説明

コーティング用途におけるジスルホ型蛍光増白剤

本発明は、合成結合剤および異なる合成共結合剤を含有するコーティングスリップを光学的にブライトニングさせるための、特定のジスルホ型蛍光増白剤の使用に関する。さらに、本発明は、コーティングスリップ、およびコート紙を調製するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングスリップを光学的にブライトニングさせるまたは調製するための特定のジスルホ型蛍光増白剤の使用、コーティングスリップ自体、およびブライトニングした紙の生成のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙およびボードの白色度は、蛍光増白剤の添加によって向上し得ることが周知である。紙およびボード産業において使用される最も重要な蛍光増白剤は、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(フラボン酸)のアニリノ置換ビストリアジニル誘導体である。これらの蛍光増白剤から、ジスルホ、テトラスルホおよびヘキサスルホ型が公知である。アニリン環にスルホン酸基を有さないジスルホ型蛍光増白剤は、水への低い溶解度およびセルロース繊維に対する高親和性を有する。該増白剤は、製紙過程のウエットエンドにおける使用にとりわけ適している。各アニリン環に2個のスルホン酸基を有するヘキサスルホ型蛍光増白剤は、水への高い溶解度およびセルロース繊維に対する低親和性を有する。該増白剤は、極めて高い白色度が望ましい場合のさらなる特殊生成物である。各アニリン環に1個のスルホン酸基を有するテトラスルホ型蛍光増白剤は、ジスルホ型およびヘキサスルホ型蛍光増白剤の間の挙動を呈し、紙またはボードを増白するために最も一般的に使用される。
【0003】
非コート紙または未処理のコーティング紙のブライトニングは、通常この目的のために溶解した形態で存在する蛍光増白剤のパルプおよび/または表面塗布における使用によって達成され得る。コート紙の生成において、コーティングスリップへの蛍光増白剤の添加は慣例的であるため、完成したコート紙において、紙に塗布された顔料層中にも蛍光増白剤が存在する。コート紙は、高品質印刷の生成に特に適している。高白色度を有するコート紙への傾向が進行しており、したがって、コーティングスリップ構成成分として可能な限り有効な蛍光増白剤に対する需要がある。
【0004】
アニリン環にスルホン酸基を有さない一般的なジスルホ型蛍光増白剤は、濃縮液体製剤において例えば沈澱物が形成されるといった問題を引き起こす、水への低い溶解度を有し、故に、尿素、トリエタノールアミンまたはジエチレングリコール等の可溶化助剤を必要とするが、これらはコート損紙を再パルプ化した後の製紙工場からの廃液を汚染し、故に望ましくない。
【0005】
EP−A−1355004は、コーティングスリップのブライトニングのためのテトラスルホ型蛍光増白剤について記述している。WO2006/045714A1は、蛍光増白剤、エチレン系不飽和モノマーまたはモノマーブレンドから形成されたポリマー、および場合により、コーティング、サイズプレスまたはフィルムプレス用途のためのポリエチレングリコールを含有する組成物を開示している。EP−A−1752453は、特定のアミノアルカノールから誘導される対イオンであるスルホン酸基の特定の対イオンを含有するジスルホ型蛍光増白剤の貯蔵安定溶液を教示している。WO02/055646A1は、2種の特定のジスルホ型蛍光増白剤の混合物を含有する濃縮水溶液を開示している。さらに、水中のジスルホ型蛍光増白剤のスラリーまたは分散液は、EP−A−0884312から公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、先行技術の問題は、コーティングスリップにおいて、アニリン環にカルボン酸基を有する特定のジスルホ型蛍光増白剤を使用することによって克服できることが分かっている。これらのジスルホ型蛍光増白剤は、アニリン環にスルホン酸基を有さない一般的に使用されるジスルホ型蛍光増白剤よりも高い水への溶解度を有する。加えて、これらの特定のジスルホ型蛍光増白剤は、コーティングスリップにおいて有意に良好な増白性能を有することが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、少なくとも式(I)の蛍光増白剤
【0008】
【化1】

[式中、
Xは、互いに独立に、OまたはNR’を表し、ここで、R’は水素またはC1〜C3アルキルであり、
nは1または2であり、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、シアノ、C1〜C4アルキル、C2〜C4シアノアルキル、C2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキルを表し、ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり(あるいは、R1およびR2またはR3およびR4は、互いに独立に、N原子と一緒になって、モルホリン、ピペリジンもしくはピロリジン環を形成する);あるいは−(CH2l−SO3M(ここで、lは、1、2または3である)、または−(CH2i−COOR、−(CH2i−CONHR、−(CH2i−OR(ここで、iは1から4までの整数であり、Rは、C1〜C3アルキルであるか、またはMと同じ意味を有する)を表し、
Mは、水素、あるいは1当量のカチオン、特に、Li、Na、K、Ca、Mg、アンモニウム、またはC1〜C4アルキルもしくはC2〜C4ヒドロキシアルキルによって一、二、三もしくは四置換されているアンモニウムを表す]
の、少なくとも1種の合成結合剤および該合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤を含有するコーティングスリップの増白(ブライトニング)のための使用に関する。
【0009】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤を含有するコーティングスリップ、およびコート紙を調製するためのそれらの使用、ならびにその過程によって入手可能な紙にも関する。加えて、本発明は、少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤とポリエチレングリコールとを含有する調製物に関する。本発明の好ましい実施形態を、以後の説明、図および請求項において記述する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コーティングスリップにおける異なる蛍光増白剤の増白性能を示す図である。
【図2】コーティングスリップにおける異なる蛍光増白剤の増白性能を示すさらなる図である。
【図3】コーティングスリップにおける異なる蛍光増白剤の増白性能を示す別の図である。
【図4】コーティングスリップにおける、ポリエチレングリコール有りおよび無しの異なる蛍光増白剤の増白性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、少なくとも1種の上記で定義した式(I)の蛍光増白剤が使用される。好ましい実施形態において、Xは、式(I)中のNR’を表す。別の好ましい実施形態において、nは1である。本発明の文脈において、式(I)中、アルキル基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、アルキル基の可能な置換基は、アルコキシ、シアノおよび/またはヒドロキシル基であり、これらがアルキル鎖の任意の位置で結合していてよい。本発明において、C1〜C4アルコキシアルキルは、C1〜C4アルコキシで置換されているC1〜C4アルキルを意味する。好ましい実施形態において、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、C2〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C4アルコキシアルキルまたはC1〜C4アルキル、好ましくはC2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキル、特にヒドロキシエチルまたはヒドロキシイソプロピルを表す。最も好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシイソプロピルを表す。アニリン環のカルボキシ基は、オルト、メタまたはパラ位にあってよく、好ましくは、該基はオルトまたはパラ位、特にパラ位にある。
【0012】
Mの好ましい実施形態は、水素、Na、K、Ca、Mgであり、特に、Mは、Na、Kまたは水素であり、最も好ましいのはNaである。
【0013】
好ましい蛍光増白剤は、カルボン酸残基が、互いに独立に、オルトまたはパラ位に、好ましくはパラ位にある、下記の式(Ia)および式(Ib)の蛍光増白剤:
【0014】
【化2】

である。
【0015】
式(I)の蛍光増白剤は、公知の手順によって調製でき、遊離酸として、またはその塩、好ましくはアルカリ金属塩として使用される。概して、化合物は、塩化シアヌルを、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸またはその塩、適切なカルボキシル酸基含有誘導体、例えば2−または4−アミノ安息香酸、および置換脂肪族アミンまたは複素環式化合物と反応させることによって調製される。ポーランド特許第61710号は、各アニリン環のp−位に1個のカルボン酸基を有する上記で定義した式(I)のいくつかの特定の蛍光増白剤の調製を開示している。ドイツ(旧東ドイツ)特許第55668号は、各アニリン環に1または2個のカルボン酸基を有する上記で定義した式(I)のいくつかの特定の蛍光増白剤を調製するためのさらなる過程を開示している。式(I)の蛍光増白剤の精製は、単離ステップを回避できるため、一般的に使用されるジスルホ型蛍光増白剤よりも平易であり、故に費用効率が高い。精製は、例えば膜濾過によって行われ得る。ポーランド特許第61710号において開示されている水分蒸発または塩析沈殿ステップとは対照的に、式(I)の蛍光増白剤の精製は膜濾過によって実現され得、得られた生成物はそのまま使用され得る。これは、式(I)の蛍光増白剤の驚くほど高い溶解度に起因する。
【0016】
コーティングスリップの調製またはブライトニングには、1種または複数の式(I)の蛍光増白剤が使用される。好ましい実施形態において、1種の式(I)の蛍光増白剤が使用される。別の好ましい実施形態において、2または3種の式(I)の蛍光増白剤が使用される。他の公知の蛍光増白剤を追加で使用することも可能である。
【0017】
好ましい実施形態において、蛍光増白剤は、水性調製物の形態で使用される。
【0018】
水性調製物は、粗溶液から、濃縮および脱塩溶液から、または水含有プレスケーキから調製され得る。特に良好な白色度を構築するためには、いわゆる担体物質を水性蛍光増白剤調製物に組み込むことが有利である。
【0019】
水性蛍光増白剤調製物は、好ましくは、いずれの場合も調製物100重量%を基準として、
a)10から40重量%までの少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤と、
b)0から30重量%までの標準化剤と、
c)0から2重量%までの無機塩と、
d)28から90重量%までの水と
を含有する。
【0020】
慣例的な標準化剤は、例えば、尿素、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、グリセロール、ε−カプロラクタム、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンである。いずれの場合も、標準化剤がない調製物が好ましい。無機塩は、生成過程で生じる無機塩である。
【0021】
別の好ましい実施形態において、水性蛍光増白剤調製物は、いずれの場合も調製物100重量%を基準として、
a)5から40重量%までの少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤と、
b)1から50重量%までの少なくとも1種の担体物質と、
c)0から2重量%までの無機塩と、
d)8から94重量%までの水と
を含有する。
【0022】
適切な担体物質は、概して、水素架橋結合を形成する能力を有する親水性ポリマーである。好ましい担体物質は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、またはこれらの物質の混合物であり、これらのポリマーを場合により修飾することが可能である。好ましいポリビニルアルコールは、85%超の加水分解度を有するものである。好ましいカルボキシメチルセルロースは、0.5超の置換度DSを有するものである。好ましいポリエチレングリコールは、200から8,000g/molまで、好ましくは800から4,000g/molまでの数平均分子量Mnを有するものである。適切な担体はさらに、例えば、天然、誘導体化または分解されたデンプン、アルギン酸塩、カゼイン、タンパク質、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシアルキルセルロース、およびポリビニルピロリドンである。最も好ましくは、ポリエチレングリコールが担体として使用される。
【0023】
加えて、無担体および担体含有調製物はいずれも、少量、通常は5重量%未満の量の、分散剤、増粘剤、不凍剤、保存剤、錯化剤等のさらなる助剤、またはワークアップ中に完全に除去されなかった蛍光増白剤合成からの有機および無機副産物を含有し得る。
【0024】
担体含有調製物は、溶解度および保存可能期間を増大させるための標準化剤を追加で含有し得る。
【0025】
無担体水性蛍光増白剤調製物は、概して、蛍光増白剤溶液(粗製または膜濾過したもの)を塩基で中性から弱アルカリ性のpH値に調整し、場合により1種または複数の標準化剤を添加および溶解し、場合により水で所望の最終濃度に希釈することによって調製され得る。蛍光増白剤が水で湿らせたプレスケーキまたは乾燥粉末の形態で使用される場合、ある特定の量のプレスケーキまたは粉末を、塩基の添加および撹拌しながら、場合により昇温で水に完全に溶解し、場合により、水のさらなる添加によって所望の濃度に調整する。
【0026】
この目的のために好ましい塩基は、アルカリ金属水酸化物であり、希釈には脱塩水が好ましい。確立されるpH値は、好ましくは7から11まで、好ましくは8から10までの範囲内である。溶解には25から80℃までの温度が慣例的である。
【0027】
担体含有調製物は、概して類似の方式で調製され得、調製過程中の任意の所望時に担体物質も添加される。担体物質が固体形態で添加される場合、該物質は概して、撹拌しながら、場合により昇温で完全に溶解されるため、均質な液体調製物が形成される。担体含有調製物の室温での粘度は、好ましくは3,000mPas未満である。慣例的な溶解温度は、25から100℃までの範囲内である。
【0028】
濃縮した水性蛍光増白剤調製物は、通常、いわゆるE1/1値によって特徴付けられる。この目的のために、調製物の高度希釈溶液の吸光度を、当業者に公知である慣例的なUV/VIS分光法により、1cmセルにてある特定の波長で決定する。この波長は、それぞれの蛍光増白剤分子の長波吸収極大に相当する。フラボネート蛍光増白剤の場合、波長は約350mmである。そしてE1/1値は、1%強度溶液について推定される仮想吸光度に相当する。
【0029】
本発明に従って使用される蛍光増白剤のE1/1値は、好ましくは50から180まで、特に好ましくは70から140までである。
【0030】
本発明に従ってブライトニングされるコーティングスリップは、少なくとも1種の合成結合剤、特にラテックス結合剤またはポリアクリレートと、該合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤とを含有する。
【0031】
適切な合成結合剤は、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリレートまたはビニルアセテートを主成分とするラテックスである。これらのポリマーは、アクリロニトリル、アクリルアミド、α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸またはマレイン酸等)、アクリレート、ビニルエステル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のさらなるモノマーによって、場合により修飾されていてよい。概して、紙コーティングスリップの調製において使用されるすべての慣例的な合成結合剤、特にラテックス結合剤およびポリアクリレートが適している。好ましいラテックス結合剤は、スチレン/ブタジエンを主成分とするものである。
【0032】
合成結合剤とは異なる適切な合成共結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコールおよび/またはアクリレートを主成分とする合成増粘剤である。さらに適切な共結合剤は、担体について上記したものと同じ化合物である。好ましい合成共結合剤は、ポリビニルアルコール、特に85%超の加水分解度および特に2〜80mPas(20℃の4%強度水溶液で計測)のブルックフィールド粘度を有するもの、カルボキシメチルセルロース、特に0.5超の置換度および特に5から5000mPasまで(25℃の2%強度水溶液で計測)のブルックフィールド粘度を有するもの、ならびにこれら2つの物質の混合物である。最も好ましい共結合剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物である。
【0033】
本発明に従ってブライトニングされるコーティングスリップは、好ましくは、白色顔料をさらに含有する。一般的に使用される白色顔料は、天然または沈殿した形態の炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、サチン白、水酸化アルミニウムおよび硫酸バリウムであり、それらの混合物の形態であることも多い。
【0034】
本発明に従ってブライトニングされるコーティングスリップは、任意選択のさらなる成分として分散剤を含有し得る。ポリアクリレート、ポリホスフェートおよびクエン酸Naは、この目的のために一般的に使用される。さらに、ポリアスパラギン酸も適している。さらなる任意選択の添加物は、架橋剤である。これらの例は、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、グリオキサール、およびアンモニウム/炭酸ジルコニウムである。さらに、例えばEP−A−825181において記載されている通り、ポリアミドアミン/エピクロロヒドリン樹脂、グリオキサール化ポリアクリルアミドまたは親水化ポリイソシアネートを主成分とする湿潤強度剤も、架橋剤として適している。さらに、消泡剤、殺生物剤、錯化剤、pH調整用の塩基、ステアリン酸Ca、式(I)のもの以外の光学的ブライトニング剤、および遮光染料を、さらなる任意選択の添加物として使用してもよい。時折、コーティングスリップに撥水性を付与するための表面サイズ剤も添加される。これらの例は、スチレン/アクリル酸、スチレン/無水マレイン酸またはオリゴウレタンを主成分とするポリマー溶液、およびアクリロニトリル/アクリレートまたはスチレン/アクリレートを主成分とするポリマー分散液である。後者は、例えばWO−A−99/42490において記載されている。
【0035】
本発明に従ってブライトニングされるコーティングスリップは、いずれの場合もコーティングスリップの白色顔料100重量%を基準として、合成結合剤を好ましくは2から20重量%まで、特に3から15重量%までの量で、および合成共結合剤を0.1から3重量%まで、特に0.15から2重量%までの量で含有する。
【0036】
本発明は、
少なくとも1種の白色顔料と、
少なくとも1種の合成結合剤と、
該合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤と、
少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤と
を含む、コーティングスリップ、特に水性コーティングスリップまたは水性顔料調製物にさらに関する。
【0037】
好ましくは、合成結合剤の量(乾燥物質として算出)は、2から20重量%まで、特に3から15重量%までであり、それとは無関係に、共結合剤の量は、好ましくは0.1から3重量%まで、特に0.15から2重量%までである。好ましくは、式(I)の蛍光増白剤の量は、いずれの場合も白色顔料100重量%の量を基準として、0.025から1重量%まで、特に0.03から0.75重量%までである。
【0038】
白色顔料、合成結合剤、合成共結合剤、蛍光増白剤および他の添加物についての好ましい実施形態は、上記したものと同じである。
【0039】
コーティングスリップは、好ましくは、追加で少なくとも1種の分散剤を、コーティングスリップの白色顔料100重量%を基準として、特に0.05から1重量%までの量で含有する。適切な分散剤は、好ましくはポリアクリル酸および対応する塩である。コーティングスリップの含水量は、コーティングスリップの総量を基準として、好ましくは20から50重量%まで、特に25から45重量%までである。
【0040】
本発明は、本発明によるコーティングスリップの、コート紙の生成のための使用にさらに関する。
【0041】
コーティングスリップは、好ましくは、種々の実施形態におけるナイフコーティング、エアブラシ、ブレード、ロールコーター、フィルムプレス、キャスティング法等によって等、この目的に適したすべての塗布方法によって1回または数回、紙に塗布され得る。コーティングスリップの固定化および乾燥は、通常、最初に非接触熱風および/またはIR乾燥、一般的には続いて加熱ロールを利用する接触乾燥によって達成される。次いで通常、例えばカレンダーを利用して、コート紙を圧縮し、平滑化しまたはその光沢に影響を与えるためのカレンダリングが行われる。
【0042】
適切な非コート原紙、または未処理のコーティング紙、ボードおよびボール紙は、漂白または無漂白、木材含有または木材なしの、古紙含有および脱インキ繊維から生成された紙、ボードおよびボール紙である。これらは、天然もしくは沈殿したチョーク、カオリン、タルクまたはアナリン(annalines)等の鉱物繊維をさらに含有し得る。非コート紙、ボードおよびボール紙は、エンジンサイズ剤塗布および/または表面サイズ剤塗布されていてよく、その結果、とりわけ、コーティングスリップの浸透性および接着性が影響を受けることになる。一般的に使用されるエンジンサイズ剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ならびにロジンサイズ剤およびミョウバンの組合せであり、一般的に使用される表面サイズ剤は、スチレン/アクリル酸、スチレン/無水マレイン酸またはオリゴウレタンを主成分とする前述のポリマー溶液、およびアクリロニトリル/アクリレートまたはスチレン/アクリレートを主成分とするポリマー分散液である。得られるコート紙の望ましい白色度特性を制御するために、原紙をパルプ中でブライトニングさせ、かつ/または表面ブライトニングさせてよく、この目的のために、例えばフラボネートブライトニング剤が使用される。
【0043】
本発明はさらに、紙を増白する、またはコート紙を生成するための上述のコーティングスリップの使用、およびさらにそれによって得られる紙に関する。加えて、本発明は、少なくとも1種の合成結合剤と、該合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤とを含むコーティングスリップ、特に水性コーティングスリップをブライトニングさせるための方法であって、該コーティングスリップを、上記した通りの式(I)の蛍光増白剤を含む蛍光増白剤組成物で処理するステップを含む方法に関する。同様に、合成結合剤、合成共結合剤および他の任意選択の添加物は、上記したものと同じである。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の式(I)のジスルホ型蛍光増白剤と、ポリエチレングリコールとを含む調製物に関する。蛍光増白剤およびポリエチレングリコールは、上記で定義したものと同じである。調製物は、好ましくは液体形態で存在する。調製物は、蛍光増白剤、水およびポリエチレングリコール、ならびにさらに場合により、若干量のpH調整用の塩基から調製され得る。調製物は、コーティングスリップへの添加またはその調製に使用され得る。
【0045】
生成された紙の白色度は、CIE白色度によって特徴付けできる。異なる蛍光増白剤を、CIE白色度に従って決定された際の飽和挙動に関して、互いに比較することができる。言い換えれば、より多量の蛍光増白剤が使用され、白色度におけるさらなる増大が見出されないならば飽和挙動があり、より大量に使用する場合には白色度に対する悪影響すらあり得る。飽和の影響を、グリーニングとも称する。グリーニング限界、すなわち、使用される蛍光増白剤の量が増大しても白色度においてそれ以上の増大を事実上もたらさない点は、例えば、a*−b*図表(ここで、a*およびb*は、CIE−L***系における色座標である)から誘導され得る。
【0046】
下記の例は、本発明を例証し、保護範囲を限定することなく好ましい実施形態を示す。
【実施例】
【0047】
下記の手順を使用して、コーティングスリップ用途における異なる蛍光増白剤の増白性能を研究した。
【0048】
最初に、蛍光増白剤調製物を次の通りに調製した。蛍光増白剤のプレスケーキを、80℃の脱塩水に、pH9の苛性ソーダと一緒に溶解して、2.8%の濃度とした。ポリエチレングリコールを含有する蛍光増白剤調製物を次の通りに調製した。蛍光増白剤のプレスケーキを、80℃の脱塩水に、pH9の苛性ソーダと一緒に溶解した。次いで、ポリエチレングリコール、つまりPEG1550を添加した。得られた蛍光増白剤の濃度は2.8%であり、PEG1550の濃度は4.5%であった。調製物は、20〜50℃の間の温度で取り扱った。
【0049】
紙コーティングスリップは、下記の構成成分から調製した:
− 100部の白色顔料(チョーク/カオリン混合物)、
− 結合剤としての10部のリテックスP7110、乾燥物質として算出(Polymerlatex GmbH製スチレン/ブタジエンラテックス)、
− 合成共結合剤としての0.75部のワロセルCRT10G(Wolff Cellulosics GmbH&Co KG製カルボキシメチルセルロース)、
− 0.75部のポリビオールLL603(Wacker−Chemie製ポリビニルアルコール)、
− ポリアクリル酸を主成分とする分散剤としての0.25部のポリサルズS(BASF AG)、
− 水、および
− 10%強度水酸化ナトリウム溶液。
【0050】
水の量および水酸化ナトリウム溶液の量は、60%の固体含有量および8.5のpHをもたらすように選択した。
【0051】
コーティングスリップを部分に分け、各部分に、蛍光増白剤調製物を、以下の表において指示される通り、0.15、0.22または0.3重量%の蛍光増白剤をもたらす量で添加し、次いで10分間撹拌した。添加する量は、コーティングスリップの固体含有量を基準とした。
【0052】
得られたブライトニングしたコーティングスリップを、実験室用ナイフコーター(Erichsen製、Kコントロールコーター、モデルK202)を利用して、約80g/m2の坪量を有する木材なし原紙に塗布した。コート紙を乾燥シリンダーにて95℃で1分間乾燥させ、次いで、23℃および50%相対湿度で3時間貯蔵した。次いで、白色度メーター(DatacolorエルレホSF450)を使用して、パラメーターL*、a*、b*の計測およびCIE白色度の決定を行い、ここで、使用した光源はISO2469基準をベースとした。
【0053】
実施例1から4において、および比較のために(比較用FWA)、下記の蛍光増白剤を使用した。
【0054】
【化3】

【0055】
得られた結果を表1から4にまとめ、対応する図1から4にさらに示す。すべての表および図において、同じ比較用FWAを使用した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
結果は、本発明による特定のジスルホ型蛍光増白剤を使用することによって調製されたコーティングスリップは、一般的なジスルホ型蛍光増白剤(比較用FWA)を使用することによって調製されたコーティングスリップと比較して、より高い増白性能を呈することを示す。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)の添加は、コーティングスリップの増白性能をさらに増大させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の蛍光増白剤
【化1】

[式中、
Xは、互いに独立に、OまたはNR’を表し、ここで、R’は水素またはC1〜C3アルキルであり、
nは1または2であり、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、シアノ、C1〜C4アルキル、C2〜C4シアノアルキル、C2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキルを表し、ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり(あるいは、R2およびR1またはR3およびR4は、互いに独立に、N原子と一緒になって、モルホリン、ピペリジンもしくはピロリジン環を形成する);あるいは−(CH2l−SO3M(ここで、lは、1、2または3である)、または−(CH2i−COOR、−(CH2i−CONHR、−(CH2i−OR(ここで、iは1から4までの整数であり、Rは、C1〜C3アルキルであるか、またはMと同じ意味を有する)を表し、
Mは、水素、あるいは1当量のカチオン、特に、Li、Na、K、Ca、Mg、アンモニウム、またはC1〜C4アルキルもしくはC2〜C4ヒドロキシアルキルによって一、二、三もしくは四置換されているアンモニウムを表す]
の、少なくとも1種の合成結合剤および前記合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤を含有するコーティングスリップのブライトニングのための使用。
【請求項2】
前記蛍光増白剤が、式(Ia)および(Ib)の化合物
【化2】

[式中、Mは、請求項1において定義されている意味を有する]
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Xが、NR’(R’は請求項1において定義されている通りである)であり、R1、R2、R3およびR4がC2〜C4ヒドロキシアルキルを表す、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
合成結合剤として、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリレートまたはビニルアセテートを主成分とするラテックス結合剤が使用される、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物が合成共結合剤として使用される、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記コーティングスリップが、少なくとも1種の白色顔料をさらに含有する、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記コーティングスリップが、前記コーティングスリップの白色顔料100重量%を基準として、前記合成結合剤を3から20重量%の量で、および前記共結合剤を0.1から3重量%の量で含有する、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
少なくとも式(I)の蛍光増白剤
【化3】

[式中、
Xは、互いに独立に、OまたはNR’を表し、ここで、R’は水素またはC1〜C3アルキルであり、
nは1または2であり、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、シアノ、C1〜C4アルキル、C2〜C4シアノアルキル、C2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキルを表し、ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり(あるいは、R2およびR1またはR3およびR4は、互いに独立に、N原子と一緒になって、モルホリン、ピペリジンもしくはピロリジン環を形成する);あるいは−(CH2l−SO3M(ここで、lは、1、2または3である)、または−(CH2i−COOR、−(CH2i−CONHR、−(CH2i−OR(ここで、iは1から4までの整数であり、Rは、C1〜C3アルキルであるか、またはMと同じ意味を有する)を表し、
Mは、水素、あるいは1当量のカチオン、特に、Li、Na、K、Ca、Mg、アンモニウム、またはC1〜C4アルキルもしくはC2〜C4ヒドロキシアルキルによって一、二、三もしくは四置換されているアンモニウムを表す]
と、
ポリエチレングリコールとを含有する調製物。
【請求項9】
− 少なくとも1種の白色顔料と、
− 少なくとも1種の合成結合剤と、
− 前記合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤と、
− 少なくとも式(I)の蛍光増白剤
【化4】

[式中、
Xは、互いに独立に、OまたはNR’を表し、ここで、R’は水素またはC1〜C3アルキルであり、
nは1または2であり、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、シアノ、C1〜C4アルキル、C2〜C4シアノアルキル、C2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキルを表し、ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり(あるいは、R2およびR1またはR3およびR4は、互いに独立に、N原子と一緒になって、モルホリン、ピペリジンもしくはピロリジン環を形成する);あるいは−(CH2l−SO3M(ここで、lは、1、2または3である)、または−(CH2i−COOR、−(CH2i−CONHR、−(CH2i−OR(ここで、iは1から4までの整数であり、Rは、C1〜C3アルキルであるか、またはMと同じ意味を有する)を表し、
Mは、水素、あるいは1当量のカチオン、特に、Li、Na、K、Ca、Mg、アンモニウム、またはC1〜C4アルキルもしくはC2〜C4ヒドロキシアルキルによって一、二、三もしくは四置換されているアンモニウムを表す]
とを含有するコーティングスリップ。
【請求項10】
いずれの場合も前記コーティングスリップの白色顔料100重量%を基準として、0.025から1重量%の式(I)の蛍光増白剤、3から20重量%の合成結合剤、および0.1から3重量%の合成共結合剤を含有する、請求項9に記載のコーティングスリップ。
【請求項11】
コート紙の生成のための、請求項9または10に記載のコーティングスリップの使用。
【請求項12】
請求項11に記載の過程によって入手可能な紙。
【請求項13】
少なくとも1種の合成結合剤および前記合成結合剤とは異なる少なくとも1種の合成共結合剤を含むコーティングスリップをブライトニングさせるための方法であって、前記コーティングスリップを、少なくとも1種の式(I)の蛍光増白剤
【化5】

[式中、
Xは、互いに独立に、OまたはNR’を表し、ここで、R’は水素またはC1〜C3アルキルであり、
nは1または2であり、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、水素、シアノ、C1〜C4アルキル、C2〜C4シアノアルキル、C2〜C4ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4アルコキシアルキルを表し、ここで、アルキルは直鎖状または分枝鎖状であり(あるいは、R2およびR1またはR3およびR4は、互いに独立に、N原子と一緒になって、モルホリン、ピペリジンもしくはピロリジン環を形成する);あるいは−(CH2l−SO3M(ここで、lは、1、2または3である)、または−(CH2i−COOR、−(CH2i−CONHR、−(CH2i−OR(ここで、iは1から4までの整数であり、Rは、C1〜C3アルキルであるか、またはMと同じ意味を有する)を表し、
Mは、水素、あるいは1当量のカチオン、特に、Li、Na、K、Ca、Mg、アンモニウム、またはC1〜C4アルキルもしくはC2〜C4ヒドロキシアルキルによって一、二、三もしくは四置換されているアンモニウムを表す]
を含む蛍光増白剤組成物で処理するステップを含む方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の合成結合剤が、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリレートまたはビニルアセテートを主成分とするラテックス結合剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の合成共結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物である、請求項13または14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505370(P2013−505370A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529285(P2012−529285)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063705
【国際公開番号】WO2011/033066
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512068640)ブランコファー ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (2)
【Fターム(参考)】