
図1、図2に示すように、コンバインの機体は、走行装置1を備えた機台2の左側の部位に脱穀装置3を搭載し、機台2の右側の部位には穀粒貯留装置4を搭載し、この穀粒貯留装置4の前側に操縦部5を設け、この操縦部5と脱穀装置3の前側に刈取装置6を設けて構成する。
【0023】
前記走行装置1は、機台2の前部に取り付けたミッションケース7から駆動される左右の駆動輪8,8と、左右の転輪フレーム9に軸受された多数の転輪10aにわたってクローラ10,10を巻き掛けて構成する。
【0024】
前記機台2は、角パイプを平面視で矩形状に枠組みして構成する。
前記脱穀装置3は、扱胴や処理胴を備えた上側の扱室と、揺動選別棚と唐箕と1番移送螺旋と2番移送螺旋を備えた下側の選別室とから構成する。前記扱室の左外側には、後述する刈取装置6側の引継搬送装置の終端部から刈取穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン28を備える。尚、この脱穀装置3の後部には、脱穀後の排藁を細かく切断して排出する排藁カッター11を設ける。
【0025】
前記穀粒貯留装置4は、箱型に形成され、底部に排出螺旋を備えた容器である。前記脱穀装置3の1番移送螺旋によって回収された穀粒を、1番揚穀筒12を介して該穀粒貯留装置4に投入して貯留する。また、この穀粒貯留装置4の後側には、縦軸中心に旋回自在の揚穀筒13を設け、この揚穀筒13の上端部に排出筒14の基部を上下回動自在に接続する。尚、上記1番揚穀筒12と揚穀筒13と排出筒14には、移送用の螺旋を夫々内装している。
【0026】
前記操縦部5は、機台2の右側前部に搭載したエンジン15を覆うエンジンカバー16の上部に、操縦者が着座する操縦席17を取り付け、この操縦席17の前方に前部操作台18を設け、操縦席17の左側には側部操作台19を設けて構成する。前記操縦席17と前部操作台18の前後間隔部の右側から、操縦者が乗り降りする構成としている。尚、前記前部操作台18の上部には、右側から左側へ向かって、操舵レバー20と、モニターを備えたメータパネル21と、スイッチパネル22を設ける。また、前記側部操作台19の上部には、前側から後側へ向かって、副変速レバー23と、主変速レバー24と、刈取クラッチレバーと、脱穀クラッチレバーを設ける。(刈取クラッチレバーと脱穀クラッチレバーは図示省略している。)前記操舵レバー20は、左右方向へ倒すことで左右の駆動輪8,8の回転速度に差を生じさせて機体を旋回させるように連繋している。また、操舵レバー20を前後方向へ倒すことで、油圧シリンダ(図示省略)を伸縮させて刈取装置6を昇降させるように連繋している。
【0027】
しかして、前記刈取装置6のフレーム構造および伝動構造について説明する。
図3、図12、図14に示すように、内部に伝動軸(第1伝動軸)25aを備えた刈取支持フレーム25の基部に、刈取入力軸26を内部に備える入力伝動筒27の右側端部を直交状態に連結する。前記刈取入力軸26の左側端部に入力プーリ26aを取り付け、エンジン15によって駆動される油圧式無段変速装置(図示省略)の変速回転動力が、前記フィードチェン28の前部右側に配置した補助フィードチェン29の入力プーリ(図示省略)と、前記入力プーリ26aに分岐して入力される構成とする。
【0028】
更に、前記刈取入力軸26の左右方向中間部には、ベベルギヤ伝動機構31を介して引継搬送装置駆動軸32を連動させる。該引継搬送装置駆動軸32には、その上端部に穂先搬送チェン駆動スプロケット33を取り付け、その中間部には株元搬送チェン駆動スプロケット34を取り付ける。該穂先搬送チェン駆動スプロケット33によって、図2に示すラグ付きチェン式の穂先引継搬送装置35を駆動し、株元搬送チェン駆動スプロケット34によって、図2に示すチェン式の株元引継搬送装置36を駆動する構成とする。尚、前記株元引継搬送装置36の前側には扱ぎ深さを調節する供給搬送装置66を備え、これら穂先引継搬送装置35と供給搬送装置66と株元引継搬送装置36を、引継搬送装置67と総称する。
【0029】
また、図12に示すように、前記刈取支持フレーム25の内部に設けた伝動軸25aの基端部を、ベベルギヤ伝動機構26bを介して刈取入力軸26の右側の部位に連動させる。そして、前記伝動軸25aの軸芯方向中間部からベベルギヤ伝動機構25bを介して連動される中間出力軸25cを前側上方へ突出させて設け、この中間出力軸25cの基部からベベルギヤ伝動機構25dを介して連動される出力軸25eを設ける。そして、この出力軸25eの先端部からベベルギヤ伝動機構25fを介して、先端部に駆動スプロケット25gを備えた出力軸25hを連動する構成とする。駆動スプロケット25gには、供給搬送装置66の株元搬送チェン66aを巻き掛ける。また、前記中間出力軸25cの先端部には、後述する第1駆動スプロケット58を取り付ける。
【0030】
そして、図3に示すように、前記入力伝動筒27を、操縦部5よりも左側の機台2の前部に設けた支持台37に回動自在に軸受けし、前記刈取入力軸26の軸芯を中心として、刈取支持フレーム25の先端部側が上下に回動自在となる構成とする。
【0031】
そして、刈取支持フレーム25を前側下方へ延出させ、この刈取支持フレーム25の先端部に、左右方向に長く形成した下部伝動ケース38を連結する。この下部伝動ケース38における刈取支持フレーム25の連結位置は、該下部伝動ケース38の左右方向での中心位置よりも左側に偏倚した位置とする。
【0032】
これによって、刈取装置6の左側端部がコンバインの機体から左外側へ大きく突出しにくくなり、機台2の右側に設けられる操縦部5から、刈取装置6の左側端部(後述する左側端部の分草体45)が監視しやすくなり、刈取作業における条合わせを容易に行なえ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0033】
また、図12に示すように、刈取支持フレーム25の先端部近傍の部位に、伝動軸25aからベベルギヤ伝動機構25iを介して連動される伝動軸(第2伝動軸)25jを前側上方へ突出させて設ける。そして、この伝動軸25jの先端部からユニバーサルジョイント25kを介して出力軸25Lを連動する構成とし、この出力軸25Lの先端部に、後述する第2駆動スプロケット61を取り付ける。このように、ユニバーサルジョイント25kを介在させることによって出力軸25Lの傾斜姿勢を変更自在とし、この出力軸25Lを刈取装置6のできるだけ前方の部位に配置しながら、この出力軸25Lに取り付けられた第2駆動スプロケット61の姿勢を、該第2駆動スプロケット61に巻き掛ける第3株元搬送チェン62の軌跡に合わせて設定することができる。
【0034】
図11、図14に示すように、前記下部伝動ケース38の内部に下部伝動軸38aを設け、該下部伝動軸38aの中間部に固定したベベルギヤ38bを、前記伝動軸25aの先端部に取り付けたベベルギヤ25mに噛み合わせる。そして、この下部伝動軸38aの左右両端部から、左右のベベルギヤ伝動機構38c,38cを介して左右の刈刃駆動クランク軸50,50を連動する構成とする。この左右の刈刃駆動クランク軸50,50は、下部伝動ケース38の左右両端部に設けたカバー39で覆う。尚、前記下部伝動ケース38は、左右方向において4つに分割形成したアルミダイキャスト製のケースを、ボルト締結によって一体化したものである。
【0035】
また、図3に示すように、前記下部伝動ケース38の右側端部近傍の部位と、操縦部5の前側に位置する機台2側の部位を、屈伸して伸縮するリンク40で連結する。該リンク40は、後側リンクアーム40aと前側リンクアーム40bからなり、後側リンクアーム40aの後端部を機台2側の部位に左右方向の軸芯回りに回動自在に軸着し、前側リンクアーム40bの前端部を下部伝動ケース38の右側端部近傍の部位に左右方向の軸芯回りに回動自在に軸着し、この後側リンクアーム40aの前端部と前側リンクアーム40bの後端部とを左右方向の軸芯回りに回動自在に軸着する。
【0036】
これによって、刈取支持フレーム25とリンク40で刈取装置6の左右方向の姿勢を保持でき、刈取装置6の左右での穀稈の切断位置が揃い、刈り取った穀稈の長さが略均一となって脱穀装置3での扱ぎ残しを生じにくくなり、刈取脱穀作業の能率および精度を向上させることができる。
【0037】
そして、図3に示すように、前記下部伝動ケース38の前側に、間隔をおいて左右方向の分草支持パイプ41を配置し、この分草支持パイプ41の左右両端部から後方へ延設した連結フレーム42,42の後端部を、前記下部伝動ケース38の左右両端部に夫々連結する。これによって、下部伝動ケース38と分草支持パイプ41と左右の連結フレーム42,42が枠組みされる。
【0038】
そして、前記分草支持パイプ41の左右両端部と中間部とに、前後方向を向いた8本の分草フレーム43の後端部を連結する。この際、この8本の分草フレーム43の間には、植立穀稈の植付間隔(約300mm)に応じた所定の間隔を設けるが、最も右側の分草フレーム43Rと、これに隣接する右端から2本目の分草フレーム43の間隔が最も大きくなるように設定する。
【0039】
また、この分草フレーム43の配置により、最も右側の分草フレーム43Rは、右側のクローラ10の右側端部よりも175mmだけ右外側方へ突出し、最も左側の分草フレーム43Lは、左側のクローラ10の左側端部よりも345mmだけ左外側方へ突出する。
【0040】
以上の分草フレーム43の配置により、8本の各分草フレーム43の間に7つの穀稈導入経路44が形成される。尚、各分草フレーム43の前端部には、機体正面視で逆三角形状の分草体45を夫々取り付ける。
【0041】
そして、前記分草支持パイプ41の直前の位置に、バリカン式の刈刃装置46を取り付ける。この刈刃装置46は、7条分の広幅に形成した下刃47の上側に、3条分の幅に形成した右側の上刃48と、この右側の上刃48よりも広幅に形成した左側の上刃49を設けた構成とする。各上刃48,49は、前記左右の刈刃駆動クランク軸50,50から、左右の揺動リンク機構51,51を介して左右方向に往復摺動する構成とする。
【0042】
次に、図4に、刈取装置の株元搬送装置の配置を示す。
前記8本の分草フレーム43の間に形成された7つの穀稈導入経路44には、各導入経路44ごとに単一のラグ式の引起装置52と掻込輪体53を夫々設ける。この7つの掻込輪体53は、植立穀稈の株元側に作用して、この穀稈を後方へ掻き込む作用を有し、また、互いに噛み合うことによって回転運動を伝動する機能を有する。また、各掻込輪体53の上側には、ラグ式の掻込ベルトを備えたラグ式掻込装置56を夫々備えている。
【0043】
この7つの掻込輪体53のうち、最も右側の第1掻込輪体53aと、この第1掻込輪体53aの左側に隣接する第2掻込輪体53bを連動して回転するように噛み合わせる。そして、第2掻込輪体53bの左側に間隔をおいて配置した第3掻込輪体53cと、この第3掻込輪体53cの左側に隣接する第4掻込輪体53dと、この第4掻込輪体53dの左側に隣接する第5掻込輪体53eを連動して回転するように夫々噛み合わせる。また、前記第5掻込輪体53eの左側に間隔をおいて配置した第6掻込輪体53fと、この第6掻込輪体53fの左側に隣接する最も左側の第7掻込輪体53gを連動して回転するように噛み合わせる。
【0044】
これによって、7つの掻込輪体53を駆動するための伝動機構を簡素化でき、この掻込輪体53の伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなりにくくなり、刈取作業の能率を向上させることができる。
【0045】
また、前記7つの掻込輪体53は、分草フレーム43の前後方向中間部に取り付けた掻込輪体支持フレーム54で支持する。
即ち、図5、図7に示すように、下部伝動ケース38の右側端部と、最も右側の第1引起装置52aの上部を、支持フレーム55で連結し、この支持フレーム55の上下方向中間部に、第1掻込輪体支持フレーム54aの後端部を連結する。そして、この第1掻込輪体支持フレーム54aの前部を前方外側へ屈曲させて延出させ、該第1掻込輪体支持フレーム54aの前端部を、最も右側の分草フレーム43の前後方向中間部に連結する。そして、この第1掻込輪体支持フレーム54aの前後方向中間部に第1掻込輪体53aを縦軸中心に回転自在に軸受けして支持する。
【0046】
これによって、最も右側の分草フレーム43が補強され、この分草フレーム43が畦などに衝突しても破損や変形を来たしにくくすることができる。
また、図5に示すように、前記第2掻込輪体53bは、右端から3本目の分草フレーム43の後部に取り付けた掻込輪体支持フレーム54bで支持する。
【0047】
また、図8に示すように、前記第3掻込輪体53cと第4掻込輪体53dは、右端から4本目の分草フレーム43の中間部から後上方へ立ち上げた掻込輪体支持フレーム54cで一体に支持する。
【0048】
また、図9に示すように、第5掻込輪体53eと第6掻込輪体53fは、右端から6本目の分草フレーム43の中間部から後方へ立ち上げ、右側から5つめ又は6つめの引起装置52の上部へ連結した掻込輪体支持フレーム54dで一体に支持する。
【0049】
また、図4及び図6に示すように、下部伝動ケース38の左端部から立ち上げて設けた引起伝動軸57を内部に設ける引起伝動筒57aの上下方向中間部に、掻込輪体支持フレーム57bを取り付け、この掻込輪体支持フレーム57bに第7掻込輪体53gを支持する。
【0050】
即ち、前記引起伝動軸57の下端部を、ベベルギヤ伝動機構57dを介して下部伝動軸38aに連動させ、この引起伝動軸57の上端部からベベルギヤ伝動機構75aと引起変速装置75bを介して、各引起装置52の上部に左右方向に配置した横伝動軸75の左側端部に伝動する構成とする。そして、この横伝動軸75から、ベベルギヤ伝動機構75cを介して吊り下げ伝動軸76へ伝動し、この吊り下げ伝動軸76からベベルギヤ伝動機構76aを介して各引起装置52の駆動スプロケット52sを備えた入力軸52tへ駆動力が入力される構成とする。但し、右側から2つめの引起装置52と、右側から3つめ及び4つめの引起装置52,52と、右側から5つめ及び6つめの引起装置52,52は、夫々、吊り下げ伝動軸76からベベルギヤ伝動機構76aと中間伝動軸76bを介して入力軸52tへ伝動する構成とする。尚、前記中間伝動軸76bの中間部には、ベベルギヤ伝動機構76cを介して、穂先搬送装置駆動用の駆動スプロケット76dを備えた入力軸76eを連動する構成とする。尚、前記横伝動軸75を内装する上部横伝動筒75pの左右方向中間部と、前記入力伝動筒27の間を、前後方向の補強フレーム27aで連結する。
【0051】
そして、前記第1掻込輪体53aと刈取支持フレーム25の長手方向での中間部に設けた第1駆動スプロケット58を第1株元搬送チェン59で連動する。即ち、図5、図7に示すように、第1掻込輪体53aと同軸で一体回転するように設けたスプロケット68aと、第1掻込輪体支持フレーム54aの基部に軸受した上下2段のスプロケットを有するカウンタスプロケット69の下側のスプロケット69aと、テンションローラ70に亘って、前側第1株元搬送チェン59Fを巻き掛ける。そして、前記カウンタスプロケット69の上側のスプロケット69bと刈取支持フレーム25の長手方向での中間部に設けた第1駆動スプロケット58に亘って、後側第1株元搬送チェン59Rを巻き掛ける。第1駆動スプロケット58は、刈取支持フレーム25内の伝動軸から連動して駆動される。これによって、第1駆動スプロケット58の駆動により、後側第1株元搬送チェン59Rと、前側第1株元搬送チェン59Fと、第1掻込輪体53aと、最も右側のラグ式掻込装置56が連動して駆動される。更に、第1掻込輪体53aに噛み合う第2掻込輪体53bと左から2番目のラグ式掻込装置56も連動して駆動される。尚、前記後側第1株元搬送チェン59Rの後側には、この後側第1株元搬送チェン59Rを前方へ押してチェンの移動軌跡を窪ませるローラ71を設ける。これによって、後側第1株元搬送チェン59Rと操縦部5との干渉を防止する。
【0052】
また、前記第3掻込輪体53cと同軸で一体回転するように設けたスプロケット68bと、後側に配置した遊動スプロケット72に亘って第2株元搬送チェン60を巻き掛ける。
【0053】
そして、前記第5掻込輪体53eと同軸で一体回転するように設けたスプロケット68cと、刈取支持フレーム25の先端部近傍に設けた第2駆動スプロケット61に亘って第3株元搬送チェン62を巻き掛ける。第2駆動スプロケット61は、刈取支持フレーム25内の伝動軸から連動して駆動される。この構成により、第2駆動スプロケット61が駆動されると、第3株元搬送チェン62と、第5掻込輪体53eが駆動され、この第5掻込輪体53eに噛み合う第4掻込輪体53dと、この第4掻込輪体53dに噛み合う第3掻込輪体53cと、第2株元搬送チェン60が連動して駆動される。各掻込輪体の上側の3つのラグ式掻込装置56も、各掻込輪体の回転によって連動して駆動される。
【0054】
また、図11、図13に示すように、前記引起伝動筒57aの上下方向中間部に、刈幅の内側へ向けて伝動ケース57cを取り付ける。そして、引起伝動軸57の上下方向中間部からベベルギヤ伝動機構63aを介して伝動ケース57c内の中間伝動軸63bに伝動し、この中間伝動軸63bからベベルギヤ伝動機構63cを介して、第3駆動スプロケット63を備えた出力軸63dを駆動する構成とする。尚、この出力軸63dには、後述する第4中段穂先搬送装置74fを駆動する駆動スプロケット74fsと第4穂先搬送装置74gを駆動する駆動スプロケット74gsを取り付ける。
【0055】
そして、前記第7掻込輪体53gと同軸で一体回転するように設けたスプロケット63dと、第3駆動スプロケット63と、後端部の従動ローラ73に亘って、第4株元搬送チェン64を巻き掛ける。この構成により、第3駆動スプロケット63が駆動されると、第4株元搬送チェン64と第7掻込輪体53gが駆動され、この第7掻込輪体53gに噛み合う第6掻込輪体53fが連動して駆動される。各掻込輪体の上側の3つのラグ式掻込装置56も、各掻込輪体の回転によって連動して駆動される。
【0056】
また、図4に示すように、前記第2株元搬送チェン60の搬送終端部と第3株元搬送チェン62の搬送終端部は、第1株元搬送チェン59の搬送方向での中間部と後部とに夫々合流する配置とする。また、第1株元搬送チェン59の搬送終端部と第4株元搬送チェン64の搬送終端部の間には、穀稈合流部65を形成し、該穀稈合流部65から後方の引継搬送装置67へ刈取穀稈を引き継ぐ構成とする。
【0057】
これによって、7つの掻込輪体53a,53b,53c,53d,53e,53f,53gと、これに続く各株元搬送チェン59,60,62,64の伝動機構を簡素化できる。これによって、これら掻込輪体の伝動機構が刈取穀稈の搬送の妨げとなりにくくなり、刈取作業の能率を更に向上させることができる。
【0058】
尚、図10に示すように、前記第1株元搬送チェン59の上側には、後側第1株元搬送チェン59Rに沿う第1中段穂先搬送装置74aを配置し、この第1中段穂先搬送装置74aの前部上側には、第1上段穂先搬送装置74bを配置する。尚、図10の実施例では、第1中段穂先搬送装置74aのラグの突出方向と第1上段穂先搬送装置74bのラグの突出する方向を同じ方向に設定しているが、第1上段穂先搬送装置74bを第1中段穂先搬送装置74aと平面視で対向する側に設置し、この第1中段穂先搬送装置74aのラグの突出方向と第1上段穂先搬送装置74bのラグの突出する方向を対向させて配置してもよい。
【0059】
また、前記第2株元搬送チェン60の搬送終端部の上方には、第2穂先搬送装置74cを配置する。
また、前記第3株元搬送チェン62の搬送終端部上方には、第3中段穂先搬送装置74dと、該第3中段穂先搬送装置74dの上側の第3上段穂先搬送装置74eを配置する。
【0060】
更に、前記第4株元搬送チェン64の上側には、該第4株元搬送チェン64の搬送方向に沿って、第4中段穂先搬送装置74fと、該第4中段穂先搬送装置74fの上側の第4穂先搬送装置74gを配置する。
【符号の説明】
【0061】
1 走行装置
2 機台
3 脱穀装置
4 穀粒貯留装置
5 操縦部
6 刈取装置
15 エンジン
16 エンジンカバー
17 操縦席
18 前部操作台
21 メータパネル
25 刈取支持フレーム
38 下部伝動ケース
43 分草フレーム
44 穀稈導入経路
53 掻込輪体
53a 第1掻込輪体
53b 第2掻込輪体
53c 第3掻込輪体
53d 第4掻込輪体
53e 第5掻込輪体
53f 第6掻込輪体
53g 第7掻込輪体
57a 引起伝動筒
58 第1駆動スプロケット
59 第1株元搬送チェン
60 第2株元搬送チェン
61 第2駆動スプロケット
62 第3株元搬送チェン
63 第3駆動スプロケット
64 第4株元搬送チェン
65 穀稈合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)を備えた機台(2)の左側の部位に脱穀装置(3)を設け、機台(2)の右側の部位には穀粒貯留装置(4)を設け、該穀粒貯留装置(4)の前側に操縦部(5)を設け、該操縦部(5)と前記脱穀装置(3)の前側に刈取装置(6)を配置し、前記操縦部(5)は、機台(2)の右側前部に搭載されたエンジン(15)を覆うエンジンカバー(16)の上部に操縦席(17)を備え、該操縦席(17)の前方にはモニター用のメータパネル(21)を有する前部操作台(18)を設けた構成とし、前記刈取装置(6)を支持する刈取支持フレーム(25)の先端部に、左右方向を向く下部伝動ケース(38)を連結し、該下部伝動ケース(38)の前側に、前後方向を向く8本の分草フレーム(43)を左右方向に夫々間隔をおいて配置し、該各分草フレーム(43)の間に7つの穀稈導入経路(44)を夫々形成し、該各穀稈導入経路(44)ごとに単一の掻込輪体(53)を設け、該7つの掻込輪体(53)のうちの右端に位置する第1掻込輪体(53a)と刈取支持フレーム(25)に設けた第1駆動スプロケット(58)を連動する第1株元搬送チェン(59)を設け、前記7つの掻込輪体(53)のうちの左端に位置する第7掻込輪体(53g)と下部伝動ケース(38)から立ち上がる引起伝動筒(57a)に設けた第3駆動スプロケット(63)を連動する第4株元搬送チェン(64)を設け、該第1株元搬送チェン(59)の搬送終端部と第4株元搬送チェン(64)の搬送終端部の間に穀稈合流部(65)を形成し、前記7つの掻込輪体(53)のうちの右端から3番目に位置する第3掻込輪体(53c)に連動した第2株元搬送チェン(60)の搬送終端部を前記第1株元搬送チェン(59)の搬送方向での中間部に合流させたコンバイン。
【請求項2】
前記第2株元搬送チェン(60)と第4株元搬送チェン(64)との間に、前後方向に沿う巻回域を有した第3株元搬送チェン(62)を設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記7つの掻込輪体(53)のうちの右端から5番目に位置する第5掻込輪体(53e)と刈取支持フレーム(25)の先端部近傍に設けた第2駆動スプロケット(61)を第3株元搬送チェン(62)で連動した請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第1掻込輪体(53a)と該第1掻込輪体(53a)の左側に隣接する第2掻込輪体(53b)を噛み合わせて連動して回転する構成とし、前記第2掻込輪体(53b)の左側に間隔をおいて配置した第3掻込輪体(53c)と該第3掻込輪体(53c)の左側に隣接する第4掻込輪体(53d)と該第4掻込輪体(53d)の左側に隣接する第5掻込輪体(53e)を夫々噛み合わせて連動して回転する構成とし、前記第5掻込輪体(53e)の左側に間隔をおいて配置した第6掻込輪体(53f)と該第6掻込輪体(53f)の左側に隣接する第7掻込輪体(53g)を噛み合わせて連動して回転する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−99362(P2013−99362A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−34632(P2013−34632)
【出願日】平成25年2月25日(2013.2.25)
【分割の表示】特願2011−235096(P2011−235096)の分割
【原出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】