説明

コーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルム

【課題】コーティング対象物に、優れた自浄性能とその持続性に加えて、優れた耐候性及び透明性を付与しうるコーティング剤、及びこれを用いたコーティングフィルムを提供すること。
【解決手段】電離放射線硬化性樹脂と、アルキルシリケートとを含有し、該アルキルシリケートが20〜40量体であるコーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物は、空気中の埃や粉塵、油分といった汚染物が付着しやすく、該汚染物が付着した状態で風雨に晒されると、汚染物が雨筋に沿って線状に残ってしまうため、その外観が著しく低下するという問題がある。そこで、これらの内外装材や建造物の表面に用いられるシートなどの部材には、自浄性能(防汚性)が求められている。自浄性能(防汚性)を向上には、通常シリコーンやフッ素の配合のほか、シリカなどの添加剤を用いることで保護層の親水性を向上させるという手法がとられる。しかし、十分な自浄性能(防汚性)を確保するには、多量の添加剤を用いる必要があること、そのため該保護層から添加剤が脱落したり、擦過傷により親水性が低下するといった問題があった。
【0003】
防汚性を確保するためのコーティング剤として、アルキルシリケートなどの有機シリカ化合物を含有する防汚性コーティング剤も知られている(特許文献1)。特許文献1に開示されるコーティング剤は、反応硬化形有機樹脂として水酸基含有フッ素樹脂及びアミノ樹脂架橋剤を含有し、かつ所定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を含むものである。しかし、このコーティング剤も、反応硬化形有機樹脂として水酸基含有フッ素樹脂及びアミノ樹脂架橋剤を用いるため、擦過傷により親水性が低下するといった問題があった。
【0004】
ところで、上記のような内外装材や構造物に用いられる部材には、様々な用途に対応するため、優れた耐候性や透明性などが要求される場合がある。耐候性を向上させるためには、紫外線吸収剤や光安定剤などの添加剤をコーティング剤に含有させる、あるいはフィルムなどのコーティング対象物自体にこれらの添加剤を含有させることが一般的である。しかし、耐候性を向上させるために、これらの添加剤の含有量を増加させると、ブリードアウトによるべたつきや、透明性の低下といった問題が生じてしまい、一方このような問題を解消させるために添加剤の含有量を減らしてしまうと、優れた耐候性が得られないといった問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2869443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に対して、コーティング対象物に、優れた自浄性能とその持続性に加えて、優れた耐候性及び透明性を付与しうるコーティング剤、及びこれを用いたコーティングフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記のコーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルムが上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0008】
1.電離放射線硬化性樹脂と、アルキルシリケートとを含有し、該アルキルシリケートが20〜40量体であるコーティング剤。
2.アルキルシリケートの分子量が、2500〜4000である上記1に記載のコーティング剤。
3.アルキルシリケートがメトキシ基を有する上記1又は2に記載のコーティング剤。
4.電離放射線硬化性樹脂が、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートである上記1〜3のいずれかに記載のコーティング剤。
5.電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が、1000〜10000である上記1〜4のいずれかに記載のコーティング剤。
6.電離放射線硬化性樹脂100質量部に対するアルキルシリケートの含有量が、1〜20質量部である上記1〜5のいずれかに記載のコーティング剤。
7.トリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を含む上記1〜6のいずれかに記載のコーティング剤。
8.基材フィルムの一方の面に、上記1〜7のいずれかに記載のコーティング剤を架橋硬化してなるコーティング層を有するコーティングフィルム。
9.基材フィルムとコーティング層との間にプライマー層を有する上記8に記載のコーティングフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コーティング対象物に、優れた自浄性能とその持続性に加えて、優れた耐候性及び透明性を付与しうるコーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のコーティングフィルムの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[コーティング剤]
本発明のコーティング剤は、電離放射線硬化性樹脂と、アルキルシリケートとを含有し、該アルキルシリケートが20〜40量体であることを特徴とするものである。ここで、本明細書において電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他に、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0012】
≪アルキルシリケート≫
本発明で用いられるアルキルシリケートは、Si原子と結合するアルコキシ基を少なくとも一つ有し、かつ20〜40量体の縮合物であることを要するものであればよく、好ましくは下記一般式(1)で示されるテトラアルキルシリケートの縮合物である。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中、R1〜R4は、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状あるいは枝分かれ状のアルキル基を示す。また、複数のR1及びR2は、同じでも異なっていてもよい。R1〜R4としては、優れた自浄性能及び透明性を得る観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましく、少なくともR1〜R4のいずれか一つ以上がメチル基であることが好ましい。すなわち、本発明で用いられるアルキルシリケートは、炭素数1〜4のアルコキシル基を有することが好ましく、メトキシ基及びエトキシ基を有することがより好ましく、メトキシ基を有することがさらに好ましく、少なくとも一つのメトキシ基を有することが好ましい。
【0015】
本発明で用いられるアルキルシリケートは20〜40量体の縮合物であることから、n1は20〜40であることを要し、優れた自浄性能及び透明性を得る観点から、20〜35が好ましく、20〜30がより好ましい。すなわち、本発明で用いられるアルキルシリケートは、20〜40量体の縮合物であることを要し、好ましくは20〜35量体の縮合物であり、より好ましくは20〜30量体の縮合物である。なお、本発明においては、20〜40量体、20〜35量体、あるいは25〜35量体は、平均値である場合も含む。よって、例えば15〜30量体の混合物であり平均25量体のアルキルシリケートのように、20量体未満のものが含まれていても、平均20量体以上であれば、本発明で用いられるアルキルシリケートに含まれる。
また、本発明で用いられるアルキルシリケートの分子量は、2500〜4000が好ましく、2500〜3500がより好ましく、さらに2500〜3000が好ましい。なお、本発明においては、分子量も、上記の量体と同様に、平均値である場合も含む。
【0016】
アルキルシリケートの含有量は、優れた自浄性能及び透明性を得ることができ、電離放射線硬化性樹脂のより良い架橋硬化の状態が得られる観点から、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、6〜10質量部がさらに好ましい。
【0017】
≪電離放射線硬化性樹脂≫
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂は、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができるが、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95〜100%程度としても塗工性を有し、かつ硬化する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。そのような電離放射線硬化性樹脂の代表例を以下に記載する。また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0018】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有するような多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて用いればよい。官能基数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。
【0019】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。これらのオリゴマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
【0021】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。これらの重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
【0023】
<カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート>
上記した重合性オリゴマーのうち、特にカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが、アルキルシリケートとの組合せにより、優れた自浄性能とその持続性のほか、耐候性及び透明性も得られるので好ましい。カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、通常カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができるものである。
【0024】
ここで、カプロラクトン系ポリオールとしては、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、重量平均分子量が好ましくは500〜3000、より好ましくは750〜2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。
有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するものが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく挙げられる。また、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。
【0025】
カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、これらのポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応で合成することができる。合成法としては、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に−NCO基を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が好ましい。反応の条件などは常法に従えばよい。
【0026】
本発明で好ましく用いられるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、その重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)が、1000〜10000であることが好ましく、1000〜5000がより好ましい。すなわち、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートはオリゴマーであることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内(オリゴマー)であれば、加工性に優れ、コーティング剤組成物が適度なチキソ性が得られるので、表面保護層の形成が容易となる。
【0027】
≪紫外線吸収剤≫
本発明のコーティング剤は、耐候性、紫外線遮断性能、及び耐候保持性を向上させる目的で、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが好ましく挙げられる。優れた耐候性、紫外線遮断性能、及び耐候保持性を得る観点からは、トリアジン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用することが好ましいく、その配合質量比は、10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30がより好ましい。
【0028】
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜25質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性及び透明性が得られる。
【0029】
≪光安定剤≫
本発明のコーティング剤は、さらに光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられ、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤であることがより好ましい。
反応性官能基は、電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0030】
このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などが好ましく挙げられる。
【0031】
光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性及び透明性が得られる。
【0032】
≪各種添加剤≫
本発明のコーティング剤は、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
【0033】
[コーティングフィルム]
本発明のコーティングフィルムは、基材フィルムの一方の面に本発明のコーティング剤を架橋硬化してなるコーティング層を有するものである。図1は、本発明のコーティングフィルムの好ましい態様の断面を示す模式図であり、基材フィルム2の一方の面にプライマー層4、コーティング層3が順に積層したものである。
【0034】
≪基材フィルム≫
本発明のコーティングフィルムで用いられる基材フィルムとしては、プラスチックフィルム、プラスチックシートが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂などからなるものが好ましく挙げられる。なかでも、可視光透過性や作業性などを考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂の基材フィルムが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましい。
【0035】
<紫外線吸収剤>
本発明で用いられる基材フィルムは、耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤を好ましく含有する。紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、安息香酸系、サリチル酸系、マロン酸エステル系、シュウ酸アニリド系、シュウ酸アミド系などが好ましく挙げられる。
基材フィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、基材に用いられる樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であれば、本発明のコーティングフィルムに対して効率的に優れた耐候性を付与することができる。
【0036】
<帯電防止剤>
本発明のコーティングフィルムに自浄性能及び可視光透過性を付与する観点から、基材フィルムは帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤としては、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルアミドイミドなどのポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤が好ましく挙げられ、これらを単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体及びポリエーテルエステルアミドがより好ましい。
【0037】
ここで、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体としては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどによるポリエーテル部分とポリエチレンやポリプロピレンなどによるポリオレフィン部分が交互に結合したブロック共重合体の他、ランダム共重合体、グラフト共重合体が挙げられるが、自浄性を付与する観点からはブロック共重合体であることが好ましい。これらの帯電防止剤は市販品を使用することもでき、例えばポリエーテル/ポリオレフィン共重合体の帯電防止剤としては、「ペレスタット300」、「ペレスタット230」「ペレスタット303」などの市販品が、ポリエーテルエステルアミドの帯電防止剤としては「ペレスタット6321」などの市販品が挙げられる。
【0038】
基材フィルム中の帯電防止剤の含有量は、基材フィルムに用いられる樹脂100質量部に対して、5〜30質量部程度であり、好ましくは10〜20質量部である。帯電防止剤の含有量が上記範囲であれば、本発明のコーティングフィルムに対して効率的に優れた自浄性能及び可視光透過性を付与することができる。
【0039】
基材フィルムは、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面にコロナ放電処理、クロム酸化処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法といった、物理的または化学的表面処理を施すことができる。
【0040】
≪プライマー層≫
基材フィルムは、該基材フィルムと二つのコーティング層との層間密着性の強化などのためのプライマー層を形成するなどの処理を施してもよい。特に、基材フィルムとコーティング層との間にプライマー層を設けることが好ましい。プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ウレタンアクリル系樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0041】
また、ポリカーボネート系ウレタン/アクリル共重合樹脂やポリエステル系ウレタン/アクリル共重合樹脂、あるいはポリカーボネート系ウレタンアクリルとアクリルあるいはアクリルポリオールとからなる樹脂も好ましく挙げられる。
ここで、ポリカーボネート系ウレタン/アクリル共重合樹脂は、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤を使用してアクリルモノマーとラジカル重合させて得られる樹脂である。また、ポリエステル系ウレタン/アクリル共重合樹脂は、ポリエステルジオールとジイソシアネートを反応させて得られるポリエステル系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤を使用してアクリルモノマーとラジカル重合させて得られる樹脂である。
【0042】
プライマー層にはコーティング層に用いられる紫外線吸収剤や光安定剤を含有させることもできるので、本発明のフィルムにより優れた耐候性を付与することもできる。紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層の形成に用いられる樹脂100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましく、5〜25質量部がさらに好ましい。また、光安定剤の含有量は、プライマー層の形成に用いられる樹脂100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましく、5〜20質量部がさらに好ましい。
【0043】
また、可視光透過性を阻害しない範囲内であれば、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
基材フィルムの厚さについては特に制限はないが、優れた耐候性を確保し、かつ作業性や汎用性を考慮すると、通常20〜200μm程度、好ましくは30〜150μmの範囲である。
【0044】
本発明において、基材フィルムは、上記の樹脂や紫外線吸収剤、帯電防止剤などを混合した樹脂組成物を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法などによりフィルム化され、より好ましくは2軸延伸することで調製される。
【0045】
≪コーティング層≫
コーティング層は、上記した本発明のコーティング剤を架橋硬化してなる層である。
コーティング層の厚さは、3〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましく、さらに好ましくは5〜12μmである。コーティング層の厚さが上記範囲内であると、優れた自浄性能及び可視光透過性と耐光性が効率的に得られる。また、優れた作業性も得られる。
【0046】
≪裏面コーティング層≫
本発明のコーティングフィルムは、上記コーティング層を設けた基材フィルム面の反対側の面に、裏面コーティング層を設けることができる。本発明のコーティングフィルムの用途に応じた性能を、裏面コーティング層に付与することができ、上記コーティング層と同じ層を設けることもできるし、該コーティング層とは別の機能を有する層を設けることもできる。
本発明のコーティングフィルムを農業用フィルムとして用いる場合は、裏面コーティング層は防滴剤を含有する層であることが好ましい。
【0047】
<防滴剤>
本発明で用いられる防滴剤としては、一般に用いられる防滴剤を制限なく用いることができ、例えば非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両面界面活性剤などの界面活性剤のほか、シリカ、アルミナおよび酸化チタンなどの無機化合物の粒子などが好ましく挙げられ、防滴性とりわけ防滴性の持続性の観点からは無機化合物の防滴剤を使用することが好ましい。
【0048】
本発明においては、上記した無機化合物のうち、シリカ粒子が好ましく、平均一次粒子径が1〜300nm、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜50nmのシリカ粒子が好ましい。上記の平均一次粒子径を有するシリカ粒子を用いることで、特に優れた流滴性の持続性が得られる。
【0049】
非イオン界面活性剤としては、多価アルコール型界面活性剤、ポリエチレングリコール型界面活性剤いずれも用いられるが、具体的には、多価アルコール型界面活性剤ではソルビタンモノ脂肪酸エステルのステアリン酸ソルビタンエステル、オレイン酸ソルビタンエステルなどが挙げられ、ポリエチレングリコール型界面活性剤では、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、硫酸エステル塩のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、スルホン酸塩のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル塩のアルキルリン酸カリウムなどが挙げられ、カチオン界面活性剤としては、第1〜3級のアミン塩や第4級アンモニウム塩などが挙げられ、両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0050】
また、界面活性剤として、反応性を有する界面活性剤も好ましく用いられる。反応性を有する界面活性剤としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基を有する界面活性剤が挙げられる。
【0051】
裏面コーティング層は、該裏面コーティング層を形成する防滴剤と後述するバインダー樹脂とを含むコーティング剤により形成され、該裏面コーティング層における防滴剤の含有量は、バインダー樹脂と防滴剤との配合質量比は、5/95〜60/40が好ましく、5/95〜55/45がより好ましく、5/95〜30/70がさらに好ましい。防滴剤の含有量が上記範囲内であると、優れた防滴性の効果が効率的に得られ、裏面コーティング層が白化などを生じることがない。また、フィルムとフィルムとを熱融着によりつなぐことが容易となる、すなわち加工性が向上する。
【0052】
<バインダー樹脂>
裏面コーティング層は、通常防滴剤とバインダー樹脂とを含むコーティング剤を塗工し、硬化させて得る。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの公知のバインダーの中から、適宜選択すればよく、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体などのアクリル樹脂;その他、ウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの単体又はこれらを含む混合物などが好ましく挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
また、バインダー樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が好ましく挙げられる。電離放射線硬化性樹脂を用いると、優れた防滴性が得られ、特にその持続性が優れたものとなる。また、優れた加工性も得られる。裏面コーティング層に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、上記のコーティング層に用いることができる電離放射線硬化性樹脂として記載した重合性オリゴマー、すなわちエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどの分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーが好ましく挙げられる。なかでもウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。このウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができるものである。
裏面コーティング層に用いられる電離放射線硬化性樹脂として採用されるウレタン(メタ)アクリレートの官能基数は、2〜16が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。官能基数が上記範囲内であると、優れた防滴性、特にその持続性が優れたものとなり、かつ優れた加工性も得られる。
【0054】
(各種添加剤)
裏面コーティング層を形成するコーティング剤は、裏面コーティング層の好ましい重要な性能である防滴性を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えばコーティング層に含まれる紫外線吸収剤のほか、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
【0055】
裏面コーティング層の厚さは、0.3〜10μmであることが好ましく、0.3〜5μmがより好ましく、0.5〜4μmがさらに好ましい。裏面コーティング層の厚さが上記範囲内であると、優れた防滴性が効率的に得られる。また、優れた作業性も得られる。
【0056】
[コーティングフィルムの製造方法]
本発明のコーティングフィルムは、例えば以下の方法により好ましく製造することができる。基材フィルムの一方の面に、好ましく設けられるプライマー層形成用の樹脂組成物を塗工し、次いで本発明のコーティング剤を塗工する。ここで、プライマー層形成用の樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工は、各々硬化後の厚さが上記範囲内となるようにグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。
【0057】
本発明のコーティング剤を塗工して形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、コーティング層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0058】
照射線量は、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートの架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0059】
また、裏面コーティング層を設ける場合は、コーティング層の形成に用いられる本発明のコーティング剤の塗工前又は後に、基材フィルムのコーティング層を設けた面とは反対の面に、裏面コーティング層を形成する電離放射線硬化性樹脂、防滴剤及び必要に応じて添加する紫外線吸収剤、その他の各種添加剤を含むコーティング剤を塗工する。
【0060】
裏面コーティング層の形成に用いられる裏面用コーティング剤を塗工して形成した未硬化樹脂層は、該裏面用コーティング剤に用いるバインダー樹脂により硬化方法が異なり、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を採用する場合は加熱処理により硬化させて裏面コーティング層とする。また、バインダー樹脂として電離放射線硬化性樹脂を採用する場合は、上記のコーティング層の形成に用いられるコーティング剤と同様にして架橋硬化させて裏面コーティング層とする。コーティング層の形成の順番には特に制限はないが、通常コーティング層を架橋硬化により形成した後に、裏面コーティング層を形成すればよい。
【0061】
このようにして得られたコーティングフィルムは、優れた自浄性能とその持続性に加えて、優れた耐候性及び透明性を有するので、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物に好適に用いられる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)自浄性能(初期性能)とその持続性の評価
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、屋外南向きに傾斜45°で設置した。その後、表面の汚れの付着及び沈着状態を、目視観察により下記の基準で評価したものを初期性能の評価とした。また、実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、屋外南向きに傾斜45°で設置した後、3ヶ月放置する屋外曝露試験を行った。その後、表面の汚れの付着及び沈着状態を、目視観察により下記の基準で評価したものを持続性の評価とした。
◎ :汚れの付着や沈着は全く確認されなかった
○ :汚れの付着や沈着はほとんどなかった
△ :汚れの付着や沈着は若干あり、実用上たえないものだった
× :汚れの付着や沈着が著しかった
【0063】
(2)耐温水白化性
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、80℃の温水に7日間浸漬した。浸漬後のコーティングフィルムの外観を、目視観察により下記の基準で評価した。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観変化はほとんどなかった
△ :外観が若干白化したが、実用上問題なかった
× :外観が著しく白化した
(3)耐候性の評価(外観の評価)
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、メタルウェザー(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)にセットし、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度:63℃、層内湿度:50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度:30℃、層内湿度:98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)で800時間放置する耐候性試験を行った。該試験後、25℃50%RHの条件下で2日間保持してから、シート表面にクラックや白化などの外観を、目視観察により下記の基準で評価した。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観変化はほとんどなかった
△ :外観変化は若干あったが、実用上問題なかった
× :外観変化が著しかった
(4)べたつきの評価
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、80℃の条件下で24時間保管した後の、該コーティングフィルム表面を指で触り、べたつきについて下記の基準で評価した。
◎ :べたつきは全くなかった
○ :べたつきはほとんどなかった
△ :べたつきが若干あったが、実用上問題なかった
× :べたつきが著しかった
(5)耐溶剤性
300g/m2の錘に、ガーゼを輪ゴムで取り付け、酢酸エチルを染み込ませた。次いで実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムの表面を、当該錘を横方向に50往復してから、該フィルムの表面を目視観察により下記の基準で評価した。
○:フィルム表面の変化は全くみられなかった
△:フィルム表面の変化が若干みられたが、実用上問題なかった
×:フィルム表面の変化が著しかった
(6)透明性
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムの外観を目視観察して、下記の基準で評価した。
○ :ヘイズ感(曇った感じ)が全くなかった
△ :ヘイズ感(曇った感じ)が若干あるが、実用上問題なかった
× :ヘイズ感(曇った感じ)が顕著であった
(7)耐傷性
実施例及び比較例で得られたコーティングフィルムを、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦った後、該コーティングフィルムの表面を、目視観察により下記の基準で評価した。
○ :表面にほとんど変化がなかった
△ :表面に若干の傷付きや艶変化があったものの、実用上問題なかった
× :表面に著しい傷付きがあり、艶変化も顕著であった
【0064】
実施例1
基材フィルムとして、透明ポリプロピレン樹脂(厚さ:80μm)からなる樹脂フィルムを準備した。この表面にコロナ放電処理を施した後、該表面に下記組成のプライマー層形成用組成物を塗工(2.5g/m2)し、プライマー層(厚さ:2μm)を形成した。次いで、下記組成のコーティング剤を調製し、グラビアコート法にて塗膜を形成し、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、コーティング層(5g/m2)を形成した。得られたコーティング層の厚さは5μmであった。
得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0065】
プライマー層形成用樹脂組成物の組成
以下の樹脂組成物と硬化剤とを100:5(質量比)の割合で混合して得られる組成物である。
樹脂組成物:
ポリカーボネート系ウレタン/アクリル共重合樹脂:100質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン400(商品名)」,BASFジャパン株式会社製):15質量部
ヒンダードアミン系光安定剤(「チヌビン123(商品名)」,BASFジャパン株式会社製):3質量部
硬化剤:
ヘキサンメチレンジイソシアネート
【0066】
コーティング剤の組成
カプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能,重量平均分子量:1200):100質量部
アルキルシリケート1(上記一般式(1)におけるR1〜R4が全てメチル基のアルキルシリケートの平均26量体(24量体〜28量体の混合物),重量平均分子量:2500〜2900):10質量部
トリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン479(商品名)」,2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン,BASFジャパン株式会社製):1質量部
反応性官能基を有する光安定剤(商品名「サノールLS−3410」,1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート,BASFジャパン株式会社製):2質量部
【0067】
実施例2
実施例1において、コーティング剤に含まれるカプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマーを、ポリエーテル系アクリレートオリゴマー(2官能,重量平均分子量:3000)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0068】
実施例3
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1を他のアルキルシリケート2(上記一般式(1)におけるR1〜R4が全てメチル基のメチルシリケートの平均31量体(29量体〜33量体の混合物),重量平均分子量:3000〜3400)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0069】
実施例4
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1を他のアルキルシリケート3(上記一般式(1)におけるR1及びR3がメチル基であり、R2及びR4がエチル基であるアルキルシリケートの平均24量体(22量体〜26量体の混合物),重量平均分子量:2700〜3200)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0070】
実施例5
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1を他のアルキルシリケート4(上記一般式(1)におけるR1〜R4がエチル基であるアルキルシリケートの平均23量体(21量体〜25量体の混合物),重量平均分子量:2900〜3400)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0071】
比較例1
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1をアルキルシリケート5(「MS−56(商品名)」,三菱化学株式会社製,上記一般式(1)におけるR1〜R4が全てメチル基のアルキルシリケートの平均10量体(10〜12量体の混合物),重量平均分子量:1100〜1300)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0072】
比較例2
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1をアルキルシリケート6(「MS−56S(商品名)」,三菱化学株式会社製,上記一般式(1)におけるR1〜R4が全てメチル基のアルキルシリケートの平均16量体(14〜18量体の混合物),重量平均分子量:1500〜1900)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。
【0073】
比較例3
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1を上記のアルキルシリケート6とし、カプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマーを、ポリエーテル系アクリレートオリゴマー(2官能,重量平均分子量:3000)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。
【0074】
比較例4
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1をアルキルシリケート7(「メチルシリケート51(商品名)」,コルコート株式会社製,上記一般式(1)におけるR1〜R4が全てメチル基のアルキルシリケートの平均7量体,分子量:789)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0075】
比較例5
実施例1において、コーティング剤に含まれるアルキルシリケート1をメトキシ基とエトキシ基とを有するアルキルシリケート8(「EMS−485(商品名)」,コルコート株式会社製,上記一般式(1)におけるR1及びR3がメチル基であり、R2及びR4がエチル基であるアルキルシリケートの平均10量体である。分子量:1300)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0076】
比較例6
比較例4において、コーティング剤に含まれるカプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマーを、ポリエーテル系アクリレートオリゴマー(2官能,重量平均分子量:3000)とした以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。得られたフィルムについて、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0077】
【表1】

(注)表中のコーティング剤に関する数値は全て質量部である。
【0078】
実施例1〜3で得られたコーティングフィルムは、全ての評価において優れた結果を示しており、特に自浄性能(初期)及びその持続性の点で極めて優れた結果を示すことが確認された。一方、比較例1〜6で得られたコーティングフィルムは、自浄性能の持続性、耐温水白化性、べたつき、耐溶剤性、透明性の点で、十分ではなく、より高い性能を求められる場合は、改善の余地があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、電離放射線硬化性樹脂と、アルキルシリケートとを含有し、該アルキルシリケートが20〜40量体であるコーティング剤及びこれを用いたコーティングフィルムを提供することができる。本発明のコーティング剤及びコーティングフィルムは、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、建造物や屋外に設置される構造物への用途に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0080】
1.化粧シート
2.基材
3.コーティング層
4.プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化性樹脂と、アルキルシリケートとを含有し、該アルキルシリケートが20〜40量体であるコーティング剤。
【請求項2】
アルキルシリケートの分子量が、2500〜4000である請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
アルキルシリケートが、メトキシ基を有する請求項1又は2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
電離放射線硬化性樹脂が、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項5】
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が、1000〜10000である請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項6】
電離放射線硬化性樹脂100質量部に対するアルキルシリケートの含有量が、1〜20質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項7】
トリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項8】
基材フィルムの一方の面に、請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング剤を架橋硬化してなるコーティング層を有するコーティングフィルム。
【請求項9】
基材フィルムとコーティング層との間にプライマー層を有する請求項8に記載のコーティングフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−136647(P2012−136647A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290525(P2010−290525)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】