説明

コーティング装置

【課題】被塗布物の液切りに要する時間を短縮する。
【解決手段】被塗布物である半導体装置5が収容された貯液室17内にコーティング液を供給して半導体装置5をコーティング液中に浸漬する。この後、貯液室17からコーティング液を抜き出した後、送気路37から空気を吹き出させるとともに、多機能孔22から吸気装置31により吸気して送気路37から吹き出る空気および通気孔32から吸入される外気によって半導体装置5に付着している余分のコーティング液および貯液室17内面に付着しているコーティング液を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布タンク内のコーティング液中に被塗布物を浸漬してコーティング液を塗布するコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被塗布物を塗布タンク内に搬入し、その後、塗布タンク内にコーティング液を供給して被塗布物をコーティング液中に浸漬し、所定時間浸漬した後、コーティング液を塗布タンクから抜き出すことによって、被塗布物にコーティング液を塗布するようにしたコーティング装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−203145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のコーティング装置では、コーティング液が塗布タンクから抜き出されると、その後、被塗布物から余分のコーティング液が滴り落ちる。このコーティング液が滴り落ちている間は、被塗布物を塗布タンクから取り出すことはできない。特に、被塗布物が、隙間をもっているような場合、その隙間内に入っているコーティング液がなかなか抜け出ず、液切りに長時間を要するという問題があった。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、被塗布物の液切りに要する時間を短縮することができるコーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明では、塗布タンクに、被塗布物の外面および被塗布物の所要部位に空気を流すための給気孔が設けられているので、塗布タンクからコーティング液が排出された後、給気孔から空気を吹き出させることにより、被塗布物の外面および被塗布物の所要部位に空気を流すことができる。この吸気孔から吹き出される空気により、被塗布物の外面や、所要部位、例えば隙間内に浸入している余分のコーティング液が空気流により流されて被塗布物から除去される。
【0006】
請求項2の発明では、排液孔と排気孔とが塗布タンクの底部に形成された多機能孔によって兼用されているので、被塗布物から除去されて塗布タンク内に滴下する余分のコーティング液を速やかに塗布タンク内から排出できる。
請求項3の発明では、第1のタンクと第2のタンクとを横方向への移動によって合わせることができるので、被塗布物を塗布タンク内に収容する作業が容易となる。また、第1のタンクと第2のタンクとの間に被塗布物のコーティング液塗布不要部分を挟持できるので、被塗布物を塗布タンク内に保持するための構成が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図6はコーティング液を塗布する対象物である被塗布物の一例を示す。この被塗布物は、2個の半導体チップ1,2を2枚のヒートシンク3,4によって挟んで構成される半導体装置5である。図6は半導体チップ1,2を一方のヒートシンク3に半田付けした状態で示されており、この後、他方のヒートシンク4を半導体チップ1,2に半田付けして半導体チップ1,2を2枚のヒートシンク3,4で挟んでなる半導体装置5が構成される。
【0008】
上記ヒートシンク3,4は、それぞれリードフレーム6,7のアイランドとして構成されている。そして、一方のリードフレーム6は、ヒートシンク3と一体に端子8、リード9、このリード9をヒートシンク3に繋ぎとめるためのタイバー10などを一体に有している。他方のリードフレーム7は、端子11のみを有している。これら2個のリードフレーム6,7において、端子8,11、リード9およびタイバー10がヒートシンク3,4との接続部分で曲げられており、これにより、ヒートシンク3,4が半導体チップ1,2の両側に半田付けされたとき、端子8,11、リード9およびタイバー10が同一平面上に位置するようになっている。
【0009】
なお、半導体チップ1はリード9とボンディングワイヤ12によって接続されている。そして、最終的には、この半導体装置5は、ヒートシンク3,4の外側面を露出させるように樹脂封止され、リードフレーム6,7の余分の部分が切断されて封止樹脂からリード9、端子8,11が突出した樹脂封止型半導体装置として構成される。
【0010】
半導体装置5には、樹脂封止前の適宜の時期に、コーティング液が塗布される。図1はコーティング液の塗布を行うコーティング装置13を示している。このコーティング装置13は、コーティング液を貯留して半導体装置5を浸漬させる塗布タンク14を主体としている。この塗布タンク14は、定位置に固定された固定タンク(第1のタンク)15と、図示しない駆動機構により駆動されて固定タンク15に対して接離する方向に移動する可動タンク(第2のタンク)16からなる。
【0011】
固定タンク15と可動タンク16は、互いに突き合わされたとき、コーティング液を貯める貯液室17を構成するための凹部15aおよび16aをそれぞれ有している。固定タンク15は、可動タンク16との突合せ面に、図4に示すねじ18により締め付け固定された矩形状の枠体19を有している。この枠体19の下辺および左右両側辺には、断面凸字形の透溝20が連続して形成されており、この透溝20内に断面凸字側のパッキン21が嵌め込まれている。このパッキン21の先端部21aは透溝20から外方に突出しており、可動タンク16を固定タンク15に突き合わせたとき、このパッキン21の先端部21aが可動タンク16に接して固定タンク15と可動タンク16の突き合せ面間をシールする。
【0012】
固定タンク15と可動タンク16のうちの一方、例えば固定タンク15の下面壁部分には、多機能孔22が形成されており、この多機能孔22の一端は、凹部15aの内底部の奥側の隅角部において開口されている。この多機能孔22の他端開口には、接続管23が連結され、その先端側は二分岐されている。接続管23の一方の分岐管23aは、2個の第1の開閉弁24および第2の開閉弁25を介して貯液槽26内のコーティング液中に没入された液給排管27に接続されている。そして、第1の開閉弁24と第2の開閉弁25との間に液給排シリンダ装置(液給排手段)28が接続されている。一方、他方の分岐管23bは、第3の開閉弁29を介して気液分離タンク(気液分離手段)30に接続され、更に、この気液分離タンク30が、真空吸引機などの吸気装置(吸気手段)31に接続されている。
【0013】
上記液給排シリンダ装置28は、シリンダチューブ28a内にピストン28bを往復移動可能に収納してなるもので、第1の開閉弁24、第2の開閉弁25および第3の開閉弁29の開閉を選択することによって、貯液槽26内のコーティング液を塗布タンク14の貯液室17に供給する給液動作と、貯液室17内のコーティング液を貯液槽26内に排出する排液動作とを選択できるようになっている。
【0014】
即ち、第1の開閉弁24を閉じ第2の開閉弁25を開いた状態でピストン28bが図示しない駆動装置によって矢印A方向に移動されると、貯液槽26内のコーティング液がシリンダチューブ28a内に吸入される。そして、第1の開閉弁24を開き第2の開閉弁25および第3の開閉弁29を閉じた状態でピストン28bが図示しない駆動装置によって矢印B方向に移動されると、シリンダチューブ28b内のコーティング液が多機能孔22を通じて塗布タンク14の貯液室17内に供給される(以上、給液動作)。
【0015】
逆に、第1の開閉弁24を開き第2の開閉弁25および第3の開閉弁29を閉じた状態でピストン28bが図示しない駆動装置によって矢印A方向に移動されると、貯液室17内のコーティング液が多機能孔22からシリンダチューブ28b内に吸入される。そして、第1の開閉弁24を閉じ第2の開閉弁25を開いた状態でピストン28bが図示しない駆動装置によって矢印B方向に移動されると、シリンダチューブ28a内のコーティング液が貯液槽26内に供給される(以上、排液動作)。
【0016】
また、吸気装置31は、第1の開閉弁24を閉じ第3の開閉弁29を開くことによって貯液室17内の空気を多機能孔22から吸引する吸気動作を行うようになっている。以上のことから、多機能孔22は、コーティング液を貯液室17内に供給する給液孔、貯液室17からコーティング液を排出する排液孔および貯液室17内の空気を排出する排気孔としての機能を兼用している。
【0017】
さて、固定タンク15の上面壁部分には、複数の通気孔(給気孔)32が形成されている。これら通気孔32は、一端が凹部15aの内上面の奥面側において開口し、他端が外部に開口している。また、図2に示すように、固定タンク15の左側面壁部分および右側面壁部分には、第1の送気路(給気孔)33、第2の送気路(給気孔)34および第3の送気路(給気孔)35が形成されている。ここで、凹部15aを上下方向に3段階に分けたとき、第1の送気路33の一端は凹部15aの内側面の上段部において開口し、第2の送気路34の一端は凹部15aの内側面中段部において開口し、第3の送気路35の一端は凹部15aの内側面下段部において開口している。そして、第1の送気路33、第2の送気路34および第3の送気路35の他端は、いずれも図示しない開閉弁を介してコンプレッサなどの圧縮空気供給源に接続されている。
【0018】
一方、図3に示すように、可動タンク16の上面部を構成する上面板36には、第4の送気路(給気孔)37が形成されている。図1に示すように、この第4の送気路37は、一端側が複数に分岐されており、各分岐端が凹部16aの内上面の奥面側において開口している。そして、第4の送気路37の他端も、上記の図示しない開閉弁を介して圧縮空気供給源に接続されている。
【0019】
半導体装置5は貯液室17内に図1〜図3に示すような状態で収容されるが、第1の送気路33は、圧縮空気を半導体装置5に対して、2枚のヒートシンク3,4間の隙間38の上部位に向けて圧縮空気を横向きに吹き出し、第2の送気路34は2枚のヒートシンク3,4間の隙間38の中間部位に向けて圧縮空気を横向きに吹き出し、第3の送気路35は2枚のヒートシンク3,4間の隙間38の下部位に向けて圧縮空気を横向きに吹き出し、第4の送気路37は一方のヒートシンク3と可動タンク16の凹部16aの奥面との間に圧縮空気を下向き吹き出すようになっている。また、通気孔32は、吸気装置31が貯液室17内の空気を吸引すると、これに伴って外気を吸引して他方のヒートシンク4と固定タンク15の凹部15aの奥面との間に圧縮空気を下向き吹き出すようになっている。
【0020】
次に上記構成の作用を説明する。コンベアによってコーティング装置13の近傍に搬送されてきた半導体装置5は、図示しないロボットによって、例えばリードフレーム6のタイバー10の先端部および端子8,11の先端部が把持されて、離間状態にある固定タンク15と可動タンク16の間に搬送される。その後、可動タンク16が図示しない駆動機構によって固定タンク15に向かって移動される。
【0021】
この移動過程で、可動タンク16は、半導体装置に当接し、ロボットと共に固定タンク15側へ移動させる。このとき、所定の位置決め機構、例えば可動タンク16側に設けられた位置決めピンと半導体装置5側に設けられた位置決め孔(いずれも図示せず)との嵌合によって可動タンク16に対する半導体装置5の位置決めがなされる。そして、この位置決めされた半導体装置5のリードフレーム6のタイバー10の先端側と、リードフレーム6,7の端子8,11の先端側が固定タンク15と可動タンク16の突き合わせ面間に挟持され、その挟持部の間の部分、つまり2個の半導体チップ3を2枚のヒートシンク3,4により挟んだ形態にある半導体装置5の主部が貯液室17内に収容された状態となる。なお、パッキン21の先端部21aがタイバー10の先端側と端子8,11の先端側に倣うことによって固定タンク15と可動タンク16の突き合わせ面間のシールが維持される。
【0022】
固定タンク15に可動タンク16が突き合わされると、次に、前述の液給排シリンダ装置28による給液動作が複数回繰り返えされて貯液室17内に所定量のコーティング液が供給され、半導体装置5はこの貯液室17内のコーティング液に浸漬される。半導体装置5をコーティング液に所定時間浸漬した後、前述の液給排シリンダ装置28による排液動作が複数回繰り返されて貯液室17内のコーティング液が貯液槽26内に戻される。
【0023】
貯液室17からコーティング液が排出されたとき、貯液室17内面(凹部15a内面および凹部16a内面)には余分のコーティング液が残っているし、また半導体装置5の表面にも、余分のコーティング液が付着して残っている。特に、2面に挟まれた部分である両ヒートシンク3,4間の隙間38内には、図5にCで示すように、表面張力によって多くのコーティング液が残留している。
【0024】
その後、第1の開閉弁24が閉じ第3の開閉弁29が開き、この状態で吸気装置31が駆動される。同時に、圧縮空気供給源から第1の送気路33〜第3の送気路35および第4の送気路37に圧縮空気が供給される。なお、吸気装置31の吸気量は、第1の送気路33〜第3の送気路35および第4の送気路37から吐出される空気量よりも多くなるように定められている。
【0025】
すると、貯液室17内の空気が吸気装置31により多機能孔22を通じて吸引されることにより、貯液室17内の圧力が低下するため、外気が通気孔32から貯液室17内に吸入され、そして、その吸入空気は主としてヒートシンク4と固定タンク15の凹部15aの奥面との間の隙間を多機能孔22に向かって流れ、その流通過程で、ヒートシンク4の表面の余分のコーティング液や凹部15aの内面に付着しているコーティング液を流し落とす。
【0026】
また、第1の送気路33、第2の送気路34および第3の送気路35から吹き出る空気は、半導体装置5の内部の所要部位、つまり両ヒートシンク3,4間の隙間38のうち、半導体チップ1上に残っているコーティング液、両半導体チップ1,2間に残っているコーティング液および半導体チップ2の下方に残っているコーティング液を吹き流す。更に、第4の送気路37から吹き出る空気は、主としてヒートシンク3と可動タンク16の凹部16aの奥面との間の隙間を下方に流れてヒートシンク3の外表面の余分のコーティング液および凹部16aの内面に付着しているコーティング液を吹き流す。
【0027】
そして、通気孔32から吸入された空気、第1の送気路33〜第3の送気路35および第4の送気路37から吹き出された空気は、以上のように半導体装置5の表面に付着している余分のコーティング液および貯液室17の内面に付着しているコーティング液を吹き流しながら多機能孔22から気液分岐タンク29内に流れる。気液分離タンク30内に流入した空気は、コーティング液を搬送してくるが、気液分離タンク30でコーティング液と空気とが分離されてコーティング液は気液分離タンク30内に溜められ、空気のみが吸気装置31へと吸引されてゆく。気液分離タンク30に溜められたコーティング液は、やがて貯液槽26に戻される。
【0028】
このようにして半導体装置5および貯液室17に付着している余分のコーティング液を排除した後、可動タンク16が固定タンク15から離される。そして、コーティング液を塗布された半導体装置5は、図示しないロボットによって次工程へと搬送される。なお、ロボットは、上記半導体装置5へのコーティング液の塗布中、半導体装置5を把持したままのように思われるかもしれないが、塗布タンク14を複数設け、各塗布タンク14へ半導体装置5を搬送したら、別の塗布タンク14へ塗布後の半導体装置5を搬送したり、別の塗布タンク14で塗布を終えた半導体装置5を次工程へ搬送したりするといった動作を順次行わせることが可能となる。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、コーティング液を半導体装置5に塗布した後、半導体装置5および貯液室17内の余分のコーティング液を、第1の送気路33〜第4の送気路37から噴出される圧縮空気や通気孔32から貯液室17内に吸入される外気によって強制的に排除することができるので、半導体装置5の液切り、貯液室17の液除去を短時間で行うことができる。
【0030】
また、液切りされて貯液室17の底部に流れ出たコーティング液は、多機能孔22からの流れ出る空気流に搬送されて速やかに排除されるので、可動タンク16を固定タンク15から速やかに離反させることができ、しかも、離反させたとき、コーティング液が凹部15a,16aから流れ出ることがない。
【0031】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
通気孔32に代えて圧縮空気を吹き出す送気路としても良い。
塗布タンク14は、必ずしも二分割型とする必要はない。
固定タンク15も可動タンク16と同様に移動可能に構成しても良い。
被塗布物は半導体装置5に限らない。
第1の送気路33〜第3の送気路35から吹き出される空気は、被塗布物によっては有底の凹部内に浸入している余分のコーティング液を除去するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、配管系統と共に示すコーティング装置の断面正面図
【図2】図1のア−ア線に沿う固定タンクの縦断側面図
【図3】図1のイ−イ線に沿う可動タンクの縦断側面図
【図4】固定タンクの分解斜視図
【図5】半導体装置の縦断面図
【図6】半導体装置の分解斜視図
【符号の説明】
【0033】
図面中、5は半導体装置(被塗布物)、13はコーティング装置、14は塗布タンク、15は固定タンク(第1のタンク)、16は可動タンク(第2のタンク)、17は貯液室、21はパッキン、22は多機能孔、26は貯液槽、28は液給排シリンダ装置、30は気液分離タンク、31は吸気装置、32は通気孔(給気孔)、33〜35は第1〜第3の送気路(給気孔)、37は第4の送気路(給気孔)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物が収容された塗布タンク内にコーティング液を供給して前記被塗布物を前記コーティング液中に浸漬し、その後、前記塗布タンク内から前記コーティング液を排出することにより、前記被塗布物にコーティング液を塗布するコーティング装置において、
前記塗布タンクの底部に形成され、前記被塗布物を浸漬した後の前記コーティング液を前記塗布タンクから排出する排液孔と、
前記塗布タンクに形成され、前記塗布タンク内から前記コーティング液が排出された後に、前記被塗布物の外面および前記被塗布物の所要部位に空気を流すための給気孔と、
前記塗布タンクの底部に形成され、前記給気孔から前記塗布タンク内に吹き出された空気を排出する排気孔と、
を備えていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記排液孔と前記排気孔は、前記塗布タンクの底部に形成された多機能孔によって兼用されていることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記塗布タンクは、横方向に分離可能な第1のタンクと第2のタンクとからなることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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