説明

コーティング装置

【課題】ジャケットレス構造のコーティング装置の回転ドラム、特に、外周面全周を通気部とした回転ドラム内面へのコーティング基材物質の付着を防止する。
【解決手段】中空の回転ドラム3を外側ケーシング7内に回転可能に配置する。回転ドラム3の外周面には、周方向に沿って、コーティング処理に際しドラム内外を通気可能な通気部6を形成する。通気部6は、回転ドラム3の外周面に全周に亘って設けられる。通気部6には、中空状に形成され内部に冷風が流通する中空パイプ16を所定間隔にて配置する。中空パイプ16の間に形成される間隙により、回転ドラム3の内外を連通させる連通部が形成される。コーティング処理中は、適宜、中空パイプ16に冷水を供給して回転ドラム3を冷却し、ドラム内面と被処理物との間に温度差を設け、コーティング基材物質の付着を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム状の回転容器を用いたコーティング装置に関し、特に、錠剤や食品等のコーティング処理に使用されるジャケットレス構造の通気式パンコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品等の製造装置として、回転ドラムを用いたコーティング装置が知られている。例えば、特許文献1には、多角形断面(ここでは、八角形)のコーティングパンと呼ばれる回転ドラムを備えた装置が記載されている。図11は、このような従来のコーティング装置100の構成を示す説明図である。コーティング装置100は、回転ドラムの外側に通気ジャケットのない所謂ジャケットレス構造の装置となっている。図11に示すように、回転ドラム101は、水平軸線を中心に矢示R方向に回転し、外側ケーシング102内に収容されている。回転ドラム101内に投入された粉粒体はドラムの回転に伴って転動し、その表面には図示しないスプレー装置からコーティング液が噴霧される。その際、回転ドラム101内には、給排気ダクト103,104から適宜、熱風や冷風が供給・排気され、コーティング層の形成や乾燥が促進される。
【0003】
コーティング装置100では、コーティング処理中は、被処理物に対し、例えば給排気ダクト103から温風や冷風を適宜送給する。回転ドラム101の主胴部105には、多孔板(パンチング)からなる通気部106が8面全面に形成されており、被処理物層を抜けたエアはこの通気部106から給排気ダクト104に流出する。従って、給排気ダクト103から回転ドラム101内に供給されたエアは、被処理物層を通り、通気部106を介して、回転ドラム101の外周に配された給排気ダクト104へと排出される。このように、コーティング装置100では、給排気ダクト103,104から給排気される乾燥エアにより、コーティング基材が被処理物表面にて蒸発乾固し、コーティング層が形成される。
【特許文献1】特公平7-63608号公報
【特許文献2】特開平6-63376号公報
【特許文献3】特開平6-23258号公報
【特許文献4】特公昭50-38713号公報
【特許文献5】特願2006-66558号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなコーティング装置では、被処理物層を通過した乾燥エアが通気部106を介して排気されるため、コーティング処理中に回転ドラム101の温度が上昇(もしくは降下)し、被処理物と通気部106がほぼ同等の温度となる。このため、回転ドラム101の内面にコーティング基材物質が固化して付着するおそれがあるという問題がある。例えば、糖衣コーティング処理の場合、回転ドラム101が乾燥エアによって暖められ、糖衣液の基材物質(白糖)がドラム内面、特に通気部106の部位に固化・付着し易くなる。また、チョコレートコーティング処理の場合には、給排気ダクト103から冷風が供給されるが、前述同様、被処理物と通気部106がほぼ同等の温度となるため、チョコレートがドラム内面に固化・付着し易くなる。
【0005】
コーティング処理中にこのような固化物質がドラム内面に付着すると、それが剥離して製品に付着した場合、ボッチや突起といった不良品の原因となる。そこで、実際のコーティング処理では、ドラム内面等の付着物が多くなった時点で回転ドラムを止め、付着したカスをドラム外へ排出している。すなわち、従来の装置では、不良品発生防止のため、処理工程中に回転ドラム内部を適宜清掃する必要がある。従って、その分、生産効率が低下し工程時間が長くなると共に、洗浄時においても、付着物が多いため洗浄時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ジャケットレス構造のコーティング装置の回転ドラム、特に、外周面全周を通気部とした回転ドラム内面へのコーティング基材物質の付着を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコーティング装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、前記処理容器の外周面に周方向に沿って設けられ、コーティング処理に際し、該処理容器の内部と外部を通気可能な通気部とを備えてなるコーティング装置であって、前記通気部は、中空状に形成され内部に温調媒体が流通可能な温調管と、前記温調管の間に形成され前記処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、コーティング装置の処理容器外周面に通気部を設けると共に、この通気部に、温調媒体が流通する温調管を間隔をあけて配置し、温調管の間に形成される間隙によって処理容器内外を連通させる連通部を形成したので、コーティング処理に際し、温調管に温調媒体が流通させることにより、通気を行いつつ、処理容器、特に通気部の温度調節を行う。これにより、コーティング処理中、処理容器の温度を適宜調整し、処理容器内面と被処理物との間に温度差を生じさせ、処理容器内面、特に通気部へのコーティング基材物質の付着を抑制する。
【0009】
前記コーティング装置において、前記温調管を、前記処理容器外周面の全周に亘って配置しても良い。また、前記コーティング装置が、給排気路に接続され前記処理容器外側に該処理容器を取り囲むように配置されたジャケットを有さないジャケットレス構造であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング装置によれば、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、処理容器の外周面に周方向に沿って設けられ、コーティング処理に際し、処理容器の内部と外部を通気可能な通気部とを備えてなるコーティング装置にて、前記通気部に、中空状に形成され内部に温調媒体が流通可能な温調管と、温調管の間に設けられた間隙によって形成され処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを設けたので、コーティング処理に際し、温調管に温調媒体が流通させることにより、通気を行いつつ、処理容器、特に通気部の温度調節を行うことが可能となる。これにより、コーティング処理中、処理容器内面と被処理物との間に温度差を生じさせることができ、処理容器内面、特に通気部へのコーティング基材物質の付着を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1であるコーティング装置を側面方向から見た場合の構成を示す説明図、図2は、図1のコーティング装置を背面方向から見た場合の構成を示す説明図である。図1に示したコーティング装置1は、一般にパンコーティング装置と呼ばれる装置であり、回転ドラムの回転とそれを通過する処理気体及びコーティング用物質により、被処理物の造粒、コーティング、乾燥、混合等の所望の処理を行う。本実施例では、コーティング装置1として、例えば錠剤や菓子等の被処理物2に対して、白糖を水に溶解したシロップを主体に構成した糖衣液等をコーティング処理する装置を例にとって本発明の構成を説明する。
【0013】
コーティング装置1には、被処理物2を収容する横型ドラム状の処理容器である回転ドラム(コーティングパン)3が設けられている。回転ドラム3は、多角筒形または円筒形の横断面形状を有する中空の主胴部4と、この主胴部4の軸方向両端側に設けられた端壁部5とから構成されており、水平軸線Oを中心に回転可能に設置されている。主胴部4の全周には、温風や冷風等の処理気体が流通する通気部6が設けられている。図1のコーティング装置1では、主胴部4の横断面が八角形となっており、通気部6は主胴部4の8面全てに設けられている。
【0014】
回転ドラム3は外側ケーシング7内に収容されている。外側ケーシング7は密封式の箱状外枠体であり、ケーシング内と外部とを連通させる給気部8と排気部9が設けられている。回転ドラム3は、外側ケーシング7内に回転自在に配置されており、モータ11により、図2の矢示R方向に回転駆動される。回転ドラム3内には、図示しないスプレー装置が設置されており、このスプレー装置からコーティング剤やバインダ液等がドラム内の被処理物に対して供給される。
【0015】
回転ドラム3の外周部には、八角形の各辺部分を区分する仕切板12が設けられている。仕切板12はドラム外周部の八角形の頂点部分に配置されており、径方向に向かって放射状に突設されている。この仕切板12の軸方向両端には、リング状の摺動枠13がそれぞれ取り付けられている。摺動枠13は、主胴部4を挟んで対向しており、回転ドラム3の外周にフランジ状に配置されている。これにより、回転ドラム3の外周面の一辺と、仕切板12及び摺動枠13とによって、1個の通気空間14が形成される。
【0016】
通気空間14に対しては、外側ケーシング7の図2右上部に配された給気部8から処理気体が供給され、回転ドラム3内に送給される。また、回転ドラム3内の気体は、通気空間14を介して、外側ケーシング7の図2左下部に配された排気部9から装置外へと排出される。排気部9には、外側ケーシング7内の空間7aからの気体漏出を抑え、効率の良い排気を行うため、シール板15が取り付けられている。シール板15は、ゴムや合成樹脂等にて形成されており、摺動枠13の外周縁に摺接し、回転ドラム3の外側を覆うように設けられている。このシール板15により、空間7a内の気体が回転ドラム3内に流入し、被処理物の乾燥等に寄与することなく、ドラム経由で排気部9から漏出してしまうのを防止している。
【0017】
回転ドラム3の図中右端部には駆動シャフト21が取り付けられている。駆動シャフト21は、軸受22によって回転自在に支持されている。駆動シャフト21にはスプロケット23が取り付けられており、チェーン24を介してスプロケット25に接続されている。スプロケット25はモータ11にて駆動され、このモータ11を作動させることにより、駆動シャフト21が回転駆動され、回転ドラム3が水平軸線Oを中心に回転する。駆動シャフト21の端部には、ロータリージョイント27が取り付けられており、ロータリージョイント27は、ポンプや熱交換器等の装置外に設けられた冷温媒の給排系(図示せず)に接続されている。
【0018】
コーティング装置1では、図1,2に示すように、回転ドラム3の通気部6に対し、ロータリージョイント27と流通孔28及び給排チューブ29を介して、温調媒体として冷風(冷媒)を供給できるようになっている。なお、冷媒としては、冷水も使用可能である。流通孔28は、供給孔28aと排出孔28bとからなり、駆動シャフト21中にそれぞれ設けられている。駆動シャフト21には、供給孔28aと排出孔28bの接続口31a,31bが設けられており、各接続口31a,31bには、合成樹脂製の給排チューブ29(供給チューブ29a,排出チューブ29b)が取り付けられている。また、駆動シャフト21には、供給孔28aと排出孔28bの開口32a,32bが形成されており、ロータリージョイント27と接続されている。
【0019】
図3はロータリージョイント27の構成を示す断面図、図4はロータリージョイント27と駆動シャフト21の接続構造を示す説明図である。図3,4に示すように、ロータリージョイント27の中央には装着孔33が形成されており、この装着孔33には、駆動シャフト21の端部が回転自在に挿入される。装着孔33の周壁には、2本の円周溝34a,34bが凹設されている。円周溝34a,34bは、装着孔33の周壁全周に亘って形成されており、その前後にはパッキン38a,38bが装着され、円周溝34a,34bから冷水が漏れないようになっている。ロータリージョイント27の図3,4において上面部には、2個の接続孔35a,35bが形成されており、接続孔35a,35bはそれぞれ、ロータリージョイント27の内部にて円周溝34a,34bと連通している。接続孔35a,35b内部には、雌ねじが形成されている。接続孔35a,35bには、口金36a,36bが取り付けられている。口金36a,36bには接続チューブ37a,37bが取り付けられており、前述の冷温媒給排系に接続されている。
【0020】
このようなロータリージョイント27に対し、駆動シャフト21の端部21aには、円周溝34a,34bに合わせて、開口32a,32bが形成されている。すなわち、ロータリージョイント27では、駆動シャフト21をロータリージョイント27に装着すると、開口32aと円周溝34a、開口32bと円周溝34bが対向・連通するようになっている。駆動シャフト21が回転すると、開口32a,32bもそれに伴って周方向に移動するが、開口32a,32bは、シャフト回転中も常に円周溝34a,34bに対向する。このため、供給孔28aと排出孔28bは、常に接続チューブ37a,37bと連通状態で維持され、回転ドラム3の作動中も常時温調媒体の供給・排出を行うことができる。
【0021】
駆動シャフト21の接続口31a,31bに取り付けられた給排チューブ29は、回転ドラム3の通気部6に取り付けられた中空パイプ(温調管)16に接続されている。図5は、回転ドラム3の構成を示す斜視図、図6は、通気部6の構成を示す説明図である。図5に示すように、回転ドラム3の主胴部4には、全周に亘って中空パイプ16が配置されている。中空パイプ16は、ステンレス製の中空丸棒(例えば、φ6,肉厚1mm)にて形成されており、その図6における左右端部は、摺動枠13に溶接固定されている。図6に示すように、中空パイプ16は1本のパイプをつづら折りした構成となっており、両端部以外は互いに略平行に配置されている。中空パイプ16間には、所定寸法の間隙(連通部)G(例えば、2mm)が設けられており、この中空パイプ16により、主胴部4の各辺部分には、回転ドラム3の内外を連通させる通気部6が形成される。コーティング装置1では、主胴部4の各面は中空パイプ16のみによって構成されており、その8面全面が通気部6となっている。
【0022】
中空パイプ16の両端部には、摺動枠13を貫通する形で敷設された供給チューブ29aと排出チューブ29bが接続されている。供給チューブ29aから中空パイプ16に供給された冷風は、羊腸状の中空パイプ16を通って排出チューブ29bから排出される。このように中空パイプ16に冷風を供給すると、通気部6自体が直接冷却され、コーティング処理中に処理気体によって通気部6が暖められてしまうのを抑えることができる。また、通気部6では、中空パイプ16が回転ドラム3の内部に露出した状態で配置されており、しかも、間隙Gにより処理気体が通気可能な構成となっている。これにより、コーティング装置1では、通気部6によってドラム内外の通気性を確保しつつ、その自己冷却機能により、ドラム温度の上昇を抑えられるようになっている。
【0023】
次に、コーティング装置1におけるコーティング処理について、糖衣錠の製造を例にとって説明する。ここではまず、回転ドラム3内に被処理物2として乳糖錠などの錠剤(例えば、直径8mm,200mg/T)を投入し、モータ11を駆動して回転ドラム3を回転させる(例えば、8rpm程度)。回転ドラム3の回転に伴い、錠剤は主胴部4や端壁部5に沿って回転方向に持ち上げられて内側に落下し、回転ドラム3内にて転動運動を行う。被処理物2に対しては、回転ドラム3を回転させつつ、スプレー装置から糖衣液(例えば、糖衣錠の処理量が100L程度の場合、60°C,340〜900mL/回)を噴霧する。この際、給気部8から適宜温風を送給し(例えば、70°C,12m/min)、錠剤上に糖衣被膜を固化形成する。給気部8から供給された温風は、回転ドラム3内を通って、排気部9から装置外へと排出される。
【0024】
一方、コーティング装置1では、コーティング処理中に、中空パイプ16に冷風を適宜供給し、通気部6を冷却する。中空パイプ16には、ロータリージョイント27、流通孔28及び給排チューブ29を介して冷風が供給・排出される。すなわち、冷温媒給排系から供給された冷風は、接続チューブ37a→口金36a→接続孔35a→円周溝34aと流れて開口32aに至り、供給孔28aから接続口31aを介して供給チューブ29aに流れ、中空パイプ16に流入する。一方、中空パイプ16にて暖められて排出された冷風は、排出チューブ29bを介して接続口31bに至り、その後、接続口31b→排出孔28b→開口32bと流れ、ロータリージョイント27内に入り、円周溝34b→接続孔35b→口金36b→接続チューブ37bと流れて冷温媒給排系に戻る。
【0025】
このように、当該コーティング装置1では、通気部6に中空パイプ16を一定間隔で配したことにより、通気を行いつつ、主胴部4に形成された通気部6を直接冷却することができる。このため、コーティング処理中、回転ドラム3の温度を低く維持し、ドラム内面と被処理物2との間に温度差を生じさせることができるので、ドラム内面、特に付着物が生じ易い通気部6への糖衣液の付着が抑えられる。従って、付着物の剥離によるボッチや突起の発生も抑えられ、通気部にパンチングを用いた従来の装置に比して、大幅に付着物を減らすことができ、不良品の発生率を低減させることが可能となる。
【0026】
また、ドラム内面の付着物が少ないことから、回転ドラム3の清掃回数や清掃工数、洗浄時間等を減らすことができ、その分、効率良くコーティング処理を実施することが可能となり、工程時間の短縮も図られる。さらに、コーティング装置1では、通気部6に供給する冷風の温度や量を制御することにより、通気部6の温度を適宜調整することができる。このため、処理条件に応じて最適なドラム温度を維持することができ、より効率の良いコーティング処理が実現できる。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の実施例2であるコーティング装置について説明する。実施例1では、通気部6に羊腸状の中空パイプ16を配した構成を示したが、中空パイプ16を複数本並設したユニットを形成し、それを主胴部4に取り付けるようにしても良い。図7は、実施例2であるコーティング装置41の構成を示す要部断面図、図8は、図7のコーティング装置41にて使用されるパネルユニット42の構成を示す斜視図である。なお、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0028】
パネルユニット42では、実施例1の中空パイプ16と同様の中空パイプ(温調管)43が複数本並行に配列されており、隣接する中空パイプ43の間には、所定寸法の間隙(連通部)Gが設けられている。中空パイプ43の両端には、ステンレス製の角パイプ(例えば、25mm角)にて形成された、給排集約パイプ44a,44bが溶接固定されている。給排集約パイプ44aには供給口45aが2個、給排集約パイプ44bには排出口45bが2個それぞれ溶接固定されている。実施例2のコーティング装置41では、供給口45aには供給チューブ29aが、排出口45bには排出チューブ29bがそれぞれ接続されており、コーティング処理中には、常時又は適宜、中空パイプ43に温調媒体(当該実施例では冷風)が供給される。なお、供給チューブ29aには、図7に示すように冷却装置46が取り付けられており、パネルユニット42に温度の低い冷風を効率良く供給できるようになっている。
【0029】
このようなコーティング装置41においても、コーティング処理中に、中空パイプ43に冷風を適宜供給し通気部6を冷却する。これにより、通気を行いつつ、主胴部4に形成された通気部6を直接冷却することができる。このため、コーティング処理中、回転ドラム3の温度を低く維持することができ、ドラム内面、特に付着物が生じ易い通気部6への糖衣液の付着が抑えられる。
【0030】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、糖衣コーティング処理を例にとって、中空パイプ16,43に冷風(あるいは冷水)を供給する処理方式について説明したが、コーティング処理の形態は糖衣コーティング処理には限定されず、種々の処理形態が採用可能である。例えば、チョコレートコーティング処理等にも本発明は適用可能であり、その場合には、温調媒体として、温風や温水などの加熱液(温媒)を中空パイプ16,43に供給する。
【0031】
すなわち、チョコレートコーティングの場合には、中空パイプ16,43を加温手段として使用し、ドラム内面、特に通気部6を直接加温する。これにより、コーティング処理中、ドラム内面と被処理物2との間に温度差が生じ、ドラム内面(特に通気部6)へのチョコレートの付着が抑えられる。従って、付着物の剥離による不良品発生が抑えられ、回転ドラム3の清掃回数や清掃工数、洗浄時間等も削減でき、その分、効率良くコーティング処理を実施することが可能となり、工程時間の短縮も図られる。なお、本発明は、油脂コーティング(ワックス)処理等の油脂類処理にも適用可能であり、油脂コーティング処理の徐放目的にも使用可能である。
【0032】
また、前述の実施例における各種寸法や中空パイプ16,43の本数、配置方向(ドラム水平軸方向のみならず、回転方向でも良い)、各部材の材質等や、温度・時間・量等の処理条件はあくまでも例示であり、本発明は前述の数値には限定されない。さらに、回転ドラム3は、断面形状が多角形のものには限定されず、円形断面の回転ドラムを用いたコーティング装置にも本発明は適用可能である。なお、回転ドラム3を円形断面とした場合には、中空パイプ16,43は、ドラム水平軸方向に延びる形で配置する。
【0033】
加えて、前述の実施例では、回転ドラム3が水平軸線を中心に回転する水平回転ドラム型のコーティング装置について説明したが、コーティング装置は前述の形態には限られず、回転軸線が接地面と傾斜した傾斜回転ドラムを有するタイプであっても良い。また、被処理物も前述の乳糖錠等の錠剤には限られず、菓子やガム等の食品や他の医薬品なども適用可能である。糖衣液も糖を水に溶解したシロップ以外に、それに各種薬効成分や風味、色素等を添加したものなど、種々の仕様の糖衣液が適用可能である。
【0034】
一方、前述の実施例1では、回転ドラム3を箱状の外側ケーシング7内に収容した例を示したが、図9のように、外側ケーシングとして、回転ドラム3の断面形状に沿う円弧状に形成したもの(外側ケーシング51)を用いても良い。また、前述の実施例では、本発明をジャケットレス構造のコーティング装置に適用した例を示したが、図10に示すように、回転ドラム3の外側にジャケット52を配したジャケット付構造のコーティング装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1であるコーティング装置を側面方向から見た場合の構成を示す説明図である。
【図2】図1のコーティング装置を背面方向から見た場合の構成を示す説明図である。
【図3】ロータリージョイントの構成を示す断面図である。
【図4】ロータリージョイントと駆動シャフトの接続構造を示す説明図である。
【図5】回転ドラムの構成を示す斜視図である。
【図6】通気部の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例2であるコーティング装置の構成を示す要部断面図である。
【図8】図7のコーティング装置にて使用されるパネルユニットの構成を示す斜視図である。
【図9】ジャケットレス構造のコーティング装置に本発明を適用した構成の変形例である。
【図10】ジャケット付構造のコーティング装置において回転ドラムの主胴部の各面を中空パイプにて形成した構成を示す説明図である。
【図11】従来のコーティング装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コーティング装置
2 被処理物
3 回転ドラム(処理容器)
4 主胴部
5 端壁部
6 通気部
7 外側ケーシング
7a 内部空間
8 給気部
9 排気部
11 モータ
12 仕切板
13 摺動枠
14 通気空間
15 シール板
16 中空パイプ(温調管)
21 駆動シャフト
21a 端部
22 軸受
23 スプロケット
24 チェーン
25 スプロケット
27 ロータリージョイント
28 流通孔
28a 供給孔
28b 排出孔
29 給排チューブ
29a 供給チューブ
29b 排出チューブ
31a,31b 接続口
32a,32b 開口
33 装着孔
34a,34b 円周溝
35a,35b 接続孔
36a,36b 口金
37a,37b 接続チューブ
38a,38b パッキン
41 コーティング装置
42 パネルユニット
43 中空パイプ(温調管)
44a,44b 給排集約パイプ
45a 供給口
45b 排出口
46 冷却装置
51 外側ケーシング
52 ジャケット
100 コーティング装置
101 回転ドラム
102 外側ケーシング
103 給排気ダクト
104 給排気ダクト
105 主胴部
106 通気部
G 間隙(連通部)
O 水平軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、
前記処理容器の外周面に周方向に沿って設けられ、コーティング処理に際し、該処理容器の内部と外部を通気可能な通気部とを備えてなるコーティング装置であって、
前記通気部は、中空状に形成され内部に温調媒体が流通可能な温調管と、前記温調管の間に形成され前記処理容器の内部と外部を連通させる連通部とを有することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
請求項1記載のコーティング装置において、前記温調管は、前記処理容器外周面の全周に亘って配置されることを特徴とするコーティング装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコーティング装置において、前記コーティング装置は、給排気路に接続され前記処理容器外側に該処理容器を取り囲むように配置されたジャケットを有さないジャケットレス構造であることを特徴とするコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−253910(P2008−253910A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98151(P2007−98151)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 粉体工学会・製剤と粒子設計部会 刊行物名 第23回製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集 該当ページ 第313ページ〜第316ページ 発行年月日 平成18年10月21日
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】