説明

コンポスト原料製造のためのペーハー調整方法およびその装置

【課題】コンポスト原料製造のためのコンポスト原料製造装置に投入される汚泥等のペーハーを効率よく調整するための方法と装置を提供する。
【解決手段】エアレーション機能を備えたエアレーションタンク1と、汚泥貯留タンク4と、混入タンク5を各々設け、エアレーションタンク1と汚泥貯留タンク4の貯留物を混入タンク5へ投入する手段を設け、混入後の物質を既存のコンポスト原料製造装置15へ供給する手段と、コンポスト原料製造装置15から排出される脱離液をエアレーションタンク1に投入する手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンポスト原料製造のために、コンポスト原料製造装置に投入される汚泥等のペーハーを事前に調整するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々のペーハー調整手段が利用されているが、本発明にて示すように、エアレーションと消石灰を用いるとともに、コンポスト原料製造装置の最終段階で得られる脱離液をペーハー調整に再利用するペーハー調整手段は現在のところ見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンポスト原料製造のための素材としては、家畜糞尿や下水その他の汚泥そして食品残沙物などが用いられるが、これらはペーハーが低い、つまり酸性に傾いている場合が多く、これをそのまま用いてコンポスト原料を製造すると、製造工程に必要な固液分離がしにくく、また発酵微生物が働かないものとなってコンポスト原料としては好ましくない。
これらを解決するために、従来はアルカリ性物質である消石灰を汚泥等に混入することにより、ペーハー値の調整を行っていた。しかし、これはコストアップにつながり、より効率よくペーハー調整のできる手段が求められている。
本発明は、以上のような従来からのコンポスト原料製造に関わるペーハー調整の課題を解決するために発明されたもので、コンポスト原料製造の過程で発生する脱離液のアルカリ度を利用することに着目し、よりランニングコスト面での優位性をもたらす新規かつ有用なる手段を提供することを目的として開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は、以下の構成とした。
すなわち、本発明の一つは、エアレーション機能を備えたエアレーションタンクと、汚泥貯留タンクと、混入タンクを各々設け、エアレーションタンクと汚泥貯留タンクの貯留物を混入タンクへ投入する手段を設け、混入後の物質を既存のコンポスト原料製造装置へ供給する手段と、コンポスト原料製造装置から排出される脱離液をエアレーションタンクに投入する手段とを備えたことを特徴とする、コンポスト原料製造のためのペーハー調整装置である。
また、本発明の他の一つは、
1.コンポスト原料製造装置から排出される脱離液をエアレーションする第一工程。
2.エアレーション後の脱離液に汚泥を混入する第二工程。
3.混入後の液に適宜に消石灰を投入する第三工程
以上の各工程からなるコンポスト原料製造のためのペーハー調整方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、コンポスト製造装置より排出される脱離液をペーハー調整に再利用する方式のため、従来未利用であった脱離液のアルカリ度が有効活用され、ランニングコスト面での優位性を有する有用なる装置を提供することができる。また、従来は河川等へ脱離液を放出していたので、自然環境上も好ましくはなかったが、本発明の利用にてこの放出頻度は大幅に低減されるので地球環境保護の面でも有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1はエアレーションタンクで、上部開放有底円筒体である。2はエアーコンプレッサー、3は送気管である。この送気管はエアーコンプレッサーに接続され、他端は該タンク上方から下降してタンク内底部近傍に位置する。4は汚泥貯留タンク、5は混入タンクで、前記エアレーションタンクと同様構成である。6は脱離液移送管で、その一端はエアレーションタンク底部に取り付けられ、他端は混入タンク上部から下降してタンク内に位置する。7は脱離液送水ポンプで、脱離液移送管適所に設けられる。
8は汚泥移送管で、その一端は汚泥貯留タンク底部に取り付けられ、他端は混入タンク上部を通ってタンク内に位置する。9は汚泥移送ポンプで、汚泥移送管適所に設けられる。
10は混合液移送管で、その一端は混入タンク底部に接続される。11は混合液移送ポンプで、混合液移送管に設けられる。12は脱離液投入管で、その一端はエアレーションタンク上部を通ってタンク内に位置する。13は脱離液移送ポンプで、脱離液投入管適所に設けられる。
以上が本発明の実施形態の一例である。なお、本発明の使用に際しては、コンポスト原料製造装置に対する配管接続が必要となる。すなわち、混合液移送管の他端はコンポスト原料製造装置の原料投入口に、脱離液投入管の他端は同製造装置の脱離液排出口に各々接続される。
【0007】
本発明の使用に際しては、まず既述のように本装置とコンポスト原料製造装置を配管接続する。コンポスト原料製造装置は、各槽を有して互いに配管接続されるとともに、高分子凝集剤と木質繊維を供給する設備を有し、最終段にはスクリュープレス機が配備され、これにて圧搾・脱水されて脱水ケーキと脱離液が排出されるものであり、本発明にてはこの脱離液を利用する。そして、適量の消石灰をあらかじめ混入タンクに投入してペーハー値を7前後の中性域に調整しておく。
脱離液移送ポンプを作動させて脱離液を脱離液投入管よりエアレーションタンクに投入し、エアーコンプレッサー駆動にてタンク内の液のエアレーションを行う。このエアレーションにて脱離液の濁度が改善され、液が安定化する。すなわち、嫌気発酵し難く腐敗しにくくなり、混入汚泥の好気性菌の活性化がなされることとなる。また、工場等から排出された汚泥は汚泥投入管にて汚泥貯留タンクに投入される。
次ぎに、脱離液送水ポンプおよび汚泥移送ポンプを作動させることにて、エアレーション後の脱離液は脱離液移送管にて、汚泥は汚泥移送管にて各々混入タンクに投入される。
この混入タンクにて汚泥と脱離液は自然対流にて混合し、混合液移送ポンプ作動にて混合液移送管を経てコンポスト原料製造装置へ処理後の液が投入される。コンポスト原料製造装置からは脱水ケーキと脱離液が排出され、脱水ケーキはコンポスト原料として利用されるが脱離液は脱離液移送ポンプにて脱離液投入管よりエアレーションタンクへ再び投入され、以上のサイクルにて本装置の作動が継続する。
【0008】
本発明に使用する消石灰は、初期投入後の継続運転にてペーハー調整レベルが低下するので、適宜に追加投入を行う。通常はフィーダー等を用いて自動投入がなされる。
例えば、焼酎製造により発生する汚泥はペーハー3.5程度であり、脱離液とこの汚泥を50:50の比率で混合した場合にはペーハー値は5.1程度になり、消石灰の追加(重量比1パーセント未満)にてペーハー値7程度まで改善される。なお、汚泥に対する脱離液の混合比率にて追加消石灰の必要量は変化し、汚泥に対し3倍の脱離液混合(容積比)では0.14パーセント、逆に汚泥に対し33パーセントの脱離液混合では約1パーセントの追加消石灰が必要となる。本装置を用いずに単なる消石灰投入によるペーハー調整に比べ、本装置使用によるペーハー調整では使用する消石灰の量は約25パーセント程度となり、大幅なトータルコストの低減となる。
エアレーションタンクでは脱離液をエアレーションするが、このエアレーションは連続的になされ、投入された脱離液は連続的に混入タンクへ移送されるが、投入された脱離液が受ける平均的なエアレーション時間は30分以上である。
なお、混入タンクに投入される脱離液と汚泥の比が適正に保たれるよう、脱離液送水ポンプと汚泥移送ポンプの移送能力を適宜に選択することが望ましく、同様に混合液移送ポンプや脱離液移送ポンプについても同様である。あるいは、制御盤を設けて各ポンプ作動を制御する方式としてもよい。
以上のごとく、本発明により、ランニングコスト面と環境保護の双方について有益なる、コンポスト原料製造のためのペーハー調整手段を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 本発明の構成説明図
【符号の説明】
【0010】
1 エアレーションタンク
2 エアーコンプレッサー
3 送気管
4 汚泥貯留タンク
5 混入タンク
6 脱離液移送管
7 脱離液送水ポンプ
8 汚泥移送管
9 汚泥移送ポンプ
10 混合液移送管
11 混合液移送ポンプ
12 脱離液投入管
13 脱離液移送ポンプ
14 汚泥投入管
15 コンポスト原料製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレーション機能を備えたエアレーションタンクと、汚泥貯留タンクと、混入タンクを各々設け、エアレーションタンクと汚泥貯留タンクの貯留物を混入タンクへ投入する手段を設け、混入後の物質を既存のコンポスト原料製造装置へ供給する手段と、コンポスト原料製造装置から排出される脱離液をエアレーションタンクに投入する手段とを備えたことを特徴とする、コンポスト原料製造のためのペーハー調整装置。
【請求項2】
1.コンポスト原料製造装置から排出される脱離液をエアレーションする第一工程。
2.エアレーション後の脱離液に汚泥を混入する第二工程。
3.混入後の液に適宜に消石灰を投入する第三工程。
以上の各工程からなるコンポスト原料製造のためのペーハー調整方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284331(P2007−284331A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142043(P2006−142043)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(505292502)三和温調工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】