コーティング系におけるジオキソラン誘導体の使用及びコーティング系配合物
本発明は、表面コーティング用の配合物中のフィルム形成剤としてのジオキソラン誘導体の使用に関する。このフィルム形成剤は、塗料及びワニス、特に工業用、グラフィックス用及び建築用の塗料のようなコーティングシステム配合物中において、合体剤及び/又は乾燥遅延剤としての働きをする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料及びワニス(特に工業用、グラフィックス用及び建築用の塗料)のようなコーティング系(塗装系)の配合物中において、フィルム形成剤として、合体剤(agent de coalescence)として及び/又は乾燥抑制剤として、ジオキソラン誘導体を使用することに関する。
【0002】
本明細書の残りの部分を通じて、建築用塗料は水性塗料(水をベースとする塗料)と理解され、そして工業用塗料、例えば家具用、元々の自動車用及び修理用の塗料は溶剤性塗料(溶剤をベースとする塗料)と理解されるが、これらはもっぱら説明を簡略化するためのものであり、本発明の範囲に対して何ら限定を意味するものではない。
【背景技術】
【0003】
建築用塗料は、仕上げ、被覆性及び耐久性の観点から、それらの品質及び塗布後の良好な外観について評価される。これらの特性は、増粘剤、顔料及び界面活性剤のような塗料の成分の品質の結果である。建築用塗料において良好な品質を得るための重要な成分は合体剤であり、これは粒子間の接触の均一性を提供し、フィルムに光沢及び耐久性の点で良好な外観を、耐摩耗性との関連で、与える。同様に、最適塗布を保証するためには、工業用塗料は、塗料の乾燥時間が適切なものとなって仕上げ物中に望ましくない欠陥が存在してしまうのが防がれるように、溶剤系の組成のバランスを取らなければならない。
【0004】
塗料の品質を改善するための試みが、以下のものを含めてすでにいくつか開示されている。
【0005】
特開昭62−241977号公報には、ペンインクのための溶剤としてグリセロールから誘導された溶剤を利用し、良好な粘性を提供し、特に精細でにじみのない文字等を得ることを可能にすることが記載されている。
【0006】
特開昭62−156983号公報には、塗料の良好な吸収及びはっきりしてにじみのない像を与えるために、グリセロールとアルデヒド又はアセトンとの縮合によって得られた溶剤を印刷材料の表面に塗布することが記載されている。
【0007】
特開昭62−084171号公報には、もっと迅速に乾燥してにじみがないグラフィックス塗料の製造に、グリセロールとアルデヒド又はケトンとの縮合によって得られた溶剤を使用することが記載されている。
【0008】
特開平01−013080号公報は、溶剤及び塗料用乳化剤としてポリオキシアルキレン溶剤を使用することに関する。
【0009】
特開平06−073318号公報には、塗料ストリッパー/リムーバーの製造において溶剤としてグリセロール/アセトン混合物を使用することが言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−241977号公報
【特許文献2】特開昭62−156983号公報
【特許文献3】特開昭62−084171号公報
【特許文献4】特開平01−013080号公報
【特許文献5】特開平06−073318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、フィルム形成剤、言い換えれば合体剤として、又は塗料系若しくは塗料配合物(特に工業用、建築用若しくはグラフィックス用塗料)中の乾燥抑制剤として、ジオキソラン誘導体を使用するという点で、内部技術(art interieur)とは異なる。
【0012】
「フィルム形成剤」という用語は一般的に用いられ、例えば系の合体性(凝集性)及び乾燥の減速性を変化させることができる任意の添加剤を意味する。
【0013】
1つの重要な利点は、従来技術の他の既知の添加剤について採用される量と比較して少ない量の添加剤を用いながらも塗料系の品質を維持することができるという事実にある。
【0014】
従来技術との違いにおいて、本発明は、1種以上のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として、言い換えれば、水性系中におけるフィルム形成補助剤として働く合体剤として用いるだけではなくて、溶剤をベースとする系中、コーティング基材用の系中、特にグラフィックス又は建築産業の分野において用いられる塗料中における乾燥時間遅延剤としても、用いる。
【0015】
フィルム形成剤は、コーティングの配合物中に存在させた時に、基材に対して塗布した際のフィルムの形成を促進する添加剤と理解される。
【0016】
当業者には周知のように、フィルムの乾燥時間が遅くなった時に得られる特徴は、良好な塗料の塗り延ばし及び塗料の光沢の強化が可能になるということである。
【0017】
また、合体剤が粒子間の接触を促進し、フィルムの形成を容易にし且つ向上させ、それによって塗布されたフィルム(例えば塗料又はワニス)の外観及び耐久性を向上させることができることも、当業者に周知である。これらの向上は、ガラス転移温度及び最低フィルム形成温度(MFFT)と関連性があり、ガラス転移温度及び最低フィルム形成温度が低下した結果として達成され、これらは合体剤によって生じるものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従えば、合体剤とはフィルムの形成において補助剤としての働きをする可塑剤として用いられる物質と理解され、遅延剤とは基材にコーティング配合物を塗布した後の乾燥時間を変化させる物質と理解される。
【0019】
本発明に従ってフィルム形成剤として用いられるジオキソラン誘導体は、下記の式(I)のものである。
【化1】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素又は少なくともアルキル、アルケニル若しくはフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である。)
【0020】
特にR1及びR2はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基を含む群から選択される基である。
【0021】
好ましくは、nは1又は2である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、系F1/F2についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図1B】図1Bは、系F3/F4についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図1C】図1Cは、系F5/F6についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図2A】図2Aは、系F1/F2についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図2B】図2Bは、系F3/F4についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図2C】図2Cは、系F5/F6についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図3A】図3Aは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図3B】図3Bは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図3C】図3Cは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図4A】図4Aは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図4B】図4Bは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図4C】図4Cは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図5A】図5Aは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図5B】図5Bは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図5C】図5Cは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図6A】図6Aは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図6B】図6Bは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、クレブス粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図6C】図6Cは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図6D】図6Dは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【図7A】図7Aは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図7B】図7Bは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、クレブス粘度の安定性(KU)の比較を表わすグラフである。
【図7C】図7Cは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図7D】図7Dは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【図8A】図8Aは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図8B】図8Bは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、クレブス粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図8C】図8Cは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図8D】図8Dは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の式(I)のジオキソラン誘導体は、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであり、これはソルケタール(Solketal)の名称でも知られている。この誘導体は、水性コーティング(水をベースとするコーティング)を配合するための合体剤として特に有利である。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の式(I)のジオキソラン誘導体は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであり、これは別名の1−イソブチルイソプロピリデングリセロールについての頭文字IIPGでも知られている。この誘導体は、溶剤性コーティング(溶剤をベースとするコーティング)の配合物用の乾燥時間遅延剤として特に有利である。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1種のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として含むコーティング系配合物(コーティング系の配合物)をも提供する。これらの配合物は、特に水をベースとするもの又は非水性溶剤をベースとするものであることができる。
【0026】
本発明に従えば、所望の向上効果を得るために塗料配合物に添加される本発明のジオキソラン誘導体の量は、他の既知の添加剤について採用される量より著しく少ない。例えば、本発明の化合物について採用される量は、同等の性能のために例えばエチルグリコールアセテート(EGA)、ブチルグリコールアセテート(BGA)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)のような従来技術の添加剤について採用される量の10%であることができる。さらに、本発明のジオキソラン誘導体を用いた配合物はより一層経済性がよいことが示されたので、より良好なコスト/利点の折衷点が得られる。
【0027】
本発明に従ってジオキソラン誘導体を添加することによって特性が向上する本発明にとって好適な溶剤性コーティング系には、例えばニトロセルロース、ポリエステル、セルロースアセテートブチレート(CAB)をベースとする系及びポリウレタン、エポキシ、アクリル、メラミン又はフェノール系が包含される。
【0028】
本発明にとって好適な水性建築用コーティングには、ビニル、ビニル−アクリル、純粋アクリル及びスチレン−アクリル系が包含される。
【0029】
コーティング配合物中に用いられる1種以上のジオキソラン誘導体の量は、塗料の総重量に対して約0.1〜約10重量%の範囲、より特定的には約0.1〜約5重量%の範囲であるのが有利である。建築用の系においては、ジオキソラン誘導体の添加量は、塗料配合物の0.1〜5%の範囲である。
【0030】
本発明のその他の利点及び詳細は、以下に与えた本発明の例示的な具体例を読めばより一層明らかになるであろう。しかしながら、これらの具体例は添付した特許請求の範囲に含まれるもの以上の限定となるものではない。
【実施例】
【0031】
工業用塗料
【0032】
下記の第I表に従って8つの配合物を調製した。この系は、イソシアネートとポリオールとの混合物65%と溶剤群35%とを含有し、一般的に金属及び木製基材用のコーティングとして用いられるポリウレタンワニスである。表中、EGAはエチルグリコールアセテートを表わし、BGAはブチルグリコールアセテートを表わし、そしてPMAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表わす。Solketalは、用いたジオキソラン誘導体ソルケタールである。
【0033】
【表1】
【0034】
AB9は、9個の炭素原子を有するアルキル置換基を含有するアルキルベンゼン化合物を表わし、Shell社によりIR9の名称で販売されているものである。トルエン及びキシレン化合物は、Petrobras社により販売されている炭化水素である。
【0035】
次の点について試験した:
【0036】
a.遊離NCOの割合の経時的な測定:
この試験は、当業者に周知であり、NCO官能基が溶剤のOH官能基と反応したかどうかを測定する。この測定は逆滴定技術によって行われ、これは塗料に所定量のアミンを添加することによるものである。このアミンはNCO官能基と反応して尿素官能基を与える;未転化アミンを酸(塩酸)による中和によって分析する。NCO%は、添加したアミンの量から過剰分のアミンの分析量を減じたものに等しい。
【0037】
b.金属基材上のフィルムの乾燥時間:
この試験は、系の乾燥性を評価するものであり、結果は時間の関数として表わされる。これらの結果は、次の通りである:
・ダストフリー乾燥:表面にダストがもはや残らなくなる時間。
・指触乾燥:触った時に表面がもはや粘着性を示さなくなる時間。
・取扱い乾燥:触った時より高い圧力が加えられた表面がもはや変形を示さなくなる時間。
【0038】
c.光沢:
この試験は、表面の仕上げが、100の任意値(valeur arbitraire)に基づいて、完全な鏡面とみなすことができる理想の理論鏡面光沢に近づく度合いを規定する。
【0039】
d.機械的強度及び化学的耐性:
この測定は、仕上げ後の表面の圧縮動作に対する耐性の度合い(サイクル数で表わされる)を規定するものであり、機械的強度試験においては研磨を用い、化学的耐性試験においては溶剤メチルエチルケトン(MEK)を用いる。
【0040】
e.クロスカット(碁盤目)又はスコア(線条傷)粘着性:
これらの試験は、フィルム層間の固着を検査するために実施され、柄に固定された複数の平行の切り刃を備えた走行装置を用いて行われる。表面を完全に乾かした後に、90°の交差角度で一連の切り目をつけて碁盤目を形成させる。次に、この切り目をつけた領域に粘着テープを貼り付け、これを素早く剥ぎ取る。テープが表面又はコーティングから碁盤目を取り除くかどうかについてチェックをする。
【0041】
f.形成されたフィルムの硬度:
この測定は、8B(最も軟らかい)から10H(最も硬い)まで増大する硬度に従ってグループ分けした一連のグラフィックス用鉛筆を用いて実施する。形成されたフィルムにこの一連の鉛筆で線を引き、どの硬度の鉛筆がフィルムに線条傷をつけたかをチェックする。
【0042】
g.円錐形マンドレル(心棒)の上で撓ませる(曲げる)ことによる柔軟性:
この試験は、円錐形の筒状体の全長にわたって槓桿(レバー)を含む円錐形マンドレルと称される装置を用いて実施される。最初にこの装置の一方の端部に試験片を取り付け、次いで撓ませる。この試験は、柔軟性の観点からコーティングの挙動を評価する。
【0043】
h.配合物のブルックフィールド粘度:
この試験は、ブルックフィールドLV DV II粘度計を用いて実施される。粘性は、製品の利用及び貯蔵の両方についての重要なパラメーターである。
【0044】
これらの試験及び測定の結果を、下記の表及び添付した図面に示す。
【0045】
図1A〜図1Cは、次のものについての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わす。
・系F1/F2(図1A)
・系F3/F4(図1B)、及び
・系F5/F6(図1C)。
【0046】
図2A〜図2Cは、次のものについての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わす。
・系F1/F2(図2A)
・系F3/F4(図2B)、及び
・系F5/F6(図2C)。
【0047】
試験した様々な系の乾燥時間の比較を、下記の表2A、表2B、表2Cに示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表3A、表3B及び表3Cは、試験したそれぞれの系の光沢の測定について得られた結果をまとめたものである。
【0050】
【表3】
【0051】
表4A、表4B及び表4Cは、試験した配合物を用いて得られたフィルムの機械的強度及び化学的耐性の結果に関する。
【0052】
【表4】
【0053】
表5A、表5B及び表5Cは、試験した配合物のスコア粘着性の結果に関する。
【0054】
【表5】
【0055】
表6A、表6B及び表6Cには、試験した配合物について得られたフィルムの硬度の結果を記載する。
【0056】
【表6】
【0057】
表7A、表7B及び表7Cには、試験した配合物についての撓み柔軟性の結果を示す。
【0058】
【表7】
【0059】
上記の結果は、フィルム形成用添加剤(ソルケタール)を少ない量で含有する本発明に従う配合物が、従来技術の配合物における主な溶剤(特に従来技術の溶剤がEGA、PMA及びBGAである場合)と比較して、様々な試験局面に関して同等の性能及び特性を示すことを示している。
【0060】
建築用塗料
【0061】
この実施例は、従来技術において周知の合体剤Texanol(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、CAS No. 25265-77-4、Eastman Chemical Company社より販売)及び本発明に従うIIPG(CAS No. 5694-81-5)の建築用塗料中における使用を比較することを目的とする。
【0062】
以下の項目を例示する:
【0063】
(a)塗料市場において一般に販売されている3種の樹脂系(純粋アクリルベース、スチレン−アクリルベース又はビニル−アクリルベース)及びそれらのそれぞれの重合プロセス。これらの重合プロセス及びこの目的のために用いられる装置はごく普通のものであり、当業者によく知られている。好適な組合せ装置は、加熱/冷却システム及びそれぞれの制御システム、凝縮器、各種出発材料の貯蔵槽及びそれぞれの計量供給装置、ポンプ並びに不活性化システムを備えた重合反応器から本質的に成る。
【0064】
(b)合体剤を含む塗料ベースは既存の商品であり、上記の系を含む3種の塗料ベースを2つのシリーズで用意する。第1シリーズではそれぞれの樹脂系を2重量%のTexanol合体剤と混合し、第2シリーズでは3種の樹脂系のそれぞれを2重量%のIIPG合体剤と混合する。
【0065】
(c)これら6つの合体剤と混合された塗料ベースに対して、pHの安定性、粘度の安定性、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化についての試験について、比較試験を実施する。
【0066】
(d)上記のベースから選択され、従来技術の製品としての2重量%のTexanolを添加した一連の3種の建築用塗料配合物と、本発明の教示に従って配合された製品としての2重量%のIIPGを添加した別の一連の3種の建築用塗料配合物とを比較する。
【0067】
(e)前記の6種の配合物に対して、pHの安定性、粘度の安定性、耐摩耗性及び光沢の変化について、比較試験を実施する。
【0068】
【表8】
【0069】
次の重合を実施する:
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.水及び界面活性剤と同時にモノマーを添加してプレエマルション(プレミックス)を得る。
5.触媒1をゆっくり添加する。
7.触媒2をゆっくり添加する。
8.最後に、pHを8.7〜9.2の範囲に調節する。
【0070】
図において、SR1及びSR2はそれぞれ、上記第II表に従う純粋アクリルとここで称する樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0071】
【表9】
【0072】
重合プロセス
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.水及び界面活性剤と同時にモノマーを添加してプレエマルション(プレミックス)を得る。
5.触媒溶液をゆっくり添加する。
6.最後に、pHを8.5〜9の範囲に調節する。
【0073】
図において、SR3及びSR4はそれぞれ、上記第III表に従うスチレン−アクリル樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0074】
【表10】
【0075】
重合プロセス
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.モノマーを添加する。
5.触媒溶液をゆっくり添加する。
6.レドックス溶液を添加する。
【0076】
図において、SR5及びSR6はそれぞれ、上記第IV表に従うビニル−アクリル樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものである。
【0077】
【表11】
【0078】
図において、F1及びF2はそれぞれ、上記第II表の純粋アクリル樹脂系と上記第V表の半光沢塗料配合ベースとを重量比45/55で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0079】
同様に、F3及びF4はそれぞれ、上記第III表のスチレン−アクリル樹脂系と上記第V表の半光沢塗料配合ベースとを重量比45/55で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0080】
【表12】
【0081】
(1)ABEX EP110 アニオン性界面活性剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(2)SIPOMER COPS 1 安定剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(3)IGEPAL CO-630 ノニオン性界面活性剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(4)TRIGONOX AW 70 触媒 Akzo Nobel社より販売。
(5)LUREDOX RC 99% 触媒 BASF社より販売。
(6)Rhodoline 211 高分子電解質分散剤 米国のRhodia North America社より販売。
(7)Rhodoline 681F 消泡剤 米国のRhodia North America社より販売。
(8)PROXEL GLX 殺生物剤 Avecia Group Plc社より販売。
(9)Acrysol RM-5000 レオロジー系添加剤 Rohm and Haas社より販売。
(10)Acrysol(商標)TT 935 レオロジー系添加剤 Rohm and Haas社より販売。
【0082】
図において、F5及びF6はそれぞれ、上記第IV表のビニル−アクリル樹脂系と上記第VI表の無光沢塗料配合ベースとを重量比18/82で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0083】
上記の樹脂系及び塗料を試験するために用いた分析方法の説明を以下に与える。
【0084】
耐摩耗性の評価方法
【0085】
1.20×50cmのガラス板をアルコールで拭いて洗浄した後に、これにLeneta P 121-10N試験パネル(米国のThe Leneta Company社より販売)を取り付ける;
2.この試験パネルをアルコールで拭いて洗浄する;
3.試験パネルの上部のLenetaパネルの中央にスプレッダー(塗り延ばし具)(厚さ175μmのフィルム)を置く;
4.スプレッダーの左から中央までに参照用サンプルを置く;
5.試験パネルの右手側に評価用サンプルを置く。
6.試験パネルの下部に達するまで3〜5秒の速度でスプレッダーを手で引っ張る。各サンプルについてこの工程を3回繰り返す;
7.塗布されたサンプルを調節された環境(温度22±2℃、相対湿度55±5%)中に7日間置いて乾かす;
8.この期間の経過後に、GAT装置(ガードナー摩耗試験機、ASTM規格D-2486に従って製造されたもの)のガラス板上で、砂ガラス部分を上向きにして、台の内側上に、評価用の試験パネルを固定する;
9.研磨ペースト(NBR規格14940に従って調製されたもの)10gをブラシ上に量り取り、前記装置中にこのブラシを取り付ける。試験パネル全体に脱塩水10ミリリットルを加え、サイクル数カウンターを0に設定して装置をつないだ後に、開始操作を始める;
10.ブラシの各前後ストロークが1回のサイクルを構成するものとし、ブラシが塗布された塗料を一方の領域からもう一方まで全部取り除いてLeneta パネルの黒い背景が連続的な線で完全に露わになった時に、塗料が摩損したものとする;
11.それぞれ400サイクルで、装置は自動的に停止する。この時点で、ブラシを洗うことなく取り外す。さらに10gの研磨ペースト及び10ミリリットルの脱塩水をブラシの道筋上に塗布する。
【0086】
このプロセスを、試験の終わりまで実施する。分析している塗料の摩損線の間のつながりが最初に確認された時に、サイクル数のカウントを停止する。
【0087】
MFFT(最小フィルム形成温度)の評価方法
【0088】
用いた装置:Rhopoint MFFT bar 60、−5℃から+60℃の範囲の6つの温度段階で。ASTM規格D-2354 65Tに従って評価を実施。
【0089】
1.装置の加熱台を覆うガラスカバーを持ち上げる;
2.加熱台上にブラシを用いてプロピレングリコールの均一層を塗りつける;
3.アルミホイル片を切り取り、これをプロピレングリコールの層を有する加熱台上に置き、よく均して均一の外観にし且つ台にしっかり付着させる;
4.エタノールを浸した紙切れで前記アルミホイルの表面を洗浄し、次いでこの表面を乾かす;
5.カバーを下げ、装置をつなげ、温度調節用の送水バルブを開くことによって適切な幅に温度を調節する;
6.温度が安定化した後に、窒素を4バールの圧力で4リットル/分の速度で吹き付けて台の表面から湿分を除去する;
7.カバーを持ち上げ、幅1.5cmに対して75μmのフィルムについてスプレッダーを用いて、分析しているサンプルの少なくとも3つの平行の層を塗布する;カバーを閉じ、窒素下で分散物が完全に乾くのを待つ;
8.乾燥後に、フィルムが脆くなる点からフィルムが柔軟で連続性がある点までの移行をスパチュラで調べる;
9.この地点まで装置のガイド定規を動かし、装置のスケール上の対応温度(℃)を読み取る。
10.残りの塗布層にもこの操作を繰り返し、算術平均を取る。
【0090】
安定性の評価方法
【0091】
1.スパチュラを用いてサンプルを均質化する;
2.250ミリリットルフラスコの約90%を満たすように評価用サンプルを加える;
3.フラスコの口にプラスチックフィルムを置き、蒸気が漏れるのを防ぐためにカバーで塞ぐ;
4.このフラスコをオーブン中で60℃に1か月保つ;
5.7日ごとに、オーブンからフラスコを取り出して、周囲温度になって安定化するのを待って、次の特性の変化を調べる:
・色及び臭い;
・相分離、表面液体の形成及び/又は沈降;
・相分離がなかったら、粘性及びpHを測定する。
【0092】
pHの測定方法
【0093】
1.周知の検量済pH測定装置を用い、サンプルに直接pH測定電極を差し込む。
2.装置が安定化するまで1分待つ。
3.pHを読み取る。
【0094】
ブルックフィールド粘度の測定方法
【0095】
装置:ブルックフィールド粘度計
【0096】
1.約400ミリリットルのサンプルを25℃の恒温浴中に2時間置く。この時間の経過後に、ガラス棒を用いてサンプルを均質化し、サンプルが25℃になっていることを温度計でチェックする;
2.サンプルを600ミリリットルのガラスビーカーに移して400ミリリットルの印の所まで入れる。
3.装置の文字盤上に示される読み取りが20%〜80%の範囲となるように、粘度を読み取るための好適なスピンドルを選択する。
4.スピンドルを装置に取り付け、フラスコの中央に置き、棒の印まで浸漬高さを調節する;
5.1分間読み取りを行う。粘度値は、センチポアズ(cP)で表わされる。
【0097】
クレブス粘度の測定方法
【0098】
用いた装置:ストーマー粘度計
【0099】
1.サンプルを25℃の恒温浴中に2時間に置く。
2.この時間が経過した時に、ガラス棒を用いてサンプルを均質化し、25℃になっているかどうかを調べる。
3.サンプルを粘度計中に入れ、装置のレバーを下げることによって測定を行おうとするスピンドルをスピンドル上の既存の印まで差し込む。
4.レバーを下げた時に、装置が測定を開始し、ストップウォッチで計って1分間測定を続ける。
【0100】
光沢の測定方法
【0101】
用いた装置:ガードナーMicro-TRI-光沢系。ASTM規格D 523及びASTM規格D2457に従う方法。
【0102】
1.20×50cmのガラス板をアルコールで拭いて洗浄した後に、これにLeneta P 121-10N試験パネル(米国のThe Leneta Company社より販売)を取り付ける;
2.この試験パネルをアルコールで拭いて洗浄する;
3.試験パネルの上部のLeneta パネルの中央にスプレッダー(フィルム厚さ175μmのもの)を置く;
4.スプレッダーの左から右まで塗料を置く;
5.試験パネルの下部まで3〜5秒の速度でスプレッダーを手で引っ張る;
6.塗布されたサンプルを調節された環境(温度22±2℃、相対湿度55±5%)中に7日間置いて乾かす;
7.光沢装置を接続し、60°の角度に設定し、20回の読み取りを行うために調節する;
8.最終的な平均値が信頼できる値となるように、フィルムの様々な地点において測定を行す;
9.測定の平均を光沢値とする。
【0103】
図:
【0104】
図には、以下の情報が含まれている:
【0105】
図3A:純粋アクリル樹脂:pHの安定性
図3B:純粋アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図3C:純粋アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図4A:スチレン−アクリル樹脂:pHの安定性
図4B:スチレン−アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図4C:スチレン−アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図5A:ビニル−アクリル樹脂:pHの安定性
図5B:ビニル−アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図5C:ビニル−アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図6A:純粋アクリル塗料:pHの安定性
図6B:純粋アクリル塗料:クレブス粘度の安定性
図6C:純粋アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図6D:純粋アクリル塗料:60°における光沢の変化
図7A:スチレン−アクリル塗料:pHの安定性
図7B:スチレン−アクリル塗料:クレブス粘度の安定性(KU)
図7C:スチレン−アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図7D:スチレン−アクリル塗料:60°における光沢の変化
図8A:ビニル−アクリル塗料:pHの安定性
図8B:ビニル−アクリル塗料:クレブス粘度の安定性
図8C:ビニル−アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図8D:ビニル−アクリル塗料:60°における光沢の変化
【0106】
結論:
【0107】
従来技術の合体剤と本発明の主題事項に従う合体剤との比較において、合体剤が混合された樹脂系においても、これらの樹脂系と追加量のこれらの合体剤とを含有する塗料配合物においても、本発明に従うジオキソラン誘導体が同等の特性を示し、建築用塗料中における合体剤として用いるのに完全に適合することが観察された。
【0108】
ここに提供した情報及び実施例から、当業者は本発明に変更を加えて、ここに明示したり特許請求の範囲に記載したりはしていない別形態であって別形態にも拘らず同様の役割を果たして同程度の結果を達成するものに到達することができるだろうが、それも添付した特許請求の範囲に示された保護範囲内に包含されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料及びワニス(特に工業用、グラフィックス用及び建築用の塗料)のようなコーティング系(塗装系)の配合物中において、フィルム形成剤として、合体剤(agent de coalescence)として及び/又は乾燥抑制剤として、ジオキソラン誘導体を使用することに関する。
【0002】
本明細書の残りの部分を通じて、建築用塗料は水性塗料(水をベースとする塗料)と理解され、そして工業用塗料、例えば家具用、元々の自動車用及び修理用の塗料は溶剤性塗料(溶剤をベースとする塗料)と理解されるが、これらはもっぱら説明を簡略化するためのものであり、本発明の範囲に対して何ら限定を意味するものではない。
【背景技術】
【0003】
建築用塗料は、仕上げ、被覆性及び耐久性の観点から、それらの品質及び塗布後の良好な外観について評価される。これらの特性は、増粘剤、顔料及び界面活性剤のような塗料の成分の品質の結果である。建築用塗料において良好な品質を得るための重要な成分は合体剤であり、これは粒子間の接触の均一性を提供し、フィルムに光沢及び耐久性の点で良好な外観を、耐摩耗性との関連で、与える。同様に、最適塗布を保証するためには、工業用塗料は、塗料の乾燥時間が適切なものとなって仕上げ物中に望ましくない欠陥が存在してしまうのが防がれるように、溶剤系の組成のバランスを取らなければならない。
【0004】
塗料の品質を改善するための試みが、以下のものを含めてすでにいくつか開示されている。
【0005】
特開昭62−241977号公報には、ペンインクのための溶剤としてグリセロールから誘導された溶剤を利用し、良好な粘性を提供し、特に精細でにじみのない文字等を得ることを可能にすることが記載されている。
【0006】
特開昭62−156983号公報には、塗料の良好な吸収及びはっきりしてにじみのない像を与えるために、グリセロールとアルデヒド又はアセトンとの縮合によって得られた溶剤を印刷材料の表面に塗布することが記載されている。
【0007】
特開昭62−084171号公報には、もっと迅速に乾燥してにじみがないグラフィックス塗料の製造に、グリセロールとアルデヒド又はケトンとの縮合によって得られた溶剤を使用することが記載されている。
【0008】
特開平01−013080号公報は、溶剤及び塗料用乳化剤としてポリオキシアルキレン溶剤を使用することに関する。
【0009】
特開平06−073318号公報には、塗料ストリッパー/リムーバーの製造において溶剤としてグリセロール/アセトン混合物を使用することが言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−241977号公報
【特許文献2】特開昭62−156983号公報
【特許文献3】特開昭62−084171号公報
【特許文献4】特開平01−013080号公報
【特許文献5】特開平06−073318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、フィルム形成剤、言い換えれば合体剤として、又は塗料系若しくは塗料配合物(特に工業用、建築用若しくはグラフィックス用塗料)中の乾燥抑制剤として、ジオキソラン誘導体を使用するという点で、内部技術(art interieur)とは異なる。
【0012】
「フィルム形成剤」という用語は一般的に用いられ、例えば系の合体性(凝集性)及び乾燥の減速性を変化させることができる任意の添加剤を意味する。
【0013】
1つの重要な利点は、従来技術の他の既知の添加剤について採用される量と比較して少ない量の添加剤を用いながらも塗料系の品質を維持することができるという事実にある。
【0014】
従来技術との違いにおいて、本発明は、1種以上のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として、言い換えれば、水性系中におけるフィルム形成補助剤として働く合体剤として用いるだけではなくて、溶剤をベースとする系中、コーティング基材用の系中、特にグラフィックス又は建築産業の分野において用いられる塗料中における乾燥時間遅延剤としても、用いる。
【0015】
フィルム形成剤は、コーティングの配合物中に存在させた時に、基材に対して塗布した際のフィルムの形成を促進する添加剤と理解される。
【0016】
当業者には周知のように、フィルムの乾燥時間が遅くなった時に得られる特徴は、良好な塗料の塗り延ばし及び塗料の光沢の強化が可能になるということである。
【0017】
また、合体剤が粒子間の接触を促進し、フィルムの形成を容易にし且つ向上させ、それによって塗布されたフィルム(例えば塗料又はワニス)の外観及び耐久性を向上させることができることも、当業者に周知である。これらの向上は、ガラス転移温度及び最低フィルム形成温度(MFFT)と関連性があり、ガラス転移温度及び最低フィルム形成温度が低下した結果として達成され、これらは合体剤によって生じるものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従えば、合体剤とはフィルムの形成において補助剤としての働きをする可塑剤として用いられる物質と理解され、遅延剤とは基材にコーティング配合物を塗布した後の乾燥時間を変化させる物質と理解される。
【0019】
本発明に従ってフィルム形成剤として用いられるジオキソラン誘導体は、下記の式(I)のものである。
【化1】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素又は少なくともアルキル、アルケニル若しくはフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である。)
【0020】
特にR1及びR2はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基を含む群から選択される基である。
【0021】
好ましくは、nは1又は2である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、系F1/F2についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図1B】図1Bは、系F3/F4についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図1C】図1Cは、系F5/F6についての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わすグラフである。
【図2A】図2Aは、系F1/F2についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図2B】図2Bは、系F3/F4についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図2C】図2Cは、系F5/F6についての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わすグラフである。
【図3A】図3Aは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図3B】図3Bは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図3C】図3Cは、純粋アクリル樹脂系SR1及びSR2についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図4A】図4Aは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図4B】図4Bは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図4C】図4Cは、スチレン−アクリル樹脂系SR3及びSR4についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図5A】図5Aは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図5B】図5Bは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、ブルックフィールド粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図5C】図5Cは、ビニル−アクリル樹脂系SR5及びSR6についての、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化の比較を表わすグラフである。
【図6A】図6Aは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図6B】図6Bは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、クレブス粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図6C】図6Cは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図6D】図6Dは、純粋アクリル塗料系F1及びF2についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【図7A】図7Aは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図7B】図7Bは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、クレブス粘度の安定性(KU)の比較を表わすグラフである。
【図7C】図7Cは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図7D】図7Dは、スチレン−アクリル塗料系F3及びF4についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【図8A】図8Aは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、pHの安定性の比較を表わすグラフである。
【図8B】図8Bは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、クレブス粘度の安定性の比較を表わすグラフである。
【図8C】図8Cは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、耐摩耗性(サイクル数)の比較を表わすグラフである。
【図8D】図8Dは、ビニル−アクリル塗料系F5及びF6についての、60°における光沢の変化の比較を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の式(I)のジオキソラン誘導体は、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであり、これはソルケタール(Solketal)の名称でも知られている。この誘導体は、水性コーティング(水をベースとするコーティング)を配合するための合体剤として特に有利である。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の式(I)のジオキソラン誘導体は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであり、これは別名の1−イソブチルイソプロピリデングリセロールについての頭文字IIPGでも知られている。この誘導体は、溶剤性コーティング(溶剤をベースとするコーティング)の配合物用の乾燥時間遅延剤として特に有利である。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1種のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として含むコーティング系配合物(コーティング系の配合物)をも提供する。これらの配合物は、特に水をベースとするもの又は非水性溶剤をベースとするものであることができる。
【0026】
本発明に従えば、所望の向上効果を得るために塗料配合物に添加される本発明のジオキソラン誘導体の量は、他の既知の添加剤について採用される量より著しく少ない。例えば、本発明の化合物について採用される量は、同等の性能のために例えばエチルグリコールアセテート(EGA)、ブチルグリコールアセテート(BGA)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)のような従来技術の添加剤について採用される量の10%であることができる。さらに、本発明のジオキソラン誘導体を用いた配合物はより一層経済性がよいことが示されたので、より良好なコスト/利点の折衷点が得られる。
【0027】
本発明に従ってジオキソラン誘導体を添加することによって特性が向上する本発明にとって好適な溶剤性コーティング系には、例えばニトロセルロース、ポリエステル、セルロースアセテートブチレート(CAB)をベースとする系及びポリウレタン、エポキシ、アクリル、メラミン又はフェノール系が包含される。
【0028】
本発明にとって好適な水性建築用コーティングには、ビニル、ビニル−アクリル、純粋アクリル及びスチレン−アクリル系が包含される。
【0029】
コーティング配合物中に用いられる1種以上のジオキソラン誘導体の量は、塗料の総重量に対して約0.1〜約10重量%の範囲、より特定的には約0.1〜約5重量%の範囲であるのが有利である。建築用の系においては、ジオキソラン誘導体の添加量は、塗料配合物の0.1〜5%の範囲である。
【0030】
本発明のその他の利点及び詳細は、以下に与えた本発明の例示的な具体例を読めばより一層明らかになるであろう。しかしながら、これらの具体例は添付した特許請求の範囲に含まれるもの以上の限定となるものではない。
【実施例】
【0031】
工業用塗料
【0032】
下記の第I表に従って8つの配合物を調製した。この系は、イソシアネートとポリオールとの混合物65%と溶剤群35%とを含有し、一般的に金属及び木製基材用のコーティングとして用いられるポリウレタンワニスである。表中、EGAはエチルグリコールアセテートを表わし、BGAはブチルグリコールアセテートを表わし、そしてPMAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表わす。Solketalは、用いたジオキソラン誘導体ソルケタールである。
【0033】
【表1】
【0034】
AB9は、9個の炭素原子を有するアルキル置換基を含有するアルキルベンゼン化合物を表わし、Shell社によりIR9の名称で販売されているものである。トルエン及びキシレン化合物は、Petrobras社により販売されている炭化水素である。
【0035】
次の点について試験した:
【0036】
a.遊離NCOの割合の経時的な測定:
この試験は、当業者に周知であり、NCO官能基が溶剤のOH官能基と反応したかどうかを測定する。この測定は逆滴定技術によって行われ、これは塗料に所定量のアミンを添加することによるものである。このアミンはNCO官能基と反応して尿素官能基を与える;未転化アミンを酸(塩酸)による中和によって分析する。NCO%は、添加したアミンの量から過剰分のアミンの分析量を減じたものに等しい。
【0037】
b.金属基材上のフィルムの乾燥時間:
この試験は、系の乾燥性を評価するものであり、結果は時間の関数として表わされる。これらの結果は、次の通りである:
・ダストフリー乾燥:表面にダストがもはや残らなくなる時間。
・指触乾燥:触った時に表面がもはや粘着性を示さなくなる時間。
・取扱い乾燥:触った時より高い圧力が加えられた表面がもはや変形を示さなくなる時間。
【0038】
c.光沢:
この試験は、表面の仕上げが、100の任意値(valeur arbitraire)に基づいて、完全な鏡面とみなすことができる理想の理論鏡面光沢に近づく度合いを規定する。
【0039】
d.機械的強度及び化学的耐性:
この測定は、仕上げ後の表面の圧縮動作に対する耐性の度合い(サイクル数で表わされる)を規定するものであり、機械的強度試験においては研磨を用い、化学的耐性試験においては溶剤メチルエチルケトン(MEK)を用いる。
【0040】
e.クロスカット(碁盤目)又はスコア(線条傷)粘着性:
これらの試験は、フィルム層間の固着を検査するために実施され、柄に固定された複数の平行の切り刃を備えた走行装置を用いて行われる。表面を完全に乾かした後に、90°の交差角度で一連の切り目をつけて碁盤目を形成させる。次に、この切り目をつけた領域に粘着テープを貼り付け、これを素早く剥ぎ取る。テープが表面又はコーティングから碁盤目を取り除くかどうかについてチェックをする。
【0041】
f.形成されたフィルムの硬度:
この測定は、8B(最も軟らかい)から10H(最も硬い)まで増大する硬度に従ってグループ分けした一連のグラフィックス用鉛筆を用いて実施する。形成されたフィルムにこの一連の鉛筆で線を引き、どの硬度の鉛筆がフィルムに線条傷をつけたかをチェックする。
【0042】
g.円錐形マンドレル(心棒)の上で撓ませる(曲げる)ことによる柔軟性:
この試験は、円錐形の筒状体の全長にわたって槓桿(レバー)を含む円錐形マンドレルと称される装置を用いて実施される。最初にこの装置の一方の端部に試験片を取り付け、次いで撓ませる。この試験は、柔軟性の観点からコーティングの挙動を評価する。
【0043】
h.配合物のブルックフィールド粘度:
この試験は、ブルックフィールドLV DV II粘度計を用いて実施される。粘性は、製品の利用及び貯蔵の両方についての重要なパラメーターである。
【0044】
これらの試験及び測定の結果を、下記の表及び添付した図面に示す。
【0045】
図1A〜図1Cは、次のものについての、溶剤のヒドロキシル官能基によるNCO官能基の消費を表わす。
・系F1/F2(図1A)
・系F3/F4(図1B)、及び
・系F5/F6(図1C)。
【0046】
図2A〜図2Cは、次のものについての、試験配合物のブルックフィールド粘度の変化の比較を表わす。
・系F1/F2(図2A)
・系F3/F4(図2B)、及び
・系F5/F6(図2C)。
【0047】
試験した様々な系の乾燥時間の比較を、下記の表2A、表2B、表2Cに示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表3A、表3B及び表3Cは、試験したそれぞれの系の光沢の測定について得られた結果をまとめたものである。
【0050】
【表3】
【0051】
表4A、表4B及び表4Cは、試験した配合物を用いて得られたフィルムの機械的強度及び化学的耐性の結果に関する。
【0052】
【表4】
【0053】
表5A、表5B及び表5Cは、試験した配合物のスコア粘着性の結果に関する。
【0054】
【表5】
【0055】
表6A、表6B及び表6Cには、試験した配合物について得られたフィルムの硬度の結果を記載する。
【0056】
【表6】
【0057】
表7A、表7B及び表7Cには、試験した配合物についての撓み柔軟性の結果を示す。
【0058】
【表7】
【0059】
上記の結果は、フィルム形成用添加剤(ソルケタール)を少ない量で含有する本発明に従う配合物が、従来技術の配合物における主な溶剤(特に従来技術の溶剤がEGA、PMA及びBGAである場合)と比較して、様々な試験局面に関して同等の性能及び特性を示すことを示している。
【0060】
建築用塗料
【0061】
この実施例は、従来技術において周知の合体剤Texanol(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、CAS No. 25265-77-4、Eastman Chemical Company社より販売)及び本発明に従うIIPG(CAS No. 5694-81-5)の建築用塗料中における使用を比較することを目的とする。
【0062】
以下の項目を例示する:
【0063】
(a)塗料市場において一般に販売されている3種の樹脂系(純粋アクリルベース、スチレン−アクリルベース又はビニル−アクリルベース)及びそれらのそれぞれの重合プロセス。これらの重合プロセス及びこの目的のために用いられる装置はごく普通のものであり、当業者によく知られている。好適な組合せ装置は、加熱/冷却システム及びそれぞれの制御システム、凝縮器、各種出発材料の貯蔵槽及びそれぞれの計量供給装置、ポンプ並びに不活性化システムを備えた重合反応器から本質的に成る。
【0064】
(b)合体剤を含む塗料ベースは既存の商品であり、上記の系を含む3種の塗料ベースを2つのシリーズで用意する。第1シリーズではそれぞれの樹脂系を2重量%のTexanol合体剤と混合し、第2シリーズでは3種の樹脂系のそれぞれを2重量%のIIPG合体剤と混合する。
【0065】
(c)これら6つの合体剤と混合された塗料ベースに対して、pHの安定性、粘度の安定性、合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化についての試験について、比較試験を実施する。
【0066】
(d)上記のベースから選択され、従来技術の製品としての2重量%のTexanolを添加した一連の3種の建築用塗料配合物と、本発明の教示に従って配合された製品としての2重量%のIIPGを添加した別の一連の3種の建築用塗料配合物とを比較する。
【0067】
(e)前記の6種の配合物に対して、pHの安定性、粘度の安定性、耐摩耗性及び光沢の変化について、比較試験を実施する。
【0068】
【表8】
【0069】
次の重合を実施する:
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.水及び界面活性剤と同時にモノマーを添加してプレエマルション(プレミックス)を得る。
5.触媒1をゆっくり添加する。
7.触媒2をゆっくり添加する。
8.最後に、pHを8.7〜9.2の範囲に調節する。
【0070】
図において、SR1及びSR2はそれぞれ、上記第II表に従う純粋アクリルとここで称する樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0071】
【表9】
【0072】
重合プロセス
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.水及び界面活性剤と同時にモノマーを添加してプレエマルション(プレミックス)を得る。
5.触媒溶液をゆっくり添加する。
6.最後に、pHを8.5〜9の範囲に調節する。
【0073】
図において、SR3及びSR4はそれぞれ、上記第III表に従うスチレン−アクリル樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0074】
【表10】
【0075】
重合プロセス
1.装填物の反応成分を反応器に入れる。
2.凝縮器を始動させた後に、不活性化の下で、反応器の撹拌を実施する。
3.好適な温度(例えば80℃)に加熱する。
4.モノマーを添加する。
5.触媒溶液をゆっくり添加する。
6.レドックス溶液を添加する。
【0076】
図において、SR5及びSR6はそれぞれ、上記第IV表に従うビニル−アクリル樹脂系に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものである。
【0077】
【表11】
【0078】
図において、F1及びF2はそれぞれ、上記第II表の純粋アクリル樹脂系と上記第V表の半光沢塗料配合ベースとを重量比45/55で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0079】
同様に、F3及びF4はそれぞれ、上記第III表のスチレン−アクリル樹脂系と上記第V表の半光沢塗料配合ベースとを重量比45/55で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0080】
【表12】
【0081】
(1)ABEX EP110 アニオン性界面活性剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(2)SIPOMER COPS 1 安定剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(3)IGEPAL CO-630 ノニオン性界面活性剤 ブラジル国のRhodia Poliamida e Especialidades社より販売。
(4)TRIGONOX AW 70 触媒 Akzo Nobel社より販売。
(5)LUREDOX RC 99% 触媒 BASF社より販売。
(6)Rhodoline 211 高分子電解質分散剤 米国のRhodia North America社より販売。
(7)Rhodoline 681F 消泡剤 米国のRhodia North America社より販売。
(8)PROXEL GLX 殺生物剤 Avecia Group Plc社より販売。
(9)Acrysol RM-5000 レオロジー系添加剤 Rohm and Haas社より販売。
(10)Acrysol(商標)TT 935 レオロジー系添加剤 Rohm and Haas社より販売。
【0082】
図において、F5及びF6はそれぞれ、上記第IV表のビニル−アクリル樹脂系と上記第VI表の無光沢塗料配合ベースとを重量比18/82で含有する塗料配合物に、2重量%のTexanol又は2重量%のIIPGを含有させたものを示す。
【0083】
上記の樹脂系及び塗料を試験するために用いた分析方法の説明を以下に与える。
【0084】
耐摩耗性の評価方法
【0085】
1.20×50cmのガラス板をアルコールで拭いて洗浄した後に、これにLeneta P 121-10N試験パネル(米国のThe Leneta Company社より販売)を取り付ける;
2.この試験パネルをアルコールで拭いて洗浄する;
3.試験パネルの上部のLenetaパネルの中央にスプレッダー(塗り延ばし具)(厚さ175μmのフィルム)を置く;
4.スプレッダーの左から中央までに参照用サンプルを置く;
5.試験パネルの右手側に評価用サンプルを置く。
6.試験パネルの下部に達するまで3〜5秒の速度でスプレッダーを手で引っ張る。各サンプルについてこの工程を3回繰り返す;
7.塗布されたサンプルを調節された環境(温度22±2℃、相対湿度55±5%)中に7日間置いて乾かす;
8.この期間の経過後に、GAT装置(ガードナー摩耗試験機、ASTM規格D-2486に従って製造されたもの)のガラス板上で、砂ガラス部分を上向きにして、台の内側上に、評価用の試験パネルを固定する;
9.研磨ペースト(NBR規格14940に従って調製されたもの)10gをブラシ上に量り取り、前記装置中にこのブラシを取り付ける。試験パネル全体に脱塩水10ミリリットルを加え、サイクル数カウンターを0に設定して装置をつないだ後に、開始操作を始める;
10.ブラシの各前後ストロークが1回のサイクルを構成するものとし、ブラシが塗布された塗料を一方の領域からもう一方まで全部取り除いてLeneta パネルの黒い背景が連続的な線で完全に露わになった時に、塗料が摩損したものとする;
11.それぞれ400サイクルで、装置は自動的に停止する。この時点で、ブラシを洗うことなく取り外す。さらに10gの研磨ペースト及び10ミリリットルの脱塩水をブラシの道筋上に塗布する。
【0086】
このプロセスを、試験の終わりまで実施する。分析している塗料の摩損線の間のつながりが最初に確認された時に、サイクル数のカウントを停止する。
【0087】
MFFT(最小フィルム形成温度)の評価方法
【0088】
用いた装置:Rhopoint MFFT bar 60、−5℃から+60℃の範囲の6つの温度段階で。ASTM規格D-2354 65Tに従って評価を実施。
【0089】
1.装置の加熱台を覆うガラスカバーを持ち上げる;
2.加熱台上にブラシを用いてプロピレングリコールの均一層を塗りつける;
3.アルミホイル片を切り取り、これをプロピレングリコールの層を有する加熱台上に置き、よく均して均一の外観にし且つ台にしっかり付着させる;
4.エタノールを浸した紙切れで前記アルミホイルの表面を洗浄し、次いでこの表面を乾かす;
5.カバーを下げ、装置をつなげ、温度調節用の送水バルブを開くことによって適切な幅に温度を調節する;
6.温度が安定化した後に、窒素を4バールの圧力で4リットル/分の速度で吹き付けて台の表面から湿分を除去する;
7.カバーを持ち上げ、幅1.5cmに対して75μmのフィルムについてスプレッダーを用いて、分析しているサンプルの少なくとも3つの平行の層を塗布する;カバーを閉じ、窒素下で分散物が完全に乾くのを待つ;
8.乾燥後に、フィルムが脆くなる点からフィルムが柔軟で連続性がある点までの移行をスパチュラで調べる;
9.この地点まで装置のガイド定規を動かし、装置のスケール上の対応温度(℃)を読み取る。
10.残りの塗布層にもこの操作を繰り返し、算術平均を取る。
【0090】
安定性の評価方法
【0091】
1.スパチュラを用いてサンプルを均質化する;
2.250ミリリットルフラスコの約90%を満たすように評価用サンプルを加える;
3.フラスコの口にプラスチックフィルムを置き、蒸気が漏れるのを防ぐためにカバーで塞ぐ;
4.このフラスコをオーブン中で60℃に1か月保つ;
5.7日ごとに、オーブンからフラスコを取り出して、周囲温度になって安定化するのを待って、次の特性の変化を調べる:
・色及び臭い;
・相分離、表面液体の形成及び/又は沈降;
・相分離がなかったら、粘性及びpHを測定する。
【0092】
pHの測定方法
【0093】
1.周知の検量済pH測定装置を用い、サンプルに直接pH測定電極を差し込む。
2.装置が安定化するまで1分待つ。
3.pHを読み取る。
【0094】
ブルックフィールド粘度の測定方法
【0095】
装置:ブルックフィールド粘度計
【0096】
1.約400ミリリットルのサンプルを25℃の恒温浴中に2時間置く。この時間の経過後に、ガラス棒を用いてサンプルを均質化し、サンプルが25℃になっていることを温度計でチェックする;
2.サンプルを600ミリリットルのガラスビーカーに移して400ミリリットルの印の所まで入れる。
3.装置の文字盤上に示される読み取りが20%〜80%の範囲となるように、粘度を読み取るための好適なスピンドルを選択する。
4.スピンドルを装置に取り付け、フラスコの中央に置き、棒の印まで浸漬高さを調節する;
5.1分間読み取りを行う。粘度値は、センチポアズ(cP)で表わされる。
【0097】
クレブス粘度の測定方法
【0098】
用いた装置:ストーマー粘度計
【0099】
1.サンプルを25℃の恒温浴中に2時間に置く。
2.この時間が経過した時に、ガラス棒を用いてサンプルを均質化し、25℃になっているかどうかを調べる。
3.サンプルを粘度計中に入れ、装置のレバーを下げることによって測定を行おうとするスピンドルをスピンドル上の既存の印まで差し込む。
4.レバーを下げた時に、装置が測定を開始し、ストップウォッチで計って1分間測定を続ける。
【0100】
光沢の測定方法
【0101】
用いた装置:ガードナーMicro-TRI-光沢系。ASTM規格D 523及びASTM規格D2457に従う方法。
【0102】
1.20×50cmのガラス板をアルコールで拭いて洗浄した後に、これにLeneta P 121-10N試験パネル(米国のThe Leneta Company社より販売)を取り付ける;
2.この試験パネルをアルコールで拭いて洗浄する;
3.試験パネルの上部のLeneta パネルの中央にスプレッダー(フィルム厚さ175μmのもの)を置く;
4.スプレッダーの左から右まで塗料を置く;
5.試験パネルの下部まで3〜5秒の速度でスプレッダーを手で引っ張る;
6.塗布されたサンプルを調節された環境(温度22±2℃、相対湿度55±5%)中に7日間置いて乾かす;
7.光沢装置を接続し、60°の角度に設定し、20回の読み取りを行うために調節する;
8.最終的な平均値が信頼できる値となるように、フィルムの様々な地点において測定を行す;
9.測定の平均を光沢値とする。
【0103】
図:
【0104】
図には、以下の情報が含まれている:
【0105】
図3A:純粋アクリル樹脂:pHの安定性
図3B:純粋アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図3C:純粋アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図4A:スチレン−アクリル樹脂:pHの安定性
図4B:スチレン−アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図4C:スチレン−アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図5A:ビニル−アクリル樹脂:pHの安定性
図5B:ビニル−アクリル樹脂:ブルックフィールド粘度の安定性
図5C:ビニル−アクリル樹脂:合体剤濃度の関数としてのMFFTの変化
図6A:純粋アクリル塗料:pHの安定性
図6B:純粋アクリル塗料:クレブス粘度の安定性
図6C:純粋アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図6D:純粋アクリル塗料:60°における光沢の変化
図7A:スチレン−アクリル塗料:pHの安定性
図7B:スチレン−アクリル塗料:クレブス粘度の安定性(KU)
図7C:スチレン−アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図7D:スチレン−アクリル塗料:60°における光沢の変化
図8A:ビニル−アクリル塗料:pHの安定性
図8B:ビニル−アクリル塗料:クレブス粘度の安定性
図8C:ビニル−アクリル塗料: 耐摩耗性(サイクル数)
図8D:ビニル−アクリル塗料:60°における光沢の変化
【0106】
結論:
【0107】
従来技術の合体剤と本発明の主題事項に従う合体剤との比較において、合体剤が混合された樹脂系においても、これらの樹脂系と追加量のこれらの合体剤とを含有する塗料配合物においても、本発明に従うジオキソラン誘導体が同等の特性を示し、建築用塗料中における合体剤として用いるのに完全に適合することが観察された。
【0108】
ここに提供した情報及び実施例から、当業者は本発明に変更を加えて、ここに明示したり特許請求の範囲に記載したりはしていない別形態であって別形態にも拘らず同様の役割を果たして同程度の結果を達成するものに到達することができるだろうが、それも添付した特許請求の範囲に示された保護範囲内に包含されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング用塗料系中のフィルム形成剤としてのジオキソラン誘導体の使用。
【請求項2】
前記ジオキソラン誘導体が次の式(I):
【化1】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はアルキル、アルケニル及びフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である)
に従うことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1及びR2がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
nが1又は2であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1種のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として含むことを特徴とする、コーティング系配合物。
【請求項8】
ニトロセルロース、ポリエステル若しくはセルロースアセテートブチレート(CAB)、又はポリウレタン、エポキシ、アクリル、メラミン若しくはフェノール系をベースとする配合物であることを特徴とする、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記ジオキソラン誘導体が次の式(I):
【化2】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はアルキル、アルケニル及びフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である)
に従うことを特徴とする、請求項7又は8に記載の配合物。
【請求項10】
R1及びR2がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基であることを特徴とする、請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
nが1又は2であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の配合物。
【請求項12】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の配合物。
【請求項13】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の配合物。
【請求項14】
水性配合物であることを特徴とする、請求項7〜13のいずれかに記載の配合物。
【請求項15】
溶剤性配合物であることを特徴とする、請求項7〜14のいずれかに記載の配合物。
【請求項1】
コーティング用塗料系中のフィルム形成剤としてのジオキソラン誘導体の使用。
【請求項2】
前記ジオキソラン誘導体が次の式(I):
【化1】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はアルキル、アルケニル及びフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である)
に従うことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1及びR2がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
nが1又は2であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1種のジオキソラン誘導体をフィルム形成剤として含むことを特徴とする、コーティング系配合物。
【請求項8】
ニトロセルロース、ポリエステル若しくはセルロースアセテートブチレート(CAB)、又はポリウレタン、エポキシ、アクリル、メラミン若しくはフェノール系をベースとする配合物であることを特徴とする、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記ジオキソラン誘導体が次の式(I):
【化2】
(ここで、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はアルキル、アルケニル及びフェニル基を含む群から選択される基を表わし、
nは整数1、2、3、4又は5である)
に従うことを特徴とする、請求項7又は8に記載の配合物。
【請求項10】
R1及びR2がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はイソブチル基であることを特徴とする、請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
nが1又は2であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の配合物。
【請求項12】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の配合物。
【請求項13】
前記ジオキソラン誘導体が2,2−ジイソブチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の配合物。
【請求項14】
水性配合物であることを特徴とする、請求項7〜13のいずれかに記載の配合物。
【請求項15】
溶剤性配合物であることを特徴とする、請求項7〜14のいずれかに記載の配合物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【公表番号】特表2010−523731(P2010−523731A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548764(P2009−548764)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000286
【国際公開番号】WO2008/096255
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509221319)ロディア・ポリアミダ・エ・エスペシアリダデス・リミターダ (9)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA POLIAMIDA E ESPECIALIDADES LTDA
【住所又は居所原語表記】Av.Maria Coelho Aguiar,215,Bloco B−1 andar,Parte 1−Jardim Sao Luiz,Sao Paulo−SP BRAZIL
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000286
【国際公開番号】WO2008/096255
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509221319)ロディア・ポリアミダ・エ・エスペシアリダデス・リミターダ (9)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA POLIAMIDA E ESPECIALIDADES LTDA
【住所又は居所原語表記】Av.Maria Coelho Aguiar,215,Bloco B−1 andar,Parte 1−Jardim Sao Luiz,Sao Paulo−SP BRAZIL
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]