説明

コンポスト生成容器

【課題】 悪臭の漏出及び小蝿等の害虫の誘引を防止し衛生性に優れると共に維持管理及び移設が容易で且つ家庭の庭等に設置しても景観を損なうことがなく、また、庭木の根元等にも簡単に設置し給肥できるコンポスト生成容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のコンポスト生成容器1は、下部開口部3と上部投入部4とを有する筒状本体2と、上部開口部4に着脱自在に覆設された蓋体10と、を備えたコンポスト生成容器1であって、蓋体10が、上面部11と、筒状の周面部12と、周面部12の下端部に配設された土切り部13と、を備えた構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ、食物等の残渣、落ち葉等を微生物による分解によってコンポスト化するためのコンポスト生成容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭の台所等で発生する生ごみや食物等の残渣、或いは庭でかき集めた落ち葉等を原料物とし、これらを微生物の働きにより分解してコンポスト(堆肥)を生成し、庭木の根元や花壇、家庭菜園等に撒く等して給肥することが行われており、化学肥料を用いないこと及び家庭ごみの減量化が図れることから、環境保護の一環として普及している。このような家庭における生ごみ等のコンポスト化には、通常、コンポスト生成容器が用いられている。
従来のコンポスト生成容器としては、特許文献1に「縁部が地面に対接する下部開口及び生ごみを投入する上部投入口を設けた筒状本体と、上部投入口を気密性をもって覆う蓋体とを備えた屋外設置用生ごみ処理容器」が開示されている。なお、特許文献1の屋外設置用生ごみ処理容器は、上部投入口の縁部内周面に円環状の内周突起が一体形成され、この内周突起にゴム製の断面U字状シールリングが嵌着されると共に、蓋体の下面に前記内周突起の内径よりも若干小さい外径の環状突起が一体形成されており、これにより、上部投入口を蓋体により気密性をもって封止している。
【0003】
また、他のコンポスト生成容器としては、特許文献2乃至5に開示されたものがある。
特許文献2には「下端を開口し上面にごみ投入口を設けた筒状の容器本体と、容器本体の上面に着脱自在に被着された外蓋と、ごみ投入口に設けられ、蓋とごみ受けを兼用する中蓋体と、を備えたコンポスト用容器」が開示されている。
特許文献3には「空気の取込口と大窓とを有する下枠と、下枠上に嵌合された筒体と、筒体上部に取り付けられる蓋と、を備え、筒体又は蓋のいずれかに通気窓を有するコンポスト容器」が開示されている。
【0004】
特許文献4には「土壌の上に設置される円筒状に形成した容器本体と、容器本体の上部の投入口を覆う蓋体と、を備え、厨芥を容器本体内で土壌によって堆肥化させる厨芥処理容器において、容器本体に蓄熱剤を配置した厨芥処理容器」が開示されている。
特許文献5には「庭石のような地肌と外観を有し、底部と頂部が開口し内部に生ごみを収容して地面に置かれる本体と、本体の頂部の開口に着脱自在に載置される蓋と、を有する生ごみ処理容器」が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−151478号公報
【特許文献2】特開平9−77579号公報
【特許文献3】特開平5−178682号公報
【特許文献4】特開平5−330967号公報
【特許文献5】特開平7−53288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では以下のような課題を有していた。
(1)特許文献1の屋外設置用生ごみ処理容器では、蓋体の繰り返し使用によりシールリングが変形したり風雨に曝されて変質したり、又は、蓋体や筒状本体自体が変形したり、或いは、蓋体が傾いた状態で取り付けられたりして、蓋体と上部投入口との間に隙間が生じ易く気密性が確実でないため、投入した生ごみ等の悪臭に小蝿や水虻等の害虫が誘引され容器の周囲に群がるため不衛生であると共に、誘引された害虫が蓋体と上部投入口の隙間のシールリング等に卵を産みつけ、卵から孵化した蛆等が容器内に侵入し、容器内で成虫となって大量発生するという課題を有していた。
(2)特許文献2乃至5に開示された容器では、容器自体が大きいので容器を埋め込む場合は設置場所に大きい穴を掘る必要があり、設置作業が大掛かりになり簡易性に欠けると共に容器内がコンポストで満たされた場合等の容器の移設が煩雑であり、また、設置場所を広く取り家庭の庭等に設置すると景観を損なったり子供の遊ぶスペースが狭くなったりするため家庭には受け入れられ難いという課題を有していた。
(3)特許文献2のコンポスト用容器では、容器本体の上面の周縁部に周方向にロック用溝を設け、外蓋にロック用溝に嵌入するロック用突起を設け、外蓋を容器本体に被着しているが、気密性が確実でなく、さらに長期使用等により容器本体や外蓋が変形したり、使用者の不注意により外蓋が確実にロックされないまま取り付けられたりして隙間が生じ、特許文献1と同様の課題を有していた。
(4)特許文献3乃至5に開示された容器では、容器本体のごみ等の投入口に蓋を載置しているだけなので、気密性が確実でなく特許文献1と同様の課題を有していた。
(5)特許文献1乃至5に開示された容器では、悪臭や衛生的な問題及び設置スペースの問題があるため家庭の庭等には設置し難く家庭にはあまり受け入れられておらず、また、受け入れられた場合であっても悪臭や害虫の発生を防止するために定期的に石灰や防虫剤を投入する必要があり維持管理が煩雑であるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、悪臭の漏出及び小蝿等の害虫の誘引を防止し衛生性に優れると共に維持管理及び移設が容易で且つ家庭の庭等に設置しても景観を損なうことがなく、また、庭木の根元等にも簡単に設置し給肥できるコンポスト生成容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のコンポスト生成容器は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のコンポスト生成容器は、下部開口部と上部投入部とを有する筒状本体と、前記上部開口部に着脱自在に覆設された蓋体と、を備えたコンポスト生成容器であって、前記蓋体が、上面部と、筒状の周面部と、前記周面部の下端部に配設された土切り部と、を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)地面等に掘った穴に筒状本体の下部側を埋設し、上部投入部から筒状本体の内部に生ごみや食物等の残渣等を投入した後、蓋体を筒状本体の上部に覆設し、土切り部を地表面に突き刺すことにより、筒状本体の内部は外気と遮断されるため、投入した生ごみ等から発生する悪臭の漏出を確実に防止でき、周囲の人が腐食臭等によって不快な気分になることを防止できると共に小蝿や水虻等の害虫の誘引を防止できる。
【0010】
ここで、筒状本体としては、断面形状が円形状、楕円形状、多角形状等の筒体が用いられる。蓋体は上面部と周面部とを有する円柱状や円錐台状、略釣鐘状等に形成される。なお、蓋体は、上面部と周面部とを滑らかに連結して丸みを帯びた形状としてもよく、上面部を半球面状や置物様に形成してもよい。これにより、外観を向上でき、家庭の庭や室内のプランタ等の栽培容器等に設置し易くなる。また、蓋体の上面部又は周面部には蓋体の取り付け取り外しのための把手部や置物状の取手を設けることが好ましい。把持部等を例えば半球状の上面部と一体となるような湾曲状に形成すれば外観を更に向上できる。筒状本体及び蓋体の材質としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂が用いられる。ポリエチレンテレフタレート等のリサイクル材を用いることもできる。
また、筒状本体は家庭の庭や栽培容器の内部等に設置できるように容量が1L〜30L程度の小型に形成されることが好ましい。これにより、筒状本体を土に埋め込むために掘る穴は小さいものでよく、女性や子供等の非力な者でもスコップ等を用いて簡単に掘ることができ設置作業が容易であると共に、内部がコンポストで満たされた場合等の移設も容易にできる。
土切り部としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属や上記合成樹脂等からなる帯状部材を蓋体の下端部の内周面又は外周面に沿って螺着やビス止め、接着、融着等により固定したもの、或いは蓋体と一体形成されたもの等が用いられる。なお、土切り部の下縁部は鋸刃状や波状、薄肉直線状等に形成することができる。これにより、乾いた地面や硬い地面にも容易に突き刺し、密閉性を高めると共に、蓋体を取る際に蓋体を緩く回転させるだけで周面部に強固にまとわりついた地面の土を切ることができ、容易に蓋体を取り外すことができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンポスト生成容器であって、前記筒状本体の周壁部に形成され、前記蓋体を前記筒状本体に覆設したときに前記周面部の下端部に一致する地表位置合わせ線を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)コンポスト生成容器の設置時において、筒状本体の下部側を地面等に埋設する際、作業者は地表位置合わせ線が地表面に一致するように筒状本体の位置を調整することで筒状本体の地上露出部の高さを常に一定にすることができ、設置作業を円滑に行うことができる。
【0013】
ここで、地表位置合わせ線としては塗料を用いて描画したものや凸条、凹条等が用いられる。また、筒状本体の下部側を土に埋設したときの埋設部又は地上露出部の表面を塗装し塗装面の境界線を地表位置合わせ線としてもよい。
【0014】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンポスト生成容器であって、前記蓋体の前記周面部の高さが、前記筒状本体の前記地表位置合わせ線から上端部までの高さと同一又はそれ以上の高さに形成された構成を有している。
【0015】
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)蓋体の周面部の高さが筒状本体の地表位置合わせ線から上端部までの高さ、すなわち地上露出部の高さと同一又はそれ以上の高さに形成されているので、土切り部を確実に地表面に突き刺すことができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のコンポスト生成容器であって、前記筒状本体及び/又は前記蓋体が下方に向けて拡開した形状に形成された構成を有している。
【0017】
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)筒状本体及び/又は蓋体が下方に向けて拡開した形状に形成されているので、地面等に設置した場合の安定性に優れると共に、蓋体の下端部の開口の内径を筒状本体の上端部の外径より十分大きくすれば蓋体を筒状本体に装着し易くなり取り扱い性に優れる。
【0018】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載のコンポスト生成容器であって、前記筒状本体の周壁部の土への埋設部に形成された1乃至複数のコンポスト流通孔を備えた構成を有している。
【0019】
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)筒状本体の内部の生成されたコンポストがコンポスト流通孔を介して外部の土に吸収されるので、プランタ等の栽培容器の内部にコンポスト生成容器を設置した場合、コンポストを直接栽培容器内の土に吸収させることができる。
【0020】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のコンポスト生成容器であって、前記筒状本体の前記下部開口部に覆設された底板部を備えた構成を有している。
【0021】
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)筒状本体の下部開口部を底板部で塞ぐことで、生成したコンポストをコンポスト流通孔からコンポスト生成容器の側方の土に確実に吸収させることができる。
(2)投入した原料物に含まれる水分や分解時に生じた滲出液が筒状本体の底部から排出されず、周壁部等に形成された排水孔等を介して土に排出され吸収されるので、コンポスト生成容器をプランタ等の栽培容器内に設置した場合等に、水分等が栽培容器の底部に溜まることを防ぎ、悪臭を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)蓋体を筒状本体の上部に覆設し、土切り部を地表面に突き刺すことにより、筒状本体の内部は外気と遮断されるため、投入した生ごみ等から発生する悪臭の漏出を確実に防止でき、周囲の人が腐食臭等によって不快な気分になることを防止できると共に小蝿や水虻等の害虫の誘引を防止でき、大量の害虫が群がったり容器内の生ごみ等から大量発生したりすることを防止でき、家庭の庭等においても衛生的に使用できると共に景観を損なうことがないコンポスト生成容器を提供することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)地表位置合わせ線が地表面に一致するように筒状本体の位置を調整することで、筒状本体を埋め込むための穴を深く掘りすぎたり地上露出部の高さが高くなりすぎて土切り部が地表面に届かなかったりすることがなく、設置作業を円滑に行うことができる設置作業性に優れたコンポスト生成容器を提供することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、
(1)蓋体の周面部の高さが筒状本体の地上露出部の高さと同一又はそれ以上の高さに形成されているので、土切り部を確実に地表面に突き刺すことができ、悪臭の漏出を確実に防ぐことができるコンポスト生成容器を提供することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、
(1)筒状本体及び/又は蓋体が下方に向けて拡開した形状に形成されているので安定性に優れると共に、蓋体を筒状本体に装着し易く取り扱い性に優れたコンポスト生成容器を提供することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、
(1)筒状本体の内部の生成されたコンポストがコンポスト流通孔を介して外部の土に直接吸収されるので、生成したコンポストを取り出す必要がなく取り扱い性に優れたコンポスト生成容器を提供することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、
(1)筒状本体の下部開口部を底板部で塞ぐことで、生成したコンポストをコンポスト流通孔からコンポスト生成容器の側方の土に確実に吸収させることができ、家庭菜園等の土壌やプランタ等の栽培容器内の土を肥沃に改良することができるコンポスト生成容器を提供することができる。
(2)コンポスト生成容器を栽培容器内に設置した場合等に、容器内の水分等が排出孔から排出されるので、水分等が栽培容器の底部に溜まったり漏出したりすることを防ぎ、悪臭を防止し、小蝿や水虻等の害虫の誘引を防止し室内等に設置しても衛生的に使用できるコンポスト生成容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1におけるコンポスト生成容器の全体斜視図であり、図2は本実施の形態1におけるコンポスト生成容器の要部側面断面図である。
図中、1は本実施の形態1におけるコンポスト生成容器、2は下端部に下部開口部3が形成され上端部に上部投入部4が形成された筒状本体であり、円筒状に形成されると共に下方に向けて拡開した形状に形成されている。5は筒状本体2の周壁部、6は周壁部5の下端部に形設された本体フランジ部、7は筒状本体2の下部側を土に埋設したときに土の中に埋まる部分である埋設部、8は筒状本体2の下部側を土に埋設したときに地上に露出する部分である地上露出部、9は埋設部7と地上露出部8の境界線上に形成された地表位置合わせ線、10は上面部11と筒状の周面部12とを有する略釣鐘状に形成され筒状本体2の上部に着脱自在に覆設される蓋体であり、周面部12は筒状本体2と略同形状の円筒状に形成され同様に下方に向けて拡開している。13は周面部12の下端部の全周に渡って配設された土切り部、13aは土切り部13の下縁部に形成された鋸刃状部、14は周面部12の下端部に外側に突出して形設された接地ストッパ部、15は蓋体10の上面部11に螺子止め等により固定或いは蓋体10に一体成形された把手部である。
【0029】
ここで、筒状本体2及び蓋体10はポリプロピレン等の合成樹脂を用いて射出成形等により成形されている。本体フランジ部6や接地ストッパ部14を筒状本体2や蓋体10に一体成形されている。土切り部13は一側部に沿って鋸刃状部13aが形成された撓み性を有する帯状の金属板や合成樹脂板を周面部12の下端部の内周壁に沿って全周に渡って螺着や接着等により止着して形成するか、蓋体10と一体に成形して形成される。
筒状本体2の大きさは、本実施の形態1においては、上端部の内径が10cm〜30cm、下端部の内径が15cm〜35cm、高さが15cm〜40cm、容量が1L〜30L程度の小型に形成されているので、設置場所を選ばず、家庭の庭やプランタ等の栽培容器等にも場所を取らず且つ景観を損なうことなく設置できる。
また、図2に示すように、蓋体10の周面部12の高さH1は筒状本体2の地上露出部8の高さH2より高くなるように形成されているので、土切り部13を確実に地表面Aに突き刺すことができる。また、土切り部13の鋸刃状部13aには多数の尖鋭状の山形歯が形成されているので、乾いた地面や硬い地面にも容易に突き刺すことができる。
【0030】
以上のように構成された本実施の形態1におけるコンポスト生成容器1について、以下その使用方法を図1及び図2を用いて説明する。
コンポスト生成容器1を家庭の庭等の地面に設置するには、まず、地面に埋設部7の高さと略同一の深さで筒状本体2の下端部の外径より少し大きい径の穴を掘る。次に、掘った穴に筒状本体2の下部側を挿入し、穴と筒状本体2の外壁との間の隙間を埋める。このとき、筒状本体2の周壁部5に形成された地表位置合わせ線9が地表面Aに一致するように筒状本体2の位置を調整する。また、本体フランジ部6の上部が隙間を埋めた土Zで押えられているので、歩行する人の足が筒状本体2に当たった場合等でも傾いたり倒れたりすることなく安定して設置される。
【0031】
コンポスト生成容器1を使用するには、上部投入部4から筒状本体2の内部に生ごみ、食物等の残渣、落ち葉、剪定屑、刈り取った雑草等の原料物Xを投入し、蓋体10を筒状本体2の上部に覆設し、接地ストッパ部14が地表面Aに接地するまで土切り部13を地表面Aに突き刺す。これにより、原料物Xの投入時を除いて筒状本体2の内部は密閉され外気と遮断されるので、投入された原料物Xから発生する悪臭が周囲に漏出することはなく、且つ、筒状本体2の内部を嫌気性菌の生育に適した状態に保つことができる。
この状態で所定期間、たとえば数週間から数ヶ月放置することにより、筒状本体2の内部の原料物Xは土Z中の嫌気性菌等の微生物の働きにより分解されコンポストYとなり、下部開口部3から土Zに吸収される。原料物X中の水分や嫌気性分解過程での液状化により生じた滲出液の一部も下部開口部3から土Zに排出され土壌を活性化させる。なお、滲出液の排出等により原料物Xが減容化されるので、原料物Xを追加投入できる。追加投入された原料物Xは順次コンポストYの上部に堆積し同様に分解される。筒状本体2の内部がコンポストYで満たされた場合は、筒状本体2を地面から引き抜き、生成されたコンポストYを花壇や家庭菜園、プランタ等で使用する。引き抜いた筒状本体2は別の場所に設置して使用することができる。
【0032】
以上のように本実施の形態1におけるコンポスト生成容器1は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)地面等に掘った穴に筒状本体2の下部側を埋設し、上部投入部4から筒状本体2の内部に原料物Xを投入した後、蓋体10を筒状本体2の上部に覆設し、土切り部13を地表面Aに突き刺すことにより、筒状本体2の内部は外気と遮断されるため、投入した原料物Xから発生する悪臭の漏出を確実に防止でき、小蝿や水虻等の害虫の誘引を防止できる。
(2)コンポスト生成容器1が小型に形成されているので、容器1を埋め込むための穴は小さいものでよく、女性や子供等の非力な者でもスコップ等を用いて簡単に掘ることができ、また、筒状本体2内がコンポストYで満たされた場合等の容器1の移設も容易で簡易性に優れると共に、家庭の庭等にも衛生的に且つ景観を損なうことなく設置でき、例えば南向きで日当たりが良い地面や排水の良い地面等を自由に選択して設置できるので、コンポスト化の速度が向上すると共に良質なコンポストを生成することができる。
(3)筒状本体2の下部側を地面等に埋設する際、作業者は地表位置合わせ線9が地表面Aに一致するように筒状本体2の位置を調整することで地上露出部8の高さを常に一定にすることができ、筒状本体2を埋め込むための穴を深く掘りすぎたり地上露出部8の高さが高くなりすぎて土切り部13が地表面に届かなかったりすることがなく、設置作業を円滑に行うことができる。
(4)筒状本体2及び蓋体10が下方に向けて拡開した形状に形成されているので、地面等に設置した場合の安定性に優れる。
(5)蓋体10の下端部の開口の内径が筒状本体2の上端部の外径より十分大きく形成されているので蓋体10を筒状本体2に装着し易く取り扱い性に優れる。
(6)筒状本体2の下端部に本体フランジ部6を備えているので、筒状本体2の下部側を地面に埋め込んだ際の安定性に優れ、また、周壁部5の外側面に沿って臭気が地表面Aに拡散するのを防止できると共に、臭気成分の土壌細菌による分解を促進させ、悪臭の漏出を確実に防止できる。
(7)蓋体10の下端部に接地ストッパ部14を備えているので、蓋体10を筒状本体2に装着する際に、接地ストッパ部14が地表面Aに接地するまで土切り部13を突き刺すことで、土切り部13の突き刺し長さを常に好適な長さとすることができ、深く刺し込み過ぎて抜け難くなったり刺し込みが浅くて悪臭が漏出したりすることを防止できる。また、接地ストッパ部14により、降雨時等に土切り部13の周囲に泥等が溜まるのを防止し、泥等が固化して土切り部13が抜け難くなるのを防止できる。
(8)土切り部13の下縁部に鋸刃状部13aが形成されているので、乾いた地面や硬い地面にも容易に突き刺すことができ、密閉性を高めることができると共に、蓋体10を筒状本体2から取り外す際には、蓋体10を円周方向に緩く回転させるだけで周面部12の下端部に強固にまとわりついた土Zを切ることができ、長期間放置した後であっても容易に蓋体10を取り外すことができる。
【0033】
(実施の形態2)
図3は本実施の形態2におけるコンポスト生成容器の一部破断全体斜視図であり、図4は本実施の形態2におけるコンポスト生成容器の要部側面断面図である。
図中、2は筒状本体、3は下部開口部、4は上部投入部、5は周壁部、7は埋設部、8は地上露出部、11は上面部、12は周面部、13は土切り部、14は接地ストッパ部、15は把手部であり、これらは実施の形態1において説明したものと同様のものであるので同一の符号を付けて説明を省略する。1′は本実施の形態2におけるコンポスト生成容器、2′は筒状本体、10′は蓋体、21a,21bは筒状本体2′の周壁部5の埋設部7に形成された長孔状及び円形状のコンポスト流通孔、21cは筒状本体2′の周壁部5の下端部近傍に形成された排水孔、22は筒状本体2′の下部開口部3に覆設された底板部、23は栽培容器としてのプランタ、24はプランタ23の中敷部、24aは中敷部24の下面に突設された複数の脚部である。本実施の形態2におけるコンポスト生成容器1′が実施の形態1と異なる点は、コンポスト流通孔21a,21b及び排水孔21cと底板部22を備えた点である。
【0034】
ここで、図4に示すように、蓋体10′の周面部12の高さH3は、プランタ23に設置するため実施の形態1で説明した周面部の高さH1に比べ短く形成されているが、実施の形態1と同様に筒状本体2′の地上露出部8の高さH4より高くなるように形成されている。これにより、土切り部13を確実にプランタ23内の土の表面Bに突き刺すことができる。
コンポスト流通孔21a,21bは、筒状本体2′の埋設部7に長孔状の孔21aと円形状の孔21bとが交互に全周に渡って周設されている。複数の排水孔21cは周壁部5の下端部近傍の所定高さ、例えば0.5cm〜2cm程度の高さに略等間隔で周設されている。
底板部22は筒状本体2′の下端部に下部開口部3を水密に覆うように耐水性の接着等により固着されるか、射出成形等により筒状本体2′と一体に成形され形成されている。また、底板部22の外周部は筒状本体2′の下端部から外側に1cm〜3cm程度突出するように下部開口部3より大きく形成され、筒状本体2′の安定性を向上させている。
【0035】
以上のように構成された本実施の形態2におけるコンポスト生成容器1′について、以下その使用方法を図3及び図4を用いて説明する。
コンポスト生成容器1′をプランタ23の内部に設置するには、まず、土Zを投入していないプランタ23を準備し、中敷部24をプランタ23の底部に敷設する。次に、中敷部24上に筒状本体2′を載置し、プランタ23の内部に所定量の土Zを投入し筒状本体2′の周囲を埋める。
【0036】
コンポスト生成容器1′への原料物Xの投入、及び蓋体10′の装着、並びにコンポストYの生成については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、説明を省略する。生成されたコンポストYはコンポスト流通孔21a、21bを介して土Zに吸収される。原料物X中の水分や嫌気性分解過程での液状化により生じた滲出液の一部は排水孔21cから土Zに排出され吸収される。筒状本体2の内部がコンポストYで満たされると、上部開口部4からコンポストYを取り出し、花壇や家庭菜園、他のプランタ等で使用することができる。
【0037】
以上のように本実施の形態2におけるコンポスト生成容器1′は構成されているので、実施の形態1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)コンポスト流通孔21a,21b及び底板部22を備えているので、筒状本体2の内部の生成されたコンポストYがコンポスト流通孔21a,21bを介して直接プランタ23内の土Zに吸収され、コンポスト生成容器1′をプランタ23内に設置するだけで自動で給肥でき使用性に優れる。
(2)排水孔21cが筒状本体2の周壁部5に形成されると共に下部開口部3が底板部22により塞がれているので、分解時に生じた滲出液や投入した原料物Xに含まれる水分が排水孔21cから側方の土Zに排出され吸収され、水分等がプランタ23の底部に溜まったり外部に漏出したりすることを防ぎ、悪臭を防止し、小蝿や水虻等の害虫の誘引を防止し室内等に設置しても衛生的に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明は、生ごみ、食物等の残渣、落ち葉等を微生物による分解によってコンポスト化するためのコンポスト生成容器に関し、特に本発明によれば、悪臭の漏出及び小蝿等の害虫の誘引を防止し衛生性に優れると共に維持管理及び移設が容易で且つ家庭の庭等に設置しても景観を損なうことがなく、また、庭木の根元等にも簡単に設置し給肥できるコンポスト生成容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1におけるコンポスト生成容器の全体斜視図
【図2】実施の形態1におけるコンポスト生成容器の要部側面断面図
【図3】実施の形態2におけるコンポスト生成容器の一部破断全体斜視図
【図4】実施の形態2におけるコンポスト生成容器の要部側面断面図
【符号の説明】
【0040】
1,1′ コンポスト生成容器
2,2′ 筒状本体
3 下部開口部
4 上部投入部
5 周壁部
6 本体フランジ部
7 埋設部
8 地上露出部
9 地表位置合わせ線
10,10′ 蓋体
11 上面部
12 周面部
13 土切り部
13a 鋸刃状部
14 接地ストッパ部
15 把手部
21a,21b コンポスト流通孔
21c 排水孔
22 底板部
23 プランタ
24 中敷部
24a 脚部
X 原料物
Y コンポスト
Z 土



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部開口部と上部投入部とを有する筒状本体と、前記上部開口部に着脱自在に覆設された蓋体と、を備えたコンポスト生成容器であって、前記蓋体が、上面部と、筒状の周面部と、前記周面部の下端部に配設された土切り部と、を備えていることを特徴とするコンポスト生成容器。
【請求項2】
前記筒状本体の周壁部に形成され、前記蓋体を前記筒状本体に覆設したときに前記周面部の下端部に一致する地表位置合わせ線を備えていることを特徴とする請求項1に記載のコンポスト生成容器。
【請求項3】
前記蓋体の前記周面部の高さが、前記筒状本体の前記地表位置合わせ線から上端部までの高さと同一又はそれ以上の高さに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコンポスト生成容器。
【請求項4】
前記筒状本体及び/又は前記蓋体が下方に向けて拡開した形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のコンポスト生成容器。
【請求項5】
前記筒状本体の周壁部の土への埋設部に形成された1乃至複数のコンポスト流通孔を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載のコンポスト生成容器。
【請求項6】
前記筒状本体の前記下部開口部に覆設された底板部を備えていることを特徴とする請求項5に記載のコンポスト生成容器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−206348(P2006−206348A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17348(P2005−17348)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(301068664)有限会社ひらた商事 (1)
【Fターム(参考)】