説明

コンベア装置

【課題】本発明は、電源器を小型にして過大な電流が検知された場合であっても、搬送時間が短く効率的な搬送ができるコンベア装置を提供することを目的とした。
【解決手段】搬送方向に並ぶ複数のゾーンに区分され、各ゾーンには少なくとも1の駆動用モータ14が設けられたコンベア装置1であって、駆動用モータ14に電力を供給する電源器11と、電源器11からの出力電流を監視する電流監視手段12とを有した回路構成を備えており、電源器11の過大な電流値を検知した場合には、その電源器11が支配するゾーンの中で、最上流に位置する駆動用モータ14を停止する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモータを搭載したコンベア装置に関するものであり、特に装置全体における電源器の容量を縮減できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベア装置は、従来からモータを駆動源として被搬送物を搬送するものである。詳しくは、モータによってベルトやローラあるいはチェーンを回転させ、搬送ライン上の被搬送物を搬送するものである。
【0003】
ところで交流のモータを駆動源とする場合には、商用電源がそのままモータに供給されるが、低圧の直流によって駆動されるモータを使用する場合には、整流回路や定電圧回路を備えた電源器が電源として使用される。
そして一つの電源器から複数のモータに電力が供給される。
そのため電源器の理想的な容量は、搬送ライン上の全てに、モータが搬送できうる最大重量の被搬送物が置かれたときにモータを駆動できる容量である。つまり電源器は、その様な過酷な運転状況においても、効率的に搬送できる容量を備えることが望ましい。しかし実際のコンベア装置の使用状況を勘案すると、そのような過酷な運転状況はむしろ希である。
【0004】
従って上記した様な容量を備える電源器は、日常的な運転状況を考えると過剰品質であるといえる。
そこで上記した状況に鑑み、コンベアの製造コストを低減させることを目的として、小型で低容量の電源器を使用する方策が考えられる。ところが、実際上、突発的に大きな被搬送物が搬送されたり、大量の搬送物が連続的に搬送される場合もあり、この様な一定の条件により過大な電流が必要となる場合が生じ、低容量の電源器を使用した場合には、電源器の容量不足によりコンベア装置が正常に機能しない事態が想定される。
【0005】
特許文献1には、コントローラに流れる電流を監視し、その電流が一定値に達すると1つの電源器が駆動できるモータの範囲内で、被搬送物の搬送を停止させることなく、搬送方向上流側に流れる電流を制限し、下流側の被搬送物を優先的に搬送可能とした発明が開示されている。
【特許文献1】特許第3368563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の発明は、電源器の容量を小型にし、各ゾーンに設けられたコントローラに流れる電流を監視し、それぞれの前記コントローラに繋がれたモータに流れる電流を制御する。その制御は、コントローラに流れる過大な電流を検知した場合、1つの当該電源器によって支配される複数のゾーンの内、搬送ラインに存在する被搬送物のうち最も下流側のゾーンに対して許容電流値のうちの最大電流を供給する。さらに、その下流にゾーンがある場合は、そのゾーンに対して許容電流値のうちの最大電流より小さい中間電流を供給し、搬送ラインに存在する被搬送物のうち最下流のゾーンよりも1つ上流側に存在する被搬送物のゾーンに対して許容電流値のうちの最小電流を供給する。
【0007】
具体的には、図6(a)に示すように、電源器は太線に繋がれたモータにのみ電流を供給する。つまり、過大な電流を検知した場合は、前記した制御によると、ゾーンEに最大電流、ゾーンFに中間電流、ゾーンDに最小電流が供給される。さらに、図6(b)に示すように、被搬送物のそれぞれが下流側のゾーンに移動したときは、1つの電源器が支配するゾーンの最下流のゾーンFに最大電流が供給され、最下流のゾーンよりも1つ上流側に存在する被搬送物のゾーンEに中間電流が供給される制御がされる。
【0008】
つまり、特許文献1に記載の発明は、電源器を小型にできるが、コントローラの過大な電流を検知したときに実行される制御により、1つの電源器が支配するゾーンのうち2つのゾーンの被搬送物だけが下流側に搬送される。つまり、搬送される被搬送物の量が極端に少なくなり、搬送に時間が掛かるため効率よく短時間に搬送することが困難であった。
【0009】
そこで本発明は、上述した欠点に鑑み、電源器を小型にして過大な電流が検知された場合であっても、搬送時間が短く効率的な搬送ができるコンベア装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、搬送方向に並ぶ複数のゾーンに区分され、各ゾーンには少なくとも1つの駆動用モータが設けられたコンベア装置であって、前記駆動用モータに電力を供給する電源器を有し、当該電源器が複数のゾーンに設けられた駆動用モータに対して電力を供給する回路構成を備えたコンベア装置において、前記電源器からの出力電流を監視する電流監視手段を備え、前記電流監視手段が前記電源器の過大な電流を検知した場合には、前記電源器が電力を供給する駆動用モータの中で、最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた駆動用モータを停止することを特徴とするコンベア装置である。
【0011】
本発明におけるコンベア装置は、1又は2以上のゾーン毎に設けられた電源器の出力電流を監視する電流監視手段が設けられているため、電源器における過大な電流を検知できる。そして電源器の過大な出力電流値を検知すると、その電源器が支配するゾーンのうちの最上流のゾーンのモータを停止する。そのため、実質的に電源器の過度の負担が解消される。言い換えると、電源器が供給し得る電流値に収まる。
また、被搬送物は下流側優先に搬送されるが、前記した搬送方向最上流のモータが停止するだけであるため、搬送の効率は極端に低くならない。そのため、搬送に多くの時間を要さない。
つまり、本発明であれば、電源器の容量を縮減(電源器の小型化)することができ、製造コストの削減を実行することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた前記駆動用モータを停止しても尚電流監視手段が前記電源器の過大な電流を検知した場合には、最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた駆動用モータに加えて、下流方向に隣接するゾーンに設けられた駆動用モータも停止することを特徴とするコンベア装置である。
【0013】
請求項2のコンベア装置では、電流監視手段が過大な電流値を検知した場合、1つの電源器が支配するゾーンのうちの最上流のゾーンのモータを停止し、それでも過大な負担が解消されない場合は、さらにその下流側のゾーンのモータを停止させて搬送を行う。つまり、より大きな負荷があった場合でも、下流側の搬送が優先であるが、搬送の効率を極端に低くしないため搬送に大きな時間を要しない。そのため、過重量の被搬送物が複数存在する場合等でも下流側優先に効率的に被搬送物を搬送することができる。
要するに、電流監視手段が過大電流検知した場合は、前記電源器が支配するゾーンのうち最上流のモータに加え、それに隣接する下流方向のモータを順番に停止させることで、電源器の過負荷状態が短時間で解消され、効率的な搬送を継続して行うことができる。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の発明において、駆動用モータの停止は、電源器から当該駆動用モータに対する電力供給を停止することにより行い、ゾーン上に被搬送物が存在するか否かを検知する被搬送物検知手段を有し、停止した駆動用モータ以外の駆動用モータが設けられたゾーンに被搬送物が存在しなくなったことを条件として、停止中の駆動用モータに電力を供給するコンベア装置である。
【0015】
請求項3のコンベア装置は、被搬送物検知手段によって、各ゾーンに被搬送物が存在するか否かを検知することができる。つまり、本発明の制御を実行するにあたって、被搬送物検知手段を実行することで、より効率的な搬送が実行できる。
詳しくは、電源器の過大な電流が検知され、その電源器が支配するゾーンのうちの最上流側からモータが停止される制御が実行されると、それ以外の駆動しているモータのゾーンに存在する被搬送物が下流側に搬送される。つまり、その電源器が支配する下流側の被搬送物が優先的に搬送されることになる。そして優先的に搬送される被搬送物の全てが、下流方向に隣接する電源器が支配するゾーンへの移動したことが被搬送物検知手段によって確認されると、停止していたゾーンのモータに再び電流が供給される。
このような制御が行われるため、本発明の装置における搬送は、搬送ライン上で被搬送物同士が衝突することがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンベア装置は、電流監視手段が電源器の過大な電流を検知した場合に、その電源器が支配する搬送方向最上流に位置するモータを停止させ、その電源器の過負荷を解消できる。そのため比較的小さい容量の電源器であっても一時的な過積載状態を解消することができ、電源器の最大容量を縮減することが可能で、さらには、搬送効率を極端に低くすることがないため、効率的に被搬送物を搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態であるコンベア装置1について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態であるゾーン式制御を実施し得るコンベア装置1を示したもので、1本の搬送ラインを備えている。まず、コンベア装置1の一般的な構成等について説明する。
【0018】
搬送ラインは、搬送方向に並ぶゾーンa,ゾーンb及びゾーンc・・・を含む複数の制御ゾーンに区分されており、各制御ゾーンa,b,cは、各々一つのコンベアユニット2a,2b,2cを構成している。
【0019】
コンベアユニット2a,2b,2cは、平行に配置された左右の一対のサイドフレーム3,3間に被搬送物を搬送する複数の搬送ローラ4を搬送方向に所定間隔で軸支されたものである。この搬送ローラ4は、自由に回転する従動ローラ4bと、電源器により電流を供給される駆動用モータ14を内蔵するモータ内蔵ローラ4aとからなり、隣接する搬送ローラ4同士は伝導ベルト5で巻回されている。そのため、モータ内蔵ローラ4aの回転駆動力を全ての従動ローラ4bに伝導することができる。本実施形態では、ユニットの中央部に一つのモータ内蔵ローラ4aを配し、他は従動ローラ4bとしている。後記する様に、一つの電源器は、1又は2以上の駆動用モータ(モータ内蔵ローラ4a内のモータ)14に電力を供給するものである。
【0020】
コンベア装置1は、図2の様に3基の電源器11A,11B,11Cを備えている。そして電源器11A,11B,11Cそれぞれから複数のゾーンのa,b,c・・・の構成要素たる駆動用モータ(ゾーン内に一個ずつ設けられたモータ内蔵ローラ4a内のモータ)14に電力が供給される。
すなわち本実施形態では、複数のゾーンを1組としたパーティに1つの電源器11を設けており、原則として1つの電源器11は、支配するパーティの駆動用モータ14に対してのみ電力を供給する。ただし、本実施形態の特徴として、一定条件の下、電源器11が支配するゾーンのうちの最上流のモータ、つまりパーティの中の搬送方向最上流に位置するモータを停止させる制御を有している。またこの回路には、電源器11の出力電流を検知できる電流監視手段12が設けられている。
【0021】
また、コンベアユニット2a,2b,2cには、それぞれのモータ内蔵ローラ4a内の駆動用モータ14の駆動制御を行うゾーンコントローラ(図示しない)が設けられている。このゾーンコントローラは、隣接するコントローラ及び後述する上位制御手段13と信号線(図示しない)によって接続されている。つまり、ゾーンコントローラは、上位制御手段13からのRUN/STOP信号やCW/CCW信号(搬送方向を示す信号)などの外部入力信号を受けて、モータに信号を生成送出することができる。
さらに、ゾーンコントローラでは、一斉搬送モード、分離搬送モードに切り替えることが可能である。なお、これらのモードについては、本発明には直接関係しないので説明を省略する。
【0022】
また搬送ラインの運転状態は、プログラマブルロジックコントローラ(P.L.C)などにより構成される上位制御手段13によって集中管理される。上位制御手段13からそのライン全体を運転するか停止するかを示すRUN/STOP信号や、搬送方向を示すCW/CCW信号などの指令信号(外部入力信号)が供給され、これらの指令信号に基づいて搬送ライン全体の動作の制御が行われる。
【0023】
また、搬送ラインにおける各制御ゾーンa,b,c・・・は、各々センサの検知信号や、上下流の制御ゾーンから伝送される信号などに基づいて独立した搬送制御を行いつつ、搬送ラインとしての連携した搬送を確保している。
【0024】
制御ゾーンaには、被搬送物検知手段16aが設けられており、その被搬送物検知手段16aは在荷センサSa及び発光素子6で構成されている。
在荷センサSaは、サイドフレーム3上に設けられている。在荷センサSaとしては光電センサを用いることができ、対向するサイドフレーム3に発光ダイオードや赤外線ダイオード等の発光素子6を設けておく。これにより、被搬送物が搬送されてくると、発光素子6からの光が遮られて光電センサがオン/オフされ、被搬送物が所定位置まで搬送されたことを検知することが可能である。
【0025】
すなわち、在荷センサSaの出力を制御ゾーンaの被搬送物の有無を示す在荷信号として利用している。なお、ゾーンb,cの各コンベアユニットにも、在荷センサSaと同様の在荷センサSb,Scが設けられており、これらのセンサSb,Scの対向した位置には発光素子6が各々設けられている。これらの在荷センサSa,Sb,Scは、被搬送物の存在を検知するとオン(Hレベル)信号を出力し、被搬送物が存在しない場合にはオフ(Lレベル)信号を出力する。
【0026】
上記構成に加え、本実施形態のコンベア装置1における特有の構成について説明する。
【0027】
本実施形態では、各電源器11の出力電流を電流監視手段12によって監視し、その電流の状況を上位制御手段13に報知している。そして、電源器11と各ゾーンの駆動用モータとの間には、図3に示すようにリレースイッチ15が設けられており、通常は閉鎖状態にある。ただし、電流監視手段12が過大な電流を検知した際に、搬送方向上流側のリレースイッチ15が開放される。また、制御された電源器11が支配する複数のゾーンにおいて、被搬送物検知手段16によって、停止したゾーン以外の各ゾーンに被搬送物が存在するか否かが検知され、停止したゾーン以外の各ゾーンに被搬送物が無ければ、停止された駆動用モータ14に再び電流が供給される。
このような構成とすることで、上位制御手段13において、過大な電流が検知された電源器11を常に把握することができ、電源器11の過大な負荷を効率的に解消できる。さらに被搬送物検知手段16よる被搬送物の有無の検知により、停止させた駆動用モータ14への電流の供給も迅速に再開でき、効率的に短い時間での搬送が可能となる。
【0028】
このような構成を有した実施例を図2〜5を用いて詳細に説明する。さらに、それぞれの制御についても加えて説明する。
【0029】
図2は、図1に示すコンベア装置に採用される電源器の接続を示す回路図である。図3,4は、電流監視手段12Bが過大電流を検知した場合の電流の流れ及び被搬送物の搬送状況を示す説明図である。図5は、電流監視手段12が過大電流を検知した場合の制御のフローチャート図である。
図2に示す回路は、3個の電源器11A,11B,11Cを備え、各電源器11A,11B,11Cの出力電流を検知する電流監視手段12A,12B,12Cが設けられている。
【0030】
そして1つの上位制御手段13に3つ電流監視手段12A,12B,12Cが接続されており、1つの電源器11には1パーティ(各電源器11によって電力が供給される駆動用モータ14の組)の駆動用モータ(ゾーン内に一個ずつ設けられたモータ内蔵ローラ4a内のモータ)14が接続されている。さらに、本実施例の回路は、各駆動用モータ14がRUN/STOP可能な構成であり、電源器11と各駆動用モータとの間には、図3,4の様にリレースイッチ15が設けられている。
【0031】
また各ゾーンコントローラ(図示せず)は、上位制御手段13からのRUN/STOP信号を受信し、各駆動用モータ14を制御する。これにより各電源器11が支配するパーティの上流側の駆動用モータ14を効率的に停止できる回路となる。
また、1パーティに含まれる駆動用モータ14は、1又は2以上の数であり各パーティは同数であるとは限らない。本実施例では、電源器11が3個であるためにパーティ数は3である。そして各パーティ30,31,32の駆動用モータの数は、上流側の電源器11Aが支配する第一パーティ30が7つ(7個のゾーンa,b,c,・・・を構成する7つのモータ14a,14b・・)であり、電源器11Bが支配する第二パーティ31は6つ(6個のゾーンa,b,c,・・・を構成する6個のモータ14a,14b・・)であり、電源器11Cが支配する第三パーティ32は7つ(7個のゾーンを構成する7つのモータ14a,14b・・)としている。さらに、それぞれのパーティに存在するゾーンの数に対応する数のリレースイッチ15(リレースイッチ15a,15b・・・)を有する回路構成である。
【0032】
上記構成の実施例では、各電流監視手段12A,12B,12Cが検知する電流値により、それぞれ対応する電源器11が支配する複数のゾーン、いわゆるパーティの中で搬送方向最上流の駆動用モータ14を停止する制御が働く。つまり、電流監視手段12が検知する電流値により、搬送方向最上流側の駆動用モータ14をRUN/STOPさせる制御が働く。このとき、搬送方向下流側の搬送が優先的に行われる。
【0033】
ここで本実施形態のコンベア装置1は、通常、電源器11が有する容量内で運転しており、一定条件の下、図5に示す制御が働く構成である。したがって、図5の制御フローを用いて説明する。
STEP1では電流監視手段12によって過大な電流が検知されるとSTEP2へ進む。またこのとき電流監視手段12が過大な電流を検知しなければ再びSTEP1に戻り、各電源器11の電流監視が続けられる。要するに通常運転を維持し、各電源器11のそれぞれが支配するパーティの複数の駆動用モータ14に平均的に電流を供給する。
【0034】
STEP2では、STEP1で検知された電源器11が支配するパーティのうちの搬送方向最上流のゾーンの駆動用モータ14が停止される。例えば図2において、中央の電源器11Bの電流が過大となったことを電流監視手段12Bが検知すると、電源器11Bが支配するパーティに制御が働く。つまり、電源器11Bが支配する搬送ラインにおいて、電流監視手段12Bが過大な電流値を検知すると、最上流のゾーンaに電流が供給されなくなる。つまり、リレースイッチ15aが開放され、電流が遮断される。
【0035】
その結果、図3(a)の太線で示す回路に電流が流れる。すなわちゾーンaに設けられた駆動用モータ14aは、リレースイッチ15aが開放されることで停止され、その他のゾーンb〜fに接続されたリレースイッチ15b〜15fの閉鎖は維持されるため電流の供給が維持される。
【0036】
その結果、図3(b),(c)の様にゾーンb,c,d,e,fが駆動し、ゾーンb,c,d,e,f上の搬送物は下流側に搬送されてゆく。
すなわち過大な電流が流れた第二パーティ31の電源器11Bの負担が、最上流側ゾーン(ゾーンa)の駆動用モータ14aの停止により実質的に解消され、他のゾーンb,c,d,e,fの駆動モータ14b,c,d,e,fが回転し得る状態となる。
【0037】
そして、STEP3では再度その電源器11Bの出力電流を検知する。このとき、電流検知手段12Bによって再度過大な電流値が検知されると、STEP4’に進み最上流のゾーンaに加え、下流方向に隣接するゾーンbの駆動用モータ14bを停止する(図4参照)。すなわちリレースイッチ15bをオフにする。そして再びSTEP3に戻り、電流検知手段12Bの電流を調べる。その結果、いまだに電源器11Bの出力電流が過大であると検知されれば、さらに下流のゾーンcの駆動用モータ14cが停止される。すなわちリレースイッチ15cをオフにする。例えば、図4(a)に示すように、電源器11Bが支配する全てのゾーンに被搬送物が載っている場合、最上流の駆動用モータ14aの停止だけでは電源器11Bの過大な負荷は解消されず、図4(b)に示すように駆動用モータ14bの駆動用モータも停止して負荷を解消しようとする。図4には図示しないが、駆動用モータ14aと駆動用モータ14bを停止しても電源器11Bの出力電流が過大である場合は、駆動用モータ14cへの電力供給を停止する。
【0038】
要するに、最上流側の駆動用モータ14aを停止することで電源器11Bの過大な負担が解消し、下流側の被搬送物は円滑に搬送されるはずであるが、被搬送物の量などによってはそうでない場合もある。そのためSTEP3では、電源器11Bの過大な負担が解消されるまで、引き続き電流の監視が行われる。そして、STEP3の動作で過大な電流が検知されなければ、STEP4に進み、被搬送物検知手段16により、電源器11Bが支配するゾーンのうち電力供給可能な駆動用モータ14のゾーン上に、被搬送物が存在するか否かが確認される。すなわち電力供給停止した駆動用モータ以外の駆動用モータが設けられたゾーンに被搬送物が存在しなくなったことを確認する。
【0039】
つまり搬送方向下流側が優先され、下流側の被搬送物がさらに下流側に送られる。詳しくは、下流側を優先的に搬送することで、搬送ラインの中途で被搬送物が衝突し、詰まることを防ぐためである。つまり、図3(b),図4(b)に示すように、被搬送物が存在すれば、電源器11Bの下流側の電源器11Cが支配するパーティに被搬送物が搬送されるまでステップ4の被搬送物の有無の確認作業が行われる。
【0040】
そして、パーティ31における駆動可能な(スイッチ15がオン状態)駆動用モータ14に対応するゾーン上の全ての被搬送物が下流側に搬送されると、STEP5に進み、再びパーティ31を支配する電源器11Bの電流値を監視する。このときは、電源器11Bが未だ過大な電流値を維持していれば、この過大な負荷が解消されるまで電流監視手段12Bにより監視が続く。そして、過大な電流値が検知されなくなれば、ステップ6に進み、制御により停止された駆動用モータ14に電流が再び供給される。つまり、図3(c),図4(c)に示すように、下流側の全ての被搬送物が下流方向に隣接する電源器11cのパーティ32に移動すると、ゾーンaの駆動用モータ14a、あるいは駆動用モータ14a及び14bに再び電流が供給され、円滑に通常運転を行い、再びSTEP1からの動作が行われる。
【0041】
以上の様に、例えば、図2に示す電源器11Bが過大な電流を出力し、電流監視手段12Bによりその値が検知された場合、上位接続手段13からSTOP信号が発信される。詳しくは、電源器11Bが支配するパーティのゾーンのうちの最上流に位置する駆動用モータ14aが停止され、その下流側の被搬送物が優先的に搬送される。しかし、それでも電源器11Bの出力電流が過大であると検知された場合、さらに下流側の駆動用モータ14b等のゾーンコントローラにSTOP信号が生成発信される。つまり、停止させた駆動用モータ14aの下流方向に隣接するゾーンの駆動用モータ14bから順番に、下流方向側の駆動用モータ14が停止される。
そして、それを受信した各前記ゾーンコントローラは、対応する駆動用モータ14を停止する。これにより、電源器11Bの過大な負担が解消され、被搬送物の円滑な搬送が行われる。つまり、電源器11Bの容量を縮減して過大な電流が検知された場合であっても、搬送効率が低下することなく短い時間で効率的な搬送を行うことができる。
【0042】
また、この被搬送物がパーティ32に移動した際も前記した制御が同様に行われる。このような構成とすることで、電源器11の負荷が過大になっても、最上流の駆動用モータ14aから順番に停止することで合理的に被搬送物を搬送できる。
【0043】
したがって、上記したように電源器11が支配する駆動用モータ14の最上流側から停止できる構成とすることで、電源器11の最大容量を縮減しても、過大な電流を必要とした場合のコンベア装置1に起こる不具合等を解消することができる。さらに、搬送方向下流側の搬送を優先的に行う制御であるため、コンベア装置1の中途で被搬送物同士が衝突することなく効率的に搬送することができる。言い換えれば、各電源器11の最大容量を縮減しても、上記した制御により短時間の搬送を合理的に行えるため、コンベア装置1全体としてコストの削減を実行することが可能である。
さらに本実施形態では、電力の供給を停止した駆動用モータ以外の駆動用モータが設けられたゾーンに被搬送物が存在しなくなり、電流監視手段12により過大な電流値が検知されなくなったことを条件として、停止中の駆動用モータに電力を供給することとしたので、過負荷状態が確実に解消した後に通常運転を再開することができる。そのためスイッチ15の開閉が頻繁に繰り返されるといった不具合はない。
【0044】
本実施形態のコンベア装置1は、3パーティ構成の回路を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、2パーティや4パーティ以上であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るゾーン制御式コンベア装置の構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係るゾーン制御式コンベア装置に採用される電源器の接続を示す回路図である。
【図3】電流監視手段12Bが過大電流を検知した場合の最上流のモータのみを停止した際の電流の流れ及び被搬送物の搬送状況を示す説明図(a),(b),(c)である。
【図4】電流監視手段12Bが過大電流を検知した場合の最上流のモータに加えその下流側のモータも順番に停止する際の電流の流れ及び被搬送物の搬送状況を示す説明図(a),(b),(c)である。
【図5】本実施例における電源器が支配するモータを制御するフローチャートである。
【図6】従来技術によりモータが制御される際の電流の流れ及び被搬送物の搬送状況を示す説明図(a),(b)である。
【符号の説明】
【0046】
1 コンベア装置
11 電源器
12 電流監視手段
13 上位制御手段
14 駆動用モータ
15 リレースイッチ
16 被搬送物検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に並ぶ複数のゾーンに区分され、各ゾーンには少なくとも1つの駆動用モータが設けられたコンベア装置であって、
前記駆動用モータに電力を供給する電源器を有し、
当該電源器が複数のゾーンに設けられた駆動用モータに対して電力を供給する回路構成を備えたコンベア装置において、
前記電源器からの出力電流を監視する電流監視手段を備え、
前記電流監視手段が前記電源器の過大な電流を検知した場合には、前記電源器が電力を供給する駆動用モータの中で、最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた駆動用モータを停止することを特徴とするコンベア装置。
【請求項2】
最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた前記駆動用モータを停止しても尚電流監視手段が前記電源器の過大な電流を検知した場合には、最も搬送方向上流側のゾーンに設けられた駆動用モータに加えて、下流方向に隣接するゾーンに設けられた駆動用モータも停止することを特徴とする請求項1に記載のコンベア装置。
【請求項3】
駆動用モータの停止は、電源器から当該駆動用モータに対する電力供給を停止することにより行い、ゾーン上に被搬送物が存在するか否かを検知する被搬送物検知手段を有し、停止した駆動用モータ以外の駆動用モータが設けられたゾーンに被搬送物が存在しなくなったことを条件として、停止中の駆動用モータに電力を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6526(P2010−6526A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166715(P2008−166715)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】