コンフォメーション的に変化したプリオンタンパク質を検出する固定化プローブおよび固定化方法
本発明は、プリオンタンパク質に対して特異的な固定化プローブを作製する方法、このようなプローブを試料からのプリオンタンパク質と結合させるため、それを検出するため、およびそれを除去するために用いる方法、ならびに本発明を実施するためのキットを提供する。本発明は、特定のあらかじめ決定された配置に固定され、典型的にはその活性および特異性を変化させると考えられる条件に曝露された場合でもその活性および特異性を保つ、固定化プローブを開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾病と関連性があるもののような、ミスフォールディングしたタンパク質の検出の分野に関する。より詳細には、本発明は、試料中のコンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンを検出するための方法、プローブおよびキットに関する。1つの態様において、コンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンは、アミロイド形成性疾患と関連性がある。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は, 2004年9月10日に提出された米国仮特許出願第60/608,541号および2005年1月7日に提出された米国特許出願第11/030,300号の出願日の恩典に依拠し、それを主張するものであり、それらの開示内容は全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
関連技術の考察
正常な可溶性を有するタンパク質のコンフォメーション的に変化した不溶性タンパク質への変換は、種々の疾患において原因となるプロセスであると考えられている。これらの疾患において、構造的なコンフォメーション変化は、典型的には、正常な可溶性を有する機能的タンパク質の規定された不溶性状態への変換を必要とする。このような不溶性タンパク質の例には、以下のものが含まれる:アルツハイマー病(AD)および脳アミロイドアンギオパチー(CAA)のアミロイド斑におけるAβ-ペプチド;パーキンソン病のレヴィ小体におけるα-シヌクレイン沈着、前頭側頭型痴呆およびピック病での神経原線維変化におけるタウ;筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ハンチントン病におけるハンチンチン;ならびにクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)におけるプリオン。総説に関しては、Glenner et al., J. Neurol. Sci. 94: 1-28, 1989;Haan et al., Clin. Neurol. Neurosurg. 92(4):305-310, 1990を参照されたい。
【0004】
しばしば、これらの高度に不溶性のタンパク質は、β-プリーツシート性コンフォメーションという共通の特徴を有する、非分枝性の細線維から構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、大脳および髄膜の血管内(脳血管沈着)ならびに脳実質中(斑)に存在しうる。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究により、アミロイド沈着の中枢側にある細胞では正常な機能が妨げられることが示されている(Mandybur, Acta Neuropathol. 78: 329-331, 1989;Kawai et al., Brain Res. 623: 142-146, 1993;Martin et al., Am. J. Pathol. 145: 1348-1381, 1994;Kalaria et al., Neuroreport 6: 477-80, 1995;Masliah et al., J. Neurosci. 16: 5795-5811, 1996)。他の研究により、アミロイド細線維が実際に神経変性を開始させることがさらに示されている(Lendon et al., J. Am. Med. Assoc. 277: 825-831, 1997;Yankner, Nat. Med. 2: 850-852, 1996;Selkoe, J. Biol. Chem. 271: 18295-18298, 1996;Hardy, Trends Neurosci. 20: 154-159, 1997)。
【0005】
ADおよびCAAの両者において、主なアミロイド成分はアミロイドβタンパク質(Aβ)である。Aβペプチドは、アミロイドβ前駆タンパク質(APP)から2種類のセクレターゼと推定されるものの作用によって生成され、正常なCNSおよび血液中に低レベルで存在する。主要な2つの変異体であるAβ1-40およびAβ1-42は、APPの選択的なカルボキシ末端切断によって生じる(Selkoe et al., PNAS USA 85: 7341-7345, 1988;Selkoe, Trends Neurosci. 16: 403-409, 1993)。ADおよびCAAのいずれのアミロイド沈着においても、この2種類のペプチドのうちAβ1-42の方が細線維形成性が高く、存在量も多い。上述したAD症例におけるアミロイド沈着に加えて、ほとんどのAD症例には、血管壁におけるアミロイド沈着も伴ってみられる(Hardy, 1997、前記;Haan et al., 1990、前記;Terry et al., 前記;Vinters H. V., Cerebral amyloid angiopathy, Stroke Mar-Apr;18(2):311-324, 1987;Itoh Y., et al. Subpial beta/A4 peptide deposits are closely associated with amyloid angiopathy in the elderly, Neurosci. Lett. 155(2):144-147, June 11, 1993;Yamada M., et al., Subarachnoid haemorrhage in the elderly: a necropsy study of the association with cerebral amyloid angiopathy, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 56(5):543-547, May, 1993;Greenberg S.M., et al., The clinical spectrum of cerebral amyloid angiopathy: presentations without lobar hemorrhage, Neurology 43(10):2073-2079, Oct. 1993)。これらの血管病変はCAAの顕著な特徴であり、ADが存在しなくても存在しうる。
【0006】
ヒトのトランスサイレチン(TTR)は、大部分がβ-シート構造である4つの同一な単位から構成される正常な血漿タンパク質であり、ホルモンであるチロキシンの輸送体として働く。TTRのアミロイド細線維としての異常自己集合は、2種類のヒト疾患、すなわち老年性全身性アミロイドーシス(SSA)および家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)の原因となる(Kelly, Curr. Opin. Struct. Biol. 6(1):11-17, 1996)。FAPにおけるアミロイド形成の原因は、TTR遺伝子における点変異である;SSAの原因は不明である。臨床診断は、生検材料におけるインサイチューのアミロイド沈着を検出することによって組織学的に確定される。
【0007】
現在に至るまで、インビボでのTTRのアミロイドへの変換の機序はほとんど解明されていない。しかし、いくつかの研究施設は、正常ヒトTTRの部分的変性により、アミロイド変換をインビトロでシミュレートしうることを示している(McCutchen et al., Biochemistry 32(45):12119-12127, 1993;McCutchen and Kelly, Biochem. Biophys. Res. Comm. 197(2):415-421, 1993)。コンフォメーション転換の機序には、多量体化して線状のβ-シート構造を有するアミロイド細線維となる単量体性のコンフォメーション中間体が含まれる(Lai et al., Biochemistry 35(20):6470-6482, 1996)。このプロセスは、チロキシンまたはトリヨードフェノールなどの安定化分子との結合によって緩和することができる(Miroy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(26):15051-15056, 1996)。
【0008】
神経斑(neuritic plaque)が形成される正確な機序、および斑形成と疾患に伴う神経変性プロセスとの関係は明確にされていない。アルツハイマー病およびプリオン病の患者の脳におけるアミロイド細線維は、ある種の細胞の炎症性活性化をもたらすことが知られている。例えば、初代ミログリア培養物およびTHP-1単球性細胞株は、細線維性β-アミロイドおよびプリオンペプチドによって刺激されて、同一のチロシンキナーゼ依存性炎症シグナル伝達カスケードを活性化する。β-アミロイドおよびプリオン細線維によって誘発されたシグナル伝達応答は神経毒性産物の産生を招き、それは神経変性の一因となる(Combs et al., J. Neurosci. 19: 928-939, 1999)。
【0009】
プリオンは、ヒトおよび動物における中枢神経系の海綿状脳症の原因となる感染性病原体である。プリオンは細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。プリオン前駆体の可能性があるものは、PrP 27-30と呼ばれるタンパク質であり、これは重合(凝集)して、感染した脳において斑として認められる棒状の線維となる28キロダルトンの疎水性糖タンパク質である。正常なタンパク質相同体は容易に分解される点でプリオンとは異なり、一方、プリオンはプロテアーゼに対して高度の抵抗性がある。示唆されている。プリオンは感染性の高い核酸を極めて少量含み、それは従来のアッセイ方法によっては検出されないことが示唆されている(Benjamin Lewin, "Genes IV", Oxford Univ. Press, New York, 1990, page 1080)。現在最も有力な仮説は、プリオンタンパク質の感染性には核酸成分は必要でないというものである。
【0010】
完全なプリオンタンパク質をコードする遺伝子はそれ以来、クローニングされ、シークエンシングがなされ、トランスジェニック動物で発現されている。正常な細胞性プリオンタンパク質であるPrPCは、単一コピーの宿主遺伝子によってコードされ、通常はニューロンの外表面に認められる。翻訳後プロセスの過程では、PrPScと呼ばれるタンパク質が正常な細胞性PrPアイソフォーム(PrPC)から形成されて、プリオン病が起こる。PrPScは、動物およびヒトの伝染性神経変性疾患の伝播および発生病理のいずれにも必要である。
【0011】
正常なプリオンタンパク質(PrPC)は、本明細書の図8に示されているように、α-ヘリックス性のらせん状ループ構造が大部分を占める細胞表面メタロ-糖タンパク質であり、通常は中枢神経系およびリンパ系で発現される。これは抗酸化物質として作用すると考えられており、細胞のホメオスタシスと関連すると考えられている。しかし、異常型のPrP、すなわちPrPScは、プロテアーゼに対する抵抗性のある配座異性体であり、本明細書の図9に示されているように、主としてβ-シートを含む二次構造を有する。二次構造におけるこのコンフォメーション変化は、プリオン病のプロセスにおける凝集および最終的な斑沈着につながると考えられている。
【0012】
プリオン関連疾患には、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、シカおよびヘラジカの慢性消耗病、ならびにウシのウシ海綿状脳症(B SE)が含まれる(Wilesmith and Wells, Microbiol. Immunol. 172: 21-38, 1991)。ヒトのプリオン病は4種類が同定されている:(1)クールー、(2)クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー病(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)(Gajdusek, D.C., Science 197:943-969, 1977;Medori et al. N. Engl. J. Med. 326: 444-449, 1992)。
【0013】
プリオン病は伝染性かつ潜伏性である。例えば、プリオン病に伴う長い潜伏期のため、医原性CJDの全貌は、死体を供給源とするヒト成長ホルモン(HGH)により全世界で治療を受けた数千人もの人々において数十年にわたって明らかにならなかったと考えられる。生物学的製剤中のプリオンを検出することの重要性は、新変異型クロイツフェルト-ヤコブ病(nvCJD)を発症したヒトにウシプリオンが伝染したという可能性により、強く示されている(Chazot et al., Lancet 347:1181, 1996;Will et al., Lancet 347: 921-925, 1996)。
【0014】
プリオンによって引き起こされる疾患は診断が困難である。このような疾患は潜伏性または無症状(異常プリオンは検出されるが症状は検出されない)である可能性がある。さらに、プリオン関連タンパク質の正常な相同体が非感染生物の脳に存在することから、検出はさらに困難になる(Ivan Roitt et al., "Immunology", Mosby-Year Book Europe Limited, 1993, page 15.1)。
【0015】
プリオンに関係する感染症の存在を検出するために用いられる現行の方法は、脳内の肉眼的な形態学的変化、および一般的には症状が顕在化した後になってはじめて適用される免疫化学的手法に依拠している。現行の検出方法の多くは、抗体を利用するアッセイであるか、またはアフィニティークロマトグラフィーに依拠している。それらは、死んだ動物からの脳組織を用いるか、または場合によっては、血液試料のキャピラリー免疫電気泳動を用いる。
【0016】
脳組織を利用するアッセイは検出の遅れにつながる恐れがあるほか、被験動物を屠殺する必要もある。プリオン判定検査はまた、動物を屠殺して液状の脳組織試料を入手し、ウエスタンブロット法を用いてそれを抗体にさらすことも必然的に伴う。結果は6〜7時間で得られるものの、この検査は脳内のPrPSc蓄積と臨床症状の発現との間の6カ月間の遅れ時間の説明とはならない。扁桃体生検試料の採取ならびに血液および脳脊髄試料の採取は、正確ではあるものの外科的介入を必要とする恐れがあり、結果を得るためには数週間を必要とする。エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)、核磁気共鳴法(NMR)、円偏光二色法(CD)およびその他の非増幅的構造手法は、大量の試料、および、典型的には試料の供給源からかなり距離を隔てて位置する高額な装置を必要とする。
【0017】
ADおよびCAAなどの前記の疾患と関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質の検出方法も、前述したプリオン検出法と同じように、しばしば死後組織試料の採取を必要とする点で不十分である。
【0018】
したがって、コンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンに関する、信頼性があって費用が手頃な検出方法に対しては需要が存在する。このような方法は、迅速な診断を得るため、および予防的または治療的な療法を容易にするために、当の対象が生きている間に適用可能であるべきである。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明は、種々の疾患と関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンの検出のための、信頼性があり、費用が手頃で、しかも安全な方法を提供する。本発明の方法は、迅速な診断を得るため、および予防的または治療的な療法を容易にするために適用することができる。意義深いこととして、本発明の方法は少量の試料を用い、このため、現在公知である診断手法よりも侵襲性が低く、適用がより容易である。さらに、本発明の方法は、生きている対象からの試料を分析するために用いることができ、死後に得られた試料には限定されない。加えて、それらは、感染性材料が検査中に伝播しないことが保証される様式で利用することができる。
【0020】
本発明は、伝染性海綿状脳症(TSE)などの特定の疾患プロセスと関連性がある、コンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンにおけるコンフォメーション変化を利用するために触媒的増殖(catalytic propagation)を用いることにより、先行技術の診断手法に伴う多くの問題を克服する。触媒的増殖は、以下のようにして、試料中に存在するコンフォメーション的に変化したタンパク質断片またはプリオンの数を増幅させ、検出可能な凝集体を生じさせるために用いることもできる。
【0021】
コンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンを含む試料と、本明細書で後に定義するコンフォメーションプローブとの相互作用が起こると、プローブがコンフォメーション変化を来たし、コンフォメーション的に変化したタンパク質(これは可溶性でも不溶性でもよい)またはプリオンのコンフォメーションをとってそれらと凝集する。その結果として生じる、β-シートを呈する凝集体は、標準的な分析手法を用いて容易に検出することができる。その結果として、本発明は、サイズの小さな試料の迅速かつ費用対効果の高い分析を容易にし、脳および血液を非限定的に含む、さまざまな源からの組織および体液に対して広く適用可能である。
【0022】
本発明は、少量の、疾患との関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、α-シヌクレイン、ロドプシン、クリスタリンおよびp53などの検出を可能にする。1つの好ましい態様において、本発明の方法は、試料中のプリオンを検出するために、本明細書の別の箇所に記載したようなパリンドローム性プローブ、例えば、PrPScタンパク質のアミノ酸配列126-104および109-126を含むパリンドローム性33-merプローブを用いる。1つの好ましい態様において、プローブは両端が、光学的に異なっていてプローブのβ-シート構造へのコンフォメーション変換に応じて検出可能となる部分(moiety)と結合している。
【0023】
1つの態様において、本発明は、試料中のコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンを検出するための方法であって、(a)試料を、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのコンフォメーション変換を来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブと反応させる段階;および(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと、それ故に試料の感染性と相関するような段階、を含む方法を提供する。複数の態様において、プローブは、ポリスチレンプレート、膜、セファロースまたはポリスチレンビーズなどの固体支持体上に固定化されている。
【0024】
本発明はまた、これらの方法を用いるキット、ならびに対象がコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを診断する方法も提供する。本発明のキットは、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのコンフォメーション変換を来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブを含みうる。キットがまた、プリオン病タンパク質と特異的に相互作用することができる、β-シート性コンフォメーションなどの特定のコンフォメーションを有する固定化プローブを含むこともできる。キットがさらに、プローブ末端と結合するかそれと結合した状態にあり、プローブの主としてβ-シート性のコンフォメーションへのコンフォメーション変換に応じて光学的に検出可能となる部分、ならびにキットを用いるための説明書、および試料を懸濁化または固定するための溶液を含んでもよい。
【0025】
対象がコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを診断する方法は、(a)対象から試料を入手する段階;(b)試料を、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)コンフォメーション変換、好ましくは主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのそれを来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブと反応させる段階;および(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンのレベルおよび試料の感染性のレベルと相関し、しかも対象がβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを示すような段階を含む。
【0026】
本発明はまた、試料からPrPScを減らす、または排除する方法も提供する。本方法は、主としてβ-シート性であるコンフォメーションを含む固定化プローブを用意する段階、固定化プローブを、PrPScを含むか含むことが疑われる試料と、固定化プローブが試料中のPrPScの少なくとも一部と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって接触させる段階、およびプローブ/PrPSc複合体を試料の残りから単離する段階を含む。複数の態様において、試料は、血液または血漿などの生物試料である。
【0027】
本発明の上記およびその他の局面を、以下の詳細な説明においてさらに述べる。
【0028】
発明の態様の詳細な説明
ここで、本発明のさまざまな例示的な態様についてさらに詳細に言及するが、そのいくつかのものの例は添付の図面に図示されている。
【0029】
本明細書で用いる場合、以下の用語はそれぞれ以下の意味を有する。
【0030】
「アミロイド形成性疾患」とは、アミロイド斑またはアミロイド沈着が体内に形成される疾患のことである。アミロイド形成は、糖尿病、AD、スクレイピー、GSS、BSE、CJD、慢性消耗病(CWD)および関連性のある伝染性海綿状脳症(TSE)といった数多くの疾患で認められる。
【0031】
TSEは、CJD、クールー、FFIおよびGSSのようなヒト疾患を含む、致死性神経変性疾患である。TSEの動物での形態には、ヒツジにおけるスクレイピー、シカおよびヘラジカにおけるCWD、ならびにウシにおけるBSEが含まれる。これらの疾患は、宿主によりコードされるプロテアーゼ感受性の正常プリオンタンパク質(PrP-sen)のプロテイナーゼK抵抗性の異常アイソフォーム(PrP-res)の脳内での形成および蓄積を特徴とする。PrP-resは、PrP-senをβ-シート含有量のより多いPrP-res分子凝集体に変換させるコンフォメーション変化を伴う翻訳後プロセスによってPrP-senから形成される。PrP-resのこれらの高分子凝集体の形成は、PrP-resのアミロイド沈着が脳内に形成され、それが最終的には「海綿状」となる(孔で満たされる)という、TSEにより媒介される脳病態と密接な関連がある。
【0032】
TSE疾患は、例えば、ニューギニアの森林族における儀式としての人肉食、またはBSEではウシによる動物の部分の摂食によるというように、特異な物質に対する曝露によって伝染するように思われる。医原性CJDも、死体下垂体に由来するヒト成長ホルモンの投与、移植された硬膜および角膜移植片、ならびに神経学的処置の際の外科医の罹患組織に対する曝露によって引き起こされる。
【0033】
未変性のプリオンタンパク質(PrP)の存在が、TSEの発生病理には必須であることが示されている。細胞タンパク質PrP-senは、ヒトでは第20番染色体上に位置する遺伝子によってコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は神経組織および非神経組織の両方によってコードされ、そのmRNAはニューロン内で最も高い濃度で認められる。PrP遺伝子の翻訳産物は、ヒトでは253アミノ酸、ハムスターおよびマウスでは254アミノ酸、ウシでは264アミノ酸、ヒツジでは256アミノ酸からなる(これらの配列はすべて、種特異的PrPを発現するトランスジェニックマウスの作出方法を記載している米国特許第5,565,186号に開示されている)。プリオンタンパク質と関連した脳症において、細胞性PrP-senは改変型PrP-resに変換される。PrP-resは、PrP-resが凝集すること(Caughey and Chesebro, Trends Cell Biol. 7: 56-62, 1997);プロテイナーゼKによる消化に対して少なくとも部分的には抵抗性であること(PrP-senが完全に分解される条件下でプロテイナーゼK消化によってN末端のほぼ67アミノ酸のみが除去される)(Prusiner et al., Sem. Virol. 7: 159-173, 1996);および、PrP-senと比較して、α-ヘリックス性構造がより少なくβ-シート構造がより多いこと(Pan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10962-10966, 1993)により、PrP-senと識別することができる。
【0034】
PrP-senがスクレイピーに感染した神経移植片のレシピエント動物の脳組織で発現されないならば、移植片の外側で病態が生じることはなく、このことはPrP-resおよびPrP-senの両方が病態に必要であることを示している(Brander et al., Nature 379: 339-343, 1996)。感染から疾患の出現までの潜伏期の長さ(種によるが数カ月から数十年)が契機となり、PrP-resがPrP-senのPrP-resへの変換を誘導するような無細胞インビトロ検査が開発されている(Kockisko et al., Nature 370: 471-474, 1994;May 9, 1997に公開されたPrusiner et al., WO 97/16728号も参照のこと)。これらのインビボおよびインビトロの観察所見は、PrP-resとPrP-senとの直接的な相互作用がPrP-resを形成し、TSE発生病理を促すことを示している。
【0035】
特定のPrP配列を含む低分子合成ペプチドは、自発的に凝集して、TSE罹患脳における不溶性沈着物中に認められる型のβ-シート二次構造を高度に有する細線維を形成することが示されている(Gasset et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10940-10944, 1992;Come et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5959-5963, 1993;Forloni et al., Nature 362: 543-546, 1993;Hope et al., Neurodegeneration 5: 1-11, 1996)。さらに、別の合成PrPペプチドが、PrP-sen分子と相互作用して、プロテアーゼ抵抗性が高まった凝集複合体を形成することが示されている(Kaneko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:11160-11164, 1995;Kaneko et al., J. Mol. Biol. 270: 574-586, 1997)。
【0036】
「コンフォメーション的に変化したタンパク質」には、疾患と関連性のある三次元コンフォメーションを有し、疾患と関連性のない時にそれがとる三次元コンフォメーションとは異なる、任意のタンパク質が含まれる。コンフォメーション的に変化したタンパク質は、疾患を引き起こしてもよく、疾患の症状における因子であってもよく、または他の因子の結果として試料中またはインビボで出現してもよい。この定義によれば、コンフォメーション的に変化したタンパク質は、一方は疾患と関連性があってもう一方はないという少なくとも2つのコンフォメーションを生じる、単一のアミノ酸配列を有しうる。コンフォメーション的に変化したタンパク質は、一般にβ-シート形成物を呈する不溶性タンパク質の形態にあり、本発明において分析される。
【0037】
以下は、コンフォメーション的に変化したタンパク質と関連性のある疾患の非限定的な一覧であり、その後には関連性のあるコンフォメーション的に変化したタンパク質が括弧内に記されている:アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1-アンチキモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、アポE);プリオン病、CJD、スクレイピーおよびBSE(PrPSc);ALS(SODおよびニューロフィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レヴィ小体におけるα-シヌクレイン);前頭側頭型痴呆(細線維におけるタウ);II型糖尿病(アミリン);多発性骨髄腫-形質細胞異形成(IgGL鎖);家族性アミロイド多発性ニューロパチー(トランスサイレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2-ミクログロブリン);うっ血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心および全身性アミロイドーシス(トランスサイレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ハンチントン病(ハンチンチン)。
【0038】
「不溶性タンパク質」には、アミロイド形成性疾患と関連性のある任意のタンパク質が含まれ、これには前記の段落で特定されたタンパク質の任意のものが非限定的に含まれる。不溶性タンパク質は一般に凝集体中ではβ-シート形成物を呈する。
【0039】
「PrPタンパク質」「PrP」などは本明細書中で互換的に用いられ、ヒトおよび動物において疾患(海綿状脳症)を引き起こす感染性粒子形態のPrPSc、ならびに該当する条件下で感染性PrPSc形態に変換される非感染性形態PrPCの両方を意味するものとする。
【0040】
「プリオン」「プリオンタンパク質」「PrPScタンパク質」などは、PrPタンパク質の感染性PrPSc形態を指すために本明細書中で互換的に用いられる。「プリオン」は、「タンパク質(protein)」および「感染(infection)」という単語を縮めたものである。粒子は、PrP遺伝子によってコードされるPrPSc分子が、独占的ではないにしても大部分を占める。プリオンは細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。公知のプリオンは動物を感染させ、ヒツジおよびヤギの神経系の伝染性変性疾患であるスクレイピー、ならびにBSE(または狂牛病)およびネコのネコ海綿状脳症を引き起こす。ヒトが罹患することが知られているプリオン病には、(1)クールー、(2)CJD、(3)GSSおよび(4)FFIの4つがある。本明細書で用いる場合、「プリオン」には、用いられる任意の動物、特にヒトおよび家畜において、これらまたは他の疾患のすべてまたはいずれかを引き起こす、あらゆる形態のプリオンが含まれる。
【0041】
「PrP遺伝子」という用語は、本明細書において、公知の多型および病的変異を含むタンパク質を発現する遺伝物質について述べるために用いられる。「PrP遺伝子」という用語は一般に、任意の形態のプリオンタンパク質をコードする任意の種の任意の遺伝子のことを指す。PrP遺伝子は任意の動物からのものでよく、その多型および変異のすべてが含まれ、この用語にはまだ発見されていない他のこのようなPrP遺伝子も含まれると認識されている。このような遺伝子によって発現されるタンパク質は、PrPC(非病的)形態またはPrPSc(病的)形態のいずれもとりうる。
【0042】
「ペプチド模倣物」とは、別の生物活性のあるペプチド分子の活性を模倣する生体分子のことである。
【0043】
「タンパク質」とは、ペプチド結合によって結合した2つまたはそれ以上の個別のアミノ酸(天然に存在するか否かにかかわらず)の任意の重合体のことを指し、これは、1つのアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα-炭素と結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のα-炭素と結合したアミノ基のアミノ窒素原子と共有結合した場合に生じる。これらのペプチド結合、およびそれを構成する原子(すなわち、α-炭素原子、カルボキシル炭素原子およびそれらの置換基酸素原子、ならびにアミノ窒素原子およびそれらの置換基水素原子)は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。簡単に言うと、ポリペプチド骨格は、タンパク質のアミノ窒素原子、α-炭素原子およびカルボキシル炭素原子を指すと解釈されるものとするが、これらの原子のうち2つまたはそれ以上(置換基原子の有無にかかわらず)を偽原子(pseudoatom)として表すこともできる。実際に、本明細書に記載する機能性部位の記述子(descriptor)中に用いることができるポリペプチド骨格の任意の表現が、「ポリペプチド骨格」という用語の意味の範囲に含まれることは理解されていると考えられる。
【0044】
「タンパク質」という用語が、その意味の範囲に「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語を含むことは理解されている(これらは時に本明細書中で互換的に用いうる)。さらに、多数のポリペプチド性サブユニット(例えば、DNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII)または他の成分(例えば、テロメラーゼ中に存在するようなRNA分子)を含むタンパク質も、本明細書で用いる場合、「タンパク質」の意味の範囲に含まれるものと解釈される。同様に、タンパク質およびポリペプチドの断片も本発明の範囲に含まれ、これらを本明細書中で「タンパク質」と呼ぶこともできる。
【0045】
「コンフォメーション」または「コンフォメーション制約条件」とは、特定のタンパク質コンフォメーション、例えば、α-ヘリックス、平行および逆平行β鎖、ロイシンジッパー、ジンクフィンガーなどの存在のことを指す。さらに、コンフォメーション制約条件には、そのほかの構造情報を伴わないアミノ酸配列情報が含まれうる。一例として、「--C--X--X--C--」は、2つのシステイン残基が、この特定の制約条件の文脈ではそれぞれの実体が無関係であるような他の2つのアミノ酸残基によって隔てられなければならないことを表すコンフォメーション制約条件である。「コンフォメーション変化」とは、1つのコンフォメーションから別のものへの変化のことである。
【0046】
タンパク質の配列が適切な折り畳みをコード化している厳密な機序は不明である。折り畳みによってコード化される自然なままの状態を実現するためには、タンパク質分子は、多くの選択肢から選択される特有のコンフォメーションに変換されなければならない。機能的タンパク質は典型的には可溶性であり、コイルおよび秩序立った要素を含む、さまざまな構造をとることができる。秩序立った要素には、ミオグロビンおよびヘモグロビンなどのタンパク質中で多くを占めるαヘリックスが含まれる。ヒトの加齢プロセスの過程で、いくつかのタンパク質では、可溶性構造(例えば、αヘリックス性領域)が、機能喪失を伴う凝集を来すβシート構造へとコンフォメーション的に変化する。
【0047】
コンフォメーション的に変化した状態をとった場合にヒト疾患と関連性のあるタンパク質は少なくとも20種あり、これらのいくつかについては前述されている。図1は、TSE配座異性体のα-ヘリックス性単量体型およびβ-シート二量体型の両方を図示している。正常な野生型(wt)のプリオンタンパク質(PrPC)は単量体状態を選好し、一方、異常な病原型(PrPSc)はより容易に多量体状態をとる。
【0048】
タンパク質の構造は、さまざまな実験的または計算論的方法によって決定することができ、以下にそのいくつかについて述べる。タンパク質の構造は、少なくとも低分解能の構造を生成しうる任意の方法によって実験的に決定することができる。このような方法には現在、X線結晶回折法および核磁気共鳴(NMR)分光法が含まれる。X線結晶回折法はタンパク質の構造評価のための方法の一つであり、結晶中の原子核を取り囲む電子雲による特徴的波長のX線照射の回折に基づく。X線結晶回折法では、その特定の生体分子を構成する原子を原子に近い分解能で決定するために、精製された生体分子の結晶を用いる(しかし、これらは高い頻度で溶媒成分、補助因子、基質またはその他のその他のリガンドを含む)。結晶成長のための手法は当技術分野で公知であり、典型的には生体分子ごとに異なる。自動化された結晶成長の手法も公知である。
【0049】
核磁気共鳴(NMR)は現在、生体分子の液体コンフォメーション(結晶構造ではなく)の決定が可能である。典型的には、この手法を適用しうるのは、低分子量の分子、例えば、約100〜150アミノ酸未満のタンパク質のみである。しかし、最近の進歩は、同位体標識などの手法を用いた大きなタンパク質の溶液構造の実験的解明につながっている。NMR分光法がX線結晶回折法を上回る利点は、構造が結晶格子中でなく、格子近傍での相互作用がタンパク質の構造を変化させる可能性のある溶液中で決定されることにある。NMR分光法の欠点は、NMR構造が結晶構造ほど詳細でも厳密でもないことにある。一般に、NMR分光法によって決定される生体分子構造は、結晶回折法によって決定されるものに比較して中程度の分解能である。
【0050】
生体分子構造を検討するのに有用なその他の手法には、円二色性(CD)、蛍光および紫外-可視吸収分光法が含まれる。これらの手法の説明については、例えば、Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, 2nd ed., W. H. Freeman & Co., New York, NY, 1982を参照されたい。
【0051】
「等価な」とは、分析しようとするタンパク質のアミノ酸配列と類似したアミノ酸配列を有するが、アミノ酸配列中に、例えば置換、付加または欠失などによる、少なくとも1つの、しかし5つ未満(例えば、3つまたはそれ未満)の差異を有するタンパク質のことを指す。したがって、タンパク質の基本的機能および特定の残基のその使用環境における位置を実質的に変化させない、所定の配列中の1つまたは複数のアミノ酸の置換は、本発明を説明する目的においては等価である。
【0052】
「相同性」「の相同体」「相同な」「同一性」または「類似性」とは、2つのポリペプチド間の配列類似性のことを指し、このうち同一性は相対的に厳密な比較である。相同性および同一性はそれぞれ、比較のためにアラインメントを行いうる各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列中の位置が同じアミノ酸によって占有されている場合には、それらの分子はその位置では同一である。アミノ酸配列の同一性の度合いは、それらのアミノ酸配列によって共有される位置での同一なアミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の度合いは、それらのアミノ酸配列によって共有される位置での、アミノ酸の、すなわち構造的に関連のあるものの数の関数である。「関連のない」または「非相同な」配列は、本発明に用いられる配列の1つと、40%またはそれ未満の同一性を有するが、好ましくは25%未満の同一性を有する。関連のある配列は、40%を上回る同一性、好ましくは少なくとも約50%の同一性、より好ましくは少なくとも約70%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも約90%の同一性、より好ましくは少なくとも約99%の同一性を有する。
【0053】
「同一なパーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間の配列同一性のことを指す。同一性は、比較のためにアラインメントが行われた各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される一方の配列中の等価な位置が、もう一方のものの同じ位置で同じアミノ酸によって占有されている場合には、それらの分子はその位置で同一である;等価な部位が同じまたは類似の(例えば、立体的および/または電気的性質が類似している)アミノ酸残基によって占有されている場合には、それらの分子はその位置で相同(類似性)であると呼ぶことができる。相同性、類似性または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較される配列によって共有される位置での同一または類似のアミノ酸の数の関数のことを指す。FASTA、BLASTまたはENTREZを含む、さまざまなアラインメント用アルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTは、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, WI)の一部として利用可能であり、例えばデフォールトの設定で用いることができる。ENTREZは、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, NIH、Bethesda, MD)を通じて利用可能である。1つの態様において、2つの配列の一致度(percent identity)は、例えば、2つの配列間に単一のアミノ酸ミスマッチがあると仮定してそれぞれのアミノ酸ギャップに重み付けを行う、ギャップウェイト1を用いて、GCGプログラムによって決定することができる。配列同一性を決定するためのその他の手法は当技術分野で周知であって記載されている。
【0054】
「相互作用する」という用語は、本明細書で用いる場合、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、タンパク質-低分子または核酸-低分子相互作用などの、分子間の検出可能な相互作用(例えば、生化学的相互作用)を含むものとする。
【0055】
「不溶性タンパク質の相同体」という用語は、不溶性タンパク質遺伝子の相同体によってコードされるすべてのアミノ酸配列、および、このような配列と等価または相同なすべてのアミノ酸配列を含む。したがって、「不溶性タンパク質の相同体」には、Pfamファミリーにおいてヒットとしてスコア化されるタンパク質が含まれる。タンパク質配列中の「不溶性タンパク質」ドメインの存在を同定するため、および関心対象のポリペプチドまたはタンパク質が特定のプロフィールを有するという判定を下すために、タンパク質のアミノ酸配列を、いくつかのデータベースのうち1つ(例えば、SwissProt、PIR)に対して、さまざまなデフォールトのパラメーターを用いて検索することができる(http://www.sangetr.ac.uk?Software/Pfam?HMM_search)。例えば、HM_MER検索プログラムパッケージの一部として利用可能なhmmsfプログラムは、MILPAT0063に関するファミリー特異的なデフォールトプログラムであり、スコア15がヒットの判定に関するデフォールトの閾値スコアである。または、ヒットを判定するための閾値スコアを下げること(例えば、8ヒットに)もできる。Pfamデータベースに関する記述は、Sonham et al., Proteins 28(3):405-420, 1997に見ることができ、HMMの詳細な記述は、例えば、Gribskov et al., Meth. Enzymol. 183: 146-159, 1990;Gribskov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 4355-4358,1987;Krogh et al., J. Mol. Biol. 234: 1501-1531, 1994;およびStultz et al., Protein Sci. 2: 305-314, 1993に見ることができ、これらの内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0056】
「被験標本」とは、検査しようとする材料の試料のことであり、「試料」と意味の点で等価であり、それ故に互換的に用いられる。試料は、組織(例えば、挽肉、生検処置によって得られたある量の組織、血液または血液画分、例えば血漿など)から、ガラス製ホモジナイザー中でのホモジネート化によって調製してもよく、得られたものを直接用いてもよい。試料の量は、本発明が用いられる用途に適した任意の量でありうる。例えば、血液または血液画分を用いるならば、それは約1μl、約100μ1、約1ml、約10ml、約100ml、約1リットル(もしくは1パイント)またはそれ以上でありうる。本発明のいくつかの用途においては、1リットル(または1パイント)を上回る量を含む、大量の血液または血液製剤を試料として用いることができる。固形組織が試料の源である場合には、試料は約1mg〜1gmの間、好ましくは10mg〜250mgの間、理想的には20mg〜100mgの間であるべきである。試料にしようとする材料を、適した溶媒中に、好ましくは、pHが7.0〜7.8の間のリン酸緩衝食塩水中に懸濁させてもよい。溶媒は、Triton X-100、SDSまたはサルコシルなどの界面活性剤を含んでもよい。ホモジネート化は、ホモジナイザーによる多数回の、好ましくは10〜25ストロークの間;理想的には15〜20ストロークの間の往復運動処理を通して行われる。懸濁化された試料を好ましくは100〜1,000gで5〜10分間にわたって遠心し、上清材料を分析のための試料として採取する。試料によっては、Safar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998によって記載され、Wadsworth et al., Lancet 358: 171-180, 2001によって改良されたような手順に従って、上清材料を、リンタングステン酸などの別の試薬で処理することが好ましいと考えられる。
【0057】
検査する試料の量は、Bradfordによる手順によって測定されるような、上清溶液のタンパク質含有量の決定に基づく。これはタンパク質0.5〜2mgに対応することが好ましい。
【0058】
組織材料に関して上述した手順のほかに、被験試料を、血清、動物由来の産物を含む可能性のある医薬製剤、髄液、唾液、尿またはその他の体液から得てもよい。液体試料を直接検査してもよく、または上記のようにリンタングステン酸などの薬剤による処理に供してもよい。
【0059】
「コンフォメーションプローブ」は、好ましくは、標的タンパク質中のもののいくつかと類似した、好ましくは同一なアミノ酸配列を有し、かつ標的タンパク質(不溶性タンパク質)と複合体を形成した場合にコンフォメーション変化を来してβ-シート形成物を生じさせる可能性も有するペプチドである。このような変化は、典型的には、そのプローブによって通常は明示されないβ-シート構造につながる。理想的には、プローブは、標的タンパク質に由来する2つのアミノ酸配列を備えたパリンドローム性構造を有する。本発明において有用な、好ましいα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブ(すなわち、溶液中でα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションを呈するプローブ)には、以下のものが含まれる:
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122と同一なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer
;
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122と等価なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer
;
PrPScタンパク質(SEQ ID N0:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer。
;
Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40と等価なアミノ酸配列を含むプローブ
;
Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸11〜34と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
金属イオン相互作用を低下させるため、およびペプチドの溶解度を高めるために残基H13がRによって置換されている点を除き、Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸11〜34と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸25〜35と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
ポリリジンで認められるヘリックス-ループ-ヘリックス性コンフォメーション、および長さが少なくとも10アミノ酸残基であって
に対して等価または相同なアミノ酸配列を有するプローブ;
ポリグルタミンで認められるコンフォメーション、および
に対して等価または相同なアミノ酸配列を有するプローブ;
野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸104〜122と相同なアミノ酸配列を含むプローブ
;
野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸104〜122と等価なアミノ酸配列を含むプローブ
;
野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122と相同なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
;
以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122と等価なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
;
以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
;
ヒト糖尿病と関連付けられているヒト膵島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション# NP_000406;ヒト)のアミノ酸1〜38と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
ヒト糖尿病と関連付けられているヒト膵島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション# NP_000406;ヒト)のアミノ酸1〜38に対応する配列内部の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
ヒト乳児SIDSと関連付けられているヒト肺サーファクタントタンパク質(NCBIアクセッション# AAH32785;ヒト)のアミノ酸1〜25と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
;
ヒトPrPScのアミノ酸104〜122またはネズミPrPScタンパク質のアミノ酸103〜121(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion PF00377 & 03991)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ;
ヒトプリオンタンパク質(アクセッションPO4156)
;
マウスプリオンタンパク質(アクセッションP04925)
;
ヒト血漿ゲルゾリン(P06396;Muary et al., FEBS Lett. 260(1):85-87, 1990)のアミノ酸235〜269(以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
;
以下に描写され、Levy et al., J. Exp. Med. 169(5):1771-1778, 1989によって報告されている、シスタチンCタンパク質配列(P01034)のアミロイド形成領域(アミノ酸26〜147;以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。適切なプローブは、少なくとも10アミノ酸であるその任意の部分である。数多くのプローブをそれに応じて配置することができる。
;
4単位のプロリンリンカーを伴う、上記の配列のアミノ酸39〜47から採られたシスタチンCタンパク質のパリンドローム性プローブ
;
以下に示されたハンチンチンタンパク質(ハンチントン病タンパク質)タンパク質配列の残基18〜40(以下では二重下線によって強調されている)からのオリゴグルタミンまたはポリグルタミンの10個から23個までの間の連続したグルタミン残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ:
;
例示的なプローブ:
;
以下に配列が示されている、原線維発生に関与するヒト膵島アミロイドポリペプチド(SEQ ID NO:21)NP_000406[gi: 4557655] Scrocchi et al., J. Struct. Biol. 141(3):218-227, 2003の、アミノ酸残基45〜50および48〜53(以下では強調されている)の少なくとも6個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
;
変更することなしに用いてもよく、または本発明のパリンドローム性プローブを形成するために用いてもよい、上記のSEQ ID NO:21のペプチド配列の配列45〜53の内部の最小配列である以下の複数の配列を含む例示的なプローブ:
;
トランスサイレチン(AAH20791[gi: 18089145];MacPhee and Dobson, J. Mol. Biol., 279(5):1203-1215, 2000)のペプチド断片のアミノ酸残基11〜19(以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
;
SEQ ID NO:26(アミノ酸残基11〜19)の上記の強調された配列を基にしたパリンドローム性プローブ:
。
【0060】
標準的な実験室手法およびペプチドに関連した化学合成を用いて、必要以上の実験を行うことなく、さまざまなその他のプローブを容易に作製することができる。
【0061】
プローブの未変性コンフォメーションは、例えばCD、フーリエ変換赤外、紫外、NMRまたは蛍光などの、1つまたは複数の分光法によって決定される。溶液中でのこのコンフォメーションは、以下に述べるように、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれに対応すべきである(例えば、CDでは、スペクトルの性質がコンフォメーションを示す)。
【0062】
プローブは、光学的手段によって検出可能な置換基を含むように改変される。このような置換基にはトリプトファン(アミノ酸の1つ)、ピレンまたは同様の発蛍光団が含まれ、これらはすべてペプチドプローブの末端位置またはその付近に結合される。このような発蛍光団の結合は、当技術分野で公知である従来の化学的方法に従って進行する。好ましくは、しかし必然的にではないが、結合は発蛍光団とプローブとの共有結合による。理想的には、置換基は、エキシマとして知られる種を生じるような様式で相互作用する能力を有する。エキシマは、特定の波長の光で励起されると、異なる波長の光を発し、それがいずれかの発蛍光団が単独で作用することによって発せられるそれとは大きさにも違いがあるような、2つの発蛍光団の相互作用のことを表す。したがって、このようなエキシマの形成を可能にするコンフォメーションプローブの構造変化は、光学特性の変化によって検出することができる。このような変化は、プローブと結合した発蛍光団に応じて、数多くの中から例を挙げるとUV、IR、CD、NMRまたは蛍光を含む、公知の蛍光測定法によって測定することができる。これらの変化の大きさは、プローブがコンフォメーション変化を来した度合いと関係している。
【0063】
もう1つの態様において、プローブに放射性材料による置換を施してもよい。理想的には、これは、この目的に現在用いられる機器によって検出されるのに十分なエネルギーを有するポジトロン放射であるべきである。このような実体は、酸素-15(ポジトロン放射によって崩壊する酸素の同位体の1つ)またはその他の放射性核種であることが好ましい。この態様においては、放射標識プローブを患者に注入し、プローブとタンパク質標的との結合を外部からモニターすることができる。
【0064】
プローブは、溶液中でランダムコイル性またはα-ヘリックス性コンフォメーションを呈する、少なくとも5個、好ましくは約10個またはそれ以上のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチド模倣物を含むことができる。ペプチドまたはペプチド模倣物プローブの溶媒は水性であってpHが約4〜約10の間、好ましくは約5〜約8の間であってよく、イオン強度は約0.05〜約0.5の間であってよい(典型的には塩化ナトリウムまたは塩化カリウムといった塩化物として調製された場合)。溶媒がまた、例えばトリフルオロエタノールを容積比で約30%〜約70%、好ましくは容積比で約45%〜約60%というように、水混和性の有機材料をあるパーセンテージで含んでもよい。溶媒を、酢酸塩/酢酸、Trisまたはリン酸塩などの適した緩衝系を用いて調製してもよい。
【0065】
プローブ用アミノ酸の配列は、分析しようとする標的タンパク質の性質から決定され、通常は、α-ヘリックスまたはコイルのいずれかからβ-シートへの構造転換を来すことが知られている標的のある領域を含む。この後者の構造は、標的タンパク質の病原型と関連している。コンフォメーションプローブ配列は、理想的には、好ましくは約10〜25アミノ酸長であり、より好ましくは約14〜20アミノ酸長である関心対象の標的配列を2回反復して含む。これらは、図10に図示されているように、パリンドロームを形成するようにプローブ中に配置されることが好ましい。
【0066】
本発明の方法およびキットに用いられる好ましいプローブは、分析しようとするタンパク質のβ-シート領域に対応するアミノ酸配列を有する。これらのプローブは、好ましくは少なくとも5アミノ酸単位長であり、約300〜400アミノ酸単位長(-mer)またはそれ以上でありうるが、好ましくはこれらは約10アミノ酸〜約50アミノ酸長である。本発明のいくつかの局面において、β-シート領域に対応する好ましいプローブは、約15アミノ酸長〜約100アミノ酸長である。また別の局面において、好ましいプローブは約20アミノ酸長〜約40アミノ酸長である。所定のプローブの好ましい長さは、標的タンパク質と複合体化してβ-シート形成物を生じさせるプローブの能力の関数であると考えられる。
【0067】
本発明に用いるためのプローブは、配列データベース中の既存の情報から容易に決定され、または代替的には、実験的にも容易に決定されうる。すなわち、プローブは一般に、α-ヘリックスまたはランダムコイルから不溶性タンパク質中のβ-シート形成物へのコンフォメーション転換を来しうる標的タンパク質のペプチドの少なくとも一部分に対応する、最小限の数のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは約10〜25個のアミノ酸に対応すると考えられる。
【0068】
適切なプローブの提示および合成の手引きになると考えられる実験的情報に含まれるものには、本発明を利用する際に実施者を手引きすることができるいくつかの拘束条件があることに留意すべきである。初期コンフォメーション状態にある集団と(複合体の形態にある)転換したコンフォメーション状態を主とする集団とを隔てる違いは数kcalに過ぎない。図7に描写されているように、1つのコンフォメーション状態から別のそれへの転換は、プローブ分子と、β-シート複合体を形成するその天然の会合相手との会合のKd、または分子間の静電的相互作用の変化(例えば、溶液のイオン強度を低下させることによって引き起こされる変化)のいずれかに起因する、駆動力によって与えられる。Alなどの金属イオン、または別のリガンドの結合がかかわる場合には、その他の静電的または立体的な影響が寄与する可能性がある。プローブペプチドのサイズはさまざまでありうるが、検出条件下で「合理的に」明確に規定された二次構造を有し、かつプリオンタンパク質などの選択された標的に対する十分な認識特異性を有するのに十分な長さであるべきである。プローブペプチドはまた、変異したタンパク質または系統に対して一般的に適用しうることを目的として、これらの変化および/または異質性が分子の熱力学的安定性に影響を及ぼすことを認識した上で、単一部位変異も収容しうるべきである。さらに、プローブは患者集団に対して、その集団がヒト患者集団、家畜集団またはその他の哺乳動物集団のいずれであるかを問わず、非伝染性でなければならない。
【0069】
ひとたびペプチド配列がプローブ用に確立されれば(上記のようにβ-シート形成の原因となる標的タンパク質の少なくとも一部分に対応するもの)、ペプチド配列に対して、ペプチドプローブの分析を容易にしうる部分または化学的実体によるエンドキャップ処理を行う(ペプチドの一方、好ましくは両方の末端に)。この部分はピレンなどの発蛍光団であることが好ましいが、分析のために用いる分析手法に応じて多岐にわたることができる。部分または化学的実体は、ペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはそれらの付近で複合体化または共有結合させることができ、ペプチドには短い疎水性ペプチド配列によるエンドキャップ処理が施されることが好ましい。本発明の好ましい局面においては、プローブペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方が、サイズが約1〜約5アミノ酸である短い疎水性ペプチドによるエンドキャップ処理を受ける。これらは天然性でも合成性でもよいが、好ましくは天然性である(すなわち、標的タンパク質のβ-シート形成領域に由来する)。発蛍光団は、プローブのアミノ末端もしくはカルボキシ末端(好ましくは両方)またはそれらの付近に結合することが好ましく、数多くの中から例を挙げればピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンなどであってよく、好ましくはピレンである。発蛍光団は、正しい幾何学的配向にある時にエキシマを形成することが好ましい。
【0070】
本発明によるコンフォメーションプローブは、好ましくはパリンドローム性である。パリンドローム性という用語は、β-シート形成の原因となる標的タンパク質の一部分に対応する第1および第2のペプチド配列を含むが、それらのペプチド配列がパリンドローム様式で提示される、すなわち、第1のペプチド配列ではカルボキシ末端からアミノ末端に向かって(またはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって)、第2のペプチド配列ではアミノ末端からカルボキシ末端に向かって(またはカルボキシ末端からアミノ末端に向かって)提示されるような、所定のコンフォメーションプローブ配列の構成のことを指す。パリンドローム性コンフォメーションプローブ中の第1および第2のペプチド配列は、長さが同一であることは、いくつかの態様においてはそれが好ましいものの、その必要はないが、少なくともおおよそは等価であるべきである(この2つのペプチド配列(プローブの「アーム」)は、15アミノ酸長を上回らないべきであり、好ましくは10アミノ酸長を上回らず、さらにより好ましくは5アミノ酸長を上回らないべきである)。好ましくは、パリンドローム性プローブ配列内部の第1および第2のペプチド配列は、1〜5個のアミノ酸、好ましくは1〜3個のアミノ酸を含むリンカーによって隔てられており、それは好ましくは少なくとも1つのプロリンアミノ酸を含み、より好ましくは主としてプロリンアミノ酸を含む。図10は、本発明において有用な例示的なパリンドローム性33-merコンフォメーションプローブを提示している。
【0071】
好ましくは、本発明によるコンフォメーションプローブは、疎水性アミノ酸配列を含み、それは好ましくは標的タンパク質の妥当なペプチド配列(すなわち、β-シート形成の原因となるペプチド配列)に由来し、長さが1アミノ酸から20アミノ酸またはそれ以上とさまざまであってよく、好ましくは約2〜10アミノ酸長であって、コンフォメーションプローブの2つの末端のうち一方またはその付近に存在する。パリンドローム性コンフォメーションプローブの場合には、これらの疎水性アミノ酸配列は、プローブの2つのペプチドアームの末端に存在する。任意に、プローブが、合成性の疎水性アミノ酸配列(すなわち、シート形成の原因となる標的タンパク質のペプチドにとって天然のものでない)をプローブの少なくとも一端に含んでもよく、パリンドローム性プローブの場合にはプローブの両端またはその付近に含んでもよく、その長さは1アミノ酸という短さから20アミノ酸またはそれ以上とさまざまであってよく、好ましくは約3〜10アミノ酸長である。
【0072】
例えば、非限定的であるが、標的タンパク質中の所望のペプチド配列が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって読んで、QRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:15)(ここで、AAAV(SEQ ID NO:30)は疎水性アミノ酸配列である)を含むならば、パリンドロームは、VAAAKLRAVVTSRQ(SEQ ID NO:31)である第1のペプチド配列およびQRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:15)(またはその配列の類似した変形物)である第2のペプチド配列を含み、この2つの配列は、1〜5アミノ酸を含んでいてそのようなアミノ酸の少なくとも1つ、好ましくはそのようなアミノ酸のすべてではないにしても大部分がプロリンアミノ酸であるリンカーによって隔てられていると考えられる。したがって、プローブは以下のものであると考えられる:VAAAKLRAVVTSRQPPPPQRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:28)(仮想的パリンドローム性プローブ)。
【0073】
好ましくは、パリンドローム性プローブは、標的タンパク質の妥当な配列から得られる疎水性アミノ酸配列を含むと考えられる。本発明によるコンフォメーションプローブは容易に得ることができる。
【0074】
本発明による適切な好ましいコンフォメーションプローブの形成の手引きとするために、以下の規則を用いることができる。これらの規則は、本発明によるコンフォメーションプローブに対して非限定的に全般的に適用されるが、より具体的には、本発明による好ましいパリンドローム性コンフォメーションプローブを作製する文脈において用いられる。
【0075】
好ましいコンフォメーションペプチドプローブを作製するために、以下の規則を本発明に対して適用することができる:
【0076】
1.ペプチド性パリンドロームのそれぞれの「アーム」は、最小限で5個、好ましくは少なくとも10〜12個のアミノ酸を有し、理想的には約25アミノ酸を上回らないべきである。
【0077】
2.アミノ酸配列は、α-ヘリックスまたはランダムコイルからβシートへのコンフォメーション転換を来すことが知られている、より大きなタンパク質のある領域から選択される。
【0078】
3.以下の補足的な基準のうち1つまたは複数:
a)疎水性アミノ酸の割合が高い−一般に約75%を下回らず(アミノ酸の数に基づく)、理想的には80%またはそれ以上である、
b)アミノ酸の反復数が少なくとも20回、好ましくは25回である(ハンチンチンに存在するように)、
c)反対符号のクラスター化した電荷(Zhang, S., Altman, M. and Rich, A. in Conformational Disease, A Compendium, Solomon, Taraboulos and Katchalski-Katzir, eds. The Center for the Study of Emerging Diseases, 2001に記載されているように)
d)ペプチドアームのそれぞれの間にある、1つまたはそれ以上のアミノ酸、好ましくは5つ未満を有し、1つまたは複数のプロリン残基を含むリンカー配列。
【0079】
ペプチドプローブに関する検査基準:
1.パリンドローム性ペプチドプローブのコンフォメーションはαヘリックスまたはランダムコイルのそれであるべきで、βシートであるべきではない。
2.ペプチドのコンフォメーションの決定は、理想的には、溶液中コンフォメーションを同定しうるCD測定によって達成される。これらは、水性緩衝液および/またはトリフルオロエタノールなどの有機物質を含みうる1つまたは複数の溶媒においてCD分光計を用いて行われる−図11参照。
【0080】
以上のように得られた一般的な規則を適用し、当技術分野において容易に利用しうる方法を用いることで、当業者は、本発明に用いるのに好都合な特性を有する多数のコンフォメーションペプチドプローブを作製することができる。
【0081】
「円二色性」(「CD」)は、CD分光偏光計によって測定されるように、光学活性のある物質がL側およびR側に円偏光した光を差異を伴って吸収した時に観察される。差異は非常に小さく、楕円率の度合いの分数に相当する。図11は、タンパク質およびペプチドがとりうる3種類の一般的なコンフォメーション形態を代表する連合的CD曲線を描写している。ペプチドおよびタンパク質中に存在する異なる型の二次構造に関するCDスペクトルは異なる。複合体化したタンパク質と複合体化していないタンパク質のCD曲線を測定して比較することは、本発明を実施する上での正確な測定手段である。
【0082】
予想外のことに、本発明者らは、生理的条件に近い条件下では、2つのペプチドを共有的に連結したパリンドローム性33-mer(SEQ ID NO:1または29)−これはヒトパリンドローム性プローブの場合であり、その配列は図10に描写されているが、ネズミプローブの場合には、14-mer(SEQ ID NO:3)および19-mer(SEQ ID NO:2)である−が、図12に図示されているように、14-mer構造に類似した2つの疎水性鎖に近接するにもかかわらず、主としてランダムコイル性またはα-ヘリックス性コンフォメーションを呈することを明らかにした。このパリンドローム性33-merペプチドの両端にピレンを付加することにより、図13に図示されているように、コンフォメーション変化のスペクトル観測が可能となった。単量体(オープン)コンフォメーションにある33-merの末端に結合したピレンに対するスペクトル走査では、最大発光が370〜385nmの間にある驚くほど異なる蛍光スペクトルが得られ、一方、励起された二量体またはエキシマ状態にあるピレン標識ペプチドは発光最大を475〜510nmの間に有する。
【0083】
コンフォメーション変化は、上記のいくつかの光学的方法のうち任意のものによって追跡することが可能であるが、本発明の好ましい態様では、感度、迅速性および操作の簡便さが得られる手法であることから蛍光分光法を利用する。プローブは、特定の光学特性を有する発蛍光団の両端への結合によって修飾される。これらは、特定波長の光(発蛍光団それ自体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルによって定まる)の照射によって蛍光を発する能力を含むことが好ましい。したがって、プローブは、吸収最大に近い波長の光の照射が、励起波長と識別されるような十分に波長の高い光をプローブに放出させるように設計されることが好ましい。このような照射および発光の測定、ならびにそれを行うための手法は、当業者には周知である。このような発蛍光団の例には、ピレン、トリプトファン、フルオレセインおよびローダミンが非限定的に含まれる。結合される発蛍光団は、正しい幾何学的配向にある時にエキシマを形成する能力も有することが好ましい。
【0084】
「エキシマ」とは、必ずしも共有的ではない、光子によって励起された分子的実体と励起されていない同一の分子的実体とで形成される付加生成物のことである。この付加生成物は一過性であり、それが光子の放出によって蛍光を発するまで存在する。エキシマ(またはエキシマの形成)は、通常の発光スペクトルのそれよりも長い波長での新たな蛍光バンドの生成によって認識することが可能である。エキシマは、励起スペクトルが単量体のそれと同一であることから、蛍光共鳴エネルギー移動と識別しうる。
【0085】
エキシマの形成は発蛍光団の幾何学的配置に依存し、それらの間の距離によって大きく影響される。1つの好ましい態様において、発蛍光団は各プローブ末端に存在し、発蛍光団間のエキシマ形成は、全体的なプローブコンフォメーションがα-ヘリックスまたはランダムコイルである限りは無視しうる程度である。これは、測定しようとする標的タンパク質の非存在下での分析のために用いられる溶媒中でのプローブの蛍光的挙動の測定によって容易に判定される。
【0086】
分析標的との相互作用に続いて起こる好ましいコンフォメーション転換は、エキシマ形成を分析しうる条件下で蛍光スペクトルを測定することによって得られる。典型的には、ピレンを例示的な発蛍光団として用いると、励起波長は約350nmであり、観測波長は365〜600nmである。励起後の単量体ピレンの正常な発光(単純蛍光)は最大波長が約370〜385nmとして記録される。代表的なデータが図14に示されている。
【0087】
図14に示されているように、エキシマまたは励起された二量体状態は、最大が475〜510nmにあるように記録される。励起された二量体状態の形成を、高濃度の塩の添加によって促し、ペプチドのpIに近いpHでの測定(例えば、図示されたケースでは、pH10前後で)を行うこともできる。
【0088】
したがって、本発明の1つの好ましい方法において、プローブと分析しようとする特定のタンパク質との相互作用は、エキシマ形成が起こるようなプローブにおけるコンフォメーション変化を引き起こす。これは本明細書に記載した手順によって容易に測定される。分析物の非存在下で呈示されるもの(α-ヘリックスまたはランダムコイル)からβシート構造へのプローブ構造の変換は、プローブに結合した発蛍光団が、容易に同定可能なエキシマを形成することを可能にする。さらに、エキシマ形成の程度は、存在するタンパク質分析物の量と直接的に関係する。
【0089】
タンパク質またはプリオンは、凝集形態で、または他の細胞構成要素、例えば脂質、他のタンパク質または糖質の存在下で検出することができる。分析のための試料調製物は、好ましくはホモジネート化されるか、または組織または凝集体構造の同様の破壊に供せられ、細胞残屑は好ましくは遠心処理によって除去される。この工程は理想的には緩衝塩類溶液の存在下で行われ、SDS、Triton X-100またはサルコシルなどのいくつかの界面活性剤の1つを利用してもよい。試料のさらなる濃縮を、いくつかの薬剤のうちいずれかによる処理によって達成することもできる;好ましい薬剤の1つはリンタングステン酸塩であり、これはSafar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998の方法に従って用いられる。
【0090】
本発明の1つの好ましい態様において、ペプチドプローブは、未知の試料または被験試料に対する添加のために選択される。ペプチドプローブは、好ましくは、α-ヘリックスまたはランダムコイルを主にした二次構造を有するタンパク質またはペプチド配列であるが、それらは必然的にではないものの好ましくは、β-シート形成の原因となる標的ペプチドの部分に由来する。1つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、ポリリジン中に認められるヘリックス-ループ-ヘリックス構造からなるペプチド断片である。もう1つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、野生型TSEから、所望の種特異的TSEペプチド配列から、またはさらには不安定化されて非感染性になるような様式で変異した選択的変異TSE配列から選択されるペプチド配列から作製することができる。加えて、一般的な蛍光検出法を用いた予想されるコンフォメーション変化の検出が可能となるように、ピレンなどの外因性蛍光体をペプチドプローブ中に付加または設計することもできる。
【0091】
ひとたびペプチドを選択したならば、それを被験試料に添加する。しかし、ペプチドプローブの添加の前に、試料を、当技術分野で一般に知られている超音波処理などの解離法に供することが好ましい。解離の段階は、これらの解離した試料材料が新たに導入されたペプチドプローブと自由に組み合わされ、それによって予想される触媒的増殖が促進するように、凝集している可能性のある試料を別々に分離することを可能にする。
【0092】
被験試料または解離させた被験試料を、ペプチドプローブと相互作用させ、その結果生じた混合物を、凝集体の検出用の当技術分野で一般的に知られている分析方法に供し、蛍光性ペプチドプローブを用いる場合には蛍光測定に供する。異常にフォールディングしたタンパク質または病原性タンパク質に特徴的な任意のβ-シート構成物を主として含む未知の試料または被験試料は、被験試料およびペプチドプローブの両方を含む最終混合物におけるβ-シート形成の増加、およびその結果としての凝集体形成をもたらす。逆に言えば、β-シートを主とする二次構造を有しない未知の試料または被験試料は、β-シート構造への転換も触媒せず、凝集体の形成を増殖させることもないと考えられる。
【0093】
被験試料における初期コンフォメーション変化は、さまざまなやり方で誘発することができる。いかなる理論にも拘束されることは意図しないが、金属リガンドの結合は、タンパク質コンフォメーションの変化を導き、凝集を促すように働くと考えられる。異なるペプチド配列の発現または切断は、細線維および斑の形成につながる高度な凝集を促進する可能性がある。遺伝子点変異もまた、2つの異なるコンフォメーションに必要な相対的エネルギーレベルを変化させ、構造転換における中間点の移行をもたらす可能性がある。さらに、濃度レベルの増大が、コンフォメーション転換を促すのに十分である可能性もある。しかし、初期誘発機構とは関係なく、プリオン関連疾患などにおけるような、異常なタンパク質コンフォメーションの多くにおける疾患プロセスは、以前には正常であったタンパク質の構造転換をもたらすような異常コンフォメーションの触媒的増殖を必然的に伴う。
【0094】
本発明において有用な光学的検出手法には、光散乱、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)またはコンゴーレッド色素などの外因性蛍光体を用いた疎水性の検出、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、コンフォメーション変化または単量体またはα-βヘテロ二量体における境界面での結合のいずれかによる内在性トリプトファン蛍光の消光、平衡遠心法およびサイズ排除クロマトグラフィーが非限定的に含まれる。
【0095】
予想外のことに、本発明のペプチドプローブをポリスチレンプレートなどの固体支持体上に固定化することで、ペプチドを特定のコンフォメーションに「固定する」(すなわち、プローブにα-ヘリックスを主とする形態またはβ-シートを主とする形態を維持させる)ことができることが明らかになった。種々の固体支持体に対する種々のペプチドの固定化は当技術分野で公知であるが、典型的には、任意の特定のペプチドを満足しうる効率で固定化しうることを妥当な程度の確実性をもって予測することはできない。さらに、ひとたび固定化されたペプチドが、所望の活性を有すること(例えば、それが溶液中で示す活性を保つこと)を、妥当な程度の確実性をもって予測することもできない。実際に、ペプチドの固定化がペプチドの変性をもたらし、それ故にその二次構造のすべてではないにしても大部分の破壊をもたらす可能性があることは、当技術分野で周知である。したがって、特定のポリペプチドの固定化のための適切な条件は、しばしば試行錯誤的な実験を通じての、条件の慎重な選択によってはじめて同定しうることは周知であり、所定のペプチドを、その二次構造および生物活性を保ちながら首尾良く固定化すると考えられる条件を予測することは一般に不可能である。本発明は、以上に考察したように共通の構造的特徴を有する本発明によるプローブが、十分な効率で固体支持体上に固定化されうるだけでなく、ひとたび固定化されてもその活性を保ちうるという予想外の結果を開示する。さらに、本発明は、特定のコンフォメーション(例えば、β-シートまたはα-ヘリックス)で固定化されたプローブが、溶液中になければそのコンフォメーションを変化させると考えられる条件に対して曝露された場合ですら、そのコンフォメーションに付随する活性を保ちうることも開示する。したがって、本発明は関心対象のプリオンタンパク質と特異的に結合する固定化プローブまたはプローブのセットをいかにして提供するかという、当技術分野が直面している問題に対処し、それを解決する。
【0096】
本発明のプローブを固定化によって特定のコンフォメーションに「固定」することができ、それらのコンフォメーションがプリオンタンパク質と結合する活性を有するという発見は、本発明のプローブをさまざまな用途に用いるために本発明を実施することを可能にする。例えば、試料中のプリオンタンパク質の存在を迅速かつ効率良く検出するために(例えば、固定化されたα-ヘリックス性プローブを用いることにより)、または試料中の感染性プリオンタンパク質の存在を優先的に検出するために(例えば、固定化されたβ-シート性プローブを用いることにより)、ビーズに対して固定化されたプローブを用いることができる。また、試料中に存在するプリオンタンパク質の一部、基本的にはすべて、またはすべてと結合させ、続いてプリオンタンパク質を試料の残りから分離して、プリオンタンパク質がより少なくなった、プリオンを基本的には含まない、またはプリオンを完全に含まない試料を得るために、固定化プローブを用いることもできる。これらの手法は、医療の分野、特に血液製剤の製造および使用にかかわる局面にとって意義がある。例えば、本発明は、血液試料または血液製剤試料中のプリオンの存在を検出するだけでなく、血液試料または血液製剤試料中のプリオンおの数を減らすため、またはそれを完全に除去するためにも用いることができる。
【0097】
したがって、本発明の複数の態様においては、本発明のプローブを固定化する方法が提供される。本方法は一般に、本発明のプローブを提供する段階を含み、それは、所望のコンフォメーションにあるプローブを含む組成物を作り出す段階;固体支持体を提供する段階、固体支持体に対するプローブの固定化が可能となるのに十分な時間にわたってプローブを固体支持体に対して曝露させる段階、ならびに結合しなかったプローブおよび組成物中に存在するその他の物質を除去する段階を含みうる。本方法はさらに、固体支持体に対してプローブを架橋させる段階、結合しなかったプローブまたはその他の物質を除去するために結合したプローブを洗浄する段階、固体支持体およびプローブを乾燥させる段階、またはタンパク質-固体支持体の組み合わせを作り出すために用いられることが知られているその他の手順を含みうる。当然ながら、プローブを固体支持体に結合させる前に、プローブを、プローブがβ-シートを主とするコンフォメーションをとり、ミスフォールディングしたタンパク質と結合するのに十分な時間にわたって、ミスフォールディングしたプリオンタンパク質(PrPSc)などのミスフォールディングしたタンパク質に対して曝露させることができる。続いて、プローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体と固体支持体との結合を通常通りに進行させる。このような状況において、プローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体は、固体支持体に対して直接的に、プローブを介して、またはミスフォールディングしたタンパク質と別のプローブ(本発明のプローブまたは別のプローブ、例えば当技術分野で公知なものなど)との結合を介して間接的に、結合させることができる。さらに、プローブおよび/またはプローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体を、互いにまたは固体支持体と結合させる前または後に、任意の適した程度まで精製することもできる。
【0098】
所望のコンフォメーションにあるプローブを含む組成物を作り出す際には、本発明のプローブのコンフォメーションに影響を及ぼすために、pHまたは塩の点で異なる組成物を用いることができる。以上に考察したように、本発明のプローブのコンフォメーションは、プローブが内部に存在する溶液の塩濃度、pHまたはその両方を調整することによって変化させることができる。一般に、各プローブのpIに近い条件は、プローブにβ-シートを主とするコンフォメーションをとらせる。同様に、酸性(例えば、pHが約5.0未満)または塩基性(例えば、pHが約9.0を上回る)の条件は、プローブにβ-シートを主とするコンフォメーションをとらせる。これに対して、中性(例えば、pHが約5.0〜約9.0の間)の条件は、プローブにα-ヘリックスを主とする構造をとらせる。一般に、低い塩濃度(例えば、塩が100mM未満)はプローブにα-ヘリックス性コンフォメーションをとらせ、一方、高い塩濃度(例えば、塩が500mM)はプローブにβ-シート性コンフォメーションをとらせる。当業者は、不必要な実験を行うことなく、所望のコンフォメーションを有するプローブを得るために、pHおよび塩濃度の適した組み合わせを選択することができる。
【0099】
固体支持体は、結合ペプチドを結合させ、生物材料とともに用いるのに適した任意の公知の固体物質でありうる。多くのこのような固体支持体が当業者には公知である。固体支持体として有用な材料の例には、ポリスチレンを含むプラスチック、ガラス、多糖類、金属、ならびにラテックス、アクリル樹脂およびナイロンを含む種々のポリマーが非限定的に含まれる。固体支持体の形態の例には、プレート、ビーズおよび膜が非限定的に含まれる。固体支持体に対する多くの種類の修飾が、それらに対するペプチドの結合性を高めることが知られており、このような修飾および修飾された固体支持体のすべてが本発明に含まれる。固体支持体として含まれるものには、それにある物質が結合すると光学特性が変化するもの、および支持体に結合したペプチドにある物質が結合すると光学特性が変化するものというように、内在的な光学特性を備えたものがある。例えば、固体支持体は、内在的蛍光を有していて、本発明によるプローブと結合することができ、タンパク質がプローブに結合すると固体支持体の蛍光特性が変化して結合の検出が容易になるようなものでありうる。
【0100】
プローブを固体支持体に対して曝露させる時間は、用いる固体支持体の種類、供給されるプローブの量、および選択しうるその他の変数に応じて異なると考えられる。一般に、時間は、ペプチドを固体支持体に結合させるために典型的に用いられる量であると考えられ、典型的には、固体支持体および固体支持体の製造元によって与えられる示唆に基づく。したがって、時間は1分間というように短くてもよく、または1週間というように長くてもよい。一般に、曝露には、約1時間〜約72時間、例えば約2時間、約3時間、約14時間、約16時間、約24時間または約48時間などが含まれると考えられる。最適な結合時間および条件を特定するために、検査実施中に結合効率をモニターすることができる。
【0101】
結合しなかったプローブおよび組成物中に存在するその他の物質の除去は、任意の公知の適した手法によって行うことができる。典型的には、それは、固体支持体-結合ペプチドの組み合わせを結合用組成物から取り出すこと、または結合用組成物を固体支持体-ペプチドの組み合わせから取り出すことを含む。したがって、除去は、組成物を、それと固体支持体とを互いに曝露させた容器から注ぎ出すことによって達成しうる。同様に、それを吸うこと、吸引すること、サイホン式に吸うこと、排液させることなどによって達成することもできる。1つの特定の態様において、除去は、組成物を蒸発させることによって達成される。
【0102】
本方法はさらに、固体支持体-結合ペプチドの組み合わせを作り出すのに有用であることが知られた他の段階を含むことができる。当技術分野で公知であるように、ペプチドを結合させるために用いうる多くの固体支持体は、プローブが固体支持体の表面にある反応性基と架橋することによってペプチドと共有結合するように設計された表面を有する。このような架橋は、紫外光の照射、熱もしくは化学物質による処理、または乾燥を含む、さまざまなやり方で行わせることができる。任意の適した固体支持体および手法が本発明に含まれる。
【0103】
そのほかの段階には、結合しなかったプローブまたは組成物中に存在するその他の物質を除去するために結合したプローブを洗浄すること、固体支持体およびプローブを乾燥させること、またはタンパク質-固体支持体の組み合わせを作り出すために用いられることが知られているその他の手順が含まれうる。特定の需要に合わせて、さまざまなそのほかの処理および処理の組み合わせの中から選択することもできる。
【0104】
固定化プローブには数多くの使用法がある。一般に、固定化プローブは、試料中のプリオンタンパク質と結合させるために用いられる。結合は、試料中のプリオンタンパク質の存在を検出するため、または試料中のプリオンタンパク質と結合させてそれらを除去するためといった、多くの目的に用いることができる。試料中のプリオンタンパク質の検出は、食品または医療用製品(例えば、血液製剤)などの製品を、PrPScなどの感染性プリオンタンパク質を含む、プリオンタンパク質による汚染に関してスクリーニングする方法に用いることができる。試料からのプリオンタンパク質の除去は、食品または医療用製品(例えば、血液製剤)などの製品から、プリオンタンパク質を削減または排除する方法に用いることができ、これはヒトまたは動物に用いるための製品の安全性を向上させることができる。
【0105】
一般に、固定化プローブを用いるスクリーニングの方法は、固定化プローブを提供する段階、プリオンタンパク質を含むか含むことが疑われる試料を提供する段階、固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質(存在するならば)と結合するための条件下でそのために十分な時間にわたって試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、および固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階を含む。検出は、以上に考察および詳述したような、任意の公知の手法によることができる。複数の態様において、検出は、蛍光またはルミネセンスなどによる標識からの光の放出をアッセイすることを含む。また別の態様において、検出は、PAGEおよびゲル中に存在するタンパク質の染色による。さらに別の態様において、検出は、関心対象のプリオンタンパク質に対して特異的な抗体との反応による。検出手法のその他の非限定的な例は以上に示されている。
【0106】
固定化プローブに対する試料の曝露は、プリオンタンパク質(試料中に存在するならば)と固定化プローブとの結合を可能にする十分な時間および条件の下で行われる。タンパク質と他のタンパク質との結合のために適した条件は当業者に公知であり、任意の適した条件を用いることができる。例示的な条件は、以下の実施例で詳述されている。一般に、適した条件には、水性の環境で、中性pH(例えば、pHが約6.0〜約8.0)、塩が中程度(例えば、塩が約100mM〜約400mM)であり、タンパク質-タンパク質相互作用を阻害する可能性のある界面活性剤、乳化剤またはその他の副次的物質をほとんどまたは全く含まないことが含まれる。用いるべき固定化プローブおよび試料の量は、得られる試料の量、試料中に存在すると疑われるプリオンタンパク質の量、使用者が試料を固定化プローブに対して曝露させようとする時間、およびその他の検討事項によって異なると考えられる。固定化プローブおよび試料の量は一般に、以上に詳述したように、固定化されていないプローブを用いる場合に用いられる量と同じであると考えられる。複数の態様において、試料はPrPScなどの感染性または病原性のプリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる。
【0107】
一般に、試料中のプリオンタンパク質を減少させる方法は、固定化プローブを提供する段階、プリオンタンパク質を含むか含むことが疑われる試料を提供する段階、固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質(存在するならば)の少なくとも一部と結合するための条件下でそのために十分な時間にわたって試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、ならびに固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体を試料から除去する段階を含む。複数の態様において、本方法は、試料中のプリオンタンパク質の量を検出可能な量の差として減少させる。複数の態様において、本方法は、試料中のプリオンタンパク質の量を、検出限界未満に減少させる。複数の態様において、本方法は、試料からプリオンタンパク質を完全に排除する。複数の態様において、試料は、PrPScなどの感染性または病原性プリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる。
【0108】
試料中のプリオンタンパク質を減少させる方法において、固定化プローブおよび試料は、プリオンタンパク質を検出する方法において考察されたものと同じであることができ、以上に考察したものと同じ量および形態として提供することができる。固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体の試料からの分離は、任意の適した手法によることができ、試料を注ぎ出すことによる、試料からの固定化プローブおよび複合体の物理的除去による、などの任意の適した手法によることができる。当業者は、ビーズ、膜およびその他の固体支持体を水溶液から除去するためのさまざまなやり方を把握しており、そのようなやり方のうち任意のものを、固定化プローブおよび固定化された複合体を試料から除去するために用いることができる。1つの好ましい態様において、固定化プローブは、プローブは血液または血液製剤、例えば血漿などに対する透過性がある膜と結合しており、試料は血液または血液製剤、例えば血漿などであり、血液または血液製剤を、血液または血液製剤中のプリオンタンパク質の一部またはすべてを排除するために、プローブを結合させた膜を通して濾過する。試料の残りを膜に通過させることで、プローブを結合させた膜と試料との分離が引き起こされる。血液または血液製剤を濾過した後に、プローブが結合した膜をプリオンタンパク質の存在に関してアッセイすることができる。
【0109】
以上の開示から明らかであるように、複数の態様において、本方法はさらに、固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階を含む。検出は、以上に考察および詳述したような、任意の公知の手法によることができる。同様に、さまざまなそのほかの段階を、そのような段階が、本方法が試料中に存在するプリオンタンパク質の一部またはすべてを除去することを不可能にするのでない限り、本方法に含めることができる。
【0110】
本発明の方法の任意のものにおいて、アッセイの有効性を確かめるために、対照(陽性、陰性またはその両方)を実行することができる。陽性対照は一般に、少なくとも1つのプリオンタンパク質(典型的には特定の既知の型のもの)を含むことが判明している試料を用いて本方法を実施することを含み、本方法がタンパク質を検出しうること、および/または特定のタンパク質に対して特異的であることを確かめるために用いることができる。一般に、陽性対照は、既知のプリオンタンパク質が、典型的には既知の量で意図的に添加されている試料(手順の任意の段階で)を含む。陰性対照は一般に、いかなるプリオンタンパク質も含まないことが判明している試料を用いて本方法を実施することを含み、本方法がシステム上の偽陽性の結果を与えないことを確かめるために用いることができる。本方法における1つまたは複数の特定の段階で、その段階が予想通りに機能していることを確かめるために、その他の対照を実行することもできる。当業者は適した対照を十分に把握しており、不必要な実験を行うことなく、それらを設計して遂行することができる。
【0111】
以下の実施例において詳細に考察しているように、β-シートを主とするコンフォメーションで固定化された本発明のプローブは、病原型のプリオンタンパク質(例えばPrPSc)に対して特異的であることが見いだされた。したがって、プローブの固定化は、病原性プリオンタンパク質を特異的に検出する方法、および病原性プリオンタンパク質を削減または排除する方法を設計および遂行するために用いることができる。このことは、それが、費用も時間もかかる抗体の使用を必要とすることなく、プリオンタンパク質のサブセットの特異的な検出を可能にすることから、利用可能な他の方法を上回る利点である。
【0112】
したがって、複数の態様において、本発明は、試料からPrPScを削減または排除する方法を提供する。本方法は、β-シートを主とするコンフォメーションを含む固定化プローブを提供する段階、固定化プローブが試料中のPrPScの少なくとも一部と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって固定化プローブをPrPScを含むか含むことが疑われる試料と接触させる段階、およびプローブ/PrPSc複合体を試料から分離する段階を含む。複数の態様において、試料は血液または血漿などの生物試料である。
【0113】
以上に考察した本方法に鑑みて、本発明が、パッケージ化された組み合わせとして、特定のコンフォメーションを有する少なくとも1つの固定化プローブを含むキットを提供することは明白である。より具体的には、固定化は、さまざまな環境条件に対するその後の曝露中にそのコンフォメーションを保つ、特定のコンフォメーションにあるプローブを含む支持体を生じさせるため、本発明はこのような固定化プローブを含むキットを提供することができる。本明細書で考察したように、固定化プローブは、選ばれたプリオンタンパク質と特異的に結合させるために用いることができ、それ故に試料中の特定のプリオンタンパク質を検出するために用いること、または特定のプリオンタンパク質を試料から除去するために用いることができる。「パッケージ化された組み合わせ」とは、キットが、固定化プローブ、緩衝液、説明書などの1つまたは複数の構成要素を含む、個別のパッケージを提供することを意味する。単一の容器を含むキットは通常、複数の構成要素の組み合わせを有するとはみなされないと考えられるが、本発明の目的においては、このような構成は「パッケージ化された組み合わせ」の定義に含まれる。
【0114】
一般に、本発明のこの局面のキットは、固定化プローブ、ならびに本発明の方法を実施するために必要なその他の供給物および試薬のうち一部またはすべてを含む。したがって、それらは典型的には、少なくとも1つの容器内に少なくとも1つの固定化プローブを含む。いくつかの態様においては、単一のプローブ(同じプローブの多数のコピーを含む)が単一の固体支持体上に固定化され、単一の容器内に提供される。また別の態様では、それぞれが異なるプリオンタンパク質または異なる型の単一のプリオンタンパク質に対して特異的である2つまたはそれ以上のプローブが、単一の容器内に提供される。複数の態様において、同じ固定化プローブが多数の異なる容器内(例えば、単回用の形態)に提供され、または多数の固定化プローブが多数の異なる容器内に提供される。複数の態様において、プローブは多数の異なる型の固体支持体上に固定化される。固定化プローブおよび容器の任意の組み合わせを本発明は想定しており、実施者は、所望の用途のために適したキットを得るために、それらの組み合わせの中から自由に選択することができる。
【0115】
キットの容器は、本発明の固定化プローブをパッケージ化する、および/または含めるのに適した任意の容器でありうる。適した材料には、ガラス、プラスチック、厚紙またはその他の紙製品および金属が非限定的に含まれる。容器は固定化プローブを完全に包むこともでき、または粉塵、油などによる汚染を最小限に抑えるためにプローブを単に覆うのみであってもよい。キットは単一の容器または多数の容器を含むことができ、多数の容器が存在する場合には、それぞれの容器は他のすべての容器と同じでもよく、他のものとは異なってもよく、または他のすべてではないが一部の容器とは異なってもよい。
【0116】
キットそれ自体は任意の適した材料製でありうる。キット材料の非限定的な例には、厚紙またはその他の紙製品、プラスチック、ガラスおよび金属が含まれる。厚紙製キットが好ましい。
【0117】
キットは、1つまたは複数のプローブを固体支持体に対して固定化するために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべて、または試料中のプリオンタンパク質に対する固定化プローブの結合のために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべてを含むことができる。
【0118】
当然ながら、本発明のキットは、1つまたは複数の固定化されていないプローブ、および固定化プローブを含むまたは含まない1つまたは複数の固体支持体を含むことができる。このようなキットは、好ましくは、1つまたは複数のプローブを固体支持体に対して固定化するために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべて、または試料中のプリオンタンパク質に対する固定化プローブの結合のために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべてを含む。
【0119】
本発明は、異常なタンパク質またはプリオンのレベルを感染性のレベルと直接相関づけるために、増殖性のコンフォメーション変化を用いる。この理由から、増殖の結果として感染性産物の増加がみられないような様式で、本発明の方法を利用することが好ましい。これは、異常型の感染、伝播および増殖という連鎖の間のつながりに「中断点」を配置することによって達成される。このような中断点は、凝集体の二量体形態と多量体形態との間の転換段階になければならない。多量体形態の物理的形成は、その形成につながる段階を単に妨げることによって遮断することができる。これは、関心対象の配列が関連性のないペプチドと結合しているプローブを用いることにより、または、リンカーまたは「係留物」の上のプローブは互いに遭遇して、それ故にシグナルの増幅をもたらす可能性が高いことを理解した上で、中性「遮断用」セグメントによって達成することができる。
【0120】
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに明確にするが、それらは本発明の単なる例示を意図しており、本発明をいかなる点でも限定するものとみなされるべきではない。
【0121】
実施例1
本実施例は、別に特記する場合を除いて、他の実施例で用いられる材料および方法を提供する。試料は、以下のようにして、本発明の利用を通じた検査および診断のために得ることができる。試料は、組織(例えば、挽肉の一部分、または生検処置によって得られたある量の組織)から、ガラス製ホモジナイザー中でのホモジネート化によって、または液体窒素の存在下で乳鉢および乳棒によって調製することができる。材料の量は1mg〜1gmの間であるべきであり、好ましくは10mg〜250mgの間、例えば20mg〜100mgの間などである。試料にしようとする材料を、適した溶媒中に、好ましくは、pHが7.0〜7.8の間のリン酸緩衝食塩水中に懸濁させてもよい。RNase阻害薬の添加は任意であり、好ましい。溶媒が、界面活性剤(Triton X-100、SDSまたはサルコシルなど)を含んでもよい。ホモジネート化は、ホモジナイザーによる多数回の、好ましくは10〜25ストロークの間;例えば15〜20ストロークなどの往復運動処理を通して行われる。懸濁化された試料を100〜1,000gで5〜10分間にわたり遠心し、上清材料を分析のための試料として採取することが好ましい。試料によっては、Safar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998によって記載され、Wadsworth, The Lancet 358: 171-180, 2001によって改良されたような手順に従って、上清材料を、リンタングステン酸などの別の試薬で処理することが好ましいと考えられる。
【0122】
検査しようとする試料の量は、Bradfordによって記載された手順(Anal. Biochem. 72: 248-254, 1976)によって測定されるような、上清溶液のタンパク質含有量の決定に基づく。マイクログラム量のタンパク質を決定するための迅速かつ高感度な方法では、タンパク質-色素結合の原理を利用する。好ましくは、検査しようとする試料中のタンパク質の量は、タンパク質0.5mg〜2mgに対応することが好ましい。
【0123】
組織材料に関して上述した手順のほかに、被験試料を、血清、動物由来の産物を含む可能性のある医薬製剤、髄液、唾液、尿またはその他の体液から得てもよい。液体試料を直接検査してもよく、または上記のようにリンタングステン酸などの薬剤による処理に供してもよい。
【0124】
TSEを含む試料は、本発明に従って以下のように分析することができる。図2を参照すれば、概略図の上の列は、β-シートを含むものとして表されているTSEタンパク質の未知の試料を図示している。β-シートを超音波処理によって解離させる。標識ペプチドプローブを添加し、試料と結合させる。試料中のβ-シート性コンフォメーションが、ペプチドプローブがβ-シート性コンフォメーションをとるように誘導する。ペプチドプローブ中でのβ-シート増殖によって凝集体が形成される。その結果生じたβ-シートを主とする形態への転換および増幅された凝集体形成を、光散乱およびCDなどの手法によって検出する。1つの特に好ましい態様では、ペプチドプローブを蛍光標識し、蛍光検出を用いる。
【0125】
図2の下の列は、TSEタンパク質の未知の試料がその正常なαヘリックス性形態で表されている代替的な実施例を示している。一貫性を保つために、試料を上記のものと同じ解離過程に供する。標識されたペプチドプローブを添加しても、βシート形態への転換も未知の試料との結合も起こらない。その結果として、標識ペプチドプローブの場合には凝集体の蛍光シグナルはみられず、他の分析ツールによっても凝集体形成は検出されない。この概略図に基づくと、未知の試料を、このような異常なタンパク質コンフォメーションまたは配列の有無に関して検査することができる。
【0126】
実施例2
ポリリジンをモデルペプチドとして用いた。実験は、α-ヘリックスを主とする形態からβ-シートに富む形態への転換にかかわるコンフォメーション変化を例示するためのモデル系を用いて行った。選択されたモデル系では、神経毒性のないポリアミノ酸であるポリリジンを用いた。このポリアミノ酸は入手可能性および安全性を理由として選択した。これは通常、pH値が5〜9の範囲でランダムコイル性コンフォメーションを呈する。
【0127】
図3は、ポリ-L-リジン(20μM;MW 52,000)をペプチドモデルとして用いた実験のCDグラフを描写している。
【0128】
同じく図3にも示されているように:pH 7および25℃に維持した試料24は、ランダムコイル構造を表すほぼ204nmで最小値を呈した。pH 11(等電点の近く)および50℃に維持した試料26では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた(タンパク質コンフォメーションの例示的なCDスペクトルについては図11参照)。pH 7および25℃に維持した試料とpH 11および50℃に維持した試料との1:1配合物である試料28では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた。pH 7および50℃に維持した試料とpH 11および50℃に維持した試料との1:1配合物である試料30では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた。
【0129】
実施例3
図4は、さまざまな環境条件下でのランダムコイルからβ-シートへのコンフォメーション変化に対する影響を観察するために、(1)ポリ-L-リジンを用い;および(2)さまざまな温度およびpHで行った実験の一般的なCD結果を図示している。これらの結果は、温度およびpHの両方が転換に重要な役割を果たすことを示している。これらの結果はまた、ランダムコイル性の試料に対する比較的少量のβ-シートペプチドの添加がβ-シートに富むコンフォメーションへの推移をもたらすこと、およびこのような変化を、試料の温度およびpHの環境に応じて加速させうることも示している。
【0130】
より具体的には、図4は、52,000MWのポリ-L-リジンを、実施例1〜3に記載された実験手法に従ってペプチドプローブとして70μMで用いて作成された吸光度グラフを図示している。図4は、以下のことを図示している。試料32(pH 11、25℃)は、α-ヘリックスを主とする構造を表すほぼ0.12にプラトーを呈した。試料34(pH 7、50℃に維持)はほぼ0.22にプラトーを呈し、これによってランダムコイルを主とする構造であることが示された。試料36(pH 7、50℃に維持した試料とpH 11、50℃に維持した試料との10:1配合物)では、ランダムコイルからβ-シート構造への加速された転換を示す、ほぼ0.22から0.33という鋭い傾斜が生じた。試料38(pH 7、25℃に維持した試料とpH 11、50℃に維持した試料との10:1配合物)は、ランダムコイルからβ-シート構造への転換を示す、ほぼ0.22から0.26への漸進的な傾斜を示した。図5は、これらのデータを表形式で描写している。
【0131】
上記の実験のすべてを基にした観察所見は、ランダムコイル性の試料に対する比較的少量のβ-シートペプチドの添加が、βに富むコンフォメーションへの推移をもたらしうること、およびこのような変化を試料の温度およびpHの環境に応じて加速させうることを示している。
【0132】
実施例4
図15に図示された結果を導いた実験は、33-mer標的ペプチドの使用を伴っており、それは
のいずれか単独であり、エキシマ形成の観測によってペプチド会合に関するプローブとした。
【0133】
本発明者らは、本発明者らがCD試験(ペプチドを標識しなかった)および分光蛍光試験(ピレン標識ペプチドを用いた)を用いて観察した結果を比較した。ホモジネートは用いなかった。図15に図示された結果を導いた実験は、33-mer標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)を、単量体を主とするものから二量体性(エキシマ性)へとコンフォメーション的に変化させて凝集化させる引き金となったのは何であるかを解明するために企画した詳細な試験である。33-mer標識ペプチドの会合を促した条件がμMの範囲で明らかにされた。
【0134】
33-mer標的ペプチドの静電的相互作用を遮蔽し、それによってその溶解度を最小限にする条件(pI=10)は、ペプチドが極めて低濃度(10μM)の下でペプチドの自己会合を誘発した。この自己会合は、二量体またはエキシマの形成、およびそれに付随する、ペプチドの末端にあるピレン発蛍光団に起因する蛍光の遠赤方向偏移によって明らかとなる。一例として、図15の曲線1は、主なペプチド配座異性体が単量体性である、pH 6〜8、KCl(100〜500μM)という条件を表している。図15の曲線2は、ペプチドが極めて低濃度の下で、本発明者らが強いエキシマ形成(単量体の凝集)を観測した、pH 10〜11、KCl(100-500μM)という条件を表している。
【0135】
実施例5
図16に図示された結果を導いた実験は、さまざまな個々のペプチドおよび33-merプローブ(19-merおよび14-merを含む)標的ペプチド(SEQ ID NO:1、19、2または3)の使用を伴う
。
CDによってモニターされるコンフォメーションに対する影響を観察するためにアッセイ条件を変更した。目標は、どの熱力学的条件が、単量体性ランダムコイルから凝集性β-シートへの一段階転換をもたらし、おそらくはペプチドのミセル形成体である会合性「X」状態を回避させるかを明らかにすることであった。
【0136】
図16に図示された結果を導いた実験では、ある範囲の溶媒条件およびある範囲のペプチド濃度(ペプチド濃度は対数尺度で提示されており、CDに関する標準的な図式を指してもいる−図11)にわたる詳細なコンフォメーション情報を得る目的で、CDによりペプチド会合をモニターするために特定波長(204nm)を用いた。
【0137】
標的ペプチドに関して回収された連合曲線(θ205)は、コイルから「X」状態を経てβ-シートへと移り変わる、それぞれ50μMおよび3mMの範囲で2つのコンフォメーション転換を示している。
【0138】
図16を参照すると、50%を上回る溶媒条件(一番左側の点線)に関しては、33-mer標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)
は、3μMではコイル状態からβ-シート状態に転換し、一方、19-merまたは14-merは転換することはできたものの、そのペプチド濃度は10倍の高さであった(中央の線)。水性条件下では(太線)、どのペプチドもβ-シート構造へと自己会合することはできなかった。
【0139】
33-merパリンドローム性ペプチド標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)は、50%溶媒(アセトニトリルまたはトリフルオロエタノール(TFE))条件下において、極めて低濃度(すなわち、1μM)で、「行き止まり」会合状態(水性条件下でプラトー効果によって示されるようなもの)を回避させたという点で、独特な特性を呈した。
【0140】
図16は、溶媒および温度の変動が標的ペプチドの会合挙動に大きくは影響しないこと、およびペプチドのすべてが同じ曲線をたどることを示しており、このことは配列特異性がこの種の分子集合における重要な特徴ではないことを示している。
【0141】
実施例6
図17に図示された結果を導いた実験は、以下のようにして行われた:
【0142】
1グラムのスクレイピー感染(293系統)ハムスター脳材料を、滅菌リン酸緩衝食塩水中にある状態で液体窒素下でホモジネート化した。滅菌PBSによる10倍連続希釈物を作製した。脳ホモジネート中のプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動による抗体捕捉によって決定した。10ngのプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)と等価な脳ホモジネートを、50%TFE中にて1.5μMの33-mer標的ペプチドと混合し、室温で1時間インキュベートした後に、二重比色分光蛍光計にて350nmで励起して350〜600nmの発光を記録し、励起および発光スキャンを5時間および24時間の時点で再び行った。33-merペプチド単独のものを対照として用いた。
【0143】
感染性プリオンタンパク質の添加は33-mer標的ペプチドの蛍光の有意な増加を導き、50% Tris:50% TFEという条件下でのCDデータによればこれはβ-シート性コンフォメーションに近いことが見いだされた。この蛍光の増加により、33-mer凝集体の形成が示された。この33-mer凝集体は不安定であり、時間経過に伴って非可逆的に解離した。
【0144】
複合体およびペプチドに関する蛍光の放出を比較しながら追跡することにより、複合体が時間経過に伴って解離することが示され、一方、377nm(三角形)および475nm(四角形)という2つの異なる波長でのモニタリングによる評価では、ペプチド蛍光は安定なまま保たれた。
【0145】
実施例7
図18に図示された結果を導いた実験は、以下のようにして行われた:
【0146】
1グラムずつのスクレイピー感染ハムスター脳および健常ハムスター脳、ヒツジ脳ならびにヘラジカ脳を、滅菌リン酸緩衝食塩水中にある状態で液体窒素下でホモジネート化した。滅菌PBSによる10倍連続希釈物を作製した。脳ホモジネート中のプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度を、キャピラリー電気泳動による抗体捕捉によって決定した。感染性および健常性の脳ホモジネートを、50% TFE:50% Tris中にて0.52μMの33-mer標的ペプチドと混合し、室温で1時間インキュベートした後に、二重比色分光蛍光計にて350nmで励起し、350〜600nmの発光を記録した。50% TFE:50% Tris中にある33-merペプチド単独のものを補足的な対照として用いた。
【0147】
Tris:TFE(1:1)溶媒中での感染脳ホモジネート(グラフ、線1)、健常脳ホモジネート(グラフ、線2)およびペプチドのみ(グラフ、線3)の存在下における標的ペプチド(520nM)の蛍光スペクトルを図18に示している。このデータは、ハムスター(パネルA;270pg/ml)、ヒツジ(パネルB;60pg/ml)およびヘラジカ(パネルC;6pg/ml)からの0.01%脳ホモジネートに関するものである。
【0148】
実施例8
本発明のプローブを、特定のプローブが固定化されうるか否かを明らかにするため、および種々のプリオンタンパク質に対して特異的であることを明らかにするために、ポリスチレンプレート上に固定化した。予想外のことに、プローブを固定化しうるだけでなく、固定化プローブがプリオンタンパク質と結合する能力および特定のプリオンタンパク質に対する特異性も保っていることが見いだされた。
【0149】
以前の実験(以上に考察している)から、本発明のプローブ(例えば、ヒトまたはネズミのプリオンタンパク質に対して特異的な33-merプローブ)は、異なるpH、温度、イオン強度といった、それが存在する環境に応じて複数の異なるコンフォメーションをとると考えられることが判明している。このため、異なる配座異性体は異なる結合特異性を示すであろうと提唱された。これについて調べるために、異なるコンフォメーションを有するプローブを固定化し、各コンフォメーションの特異性に関して検査するためにこれらの固定化プローブを用いようとする試みが行われた。
【0150】
33-mer標的ペプチドのα-配座異性体を、1%SDSの存在下で中性(pH約7.0)のリン酸緩衝食塩水中に溶解した。β-配座異性体を得るために、このペプチドを酸性(pH約4.5〜約5.0)のクエン酸緩衝液(50mM)中に溶解した。このペプチド溶液をポリスチレンプレート中にて、特定の配座異性体が固体表面上に固定化されるまで、一晩(ほぼ16時間)インキュベートした。驚いたことに、ペプチドは活性形態(すなわち、プリオンタンパク質と結合しうる)でプレートに固定化されただけでなく、それらは特定のコンフォメーションも保っており、それ故に固定化された場合であっても特異性を維持していた。さらに驚いたことに、固定化された33-mer体は、後の時点で緩衝条件を変化させた場合ですら、その特定のコンフォメーションを維持した。すなわち、β-シートを主とするプローブコンフォメーションをもたらすように設計されてそのような条件下で固定化されたプローブは、それが曝露される条件がα-ヘリックス性コンフォメーションの形成を促すように変化した場合でさえ、固定化の後にはそのコンフォメーションを維持した。
【0151】
図20は、α-ヘリックス性33-merプローブおよびβ-シート性33-merプローブの独立した固定化の総合的な結果を描写している。プローブをピレンで標識し、上記の条件下で2つの異なるプレートに対して独立に固定化した。特定の緩衝液を除去した後に、固定化されたペプチドをリン酸緩衝食塩水(pH 7.0)とともに再びインキュベートし、α-またはβ-配座異性体のいずれかが固定化されたプレートに対して蛍光分光法を実施した。α-配座異性体の形成条件下(PBS、pH 7.0、1%SDS)では500nm前後にピークはなく(点線)、一方、β-配座異性体の形成条件下では、固定化された33-merペプチドが500nm前後にピークを示した(実線)。500nm前後のこのピークの出現は、溶液中に主としてβ-配座異性体である33-merエキシマが存在することの指標である。このように、固定化されたβ-配座異性体プローブがα-配座異性体が形成される条件にさらされた場合でも、それはβ-コンフォメーションを維持した。
【0152】
実施例9
ペプチドプローブの異なる配座異性体は、PrPCおよびPrPScと異なる特異性で結合することができる。例えば、β-コンフォメーションにある33-merプローブはPrPScと特異的に結合するが、α-コンフォメーションにある33-merプローブはPrPCと選好的に結合する。この事実は、α-コンフォメーションおよびβ-コンフォメーションの両方での固定化プローブを用いて確かめられ、そのことを裏づけるデータは図21に示されている。
【0153】
ある種の配座異性体(すなわち、β-配座異性体)はPrPScと特異的に結合することが見いだされており、結合したPrPScはさらに、特定の配座異性体に対して特異的な抗体を用いる検出などによる、他の手法によって検出することができる。この事実を示すために、正常な脳(図21A中の点線)およびスクレイピー感染脳(図21A中の実線)からの、種々の量の総タンパク質を含む脳溶解物を、ポリスチレンプレート上に固定化された33-merペプチド(SEQ ID NO:1または29)のα-またはβ-配座異性体とともにインキュベートした。室温で1〜2時間インキュベートした後に、非特異的に結合した物質を0.05%Tween-20を含むPBSで洗い流し、結合したPrPを抗PrPモノクローナル抗体によって検出した。図21Aに示されているように、β-配座異性体プローブをプレートに固定化し、PrPScおよびPrPCの両方を含む試料に曝露させた場合には、プローブはPrPScと低いタンパク質濃度(約50μg未満)で特異的に結合し、より高いタンパク質濃度(約50μgまたはそれ以上)でPrPScと選好的に結合する。
【0154】
図21Bに描写された実験は、固定化プローブがPrPScとPrPCとを識別し、β-配座異性体がPrPScと選好的に結合して、α-配座異性体がPrPCと選好的に結合することを示している。具体的には、この2つのプローブ配座異性体を、以上に詳述したように、異なるプレートに対して独立に結合させた。結合したプローブを、PrPScおよびPrPCの両方を含む脳溶解物に対して曝露させ、各プローブと結合したプリオンタンパク質の量を決定した(「PrPC」および「PrPSc」と表示されたバーによって表されている)。これらの2つの実験の比較により、α-ヘリックス配座異性体プローブはPrPCと結合し、PrPScに対してはそれよりも落ちる度合いで結合するが、β-シート配座異性体プローブは意味のある程度としてはPrPScのみと結合することが示されている。脳溶解物をプロテイナーゼKで処理した場合には、プロテイナーゼK抵抗性PrPはβ-配座異性体プローブのみと結合することが検出された(「PrPC(PK処理)」およびPrPSc(PK処理)」と表示されたバーを比較されたい)。このデータにより、β-配座異性体はPrPScと選択的に結合しうることが示された。
【0155】
これらの結果は、広範囲にわたる技術的および産業的な取り組みに対する応用性がある。例えば、これらの結果は、β-配座異性体を膜およびゲルマトリックスなどの固体支持体上に化学的に結合させ、続いてそれを、PrPC、PrPScまたはその両方と特異的に結合させてそれらを除去する目的で、中性pH、低塩濃度または添加物の存在下もしくは非存在下にある水溶液中で用いることができることを示している。このデータは、血液または血液製剤(例えば、血漿)からの感染性プリオンタンパク質の排除を、結合a β-配座異性体を膜に結合させ、プローブを固定化させた膜に血液または血液製剤を通過させ、膜を血液または血液製剤から分離することによって達成しるうことを示している。実際に、感染性プリオン粒子を除去するために、固定化されたβ-配座異性体プローブを単独で用いうること、または血液試料もしくは血液製剤試料などの試料からすべてのプリオン粒子を除去するために、β-配座異性体プローブとα-配座異性体プローブとの混合物を用いうることは明白である。
【0156】
実施例10
本実施例は、β-シートを主とする形態で固体支持体に結合したペプチドが、正常なプリオンタンパク質(PrPC)との比較で、ミスフォールディングしたプリオンタンパク質(PrPSc)と特異的に結合することを示す。より具体的には、SEQ ID NO:1の配列を含むペプチドを、酸性クエン酸緩衝液(50mMクエン酸、pH約4.5〜約5.0)で処理し、マイクロタイタープレートのウェル(4mg/mlペプチド;0.1ml/ウェル)に対して一晩かけて結合させた。続いて、コーティングされたプレートを、正常ハムスターまたはスクレイピー感染ハムスターからの脳ホモジネート(10%)とともにインキュベートした。さらに、プローブと同一な配列を有するが、α-ヘリックスを主とする形態またはβ-シートを主とする形態のいずれかにある、さまざまな量の遊離ペプチドを、PrPScまたはPrPCと結合ペプチドとの結合に関するI50またはKIを決定するために、脳ホモジネートとともにインキュベートした。結合したプリオンタンパク質を抗PrPモノクローナル抗体によって検出し、その結果を図22に示した。結合(Y軸)は、最大結合(遊離ペプチドの非存在下)に対するパーセンテージとして表した。これはこのため、固体支持体に結合させたプローブと結合したプリオンタンパク質の各コンフォメーションの総量が異なるレベルにある相対的尺度である。
【0157】
図22から見てとれるように、β-シートを主とするコンフォメーションに固定されている結合プローブは、PrPCとの比較で、PrPScと特異的に結合する。すなわち、β-シートを主とするコンフォメーションにあるプリオンタンパク質を含むプローブによって、結合させたβ-シートプローブからPrPScを競合的に除去することは可能であるが、α-ヘリックスを主とするコンフォメーションにあるプリオン配列を含むプローブによってはこれは可能ではない。
【0158】
本発明の範囲または精神を逸脱することなく、本発明にさまざまな修正または変更を加えうることは当業者には明らかであると考えられる。本発明のその他の態様は、本明細書で開示される発明の明細および実践を考慮することによって当業者には明らかになると考えられる。本明細書および実施例は例示のみを目的としたものとみなされるべきであり、発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されるものとする。
【0159】
本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の諸態様を図示しており、書面による説明とともに、本発明のいくつかの特定の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】TSE配座異性体のα-ヘリックス性の単量体およびβ-シート性二量体を、本発明のプローブのさまざまな態様とともに図示している。正常な野生型(wt)のプリオンタンパク質(PrPC)は単量体状態を選好し、一方、異常な病原型(PrPSc)は多量体(二量体またはそれを上回る)状態を選好する。
【図2】β-シートから構成されるTSEタンパク質を含む試料の診断的分析を図示している。上の反応は、試料中にミスフォールディングしたタンパク質が存在するプロセスを示しており、一方、下の反応は試料中にミスフォールディングしたタンパク質が存在しないプロセスを示している。
【図3】本発明に従って行われ、ポリ-L-リジン(20マイクロモル濃度(μM)、分子量(MW)52,000)をペプチドモデルとして用いた診断的分析の円二色性(CD)グラフを図示している。
【図4】ポリ-L-リジン(70μM、MW 52,000)をペプチドモデルとして用いて行われた診断的分析の吸光度グラフを図示している。
【図5】ポリ-L-リジン(70μM、MW 52,000)をペプチドモデルとして用いた図3による結果、ならびにコンフォメーション変化に対するpHおよび温度の影響を図示している。
【図6】コンフォメーション変化を来したα-ヘリックス性バンドル構造における近位および遠位位置での蛍光プローブとしてピレンを用いた分光分析を図示している。
【図7】タンパク質性材料またはプリオンの内部でのコンフォメーション変化に伴うエネルギー変化を図示している。
【図8】PrPCのα-ヘリックス性のループ構造を図示している。
【図9】PrPScの主としてβ-シート性である二次構造を図示している。
【図10】その配列によって表されるともに、両端でピレン標識と結合した図の形式にある、本発明の方法に用いうるパリンドローム性33-merプローブを図示している。 図10Aは、下線を施したパリンドローム配列を含む、33-merプローブ(SEQ ID NO:1)ならびに19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)の線状配列を描写している。この図には、ヒトのプリオンタンパク質またはハムスターのプリオンタンパク質に対して特異的なプローブが描写されている。このネズミ配列に対するプローブは、ヒトのメチオニン残基の代わりにネズミ配列ではバリンおよびロイシン残基となっている点を除き、同一である(SEQ ID NO:29、10および3を参照)。 図10Bは、フォールディングした配列を描写しており、これは配列から形成されうる平行パリンドロームを示すとともに、ペプチドの両端に存在するピレン分子がいかにしてエキシマ構造を形成しうるかを示している。
【図11】タンパク質およびペプチドがとりうる3種類の一般的なコンフォメーション形態の円二色性グラフを図示している(出典:Woody, R.W., In Circular Dichroism and the Conformational Analysis of Biomolecules, Fasman, G.D., Ed., Plenum Press, New York, 1996, pages 25-69)。
【図12】本発明に従って水性条件で行われ、パリンドローム性33-merプローブならびにそれを構成する14-merおよび19-merのアミノ酸配列(これらの3種の配列は図10に示されている)を用いた診断的分析の円二色性グラフを図示している。
【図13】ピレン標識が両端に結合したパリンドローム性33-merプローブ(SEQ ID NO:1、図10参照)を用いて行われた診断的分析の蛍光分光法データによる、図6の分光分析の変法を図示している。単量体(オープン)コンフォメーションにおけるスペクトルスキャンでは最大発光波長が370nmと385nmとの間にある顕著な蛍光性スペクトルが得られ、一方、ピレン標識ペプチドの励起した二量体またはエキシマ状態の最大発光波長は475nmと510nmとの間にあった。
【図14】ピレンを発蛍光団として用い、励起波長を350nm前後とし、観測波長を365nm〜600nm前後とした分光分析を図示している。単量体ピレンの励起後の正常な発光(単純蛍光)が、約370nmと385nmとの間の最大波長として記録された。
【図15】図10に描写されたパリンドローム性33-merプローブを用いた診断的分析における、種々のプローブ濃度での、エキシマ形成(IE)と単量体形成(IM)との比を図示している。タンパク質の溶解度は条件がその等電点に近い時に最も低くなると予想され、条件(2)が33-merペプチドの等電点に近づいた時にそれが観察されている:これらの条件下ではその溶解度が(1)と比較して劇的に低下するため、それはそれ自体と凝集する。この例では、極めて低濃度(10μM)のペプチドの下で、ペプチドの等電点で、静電的相互作用(pI=10)が自己会合を誘発する。以下の説明は図15に対して適用される。 1.pH 6〜8、塩濃度は100〜500mM KClの範囲 2.pH 10〜11、塩濃度は100〜500mM KClの範囲
【図16】ランダムコイルからβ-シートへの転換にかかわる最適なパラメーターを決定するための、パリンドローム性33-merプローブ(SEQ ID NO:1)、19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)(図10参照)をさまざまな条件下で用いた診断的分析におけるコンフォメーション変化に関する会合曲線を図示している。
【図17】プリオンタンパク質と33-merプローブとの複合体の蛍光を時間の関数として測定した、実施例6に記載された実験による結果を示している。複合体は時間経過に伴って(1時間〜24時間)大幅に解離した。
【図18】図18A〜Cは、TRIS:TFE(1:1)溶媒中での感染脳ホモジネート(1)、健常脳ホモジネート(2)およびペプチドのみ(3)の存在下における標的ペプチド(520mM)の蛍光スペクトルを図示している。このデータは、ハムスター(「A」;270pg/ml)、ヒツジ(「B」;60pg/ml)およびヘラジカ(「C」;6pg/ml)からの0.01%脳ホモジネートについて得られた。
【図19】本発明に従って行われた蛍光診断的分析の較正曲線を図示している。黒丸印を結んだ線は、本発明のプローブおよびシステムを用いて得られた検出曲線を表している。灰色の領域(約1pM〜11pMまで)および灰色の領域の右側にある部分は、現在入手しうる市販の検出キットの感度を表している。この図に図示されたデータは、本発明が、何の最適化も行わなくとも、今日用いられている有効性が認められている検査よりも2桁を上回る感度を有することの証拠となる。プリオン感染性:1 IU-3 fM=200,000 PrP。プリオンタンパク質の濃度は、Dr. Schmerrのキャピラリー免疫電気泳動法(Schmerr et al., J. Chromatogr. A., 853(1-2):207-214, August 20, 1999)を用いて測定した。このデータは図18から採用されている。
【図20】ポリスチレンプレートに対して独立に固定化された、本発明による2種類のプローブの蛍光スペクトルを描写している。この2種類のプローブは、異なるpHで独立に固定化された:「α-ヘリックス」と表示されたプローブはpH 7.4で固定化され、「β-シート」と表示されたプローブはpH 5.0で固定化された。この図はpH 7.0で得られたスペクトルを示しており、所定のコンフォメーションにあるペプチドの固定化によってペプチドがそのコンフォメーションに固定されることを示している。
【図21】固定化された標的ペプチドがPrPScまたはPrPCと結合する能力を保っていることを示すグラフを描写している。 図21Aは、本発明の固定化されたβ-シート性コンフォメーションのプローブとPrPCまたはPrPScのいずれかとの複合体の吸光度を描写しており、固定化プローブが選好的にPrPScと用量依存的な様式で結合することを示している。 図21Bは、固定化された標的ペプチドがPrPScとPrPCとを識別することを示す棒グラフを描写している。
【図22】結合したミスフォールディングしたプリオンタンパク質用プローブと正常なプリオンタンパク質またはミスフォールディングしたプリオンタンパク質のいずれかとを用いた競合アッセイの結果のグラフを描写している。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾病と関連性があるもののような、ミスフォールディングしたタンパク質の検出の分野に関する。より詳細には、本発明は、試料中のコンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンを検出するための方法、プローブおよびキットに関する。1つの態様において、コンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンは、アミロイド形成性疾患と関連性がある。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は, 2004年9月10日に提出された米国仮特許出願第60/608,541号および2005年1月7日に提出された米国特許出願第11/030,300号の出願日の恩典に依拠し、それを主張するものであり、それらの開示内容は全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
関連技術の考察
正常な可溶性を有するタンパク質のコンフォメーション的に変化した不溶性タンパク質への変換は、種々の疾患において原因となるプロセスであると考えられている。これらの疾患において、構造的なコンフォメーション変化は、典型的には、正常な可溶性を有する機能的タンパク質の規定された不溶性状態への変換を必要とする。このような不溶性タンパク質の例には、以下のものが含まれる:アルツハイマー病(AD)および脳アミロイドアンギオパチー(CAA)のアミロイド斑におけるAβ-ペプチド;パーキンソン病のレヴィ小体におけるα-シヌクレイン沈着、前頭側頭型痴呆およびピック病での神経原線維変化におけるタウ;筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ハンチントン病におけるハンチンチン;ならびにクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)におけるプリオン。総説に関しては、Glenner et al., J. Neurol. Sci. 94: 1-28, 1989;Haan et al., Clin. Neurol. Neurosurg. 92(4):305-310, 1990を参照されたい。
【0004】
しばしば、これらの高度に不溶性のタンパク質は、β-プリーツシート性コンフォメーションという共通の特徴を有する、非分枝性の細線維から構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、大脳および髄膜の血管内(脳血管沈着)ならびに脳実質中(斑)に存在しうる。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究により、アミロイド沈着の中枢側にある細胞では正常な機能が妨げられることが示されている(Mandybur, Acta Neuropathol. 78: 329-331, 1989;Kawai et al., Brain Res. 623: 142-146, 1993;Martin et al., Am. J. Pathol. 145: 1348-1381, 1994;Kalaria et al., Neuroreport 6: 477-80, 1995;Masliah et al., J. Neurosci. 16: 5795-5811, 1996)。他の研究により、アミロイド細線維が実際に神経変性を開始させることがさらに示されている(Lendon et al., J. Am. Med. Assoc. 277: 825-831, 1997;Yankner, Nat. Med. 2: 850-852, 1996;Selkoe, J. Biol. Chem. 271: 18295-18298, 1996;Hardy, Trends Neurosci. 20: 154-159, 1997)。
【0005】
ADおよびCAAの両者において、主なアミロイド成分はアミロイドβタンパク質(Aβ)である。Aβペプチドは、アミロイドβ前駆タンパク質(APP)から2種類のセクレターゼと推定されるものの作用によって生成され、正常なCNSおよび血液中に低レベルで存在する。主要な2つの変異体であるAβ1-40およびAβ1-42は、APPの選択的なカルボキシ末端切断によって生じる(Selkoe et al., PNAS USA 85: 7341-7345, 1988;Selkoe, Trends Neurosci. 16: 403-409, 1993)。ADおよびCAAのいずれのアミロイド沈着においても、この2種類のペプチドのうちAβ1-42の方が細線維形成性が高く、存在量も多い。上述したAD症例におけるアミロイド沈着に加えて、ほとんどのAD症例には、血管壁におけるアミロイド沈着も伴ってみられる(Hardy, 1997、前記;Haan et al., 1990、前記;Terry et al., 前記;Vinters H. V., Cerebral amyloid angiopathy, Stroke Mar-Apr;18(2):311-324, 1987;Itoh Y., et al. Subpial beta/A4 peptide deposits are closely associated with amyloid angiopathy in the elderly, Neurosci. Lett. 155(2):144-147, June 11, 1993;Yamada M., et al., Subarachnoid haemorrhage in the elderly: a necropsy study of the association with cerebral amyloid angiopathy, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 56(5):543-547, May, 1993;Greenberg S.M., et al., The clinical spectrum of cerebral amyloid angiopathy: presentations without lobar hemorrhage, Neurology 43(10):2073-2079, Oct. 1993)。これらの血管病変はCAAの顕著な特徴であり、ADが存在しなくても存在しうる。
【0006】
ヒトのトランスサイレチン(TTR)は、大部分がβ-シート構造である4つの同一な単位から構成される正常な血漿タンパク質であり、ホルモンであるチロキシンの輸送体として働く。TTRのアミロイド細線維としての異常自己集合は、2種類のヒト疾患、すなわち老年性全身性アミロイドーシス(SSA)および家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)の原因となる(Kelly, Curr. Opin. Struct. Biol. 6(1):11-17, 1996)。FAPにおけるアミロイド形成の原因は、TTR遺伝子における点変異である;SSAの原因は不明である。臨床診断は、生検材料におけるインサイチューのアミロイド沈着を検出することによって組織学的に確定される。
【0007】
現在に至るまで、インビボでのTTRのアミロイドへの変換の機序はほとんど解明されていない。しかし、いくつかの研究施設は、正常ヒトTTRの部分的変性により、アミロイド変換をインビトロでシミュレートしうることを示している(McCutchen et al., Biochemistry 32(45):12119-12127, 1993;McCutchen and Kelly, Biochem. Biophys. Res. Comm. 197(2):415-421, 1993)。コンフォメーション転換の機序には、多量体化して線状のβ-シート構造を有するアミロイド細線維となる単量体性のコンフォメーション中間体が含まれる(Lai et al., Biochemistry 35(20):6470-6482, 1996)。このプロセスは、チロキシンまたはトリヨードフェノールなどの安定化分子との結合によって緩和することができる(Miroy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(26):15051-15056, 1996)。
【0008】
神経斑(neuritic plaque)が形成される正確な機序、および斑形成と疾患に伴う神経変性プロセスとの関係は明確にされていない。アルツハイマー病およびプリオン病の患者の脳におけるアミロイド細線維は、ある種の細胞の炎症性活性化をもたらすことが知られている。例えば、初代ミログリア培養物およびTHP-1単球性細胞株は、細線維性β-アミロイドおよびプリオンペプチドによって刺激されて、同一のチロシンキナーゼ依存性炎症シグナル伝達カスケードを活性化する。β-アミロイドおよびプリオン細線維によって誘発されたシグナル伝達応答は神経毒性産物の産生を招き、それは神経変性の一因となる(Combs et al., J. Neurosci. 19: 928-939, 1999)。
【0009】
プリオンは、ヒトおよび動物における中枢神経系の海綿状脳症の原因となる感染性病原体である。プリオンは細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。プリオン前駆体の可能性があるものは、PrP 27-30と呼ばれるタンパク質であり、これは重合(凝集)して、感染した脳において斑として認められる棒状の線維となる28キロダルトンの疎水性糖タンパク質である。正常なタンパク質相同体は容易に分解される点でプリオンとは異なり、一方、プリオンはプロテアーゼに対して高度の抵抗性がある。示唆されている。プリオンは感染性の高い核酸を極めて少量含み、それは従来のアッセイ方法によっては検出されないことが示唆されている(Benjamin Lewin, "Genes IV", Oxford Univ. Press, New York, 1990, page 1080)。現在最も有力な仮説は、プリオンタンパク質の感染性には核酸成分は必要でないというものである。
【0010】
完全なプリオンタンパク質をコードする遺伝子はそれ以来、クローニングされ、シークエンシングがなされ、トランスジェニック動物で発現されている。正常な細胞性プリオンタンパク質であるPrPCは、単一コピーの宿主遺伝子によってコードされ、通常はニューロンの外表面に認められる。翻訳後プロセスの過程では、PrPScと呼ばれるタンパク質が正常な細胞性PrPアイソフォーム(PrPC)から形成されて、プリオン病が起こる。PrPScは、動物およびヒトの伝染性神経変性疾患の伝播および発生病理のいずれにも必要である。
【0011】
正常なプリオンタンパク質(PrPC)は、本明細書の図8に示されているように、α-ヘリックス性のらせん状ループ構造が大部分を占める細胞表面メタロ-糖タンパク質であり、通常は中枢神経系およびリンパ系で発現される。これは抗酸化物質として作用すると考えられており、細胞のホメオスタシスと関連すると考えられている。しかし、異常型のPrP、すなわちPrPScは、プロテアーゼに対する抵抗性のある配座異性体であり、本明細書の図9に示されているように、主としてβ-シートを含む二次構造を有する。二次構造におけるこのコンフォメーション変化は、プリオン病のプロセスにおける凝集および最終的な斑沈着につながると考えられている。
【0012】
プリオン関連疾患には、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、シカおよびヘラジカの慢性消耗病、ならびにウシのウシ海綿状脳症(B SE)が含まれる(Wilesmith and Wells, Microbiol. Immunol. 172: 21-38, 1991)。ヒトのプリオン病は4種類が同定されている:(1)クールー、(2)クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー病(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)(Gajdusek, D.C., Science 197:943-969, 1977;Medori et al. N. Engl. J. Med. 326: 444-449, 1992)。
【0013】
プリオン病は伝染性かつ潜伏性である。例えば、プリオン病に伴う長い潜伏期のため、医原性CJDの全貌は、死体を供給源とするヒト成長ホルモン(HGH)により全世界で治療を受けた数千人もの人々において数十年にわたって明らかにならなかったと考えられる。生物学的製剤中のプリオンを検出することの重要性は、新変異型クロイツフェルト-ヤコブ病(nvCJD)を発症したヒトにウシプリオンが伝染したという可能性により、強く示されている(Chazot et al., Lancet 347:1181, 1996;Will et al., Lancet 347: 921-925, 1996)。
【0014】
プリオンによって引き起こされる疾患は診断が困難である。このような疾患は潜伏性または無症状(異常プリオンは検出されるが症状は検出されない)である可能性がある。さらに、プリオン関連タンパク質の正常な相同体が非感染生物の脳に存在することから、検出はさらに困難になる(Ivan Roitt et al., "Immunology", Mosby-Year Book Europe Limited, 1993, page 15.1)。
【0015】
プリオンに関係する感染症の存在を検出するために用いられる現行の方法は、脳内の肉眼的な形態学的変化、および一般的には症状が顕在化した後になってはじめて適用される免疫化学的手法に依拠している。現行の検出方法の多くは、抗体を利用するアッセイであるか、またはアフィニティークロマトグラフィーに依拠している。それらは、死んだ動物からの脳組織を用いるか、または場合によっては、血液試料のキャピラリー免疫電気泳動を用いる。
【0016】
脳組織を利用するアッセイは検出の遅れにつながる恐れがあるほか、被験動物を屠殺する必要もある。プリオン判定検査はまた、動物を屠殺して液状の脳組織試料を入手し、ウエスタンブロット法を用いてそれを抗体にさらすことも必然的に伴う。結果は6〜7時間で得られるものの、この検査は脳内のPrPSc蓄積と臨床症状の発現との間の6カ月間の遅れ時間の説明とはならない。扁桃体生検試料の採取ならびに血液および脳脊髄試料の採取は、正確ではあるものの外科的介入を必要とする恐れがあり、結果を得るためには数週間を必要とする。エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)、核磁気共鳴法(NMR)、円偏光二色法(CD)およびその他の非増幅的構造手法は、大量の試料、および、典型的には試料の供給源からかなり距離を隔てて位置する高額な装置を必要とする。
【0017】
ADおよびCAAなどの前記の疾患と関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質の検出方法も、前述したプリオン検出法と同じように、しばしば死後組織試料の採取を必要とする点で不十分である。
【0018】
したがって、コンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンに関する、信頼性があって費用が手頃な検出方法に対しては需要が存在する。このような方法は、迅速な診断を得るため、および予防的または治療的な療法を容易にするために、当の対象が生きている間に適用可能であるべきである。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明は、種々の疾患と関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質およびプリオンの検出のための、信頼性があり、費用が手頃で、しかも安全な方法を提供する。本発明の方法は、迅速な診断を得るため、および予防的または治療的な療法を容易にするために適用することができる。意義深いこととして、本発明の方法は少量の試料を用い、このため、現在公知である診断手法よりも侵襲性が低く、適用がより容易である。さらに、本発明の方法は、生きている対象からの試料を分析するために用いることができ、死後に得られた試料には限定されない。加えて、それらは、感染性材料が検査中に伝播しないことが保証される様式で利用することができる。
【0020】
本発明は、伝染性海綿状脳症(TSE)などの特定の疾患プロセスと関連性がある、コンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンにおけるコンフォメーション変化を利用するために触媒的増殖(catalytic propagation)を用いることにより、先行技術の診断手法に伴う多くの問題を克服する。触媒的増殖は、以下のようにして、試料中に存在するコンフォメーション的に変化したタンパク質断片またはプリオンの数を増幅させ、検出可能な凝集体を生じさせるために用いることもできる。
【0021】
コンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンを含む試料と、本明細書で後に定義するコンフォメーションプローブとの相互作用が起こると、プローブがコンフォメーション変化を来たし、コンフォメーション的に変化したタンパク質(これは可溶性でも不溶性でもよい)またはプリオンのコンフォメーションをとってそれらと凝集する。その結果として生じる、β-シートを呈する凝集体は、標準的な分析手法を用いて容易に検出することができる。その結果として、本発明は、サイズの小さな試料の迅速かつ費用対効果の高い分析を容易にし、脳および血液を非限定的に含む、さまざまな源からの組織および体液に対して広く適用可能である。
【0022】
本発明は、少量の、疾患との関連性があるコンフォメーション的に変化したタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、α-シヌクレイン、ロドプシン、クリスタリンおよびp53などの検出を可能にする。1つの好ましい態様において、本発明の方法は、試料中のプリオンを検出するために、本明細書の別の箇所に記載したようなパリンドローム性プローブ、例えば、PrPScタンパク質のアミノ酸配列126-104および109-126を含むパリンドローム性33-merプローブを用いる。1つの好ましい態様において、プローブは両端が、光学的に異なっていてプローブのβ-シート構造へのコンフォメーション変換に応じて検出可能となる部分(moiety)と結合している。
【0023】
1つの態様において、本発明は、試料中のコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンを検出するための方法であって、(a)試料を、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのコンフォメーション変換を来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブと反応させる段階;および(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと、それ故に試料の感染性と相関するような段階、を含む方法を提供する。複数の態様において、プローブは、ポリスチレンプレート、膜、セファロースまたはポリスチレンビーズなどの固体支持体上に固定化されている。
【0024】
本発明はまた、これらの方法を用いるキット、ならびに対象がコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを診断する方法も提供する。本発明のキットは、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのコンフォメーション変換を来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブを含みうる。キットがまた、プリオン病タンパク質と特異的に相互作用することができる、β-シート性コンフォメーションなどの特定のコンフォメーションを有する固定化プローブを含むこともできる。キットがさらに、プローブ末端と結合するかそれと結合した状態にあり、プローブの主としてβ-シート性のコンフォメーションへのコンフォメーション変換に応じて光学的に検出可能となる部分、ならびにキットを用いるための説明書、および試料を懸濁化または固定するための溶液を含んでもよい。
【0025】
対象がコンフォメーション的に変化したタンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを診断する方法は、(a)対象から試料を入手する段階;(b)試料を、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それによって(i)コンフォメーション変換、好ましくは主としてβ-シート性であるコンフォメーションへのそれを来たし、かつ(ii)試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブと反応させる段階;および(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料中のβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンのレベルおよび試料の感染性のレベルと相関し、しかも対象がβ-シート性コンフォメーションの不溶性タンパク質またはプリオンと関連した疾患に罹患しているか否か、またはそれに対する素因を有するか否かを示すような段階を含む。
【0026】
本発明はまた、試料からPrPScを減らす、または排除する方法も提供する。本方法は、主としてβ-シート性であるコンフォメーションを含む固定化プローブを用意する段階、固定化プローブを、PrPScを含むか含むことが疑われる試料と、固定化プローブが試料中のPrPScの少なくとも一部と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって接触させる段階、およびプローブ/PrPSc複合体を試料の残りから単離する段階を含む。複数の態様において、試料は、血液または血漿などの生物試料である。
【0027】
本発明の上記およびその他の局面を、以下の詳細な説明においてさらに述べる。
【0028】
発明の態様の詳細な説明
ここで、本発明のさまざまな例示的な態様についてさらに詳細に言及するが、そのいくつかのものの例は添付の図面に図示されている。
【0029】
本明細書で用いる場合、以下の用語はそれぞれ以下の意味を有する。
【0030】
「アミロイド形成性疾患」とは、アミロイド斑またはアミロイド沈着が体内に形成される疾患のことである。アミロイド形成は、糖尿病、AD、スクレイピー、GSS、BSE、CJD、慢性消耗病(CWD)および関連性のある伝染性海綿状脳症(TSE)といった数多くの疾患で認められる。
【0031】
TSEは、CJD、クールー、FFIおよびGSSのようなヒト疾患を含む、致死性神経変性疾患である。TSEの動物での形態には、ヒツジにおけるスクレイピー、シカおよびヘラジカにおけるCWD、ならびにウシにおけるBSEが含まれる。これらの疾患は、宿主によりコードされるプロテアーゼ感受性の正常プリオンタンパク質(PrP-sen)のプロテイナーゼK抵抗性の異常アイソフォーム(PrP-res)の脳内での形成および蓄積を特徴とする。PrP-resは、PrP-senをβ-シート含有量のより多いPrP-res分子凝集体に変換させるコンフォメーション変化を伴う翻訳後プロセスによってPrP-senから形成される。PrP-resのこれらの高分子凝集体の形成は、PrP-resのアミロイド沈着が脳内に形成され、それが最終的には「海綿状」となる(孔で満たされる)という、TSEにより媒介される脳病態と密接な関連がある。
【0032】
TSE疾患は、例えば、ニューギニアの森林族における儀式としての人肉食、またはBSEではウシによる動物の部分の摂食によるというように、特異な物質に対する曝露によって伝染するように思われる。医原性CJDも、死体下垂体に由来するヒト成長ホルモンの投与、移植された硬膜および角膜移植片、ならびに神経学的処置の際の外科医の罹患組織に対する曝露によって引き起こされる。
【0033】
未変性のプリオンタンパク質(PrP)の存在が、TSEの発生病理には必須であることが示されている。細胞タンパク質PrP-senは、ヒトでは第20番染色体上に位置する遺伝子によってコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は神経組織および非神経組織の両方によってコードされ、そのmRNAはニューロン内で最も高い濃度で認められる。PrP遺伝子の翻訳産物は、ヒトでは253アミノ酸、ハムスターおよびマウスでは254アミノ酸、ウシでは264アミノ酸、ヒツジでは256アミノ酸からなる(これらの配列はすべて、種特異的PrPを発現するトランスジェニックマウスの作出方法を記載している米国特許第5,565,186号に開示されている)。プリオンタンパク質と関連した脳症において、細胞性PrP-senは改変型PrP-resに変換される。PrP-resは、PrP-resが凝集すること(Caughey and Chesebro, Trends Cell Biol. 7: 56-62, 1997);プロテイナーゼKによる消化に対して少なくとも部分的には抵抗性であること(PrP-senが完全に分解される条件下でプロテイナーゼK消化によってN末端のほぼ67アミノ酸のみが除去される)(Prusiner et al., Sem. Virol. 7: 159-173, 1996);および、PrP-senと比較して、α-ヘリックス性構造がより少なくβ-シート構造がより多いこと(Pan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10962-10966, 1993)により、PrP-senと識別することができる。
【0034】
PrP-senがスクレイピーに感染した神経移植片のレシピエント動物の脳組織で発現されないならば、移植片の外側で病態が生じることはなく、このことはPrP-resおよびPrP-senの両方が病態に必要であることを示している(Brander et al., Nature 379: 339-343, 1996)。感染から疾患の出現までの潜伏期の長さ(種によるが数カ月から数十年)が契機となり、PrP-resがPrP-senのPrP-resへの変換を誘導するような無細胞インビトロ検査が開発されている(Kockisko et al., Nature 370: 471-474, 1994;May 9, 1997に公開されたPrusiner et al., WO 97/16728号も参照のこと)。これらのインビボおよびインビトロの観察所見は、PrP-resとPrP-senとの直接的な相互作用がPrP-resを形成し、TSE発生病理を促すことを示している。
【0035】
特定のPrP配列を含む低分子合成ペプチドは、自発的に凝集して、TSE罹患脳における不溶性沈着物中に認められる型のβ-シート二次構造を高度に有する細線維を形成することが示されている(Gasset et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10940-10944, 1992;Come et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5959-5963, 1993;Forloni et al., Nature 362: 543-546, 1993;Hope et al., Neurodegeneration 5: 1-11, 1996)。さらに、別の合成PrPペプチドが、PrP-sen分子と相互作用して、プロテアーゼ抵抗性が高まった凝集複合体を形成することが示されている(Kaneko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:11160-11164, 1995;Kaneko et al., J. Mol. Biol. 270: 574-586, 1997)。
【0036】
「コンフォメーション的に変化したタンパク質」には、疾患と関連性のある三次元コンフォメーションを有し、疾患と関連性のない時にそれがとる三次元コンフォメーションとは異なる、任意のタンパク質が含まれる。コンフォメーション的に変化したタンパク質は、疾患を引き起こしてもよく、疾患の症状における因子であってもよく、または他の因子の結果として試料中またはインビボで出現してもよい。この定義によれば、コンフォメーション的に変化したタンパク質は、一方は疾患と関連性があってもう一方はないという少なくとも2つのコンフォメーションを生じる、単一のアミノ酸配列を有しうる。コンフォメーション的に変化したタンパク質は、一般にβ-シート形成物を呈する不溶性タンパク質の形態にあり、本発明において分析される。
【0037】
以下は、コンフォメーション的に変化したタンパク質と関連性のある疾患の非限定的な一覧であり、その後には関連性のあるコンフォメーション的に変化したタンパク質が括弧内に記されている:アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1-アンチキモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、アポE);プリオン病、CJD、スクレイピーおよびBSE(PrPSc);ALS(SODおよびニューロフィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レヴィ小体におけるα-シヌクレイン);前頭側頭型痴呆(細線維におけるタウ);II型糖尿病(アミリン);多発性骨髄腫-形質細胞異形成(IgGL鎖);家族性アミロイド多発性ニューロパチー(トランスサイレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2-ミクログロブリン);うっ血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心および全身性アミロイドーシス(トランスサイレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ハンチントン病(ハンチンチン)。
【0038】
「不溶性タンパク質」には、アミロイド形成性疾患と関連性のある任意のタンパク質が含まれ、これには前記の段落で特定されたタンパク質の任意のものが非限定的に含まれる。不溶性タンパク質は一般に凝集体中ではβ-シート形成物を呈する。
【0039】
「PrPタンパク質」「PrP」などは本明細書中で互換的に用いられ、ヒトおよび動物において疾患(海綿状脳症)を引き起こす感染性粒子形態のPrPSc、ならびに該当する条件下で感染性PrPSc形態に変換される非感染性形態PrPCの両方を意味するものとする。
【0040】
「プリオン」「プリオンタンパク質」「PrPScタンパク質」などは、PrPタンパク質の感染性PrPSc形態を指すために本明細書中で互換的に用いられる。「プリオン」は、「タンパク質(protein)」および「感染(infection)」という単語を縮めたものである。粒子は、PrP遺伝子によってコードされるPrPSc分子が、独占的ではないにしても大部分を占める。プリオンは細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。公知のプリオンは動物を感染させ、ヒツジおよびヤギの神経系の伝染性変性疾患であるスクレイピー、ならびにBSE(または狂牛病)およびネコのネコ海綿状脳症を引き起こす。ヒトが罹患することが知られているプリオン病には、(1)クールー、(2)CJD、(3)GSSおよび(4)FFIの4つがある。本明細書で用いる場合、「プリオン」には、用いられる任意の動物、特にヒトおよび家畜において、これらまたは他の疾患のすべてまたはいずれかを引き起こす、あらゆる形態のプリオンが含まれる。
【0041】
「PrP遺伝子」という用語は、本明細書において、公知の多型および病的変異を含むタンパク質を発現する遺伝物質について述べるために用いられる。「PrP遺伝子」という用語は一般に、任意の形態のプリオンタンパク質をコードする任意の種の任意の遺伝子のことを指す。PrP遺伝子は任意の動物からのものでよく、その多型および変異のすべてが含まれ、この用語にはまだ発見されていない他のこのようなPrP遺伝子も含まれると認識されている。このような遺伝子によって発現されるタンパク質は、PrPC(非病的)形態またはPrPSc(病的)形態のいずれもとりうる。
【0042】
「ペプチド模倣物」とは、別の生物活性のあるペプチド分子の活性を模倣する生体分子のことである。
【0043】
「タンパク質」とは、ペプチド結合によって結合した2つまたはそれ以上の個別のアミノ酸(天然に存在するか否かにかかわらず)の任意の重合体のことを指し、これは、1つのアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα-炭素と結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のα-炭素と結合したアミノ基のアミノ窒素原子と共有結合した場合に生じる。これらのペプチド結合、およびそれを構成する原子(すなわち、α-炭素原子、カルボキシル炭素原子およびそれらの置換基酸素原子、ならびにアミノ窒素原子およびそれらの置換基水素原子)は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。簡単に言うと、ポリペプチド骨格は、タンパク質のアミノ窒素原子、α-炭素原子およびカルボキシル炭素原子を指すと解釈されるものとするが、これらの原子のうち2つまたはそれ以上(置換基原子の有無にかかわらず)を偽原子(pseudoatom)として表すこともできる。実際に、本明細書に記載する機能性部位の記述子(descriptor)中に用いることができるポリペプチド骨格の任意の表現が、「ポリペプチド骨格」という用語の意味の範囲に含まれることは理解されていると考えられる。
【0044】
「タンパク質」という用語が、その意味の範囲に「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語を含むことは理解されている(これらは時に本明細書中で互換的に用いうる)。さらに、多数のポリペプチド性サブユニット(例えば、DNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII)または他の成分(例えば、テロメラーゼ中に存在するようなRNA分子)を含むタンパク質も、本明細書で用いる場合、「タンパク質」の意味の範囲に含まれるものと解釈される。同様に、タンパク質およびポリペプチドの断片も本発明の範囲に含まれ、これらを本明細書中で「タンパク質」と呼ぶこともできる。
【0045】
「コンフォメーション」または「コンフォメーション制約条件」とは、特定のタンパク質コンフォメーション、例えば、α-ヘリックス、平行および逆平行β鎖、ロイシンジッパー、ジンクフィンガーなどの存在のことを指す。さらに、コンフォメーション制約条件には、そのほかの構造情報を伴わないアミノ酸配列情報が含まれうる。一例として、「--C--X--X--C--」は、2つのシステイン残基が、この特定の制約条件の文脈ではそれぞれの実体が無関係であるような他の2つのアミノ酸残基によって隔てられなければならないことを表すコンフォメーション制約条件である。「コンフォメーション変化」とは、1つのコンフォメーションから別のものへの変化のことである。
【0046】
タンパク質の配列が適切な折り畳みをコード化している厳密な機序は不明である。折り畳みによってコード化される自然なままの状態を実現するためには、タンパク質分子は、多くの選択肢から選択される特有のコンフォメーションに変換されなければならない。機能的タンパク質は典型的には可溶性であり、コイルおよび秩序立った要素を含む、さまざまな構造をとることができる。秩序立った要素には、ミオグロビンおよびヘモグロビンなどのタンパク質中で多くを占めるαヘリックスが含まれる。ヒトの加齢プロセスの過程で、いくつかのタンパク質では、可溶性構造(例えば、αヘリックス性領域)が、機能喪失を伴う凝集を来すβシート構造へとコンフォメーション的に変化する。
【0047】
コンフォメーション的に変化した状態をとった場合にヒト疾患と関連性のあるタンパク質は少なくとも20種あり、これらのいくつかについては前述されている。図1は、TSE配座異性体のα-ヘリックス性単量体型およびβ-シート二量体型の両方を図示している。正常な野生型(wt)のプリオンタンパク質(PrPC)は単量体状態を選好し、一方、異常な病原型(PrPSc)はより容易に多量体状態をとる。
【0048】
タンパク質の構造は、さまざまな実験的または計算論的方法によって決定することができ、以下にそのいくつかについて述べる。タンパク質の構造は、少なくとも低分解能の構造を生成しうる任意の方法によって実験的に決定することができる。このような方法には現在、X線結晶回折法および核磁気共鳴(NMR)分光法が含まれる。X線結晶回折法はタンパク質の構造評価のための方法の一つであり、結晶中の原子核を取り囲む電子雲による特徴的波長のX線照射の回折に基づく。X線結晶回折法では、その特定の生体分子を構成する原子を原子に近い分解能で決定するために、精製された生体分子の結晶を用いる(しかし、これらは高い頻度で溶媒成分、補助因子、基質またはその他のその他のリガンドを含む)。結晶成長のための手法は当技術分野で公知であり、典型的には生体分子ごとに異なる。自動化された結晶成長の手法も公知である。
【0049】
核磁気共鳴(NMR)は現在、生体分子の液体コンフォメーション(結晶構造ではなく)の決定が可能である。典型的には、この手法を適用しうるのは、低分子量の分子、例えば、約100〜150アミノ酸未満のタンパク質のみである。しかし、最近の進歩は、同位体標識などの手法を用いた大きなタンパク質の溶液構造の実験的解明につながっている。NMR分光法がX線結晶回折法を上回る利点は、構造が結晶格子中でなく、格子近傍での相互作用がタンパク質の構造を変化させる可能性のある溶液中で決定されることにある。NMR分光法の欠点は、NMR構造が結晶構造ほど詳細でも厳密でもないことにある。一般に、NMR分光法によって決定される生体分子構造は、結晶回折法によって決定されるものに比較して中程度の分解能である。
【0050】
生体分子構造を検討するのに有用なその他の手法には、円二色性(CD)、蛍光および紫外-可視吸収分光法が含まれる。これらの手法の説明については、例えば、Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, 2nd ed., W. H. Freeman & Co., New York, NY, 1982を参照されたい。
【0051】
「等価な」とは、分析しようとするタンパク質のアミノ酸配列と類似したアミノ酸配列を有するが、アミノ酸配列中に、例えば置換、付加または欠失などによる、少なくとも1つの、しかし5つ未満(例えば、3つまたはそれ未満)の差異を有するタンパク質のことを指す。したがって、タンパク質の基本的機能および特定の残基のその使用環境における位置を実質的に変化させない、所定の配列中の1つまたは複数のアミノ酸の置換は、本発明を説明する目的においては等価である。
【0052】
「相同性」「の相同体」「相同な」「同一性」または「類似性」とは、2つのポリペプチド間の配列類似性のことを指し、このうち同一性は相対的に厳密な比較である。相同性および同一性はそれぞれ、比較のためにアラインメントを行いうる各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列中の位置が同じアミノ酸によって占有されている場合には、それらの分子はその位置では同一である。アミノ酸配列の同一性の度合いは、それらのアミノ酸配列によって共有される位置での同一なアミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の度合いは、それらのアミノ酸配列によって共有される位置での、アミノ酸の、すなわち構造的に関連のあるものの数の関数である。「関連のない」または「非相同な」配列は、本発明に用いられる配列の1つと、40%またはそれ未満の同一性を有するが、好ましくは25%未満の同一性を有する。関連のある配列は、40%を上回る同一性、好ましくは少なくとも約50%の同一性、より好ましくは少なくとも約70%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも約90%の同一性、より好ましくは少なくとも約99%の同一性を有する。
【0053】
「同一なパーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間の配列同一性のことを指す。同一性は、比較のためにアラインメントが行われた各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される一方の配列中の等価な位置が、もう一方のものの同じ位置で同じアミノ酸によって占有されている場合には、それらの分子はその位置で同一である;等価な部位が同じまたは類似の(例えば、立体的および/または電気的性質が類似している)アミノ酸残基によって占有されている場合には、それらの分子はその位置で相同(類似性)であると呼ぶことができる。相同性、類似性または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較される配列によって共有される位置での同一または類似のアミノ酸の数の関数のことを指す。FASTA、BLASTまたはENTREZを含む、さまざまなアラインメント用アルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTは、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, WI)の一部として利用可能であり、例えばデフォールトの設定で用いることができる。ENTREZは、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, NIH、Bethesda, MD)を通じて利用可能である。1つの態様において、2つの配列の一致度(percent identity)は、例えば、2つの配列間に単一のアミノ酸ミスマッチがあると仮定してそれぞれのアミノ酸ギャップに重み付けを行う、ギャップウェイト1を用いて、GCGプログラムによって決定することができる。配列同一性を決定するためのその他の手法は当技術分野で周知であって記載されている。
【0054】
「相互作用する」という用語は、本明細書で用いる場合、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、タンパク質-低分子または核酸-低分子相互作用などの、分子間の検出可能な相互作用(例えば、生化学的相互作用)を含むものとする。
【0055】
「不溶性タンパク質の相同体」という用語は、不溶性タンパク質遺伝子の相同体によってコードされるすべてのアミノ酸配列、および、このような配列と等価または相同なすべてのアミノ酸配列を含む。したがって、「不溶性タンパク質の相同体」には、Pfamファミリーにおいてヒットとしてスコア化されるタンパク質が含まれる。タンパク質配列中の「不溶性タンパク質」ドメインの存在を同定するため、および関心対象のポリペプチドまたはタンパク質が特定のプロフィールを有するという判定を下すために、タンパク質のアミノ酸配列を、いくつかのデータベースのうち1つ(例えば、SwissProt、PIR)に対して、さまざまなデフォールトのパラメーターを用いて検索することができる(http://www.sangetr.ac.uk?Software/Pfam?HMM_search)。例えば、HM_MER検索プログラムパッケージの一部として利用可能なhmmsfプログラムは、MILPAT0063に関するファミリー特異的なデフォールトプログラムであり、スコア15がヒットの判定に関するデフォールトの閾値スコアである。または、ヒットを判定するための閾値スコアを下げること(例えば、8ヒットに)もできる。Pfamデータベースに関する記述は、Sonham et al., Proteins 28(3):405-420, 1997に見ることができ、HMMの詳細な記述は、例えば、Gribskov et al., Meth. Enzymol. 183: 146-159, 1990;Gribskov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 4355-4358,1987;Krogh et al., J. Mol. Biol. 234: 1501-1531, 1994;およびStultz et al., Protein Sci. 2: 305-314, 1993に見ることができ、これらの内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0056】
「被験標本」とは、検査しようとする材料の試料のことであり、「試料」と意味の点で等価であり、それ故に互換的に用いられる。試料は、組織(例えば、挽肉、生検処置によって得られたある量の組織、血液または血液画分、例えば血漿など)から、ガラス製ホモジナイザー中でのホモジネート化によって調製してもよく、得られたものを直接用いてもよい。試料の量は、本発明が用いられる用途に適した任意の量でありうる。例えば、血液または血液画分を用いるならば、それは約1μl、約100μ1、約1ml、約10ml、約100ml、約1リットル(もしくは1パイント)またはそれ以上でありうる。本発明のいくつかの用途においては、1リットル(または1パイント)を上回る量を含む、大量の血液または血液製剤を試料として用いることができる。固形組織が試料の源である場合には、試料は約1mg〜1gmの間、好ましくは10mg〜250mgの間、理想的には20mg〜100mgの間であるべきである。試料にしようとする材料を、適した溶媒中に、好ましくは、pHが7.0〜7.8の間のリン酸緩衝食塩水中に懸濁させてもよい。溶媒は、Triton X-100、SDSまたはサルコシルなどの界面活性剤を含んでもよい。ホモジネート化は、ホモジナイザーによる多数回の、好ましくは10〜25ストロークの間;理想的には15〜20ストロークの間の往復運動処理を通して行われる。懸濁化された試料を好ましくは100〜1,000gで5〜10分間にわたって遠心し、上清材料を分析のための試料として採取する。試料によっては、Safar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998によって記載され、Wadsworth et al., Lancet 358: 171-180, 2001によって改良されたような手順に従って、上清材料を、リンタングステン酸などの別の試薬で処理することが好ましいと考えられる。
【0057】
検査する試料の量は、Bradfordによる手順によって測定されるような、上清溶液のタンパク質含有量の決定に基づく。これはタンパク質0.5〜2mgに対応することが好ましい。
【0058】
組織材料に関して上述した手順のほかに、被験試料を、血清、動物由来の産物を含む可能性のある医薬製剤、髄液、唾液、尿またはその他の体液から得てもよい。液体試料を直接検査してもよく、または上記のようにリンタングステン酸などの薬剤による処理に供してもよい。
【0059】
「コンフォメーションプローブ」は、好ましくは、標的タンパク質中のもののいくつかと類似した、好ましくは同一なアミノ酸配列を有し、かつ標的タンパク質(不溶性タンパク質)と複合体を形成した場合にコンフォメーション変化を来してβ-シート形成物を生じさせる可能性も有するペプチドである。このような変化は、典型的には、そのプローブによって通常は明示されないβ-シート構造につながる。理想的には、プローブは、標的タンパク質に由来する2つのアミノ酸配列を備えたパリンドローム性構造を有する。本発明において有用な、好ましいα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションプローブ(すなわち、溶液中でα-ヘリックス性またはランダムコイル性コンフォメーションを呈するプローブ)には、以下のものが含まれる:
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122と同一なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer
;
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122と等価なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer
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PrPScタンパク質(SEQ ID N0:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122〜104および109〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含む、パリンドローム性33-mer。
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Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40と等価なアミノ酸配列を含むプローブ
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Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸1〜40に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸11〜34と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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金属イオン相互作用を低下させるため、およびペプチドの溶解度を高めるために残基H13がRによって置換されている点を除き、Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸11〜34と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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Aβペプチド(Nref 00111747;ヒト)のアミノ酸25〜35と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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ポリリジンで認められるヘリックス-ループ-ヘリックス性コンフォメーション、および長さが少なくとも10アミノ酸残基であって
に対して等価または相同なアミノ酸配列を有するプローブ;
ポリグルタミンで認められるコンフォメーション、および
に対して等価または相同なアミノ酸配列を有するプローブ;
野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸104〜122と相同なアミノ酸配列を含むプローブ
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野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸104〜122と等価なアミノ酸配列を含むプローブ
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野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122と相同なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
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以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122と等価なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
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以下であるアミノ酸配列:(a)選択的に変異したTSE配列である;(b)不安定化されていて非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(ヒトNref 00130350)のアミノ酸配列104〜122に対して約70%〜約90%同一なアミノ酸配列を有する、を含むプローブ
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ヒト糖尿病と関連付けられているヒト膵島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション# NP_000406;ヒト)のアミノ酸1〜38と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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ヒト糖尿病と関連付けられているヒト膵島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション# NP_000406;ヒト)のアミノ酸1〜38に対応する配列内部の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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ヒト乳児SIDSと関連付けられているヒト肺サーファクタントタンパク質(NCBIアクセッション# AAH32785;ヒト)のアミノ酸1〜25と同一なアミノ酸配列を含むプローブ
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ヒトPrPScのアミノ酸104〜122またはネズミPrPScタンパク質のアミノ酸103〜121(SEQ ID NO:13および14)(SwissProt PO4156;Pfam ID Prion PF00377 & 03991)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ;
ヒトプリオンタンパク質(アクセッションPO4156)
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マウスプリオンタンパク質(アクセッションP04925)
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ヒト血漿ゲルゾリン(P06396;Muary et al., FEBS Lett. 260(1):85-87, 1990)のアミノ酸235〜269(以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
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以下に描写され、Levy et al., J. Exp. Med. 169(5):1771-1778, 1989によって報告されている、シスタチンCタンパク質配列(P01034)のアミロイド形成領域(アミノ酸26〜147;以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。適切なプローブは、少なくとも10アミノ酸であるその任意の部分である。数多くのプローブをそれに応じて配置することができる。
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4単位のプロリンリンカーを伴う、上記の配列のアミノ酸39〜47から採られたシスタチンCタンパク質のパリンドローム性プローブ
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以下に示されたハンチンチンタンパク質(ハンチントン病タンパク質)タンパク質配列の残基18〜40(以下では二重下線によって強調されている)からのオリゴグルタミンまたはポリグルタミンの10個から23個までの間の連続したグルタミン残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ:
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例示的なプローブ:
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以下に配列が示されている、原線維発生に関与するヒト膵島アミロイドポリペプチド(SEQ ID NO:21)NP_000406[gi: 4557655] Scrocchi et al., J. Struct. Biol. 141(3):218-227, 2003の、アミノ酸残基45〜50および48〜53(以下では強調されている)の少なくとも6個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
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変更することなしに用いてもよく、または本発明のパリンドローム性プローブを形成するために用いてもよい、上記のSEQ ID NO:21のペプチド配列の配列45〜53の内部の最小配列である以下の複数の配列を含む例示的なプローブ:
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トランスサイレチン(AAH20791[gi: 18089145];MacPhee and Dobson, J. Mol. Biol., 279(5):1203-1215, 2000)のペプチド断片のアミノ酸残基11〜19(以下では二重下線によって強調されている)の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
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SEQ ID NO:26(アミノ酸残基11〜19)の上記の強調された配列を基にしたパリンドローム性プローブ:
。
【0060】
標準的な実験室手法およびペプチドに関連した化学合成を用いて、必要以上の実験を行うことなく、さまざまなその他のプローブを容易に作製することができる。
【0061】
プローブの未変性コンフォメーションは、例えばCD、フーリエ変換赤外、紫外、NMRまたは蛍光などの、1つまたは複数の分光法によって決定される。溶液中でのこのコンフォメーションは、以下に述べるように、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれに対応すべきである(例えば、CDでは、スペクトルの性質がコンフォメーションを示す)。
【0062】
プローブは、光学的手段によって検出可能な置換基を含むように改変される。このような置換基にはトリプトファン(アミノ酸の1つ)、ピレンまたは同様の発蛍光団が含まれ、これらはすべてペプチドプローブの末端位置またはその付近に結合される。このような発蛍光団の結合は、当技術分野で公知である従来の化学的方法に従って進行する。好ましくは、しかし必然的にではないが、結合は発蛍光団とプローブとの共有結合による。理想的には、置換基は、エキシマとして知られる種を生じるような様式で相互作用する能力を有する。エキシマは、特定の波長の光で励起されると、異なる波長の光を発し、それがいずれかの発蛍光団が単独で作用することによって発せられるそれとは大きさにも違いがあるような、2つの発蛍光団の相互作用のことを表す。したがって、このようなエキシマの形成を可能にするコンフォメーションプローブの構造変化は、光学特性の変化によって検出することができる。このような変化は、プローブと結合した発蛍光団に応じて、数多くの中から例を挙げるとUV、IR、CD、NMRまたは蛍光を含む、公知の蛍光測定法によって測定することができる。これらの変化の大きさは、プローブがコンフォメーション変化を来した度合いと関係している。
【0063】
もう1つの態様において、プローブに放射性材料による置換を施してもよい。理想的には、これは、この目的に現在用いられる機器によって検出されるのに十分なエネルギーを有するポジトロン放射であるべきである。このような実体は、酸素-15(ポジトロン放射によって崩壊する酸素の同位体の1つ)またはその他の放射性核種であることが好ましい。この態様においては、放射標識プローブを患者に注入し、プローブとタンパク質標的との結合を外部からモニターすることができる。
【0064】
プローブは、溶液中でランダムコイル性またはα-ヘリックス性コンフォメーションを呈する、少なくとも5個、好ましくは約10個またはそれ以上のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチド模倣物を含むことができる。ペプチドまたはペプチド模倣物プローブの溶媒は水性であってpHが約4〜約10の間、好ましくは約5〜約8の間であってよく、イオン強度は約0.05〜約0.5の間であってよい(典型的には塩化ナトリウムまたは塩化カリウムといった塩化物として調製された場合)。溶媒がまた、例えばトリフルオロエタノールを容積比で約30%〜約70%、好ましくは容積比で約45%〜約60%というように、水混和性の有機材料をあるパーセンテージで含んでもよい。溶媒を、酢酸塩/酢酸、Trisまたはリン酸塩などの適した緩衝系を用いて調製してもよい。
【0065】
プローブ用アミノ酸の配列は、分析しようとする標的タンパク質の性質から決定され、通常は、α-ヘリックスまたはコイルのいずれかからβ-シートへの構造転換を来すことが知られている標的のある領域を含む。この後者の構造は、標的タンパク質の病原型と関連している。コンフォメーションプローブ配列は、理想的には、好ましくは約10〜25アミノ酸長であり、より好ましくは約14〜20アミノ酸長である関心対象の標的配列を2回反復して含む。これらは、図10に図示されているように、パリンドロームを形成するようにプローブ中に配置されることが好ましい。
【0066】
本発明の方法およびキットに用いられる好ましいプローブは、分析しようとするタンパク質のβ-シート領域に対応するアミノ酸配列を有する。これらのプローブは、好ましくは少なくとも5アミノ酸単位長であり、約300〜400アミノ酸単位長(-mer)またはそれ以上でありうるが、好ましくはこれらは約10アミノ酸〜約50アミノ酸長である。本発明のいくつかの局面において、β-シート領域に対応する好ましいプローブは、約15アミノ酸長〜約100アミノ酸長である。また別の局面において、好ましいプローブは約20アミノ酸長〜約40アミノ酸長である。所定のプローブの好ましい長さは、標的タンパク質と複合体化してβ-シート形成物を生じさせるプローブの能力の関数であると考えられる。
【0067】
本発明に用いるためのプローブは、配列データベース中の既存の情報から容易に決定され、または代替的には、実験的にも容易に決定されうる。すなわち、プローブは一般に、α-ヘリックスまたはランダムコイルから不溶性タンパク質中のβ-シート形成物へのコンフォメーション転換を来しうる標的タンパク質のペプチドの少なくとも一部分に対応する、最小限の数のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは約10〜25個のアミノ酸に対応すると考えられる。
【0068】
適切なプローブの提示および合成の手引きになると考えられる実験的情報に含まれるものには、本発明を利用する際に実施者を手引きすることができるいくつかの拘束条件があることに留意すべきである。初期コンフォメーション状態にある集団と(複合体の形態にある)転換したコンフォメーション状態を主とする集団とを隔てる違いは数kcalに過ぎない。図7に描写されているように、1つのコンフォメーション状態から別のそれへの転換は、プローブ分子と、β-シート複合体を形成するその天然の会合相手との会合のKd、または分子間の静電的相互作用の変化(例えば、溶液のイオン強度を低下させることによって引き起こされる変化)のいずれかに起因する、駆動力によって与えられる。Alなどの金属イオン、または別のリガンドの結合がかかわる場合には、その他の静電的または立体的な影響が寄与する可能性がある。プローブペプチドのサイズはさまざまでありうるが、検出条件下で「合理的に」明確に規定された二次構造を有し、かつプリオンタンパク質などの選択された標的に対する十分な認識特異性を有するのに十分な長さであるべきである。プローブペプチドはまた、変異したタンパク質または系統に対して一般的に適用しうることを目的として、これらの変化および/または異質性が分子の熱力学的安定性に影響を及ぼすことを認識した上で、単一部位変異も収容しうるべきである。さらに、プローブは患者集団に対して、その集団がヒト患者集団、家畜集団またはその他の哺乳動物集団のいずれであるかを問わず、非伝染性でなければならない。
【0069】
ひとたびペプチド配列がプローブ用に確立されれば(上記のようにβ-シート形成の原因となる標的タンパク質の少なくとも一部分に対応するもの)、ペプチド配列に対して、ペプチドプローブの分析を容易にしうる部分または化学的実体によるエンドキャップ処理を行う(ペプチドの一方、好ましくは両方の末端に)。この部分はピレンなどの発蛍光団であることが好ましいが、分析のために用いる分析手法に応じて多岐にわたることができる。部分または化学的実体は、ペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはそれらの付近で複合体化または共有結合させることができ、ペプチドには短い疎水性ペプチド配列によるエンドキャップ処理が施されることが好ましい。本発明の好ましい局面においては、プローブペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方が、サイズが約1〜約5アミノ酸である短い疎水性ペプチドによるエンドキャップ処理を受ける。これらは天然性でも合成性でもよいが、好ましくは天然性である(すなわち、標的タンパク質のβ-シート形成領域に由来する)。発蛍光団は、プローブのアミノ末端もしくはカルボキシ末端(好ましくは両方)またはそれらの付近に結合することが好ましく、数多くの中から例を挙げればピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンなどであってよく、好ましくはピレンである。発蛍光団は、正しい幾何学的配向にある時にエキシマを形成することが好ましい。
【0070】
本発明によるコンフォメーションプローブは、好ましくはパリンドローム性である。パリンドローム性という用語は、β-シート形成の原因となる標的タンパク質の一部分に対応する第1および第2のペプチド配列を含むが、それらのペプチド配列がパリンドローム様式で提示される、すなわち、第1のペプチド配列ではカルボキシ末端からアミノ末端に向かって(またはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって)、第2のペプチド配列ではアミノ末端からカルボキシ末端に向かって(またはカルボキシ末端からアミノ末端に向かって)提示されるような、所定のコンフォメーションプローブ配列の構成のことを指す。パリンドローム性コンフォメーションプローブ中の第1および第2のペプチド配列は、長さが同一であることは、いくつかの態様においてはそれが好ましいものの、その必要はないが、少なくともおおよそは等価であるべきである(この2つのペプチド配列(プローブの「アーム」)は、15アミノ酸長を上回らないべきであり、好ましくは10アミノ酸長を上回らず、さらにより好ましくは5アミノ酸長を上回らないべきである)。好ましくは、パリンドローム性プローブ配列内部の第1および第2のペプチド配列は、1〜5個のアミノ酸、好ましくは1〜3個のアミノ酸を含むリンカーによって隔てられており、それは好ましくは少なくとも1つのプロリンアミノ酸を含み、より好ましくは主としてプロリンアミノ酸を含む。図10は、本発明において有用な例示的なパリンドローム性33-merコンフォメーションプローブを提示している。
【0071】
好ましくは、本発明によるコンフォメーションプローブは、疎水性アミノ酸配列を含み、それは好ましくは標的タンパク質の妥当なペプチド配列(すなわち、β-シート形成の原因となるペプチド配列)に由来し、長さが1アミノ酸から20アミノ酸またはそれ以上とさまざまであってよく、好ましくは約2〜10アミノ酸長であって、コンフォメーションプローブの2つの末端のうち一方またはその付近に存在する。パリンドローム性コンフォメーションプローブの場合には、これらの疎水性アミノ酸配列は、プローブの2つのペプチドアームの末端に存在する。任意に、プローブが、合成性の疎水性アミノ酸配列(すなわち、シート形成の原因となる標的タンパク質のペプチドにとって天然のものでない)をプローブの少なくとも一端に含んでもよく、パリンドローム性プローブの場合にはプローブの両端またはその付近に含んでもよく、その長さは1アミノ酸という短さから20アミノ酸またはそれ以上とさまざまであってよく、好ましくは約3〜10アミノ酸長である。
【0072】
例えば、非限定的であるが、標的タンパク質中の所望のペプチド配列が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって読んで、QRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:15)(ここで、AAAV(SEQ ID NO:30)は疎水性アミノ酸配列である)を含むならば、パリンドロームは、VAAAKLRAVVTSRQ(SEQ ID NO:31)である第1のペプチド配列およびQRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:15)(またはその配列の類似した変形物)である第2のペプチド配列を含み、この2つの配列は、1〜5アミノ酸を含んでいてそのようなアミノ酸の少なくとも1つ、好ましくはそのようなアミノ酸のすべてではないにしても大部分がプロリンアミノ酸であるリンカーによって隔てられていると考えられる。したがって、プローブは以下のものであると考えられる:VAAAKLRAVVTSRQPPPPQRSTVVARLKAAAV(SEQ ID NO:28)(仮想的パリンドローム性プローブ)。
【0073】
好ましくは、パリンドローム性プローブは、標的タンパク質の妥当な配列から得られる疎水性アミノ酸配列を含むと考えられる。本発明によるコンフォメーションプローブは容易に得ることができる。
【0074】
本発明による適切な好ましいコンフォメーションプローブの形成の手引きとするために、以下の規則を用いることができる。これらの規則は、本発明によるコンフォメーションプローブに対して非限定的に全般的に適用されるが、より具体的には、本発明による好ましいパリンドローム性コンフォメーションプローブを作製する文脈において用いられる。
【0075】
好ましいコンフォメーションペプチドプローブを作製するために、以下の規則を本発明に対して適用することができる:
【0076】
1.ペプチド性パリンドロームのそれぞれの「アーム」は、最小限で5個、好ましくは少なくとも10〜12個のアミノ酸を有し、理想的には約25アミノ酸を上回らないべきである。
【0077】
2.アミノ酸配列は、α-ヘリックスまたはランダムコイルからβシートへのコンフォメーション転換を来すことが知られている、より大きなタンパク質のある領域から選択される。
【0078】
3.以下の補足的な基準のうち1つまたは複数:
a)疎水性アミノ酸の割合が高い−一般に約75%を下回らず(アミノ酸の数に基づく)、理想的には80%またはそれ以上である、
b)アミノ酸の反復数が少なくとも20回、好ましくは25回である(ハンチンチンに存在するように)、
c)反対符号のクラスター化した電荷(Zhang, S., Altman, M. and Rich, A. in Conformational Disease, A Compendium, Solomon, Taraboulos and Katchalski-Katzir, eds. The Center for the Study of Emerging Diseases, 2001に記載されているように)
d)ペプチドアームのそれぞれの間にある、1つまたはそれ以上のアミノ酸、好ましくは5つ未満を有し、1つまたは複数のプロリン残基を含むリンカー配列。
【0079】
ペプチドプローブに関する検査基準:
1.パリンドローム性ペプチドプローブのコンフォメーションはαヘリックスまたはランダムコイルのそれであるべきで、βシートであるべきではない。
2.ペプチドのコンフォメーションの決定は、理想的には、溶液中コンフォメーションを同定しうるCD測定によって達成される。これらは、水性緩衝液および/またはトリフルオロエタノールなどの有機物質を含みうる1つまたは複数の溶媒においてCD分光計を用いて行われる−図11参照。
【0080】
以上のように得られた一般的な規則を適用し、当技術分野において容易に利用しうる方法を用いることで、当業者は、本発明に用いるのに好都合な特性を有する多数のコンフォメーションペプチドプローブを作製することができる。
【0081】
「円二色性」(「CD」)は、CD分光偏光計によって測定されるように、光学活性のある物質がL側およびR側に円偏光した光を差異を伴って吸収した時に観察される。差異は非常に小さく、楕円率の度合いの分数に相当する。図11は、タンパク質およびペプチドがとりうる3種類の一般的なコンフォメーション形態を代表する連合的CD曲線を描写している。ペプチドおよびタンパク質中に存在する異なる型の二次構造に関するCDスペクトルは異なる。複合体化したタンパク質と複合体化していないタンパク質のCD曲線を測定して比較することは、本発明を実施する上での正確な測定手段である。
【0082】
予想外のことに、本発明者らは、生理的条件に近い条件下では、2つのペプチドを共有的に連結したパリンドローム性33-mer(SEQ ID NO:1または29)−これはヒトパリンドローム性プローブの場合であり、その配列は図10に描写されているが、ネズミプローブの場合には、14-mer(SEQ ID NO:3)および19-mer(SEQ ID NO:2)である−が、図12に図示されているように、14-mer構造に類似した2つの疎水性鎖に近接するにもかかわらず、主としてランダムコイル性またはα-ヘリックス性コンフォメーションを呈することを明らかにした。このパリンドローム性33-merペプチドの両端にピレンを付加することにより、図13に図示されているように、コンフォメーション変化のスペクトル観測が可能となった。単量体(オープン)コンフォメーションにある33-merの末端に結合したピレンに対するスペクトル走査では、最大発光が370〜385nmの間にある驚くほど異なる蛍光スペクトルが得られ、一方、励起された二量体またはエキシマ状態にあるピレン標識ペプチドは発光最大を475〜510nmの間に有する。
【0083】
コンフォメーション変化は、上記のいくつかの光学的方法のうち任意のものによって追跡することが可能であるが、本発明の好ましい態様では、感度、迅速性および操作の簡便さが得られる手法であることから蛍光分光法を利用する。プローブは、特定の光学特性を有する発蛍光団の両端への結合によって修飾される。これらは、特定波長の光(発蛍光団それ自体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルによって定まる)の照射によって蛍光を発する能力を含むことが好ましい。したがって、プローブは、吸収最大に近い波長の光の照射が、励起波長と識別されるような十分に波長の高い光をプローブに放出させるように設計されることが好ましい。このような照射および発光の測定、ならびにそれを行うための手法は、当業者には周知である。このような発蛍光団の例には、ピレン、トリプトファン、フルオレセインおよびローダミンが非限定的に含まれる。結合される発蛍光団は、正しい幾何学的配向にある時にエキシマを形成する能力も有することが好ましい。
【0084】
「エキシマ」とは、必ずしも共有的ではない、光子によって励起された分子的実体と励起されていない同一の分子的実体とで形成される付加生成物のことである。この付加生成物は一過性であり、それが光子の放出によって蛍光を発するまで存在する。エキシマ(またはエキシマの形成)は、通常の発光スペクトルのそれよりも長い波長での新たな蛍光バンドの生成によって認識することが可能である。エキシマは、励起スペクトルが単量体のそれと同一であることから、蛍光共鳴エネルギー移動と識別しうる。
【0085】
エキシマの形成は発蛍光団の幾何学的配置に依存し、それらの間の距離によって大きく影響される。1つの好ましい態様において、発蛍光団は各プローブ末端に存在し、発蛍光団間のエキシマ形成は、全体的なプローブコンフォメーションがα-ヘリックスまたはランダムコイルである限りは無視しうる程度である。これは、測定しようとする標的タンパク質の非存在下での分析のために用いられる溶媒中でのプローブの蛍光的挙動の測定によって容易に判定される。
【0086】
分析標的との相互作用に続いて起こる好ましいコンフォメーション転換は、エキシマ形成を分析しうる条件下で蛍光スペクトルを測定することによって得られる。典型的には、ピレンを例示的な発蛍光団として用いると、励起波長は約350nmであり、観測波長は365〜600nmである。励起後の単量体ピレンの正常な発光(単純蛍光)は最大波長が約370〜385nmとして記録される。代表的なデータが図14に示されている。
【0087】
図14に示されているように、エキシマまたは励起された二量体状態は、最大が475〜510nmにあるように記録される。励起された二量体状態の形成を、高濃度の塩の添加によって促し、ペプチドのpIに近いpHでの測定(例えば、図示されたケースでは、pH10前後で)を行うこともできる。
【0088】
したがって、本発明の1つの好ましい方法において、プローブと分析しようとする特定のタンパク質との相互作用は、エキシマ形成が起こるようなプローブにおけるコンフォメーション変化を引き起こす。これは本明細書に記載した手順によって容易に測定される。分析物の非存在下で呈示されるもの(α-ヘリックスまたはランダムコイル)からβシート構造へのプローブ構造の変換は、プローブに結合した発蛍光団が、容易に同定可能なエキシマを形成することを可能にする。さらに、エキシマ形成の程度は、存在するタンパク質分析物の量と直接的に関係する。
【0089】
タンパク質またはプリオンは、凝集形態で、または他の細胞構成要素、例えば脂質、他のタンパク質または糖質の存在下で検出することができる。分析のための試料調製物は、好ましくはホモジネート化されるか、または組織または凝集体構造の同様の破壊に供せられ、細胞残屑は好ましくは遠心処理によって除去される。この工程は理想的には緩衝塩類溶液の存在下で行われ、SDS、Triton X-100またはサルコシルなどのいくつかの界面活性剤の1つを利用してもよい。試料のさらなる濃縮を、いくつかの薬剤のうちいずれかによる処理によって達成することもできる;好ましい薬剤の1つはリンタングステン酸塩であり、これはSafar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998の方法に従って用いられる。
【0090】
本発明の1つの好ましい態様において、ペプチドプローブは、未知の試料または被験試料に対する添加のために選択される。ペプチドプローブは、好ましくは、α-ヘリックスまたはランダムコイルを主にした二次構造を有するタンパク質またはペプチド配列であるが、それらは必然的にではないものの好ましくは、β-シート形成の原因となる標的ペプチドの部分に由来する。1つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、ポリリジン中に認められるヘリックス-ループ-ヘリックス構造からなるペプチド断片である。もう1つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、野生型TSEから、所望の種特異的TSEペプチド配列から、またはさらには不安定化されて非感染性になるような様式で変異した選択的変異TSE配列から選択されるペプチド配列から作製することができる。加えて、一般的な蛍光検出法を用いた予想されるコンフォメーション変化の検出が可能となるように、ピレンなどの外因性蛍光体をペプチドプローブ中に付加または設計することもできる。
【0091】
ひとたびペプチドを選択したならば、それを被験試料に添加する。しかし、ペプチドプローブの添加の前に、試料を、当技術分野で一般に知られている超音波処理などの解離法に供することが好ましい。解離の段階は、これらの解離した試料材料が新たに導入されたペプチドプローブと自由に組み合わされ、それによって予想される触媒的増殖が促進するように、凝集している可能性のある試料を別々に分離することを可能にする。
【0092】
被験試料または解離させた被験試料を、ペプチドプローブと相互作用させ、その結果生じた混合物を、凝集体の検出用の当技術分野で一般的に知られている分析方法に供し、蛍光性ペプチドプローブを用いる場合には蛍光測定に供する。異常にフォールディングしたタンパク質または病原性タンパク質に特徴的な任意のβ-シート構成物を主として含む未知の試料または被験試料は、被験試料およびペプチドプローブの両方を含む最終混合物におけるβ-シート形成の増加、およびその結果としての凝集体形成をもたらす。逆に言えば、β-シートを主とする二次構造を有しない未知の試料または被験試料は、β-シート構造への転換も触媒せず、凝集体の形成を増殖させることもないと考えられる。
【0093】
被験試料における初期コンフォメーション変化は、さまざまなやり方で誘発することができる。いかなる理論にも拘束されることは意図しないが、金属リガンドの結合は、タンパク質コンフォメーションの変化を導き、凝集を促すように働くと考えられる。異なるペプチド配列の発現または切断は、細線維および斑の形成につながる高度な凝集を促進する可能性がある。遺伝子点変異もまた、2つの異なるコンフォメーションに必要な相対的エネルギーレベルを変化させ、構造転換における中間点の移行をもたらす可能性がある。さらに、濃度レベルの増大が、コンフォメーション転換を促すのに十分である可能性もある。しかし、初期誘発機構とは関係なく、プリオン関連疾患などにおけるような、異常なタンパク質コンフォメーションの多くにおける疾患プロセスは、以前には正常であったタンパク質の構造転換をもたらすような異常コンフォメーションの触媒的増殖を必然的に伴う。
【0094】
本発明において有用な光学的検出手法には、光散乱、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート(ANS)またはコンゴーレッド色素などの外因性蛍光体を用いた疎水性の検出、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、コンフォメーション変化または単量体またはα-βヘテロ二量体における境界面での結合のいずれかによる内在性トリプトファン蛍光の消光、平衡遠心法およびサイズ排除クロマトグラフィーが非限定的に含まれる。
【0095】
予想外のことに、本発明のペプチドプローブをポリスチレンプレートなどの固体支持体上に固定化することで、ペプチドを特定のコンフォメーションに「固定する」(すなわち、プローブにα-ヘリックスを主とする形態またはβ-シートを主とする形態を維持させる)ことができることが明らかになった。種々の固体支持体に対する種々のペプチドの固定化は当技術分野で公知であるが、典型的には、任意の特定のペプチドを満足しうる効率で固定化しうることを妥当な程度の確実性をもって予測することはできない。さらに、ひとたび固定化されたペプチドが、所望の活性を有すること(例えば、それが溶液中で示す活性を保つこと)を、妥当な程度の確実性をもって予測することもできない。実際に、ペプチドの固定化がペプチドの変性をもたらし、それ故にその二次構造のすべてではないにしても大部分の破壊をもたらす可能性があることは、当技術分野で周知である。したがって、特定のポリペプチドの固定化のための適切な条件は、しばしば試行錯誤的な実験を通じての、条件の慎重な選択によってはじめて同定しうることは周知であり、所定のペプチドを、その二次構造および生物活性を保ちながら首尾良く固定化すると考えられる条件を予測することは一般に不可能である。本発明は、以上に考察したように共通の構造的特徴を有する本発明によるプローブが、十分な効率で固体支持体上に固定化されうるだけでなく、ひとたび固定化されてもその活性を保ちうるという予想外の結果を開示する。さらに、本発明は、特定のコンフォメーション(例えば、β-シートまたはα-ヘリックス)で固定化されたプローブが、溶液中になければそのコンフォメーションを変化させると考えられる条件に対して曝露された場合ですら、そのコンフォメーションに付随する活性を保ちうることも開示する。したがって、本発明は関心対象のプリオンタンパク質と特異的に結合する固定化プローブまたはプローブのセットをいかにして提供するかという、当技術分野が直面している問題に対処し、それを解決する。
【0096】
本発明のプローブを固定化によって特定のコンフォメーションに「固定」することができ、それらのコンフォメーションがプリオンタンパク質と結合する活性を有するという発見は、本発明のプローブをさまざまな用途に用いるために本発明を実施することを可能にする。例えば、試料中のプリオンタンパク質の存在を迅速かつ効率良く検出するために(例えば、固定化されたα-ヘリックス性プローブを用いることにより)、または試料中の感染性プリオンタンパク質の存在を優先的に検出するために(例えば、固定化されたβ-シート性プローブを用いることにより)、ビーズに対して固定化されたプローブを用いることができる。また、試料中に存在するプリオンタンパク質の一部、基本的にはすべて、またはすべてと結合させ、続いてプリオンタンパク質を試料の残りから分離して、プリオンタンパク質がより少なくなった、プリオンを基本的には含まない、またはプリオンを完全に含まない試料を得るために、固定化プローブを用いることもできる。これらの手法は、医療の分野、特に血液製剤の製造および使用にかかわる局面にとって意義がある。例えば、本発明は、血液試料または血液製剤試料中のプリオンの存在を検出するだけでなく、血液試料または血液製剤試料中のプリオンおの数を減らすため、またはそれを完全に除去するためにも用いることができる。
【0097】
したがって、本発明の複数の態様においては、本発明のプローブを固定化する方法が提供される。本方法は一般に、本発明のプローブを提供する段階を含み、それは、所望のコンフォメーションにあるプローブを含む組成物を作り出す段階;固体支持体を提供する段階、固体支持体に対するプローブの固定化が可能となるのに十分な時間にわたってプローブを固体支持体に対して曝露させる段階、ならびに結合しなかったプローブおよび組成物中に存在するその他の物質を除去する段階を含みうる。本方法はさらに、固体支持体に対してプローブを架橋させる段階、結合しなかったプローブまたはその他の物質を除去するために結合したプローブを洗浄する段階、固体支持体およびプローブを乾燥させる段階、またはタンパク質-固体支持体の組み合わせを作り出すために用いられることが知られているその他の手順を含みうる。当然ながら、プローブを固体支持体に結合させる前に、プローブを、プローブがβ-シートを主とするコンフォメーションをとり、ミスフォールディングしたタンパク質と結合するのに十分な時間にわたって、ミスフォールディングしたプリオンタンパク質(PrPSc)などのミスフォールディングしたタンパク質に対して曝露させることができる。続いて、プローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体と固体支持体との結合を通常通りに進行させる。このような状況において、プローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体は、固体支持体に対して直接的に、プローブを介して、またはミスフォールディングしたタンパク質と別のプローブ(本発明のプローブまたは別のプローブ、例えば当技術分野で公知なものなど)との結合を介して間接的に、結合させることができる。さらに、プローブおよび/またはプローブ-ミスフォールディングしたタンパク質の複合体を、互いにまたは固体支持体と結合させる前または後に、任意の適した程度まで精製することもできる。
【0098】
所望のコンフォメーションにあるプローブを含む組成物を作り出す際には、本発明のプローブのコンフォメーションに影響を及ぼすために、pHまたは塩の点で異なる組成物を用いることができる。以上に考察したように、本発明のプローブのコンフォメーションは、プローブが内部に存在する溶液の塩濃度、pHまたはその両方を調整することによって変化させることができる。一般に、各プローブのpIに近い条件は、プローブにβ-シートを主とするコンフォメーションをとらせる。同様に、酸性(例えば、pHが約5.0未満)または塩基性(例えば、pHが約9.0を上回る)の条件は、プローブにβ-シートを主とするコンフォメーションをとらせる。これに対して、中性(例えば、pHが約5.0〜約9.0の間)の条件は、プローブにα-ヘリックスを主とする構造をとらせる。一般に、低い塩濃度(例えば、塩が100mM未満)はプローブにα-ヘリックス性コンフォメーションをとらせ、一方、高い塩濃度(例えば、塩が500mM)はプローブにβ-シート性コンフォメーションをとらせる。当業者は、不必要な実験を行うことなく、所望のコンフォメーションを有するプローブを得るために、pHおよび塩濃度の適した組み合わせを選択することができる。
【0099】
固体支持体は、結合ペプチドを結合させ、生物材料とともに用いるのに適した任意の公知の固体物質でありうる。多くのこのような固体支持体が当業者には公知である。固体支持体として有用な材料の例には、ポリスチレンを含むプラスチック、ガラス、多糖類、金属、ならびにラテックス、アクリル樹脂およびナイロンを含む種々のポリマーが非限定的に含まれる。固体支持体の形態の例には、プレート、ビーズおよび膜が非限定的に含まれる。固体支持体に対する多くの種類の修飾が、それらに対するペプチドの結合性を高めることが知られており、このような修飾および修飾された固体支持体のすべてが本発明に含まれる。固体支持体として含まれるものには、それにある物質が結合すると光学特性が変化するもの、および支持体に結合したペプチドにある物質が結合すると光学特性が変化するものというように、内在的な光学特性を備えたものがある。例えば、固体支持体は、内在的蛍光を有していて、本発明によるプローブと結合することができ、タンパク質がプローブに結合すると固体支持体の蛍光特性が変化して結合の検出が容易になるようなものでありうる。
【0100】
プローブを固体支持体に対して曝露させる時間は、用いる固体支持体の種類、供給されるプローブの量、および選択しうるその他の変数に応じて異なると考えられる。一般に、時間は、ペプチドを固体支持体に結合させるために典型的に用いられる量であると考えられ、典型的には、固体支持体および固体支持体の製造元によって与えられる示唆に基づく。したがって、時間は1分間というように短くてもよく、または1週間というように長くてもよい。一般に、曝露には、約1時間〜約72時間、例えば約2時間、約3時間、約14時間、約16時間、約24時間または約48時間などが含まれると考えられる。最適な結合時間および条件を特定するために、検査実施中に結合効率をモニターすることができる。
【0101】
結合しなかったプローブおよび組成物中に存在するその他の物質の除去は、任意の公知の適した手法によって行うことができる。典型的には、それは、固体支持体-結合ペプチドの組み合わせを結合用組成物から取り出すこと、または結合用組成物を固体支持体-ペプチドの組み合わせから取り出すことを含む。したがって、除去は、組成物を、それと固体支持体とを互いに曝露させた容器から注ぎ出すことによって達成しうる。同様に、それを吸うこと、吸引すること、サイホン式に吸うこと、排液させることなどによって達成することもできる。1つの特定の態様において、除去は、組成物を蒸発させることによって達成される。
【0102】
本方法はさらに、固体支持体-結合ペプチドの組み合わせを作り出すのに有用であることが知られた他の段階を含むことができる。当技術分野で公知であるように、ペプチドを結合させるために用いうる多くの固体支持体は、プローブが固体支持体の表面にある反応性基と架橋することによってペプチドと共有結合するように設計された表面を有する。このような架橋は、紫外光の照射、熱もしくは化学物質による処理、または乾燥を含む、さまざまなやり方で行わせることができる。任意の適した固体支持体および手法が本発明に含まれる。
【0103】
そのほかの段階には、結合しなかったプローブまたは組成物中に存在するその他の物質を除去するために結合したプローブを洗浄すること、固体支持体およびプローブを乾燥させること、またはタンパク質-固体支持体の組み合わせを作り出すために用いられることが知られているその他の手順が含まれうる。特定の需要に合わせて、さまざまなそのほかの処理および処理の組み合わせの中から選択することもできる。
【0104】
固定化プローブには数多くの使用法がある。一般に、固定化プローブは、試料中のプリオンタンパク質と結合させるために用いられる。結合は、試料中のプリオンタンパク質の存在を検出するため、または試料中のプリオンタンパク質と結合させてそれらを除去するためといった、多くの目的に用いることができる。試料中のプリオンタンパク質の検出は、食品または医療用製品(例えば、血液製剤)などの製品を、PrPScなどの感染性プリオンタンパク質を含む、プリオンタンパク質による汚染に関してスクリーニングする方法に用いることができる。試料からのプリオンタンパク質の除去は、食品または医療用製品(例えば、血液製剤)などの製品から、プリオンタンパク質を削減または排除する方法に用いることができ、これはヒトまたは動物に用いるための製品の安全性を向上させることができる。
【0105】
一般に、固定化プローブを用いるスクリーニングの方法は、固定化プローブを提供する段階、プリオンタンパク質を含むか含むことが疑われる試料を提供する段階、固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質(存在するならば)と結合するための条件下でそのために十分な時間にわたって試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、および固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階を含む。検出は、以上に考察および詳述したような、任意の公知の手法によることができる。複数の態様において、検出は、蛍光またはルミネセンスなどによる標識からの光の放出をアッセイすることを含む。また別の態様において、検出は、PAGEおよびゲル中に存在するタンパク質の染色による。さらに別の態様において、検出は、関心対象のプリオンタンパク質に対して特異的な抗体との反応による。検出手法のその他の非限定的な例は以上に示されている。
【0106】
固定化プローブに対する試料の曝露は、プリオンタンパク質(試料中に存在するならば)と固定化プローブとの結合を可能にする十分な時間および条件の下で行われる。タンパク質と他のタンパク質との結合のために適した条件は当業者に公知であり、任意の適した条件を用いることができる。例示的な条件は、以下の実施例で詳述されている。一般に、適した条件には、水性の環境で、中性pH(例えば、pHが約6.0〜約8.0)、塩が中程度(例えば、塩が約100mM〜約400mM)であり、タンパク質-タンパク質相互作用を阻害する可能性のある界面活性剤、乳化剤またはその他の副次的物質をほとんどまたは全く含まないことが含まれる。用いるべき固定化プローブおよび試料の量は、得られる試料の量、試料中に存在すると疑われるプリオンタンパク質の量、使用者が試料を固定化プローブに対して曝露させようとする時間、およびその他の検討事項によって異なると考えられる。固定化プローブおよび試料の量は一般に、以上に詳述したように、固定化されていないプローブを用いる場合に用いられる量と同じであると考えられる。複数の態様において、試料はPrPScなどの感染性または病原性のプリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる。
【0107】
一般に、試料中のプリオンタンパク質を減少させる方法は、固定化プローブを提供する段階、プリオンタンパク質を含むか含むことが疑われる試料を提供する段階、固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質(存在するならば)の少なくとも一部と結合するための条件下でそのために十分な時間にわたって試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、ならびに固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体を試料から除去する段階を含む。複数の態様において、本方法は、試料中のプリオンタンパク質の量を検出可能な量の差として減少させる。複数の態様において、本方法は、試料中のプリオンタンパク質の量を、検出限界未満に減少させる。複数の態様において、本方法は、試料からプリオンタンパク質を完全に排除する。複数の態様において、試料は、PrPScなどの感染性または病原性プリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる。
【0108】
試料中のプリオンタンパク質を減少させる方法において、固定化プローブおよび試料は、プリオンタンパク質を検出する方法において考察されたものと同じであることができ、以上に考察したものと同じ量および形態として提供することができる。固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体の試料からの分離は、任意の適した手法によることができ、試料を注ぎ出すことによる、試料からの固定化プローブおよび複合体の物理的除去による、などの任意の適した手法によることができる。当業者は、ビーズ、膜およびその他の固体支持体を水溶液から除去するためのさまざまなやり方を把握しており、そのようなやり方のうち任意のものを、固定化プローブおよび固定化された複合体を試料から除去するために用いることができる。1つの好ましい態様において、固定化プローブは、プローブは血液または血液製剤、例えば血漿などに対する透過性がある膜と結合しており、試料は血液または血液製剤、例えば血漿などであり、血液または血液製剤を、血液または血液製剤中のプリオンタンパク質の一部またはすべてを排除するために、プローブを結合させた膜を通して濾過する。試料の残りを膜に通過させることで、プローブを結合させた膜と試料との分離が引き起こされる。血液または血液製剤を濾過した後に、プローブが結合した膜をプリオンタンパク質の存在に関してアッセイすることができる。
【0109】
以上の開示から明らかであるように、複数の態様において、本方法はさらに、固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階を含む。検出は、以上に考察および詳述したような、任意の公知の手法によることができる。同様に、さまざまなそのほかの段階を、そのような段階が、本方法が試料中に存在するプリオンタンパク質の一部またはすべてを除去することを不可能にするのでない限り、本方法に含めることができる。
【0110】
本発明の方法の任意のものにおいて、アッセイの有効性を確かめるために、対照(陽性、陰性またはその両方)を実行することができる。陽性対照は一般に、少なくとも1つのプリオンタンパク質(典型的には特定の既知の型のもの)を含むことが判明している試料を用いて本方法を実施することを含み、本方法がタンパク質を検出しうること、および/または特定のタンパク質に対して特異的であることを確かめるために用いることができる。一般に、陽性対照は、既知のプリオンタンパク質が、典型的には既知の量で意図的に添加されている試料(手順の任意の段階で)を含む。陰性対照は一般に、いかなるプリオンタンパク質も含まないことが判明している試料を用いて本方法を実施することを含み、本方法がシステム上の偽陽性の結果を与えないことを確かめるために用いることができる。本方法における1つまたは複数の特定の段階で、その段階が予想通りに機能していることを確かめるために、その他の対照を実行することもできる。当業者は適した対照を十分に把握しており、不必要な実験を行うことなく、それらを設計して遂行することができる。
【0111】
以下の実施例において詳細に考察しているように、β-シートを主とするコンフォメーションで固定化された本発明のプローブは、病原型のプリオンタンパク質(例えばPrPSc)に対して特異的であることが見いだされた。したがって、プローブの固定化は、病原性プリオンタンパク質を特異的に検出する方法、および病原性プリオンタンパク質を削減または排除する方法を設計および遂行するために用いることができる。このことは、それが、費用も時間もかかる抗体の使用を必要とすることなく、プリオンタンパク質のサブセットの特異的な検出を可能にすることから、利用可能な他の方法を上回る利点である。
【0112】
したがって、複数の態様において、本発明は、試料からPrPScを削減または排除する方法を提供する。本方法は、β-シートを主とするコンフォメーションを含む固定化プローブを提供する段階、固定化プローブが試料中のPrPScの少なくとも一部と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって固定化プローブをPrPScを含むか含むことが疑われる試料と接触させる段階、およびプローブ/PrPSc複合体を試料から分離する段階を含む。複数の態様において、試料は血液または血漿などの生物試料である。
【0113】
以上に考察した本方法に鑑みて、本発明が、パッケージ化された組み合わせとして、特定のコンフォメーションを有する少なくとも1つの固定化プローブを含むキットを提供することは明白である。より具体的には、固定化は、さまざまな環境条件に対するその後の曝露中にそのコンフォメーションを保つ、特定のコンフォメーションにあるプローブを含む支持体を生じさせるため、本発明はこのような固定化プローブを含むキットを提供することができる。本明細書で考察したように、固定化プローブは、選ばれたプリオンタンパク質と特異的に結合させるために用いることができ、それ故に試料中の特定のプリオンタンパク質を検出するために用いること、または特定のプリオンタンパク質を試料から除去するために用いることができる。「パッケージ化された組み合わせ」とは、キットが、固定化プローブ、緩衝液、説明書などの1つまたは複数の構成要素を含む、個別のパッケージを提供することを意味する。単一の容器を含むキットは通常、複数の構成要素の組み合わせを有するとはみなされないと考えられるが、本発明の目的においては、このような構成は「パッケージ化された組み合わせ」の定義に含まれる。
【0114】
一般に、本発明のこの局面のキットは、固定化プローブ、ならびに本発明の方法を実施するために必要なその他の供給物および試薬のうち一部またはすべてを含む。したがって、それらは典型的には、少なくとも1つの容器内に少なくとも1つの固定化プローブを含む。いくつかの態様においては、単一のプローブ(同じプローブの多数のコピーを含む)が単一の固体支持体上に固定化され、単一の容器内に提供される。また別の態様では、それぞれが異なるプリオンタンパク質または異なる型の単一のプリオンタンパク質に対して特異的である2つまたはそれ以上のプローブが、単一の容器内に提供される。複数の態様において、同じ固定化プローブが多数の異なる容器内(例えば、単回用の形態)に提供され、または多数の固定化プローブが多数の異なる容器内に提供される。複数の態様において、プローブは多数の異なる型の固体支持体上に固定化される。固定化プローブおよび容器の任意の組み合わせを本発明は想定しており、実施者は、所望の用途のために適したキットを得るために、それらの組み合わせの中から自由に選択することができる。
【0115】
キットの容器は、本発明の固定化プローブをパッケージ化する、および/または含めるのに適した任意の容器でありうる。適した材料には、ガラス、プラスチック、厚紙またはその他の紙製品および金属が非限定的に含まれる。容器は固定化プローブを完全に包むこともでき、または粉塵、油などによる汚染を最小限に抑えるためにプローブを単に覆うのみであってもよい。キットは単一の容器または多数の容器を含むことができ、多数の容器が存在する場合には、それぞれの容器は他のすべての容器と同じでもよく、他のものとは異なってもよく、または他のすべてではないが一部の容器とは異なってもよい。
【0116】
キットそれ自体は任意の適した材料製でありうる。キット材料の非限定的な例には、厚紙またはその他の紙製品、プラスチック、ガラスおよび金属が含まれる。厚紙製キットが好ましい。
【0117】
キットは、1つまたは複数のプローブを固体支持体に対して固定化するために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべて、または試料中のプリオンタンパク質に対する固定化プローブの結合のために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべてを含むことができる。
【0118】
当然ながら、本発明のキットは、1つまたは複数の固定化されていないプローブ、および固定化プローブを含むまたは含まない1つまたは複数の固体支持体を含むことができる。このようなキットは、好ましくは、1つまたは複数のプローブを固体支持体に対して固定化するために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべて、または試料中のプリオンタンパク質に対する固定化プローブの結合のために必要な試薬および供給物の一部もしくはすべてを含む。
【0119】
本発明は、異常なタンパク質またはプリオンのレベルを感染性のレベルと直接相関づけるために、増殖性のコンフォメーション変化を用いる。この理由から、増殖の結果として感染性産物の増加がみられないような様式で、本発明の方法を利用することが好ましい。これは、異常型の感染、伝播および増殖という連鎖の間のつながりに「中断点」を配置することによって達成される。このような中断点は、凝集体の二量体形態と多量体形態との間の転換段階になければならない。多量体形態の物理的形成は、その形成につながる段階を単に妨げることによって遮断することができる。これは、関心対象の配列が関連性のないペプチドと結合しているプローブを用いることにより、または、リンカーまたは「係留物」の上のプローブは互いに遭遇して、それ故にシグナルの増幅をもたらす可能性が高いことを理解した上で、中性「遮断用」セグメントによって達成することができる。
【0120】
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに明確にするが、それらは本発明の単なる例示を意図しており、本発明をいかなる点でも限定するものとみなされるべきではない。
【0121】
実施例1
本実施例は、別に特記する場合を除いて、他の実施例で用いられる材料および方法を提供する。試料は、以下のようにして、本発明の利用を通じた検査および診断のために得ることができる。試料は、組織(例えば、挽肉の一部分、または生検処置によって得られたある量の組織)から、ガラス製ホモジナイザー中でのホモジネート化によって、または液体窒素の存在下で乳鉢および乳棒によって調製することができる。材料の量は1mg〜1gmの間であるべきであり、好ましくは10mg〜250mgの間、例えば20mg〜100mgの間などである。試料にしようとする材料を、適した溶媒中に、好ましくは、pHが7.0〜7.8の間のリン酸緩衝食塩水中に懸濁させてもよい。RNase阻害薬の添加は任意であり、好ましい。溶媒が、界面活性剤(Triton X-100、SDSまたはサルコシルなど)を含んでもよい。ホモジネート化は、ホモジナイザーによる多数回の、好ましくは10〜25ストロークの間;例えば15〜20ストロークなどの往復運動処理を通して行われる。懸濁化された試料を100〜1,000gで5〜10分間にわたり遠心し、上清材料を分析のための試料として採取することが好ましい。試料によっては、Safar et al., Nature Medicine 4: 1157-1165, 1998によって記載され、Wadsworth, The Lancet 358: 171-180, 2001によって改良されたような手順に従って、上清材料を、リンタングステン酸などの別の試薬で処理することが好ましいと考えられる。
【0122】
検査しようとする試料の量は、Bradfordによって記載された手順(Anal. Biochem. 72: 248-254, 1976)によって測定されるような、上清溶液のタンパク質含有量の決定に基づく。マイクログラム量のタンパク質を決定するための迅速かつ高感度な方法では、タンパク質-色素結合の原理を利用する。好ましくは、検査しようとする試料中のタンパク質の量は、タンパク質0.5mg〜2mgに対応することが好ましい。
【0123】
組織材料に関して上述した手順のほかに、被験試料を、血清、動物由来の産物を含む可能性のある医薬製剤、髄液、唾液、尿またはその他の体液から得てもよい。液体試料を直接検査してもよく、または上記のようにリンタングステン酸などの薬剤による処理に供してもよい。
【0124】
TSEを含む試料は、本発明に従って以下のように分析することができる。図2を参照すれば、概略図の上の列は、β-シートを含むものとして表されているTSEタンパク質の未知の試料を図示している。β-シートを超音波処理によって解離させる。標識ペプチドプローブを添加し、試料と結合させる。試料中のβ-シート性コンフォメーションが、ペプチドプローブがβ-シート性コンフォメーションをとるように誘導する。ペプチドプローブ中でのβ-シート増殖によって凝集体が形成される。その結果生じたβ-シートを主とする形態への転換および増幅された凝集体形成を、光散乱およびCDなどの手法によって検出する。1つの特に好ましい態様では、ペプチドプローブを蛍光標識し、蛍光検出を用いる。
【0125】
図2の下の列は、TSEタンパク質の未知の試料がその正常なαヘリックス性形態で表されている代替的な実施例を示している。一貫性を保つために、試料を上記のものと同じ解離過程に供する。標識されたペプチドプローブを添加しても、βシート形態への転換も未知の試料との結合も起こらない。その結果として、標識ペプチドプローブの場合には凝集体の蛍光シグナルはみられず、他の分析ツールによっても凝集体形成は検出されない。この概略図に基づくと、未知の試料を、このような異常なタンパク質コンフォメーションまたは配列の有無に関して検査することができる。
【0126】
実施例2
ポリリジンをモデルペプチドとして用いた。実験は、α-ヘリックスを主とする形態からβ-シートに富む形態への転換にかかわるコンフォメーション変化を例示するためのモデル系を用いて行った。選択されたモデル系では、神経毒性のないポリアミノ酸であるポリリジンを用いた。このポリアミノ酸は入手可能性および安全性を理由として選択した。これは通常、pH値が5〜9の範囲でランダムコイル性コンフォメーションを呈する。
【0127】
図3は、ポリ-L-リジン(20μM;MW 52,000)をペプチドモデルとして用いた実験のCDグラフを描写している。
【0128】
同じく図3にも示されているように:pH 7および25℃に維持した試料24は、ランダムコイル構造を表すほぼ204nmで最小値を呈した。pH 11(等電点の近く)および50℃に維持した試料26では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた(タンパク質コンフォメーションの例示的なCDスペクトルについては図11参照)。pH 7および25℃に維持した試料とpH 11および50℃に維持した試料との1:1配合物である試料28では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた。pH 7および50℃に維持した試料とpH 11および50℃に維持した試料との1:1配合物である試料30では、β-シート構造を表すほぼ216nmに最小値が生じた。
【0129】
実施例3
図4は、さまざまな環境条件下でのランダムコイルからβ-シートへのコンフォメーション変化に対する影響を観察するために、(1)ポリ-L-リジンを用い;および(2)さまざまな温度およびpHで行った実験の一般的なCD結果を図示している。これらの結果は、温度およびpHの両方が転換に重要な役割を果たすことを示している。これらの結果はまた、ランダムコイル性の試料に対する比較的少量のβ-シートペプチドの添加がβ-シートに富むコンフォメーションへの推移をもたらすこと、およびこのような変化を、試料の温度およびpHの環境に応じて加速させうることも示している。
【0130】
より具体的には、図4は、52,000MWのポリ-L-リジンを、実施例1〜3に記載された実験手法に従ってペプチドプローブとして70μMで用いて作成された吸光度グラフを図示している。図4は、以下のことを図示している。試料32(pH 11、25℃)は、α-ヘリックスを主とする構造を表すほぼ0.12にプラトーを呈した。試料34(pH 7、50℃に維持)はほぼ0.22にプラトーを呈し、これによってランダムコイルを主とする構造であることが示された。試料36(pH 7、50℃に維持した試料とpH 11、50℃に維持した試料との10:1配合物)では、ランダムコイルからβ-シート構造への加速された転換を示す、ほぼ0.22から0.33という鋭い傾斜が生じた。試料38(pH 7、25℃に維持した試料とpH 11、50℃に維持した試料との10:1配合物)は、ランダムコイルからβ-シート構造への転換を示す、ほぼ0.22から0.26への漸進的な傾斜を示した。図5は、これらのデータを表形式で描写している。
【0131】
上記の実験のすべてを基にした観察所見は、ランダムコイル性の試料に対する比較的少量のβ-シートペプチドの添加が、βに富むコンフォメーションへの推移をもたらしうること、およびこのような変化を試料の温度およびpHの環境に応じて加速させうることを示している。
【0132】
実施例4
図15に図示された結果を導いた実験は、33-mer標的ペプチドの使用を伴っており、それは
のいずれか単独であり、エキシマ形成の観測によってペプチド会合に関するプローブとした。
【0133】
本発明者らは、本発明者らがCD試験(ペプチドを標識しなかった)および分光蛍光試験(ピレン標識ペプチドを用いた)を用いて観察した結果を比較した。ホモジネートは用いなかった。図15に図示された結果を導いた実験は、33-mer標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)を、単量体を主とするものから二量体性(エキシマ性)へとコンフォメーション的に変化させて凝集化させる引き金となったのは何であるかを解明するために企画した詳細な試験である。33-mer標識ペプチドの会合を促した条件がμMの範囲で明らかにされた。
【0134】
33-mer標的ペプチドの静電的相互作用を遮蔽し、それによってその溶解度を最小限にする条件(pI=10)は、ペプチドが極めて低濃度(10μM)の下でペプチドの自己会合を誘発した。この自己会合は、二量体またはエキシマの形成、およびそれに付随する、ペプチドの末端にあるピレン発蛍光団に起因する蛍光の遠赤方向偏移によって明らかとなる。一例として、図15の曲線1は、主なペプチド配座異性体が単量体性である、pH 6〜8、KCl(100〜500μM)という条件を表している。図15の曲線2は、ペプチドが極めて低濃度の下で、本発明者らが強いエキシマ形成(単量体の凝集)を観測した、pH 10〜11、KCl(100-500μM)という条件を表している。
【0135】
実施例5
図16に図示された結果を導いた実験は、さまざまな個々のペプチドおよび33-merプローブ(19-merおよび14-merを含む)標的ペプチド(SEQ ID NO:1、19、2または3)の使用を伴う
。
CDによってモニターされるコンフォメーションに対する影響を観察するためにアッセイ条件を変更した。目標は、どの熱力学的条件が、単量体性ランダムコイルから凝集性β-シートへの一段階転換をもたらし、おそらくはペプチドのミセル形成体である会合性「X」状態を回避させるかを明らかにすることであった。
【0136】
図16に図示された結果を導いた実験では、ある範囲の溶媒条件およびある範囲のペプチド濃度(ペプチド濃度は対数尺度で提示されており、CDに関する標準的な図式を指してもいる−図11)にわたる詳細なコンフォメーション情報を得る目的で、CDによりペプチド会合をモニターするために特定波長(204nm)を用いた。
【0137】
標的ペプチドに関して回収された連合曲線(θ205)は、コイルから「X」状態を経てβ-シートへと移り変わる、それぞれ50μMおよび3mMの範囲で2つのコンフォメーション転換を示している。
【0138】
図16を参照すると、50%を上回る溶媒条件(一番左側の点線)に関しては、33-mer標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)
は、3μMではコイル状態からβ-シート状態に転換し、一方、19-merまたは14-merは転換することはできたものの、そのペプチド濃度は10倍の高さであった(中央の線)。水性条件下では(太線)、どのペプチドもβ-シート構造へと自己会合することはできなかった。
【0139】
33-merパリンドローム性ペプチド標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)は、50%溶媒(アセトニトリルまたはトリフルオロエタノール(TFE))条件下において、極めて低濃度(すなわち、1μM)で、「行き止まり」会合状態(水性条件下でプラトー効果によって示されるようなもの)を回避させたという点で、独特な特性を呈した。
【0140】
図16は、溶媒および温度の変動が標的ペプチドの会合挙動に大きくは影響しないこと、およびペプチドのすべてが同じ曲線をたどることを示しており、このことは配列特異性がこの種の分子集合における重要な特徴ではないことを示している。
【0141】
実施例6
図17に図示された結果を導いた実験は、以下のようにして行われた:
【0142】
1グラムのスクレイピー感染(293系統)ハムスター脳材料を、滅菌リン酸緩衝食塩水中にある状態で液体窒素下でホモジネート化した。滅菌PBSによる10倍連続希釈物を作製した。脳ホモジネート中のプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動による抗体捕捉によって決定した。10ngのプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)と等価な脳ホモジネートを、50%TFE中にて1.5μMの33-mer標的ペプチドと混合し、室温で1時間インキュベートした後に、二重比色分光蛍光計にて350nmで励起して350〜600nmの発光を記録し、励起および発光スキャンを5時間および24時間の時点で再び行った。33-merペプチド単独のものを対照として用いた。
【0143】
感染性プリオンタンパク質の添加は33-mer標的ペプチドの蛍光の有意な増加を導き、50% Tris:50% TFEという条件下でのCDデータによればこれはβ-シート性コンフォメーションに近いことが見いだされた。この蛍光の増加により、33-mer凝集体の形成が示された。この33-mer凝集体は不安定であり、時間経過に伴って非可逆的に解離した。
【0144】
複合体およびペプチドに関する蛍光の放出を比較しながら追跡することにより、複合体が時間経過に伴って解離することが示され、一方、377nm(三角形)および475nm(四角形)という2つの異なる波長でのモニタリングによる評価では、ペプチド蛍光は安定なまま保たれた。
【0145】
実施例7
図18に図示された結果を導いた実験は、以下のようにして行われた:
【0146】
1グラムずつのスクレイピー感染ハムスター脳および健常ハムスター脳、ヒツジ脳ならびにヘラジカ脳を、滅菌リン酸緩衝食塩水中にある状態で液体窒素下でホモジネート化した。滅菌PBSによる10倍連続希釈物を作製した。脳ホモジネート中のプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度を、キャピラリー電気泳動による抗体捕捉によって決定した。感染性および健常性の脳ホモジネートを、50% TFE:50% Tris中にて0.52μMの33-mer標的ペプチドと混合し、室温で1時間インキュベートした後に、二重比色分光蛍光計にて350nmで励起し、350〜600nmの発光を記録した。50% TFE:50% Tris中にある33-merペプチド単独のものを補足的な対照として用いた。
【0147】
Tris:TFE(1:1)溶媒中での感染脳ホモジネート(グラフ、線1)、健常脳ホモジネート(グラフ、線2)およびペプチドのみ(グラフ、線3)の存在下における標的ペプチド(520nM)の蛍光スペクトルを図18に示している。このデータは、ハムスター(パネルA;270pg/ml)、ヒツジ(パネルB;60pg/ml)およびヘラジカ(パネルC;6pg/ml)からの0.01%脳ホモジネートに関するものである。
【0148】
実施例8
本発明のプローブを、特定のプローブが固定化されうるか否かを明らかにするため、および種々のプリオンタンパク質に対して特異的であることを明らかにするために、ポリスチレンプレート上に固定化した。予想外のことに、プローブを固定化しうるだけでなく、固定化プローブがプリオンタンパク質と結合する能力および特定のプリオンタンパク質に対する特異性も保っていることが見いだされた。
【0149】
以前の実験(以上に考察している)から、本発明のプローブ(例えば、ヒトまたはネズミのプリオンタンパク質に対して特異的な33-merプローブ)は、異なるpH、温度、イオン強度といった、それが存在する環境に応じて複数の異なるコンフォメーションをとると考えられることが判明している。このため、異なる配座異性体は異なる結合特異性を示すであろうと提唱された。これについて調べるために、異なるコンフォメーションを有するプローブを固定化し、各コンフォメーションの特異性に関して検査するためにこれらの固定化プローブを用いようとする試みが行われた。
【0150】
33-mer標的ペプチドのα-配座異性体を、1%SDSの存在下で中性(pH約7.0)のリン酸緩衝食塩水中に溶解した。β-配座異性体を得るために、このペプチドを酸性(pH約4.5〜約5.0)のクエン酸緩衝液(50mM)中に溶解した。このペプチド溶液をポリスチレンプレート中にて、特定の配座異性体が固体表面上に固定化されるまで、一晩(ほぼ16時間)インキュベートした。驚いたことに、ペプチドは活性形態(すなわち、プリオンタンパク質と結合しうる)でプレートに固定化されただけでなく、それらは特定のコンフォメーションも保っており、それ故に固定化された場合であっても特異性を維持していた。さらに驚いたことに、固定化された33-mer体は、後の時点で緩衝条件を変化させた場合ですら、その特定のコンフォメーションを維持した。すなわち、β-シートを主とするプローブコンフォメーションをもたらすように設計されてそのような条件下で固定化されたプローブは、それが曝露される条件がα-ヘリックス性コンフォメーションの形成を促すように変化した場合でさえ、固定化の後にはそのコンフォメーションを維持した。
【0151】
図20は、α-ヘリックス性33-merプローブおよびβ-シート性33-merプローブの独立した固定化の総合的な結果を描写している。プローブをピレンで標識し、上記の条件下で2つの異なるプレートに対して独立に固定化した。特定の緩衝液を除去した後に、固定化されたペプチドをリン酸緩衝食塩水(pH 7.0)とともに再びインキュベートし、α-またはβ-配座異性体のいずれかが固定化されたプレートに対して蛍光分光法を実施した。α-配座異性体の形成条件下(PBS、pH 7.0、1%SDS)では500nm前後にピークはなく(点線)、一方、β-配座異性体の形成条件下では、固定化された33-merペプチドが500nm前後にピークを示した(実線)。500nm前後のこのピークの出現は、溶液中に主としてβ-配座異性体である33-merエキシマが存在することの指標である。このように、固定化されたβ-配座異性体プローブがα-配座異性体が形成される条件にさらされた場合でも、それはβ-コンフォメーションを維持した。
【0152】
実施例9
ペプチドプローブの異なる配座異性体は、PrPCおよびPrPScと異なる特異性で結合することができる。例えば、β-コンフォメーションにある33-merプローブはPrPScと特異的に結合するが、α-コンフォメーションにある33-merプローブはPrPCと選好的に結合する。この事実は、α-コンフォメーションおよびβ-コンフォメーションの両方での固定化プローブを用いて確かめられ、そのことを裏づけるデータは図21に示されている。
【0153】
ある種の配座異性体(すなわち、β-配座異性体)はPrPScと特異的に結合することが見いだされており、結合したPrPScはさらに、特定の配座異性体に対して特異的な抗体を用いる検出などによる、他の手法によって検出することができる。この事実を示すために、正常な脳(図21A中の点線)およびスクレイピー感染脳(図21A中の実線)からの、種々の量の総タンパク質を含む脳溶解物を、ポリスチレンプレート上に固定化された33-merペプチド(SEQ ID NO:1または29)のα-またはβ-配座異性体とともにインキュベートした。室温で1〜2時間インキュベートした後に、非特異的に結合した物質を0.05%Tween-20を含むPBSで洗い流し、結合したPrPを抗PrPモノクローナル抗体によって検出した。図21Aに示されているように、β-配座異性体プローブをプレートに固定化し、PrPScおよびPrPCの両方を含む試料に曝露させた場合には、プローブはPrPScと低いタンパク質濃度(約50μg未満)で特異的に結合し、より高いタンパク質濃度(約50μgまたはそれ以上)でPrPScと選好的に結合する。
【0154】
図21Bに描写された実験は、固定化プローブがPrPScとPrPCとを識別し、β-配座異性体がPrPScと選好的に結合して、α-配座異性体がPrPCと選好的に結合することを示している。具体的には、この2つのプローブ配座異性体を、以上に詳述したように、異なるプレートに対して独立に結合させた。結合したプローブを、PrPScおよびPrPCの両方を含む脳溶解物に対して曝露させ、各プローブと結合したプリオンタンパク質の量を決定した(「PrPC」および「PrPSc」と表示されたバーによって表されている)。これらの2つの実験の比較により、α-ヘリックス配座異性体プローブはPrPCと結合し、PrPScに対してはそれよりも落ちる度合いで結合するが、β-シート配座異性体プローブは意味のある程度としてはPrPScのみと結合することが示されている。脳溶解物をプロテイナーゼKで処理した場合には、プロテイナーゼK抵抗性PrPはβ-配座異性体プローブのみと結合することが検出された(「PrPC(PK処理)」およびPrPSc(PK処理)」と表示されたバーを比較されたい)。このデータにより、β-配座異性体はPrPScと選択的に結合しうることが示された。
【0155】
これらの結果は、広範囲にわたる技術的および産業的な取り組みに対する応用性がある。例えば、これらの結果は、β-配座異性体を膜およびゲルマトリックスなどの固体支持体上に化学的に結合させ、続いてそれを、PrPC、PrPScまたはその両方と特異的に結合させてそれらを除去する目的で、中性pH、低塩濃度または添加物の存在下もしくは非存在下にある水溶液中で用いることができることを示している。このデータは、血液または血液製剤(例えば、血漿)からの感染性プリオンタンパク質の排除を、結合a β-配座異性体を膜に結合させ、プローブを固定化させた膜に血液または血液製剤を通過させ、膜を血液または血液製剤から分離することによって達成しるうことを示している。実際に、感染性プリオン粒子を除去するために、固定化されたβ-配座異性体プローブを単独で用いうること、または血液試料もしくは血液製剤試料などの試料からすべてのプリオン粒子を除去するために、β-配座異性体プローブとα-配座異性体プローブとの混合物を用いうることは明白である。
【0156】
実施例10
本実施例は、β-シートを主とする形態で固体支持体に結合したペプチドが、正常なプリオンタンパク質(PrPC)との比較で、ミスフォールディングしたプリオンタンパク質(PrPSc)と特異的に結合することを示す。より具体的には、SEQ ID NO:1の配列を含むペプチドを、酸性クエン酸緩衝液(50mMクエン酸、pH約4.5〜約5.0)で処理し、マイクロタイタープレートのウェル(4mg/mlペプチド;0.1ml/ウェル)に対して一晩かけて結合させた。続いて、コーティングされたプレートを、正常ハムスターまたはスクレイピー感染ハムスターからの脳ホモジネート(10%)とともにインキュベートした。さらに、プローブと同一な配列を有するが、α-ヘリックスを主とする形態またはβ-シートを主とする形態のいずれかにある、さまざまな量の遊離ペプチドを、PrPScまたはPrPCと結合ペプチドとの結合に関するI50またはKIを決定するために、脳ホモジネートとともにインキュベートした。結合したプリオンタンパク質を抗PrPモノクローナル抗体によって検出し、その結果を図22に示した。結合(Y軸)は、最大結合(遊離ペプチドの非存在下)に対するパーセンテージとして表した。これはこのため、固体支持体に結合させたプローブと結合したプリオンタンパク質の各コンフォメーションの総量が異なるレベルにある相対的尺度である。
【0157】
図22から見てとれるように、β-シートを主とするコンフォメーションに固定されている結合プローブは、PrPCとの比較で、PrPScと特異的に結合する。すなわち、β-シートを主とするコンフォメーションにあるプリオンタンパク質を含むプローブによって、結合させたβ-シートプローブからPrPScを競合的に除去することは可能であるが、α-ヘリックスを主とするコンフォメーションにあるプリオン配列を含むプローブによってはこれは可能ではない。
【0158】
本発明の範囲または精神を逸脱することなく、本発明にさまざまな修正または変更を加えうることは当業者には明らかであると考えられる。本発明のその他の態様は、本明細書で開示される発明の明細および実践を考慮することによって当業者には明らかになると考えられる。本明細書および実施例は例示のみを目的としたものとみなされるべきであり、発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されるものとする。
【0159】
本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の諸態様を図示しており、書面による説明とともに、本発明のいくつかの特定の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】TSE配座異性体のα-ヘリックス性の単量体およびβ-シート性二量体を、本発明のプローブのさまざまな態様とともに図示している。正常な野生型(wt)のプリオンタンパク質(PrPC)は単量体状態を選好し、一方、異常な病原型(PrPSc)は多量体(二量体またはそれを上回る)状態を選好する。
【図2】β-シートから構成されるTSEタンパク質を含む試料の診断的分析を図示している。上の反応は、試料中にミスフォールディングしたタンパク質が存在するプロセスを示しており、一方、下の反応は試料中にミスフォールディングしたタンパク質が存在しないプロセスを示している。
【図3】本発明に従って行われ、ポリ-L-リジン(20マイクロモル濃度(μM)、分子量(MW)52,000)をペプチドモデルとして用いた診断的分析の円二色性(CD)グラフを図示している。
【図4】ポリ-L-リジン(70μM、MW 52,000)をペプチドモデルとして用いて行われた診断的分析の吸光度グラフを図示している。
【図5】ポリ-L-リジン(70μM、MW 52,000)をペプチドモデルとして用いた図3による結果、ならびにコンフォメーション変化に対するpHおよび温度の影響を図示している。
【図6】コンフォメーション変化を来したα-ヘリックス性バンドル構造における近位および遠位位置での蛍光プローブとしてピレンを用いた分光分析を図示している。
【図7】タンパク質性材料またはプリオンの内部でのコンフォメーション変化に伴うエネルギー変化を図示している。
【図8】PrPCのα-ヘリックス性のループ構造を図示している。
【図9】PrPScの主としてβ-シート性である二次構造を図示している。
【図10】その配列によって表されるともに、両端でピレン標識と結合した図の形式にある、本発明の方法に用いうるパリンドローム性33-merプローブを図示している。 図10Aは、下線を施したパリンドローム配列を含む、33-merプローブ(SEQ ID NO:1)ならびに19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)の線状配列を描写している。この図には、ヒトのプリオンタンパク質またはハムスターのプリオンタンパク質に対して特異的なプローブが描写されている。このネズミ配列に対するプローブは、ヒトのメチオニン残基の代わりにネズミ配列ではバリンおよびロイシン残基となっている点を除き、同一である(SEQ ID NO:29、10および3を参照)。 図10Bは、フォールディングした配列を描写しており、これは配列から形成されうる平行パリンドロームを示すとともに、ペプチドの両端に存在するピレン分子がいかにしてエキシマ構造を形成しうるかを示している。
【図11】タンパク質およびペプチドがとりうる3種類の一般的なコンフォメーション形態の円二色性グラフを図示している(出典:Woody, R.W., In Circular Dichroism and the Conformational Analysis of Biomolecules, Fasman, G.D., Ed., Plenum Press, New York, 1996, pages 25-69)。
【図12】本発明に従って水性条件で行われ、パリンドローム性33-merプローブならびにそれを構成する14-merおよび19-merのアミノ酸配列(これらの3種の配列は図10に示されている)を用いた診断的分析の円二色性グラフを図示している。
【図13】ピレン標識が両端に結合したパリンドローム性33-merプローブ(SEQ ID NO:1、図10参照)を用いて行われた診断的分析の蛍光分光法データによる、図6の分光分析の変法を図示している。単量体(オープン)コンフォメーションにおけるスペクトルスキャンでは最大発光波長が370nmと385nmとの間にある顕著な蛍光性スペクトルが得られ、一方、ピレン標識ペプチドの励起した二量体またはエキシマ状態の最大発光波長は475nmと510nmとの間にあった。
【図14】ピレンを発蛍光団として用い、励起波長を350nm前後とし、観測波長を365nm〜600nm前後とした分光分析を図示している。単量体ピレンの励起後の正常な発光(単純蛍光)が、約370nmと385nmとの間の最大波長として記録された。
【図15】図10に描写されたパリンドローム性33-merプローブを用いた診断的分析における、種々のプローブ濃度での、エキシマ形成(IE)と単量体形成(IM)との比を図示している。タンパク質の溶解度は条件がその等電点に近い時に最も低くなると予想され、条件(2)が33-merペプチドの等電点に近づいた時にそれが観察されている:これらの条件下ではその溶解度が(1)と比較して劇的に低下するため、それはそれ自体と凝集する。この例では、極めて低濃度(10μM)のペプチドの下で、ペプチドの等電点で、静電的相互作用(pI=10)が自己会合を誘発する。以下の説明は図15に対して適用される。 1.pH 6〜8、塩濃度は100〜500mM KClの範囲 2.pH 10〜11、塩濃度は100〜500mM KClの範囲
【図16】ランダムコイルからβ-シートへの転換にかかわる最適なパラメーターを決定するための、パリンドローム性33-merプローブ(SEQ ID NO:1)、19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)(図10参照)をさまざまな条件下で用いた診断的分析におけるコンフォメーション変化に関する会合曲線を図示している。
【図17】プリオンタンパク質と33-merプローブとの複合体の蛍光を時間の関数として測定した、実施例6に記載された実験による結果を示している。複合体は時間経過に伴って(1時間〜24時間)大幅に解離した。
【図18】図18A〜Cは、TRIS:TFE(1:1)溶媒中での感染脳ホモジネート(1)、健常脳ホモジネート(2)およびペプチドのみ(3)の存在下における標的ペプチド(520mM)の蛍光スペクトルを図示している。このデータは、ハムスター(「A」;270pg/ml)、ヒツジ(「B」;60pg/ml)およびヘラジカ(「C」;6pg/ml)からの0.01%脳ホモジネートについて得られた。
【図19】本発明に従って行われた蛍光診断的分析の較正曲線を図示している。黒丸印を結んだ線は、本発明のプローブおよびシステムを用いて得られた検出曲線を表している。灰色の領域(約1pM〜11pMまで)および灰色の領域の右側にある部分は、現在入手しうる市販の検出キットの感度を表している。この図に図示されたデータは、本発明が、何の最適化も行わなくとも、今日用いられている有効性が認められている検査よりも2桁を上回る感度を有することの証拠となる。プリオン感染性:1 IU-3 fM=200,000 PrP。プリオンタンパク質の濃度は、Dr. Schmerrのキャピラリー免疫電気泳動法(Schmerr et al., J. Chromatogr. A., 853(1-2):207-214, August 20, 1999)を用いて測定した。このデータは図18から採用されている。
【図20】ポリスチレンプレートに対して独立に固定化された、本発明による2種類のプローブの蛍光スペクトルを描写している。この2種類のプローブは、異なるpHで独立に固定化された:「α-ヘリックス」と表示されたプローブはpH 7.4で固定化され、「β-シート」と表示されたプローブはpH 5.0で固定化された。この図はpH 7.0で得られたスペクトルを示しており、所定のコンフォメーションにあるペプチドの固定化によってペプチドがそのコンフォメーションに固定されることを示している。
【図21】固定化された標的ペプチドがPrPScまたはPrPCと結合する能力を保っていることを示すグラフを描写している。 図21Aは、本発明の固定化されたβ-シート性コンフォメーションのプローブとPrPCまたはPrPScのいずれかとの複合体の吸光度を描写しており、固定化プローブが選好的にPrPScと用量依存的な様式で結合することを示している。 図21Bは、固定化された標的ペプチドがPrPScとPrPCとを識別することを示す棒グラフを描写している。
【図22】結合したミスフォールディングしたプリオンタンパク質用プローブと正常なプリオンタンパク質またはミスフォールディングしたプリオンタンパク質のいずれかとを用いた競合アッセイの結果のグラフを描写している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリオンタンパク質特異的プローブを固体支持体に対して固定化する方法であって、
あらかじめ選択されたコンフォメーションにある第1のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを提供する段階;
固体支持体を提供する段階;および
固体支持体を第1のプローブに対して、第1のプローブがそのあらかじめ選択されたコンフォメーションを維持する条件下および固体支持体に対する第1のプローブの固定化を可能にする条件下で、第1のプローブを固体支持体上に固定化させるのに十分な時間にわたって、曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項2】
固体支持体上に固定化されていないいずれかのプローブを除去する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
固体支持体を第1のプローブに対して曝露させる前に、
第1のプローブおよびプリオンタンパク質が互いに接触するのに十分な時間にわたってそのために適した条件下で、第1のプローブを、プリオンタンパク質を含む組成物に対して曝露させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
プリオンタンパク質がミスフォールディングしたコンフォメーションにある、請求項3記載の方法。
【請求項5】
プリオンタンパク質と第1のプローブとの複合体が形成され、第1のプローブが、固体支持体に対する第1のプローブの結合によって直接的に、または第1のプローブもしくはプリオンタンパク質と固体支持体上に固定化されている第2のプローブとの結合によって間接的に、固体支持体上に固定化される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1のプローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1のプローブのコンフォメーションがβ-コンフォメーションである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1のプローブが固体支持体に対して直接的に固定化される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
あらかじめ選択されたコンフォメーションにある第3のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを提供する段階;
第1のプローブを含む固体支持体を提供する段階;
固体支持体を第3のプローブに対して、第3のプローブがそのあらかじめ選択されたコンフォメーションを維持する条件下および固体支持体に対する第3のプローブの固定化を可能にする条件下で、第3のプローブを固体支持体上に固定化させるのに十分な時間にわたって、曝露させる段階;および
任意に、固定化されていないプローブを除去する段階、
によって、第3のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを固体支持体に対して固定化する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
固体支持体がプラスチック、ラテックスまたは金属を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
固体支持体がプレート、ビーズまたは膜の形態にある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第1のプローブが標識されている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
固体支持体上に固定化されたプローブに対してプリオンタンパク質を結合させる方法であって、
あらかじめ決定されたコンフォメーションおよびプリオンタンパク質に対する特異性を有する固定化プローブを提供する段階;
プリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる試料を提供する段階;および
固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって、試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項14】
固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品をプリオンタンパク質の存在に関してスクリーニングするために用いられる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品をPrPScの存在に関してスクリーニングするために用いられる、請求項13記載の方法。
【請求項17】
試料が、動物またはヒトの血液または血液製剤を含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
プローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項13記載の方法。
【請求項20】
固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体を試料から分離する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
プリオンタンパク質を試料から除去する方法である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品からプリオンタンパク質を削減または排除する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
プリオンタンパク質がPrPScである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
試料が、動物またはヒトの血液または血液製剤を含む、請求項20記載の方法。
【請求項25】
プローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項20記載の方法。
【請求項27】
固体支持体上に固定化されたプローブに対してプリオンタンパク質を結合させる方法であって、
固体支持体上に固定化され、その固定化された状態にある場合にプリオンタンパク質と特異的に結合するプローブを提供する段階;
プリオンタンパク質を含む試料を提供する段階;および
固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって、試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項28】
試料を固定化プローブに対して曝露させる前に、
プリオンタンパク質と特異的に結合する第2のプローブを提供する段階;および
第2のプローブが試料中に存在するプリオンタンパク質と結合するのに十分な時間にわたってそのために適した条件下で、第2のプローブを試料に対して曝露させる段階、
をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
第2のプローブが検出可能な標識によって標識されている、請求項28記載の方法。
【請求項30】
固体支持体上に固定化された少なくとも1つのプローブを含む少なくとも1つの容器を、パッケージ化された組み合わせとして含むキットであって、固定化プローブがあらかじめ決定されたコンフォメーションを有し、かつ既知のプリオンタンパク質またはプリオンタンパク質のセットと結合し、固定化プローブのあらかじめ決定されたコンフォメーションが、固定化されていないプローブにおける変化を引き起こす条件に対して固定化プローブが曝露された場合にも変化しないようなキット。
【請求項31】
固定化プローブがSEQ ID NO:lまたはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項30記載のキット。
【請求項32】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項30記載のキット。
【請求項33】
固体支持体に対して固定化されておらず、かつプリオンタンパク質と結合する第2のプローブをさらに含む、請求項30記載のキット。
【請求項34】
第2のプローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項33記載のキット。
【請求項1】
プリオンタンパク質特異的プローブを固体支持体に対して固定化する方法であって、
あらかじめ選択されたコンフォメーションにある第1のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを提供する段階;
固体支持体を提供する段階;および
固体支持体を第1のプローブに対して、第1のプローブがそのあらかじめ選択されたコンフォメーションを維持する条件下および固体支持体に対する第1のプローブの固定化を可能にする条件下で、第1のプローブを固体支持体上に固定化させるのに十分な時間にわたって、曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項2】
固体支持体上に固定化されていないいずれかのプローブを除去する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
固体支持体を第1のプローブに対して曝露させる前に、
第1のプローブおよびプリオンタンパク質が互いに接触するのに十分な時間にわたってそのために適した条件下で、第1のプローブを、プリオンタンパク質を含む組成物に対して曝露させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
プリオンタンパク質がミスフォールディングしたコンフォメーションにある、請求項3記載の方法。
【請求項5】
プリオンタンパク質と第1のプローブとの複合体が形成され、第1のプローブが、固体支持体に対する第1のプローブの結合によって直接的に、または第1のプローブもしくはプリオンタンパク質と固体支持体上に固定化されている第2のプローブとの結合によって間接的に、固体支持体上に固定化される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1のプローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1のプローブのコンフォメーションがβ-コンフォメーションである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1のプローブが固体支持体に対して直接的に固定化される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
あらかじめ選択されたコンフォメーションにある第3のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを提供する段階;
第1のプローブを含む固体支持体を提供する段階;
固体支持体を第3のプローブに対して、第3のプローブがそのあらかじめ選択されたコンフォメーションを維持する条件下および固体支持体に対する第3のプローブの固定化を可能にする条件下で、第3のプローブを固体支持体上に固定化させるのに十分な時間にわたって、曝露させる段階;および
任意に、固定化されていないプローブを除去する段階、
によって、第3のプリオンタンパク質特異的ペプチドプローブを固体支持体に対して固定化する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
固体支持体がプラスチック、ラテックスまたは金属を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
固体支持体がプレート、ビーズまたは膜の形態にある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第1のプローブが標識されている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
固体支持体上に固定化されたプローブに対してプリオンタンパク質を結合させる方法であって、
あらかじめ決定されたコンフォメーションおよびプリオンタンパク質に対する特異性を有する固定化プローブを提供する段階;
プリオンタンパク質を含む、または含むことが疑われる試料を提供する段階;および
固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって、試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項14】
固定化プローブと結合したプリオンタンパク質の存在を検出する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品をプリオンタンパク質の存在に関してスクリーニングするために用いられる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品をPrPScの存在に関してスクリーニングするために用いられる、請求項13記載の方法。
【請求項17】
試料が、動物またはヒトの血液または血液製剤を含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
プローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項13記載の方法。
【請求項20】
固定化プローブおよび固定化プローブ-プリオンタンパク質複合体を試料から分離する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
プリオンタンパク質を試料から除去する方法である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
動物もしくはヒトの食物または動物もしくはヒトの医療用製品からプリオンタンパク質を削減または排除する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
プリオンタンパク質がPrPScである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
試料が、動物またはヒトの血液または血液製剤を含む、請求項20記載の方法。
【請求項25】
プローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項20記載の方法。
【請求項27】
固体支持体上に固定化されたプローブに対してプリオンタンパク質を結合させる方法であって、
固体支持体上に固定化され、その固定化された状態にある場合にプリオンタンパク質と特異的に結合するプローブを提供する段階;
プリオンタンパク質を含む試料を提供する段階;および
固定化プローブが試料中のプリオンタンパク質と結合するような条件下でそのために十分な時間にわたって、試料を固定化プローブに対して曝露させる段階、
を含む方法。
【請求項28】
試料を固定化プローブに対して曝露させる前に、
プリオンタンパク質と特異的に結合する第2のプローブを提供する段階;および
第2のプローブが試料中に存在するプリオンタンパク質と結合するのに十分な時間にわたってそのために適した条件下で、第2のプローブを試料に対して曝露させる段階、
をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
第2のプローブが検出可能な標識によって標識されている、請求項28記載の方法。
【請求項30】
固体支持体上に固定化された少なくとも1つのプローブを含む少なくとも1つの容器を、パッケージ化された組み合わせとして含むキットであって、固定化プローブがあらかじめ決定されたコンフォメーションを有し、かつ既知のプリオンタンパク質またはプリオンタンパク質のセットと結合し、固定化プローブのあらかじめ決定されたコンフォメーションが、固定化されていないプローブにおける変化を引き起こす条件に対して固定化プローブが曝露された場合にも変化しないようなキット。
【請求項31】
固定化プローブがSEQ ID NO:lまたはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項30記載のキット。
【請求項32】
あらかじめ決定されたコンフォメーションが、プローブのβ-コンフォメーションである、請求項30記載のキット。
【請求項33】
固体支持体に対して固定化されておらず、かつプリオンタンパク質と結合する第2のプローブをさらに含む、請求項30記載のキット。
【請求項34】
第2のプローブがSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:29の配列を含む、請求項33記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【公表番号】特表2008−512483(P2008−512483A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531359(P2007−531359)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032135
【国際公開番号】WO2006/031644
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507077558)エイディーライフ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032135
【国際公開番号】WO2006/031644
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507077558)エイディーライフ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
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