説明

コーティング用組成物の製造方法

【目的】 高硬度で耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性、耐候性、撥水性および密着性に優れ、かつ着色性が自由で隠蔽性が高く、光沢のある塗膜を形成するコーティング用組成物。
【構成】 下記(I)、(II) および(III)の3液のうち、2液を混合したち、残りの液を混合するコーティング用組成物の製造方法。
(I)(a)一般式RSi(OR′)3 (式中、Rは有機基、R′はアルキル基またはアシル基)で表されるオルガノアルコキシシランの縮合物の平均分子量が3,000〜100,000のオルガノポリシロキサン100重量部、(b)アルコール類(オルガノアルコキシシランの加水分解によって遊離するアルコールを含む)200重量部以上、(c)充填材50〜1,000重量部の混合物からなる分散液。
(II) (d)一般式RSi(OR′)3 で表されるオルガノアルコキシシランを100〜1,500重量部。
(III)(e)前記(d)酸性コロイダルシリカ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コーティング用組成物の製造方法に関し、さらに詳細にはスレート、セメント、モルタルおよびその他の無機窯業基材、鉄、ステンレスおよびアルミニウムなどの金属、さらにはガラス、プラスチックなどの製品の表面に、高硬度で耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性、耐候性、撥水性および密着性に優れ、着色性が自由で隠蔽性が高く、光沢のあるエナメル塗膜を形成するために好適な上塗り用に好適なコーティング用組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高硬度で耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性、耐候性、撥水性に優れ、かつ隠蔽性が高く光沢のあるエナメル塗膜を形成することが可能なコーティング用組成物が求められている。このような要求の一部を満たすコーティング用組成物として、シラノールの部分的縮合物とコロイド状シリカの分散液からなるビヒクル中に顔料を分散させた酸性の塗料組成物が提案されている(特公昭53−5042号公報、以下「先行技術1」という)。しかしながら、この組成物は、顔料の分散に以下に述べるような煩雑な工程を必要とするにもかかわらず、シェルフライフ(顔料を分散させてから使用可能な時間)が24時間以内と短いため、実際に使用するに際して著しい制限を与えるものである。
【0003】ところで、顔料粒子は10〜1,000nm程度の大きさの単一粒子(一次粒子)の集合体(凝集体)である。顔料分散とは、この凝集体をビヒクル中に所望の微粒子にまで均一に、しかも色別れや再凝集、あるいは沈降が起こらないように分散させる操作である。この顔料分散は、色材工業では非常に重要であり、顔料の分散性は、得られる塗膜の着色力、隠蔽力、耐候性などのあらゆる性能や性質に関係してくる。
【0004】従って、一定品質の塗料組成物を得るためには、厳密な工程管理が必要である。さらに、一定品質の所望の色の塗膜を得るためには、顔料分散後に色合わせと称する煩雑な工程(実際に塗膜を形成し、その色を所望の色と同じ色になるように分散の程度や着色顔料の添加量を加減すること)を必要とする。前記先行技術1の組成物は、シェルフライフが短いため、このシェルフライフ期間中に煩雑な分散工程と厳密な品質管理を行うことは困難である。また、顔料を用いて着色する場合は、通常、数種の着色顔料を組み合わせるが、前記先行技術1のビヒクルに2種類以上の着色顔料を分散させると、色別れが生じ所望の色とならないという問題がある。一方、特定分子量のオルガノポリシロキサンとコロイド状アルミナからなる組成物に、顔料を配合できることが開示されている(特開昭63−46272号公報、以下「先行技術2」という)。この先行技術2の組成物は、顔料分散性が良く、自由に着色できるが、光沢が低く、耐汚染性が悪いという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術の課題を背景になされたもので、高硬度で耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性、耐候性、撥水性および密着性に優れ、かつ着色性が自由で隠蔽性が高く、光沢のある塗膜を形成させることができるコーティング用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記(I)、(II) および(III)の3液のうち、2液を混合したち、残りの液を混合することを特徴とするコーティング用組成物の製造方法を提供するものである。
(I)(a)一般式RSi(OR′)3 (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R′は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの縮合物であって、そのポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜100,000のオルガノポリシロキサン100重量部に対し、(b)アルコール類(前記オルガノアルコキシシランの加水分解によって遊離するアルコールを含む)200重量部以上、および(c)充填材50〜1,000重量部の混合物からなる分散液。
(II) (d)一般式RSi(OR′)3 (式中、RおよびR′は前記に同じ)で表されるオルガノアルコキシシランを100〜1,500重量部。
(III)(e)前記(d)オルガノアルコキシシラン1モルに対し1.5モル以上に水を含有する酸性コロイダルシリカ。
以下、本発明を構成するコーティング組成物を構成要件別に詳述する。
【0007】(I)分散液(a)オルガノポリシロキサン;(a)オルガノポリシロキサンは、(a)′一般式RSi(OR′)3 で表されるオルガノアルコキシシランを加水分解および重縮合して得られるものであり、本発明で得られる組成物中においては顔料の分散性の向上および結合剤としての働きをするものである。このオルガノアルコキシシラン中のRは、炭素数1〜8の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−アミノプロピル基などが挙げられる。また、オルガノアルコキシシラン中のR′は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。
【0008】これらのオルガノアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランである。これらのオルガノアルコキシシランは、1種単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0009】また、(a)′一般式RSi(OR′)3 で表されるオルガノアルコキシシランのうち、80モル%以上が、CH3 Si(OR′)3 である場合が好ましい。なお、このオルガノアルコキシシランは、酸性の水媒体中で加水分解反応によってアルコールを遊離するとともに、重縮合反応を生起しオルガノポリシロキサンを生成する。また、(a)オルガノポリシロキサンの生成の際に、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのジメチルジアルコキシシランおよび/またはテトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランを、(a)′成分に対して50モル%以内で使用し、共縮合させることも可能である。この(a)オルガノポリシロキサンのポリスチレン換算重量平均分子量は、3,000〜100,000、好ましくは4,000〜50,000、特に好ましくは5,000〜20,000であり、3,000未満では得られる塗膜の密着性が低下し、一方100,000を超えると組成物の保存安定性が悪く、ゲル化を生起し、また得られる組成物をコーティングに供すると塗膜の密着性が低下することになる。
【0010】なお、本発明の(a)オルガノポリシロキサンを生成するに際し、顔料の分散性をさらに向上させるために、(f)コロイド状アルミナを配合することが好ましい。(f)コロイド状アルミナは、本発明により得られる組成物のゲル化防止、増粘および充填材の分散ならびに得られる組成物をコーティングに供することによって形成される塗膜の耐熱性、硬度および密着性の向上を目的に使用するものである。この(f)コロイド状アルミナとは、通常、水を分散媒とするpH2.5〜6の範囲のアルミナゾルであり、アルミナ、擬ベーマイト、ベーマイトなどを5〜25重量%程度含有し、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を使用してなり、通常、その平均粒径が5〜200nm、好ましくは10〜100nmのものである。
【0011】このようなコロイド状アルミナとしては、例えば日産化学工業(株)製のアルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−520などを挙げることができる。また、(f)コロイド状アルミナとしては、無水塩化アルミニウムの高温加水分解によって製造されたもの、あるいは一般式Al(OR″)3 (ここで、R″は、メチル基、エチル基、n−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基を示す)で表されるアルミニウムアルコキシドを加水分解して得られたもので、通常、平均粒径が5〜200nm、好ましくは10〜100nmの微粒子アルミナを、5〜25重量%、水75〜95重量%および酢酸、塩酸などの酸を0.05〜5重量%からなるコロイド状アルミナも使用することもできる。さらに、(f)コロイド状アルミナの例としては、平均粒径が5〜200nm、好ましくは10〜100nmの微粒子状アルミナをpH2〜6の酸性水性分散液としたものを用いることもできる。このような微粒子状アルミナとしては、例えばドイツ、デグサ社製のアルミニウムオキサイドCなどを挙げることができる。
【0012】本発明の(a)成分に好適なオルガノポリシロキサンの調製は、例えば前記(a)成分の出発物質となる(a)′オルガノアルコキシシラン100重量部に対して、(f)コロイド状アルミナを固形分換算で0〜50重量部好ましくは5〜40重量部、水10〜80重量部〔ただし、(f)成分中に存在することのある水を含む〕、およびアルコール類1〜40重量部を混合し、加水分解、重縮合を行い、(a)′オルガノアルコキシシランをポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜100,000の(a)オルガノポリシロキサンとなし、次いで前記アルコール類を添加することにより実施される。なお、ここで使用されるアルコール類とは、後記(b)アルコール類と同様のものである。
【0013】(b)アルコール類;(b)アルコール類は、前記(a)成分と後記(c)充填材を均一に混合し、さらに組成物のゲル化を防止するためのものである。この(b)アルコール類としては、1価アルコール、2価アルコールおよび2価アルコール誘導体を挙げることができる。このうち、1価アルコールとしては、炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ダイアセトンアルコールなどが挙げられる。また、2価アルコールおよびその誘導体としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0014】これらの(b)アルコール類としては、好ましくはメタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコールである。これらの(b)アルコール類は、1種で使用また2種以上を併用することができる。(b)アルコール類は、(a)′成分の加水分解によって遊離するアルコールを含み、(b)成分の組成物中の割合は、(a)成分100重量部に対して200重量部以上、好ましくは300〜1,000重量部である。(b)アルコール類の配合量が200重量部未満では、(a)オルガノポリシロキサンと(c)充填材の分散性が悪くなり、また得られる組成物の粘度が高くなりすぎて均質な塗膜が得られず、一方1,000重量部を超えると、相対的に他の成分が少なくなり、得られる組成物をコーティングに供することにより形成される塗膜の密着性が低下したり、薄膜すぎて目的とする塗膜を得ることができなくなる場合がある。
【0015】(c)充填材;(c)充填材は、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために使用されるものである。この(c)充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この(c)充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。これらの(c)充填材の平均粒径または平均長さは、通常、50〜50,000nm、好ましくは100〜5,000nmである。(c)成分の組成物中の割合は、(a)成分100重量部に対し、50〜1,000重量部、好ましくは200〜500重量部である。(c)成分が50重量部未満では、得られる塗膜の隠蔽性が低く、一方1,000重量部を超えると、光沢、耐汚染性が低下する。
【0016】(II) (d)オルガノアルコキシシラン(d)オルガノアルコキシシランは、前記(a)′オルガノアルコキシシランと同様のものであり、本発明により得られる組成物において、得られる塗膜の光沢、耐汚染性、硬度を向上させる作用を与えるものである。この(d)オルガノアルコキシシランとしては、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。この(d)オルガノアルコキシシランの組成物中における割合は、(a)成分100重量部に対して、100〜1,500重量部、好ましくは200〜1,000重量部である。(d)成分が100重量部未満では、得られる塗膜の光沢、耐汚染性が悪化し、一方1,500重量部を超えると、顔料分散性が低下し、均一で光沢のある塗膜を形成しなくなる。
【0017】(III)(e)酸性コロイダルシリカ(e)酸性コロイダルシリカは、(d)オルガノアルコキシシランの加水分解反応に必須の成分であるとともに、(c)充填材の分散媒としての役目を果たすものである。ここで、(e)酸性コロイダルシリカとは、高純度の無水ケイ酸の水性分散液であり、通常、平均粒径が5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が10〜30重量%程度である。この(e)酸性コロイダルシリカは、ナトリウム含有量が0.005重量%以下で、酸性領域、すなわちpHが1〜6、好ましくは2〜5、特に好ましくは2〜4の範囲にあることが必要である。このような水を分散媒とする酸性コロイダルシリカとしては、例えば日産化学工業(株)製、スノーテックス;触媒化成工業(株)製、カタロイドSN;米国デュポン社製、Ludox;米国モンサント社製、Syton;米国ナルコケミカル社製、Nalcoagなどを挙げることができる。
【0018】また、(e)酸性コロイダルシリカとして使用可能なものとしては、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒に分散した分散液に水を加え、さらに酸を加えてpHを2〜6に調整したものを使用することもできる。このようなコロイダルシリカとしては、例えば日産化学工業(株)製のイソプロパノールシリカゾル、メタノールシリカゾル、触媒化成工業(株)製のオスカルなどが市販されている。pH調整用の酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、または酢酸、ギ酸、トルエンスルホン酸などの有機酸を挙げることができる。(e)酸性コロイダルシリカの配合量は、(d)オルガノアルコキシシラン1モルに対し(e)成分中に含まれている水換算で1.5モル以上、好ましくは2〜15モルであり、1.5モル未満では、(d)オルガノアルコキシシランの加水分解反応が不充分となり、得られる塗膜の耐汚染性、硬度が低下する。なお、(e)酸性コロイダルシリカは、シリカ量が固形分換算で2〜50重量部となるように配合することが好ましい。
【0019】なお、本発明により得られるコーティング用組成物は、(a)〜(e)成分を含有してなるが、その全固形分濃度は、好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%であり、20重量%未満では固形分濃度が薄すぎて得られる組成物をコーティングに供することにより形成される塗膜の耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐候性などの諸特性が発現されない場合があり、また形成される塗膜にピンホールが発生する場合があり、一方70重量%を超えると固形分濃度が高すぎて組成物の保存安定性が悪化したり、組成物をコーティングに供しても均一な塗膜の形成が困難となるなどの弊害が生起する場合がある。
【0020】また、本発明により得られる組成物には、分散剤、増粘剤、各種界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、またナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩、染料などの従来公知のその他の添加剤を添加することもできる。さらに、本発明により得られる組成物は、光沢のある塗膜を形成するが、ホワイトカーボン、ケイソウ土、樹脂粒子などの艶消し剤を配合することによって、半艶ないしは艶消しの塗膜を形成させることも可能である。
【0021】以上のような(a)〜(e)成分を含有する本発明により得られるコーティング用組成物は、以下の第1〜2工程の方法で製造される。
第1工程(a)オルガノポリシロキサンの(b)アルコール類溶液をビヒクルとして、(c)充填材が分散した(I)液を調製する。
第2工程使用時に前記(I)液、(II) 液である(d)オルガノアルコキシシランおよび(III)液である(e)酸性コロイダルシリカの3液のうち、2液を混合したのち、次いで残りの液を混合する。なお、3液すべての混合は、10時間以内に完了することが、下記の熟成時間の点から好ましい。本発明では、3液を混合したのち、0.5〜240時間、好ましくは1〜48時間熟成を行うことが好ましい。熟成時間が0.5時間未満では、(d)成分の加水分解、重縮合が充分に進行せず、密着性、硬度が低下する場合があり、一方240時間を超えると、塗膜の硬度が低下することがある。なお、熟成温度は、通常、5〜30℃の常温下で行うことが好ましい。
【0022】なお、本発明により得られるコーティング用組成物を比較的低い温度でより速く硬化させるためには、硬化促進剤を併用する方が効果的である。この硬化促進剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ化合物;リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミンなどの脂肪族ジアミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミン、ピペリジン、ピペラジンなどの脂環式アミン類;m−フェニレンジアミンなどの芳香族アミン類;エタノールアミン類、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミンなどのアミン化合物;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シランカップリング剤;さらに(C4 9 2 Sn(OCOC11232 、(C4 9 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH3 2 、(C4 9 2 Sn(OCOCH=CHCOOC4 9 2 、(C8 172 Sn(OCOC11232 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOCH3 2 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOCH3 2、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC4 9 2 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC8 172 などの有機スズ化合物、または有機スズ化合物とエチルシリケート類とマレイン酸エステルとの反応生成物などが使用される。これらの硬化促進剤の使用割合は、組成物100重量部に対し、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部用いられる。なお、硬化促進剤の種類によっては、そのpHがアルカリ性にある場合があり、その場合には、硬化促進剤を添加したのちの本発明の組成物のpHは、中性あるいはアルカリ性サイドになる場合もある。
【0023】本発明の組成物は、コンクリート、スレート、セメント、モルタルおよびその他の無機窯業基材;鉄、ステンレスおよびアルミニウムなどの金属;さらにはガラス、プラスチックなどの製品の表面に、エナメル塗膜を形成することが可能であるが、基材への吸い込み防止、基材中のアルカリ成分の析出防止、防蝕性向上、密着性向上などを目的として、下塗りにシーラーを併用することもできる。このシーラーとしては、その要求される性能から、有機または無機ポリマーをビヒクルとする塗料が使用され、例えばアクリルエマルジョン系、非水アクリルエマルジョン系あるいは有機溶剤に溶解させたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコン変性アクリル樹脂系、シリコン樹脂系などを挙げることができ、これらの塗料の使用に際しては下地となる基材の材質、表面状態に応じて適宜選択される。本発明のコーティング用組成物は、対象物である基材の表面または前記シーラーを施した基材の表面に、刷毛、スプレー、ディッピング、フローコーター、ロールコーターなどの塗装手段により、1回塗りで厚さ5〜50μm程度の塗膜を形成することができる。また、塗装後の乾燥、加熱処理条件は、通常、80〜250℃で5〜30分間である。
【0024】
【実施例】以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算重量平均分子量の測定および実施例中における各種の測定は、下記のとおりである。GPC法による測定は、下記条件において、テトラヒドロフランを溶媒として使用し、オルガノポリシロキサン1gを100ccのテトラヒドロフランに溶解して試料とした。また、標準ポリスチレンは、米国プレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを使用した。
装置;米国ウオーターズ社製、恒温高速ゲル浸透クロマトグラム(モデル150−C ALC/GPC)
カラム;昭和電工(株)製、SHODEX A−80M、長さ50cm測定温度;40℃流速;1cc/分
【0025】塗膜の色別れは、形成した塗膜を目視で観察し、色が均一なものは異常なし、色がまだらのものは色別れありとした。光沢は、JIS K5400に準じ、入射角、反射角60°のときの鏡面光沢度を測定した。鉛筆硬度は、JIS K5400による鉛筆硬度に拠った。密着性は、JIS K5400による碁盤目テスト後、テープ剥離試験を3回実施し、その平均に拠った。耐沸騰水性は、水道水で8時間煮沸し、塗膜の状態を観察した。耐温水性は、試料を60℃の水道水に7日間浸漬し塗膜の状態を観察した。耐水性は、試料を常温で水道水に60日間浸漬し、塗膜の状態を観察した。
【0026】耐アルカリ性■は、試料を飽和消石灰水中に10日間浸漬し、塗膜の状態を観察した。耐アルカリ性■は濃度10%のアンモニア水を塗膜上に5ml滴下し、蓋付きシャーレ中で1日静置後、水洗し、碁盤目テストによる密着性試験を行った。耐酸性は、濃度10%の塩酸を塗膜上に5ml滴下し、蓋付きシャーレ中で1日静置後、水洗し、密着性試験を行った。乾湿サイクルは、試料を30℃水道水中に30分間浸漬と空気中105℃加熱の繰り返しを10回行い、塗膜の状態を観察した。耐汚染性は、JIS K5400のマーキンングペン汚染性に準じた。耐候性は、JIS K5400のサンシャインカーボンアーク灯式に準じ、3,000時間照射後の塗膜の状態を観察した。
【0027】参考例1還流冷却器、撹拌機を備えた反応器に、(a)′メチルトリメトキシシラン100部、(f)アルミナゾル520〔日産化学工業(株)製の水性分散液、固形分濃度20%〕60部、i−プロピルアルコール15部を加え、60℃に加熱して4時間反応させたのち、(a)′γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部を加え、さらに60℃で1時間反応させた。これに、i−プロピルアルコールを80部加え、オルガノポリシロキサン溶液Aを得た。溶液Aの固形分濃度は25%であった。得られた溶液Aを、遠心分離機を用いてアルミナ分を除去し、上澄み液を孔径0.45μmのフィルターでろ過し、このろ液をGPC法で測定したところ、ポリスチレン換算重量平均分子量は9,300であった。
【0028】参考例2上記と同様の反応器に、(a)′メチルトリメトキシシラン90部、(e)アルミナゾル520を60部、i−プロピルアルコール20部を加え、60℃に加熱して5時間反応させたのち、(a)′フェニルトリメトキシシラン10部を加え、さらに60℃で1時間反応させた。次いで、i−プロピルアルコール72部を加え、オルガノポリシロキサン溶液Bを得た。この溶液Bを、前記と同様にしてGPC法で測定したところ、ポリスチレン重量平均分子量は7,200であった。
【0029】参考例3上記と同様の反応器に、コロイド状シリカとしてLUDOX HS40(デュポン社製、固形分濃度40%、pH10の水性分散液)100部、氷酢酸2.3部および水40部を加え、pH4.0に調整した。この分散液に、(a)′メチルトリメトキシシラン80部を加え、室温雰囲気で1時間攪拌し、固形分濃度36%、pH5.5のビヒクルCを得た。
【0030】実施例1〜15、比較例1〜9参考例1〜2で得られたオルガノポリシロキサン溶液AあるいはBに、(c)充填材である着色顔料および(b)アルコール類を表1の割合で配合し、サンドミルを用いて顔料分散液を作製した。これらの顔料分散液は、3ケ月以上変化がなく、安定なものであった。この分散液に、(d)メチルトリメトキシシランを混合後、(e)酸性コロイダルシリカなどを表1の割合でさらに配合し、室温で1時間攪拌し、コーティング用組成物a〜fを得た。
【0031】また、前記溶液A、Bに、それぞれ(c)着色顔料および(d)アルコール類を表1の割合で配合し、サンドミルを用いて顔料分散液を作製した。これらの分散液は、3ケ月以上変化がなく、安定なものであった。この分散液に、硬化促進剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、コーティング用組成物g〜jを得た。さらに、参考例3で得たビヒクルCに、表1の割合で着色顔料を配合し、サンドミルを用いてコーティング用組成物kを得た。この組成物kは、1日後には塗膜を形成しなかった。次に、以上のコーティング用組成物a〜kを、下記の各種基材にエアスプレーガンを用いて乾燥時の膜厚が約30μmになるように塗布し、150℃で10分間乾燥した。得られた各種の試験片を用いて各種の試験を行った。結果を表2に示す。
【0032】基材イスレート板(JIS A5403F)に、マイティエポシラー〔大日本塗料(株)製、エポキシ樹脂系シーラー〕を、乾燥重量で50g/m2 塗布し、乾燥したもの。
基材ロ鋼板(JIS G4141、SPCC−SB)に、マイティエポシラー〔大日本塗料(株)製、エポキシ樹脂系シーラー〕を、乾燥重量で50g/m2 塗布し、乾燥したもの。
基材ハステンレス板(JIS G4305、SU304)を、アルカリ脱脂剤〔晃栄工業(株)製、PS−200A〕で脱脂後、水洗したもの。
基材ニアルミ板(JIS H4000、A1050P)を、サンドブラスト処理したもの。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【発明の効果】本発明により得られるコーティング用組成物は、均一で光沢のある塗膜が得られ、またこの塗膜は、高硬度で耐汚染性、耐水性、耐薬品性、耐候性、耐熱性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(I)、(II) および(III)の3液のうち、2液を混合したち、残りの液を混合することを特徴とするコーティング用組成物の製造方法。
(I)(a)一般式RSi(OR′)3 (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R′は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの縮合物であって、そのポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜100,000のオルガノポリシロキサン100重量部に対し、(b)アルコール類(前記オルガノアルコキシシランの加水分解によって遊離するアルコールを含む)200重量部以上、および(c)充填材50〜1,000重量部の混合物からなる分散液。
(II) (d)一般式RSi(OR′)3 (式中、RおよびR′は前記に同じ)で表されるオルガノアルコキシシランを100〜1,500重量部。
(III)(e)前記(d)オルガノアルコキシシラン1モルに対し1.5モル以上の水を含有する酸性コロイダルシリカ。

【公開番号】特開平5−163463
【公開日】平成5年(1993)6月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−350771
【出願日】平成3年(1991)12月12日
【出願人】(000004178)日本合成ゴム株式会社 (3,320)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)