説明

コーティング組成物における脂環式ジオール抗微生物剤の抗微生物効果

1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される脂環式ジオール抗微生物剤が、コーティング組成物およびラテックスにおいて抗微生物活性を与えることを見出し、そしてコーティングおよび分散体において一般的に用いる他の抗微生物剤の有効性を向上させることを見出した。単独または防腐剤システムの一部として、水中のこの脂環式ジオール抗微生物剤は、コーティング製造者に改善された微生物制御を実現すること、およびその配合物中でより少ない抗微生物剤を用いつつ同等の制御を実現することを可能にする取り扱い容易な液体を提供できる。従って、従来の防腐剤の使用を低減しつつ製品の保存寿命を維持でき、またはこの脂環式ジオール抗微生物剤を既存の抗微生物システムに添加することで保存寿命を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本件は、米国仮特許出願第60/901,615号、名称“ANTIMICROBIAL EFFECT OF CYCLOALIPHATIC DIOL ANTIMICROBIAL AGENTS IN COATING COMPOSITIONS”(2009年5月15日出願)(その全開示を参照により本明細書に組入れる)の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概略的には、水系コーティング組成物の分野に関し、特に、水系コーティング組成物において用いるための抗微生物剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
水系コーティング製品は、典型的には、水および有機化合物を、これらを微生物生育に対して感受性にするレベルで含有する。バクテリア、酵母、またはカビによる汚染は、製造中または消費者による使用中に生じる可能性がある。製造時に入り込む汚染性の微生物は、貯蔵および輸送の間、販売時点の陳列、ならびに使用前に、生育するかなりの時間を有する。使用中、汚染は、コーティング生成物が器具、第2の容器、および使用者と接触することに起因して生じる可能性がある。
【0004】
抗微生物剤は、典型的には水系コーティングまたはコーティング含有成分に添加して、製品中のバクテリア、酵母、またはカビの生育を制限する。この目的で入手可能な存在する抗微生物化学物質の数は極めて制限されている。抗微生物剤または抗微生物剤の組合せ(すなわち抗微生物システム)の種類、およびその製品中の濃度は、防腐される製品の種類、剤の効果、および製品を汚染させやすい生物の種類に基づいて選択する。抗微生物システムは、環境的または健康上の問題に基づき、使用するのに安全と考えられるよりも低い濃度に更に制限される。幾つかの剤は、感受性の個体において皮膚感作の原因となることが公知であり、従って政府の規制によって濃度が制限されている。
【0005】
グリコールは、コーティング中および種々の他の製品中で有効濃度にて用いる場合、グリコールが、用いる抗微生物システムを増補または向上させるような抗微生物活性を有するものとされてきた。このようなグリコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、および1,3−ブチレングリコールが挙げられる。
【0006】
当該分野において、コーティング組成物および水性分散体において使用するための更なるより有効な抗微生物剤およびシステムに対する要求が存在する。本発明は、この要求を解決すること、更に他の以下の説明および特許請求の範囲から明らかとなることを対象とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
一態様において、本発明は:
(a)コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量の、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤;
(b)水;および
(c)バインダー;
を含む、コーティング組成物を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は:
(a)1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む抗微生物システム;
(b)水;および
(c)バインダー;
を含み、該抗微生物システムが、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量存在する、コーティング組成物を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤を、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む抗微生物システムを、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−CHDM)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCBD)からなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤が、水系コーティング組成物における抗微生物剤として有効であることを発見した。加えて、この脂環式ジオール抗微生物剤は、コーティングにおいて用いられる従来の抗微生物剤の効果を向上させることができる。組合せで用いる場合、この新規な脂環式ジオール抗微生物剤は、コーティング組成物において用いる個別の剤の数および/または濃度の低減を可能にする。本発明の改善された抗微生物システムの一部として使用できる従来の抗微生物剤としては、Kappockによって“Biocides in Wet State and Dry Film,” Handbook of Coatings Additives,pp.272−75(2d ed.2004)(参照により本明細書に組入れる)において記載されるものが挙げられる。例えば、脂環式ジオール抗微生物剤は、より一般的に用いられるコーティング抗微生物剤,例えばメチルイソチアゾリノン(MIT)、クロロメチルイソチアゾリノン、ベンズイソチアゾリノン(BIT)、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、の抗微生物活性を向上させることができる。
【0012】
一態様において、脂環式ジオール抗微生物剤は、シス異性体とトランス異性体との混合物である。例えば、1,4−CHDMは、シス対トランスの比 約31/69を有することができる。
【0013】
よって、一態様において、本発明は:
(a)1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤の、コーティング組成物における微生物生育を低減または阻害するのに有効な量;
(b)水;および
(c)バインダー;
を含む、コーティング組成物を提供する。
【0014】
用いる脂環式ジオール抗微生物剤の量は、幾つかの要因,例えば所望の抗微生物保護の程度、微生物汚染物への可能な曝露の程度、およびコーティング組成物における脂環式ジオール抗微生物剤と他の含有成分との親和性、に応じて変えることができる。典型的には、コーティング組成物中に存在する脂環式ジオール抗微生物剤の量は、コーティング組成物の質量基準で約0.1〜約5質量%の範囲となる。好ましくは、脂環式ジオール抗微生物剤は、コーティング組成物の質量基準で約0.3〜約4質量%、および約1〜約3.5質量%の範囲で存在する。他の範囲は約0.5〜約4質量%、および約1〜約3.5質量%である。
【0015】
本発明に係るコーティング組成物は水を含有する。水は、典型的には、コーティング組成物の質量基準で40〜70質量%の範囲で存在する。
【0016】
本発明のコーティング組成物中のバインダーとは、フィルム形成性成分を意味する。バインダーは、接着を与え;存在する場合には顔料を一緒に結合し;そして得られるコーティングの特性,例えば光沢、耐久性、可撓性および強靭性に影響を与える。バインダーは天然樹脂または合成樹脂,例えばアクリル、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ、および油であることができる。一態様において、バインダーはポリマー粒子(例えばラテックス塗料において用いるもの)を含む。コーティング組成物は、典型的には、コーティング組成物の質量基準で30〜60質量%のバインダーを含有する。
【0017】
本発明のコーティング組成物は顔料または染料を含むことができる。顔料は、組成物の総質量基準で30〜60質量%の量で存在できる。好適な顔料の例としては、二酸化チタン、バライト、クレー、炭酸カルシウム、CI Pigment White 6(二酸化チタン)、CI Pigment Red 101(赤色酸化鉄)、CI Pigment Yellow 42、CI Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4(銅フタロシアニン);CI Pigment Red 49:1およびCI Pigment Red 57:1が挙げられる。
【0018】
本発明のコーティング組成物はまた、1種以上の他の添加剤,例えば触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、テクスチャライザー、接着促進剤、UV安定剤、平坦化剤、流動調整剤、増量剤、可塑剤、顔料湿潤剤、顔料分散剤、消泡剤、泡止剤、沈降防止剤、垂れ防止剤、および腐食防止剤を含むことができる。
【0019】
コーティング組成物はまた、コーティング組成物の総質量基準で0〜30質量%の、水混和性有機溶媒を含むことができる。このような溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0020】
本発明のコーティング組成物を配合して、平坦および非平坦の壁面コーティング、プライマー、ウォッシュプライマー、目止め剤、アンダーコート剤、フロアコーティング、ルーフコーティング、結合破壊コーティング、コンクリート硬化コンパウンド、道路目止め剤、乾霧コーティング、人造仕上コーティング、型離型コンパウンド、工業用保守コーティング、ラッカー、マスチックテクスチャコーティング、エナメルコーティング、防錆コーティング、サンディング目止め剤、ステイン、水泳プールコーティング、交通標識コーティング、ワニス、防水目止め剤、または木材防腐剤とすることができる。
【0021】
脂環式ジオール抗微生物剤は、単独、または本発明のコーティング組成物における1種以上の追加の抗微生物剤との組合せで使用できる。脂環式ジオール抗微生物剤は、抗微生物性向上効果を、コーティング組成物の質量基準で約0.1〜約5質量%の濃度で与えることができる。本発明の別の態様において、脂環式ジオール抗微生物剤は、コーティング組成物の質量基準で約0.3〜約4質量%の範囲で存在する。他の範囲は約0.5〜約4質量%、および約1〜約3.5質量%である。上限濃度範囲は、コーティング組成物の他の含有成分と脂環式ジオール抗微生物剤との親和性によって限定される。本発明の別の態様において、他の抗微生物剤との組合せで用いる場合の脂環式ジオール抗微生物剤の濃度範囲は、コーティング組成物の質量基準で0.4〜3質量%である。
【0022】
本発明の改善された抗微生物システムの一部として使用できる他の抗微生物剤または第2の抗微生物剤としては、Kappockによって“Biocides in Wet State and Dry Film,” Handbook of Coatings Additives,pp.272−75(2d ed.2004)(参照により本明細書に組入れる)に記載されるものが挙げられる。このような第2の抗微生物剤としては、メチルイソチアゾリノン(MIT)、クロロメチルイソチアゾリノン、ベンズイソチアゾリノン(BIT)、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールが挙げられる。
【0023】
MITの濃度範囲は、コーティング組成物の質量基準で約0.0005〜約0.020質量%、約0.0010〜約0.010質量%、および約0.0015〜約0.005質量%であることができる。BITの濃度範囲は、コーティング組成物の質量基準で約0.0005〜約0.20質量%、約0.0010〜約0.10質量%、および約0.0015〜約0.05質量%であることができる。他のまたは第2の抗微生物剤についての濃度範囲は、これらのそれぞれの製造元から得ることができる。剤は、脂環式ジオール抗微生物剤との組合せで使用する場合には、下限または推奨される使用範囲よりも更に下で使用できることに留意される。また該剤は、互いのまたは脂環式ジオール抗微生物剤との組合せで抗微生物システムとして使用でき、種々の微生物に対する組合せの効果を強化できる(幾つかの剤は特定種の微生物,例えばグラム陰性バクテリア、グラム陽性バクテリア、カビ、および/または酵母、に対して、より有効であることが公知であるため)。
【0024】
よって、別の態様において、本発明は:
(a)1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む抗微生物システム;
(b)水;および
(c)バインダー;
を含み、該抗微生物システムが、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量存在する、コーティング組成物を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される脂環式ジオール抗微生物剤を、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む抗微生物システムを、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法を提供する。
【0027】
脂環式ジオール抗微生物剤をコーティング組成物に添加する方法は特に限定されない。例えば、脂環式ジオール抗微生物剤は、単純にこれを組成物と組合せて含有成分を混合することによってコーティング組成物に添加できる。これに代えて、脂環式ジオール抗微生物剤は、その高い可溶化力に起因して、コーティング組成物の含有成分の1種以上の溶媒として、これを残りの組成物含有成分と混合する前に、使用できる。
【0028】
1,4−CHDM抗微生物剤自体は室温では柔らかい固体である。従って、1,4−CHDM抗微生物剤を液体形状で与え、混合および/または取り扱いを容易にするためには、これをコーティング組成物またはその含有成分と組合せる前に、これをまず最大10質量%以上の水で希釈できる。
【0029】
本発明をその好ましい態様の以下の例によって更に説明できるが、これらの例は例示の目的のみで含まれ、本発明の範囲の限定を意図しないことが理解されよう。特記がない限り、全てのパーセントは質量基準であり、そして全ての質量パーセントは組成物の総質量基準である。
【0030】

例1
1,4−CHDMの抗微生物効果の試験を塗料にて行った。試験手順は、概略的にはASTM D2574−06:Standard Test Method for Resistance of Emulsion Paints in the Container to Attack by Microorganismsに準拠して実施した。
【0031】
試験に用いた塗料は、市販の水系、インテリアラテックスフラットウォール塗料(Wal−Martより購入)であった。塗料の商品名はQuik Hideであった。色はオフホワイト26905であった。5ガロン(18.9L)容器を購入した。VOC(揮発性有機化合物)量は、<100g/L(0.8lbs/gal)と挙げられていた。塗料ラベルに列挙された含有成分を表1に列挙する。
【0032】
【表1】

【0033】
接種されていない塗料のアリコートを滅菌プラスチックチューブ内に分配した。添加する塗料の体積は、添加剤の体積と塗料の体積との合計が25mLとなるように調整した。サンプルは、個別にまたは組合せで、CHDM−D90(1,4−CHDM,90%w/w,水中),1,3−CHDM(100%),BIT(Proxel GXL,20%活性物質;Arch),MIT(Acticide M20S,20%活性物質;Thor Specialties,Inc.),TMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール),PG(プロピレングリコール)、およびエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)(表2に列挙する通り)を添加して塗料サンプルを生成することによって調製した。表2に示すパーセントは質量パーセントである。
【0034】
【表2】

【0035】
塗料中の添加剤の濃度を調整して、接種材料の添加後のチューブ当たり最終体積28mLを得た。全チューブを、毎分75振とうに設定したメカニカルシェーカーで10分間混合し、次いで室温で最低48時間静置した。
【0036】
表3において、バクテリア(列挙の最初の5つ)、酵母(C.albicans)および菌類(A.niger)を接種生物として、試験塗料サンプル中に含有される添加剤の抗微生物効果の試験用に用いた。各生物は、塗料、ラテックスまたは接着剤の先の自然に汚染させたサンプルから単離した。接種材料として添加した試験塗料サンプル中の各生物の濃度(コロニー形成性単位/グラム(cfu/g))もまた表3に与える。
【0037】
【表3】

【0038】
バクテリア培養物を35℃±2℃で最低96時間、液体媒体中で生育させた。SRBはチオグリコレート培地中で生育させた。全ての他のバクテリアおよびC. albicansは1%デキストロースを有するトリプチケースソイ培地中で生育させた。C.albicans培養物は22℃±2℃で最低96時間生育させた。A.nigerはサブローデキストロース寒天(SDA)上および1%デキストロースを有するトリプチケースソイ培地中で、22℃にて7〜14日間または完全な胞子形成(寒天培養の場合)が実現するまで、生育させた。A.nigerのプレート培養物からの胞子は、生育物を滅菌接種ループで優しく擦ることによって取り、またはこれを滅菌ガラスインピンジャーで取り除いた。胞子を培地培養物中に添加し、次いで混合物を滅菌非吸収性綿に通して濾過し、血球計を用いて胞子レベルを1.0×108に調整した。
【0039】
10体積%の個別の培地培養物を塗料に添加することによって接種生物をまず添加剤を含まない塗料に慣れさせ、各バクテリア培養物について最終濃度106〜107cfu/mLを得て塗料原液培養物を生成した。A.nigerおよびC.albicansの培養物(または懸濁液)をまず非吸収性滅菌ガーゼを介して注いで凝集物を除去し、次いで遠心分離した。血球計を用いて濃度を見積もることにより、塗料において固体を所望の濃度に再懸濁させた。サンプルを35℃±2℃でバクテリアについて、そして22℃±2℃でA.nigerおよびC.albicansについて、培養した。これらの塗料原液培養物のサンプルを、以下に記載するように、生物濃度の評価のため、そしてコンタミネーションを除外するために希釈プレーティングした。
【0040】
これらの調製した試験塗料サンプル(塗料+添加剤)に、3mLの各塗料原液培養物(必要に応じて希釈)を添加して理論的に1.0×105〜1.0×106cfu/mLの接種生物総濃度を生成し、接種された塗料サンプルを生成した。希釈前に、C.albicansおよびA.nigerの塗料原液培養物を再び滅菌ガーゼを介して濾過し、遠心分離して固形分を収集し、そして上記のように再懸濁させた。塗料原液培養物および接種された塗料サンプルの希釈物は以下に記載するようにプレーティングして接種レベルを評価した。
【0041】
接種された塗料サンプルを35℃±2℃で14日間および14日後には室温で置いた。接種された塗料サンプルを再び同じ塗料原液培養物で5日に接種し、0日の接種のものと同じ濃度の生物を得た。
【0042】
塗料原液培養物および接種された塗料サンプルを14、30、および60日で希釈プレーティングして、生存接種生物の濃度を評価した。SRBサンプルを除いてバクテリアを接種したサンプルをプレートカウント寒天(PCA)上に希釈プレーティングし、プレートを35℃±2℃にて加湿培養器内で培養した。A.nigerおよびC.albicansをSDA上で継代培養し、22℃±2℃にて加湿培養器内で培養した。SRBを接種したサンプルを、一連の対数希釈を1:10〜1:100,000で、市販で入手可能な試験キット(BACTI−BOTTLES(登録商標)(Difco))にて実施することにより試験した。塗料原液培養物および接種された塗料サンプルを、ヨードニトロテトラゾリウムホルマザン(INT;生体染色)および/またはグラム染色(陰性と報告される前に)で試験した。コンタミネーションが疑われた場合には、微生物の属性をグラム染色またはコットンブルー染色によって確認した。
【0043】
培養物濃度のプレートカウント評価のための連続希釈を以下のように実施した。滅菌ピペットを用い、各々の接種された塗料サンプルからの生育物1mLを9mLの滅菌蒸留水のチューブ内に移し、完全に混合した。この手順を連続して繰り返し、10-1〜10-8の希釈物を調製した。続いて、0.1mLの各サンプルまたはその希釈物を3つのプレートカウント寒天プレート上に広げた。加湿培養器内での>48時間の培養(35℃±2℃でバクテリアについて、そして22℃±2℃で菌類および酵母について)の後、プレートをカウントし、対応する希釈とともに記録した。カウントを遅らせなければならない場合、プレートは、これらをカウントできるまで冷蔵した。
【0044】
プレートカウントは、希釈から計算し、プレート当たり22〜220カウントを与えた。カウントは最初の2桁を有効数字として記録した。全てのプレートが、カウントできるよりも多くのバクテリアコロニーを有した場合、結果は、最も少ない数のコロニーを有する希釈のプレートの最大カウント可能限界を超えるとして記録した。SRB生存細胞濃度は、明確(positive)な生育(黒化)がBACTI−BOTTLEにて観察された最大希釈を評価することによって見積もった。
【0045】
結果を以下の基準で等級分けした:
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
試験の結果を表4に示す。各例についての再現実験結果を平均した。
【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
表4に見られるように、塗料中で接種生物の各々の生育および/または生存があった。1,4−CHDM(実験8〜11)の存在下で、各接種生物の顕著または完全な殺生物があった。各生物について、1,4−CHDMに関連する用量反応があった。TMCDはまた、試験した最も高いレベル(実験16)で全接種生物を殺生物し、そして試験した4つのレベル(実験16〜19)に亘って用量反応を示した。CHDMの1,3−異性体(実験12〜15)またはプロピレングリコール(実験20〜23)の添加については利益が殆どなく、用量反応は観察されなかった。
【0053】
BITおよび1,4−CHDMの組合せは、相乗性(加法的であるよりも大きい)反応を、E.coli、Aeromonas sp.,B.subtilis,およびC.albicansに関して示した。この点で、いずれかの添加剤を別個に添加すること(実験24〜29)に対して実質的に改善された効果があった。同様に、TMCDおよびBITの組合せもまた、E.coli、Aeromonas sp.,B.subtilis,C.albicans,およびA.nigerの制御において相乗性を示した。この点で、いずれかの添加剤を別個に添加すること(実験42〜47)に対して実質的に改善された効果があった。BIT/MITおよび1,4−CHDMの組合せは、E.coli,Aeromonas sp.,B.subtilis,C.albicans,およびA.nigerの制御に対して相乗的な反応を示した。この点で、いずれかの添加剤を別個に添加すること(実験30〜35)に対して実質的に改善された効果があった。1,4−CHDM,EDTA,およびBITの組合せは、E.coli,Aeromonas sp.,B.subtilis,C.albicans,およびA.nigerの制御に対して相乗的な反応を示した。しかしEDTAのみを有する対照の不存在により、この検討の確実性はより低い。
【0054】
1,4−CHDMおよびTMCDとBITとの強い添加剤効果および相乗活性に反し、PGおよびBITの組合せ(実験48〜53)についてそのような結果は現れなかった。
【0055】
例2
1,4−CHDMの抗微生物効果の試験をラテックス分散液にて行った。試験手順は、概略的にはASTM D2574−06:Standard Test Method for Resistance of Emulsion Latexes in the Container to Attack by Microorganismsに準拠して実施した。
【0056】
抗微生物剤不含有のアクリル系ラテックス分散液(pH7.2、粘度200cps、および固形分量49.8%を有する)を微生物接種試験用の基質として用いた。
【0057】
ラテックス分散液のアリコートを滅菌プラスチックチューブ内に分配した。添加するラテックスの体積は、添加剤の体積とラテックスの体積との合計が25mLとなってラテックス試験サンプルを生成するように調整した。塗料試験サンプルは、個別にまたは組合せで、CHDM−D90(1,4−CHDM,90%w/w 水中),1,3−CHDM(100%),BIT(Proxel GXL,20%活性物質;Arch Chemicals),MIT(Acticide M20S,20%活性物質;Thor Specialties,Inc.),IPBC(3−ヨード−2−プロパニル−n−ブチルカーバメート;Acticide IPS20,20%活性物質;Thor Specialties,Inc.),PG(プロピレングリコール),およびエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)(表5に示す通り)を添加することによって調製した。
【0058】
【表9】

【0059】
添加剤の濃度を調整して、例1で議論したラテックス原液培養物の添加後に、最終体積28mL(チューブ当たり)を得た。全チューブを10分間、毎分75振とうに設定したメカニカルシェーカーで混合し、次いで室温で最低48時間静置した。
【0060】
バクテリア(硫酸塩還元バクテリア単離株、Bacillus subtilis、およびPseudomonas aeruginosa)、酵母(Candida albicans)、および菌類(Aspergillus niger)(表6中)を、試験ラテックスサンプルの抗微生物効果の試験用の接種生物として用いた。各生物を、塗料、ラテックス、または接着剤の先の天然に汚染されたサンプルから単離した。接種材料として添加した各生物のラテックス試験サンプル中の濃度もまた表6に与える。
【0061】
【表10】

【0062】
バクテリア培養物を35℃±2℃で最低96時間、液体媒体中で生育させた。SRBをチオグリコレート培地中で生育させた。全ての他のバクテリアおよびC.albicansを、1%デキストロースを有するトリプチケースソイ培地中で生育させた。C.albicansを22℃±2℃で最低96時間生育させた。A.nigerをサブローデキストロース寒天上および1%デキストロースを有するトリプチケースソイ培地中で、22℃にて7〜14日間または完全な胞子形成(寒天培養の場合)が実現されるまで、生育させた。A.nigerのプレート培養物からの胞子は、生育物を滅菌接種ループで優しく擦ることによって取り、またはこれを滅菌ガラスインピンジャーで取り除いた。胞子を培地培養物中に添加し、次いで混合物を滅菌非吸収性綿に通して濾過し、血球計を用いて胞子レベルを1.0×108に調整した。
【0063】
10体積%の個別の培地培養物をラテックスに添加することによって接種生物をまず抗微生物添加剤を含まないラテックスに慣れさせ、各バクテリア培養物について最終濃度106〜107cfu/mLを得てラテックス原液培養物を生成した。A.nigerおよびC.albicansの培養物(または懸濁液)をまず非吸収性滅菌ガーゼを介して注いで凝集物を除去し、次いで遠心分離した。血球計を用いて濃度を見積もることにより、ラテックスにおいて固体を所望の濃度に再懸濁させた。P.aeruginosaおよびC.albicansの単離株が、汚染された生成物中に混合された培養物として元々見出された。P.aeruginosaおよびC.albicansを含有する混合ラテックス原液培養物は、汚染された生成物の一部を、抗微生物添加剤を含まないラテックスに添加することによって調製した。ラテックス原液培養物サンプルを35℃±2℃でバクテリアについて、そして22℃±2℃でA.nigerおよびC.albicansについて、培養した。接種生物濃度の評価のために、ラテックス原液培養物のサンプルを希釈プレーティングし、またはSRBについてはBACTI−BOTTLE法を用いて評価した(以下に記載する通り)。
【0064】
ラテックス試験サンプルに対し、3mLの各ラテックス原液培養物(必要に応じて希釈した)を添加して理論的に1.0×105〜1.0〜106cfu/mLの総濃度を生成して、接種されたラテックスサンプルを得た。希釈前に、C.albicansおよびA.nigerのラテックス原液培養物を再び滅菌ガーゼに通し、遠心分離して固形分を収集し、そして上記のように再懸濁させた。ラテックス原液培養物の希釈物を以下に記載するようにプレーティングして接種レベルを評価した。
【0065】
接種されたラテックスサンプルを35℃±2℃に14日間および14日後には室温で置いた。サンプルを再び同じラテックス原液培養物で5日に接種し、0日の接種のものと同じ濃度の生物を得た。
【0066】
ラテックス原液培養物およびラテックス試験サンプルを7、14、30、および60日で希釈プレーティングして、生存接種生物の濃度を評価した。SRBサンプルを除いてバクテリアを接種したサンプルをPCA上に希釈プレーティングし、プレートを35℃±2℃にて加湿培養器内で培養した。A.nigerおよびC.albicansをサブローデキストロース寒天上で継代培養し、22℃±2℃にて加湿培養器内で培養した。SRBで接種したサンプルを、一連の対数希釈を1:10〜1:1000で、市販で入手可能な試験キット(BACTI−BOTTLES(登録商標)(Difco))にて実施することにより試験した。全ラテックス原液培養物を、ヨードニトロテトラゾリウムホルマザン(INT;生体染色)および/またはグラム染色(陰性と報告される前に)で試験した。コンタミネーションが疑われた場合には、微生物の属性をグラム染色またはコットンブルー染色によって確認した。
【0067】
培養物濃度のプレートカウント評価のための連続希釈を以下のように実施した。滅菌ピペットを用い、各々の接種されたラテックスサンプルからの生育物1mLを9mLの滅菌蒸留水のチューブ内に移し、完全に混合した。この手順を連続して繰り返し、10-1〜10-8の希釈物を調製した。続いて、0.1mLの各サンプルまたはその希釈物を3つのプレートカウント寒天プレート上に広げた。加湿培養器内での>48時間の培養(35℃±2℃でバクテリアについて、そして22℃±2℃で菌類および酵母について)の後、プレートをカウントし、対応する希釈とともに記録した。カウントを遅らせなければならない場合、プレートは、これらをカウントできるまで冷蔵した。
【0068】
プレートカウントは、希釈から計算し、プレート当たり22〜220カウントを与えた。カウントは最初の2桁を有効数字として記録した。全てのプレートが、カウントできるよりも多くのバクテリアコロニーを有した場合、結果は、最も少ない数のコロニーを有する希釈のプレートの最大カウント可能限界を超えるとして記録した。SRB生存細胞濃度は、明確な生育(黒化)がBACTI−BOTTLEにて観察された最大希釈を評価することによって見積もった。
【0069】
結果を以下の基準で等級分けした:
【0070】
【表11】

【0071】
【表12】

【0072】
【表13】

【0073】
試験の結果を表7に示す。各例についての再現実験結果を平均した。表中の「ND」は、得られたデータがなかったことを示す。
【0074】
【表14】

【0075】
【表15】

【0076】
表7に見られるように、ラテックス試験サンプル中で接種生物の各々の生育および/または生存があった。1,4−CHDM(実験2〜5)の存在下で、SRBを除いて各接種生物の顕著または完全な殺生物があった。SRBを除いて各生物について、1,4−CHDMに関連する用量反応があった。プロピレングリコール(実験6〜9)は、1,4−CHDMと同じ濃度で、接種生物の阻害および殺生物の幾らかかの能力を示したが、各々の場合で、SRB以外で、1,4−CHDMよりも少ない程度であった。1,4−CHDMまたはEDTA(実験45)単独と比べた場合、EDTAの添加で、1,4−CHDMの改善された効果があった(実験10〜12)。これは特に、B.subtilis、C.albicans、およびP.aeruginosa/C.albicansの混合物の対照についての場合であった。BITおよびMIT(実験39〜44)は、SRBを除いて全ての接種生物の制御において高度に有効であった。BIT、MIT、またはBIT/MITの存在下では接種生物の生存が殆どまたは全くなかったため、1,4−CHDM(実験13〜32)をBIT、MITおよびBIT/MITのこれらの濃度で添加することの利益を検出することはできなかった。最後に、IPBCは、試験した濃度で有効であることが見出されなかった(実験47)。1,4−CHDMおよびIPBCの組合せは、1,4−CHDM単独(実験48〜50)の添加の利益を殆どまたは全く与えなかった。
【0077】
例3−1,1および1,4−シクロヘキサンジメタノールの抗微生物活性比較
1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)および1,1−シクロヘキサンジメタノール(1,1−CHDM)の抗微生物活性を評価した。各活性は、最小阻害濃度(MIC)として算出し、視認できる生育の阻害に必要な最低濃度を明らかにした。MICは、1,1−シクロヘキサンジメタノール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールの31%シス:69%トランスの混合物の両者にて3連続日についてそれぞれ算出した。両化合物を、微生物の5菌株のパネルに対して評価した。1,1−CHDMは、種々の生物の間での相関を有し、1,4−CHDMに対して、効果の顕著な改善を与えた。
【0078】
より高度な抗微生物活性は、コーティング配合物中のCHDMの濃度および体積の低減を可能にすることができる。CHDMの量の低減により、配合されるコーティングの特性に対する影響を最小化しつつ同等の活性を保持でき、そしてまた同じ正味の活性を伴うより少ない物質の生成によってコストを低減できる。
【0079】
例3についての材料および方法
菌株P.aeruginosa、C.albicans、E.coli、A.nigerおよびS.aureusを、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。NUNC平底ポリスチレン96ウエルマイクロタイタープレート(NUNC Cat#269787)、および17×100mmの培養物チューブ(VWR Cat#60818−703)をVWR International,LLC(West Chester,PA)から購入した。Eastman CHDM−D90および1,1−CHDM(>99.7%(GCより)およびNMRにより同定)は、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)より得た。全てのバクテリア培養物をBD BBL トリプチケースソイ培地中で生育させ、全ての菌類培養物をサブローデキストロース培地(VWR International,LLC(West Chester,PA)から購入)中で生育させた。吸収測定をTECAN GENios Proマイクロプレートリーダーで行った。
【0080】
接種材料の準備
小白金耳量の接種材料を、各菌株の新しく画線を付けた寒天プレートから、17×100mm培養物チューブ内の5mlの滅菌媒体に移した。チューブを、振とうせずに適切な温度で適切な媒体中で培養した(表8に列挙する通り)。バクテリアは20〜28時間培養し、そしてC.albicansは44〜52時間培養した。
【0081】
A.nigerの手順は大きく異なった。A.nigerをサブローデキストロース寒天プレート上で、黒色胞子の重度の集中が目視で明らかになるまで培養した。胞子をプレートから、3mlのサブローデキストロース培地中で滅菌プラスチックスプレッダーおよび滅菌注入ピペットを用いて懸濁させることによって集菌した。
【0082】
【表16】

【0083】
CHDM異性体の希釈
原液溶液を、各異性体について、対応する生育媒体中で濃度5%w/v(1,4−CHDM)または2.25%w/v(1,1−CHDM)にて準備した。連続希釈を、希釈比1:1.3333で行い、1のlog範囲が9の希釈でカバーされるようにした。
【0084】
96ウエルプレートの準備
200マイクロリットルの各CHDM濃厚物を4ウエルの滅菌96ウエルプレート内に移した。最高濃度の更に4ウエルを、接種していない高レベル対照として入れた。更に8ウエルに滅菌培地のみを入れ、陰性および陽性の対照とした。各CHDM濃厚物の4ウエルのうち3つに試験菌株の1つを接種した(表8中に列挙する通り)。各CHDM異性体希釈物の最後のウエルは接種せずに残して、試験化合物に関するバックグラウンド濁度用の対照とした。バクテリアまたはC.albicansを有するプレートに2μlの種培養物を接種して最終濃度約106CFU/ml(バクテリアについて)および105CFU/ml(C.albicansについて)とした。A.nigerを有するプレートに、上記で準備した2μlの胞子懸濁物を接種した。
【0085】
最小阻害濃度(MIC)の評価
各プレートをカバーし、適切な温度で培養し、細胞密度の指標としての濁度を、612nmでの吸収測定にて、マイクロプレートリーダーを用いて評価した。測定は、各プレートについて24、48および72時間で行った。生データをエクセルスプレッドシートにエクスポートし、MIC値を評価してwt%として表した。各々の接種されたCHDMウエルの吸収を、まず各々の接種されていないウエルの平均読みを差し引き、次いで正の閾値と比較することによって読み出して、生育の陽性または陰性の状態を評価した。正の閾値は、接種した媒体−のみのウエルの平均吸収に0.05を乗じることによって算出した。MICは、正の閾値未満の値を示す全3つの再現ウエルをもたらす最低試験濃度として評価した。
【0086】
結果
1,1−シクロヘキサンジメタノールは、1,4−シクロヘキサンジメタノールのものに対する抗微生物効果の測定可能な増大を示した。抗微生物効果は、これらの実験における5つの試験生物の4つに対して増大した。1,1−CHDMの溶解性は、水性生育媒体中2.25%(w/v)に限られ、従って包括的なMIC結果は、0〜2.25%の範囲に限られた。最終結果を以下の表9に纏める。
【0087】
【表17】

【0088】
これらの結果は、1,1−CHDMは、その構造異性体1,4−CHDMよりも有効な抗微生物剤であることができる(より低いMIC値によって示されるように)ことを示す。
【0089】
本発明をその好ましい態様を特に参照して詳述してきたが、本発明の精神および範囲の中での変更および改変が可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量の、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤;
(b)水;および
(c)少なくとも1種のバインダー;
を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
該脂環式ジオール抗微生物剤が、該コーティング組成物の質量基準で約0.5〜約5質量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
該脂環式ジオール抗微生物剤が、該コーティング組成物の質量基準で約1〜約3質量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
該バインダーが、ポリマー粒子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、テクスチャライザー、接着促進剤、UV安定剤、平坦化剤、流動調整剤、増量剤、可塑剤、顔料、染料、顔料湿潤剤、顔料分散剤、消泡剤、泡止剤、沈降防止剤、垂れ防止剤、および腐食防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
平坦および非平坦の壁面コーティング、プライマー、ウォッシュプライマー、目止め剤、アンダーコート剤、フロアコーティング、ルーフコーティング、結合破壊コーティング、コンクリート硬化コンパウンド、道路目止め剤、乾霧コーティング、人造仕上コーティング、型離型コンパウンド、工業用保守コーティング、ラッカー、マスチックテクスチャコーティング、エナメルコーティング、防錆コーティング、サンディング目止め剤、ステイン、水泳プールコーティング、交通標識コーティング、ワニス、防水目止め剤、および木材防腐組成物からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
(a)1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む少なくとも1種の抗微生物システム;
(b)水;および
(c)少なくとも1種のバインダー;
を含み、該抗微生物システムが、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量存在する、コーティング組成物。
【請求項8】
該脂環式ジオール抗バクテリア剤が、該コーティング組成物の質量基準で約0.2〜約5質量%の量で存在する、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
該脂環式ジオール抗バクテリア剤が、該コーティング組成物の質量基準で約0.4〜約3質量%の量で存在する、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
該バインダーが、ポリマー粒子を含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、テクスチャライザー、接着促進剤、UV安定剤、平坦化剤、流動調整剤、増量剤、可塑剤、顔料、染料、顔料湿潤剤、顔料分散剤、消泡剤、泡止剤、沈降防止剤、垂れ防止剤、および腐食防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
平坦および非平坦の壁面コーティング、プライマー、ウォッシュプライマー、目止め剤、アンダーコート剤、フロアコーティング、ルーフコーティング、結合破壊コーティング、コンクリート硬化コンパウンド、道路目止め剤、乾霧コーティング、人造仕上コーティング、型離型コンパウンド、工業用保守コーティング、ラッカー、マスチックテクスチャコーティング、エナメルコーティング、防錆コーティング、サンディング目止め剤、ステイン、水泳プールコーティング、交通標識コーティング、ワニス、防水目止め剤、および木材防腐組成物からなる群から選択される、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤を、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法。
【請求項14】
該脂環式ジオール抗微生物剤が、該コーティング組成物の質量基準で約0.5〜約5質量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該脂環式ジオール抗微生物剤が、該コーティング組成物の質量基準で約1〜約3質量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
該バインダーが、ポリマー粒子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
該コーティング組成物が、触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、テクスチャライザー、接着促進剤、UV安定剤、平坦化剤、流動調整剤、増量剤、可塑剤、顔料、染料、顔料湿潤剤、顔料分散剤、消泡剤、泡止剤、沈降防止剤、垂れ防止剤、および腐食防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
該コーティング組成物が、平坦および非平坦の壁面コーティング、プライマー、ウォッシュプライマー、目止め剤、アンダーコート剤、フロアコーティング、ルーフコーティング、結合破壊コーティング、コンクリート硬化コンパウンド、道路目止め剤、乾霧コーティング、人造仕上コーティング、型離型コンパウンド、工業用保守コーティング、ラッカー、マスチックテクスチャコーティング、エナメルコーティング、防錆コーティング、サンディング目止め剤、ステイン、水泳プールコーティング、交通標識コーティング、ワニス、防水目止め剤、および木材防腐組成物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害する方法であって:
1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の脂環式ジオール抗微生物剤、ならびに少なくとも1種の第2の抗微生物剤、を含む抗微生物システムを、該コーティング組成物において微生物生育を低減または阻害するのに有効な量で、水およびバインダーを含むコーティング組成物に添加すること;
を含む、方法。

【公表番号】特表2012−526891(P2012−526891A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510797(P2012−510797)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/001430
【国際公開番号】WO2010/132120
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】