説明

コンピュータ周辺機器

【課題】 ESDやEFT/Bによって発生するノイズに起因してリセットが発生した場合に、リセット前の状態に復帰することが可能なコンピュータ周辺機器を提供する。
【解決手段】 本発明のコンピュータ周辺機器20は、USBポート3を有するホストコンピュータ10とUSBインターフェースであるケーブル4を介して接続される。このコンピュータ周辺機器20では、所定のバックアップ情報を保存し、前記コンピュータ周辺機器20にリセット状態が生じた場合に、前記バックアップ情報に基づいて前記リセット状態からリセット前状態に復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばUSBインターフェースを用いてホストコンピュータコンピュータに接続される周辺機器に係り、特にESDやEFT/Bによって発生するノイズなどに起因してリセットが発生した場合に、リセット前の状態に復帰することが可能なコンピュータ周辺機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のUSB(Universal Serial Bus)対応のコンピュータ周辺機器とホストコンピュータ(コンピュータ本体)とが、USBインターフェースで接続された状態を示すブロック図である。USBインターフェースであるケーブル104を介してホストコンピュータに接続される前記コンピュータ周辺機器としては、キーボード、マウス、プリンタ、スピーカ、ゲームコントローラなど様々な機器が挙げられるが、図6では、このコンピュータ周辺機器としてキーボード120がホストコンピュータ110に接続されているものを例にして図示している。
【0003】
図6に示すケーブル104は、図示しない一対のデータライン(D+ライン,D−ライン)と電源ライン(Vcc)とグランドライン(G)との4本のラインにより構成されている。
【0004】
図6に示すように、前記キーボード120は、ROM121およびRAM122を有するUSBマイコン123と、このUSBマイコン123に接続されたキーマトリックス124およびLEDインジケータ125を有して構成されている。前記キーマトリクス124は、各種キーが所定の位置に配列されたものである。また、前記LEDインジケータ125は、前記キーボード120の作動状態を示すものであり、点灯あるいは消灯することによって、所定の作動状態にある、あるいはないことを表示するものである。
【0005】
図7は、前記キーボード120と前記ホストコンピュータ110との動作フローを示す動作フロー図である。図7に示すように、まず前記ホストコンピュータ110の電源を投入し、あるいは前記ホストコンピュータ110に前記キーボード110を接続(デバイス接続)する(図7に示すステップ101)。
【0006】
すると、前記ホストコンピュータ110が、電源を投入され、あるいは前記キーボード120と接続されると、ホストコンピュータ110が前記キーボード120に対して初期化処理が行なわれて前記キーボード120がリセット(デバイスリセット)され、前記キーボード120に設けられた前記LEDインジケータ125が消灯する(図7に示すステップ102)。
【0007】
次に、前記ホストコンピュータ110と前記キーボード120との間で、デバイス認識処理が行なわれた後(図7に示すステップ103)、前記ホストコンピュータ110から前記LEDインジケータ125の点灯を行なう旨の命令が前記キーボード120に送信されると、この命令によって前記キーボード120の前記LEDインジケータ125が点灯する(図7に示すステップ104)。
【0008】
ホストコンピュータと、周辺機器との接続に着目した技術思想は、以下に示す特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2000−56909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記ホストコンピュータ110と前記キーボード120との間でUSB通信が行なわれている際に、前記ホストコンピュータ110と前記キーボード120との接続部に静電放電(Erectro Static Discharge:ESD)を受けたり、あるいは繰り返しの早い電気的妨害が高速で過度に与えられることによって(Erectrical Fast Transient/Burst:EFT/B)、いわゆるノイズを受けると、前記ホストコンピュータ110と前記キーボード120との間での通信障害が発生し(図7に示すステップ105)、その復旧の際に、デバイスの初期化とデバイス認識処理が正しく行なわれない場合がある。(図7に示すステップ106および107)。その結果、ホストコンピュータ110から前記LEDインジケータ125の点灯命令が来ない(図7に示すステップ108)こととなるため、前記LEDインジケータ125は消灯状態となる。
【0010】
このように、キーボード120がESDやEFT/Bによってノイズを受けたときに、前記キーボード120の前記LEDインジケータが消灯してしまうが、前記ホストコンピュータ110は、前記LEDインジケータ125を消灯させたという認識はなく、前記LEDインジケータ125が点灯状態であるとの認識を維持するため、前記ホストコンピュータ110が認識する前記LEDインジケータ125の作動状態とLEDインジケータ125の表示状態との非整合が生じてしまう。
【0011】
このような、前記LEDインジケータ125の作動状態とLEDインジケータ125の表示状態との非整合の例としては、例えば、前記ホストコンピュータ110はCapsキーがロックONの状態と認識しているにも拘らず、Capsキーの状態を示す前記LEDインジケータ125は、CapsキーがロックOFF状態を表示しているような場合は、前記キーボード120の使用者が「a」のキーを押したときに、「A」が入力されてしまうこととなる。
【0012】
このように、前記キーボード120に設けられた前記LEDインジケータ125の表示状態が、前記ホストコンピュータ110が認識している前記LEDインジケータ125の作動状態と異なっていると、前記キーボード120の使用者は、前記LEDインジケータ125の点灯状態を見て入力操作を行なっているにも拘らず、前記LEDインジケータ125の点灯状態とは違う作動状態の下で入力を行なってしまい、適切なキーボード120の使用ができなくなる。
【0013】
前記したような、前記LEDインジケータ125の作動状態とLEDインジケータ125の表示状態との非整合が生じた場合、前記ホストコンピュータ110の電源をOFFにして、改めて電源をONにしたり、または前記キーボード120と前記ホストコンピュータ110との接続を切断した後に再度接続を行なったり、あるいは対象となる前記LEDインジケータ125の点灯状態を変化させるキーを2回以上押し下げ開放する等の必要があった。
【0014】
このようなESDやEFT/Bに起因するノイズに起因する前記キーボード120の誤動作や破損を抑制するための手段としては、前記キーボード120の回路に大きな対策を施すか、あるいは前記キーボード120の接続部分や回路部分を覆うようにシールドなどの物理的障壁を設けて、ノイズが前記キーボード120に入り込まないようにする必要が生じる。
【0015】
しかし、前記キーボード120の回路構造に大きな対策を施したり、あるいは物理的障壁を施すと、前記キーボード120の量産性を向上させることが困難になる。
【0016】
また、前記特許文献1に開示された発明には、キーボード120にESDやEFT/Bに基づくノイズの影響を受けたときに、前記影響を除去して前記キーボード120の誤動作を防止するための手段は何ら開示されていない。
【0017】
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、特にESDやEFT/Bによって発生するノイズに起因してリセットが発生した場合に、リセット前の状態に復帰することが可能なコンピュータ周辺機器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、USBポートを有するホストコンピュータとUSBインターフェースを介して接続されるコンピュータ周辺機器において、所定のバックアップ情報を保存し、前記コンピュータ周辺機器にリセット状態が生じた場合に、前記バックアップ情報に基づいて前記リセット状態から復帰することを特徴とするものである。
【0019】
本発明のコンピュータ周辺機器では、所定のバックアップ情報を保存してバックアップ情報を有しているため、前記コンピュータ周辺機器に対して、静電放電(Erectro Static Discharge:ESD)を受けたり、あるいは繰り返しの早い電気的妨害が高速で過度に与えられる(Erectrical Fast Transient/Burst:EFT/B)などの、いわゆるノイズが与えられて前記コンピュータ周辺機器にリセット状態が生じても、前記バックアップ情報に基づき、再度リセット前の状態に復帰させることが可能である。
【0020】
また、前記ホストコンピュータとの間で通信を行なっている際、前記ホストコンピュータから第1のコマンドを受信したときに、前記バックアップ情報に基づいてリセット状態から復帰するものとして構成することができる。
【0021】
この場合、前記所定のコマンドは、「Clear Feature Endpoint Haltコマンド」であるものとして構成することが好ましい。
【0022】
「Clear Feature Endpoint Halt」コマンドは、ステップ1で示した通常の電源のON/OFFでのリセット時には送信されず、
ノイズを受けた後の不完全なデバイス認識処理後に送信されるため、前記LEDインジケータバックアップ情報の更新を行なうことが可能となるのである。
【0023】
また、前記バックアップ情報が、前記ホストコンピュータから第2のコマンドを受信したときに更新されるものとして構成することができる。
【0024】
この場合、前記第2のコマンドは、「Set Reportコマンド」であるものとして構成することができる。
【0025】
また、前記コンピュータ周辺機器はキーボードであり、前記キーボードのLEDインジケータが消灯したときに、前記バックアップ情報に基づいて前記LEDインジケータが点灯するものとして構成することができる。
【0026】
この場合、前記第2のコマンドを受信したときに、前記LEDインジケータの点灯が前記バックアップ情報に基づいて更新されるものとして構成しても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明のコンピュータ周辺機器では、所定のバックアップ情報を保存してバックアップ情報を有しているため、前記コンピュータ周辺機器に対して、静電放電(Erectro Static Discharge:ESD)を受けたり、あるいは繰り返しの早い電気的妨害が高速で過度に与えられる(Erectrical Fast Transient/Burst:EFT/B)などの、いわゆるノイズが与えられて前記コンピュータ周辺機器にリセット状態が生じても、前記バックアップ情報に基づき、再度リセット前の状態に復帰させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明のUSB(Universal Serial Bus)対応のコンピュータ周辺機器とホストコンピュータ(コンピュータ本体)10とが、USBインターフェースで接続された状態を示す回路ブロック図である。
【0029】
USBインターフェースであるケーブル4を介して接続されるコンピュータ周辺機器としては、キーボード、マウス、プリンタ、スピーカ、ゲームコントローラなど様々な機器が挙げられるが、図1では前記コンピュータ周辺機器としてキーボード20を例にして説明する。
【0030】
USBケーブル4は、一対のデータライン(D+ライン,D−ライン)と電源ライン(Vcc)とグランドライン(G)との4本のラインにより構成されている。
【0031】
図1に示すように、ホストコンピュータ10側にはUSBポート3が設けられ、端末(コンピュータ周辺機器)であるキーボード20側にはUSBコントローラ31が設けられている。またUSBコントローラ31は、USB対応のケーブル4を用いてUSBポート3に接続される。
【0032】
USBポート3のデータラインには、それぞれプルダウン抵抗R1,R2の一端が接続されている。さらにプルダウン抵抗R1,R2の他端は、グランドラインG,Gにそれぞれ接続されている。前記キーボード20には、D−ラインにプルアップ抵抗R3の一端が接続され、他端は電源ライン(Vcc)に接続されている。これにより、前記キーボード20が前記ホストコンピュータ10に接続されていない場合には、図1のP点における電位は0ボルトである(ロー状態)。
【0033】
前記キーボード20が前記ホストコンピュータ10に接続されると、前記キーボード20と前記ホストコンピュータ10に、お互いのD−ライン,D+ライン、電源ラインVcc、グランドラインGがそれぞれ接続され、図1のP点で示す電位が、前記より上昇する(ハイ状態)。この電位の上昇を前記ホストコンピュータ10が認識することで、前記キーボード20が前記ホストコンピュータ10に接続されたと認識される。さらに前記キーボード20の接続を前記ホストコンピュータ10が認識すると、前記ホストコンピュータ10は前記キーボード20に対して一定時間毎に呼び出しをするポーリングが開始され、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との間で交互通信が行なわれる。このとき、前記ホストコンピュータ10側から呼び出し信号を受け取った場合には、前記キーボード20が操作されているかいないかに拘わらず、前記キーボード20は前記ホストコンピュータ10に対して前記呼び出しに対する信号が通知される。
【0034】
また、前記接続状態から前記ケーブル4を切り離して前記キーボード20が前記ホストコンピュータ10から取り外されると、P点はグランドラインGに接続されることで電位が0ボルトとなる。その結果、ホストコンピュータ10側では、電位の変化が検知されて前記キーボード20が取り外されたと認識される。
【0035】
上記のようにして、前記ホストコンピュータ10は、P点の電位がハイ状態であるかロー状態であるかを監視することにより、前記キーボード20の接続の有無を認識できる。
【0036】
図2は、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20とが接続された状態を示すさらに詳細なブロック図である。
【0037】
図2に示すように、前記キーボード20は、ROM21およびRAM22を有するUSBマイコン23と、このUSBマイコン23に接続されたキーマトリックス24およびLEDインジケータ25を有して構成されている。前記USBマイコン23は、図示していないが、前記USBコントローラ31を有して構成されている。前記RAM22が本発明の前記キーボード20の記憶部を構成する。前記USBコントローラ23が本発明の前記キーボード20の制御部を構成する。また、前記LEDインジケータ25が本発明の前記キーボード20の動作部を構成する。そして、前記USBケーブル4が前記USBマイコン23の前記USBコントローラ31に接続されるとともに、前記ホストコンピュータ10の前記USBポート3に接続されることによって、前記キーボード20と前記ホストコンピュータ10との接続がなされている。
【0038】
前記キーマトリクス24は、各種キーが所定の位置に配列され、それぞれのキーに対応したキースイッチが設けられている。前記LEDインジケータ25は、キーマトリクスに併設されて、前記キーボード20の作動状態を示すものであり、キーボード20の動作状態、またはホストコンピュータ10の動作状態に応じて、点灯しまたは消灯する。LEDインジケータ25は、複数設けられてそれぞれが前記動作状態を個別に表示する。
【0039】
図3は、前記キーボード20と前記ホストコンピュータ10との動作を示す動作フロー図である。
【0040】
図3に示すように、まず前記ホストコンピュータ10の電源を投入し、あるいは前記ホストコンピュータ10に前記キーボード20を接続(デバイス接続)する(図示ステップ1)。
【0041】
すると、前記ホストコンピュータ10は、電源を投入されたこと、あるいはいずれかの周辺機器が接続されたことを認識する。その後に、まず前記ホストコンピュータ110によって、前記キーボード20の初期化処理が行なわれて前記キーボード20がリセット(デバイスリセット)され、前記キーボード20に設けられた前記LEDインジケータ25が消灯する(図示ステップ2)。
【0042】
そして、ホストコンピュータ10が前記キーボード20に対して呼び出しを行ない、この呼び出しに対して前記キーボード20が応答することで、前記ホストコンピュータ10は、デバイスである前記キーボード20を認識するエニュマレーションが行なわれる(図示ステップ3)。
【0043】
次に、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との間での交互通信によってポーリングが開始される。ポーリングでの、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との間のエニュマレーションにより、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20とのUSB通信が繰り返され、キーマトリクス24の操作信号などは、一定の時間間隔でホストコンピュータ10に通知される。
【0044】
また、キーマトリクス24のキー操作によって、「Numキー」をロックする操作が行われたときや、「Caps Lockキー」が操作されたときなどのように、キー操作状態を表示する必要があるとき、あるいはホストコンピュータ10の動作状態、例えば前記ホストコンピュータ10がスタンバイ状態から復帰したときや、その他の動作状態を表示する必要があるときには、前記ホストコンピュータ10から前記LEDインジケータ25の点灯を行なう旨の命令が前記キーボード20に通信される。USBマイコン23が前記命令を受けると、USBマイコン23の制御動作に基づいて、所定のLEDインジケータ25が点灯する。(図示ステップ4)。
【0045】
図4は、図3に示すステップ1とステップ2とを、詳しく示す動作フロー図である。
図4に示すように、前記ホストコンピュータ10の電源を投入し、あるいは前記ホストコンピュータ10に前記キーボード20を接続(デバイス接続)すると(図示ステップ1−1)、USBバスリセット情報以外の情報について、前記LEDインジケータ25のバックアップ情報のクリアが行なわれる(図4に示すステップ2−1)。ここで、前記USBバスリセット情報を、前記ステップ2−1から除外するのは、前記LEDインジケータ25のバックアップ情報を図3に示すステップ8で使用する必要があるため、図3に示すステップ5で、前記LEDインジケータ25のバックアップ情報が消えてしまうことを防止するためである。
【0046】
次に、前記キーボード20が初期化処理され、前記キーボード20に設けられた前記LEDインジケータ25が消灯した(図4に示すステップ2−2)後、前記キーボード20は通常のメイン処理が行なわれる。
【0047】
図5も、図3に示すステップ4を詳しく説明する動作フロー図である。
図3に示すステップ4において、前記ホストコンピュータ10からの前記LEDインジケータ25の点灯命令である「Set Report」命令を前記キーボード20が受信すると(図示ステップ4−1)、前記キーボード20では、前記LEDインジケータ25のバックアップ情報が更新され(図示ステップ4−2)、この更新された前記バックアップ情報が前記RAM22内に保存される。また、このバックアップ情報により前記LEDインジケータ25の点灯の更新が行なわれる(図示ステップ4−3)。
【0048】
このような前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との間でUSB通信が行なわれているときに、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との接続部に静電放電(Erectro Static Discharge:ESD)を受けたり、あるいは繰り返しの早い電気的妨害が高速で過度に与えられる(Erectrical Fast Transient/Burst:EFT/B)などの、いわゆるノイズにより、前記ホストコンピュータ10と前記キーボード20との間での通信障害が発生し、デバイスの復旧時に不完全なエニュマレーション(図3に示すステップ6および7)が行なわれることが有りえる。
【0049】
ここで「通信障害」とは、前記キーボード20から前記ホストコンピュータ10へのデータパケットあるいはNAKパケットの送受信が、前記ノイズにより途絶え、前記ホストコンピュータ10が、前記キーボード20からのデータパケットあるいはNAKパケットのどちらか一方を、所定時間内に所定回数受信できなかったことを意味する。この所定時間および所定回数は、前記ホストコンピュータ10によって任意に設定される。
【0050】
キーボード20がESDやEFT/Bによってノイズを受けたときに、そして、前記ホストコンピュータ10から前記キーボード20のINパケットの送信に対し、前記キーボード20が前記ホストコンピュータ10に対してデータパケットあるいはNAKパケットの送信が行なわれなくなって、図3に示すステップ5の通信障害が発生したと判断する。
【0051】
すると、前記ホストコンピュータ10は前記キーボード20をリセットさせる旨の命令を前記キーボード20に対して行う。前記キーボード20はこの命令に基づいてリセットされて(デバイスリセット)、前記LEDインジケータ25が消灯する(図3に示すステップ6)。このように前記LEDインジケータ25が消灯した際、前記キーボード20と前記ホストコンピュータ10との間では、不完全ながらエニュマレーションが続行されてUSB通信が行なわれることがあるが、このとき、前記キーボード20の前記LEDインジケータ25は消灯しているにも拘らず、実際の前記キーボード20の作動状態は、前記LEDインジケータ25の点灯時と同じ作動状態を維持しているような誤動作が生じる場合がある。
【0052】
このような誤動作の場合には、前記ホストコンピュータ10での前記LEDインジケータ25の点灯状態の認識と前記LEDインジケータ25の表示とが異なり、キーボード20の作動状態とLEDインジケータ25の表示状態との非整合が生じてしまう。
【0053】
このように、前記キーボード20に設けられた前記LEDインジケータ25の表示状態が、実際の前記ホストコンピュータ10での前記LEDインジケータ25の点灯状態の認識と異なっていると、前記キーボード20の使用者は、実際のキーボード20の作動状態とは異なる状態のキーボード20に対して操作を行なってしまい、適切なキーボード20の使用ができなくなる。したがって、このような誤動作を解消し、適切な前記キーボード20の使用を確保する必要があるが、本実施の形態では、以下に述べるように、前記キーボード20の誤動作による前記LEDインジケータ25の消灯を復帰して点灯させることができる。
【0054】
すなわち、前記したように、前記ノイズによってUSBインターフェース通信障害が発生し、ホストコンピュータ10がUSB通信に異常があったと判断すると、前記ホストコンピュータ10は前記キーボード20をリセットさせる旨の命令を前記キーボード20に対して行い、この命令に基づいて前記キーボード20がリセットされて(リセット状態)前記LEDインジケータ25が消灯してしまう(図3に示すステップ6)。
【0055】
その後、前記ホストコンピュータ10は、デバイス認識処理中に前記キーボード20に対して「Clear Feature Endpoint Halt」というコマンドを送信し、前記キーボード20がこのコマンドを受信する(図3に示すステップ7)。このコマンドは、「Endpointの動作を停止する」という命令をクリアするためのコマンドである。
【0056】
このとき、本発明の前記キーボード20では、前記ホストコンピュータ10から送信された前記「Clear Feature Endpoint Halt」コマンドを受信したことを契機として、前記RAM22内に保存しておいた前記LEDインジケータ25のバックアップ情報を読み込み、このバックアップ情報に基づいて、前記ステップ5における前記LEDインジケータ25が消灯する直前の状態(リセット前状態)に復帰させ、前記LEDインジケータ25の点灯を行なう(図3に示すステップ8)。
【0057】
この「Clear Feature Endpoint Halt」コマンドは、ステップ1で示した通常の電源のON/OFFでのリセット時には送信されず、不完全な通信のときにのみ送信されるため、通常の電源のON/OFFでのリセット時には前記LEDインジケータ25のバックアップ情報の更新は行なわれず、前記不完全なエニュマレーションのときのみ前記LEDインジケータバックアップ情報の更新を行なうことが可能となる。
【0058】
もし仮に、前記LEDバックアップ情報を保存していない場合には、前記ノイズによって前記キーボード20の前記LEDインジケータ25が消灯してしまった場合、前記LEDインジケータ25が消灯した状態のままとなってしまうため、前記ホストコンピュータ10での前記LEDインジケータ25の認識とLEDインジケータ25の表示状態とが非整合のままとなり、適切なキーボード20の使用ができなくなってしまう。
【0059】
このように、前記LEDインジケータ25のバックアップ情報を有していない場合に、LEDインジケータ25の再点灯が行なわれない理由は、もともと前記LEDインジケータ256を点灯すべし旨の命令は前記ホストコンピュータ10から前記キーボード20に対して送信されるものであるが、前記ノイズによって一度前記LEDインジケータ25が消灯してしまうと、再度前記ホストコンピュータ10から前記キーボード20に対して前記LEDインジケータ25を点灯すべし旨の命令が送信されることがないため、前記キーボード20は前記LEDインジケータ25の消灯を維持した状態のままでいるしかないためである。
【0060】
これに対し、本発明では、前記キーボード20が「Set Reportコマンド」を受信したときに前記LEDインジケータ25の情報を前記RAM22内に保存する。そして、次に再度、前記キーボード20が「Set Reportコマンド」を受信したときに、前記RAMに保存しておいた前記LEDインジケータ25の情報を更新して前記RAM22内に保存する。このように、前記キーボード20が「Set Reportコマンド」を受信したことを契機として前記LEDインジケータ25の情報更新と保存を繰り返し、前記RAM22内に前記LEDインジケータ25の新しい情報を常に保存してバックアップ情報としておく。
【0061】
このように、前記RAM22内に前記LEDインジケータ25の情報を新たに更新しながら保存してバックアップ情報としておくと、前記キーボード20に対して前記ノイズが与えられて前記LEDインジケータ25が消灯したなどの誤動作が生じた場合であっても、異常なエニュマレーションの際には必ずホストコンピュータ10から送信される「Clear Feature Endpoint Halt」コマンドの受信を契機として、前記前記RAM22内に保存しておいた前記LEDインジケータ25のバックアップ情報に基づき、再度前記LEDインジケータ25を点灯させることが可能となる。
【0062】
以上の説明では、前記キーボード20の前記LEDインジケータ25が点灯した状態からノイズによって消灯した場合に、前記バックアップ情報に基づいて再度点灯するものを例示したが、本発明ではこれとは逆に、前記LEDインジケータ25が消灯した状態から点灯した場合に、バックアップ情報に基づいて再度消灯するものであっても良い。
【0063】
また、前記コンピュータ周辺機器としてキーボード20について、LEDインジケータ25を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲内であれば、その機器の種類や、バックアップ情報によって更新される情報が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のコンピュータ周辺機器の実施例であるキーボードと、このキーボードが接続されるホストコンピュータとの接続状態を示す回路ブロック図、
【図2】図1に示すホストコンピュータとキーボードとが接続された状態を示すブロック図、
【図3】図1に示すキーボードとホストコンピュータとの動作を示す動作フロー図、
【図4】図3に示すステップ1とステップ2とを詳しく示す動作フロー図、
【図5】図3に示すステップ4を詳しく説明する動作フロー図、
【図6】従来のUSB対応のコンピュータ周辺機器であるキーボードと、このコンピュータ周辺機器が接続されるホストコンピュータとが接続された状態を示すブロック図、
【図7】図6に示すキーボードとホストコンピュータとの動作フローを示す動作フロー図、
【符号の説明】
【0065】
3 USBポート
4 ケーブル
10 ホストコンピュータ
20 キーボード
21 ROM
22 RAM
23 USBマイコン
24 キーマトリックス
25 LEDインジケータ
31 USBコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBポートを有するホストコンピュータとUSBインターフェースを介して接続されるコンピュータ周辺機器において、
動作部と、前記動作部を制御する制御部と、記憶部と、ホストコンピュータのUSBポートと接続されるUSBコントローラとを有し、
前記制御部は、所定間隔で、前記動作部の動作状態を示すバックアップ情報を前記記憶部に保存する処理と、
ホストコンピュータから第1のコマンドを受信したときに、前記記憶部に保存されたバックアップ情報に基づいて前記動作部の動作状態を復元する処理を行うことを特徴とするコンピュータ周辺機器。
【請求項2】
ホストコンピュータから所定の間隔で第2のコマンドを受信したときに、前記バックアップ情報の記憶部での保存を更新する請求項1記載のコンピュータ周辺機器。
【請求項3】
ホストコンピュータとの間の通信の障害が発生したときに、ホストコンピュータから前記第1のコマンドを受信する請求項1または2記載のコンピュータ周辺機器。
【請求項4】
前記第1のコマンドは、「Clear Feature Endpoint Haltコマンド」である請求項1ないし3のいずれかに記載のコンピュータ周辺機器。
【請求項5】
前記第2のコマンドは、「Set Reportコマンド」である請求項2ないし4のいずれかに記載のコンピュータ周辺機器。
【請求項6】
前記コンピュータ周辺機器はキーボードであり、前記動作部が前記キーボードのLEDインジケータであり、前記LEDインジケータが点灯状態から消灯状態となったときに、前記ホストコンピュータから前記第1のコマンドを受信し、前記バックアップ情報に基づいて前記LEDインジケータが点灯状態に復元される請求項1ないし5のいずれかに記載のコンピュータ周辺機器。
【請求項7】
前記バックアップ情報が前記LEDインジケータの点灯情報であり、前記第2のコマンドを受信したときに、前記記憶部に保存された前記LEDインジケータの点灯情報が更新される請求項2ないし6のいずれかに記載のコンピュータ周辺機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−195778(P2006−195778A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7270(P2005−7270)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】