ゴキブリ捕獲器
【課題】ゴキブリの一般的な生息環境で使用されるゴキブリ捕獲器において、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めてゴキブリを効率良く駆除できるようにする。
【解決手段】捕獲用空間Rを有する容器2の壁部6に、大型侵入口10、15と小型侵入口20、25とを設ける。大型侵入口10、15の上下方向の寸法を、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリが侵入し易い範囲である23mm以上45mm以下に設定する。小型侵入口20、25の上下方向の寸法を、上記3種類のゴキブリが侵入し易い範囲である8mm以上17mm以下に設定する。
【解決手段】捕獲用空間Rを有する容器2の壁部6に、大型侵入口10、15と小型侵入口20、25とを設ける。大型侵入口10、15の上下方向の寸法を、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリが侵入し易い範囲である23mm以上45mm以下に設定する。小型侵入口20、25の上下方向の寸法を、上記3種類のゴキブリが侵入し易い範囲である8mm以上17mm以下に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリを捕獲し駆除する際に使用されるゴキブリ捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住居や飲食店等に生息するゴキブリは、人に不快感を与えるとともに病原菌等の媒体となることもある害虫なので、例えば特許文献1、2に開示されているようなゴキブリ捕獲器を使用して捕獲し駆除することが行われている。
【0003】
特許文献1、2のゴキブリ捕獲器は、ゴキブリが持っている習性の1つである、狭く暗い所を好むことを利用して捕獲するように構成されたものである。具体的には、特許文献1のゴキブリ捕獲器は、捕獲用空間を有する箱形の容器を備えている。この容器の天井部は底壁部に対し傾斜している。容器の周壁部には、天井部の低い側と高い側とにゴキブリ侵入用の侵入口がそれぞれ設けられている。天井部の低い側に位置する侵入口の上下方向の寸法は、高い側に位置する侵入口の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0004】
また、特許文献2のゴキブリ捕獲器の容器にも、2つの侵入口が設けられており、一方の侵入口の上下方向の寸法は、他方の侵入口の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【特許文献1】実公昭60−6207号公報
【特許文献2】特開2002−155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、住居や飲食店等の一般的な生息環境に生息しているゴキブリは、通常、1種類だけではなく、体躯の互いに異なる複数種が混在している。しかも、これら各種のゴキブリにはそれぞれに雄と雌とがいるとともに、雌の中にも卵鞘を持ったものがいる。そして、種類の異なるゴキブリ間ではその習性において異なる部分があるとともに、雄、雌及び卵鞘を持ったものの間でもその習性において異なる部分がある。
【0006】
このように一般的な生息環境には習性が異なったゴキブリが混在していることに対し、特許文献1、2のように1つの容器に形状が異なる2種類の侵入口を設けたゴキブリ捕獲器を使用することで、上下方向の寸法が比較的短い侵入口から侵入し易いゴキブリと、上下方向の寸法が比較的長い侵入口から侵入し易いゴキブリとの捕獲率を共に高めることが考えられる。しかしながら、ゴキブリは、著しく発達した長い触角を持っているとともに警戒心が極めて強く、周囲の状況を敏感に察知しようとするものなので、容器に単に形状が異なる2つの侵入口を形成しただけでは、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めるのは困難である。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴキブリの一般的な生息環境で使用されるゴキブリ捕獲器において、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めてゴキブリを効率良く駆除できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者がゴキブリ侵入用の侵入口の形状について研究し検討する過程で、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持ったものの間で捕獲率を高めるのに利用可能な略共通した習性が存在することを見出し、容器の複数の侵入口の形状をこの習性に基づいて設定した。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、捕獲用空間を有する容器と、上記容器の壁部に設けられ、上記捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第1侵入口及び第2侵入口とを備え、上記第1侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、上記第2侵入口の上下方向の寸法が、23mm以上45mm以下に設定されている構成とする。
【0010】
すなわち、一般的な生息環境に生息する主要な3種類のゴキブリである、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリを対象にして、容器の侵入口の上下方向の寸法を変化させた場合の捕獲率の増減を表す図12の捕獲実験結果より明らかなように、侵入口の上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲とで3種類のゴキブリの捕獲率が顕著に高まり、これら2つの範囲を外れると捕獲率が低下する。この捕獲実験結果には、チャバネゴキブリに関しては、図9に示すように、雄、雌及び卵鞘をもった雌の捕獲率が反映されており、クロゴキブリ及びワモンゴキブリに関しては、図10及び図11に示すように、雄及び雌の捕獲率が反映されている。
【0011】
上記侵入口の上下方向の寸法が8mmよりも短い場合に捕獲率が低下するのは、各ゴキブリが侵入口に侵入する前に触角で該侵入口の上縁部と下縁部とに触れた際に自分の体躯に対して侵入口が狭すぎると察知して警戒するためである。また、上記侵入口の上下方向の寸法が45mmよりも長い場合に捕獲率が低下するのは、各ゴキブリの触角が侵入口の上縁部に届きにくくなり、該ゴキブリが侵入口を開口部として捉えずに広い空間が広がっていると判断してその方向には進まなくなるからである。また、侵入口の上下方向の寸法が17mmよりも長く23mmよりも短い範囲にある場合には、殆どのゴキブリは触角で侵入口の大きさを把握可能であるが、この範囲にある侵入口に対しては殆どのゴキブリが強く警戒して侵入口へ入りたがらなくなる。つまり、上記捕獲実験結果より、チャバネゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持った雌と、クロゴキブリ及びワモンゴキブリの各々の雄及び雌とは、上記した略共通する習性を有していることが見出された。
【0012】
従って、1つの容器に、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の第1侵入口と、23mm以上45mm以下の第2侵入口とを設けることで、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めることが可能になる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、容器の壁部には、複数の第1侵入口が互いに離れて設けられている構成とする。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、容器の壁部には、複数の第2侵入口が互いに離れて設けられている構成とする。
【0015】
上記請求項2、3の構成によれば、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口が容器に複数設けられることになる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、第1侵入口及び第2侵入口は、容器の壁部に上下方向に開口幅を有するように設けられ、上記容器の壁部における第1侵入口の上方には、捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第3侵入口が設けられている構成とする。
【0017】
この構成によれば、上下方向の寸法が第2侵入口よりも短い第1侵入口の上方に、第3侵入口を設けたので、容器を上下方向にコンパクトにしながら、侵入口の数を増やすことが可能になる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、第3侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定されている構成とする。
【0019】
この構成によれば、第3侵入口の形状を高い捕獲率が得られる形状にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、捕獲用空間を有する容器に、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下に設定された第1侵入口と、上下方向の寸法が23mm以上45mm以下に設定された第2侵入口とを設けたので、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持った雌の間で略共通した習性を利用して捕獲率を高めることができる。これにより、ゴキブリの種類や性別等によらずゴキブリを効率良く捕獲して駆除できる。
【0021】
請求項2、3の発明によれば、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口を容器に複数設けることができるので、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、上下方向の寸法が第2侵入口よりも短い第1侵入口の上方に、第3侵入口を設けたので、容器をコンパクトにしながら侵入口の数を増やして捕獲率を高めることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、第3侵入口の上下方向の寸法を8mm以上17mm以下に設定したので、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器1を示すものである。このゴキブリ捕獲器1は、所定の形状に切断されたボール紙を折り曲げて構成された大略矩形箱状の容器2を備えており、この容器2の内部空間がゴキブリ捕獲用空間Rである。尚、容器2の材料としては、ボール紙以外にも例えば樹脂板等を用いることが可能である。
【0026】
上記容器2の長手方向一側の約1/3の部分は、図3にも示すように、上下方向の寸法が他の部分に比べて短く設定された低天井部3とされ、容器2の低天井部3以外の部分は、上下方向の寸法が上記低天井部3よりも高く設定された高天井部4とされている。これら低天井部3と高天井部4とによって容器2の上部に段差が形成されている。
【0027】
上記容器2の底壁部5は、容器2の長手方向に長い長方形の平板状に形成されている。この底壁部5には、周知の誘引剤や粘着剤が塗布されたシート(図示せず)が貼り付けられている。底壁部5の周縁部には、上方へ延びる周壁部6が連なっている。この周壁部6における両側壁部分6aは、上記高天井部4及び低天井部3に対応するように、高天井部4側の上下方向の寸法が長く設定され、低天井部3側の上下方向の寸法が短く設定されている。これら両側壁部分6aは、図3及び図4に示すように、上側へ行くほど容器2の中心部に近づく方向に傾斜している。図1及び図2に示すように、両側壁部分6aの上縁部には、高天井部4側に高天井部側上壁部8が連なっており、低天井部3側に低天井部側上壁部9が連なっている。これら高天井部側上壁部8及び低天井部側上壁部9は、上記底壁部5と略平行に延びている。各図中の符号7は、ボール紙の端部同士を係合させるための係合部である。
【0028】
上記周壁部6における高天井部4側の端壁部分には、図5にも示すように、略全体に亘ってゴキブリ侵入用の大型端部侵入口10が形成されている。この大型端部侵入口10の上縁部は高天井部側上壁部8の縁部で構成され、下縁部は、底壁部5の縁部で構成されている。
【0029】
上記高天井部側上壁部8の大型端部侵入口10側には、図1及び図6に示すように、底壁部5の縁部よりも容器2の外方へ延出した第1延出部8aが設けられている。このため、大型端部侵入口10の上縁部は、下縁部よりも容器2の外方へ離れている。また、周壁部6の両側壁部分6aは、上記第1延出部8aに対応して容器2の外方へ延びている。この両側壁部分6aの縁部は、第1延出部8aの縁部と底壁部5の縁部とを結ぶように傾斜している。
【0030】
上記大型端部侵入口10の上下方向の寸法H1(図1及び図5に示す)、即ち、大型端部侵入口10の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、30mmに設定されている。大型端部侵入口10の下縁部の長さ寸法Wa1(図5に示す)は、90mmに設定され、上縁部の長さ寸法Wb1(図5に示す)は、40mmに設定されている。
【0031】
また、図1及び図5に示すように、大型端部侵入口10の下縁部には、容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部11が連続している。大型端部侵入口10の両側縁部の下部には、容器2の内方へ向けて折り返された側部折り返し部12が連続している。この側部折り返し部12は、上記下部折り返し部11の両端部に連続している。
【0032】
図1及び図2に示すように、上記周壁部6の両側壁部分6aには、同じ形状の大型側部侵入口15がそれぞれ形成されている。これら大型側部侵入口15は、上側へ行くほど開口幅が広がるように形成されている。高天井部側上壁部8の大型側部侵入口15に対応する部位には、容器2の外方へ向けて延出する側部延出部8bがそれぞれ形成されている。大型側部侵入口15の下縁部は、底壁部5の側縁部で構成されている。大型側部侵入口15の下縁部には、上記容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部14が連続している。大型側部侵入口15の上縁部は、側部延出部8bの外縁部で構成されている。
【0033】
この大型側部侵入口15の上下方向の寸法H2(図1及び図3に示す)、即ち、大型側部侵入口15の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、上記大型端部侵入口10の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、大型側部侵入口15の下縁部の長さ寸法W2(図3に示す)は、70mmに設定されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、上記周壁部6の低天井部3側の端壁部分6cは、上側へ行くほど容器2の中心部に近づくように傾斜している。この端壁部分6cに小型端部侵入口20が形成されている。上記低天井部側上壁部9の小型端部侵入口20に対応する部分には、容器2の外方へ向けて延出した延出部9aが形成されている。小型端部侵入口20の下縁部は、底壁部5の端縁部で構成されている。この小型端部侵入口20の下縁部には、容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部23が連続している。小型端部侵入口20の上縁部は、上記延出部9aの外縁部で構成されている。
【0035】
この小型端部侵入口20の上下方向の寸法H3(図2及び図4に示す)、即ち、小型端部侵入口20の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、15mmに設定されている。小型端部侵入口20の上縁部及び下縁部の長さ寸法W3(図4に示す)は、60mmに設定されている。
【0036】
図2及び図4に示すように、上記周壁部6における小型端部侵入口20の上方には、小型上部侵入口24が形成されている。この小型上部侵入口24は、高天井部4と低天井部5との境界部分に位置している。高天井部側上壁部8の小型上部侵入口24側の縁部には、容器2の外方へ向かって延出した第2延出部8cが設けられている。この小型上部侵入口24の上下方向の寸法H4(図2及び図4に示す)は、上記小型端部侵入口20の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、小型上部侵入口24の下縁部の長さ寸法W4(図4に示す)は、60mmに設定されている。
【0037】
上記周壁部6の両側壁部分6aには、図2及び図3に示すように、同じ形状の小型側部侵入口25がそれぞれ形成されている。小型側部侵入口25の上縁部は、低天井部側上壁部9の側縁部で構成されている。小型側部侵入口25の下縁部は底壁部5の側縁部で構成されている。小型側部侵入口25の下縁部には、上記容器2の内方へ向けて延びる折り返し部26が連続している。この小型側部侵入口25の上下方向の寸法H5(図2及び図3に示す)、即ち、小型側部侵入口25の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、上記小型端部侵入口20の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、小型側部侵入口25の下縁部の長さ寸法W5(図3に示す)は、50mmに設定されている。
【0038】
上記大型端部侵入口10、大型側部侵入口15、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H1〜H5を上記のように設定しているのは、以下に説明するゴキブリの捕獲実験結果に基づいている。
【0039】
この捕獲実験で使用した試験容器Sは、該試験容器Sの外形状による捕獲率への影響を排除するために、図7に示すような単純な直方体としている。試験容器Sの長手方向の寸法Cは80mmに設定され、幅方向の寸法Dは40mmに設定されている。該試験容器Sの幅方向に延びる側壁部にゴキブリ侵入用の侵入口Aが形成されている。この侵入口Aの幅方向の寸法は、試験容器Sの幅方向の寸法Dと同じ40mmに固定し、上下方向の寸法Eを5mmから50mmの範囲で変更する。具体的には、侵入口Aの上下方向の寸法Eが、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mmに設定された試験容器Sを予め用意した。全ての試験容器S内には、一般にゴキブリ捕獲用として用いられている誘引剤及び粘着剤が塗布されたシート(図示せず)が貼り付けられている。
【0040】
捕獲試験を行う試験フィールドFは、図8に示すように、略正方形の平面で広さは2.3m2である。上記試験容器Sは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが異なる2つを1組にして、試験フィールドFの4隅に1組ずつ配置する。また、供試虫Kは、一般的なゴキブリの生息場所である住居や飲食店等において大部分を占める3種類とした。具体的には、チャバネゴキブリの雄10匹、雌10匹及び卵鞘を持った雌10匹と、クロゴキブリの雄10匹及び雌10匹と、ワモンゴキブリの雄10匹及び雌10匹の3種類である。これらゴキブリを試験フィールドFに一斉に放し、24時間経過後に各試験容器Sで捕獲したゴキブリの数を確認する。これを試験容器Sの組み合わせを変えて複数回行う。
【0041】
図9は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、チャバネゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。尚、この明細書で用いている捕獲率とは、試験容器Sで捕獲したゴキブリの数を試験開始時に放したゴキブリの数で除してから100を乗じた値である。また、試験容器Sの上下方向の寸法Eは、上記のように所定間隔をあけて設定しているため、その所定間隔内にある寸法では試験を実施していないが、捕獲率の変化は曲線に示すようになる。また、雄、雌及び卵鞘を持った雌の捕獲率をまとめた結果を総合として表している。
【0042】
この図9に明らかなように、雄、雌及び卵鞘をもっている雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが7mm以上16mm以下の範囲と、27mm以上45mm以下の範囲である。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが、5mmよりも長く7mmよりも短い範囲と、16mmよりも長く27mmよりも短い範囲と、45mmよりも長い範囲である。このように、チャバネゴキブリの捕獲率は、雄、雌及び卵鞘をもっている雌の間で似たような値になる。
【0043】
図10は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、クロゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図10に明らかなように、雄及び雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが12mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲である。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが5mmよりも長く12mmよりも短い範囲と、17mmよりも長く23mmよりも短い範囲と、45mmよりも長い範囲である。このように、クロゴキブリの捕獲率も、雄及び雌の間で似たような値になる。
【0044】
図11は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、ワモンゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図11に明らかなように、雄及び雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが23mm以上40mm以下の範囲である。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが13mm以上17mm以下の範囲では雄の捕獲率が高くなっている。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが5mmよりも長く13mmよりも短い範囲と、17mmよりも長く23mmよりも短い範囲と、40mmよりも長い範囲である。このように、ワモンゴキブリの捕獲率も、雄及び雌の間で似たような値になる。尚、侵入口Aの上下方向の寸法Eが30mmにあるときにクロゴキブリの雄の捕獲率が低下しているのは、実験上の誤差によるものと考えられる。また、上記クロゴキブリ及びワモンゴキブリの総合とは、雄及び雌の捕獲率をまとめたものである。
【0045】
チャバネゴキブリの総合の捕獲率と、クロゴキブリの総合の捕獲率と、ワモンゴキブリの総合の捕獲率とを示す図12に明らかなように、3種類のゴキブリの捕獲率は、侵入口Aの上下方向の寸法Eが8mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲とで顕著に高まり、これら2つの範囲を外れると捕獲率が低下する。
【0046】
上記侵入口Aの上下方向の寸法Eが8mmよりも短い場合には、各ゴキブリが侵入口Aに侵入する前に触角で該侵入口Aの上縁部と下縁部とに触れた際に自分の体躯に対して侵入口Aが狭すぎると察知して警戒するため、捕獲率が低下する。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが45mmよりも長い場合には、各ゴキブリの触角が侵入口Aの上縁部に届きにくくなり、該ゴキブリが侵入口Aを開口部として捉えずに広い空間が広がっていると判断してその方向には進まなくなるため、捕獲率が低下する。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが17mmよりも長く23mmよりも短い範囲にある場合には、殆どのゴキブリは触角で侵入口Aの大きさを把握可能であるが、上下方向の寸法Eがこの範囲にある侵入口Aに対しては殆どのゴキブリが強く警戒して侵入口Aへ入りたがらなくなるため、捕獲率が低下する。つまり、上記捕獲実験結果より、3種類のゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持ったものは、上記した略共通する習性を有していることが見出された。
【0047】
上記した侵入口Aの上下方向の寸法Eを変更した場合の実験結果に基づいて、この実施形態では、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法を30mmに設定し、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法を15mmに設定している。
【0048】
また、図13は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを15mmに固定して幅方向の寸法Dを変化させた場合に捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この実験の条件は、上記した条件と同じであるが、供試虫Kは、チャバネゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持った雌と、クロゴキブリの雄及び雌としている。また、試験容器Sについては、幅方向の寸法Dのみを30mmから100mmの範囲で変更する。具体的には、侵入口Aの幅方向の寸法Dが、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mmに設定された試験容器Sを用意した。この図13に明らかなように、侵入口Aの幅方向の寸法Dが30mmよりも狭いと、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの両方で捕獲率が略0になる。
【0049】
また、図14は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを30mmに固定して幅方向の寸法Dを変化させた場合に捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図14に明らかなように、侵入口Aの幅方向の寸法Dが60mmの場合に、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率が共に低下し、70mm及び90mmの場合に、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率が共に高まる。
【0050】
上記侵入口Aの上下方向の寸法を30mmに固定した場合の実験結果に基づいて、この実施形態では、大型端部侵入口10の下縁部の長さ寸法Wa1を90mmに設定し、大型側部侵入口15の下縁部の長さ寸法W2を70mmに設定している。また、上記侵入口Aの上下方向の高さを15mmで固定した場合の実験結果に基づいて、小型端部侵入口20及び小型上部侵入口24の下縁部の長さ寸法W3、W4を60mmに設定し、小型側部侵入口25の下縁部の長さ寸法W5を50mmに設定している。
【0051】
上記実施形態では、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H3、H4、H5を15mmに設定しているが、これら侵入口20、24、25の上下方向の寸法H3、H4、H5は、15mmに限られるものではなく、上記した8mm以上17mm以下の範囲であればよい。また、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法H1、H2を30mmに設定しているが、これら侵入口10、15の上下方向の寸法H1、H2は、30mmに限られるものではなく、上記した23mm以上45mm以下の範囲であればよい。
【0052】
以上説明したように、この実施形態に係るゴキブリ捕獲器1によれば、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H3、H4、H5を8mm以上17mm以下の範囲で設定し、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法H1、H2を23mm以上45mm以下の範囲で設定したので、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持った雌の間で略共通した習性を利用して捕獲率を高めることができる。これにより、ゴキブリの種類や性別等によらずゴキブリを効率良く捕獲して駆除できる。
【0053】
また、小型端部侵入口20の上方に小型上部侵入口24を設けた場合には、以下に示す実験結果から明らかなように、ゴキブリの捕獲率が向上する。この捕獲実験では、図15(a)〜(c)にそれぞれ示す試験容器S1〜S3を用意し、該試験容器S1〜S3を図16に示すように試験フィールドF1〜F3の隅近傍に配置する。これら試験容器S1〜S3の長手方向の寸法は、全て同じ100mmに設定されている。試験容器S1には、長手方向の両端面に侵入口Aがそれぞれ形成されており、これら2つの侵入口Aの上下方向の寸法は15mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。また、試験容器S2にも、長手方向の両端面に侵入口Aがそれぞれ形成されており、これら2つの侵入口Aの上下方向の寸法は、30mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。また、試験容器S3には、上記小型端部侵入口20及び小型上部侵入口24にそれぞれ対応する侵入口A1及びA2が形成され、さらに、上記大型端部侵入口10に対応する侵入口A3が形成されている。侵入口A1及びA2は、同じ形状であり、上下方向の寸法は、15mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。侵入口A3の上下方向の寸法は、30mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。一方、試験フィールドF1〜F3は同じ形状であり、1.8m×1.3mの広さとされている。この捕獲実験では、上記試験フィールドF1〜F3の略中心部で供試虫を放し所定時間放置しておく。1回の捕獲実験で用いる供試虫は、チャバネゴキブリの雄4匹、雌4匹及び卵鞘を持った雌4匹と、クロゴキブリの雄4匹及び雌4匹と、ワモンゴキブリの雄3匹及び雌3匹である。捕獲実験は3回行い、図17に示す実験結果が得られた。この実験結果によれば、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリの捕獲数が、試験容器S3で最も多いことが分かる。このことより、1つの試験容器S3に、上下方向に2つの小型侵入口A1、A2を並べて形成し、さらに大型の侵入口A3を形成することで、ゴキブリの捕獲率が向上するといえる。
【0054】
つまり、上記実施形態の容器1のように、上下方向の寸法が大型端部侵入口10よりも短い小型端部侵入口20の上方に、小型上部侵入口24を形成することで、容器2をコンパクトにしながら、ゴキブリの捕獲率を高めることができる。
【0055】
また、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25を互いに離して設けることにより、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口が容器2に複数設けられることになり、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。また、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15を互いに離して設けることにより、同様に、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【0056】
尚、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の範囲にある侵入口は1つであってもよいし、また、上下方向の寸法が23mm以上45mm以下の範囲にある侵入口も1つであってもよい。また、これら侵入口の位置は任意に設定することができる。
【0057】
また、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法は、図12に示す実験結果から明らかなように、下限値を12mm以上とすることが捕獲率を向上させる点から好ましい。さらに、大型端部侵入口10、大型側部侵入口15の上下方向の寸法は、同様に、25mm以上40mm以下に設定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係るゴキブリ捕獲器は、例えば住居や飲食店等の一般的なゴキブリの生息環境で使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器を高天井部側から見た斜視図である。
【図2】ゴキブリ捕獲器を低天井部側から見た斜視図である。
【図3】ゴキブリ捕獲器の側面図である。
【図4】ゴキブリ捕獲器を小型端部侵入口側から見た図である。
【図5】ゴキブリ捕獲器を大型端部侵入口側から見た図である。
【図6】ゴキブリ捕獲器の平面図である。
【図7】試験容器の斜視図である。
【図8】試験フィールドの平面図である。
【図9】侵入口の上下方向の寸法とチャバネゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図10】侵入口の上下方向の寸法とクロゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図11】侵入口の上下方向の寸法とワモンゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図12】侵入口の上下方向の寸法と3種類のゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図13】侵入口の上下方向の寸法を15mmに固定した場合、侵入口の幅方向の寸法とチャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図14】侵入口の上下方向の寸法を30mmに固定した場合の図13相当図である。
【図15】(a)は試験容器S1の斜視図であり、(b)は試験容器S2の斜視図であり、(c)は試験容器S3の斜視図である。
【図16】試験フィールドF1〜F3の平面図である。
【図17】捕獲実験の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0060】
1 ゴキブリ捕獲器
2 容器
5 底壁部
6 周壁部
10 大型端部侵入口(ゴキブリ侵入用の第2侵入口)
15 大型側部侵入口(ゴキブリ侵入用の第2侵入口)
20 小型端部侵入口(ゴキブリ侵入用の第1侵入口)
24 小型上部侵入口(ゴキブリ侵入用の第3侵入口)
25 小型側部侵入口(ゴキブリ侵入用の第1侵入口)
R 捕獲用空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリを捕獲し駆除する際に使用されるゴキブリ捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住居や飲食店等に生息するゴキブリは、人に不快感を与えるとともに病原菌等の媒体となることもある害虫なので、例えば特許文献1、2に開示されているようなゴキブリ捕獲器を使用して捕獲し駆除することが行われている。
【0003】
特許文献1、2のゴキブリ捕獲器は、ゴキブリが持っている習性の1つである、狭く暗い所を好むことを利用して捕獲するように構成されたものである。具体的には、特許文献1のゴキブリ捕獲器は、捕獲用空間を有する箱形の容器を備えている。この容器の天井部は底壁部に対し傾斜している。容器の周壁部には、天井部の低い側と高い側とにゴキブリ侵入用の侵入口がそれぞれ設けられている。天井部の低い側に位置する侵入口の上下方向の寸法は、高い側に位置する侵入口の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0004】
また、特許文献2のゴキブリ捕獲器の容器にも、2つの侵入口が設けられており、一方の侵入口の上下方向の寸法は、他方の侵入口の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【特許文献1】実公昭60−6207号公報
【特許文献2】特開2002−155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、住居や飲食店等の一般的な生息環境に生息しているゴキブリは、通常、1種類だけではなく、体躯の互いに異なる複数種が混在している。しかも、これら各種のゴキブリにはそれぞれに雄と雌とがいるとともに、雌の中にも卵鞘を持ったものがいる。そして、種類の異なるゴキブリ間ではその習性において異なる部分があるとともに、雄、雌及び卵鞘を持ったものの間でもその習性において異なる部分がある。
【0006】
このように一般的な生息環境には習性が異なったゴキブリが混在していることに対し、特許文献1、2のように1つの容器に形状が異なる2種類の侵入口を設けたゴキブリ捕獲器を使用することで、上下方向の寸法が比較的短い侵入口から侵入し易いゴキブリと、上下方向の寸法が比較的長い侵入口から侵入し易いゴキブリとの捕獲率を共に高めることが考えられる。しかしながら、ゴキブリは、著しく発達した長い触角を持っているとともに警戒心が極めて強く、周囲の状況を敏感に察知しようとするものなので、容器に単に形状が異なる2つの侵入口を形成しただけでは、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めるのは困難である。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴキブリの一般的な生息環境で使用されるゴキブリ捕獲器において、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めてゴキブリを効率良く駆除できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者がゴキブリ侵入用の侵入口の形状について研究し検討する過程で、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持ったものの間で捕獲率を高めるのに利用可能な略共通した習性が存在することを見出し、容器の複数の侵入口の形状をこの習性に基づいて設定した。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、捕獲用空間を有する容器と、上記容器の壁部に設けられ、上記捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第1侵入口及び第2侵入口とを備え、上記第1侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、上記第2侵入口の上下方向の寸法が、23mm以上45mm以下に設定されている構成とする。
【0010】
すなわち、一般的な生息環境に生息する主要な3種類のゴキブリである、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリを対象にして、容器の侵入口の上下方向の寸法を変化させた場合の捕獲率の増減を表す図12の捕獲実験結果より明らかなように、侵入口の上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲とで3種類のゴキブリの捕獲率が顕著に高まり、これら2つの範囲を外れると捕獲率が低下する。この捕獲実験結果には、チャバネゴキブリに関しては、図9に示すように、雄、雌及び卵鞘をもった雌の捕獲率が反映されており、クロゴキブリ及びワモンゴキブリに関しては、図10及び図11に示すように、雄及び雌の捕獲率が反映されている。
【0011】
上記侵入口の上下方向の寸法が8mmよりも短い場合に捕獲率が低下するのは、各ゴキブリが侵入口に侵入する前に触角で該侵入口の上縁部と下縁部とに触れた際に自分の体躯に対して侵入口が狭すぎると察知して警戒するためである。また、上記侵入口の上下方向の寸法が45mmよりも長い場合に捕獲率が低下するのは、各ゴキブリの触角が侵入口の上縁部に届きにくくなり、該ゴキブリが侵入口を開口部として捉えずに広い空間が広がっていると判断してその方向には進まなくなるからである。また、侵入口の上下方向の寸法が17mmよりも長く23mmよりも短い範囲にある場合には、殆どのゴキブリは触角で侵入口の大きさを把握可能であるが、この範囲にある侵入口に対しては殆どのゴキブリが強く警戒して侵入口へ入りたがらなくなる。つまり、上記捕獲実験結果より、チャバネゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持った雌と、クロゴキブリ及びワモンゴキブリの各々の雄及び雌とは、上記した略共通する習性を有していることが見出された。
【0012】
従って、1つの容器に、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の第1侵入口と、23mm以上45mm以下の第2侵入口とを設けることで、ゴキブリの種類や性別等によらず捕獲率を高めることが可能になる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、容器の壁部には、複数の第1侵入口が互いに離れて設けられている構成とする。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、容器の壁部には、複数の第2侵入口が互いに離れて設けられている構成とする。
【0015】
上記請求項2、3の構成によれば、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口が容器に複数設けられることになる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、第1侵入口及び第2侵入口は、容器の壁部に上下方向に開口幅を有するように設けられ、上記容器の壁部における第1侵入口の上方には、捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第3侵入口が設けられている構成とする。
【0017】
この構成によれば、上下方向の寸法が第2侵入口よりも短い第1侵入口の上方に、第3侵入口を設けたので、容器を上下方向にコンパクトにしながら、侵入口の数を増やすことが可能になる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、第3侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定されている構成とする。
【0019】
この構成によれば、第3侵入口の形状を高い捕獲率が得られる形状にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、捕獲用空間を有する容器に、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下に設定された第1侵入口と、上下方向の寸法が23mm以上45mm以下に設定された第2侵入口とを設けたので、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持った雌の間で略共通した習性を利用して捕獲率を高めることができる。これにより、ゴキブリの種類や性別等によらずゴキブリを効率良く捕獲して駆除できる。
【0021】
請求項2、3の発明によれば、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口を容器に複数設けることができるので、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、上下方向の寸法が第2侵入口よりも短い第1侵入口の上方に、第3侵入口を設けたので、容器をコンパクトにしながら侵入口の数を増やして捕獲率を高めることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、第3侵入口の上下方向の寸法を8mm以上17mm以下に設定したので、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器1を示すものである。このゴキブリ捕獲器1は、所定の形状に切断されたボール紙を折り曲げて構成された大略矩形箱状の容器2を備えており、この容器2の内部空間がゴキブリ捕獲用空間Rである。尚、容器2の材料としては、ボール紙以外にも例えば樹脂板等を用いることが可能である。
【0026】
上記容器2の長手方向一側の約1/3の部分は、図3にも示すように、上下方向の寸法が他の部分に比べて短く設定された低天井部3とされ、容器2の低天井部3以外の部分は、上下方向の寸法が上記低天井部3よりも高く設定された高天井部4とされている。これら低天井部3と高天井部4とによって容器2の上部に段差が形成されている。
【0027】
上記容器2の底壁部5は、容器2の長手方向に長い長方形の平板状に形成されている。この底壁部5には、周知の誘引剤や粘着剤が塗布されたシート(図示せず)が貼り付けられている。底壁部5の周縁部には、上方へ延びる周壁部6が連なっている。この周壁部6における両側壁部分6aは、上記高天井部4及び低天井部3に対応するように、高天井部4側の上下方向の寸法が長く設定され、低天井部3側の上下方向の寸法が短く設定されている。これら両側壁部分6aは、図3及び図4に示すように、上側へ行くほど容器2の中心部に近づく方向に傾斜している。図1及び図2に示すように、両側壁部分6aの上縁部には、高天井部4側に高天井部側上壁部8が連なっており、低天井部3側に低天井部側上壁部9が連なっている。これら高天井部側上壁部8及び低天井部側上壁部9は、上記底壁部5と略平行に延びている。各図中の符号7は、ボール紙の端部同士を係合させるための係合部である。
【0028】
上記周壁部6における高天井部4側の端壁部分には、図5にも示すように、略全体に亘ってゴキブリ侵入用の大型端部侵入口10が形成されている。この大型端部侵入口10の上縁部は高天井部側上壁部8の縁部で構成され、下縁部は、底壁部5の縁部で構成されている。
【0029】
上記高天井部側上壁部8の大型端部侵入口10側には、図1及び図6に示すように、底壁部5の縁部よりも容器2の外方へ延出した第1延出部8aが設けられている。このため、大型端部侵入口10の上縁部は、下縁部よりも容器2の外方へ離れている。また、周壁部6の両側壁部分6aは、上記第1延出部8aに対応して容器2の外方へ延びている。この両側壁部分6aの縁部は、第1延出部8aの縁部と底壁部5の縁部とを結ぶように傾斜している。
【0030】
上記大型端部侵入口10の上下方向の寸法H1(図1及び図5に示す)、即ち、大型端部侵入口10の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、30mmに設定されている。大型端部侵入口10の下縁部の長さ寸法Wa1(図5に示す)は、90mmに設定され、上縁部の長さ寸法Wb1(図5に示す)は、40mmに設定されている。
【0031】
また、図1及び図5に示すように、大型端部侵入口10の下縁部には、容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部11が連続している。大型端部侵入口10の両側縁部の下部には、容器2の内方へ向けて折り返された側部折り返し部12が連続している。この側部折り返し部12は、上記下部折り返し部11の両端部に連続している。
【0032】
図1及び図2に示すように、上記周壁部6の両側壁部分6aには、同じ形状の大型側部侵入口15がそれぞれ形成されている。これら大型側部侵入口15は、上側へ行くほど開口幅が広がるように形成されている。高天井部側上壁部8の大型側部侵入口15に対応する部位には、容器2の外方へ向けて延出する側部延出部8bがそれぞれ形成されている。大型側部侵入口15の下縁部は、底壁部5の側縁部で構成されている。大型側部侵入口15の下縁部には、上記容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部14が連続している。大型側部侵入口15の上縁部は、側部延出部8bの外縁部で構成されている。
【0033】
この大型側部侵入口15の上下方向の寸法H2(図1及び図3に示す)、即ち、大型側部侵入口15の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、上記大型端部侵入口10の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、大型側部侵入口15の下縁部の長さ寸法W2(図3に示す)は、70mmに設定されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、上記周壁部6の低天井部3側の端壁部分6cは、上側へ行くほど容器2の中心部に近づくように傾斜している。この端壁部分6cに小型端部侵入口20が形成されている。上記低天井部側上壁部9の小型端部侵入口20に対応する部分には、容器2の外方へ向けて延出した延出部9aが形成されている。小型端部侵入口20の下縁部は、底壁部5の端縁部で構成されている。この小型端部侵入口20の下縁部には、容器2の内方へ向けて折り返された下部折り返し部23が連続している。小型端部侵入口20の上縁部は、上記延出部9aの外縁部で構成されている。
【0035】
この小型端部侵入口20の上下方向の寸法H3(図2及び図4に示す)、即ち、小型端部侵入口20の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、15mmに設定されている。小型端部侵入口20の上縁部及び下縁部の長さ寸法W3(図4に示す)は、60mmに設定されている。
【0036】
図2及び図4に示すように、上記周壁部6における小型端部侵入口20の上方には、小型上部侵入口24が形成されている。この小型上部侵入口24は、高天井部4と低天井部5との境界部分に位置している。高天井部側上壁部8の小型上部侵入口24側の縁部には、容器2の外方へ向かって延出した第2延出部8cが設けられている。この小型上部侵入口24の上下方向の寸法H4(図2及び図4に示す)は、上記小型端部侵入口20の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、小型上部侵入口24の下縁部の長さ寸法W4(図4に示す)は、60mmに設定されている。
【0037】
上記周壁部6の両側壁部分6aには、図2及び図3に示すように、同じ形状の小型側部侵入口25がそれぞれ形成されている。小型側部侵入口25の上縁部は、低天井部側上壁部9の側縁部で構成されている。小型側部侵入口25の下縁部は底壁部5の側縁部で構成されている。小型側部侵入口25の下縁部には、上記容器2の内方へ向けて延びる折り返し部26が連続している。この小型側部侵入口25の上下方向の寸法H5(図2及び図3に示す)、即ち、小型側部侵入口25の上縁部と下縁部との底壁部5に垂直な方向の離間寸法は、上記小型端部侵入口20の上下方向の寸法と同じに設定されている。また、小型側部侵入口25の下縁部の長さ寸法W5(図3に示す)は、50mmに設定されている。
【0038】
上記大型端部侵入口10、大型側部侵入口15、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H1〜H5を上記のように設定しているのは、以下に説明するゴキブリの捕獲実験結果に基づいている。
【0039】
この捕獲実験で使用した試験容器Sは、該試験容器Sの外形状による捕獲率への影響を排除するために、図7に示すような単純な直方体としている。試験容器Sの長手方向の寸法Cは80mmに設定され、幅方向の寸法Dは40mmに設定されている。該試験容器Sの幅方向に延びる側壁部にゴキブリ侵入用の侵入口Aが形成されている。この侵入口Aの幅方向の寸法は、試験容器Sの幅方向の寸法Dと同じ40mmに固定し、上下方向の寸法Eを5mmから50mmの範囲で変更する。具体的には、侵入口Aの上下方向の寸法Eが、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mmに設定された試験容器Sを予め用意した。全ての試験容器S内には、一般にゴキブリ捕獲用として用いられている誘引剤及び粘着剤が塗布されたシート(図示せず)が貼り付けられている。
【0040】
捕獲試験を行う試験フィールドFは、図8に示すように、略正方形の平面で広さは2.3m2である。上記試験容器Sは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが異なる2つを1組にして、試験フィールドFの4隅に1組ずつ配置する。また、供試虫Kは、一般的なゴキブリの生息場所である住居や飲食店等において大部分を占める3種類とした。具体的には、チャバネゴキブリの雄10匹、雌10匹及び卵鞘を持った雌10匹と、クロゴキブリの雄10匹及び雌10匹と、ワモンゴキブリの雄10匹及び雌10匹の3種類である。これらゴキブリを試験フィールドFに一斉に放し、24時間経過後に各試験容器Sで捕獲したゴキブリの数を確認する。これを試験容器Sの組み合わせを変えて複数回行う。
【0041】
図9は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、チャバネゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。尚、この明細書で用いている捕獲率とは、試験容器Sで捕獲したゴキブリの数を試験開始時に放したゴキブリの数で除してから100を乗じた値である。また、試験容器Sの上下方向の寸法Eは、上記のように所定間隔をあけて設定しているため、その所定間隔内にある寸法では試験を実施していないが、捕獲率の変化は曲線に示すようになる。また、雄、雌及び卵鞘を持った雌の捕獲率をまとめた結果を総合として表している。
【0042】
この図9に明らかなように、雄、雌及び卵鞘をもっている雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが7mm以上16mm以下の範囲と、27mm以上45mm以下の範囲である。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが、5mmよりも長く7mmよりも短い範囲と、16mmよりも長く27mmよりも短い範囲と、45mmよりも長い範囲である。このように、チャバネゴキブリの捕獲率は、雄、雌及び卵鞘をもっている雌の間で似たような値になる。
【0043】
図10は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、クロゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図10に明らかなように、雄及び雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが12mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲である。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが5mmよりも長く12mmよりも短い範囲と、17mmよりも長く23mmよりも短い範囲と、45mmよりも長い範囲である。このように、クロゴキブリの捕獲率も、雄及び雌の間で似たような値になる。
【0044】
図11は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを変化させた場合に、ワモンゴキブリの捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図11に明らかなように、雄及び雌の捕獲率が共に顕著に高くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが23mm以上40mm以下の範囲である。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが13mm以上17mm以下の範囲では雄の捕獲率が高くなっている。逆に、捕獲率が低くなっているのは、侵入口Aの上下方向の寸法Eが5mmよりも長く13mmよりも短い範囲と、17mmよりも長く23mmよりも短い範囲と、40mmよりも長い範囲である。このように、ワモンゴキブリの捕獲率も、雄及び雌の間で似たような値になる。尚、侵入口Aの上下方向の寸法Eが30mmにあるときにクロゴキブリの雄の捕獲率が低下しているのは、実験上の誤差によるものと考えられる。また、上記クロゴキブリ及びワモンゴキブリの総合とは、雄及び雌の捕獲率をまとめたものである。
【0045】
チャバネゴキブリの総合の捕獲率と、クロゴキブリの総合の捕獲率と、ワモンゴキブリの総合の捕獲率とを示す図12に明らかなように、3種類のゴキブリの捕獲率は、侵入口Aの上下方向の寸法Eが8mm以上17mm以下の範囲と、23mm以上45mm以下の範囲とで顕著に高まり、これら2つの範囲を外れると捕獲率が低下する。
【0046】
上記侵入口Aの上下方向の寸法Eが8mmよりも短い場合には、各ゴキブリが侵入口Aに侵入する前に触角で該侵入口Aの上縁部と下縁部とに触れた際に自分の体躯に対して侵入口Aが狭すぎると察知して警戒するため、捕獲率が低下する。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが45mmよりも長い場合には、各ゴキブリの触角が侵入口Aの上縁部に届きにくくなり、該ゴキブリが侵入口Aを開口部として捉えずに広い空間が広がっていると判断してその方向には進まなくなるため、捕獲率が低下する。また、侵入口Aの上下方向の寸法Eが17mmよりも長く23mmよりも短い範囲にある場合には、殆どのゴキブリは触角で侵入口Aの大きさを把握可能であるが、上下方向の寸法Eがこの範囲にある侵入口Aに対しては殆どのゴキブリが強く警戒して侵入口Aへ入りたがらなくなるため、捕獲率が低下する。つまり、上記捕獲実験結果より、3種類のゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持ったものは、上記した略共通する習性を有していることが見出された。
【0047】
上記した侵入口Aの上下方向の寸法Eを変更した場合の実験結果に基づいて、この実施形態では、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法を30mmに設定し、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法を15mmに設定している。
【0048】
また、図13は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを15mmに固定して幅方向の寸法Dを変化させた場合に捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この実験の条件は、上記した条件と同じであるが、供試虫Kは、チャバネゴキブリの雄、雌及び卵鞘を持った雌と、クロゴキブリの雄及び雌としている。また、試験容器Sについては、幅方向の寸法Dのみを30mmから100mmの範囲で変更する。具体的には、侵入口Aの幅方向の寸法Dが、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mmに設定された試験容器Sを用意した。この図13に明らかなように、侵入口Aの幅方向の寸法Dが30mmよりも狭いと、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの両方で捕獲率が略0になる。
【0049】
また、図14は、侵入口Aの上下方向の寸法Eを30mmに固定して幅方向の寸法Dを変化させた場合に捕獲率がどのように変化したかを示すものである。この図14に明らかなように、侵入口Aの幅方向の寸法Dが60mmの場合に、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率が共に低下し、70mm及び90mmの場合に、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率が共に高まる。
【0050】
上記侵入口Aの上下方向の寸法を30mmに固定した場合の実験結果に基づいて、この実施形態では、大型端部侵入口10の下縁部の長さ寸法Wa1を90mmに設定し、大型側部侵入口15の下縁部の長さ寸法W2を70mmに設定している。また、上記侵入口Aの上下方向の高さを15mmで固定した場合の実験結果に基づいて、小型端部侵入口20及び小型上部侵入口24の下縁部の長さ寸法W3、W4を60mmに設定し、小型側部侵入口25の下縁部の長さ寸法W5を50mmに設定している。
【0051】
上記実施形態では、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H3、H4、H5を15mmに設定しているが、これら侵入口20、24、25の上下方向の寸法H3、H4、H5は、15mmに限られるものではなく、上記した8mm以上17mm以下の範囲であればよい。また、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法H1、H2を30mmに設定しているが、これら侵入口10、15の上下方向の寸法H1、H2は、30mmに限られるものではなく、上記した23mm以上45mm以下の範囲であればよい。
【0052】
以上説明したように、この実施形態に係るゴキブリ捕獲器1によれば、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法H3、H4、H5を8mm以上17mm以下の範囲で設定し、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15の上下方向の寸法H1、H2を23mm以上45mm以下の範囲で設定したので、種類の異なるゴキブリ間やそれらの雄、雌及び卵鞘を持った雌の間で略共通した習性を利用して捕獲率を高めることができる。これにより、ゴキブリの種類や性別等によらずゴキブリを効率良く捕獲して駆除できる。
【0053】
また、小型端部侵入口20の上方に小型上部侵入口24を設けた場合には、以下に示す実験結果から明らかなように、ゴキブリの捕獲率が向上する。この捕獲実験では、図15(a)〜(c)にそれぞれ示す試験容器S1〜S3を用意し、該試験容器S1〜S3を図16に示すように試験フィールドF1〜F3の隅近傍に配置する。これら試験容器S1〜S3の長手方向の寸法は、全て同じ100mmに設定されている。試験容器S1には、長手方向の両端面に侵入口Aがそれぞれ形成されており、これら2つの侵入口Aの上下方向の寸法は15mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。また、試験容器S2にも、長手方向の両端面に侵入口Aがそれぞれ形成されており、これら2つの侵入口Aの上下方向の寸法は、30mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。また、試験容器S3には、上記小型端部侵入口20及び小型上部侵入口24にそれぞれ対応する侵入口A1及びA2が形成され、さらに、上記大型端部侵入口10に対応する侵入口A3が形成されている。侵入口A1及びA2は、同じ形状であり、上下方向の寸法は、15mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。侵入口A3の上下方向の寸法は、30mmに設定され、幅方向の寸法は90mmに設定されている。一方、試験フィールドF1〜F3は同じ形状であり、1.8m×1.3mの広さとされている。この捕獲実験では、上記試験フィールドF1〜F3の略中心部で供試虫を放し所定時間放置しておく。1回の捕獲実験で用いる供試虫は、チャバネゴキブリの雄4匹、雌4匹及び卵鞘を持った雌4匹と、クロゴキブリの雄4匹及び雌4匹と、ワモンゴキブリの雄3匹及び雌3匹である。捕獲実験は3回行い、図17に示す実験結果が得られた。この実験結果によれば、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ及びワモンゴキブリの捕獲数が、試験容器S3で最も多いことが分かる。このことより、1つの試験容器S3に、上下方向に2つの小型侵入口A1、A2を並べて形成し、さらに大型の侵入口A3を形成することで、ゴキブリの捕獲率が向上するといえる。
【0054】
つまり、上記実施形態の容器1のように、上下方向の寸法が大型端部侵入口10よりも短い小型端部侵入口20の上方に、小型上部侵入口24を形成することで、容器2をコンパクトにしながら、ゴキブリの捕獲率を高めることができる。
【0055】
また、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25を互いに離して設けることにより、高い捕獲率を得ることが可能な形状の侵入口が容器2に複数設けられることになり、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。また、大型端部侵入口10及び大型側部侵入口15を互いに離して設けることにより、同様に、ゴキブリの捕獲率をより一層高めることができる。
【0056】
尚、上下方向の寸法が8mm以上17mm以下の範囲にある侵入口は1つであってもよいし、また、上下方向の寸法が23mm以上45mm以下の範囲にある侵入口も1つであってもよい。また、これら侵入口の位置は任意に設定することができる。
【0057】
また、小型端部侵入口20、小型上部侵入口24及び小型側部侵入口25の上下方向の寸法は、図12に示す実験結果から明らかなように、下限値を12mm以上とすることが捕獲率を向上させる点から好ましい。さらに、大型端部侵入口10、大型側部侵入口15の上下方向の寸法は、同様に、25mm以上40mm以下に設定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係るゴキブリ捕獲器は、例えば住居や飲食店等の一般的なゴキブリの生息環境で使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器を高天井部側から見た斜視図である。
【図2】ゴキブリ捕獲器を低天井部側から見た斜視図である。
【図3】ゴキブリ捕獲器の側面図である。
【図4】ゴキブリ捕獲器を小型端部侵入口側から見た図である。
【図5】ゴキブリ捕獲器を大型端部侵入口側から見た図である。
【図6】ゴキブリ捕獲器の平面図である。
【図7】試験容器の斜視図である。
【図8】試験フィールドの平面図である。
【図9】侵入口の上下方向の寸法とチャバネゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図10】侵入口の上下方向の寸法とクロゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図11】侵入口の上下方向の寸法とワモンゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図12】侵入口の上下方向の寸法と3種類のゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図13】侵入口の上下方向の寸法を15mmに固定した場合、侵入口の幅方向の寸法とチャバネゴキブリ及びクロゴキブリの捕獲率との関係を示すグラフである。
【図14】侵入口の上下方向の寸法を30mmに固定した場合の図13相当図である。
【図15】(a)は試験容器S1の斜視図であり、(b)は試験容器S2の斜視図であり、(c)は試験容器S3の斜視図である。
【図16】試験フィールドF1〜F3の平面図である。
【図17】捕獲実験の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0060】
1 ゴキブリ捕獲器
2 容器
5 底壁部
6 周壁部
10 大型端部侵入口(ゴキブリ侵入用の第2侵入口)
15 大型側部侵入口(ゴキブリ侵入用の第2侵入口)
20 小型端部侵入口(ゴキブリ侵入用の第1侵入口)
24 小型上部侵入口(ゴキブリ侵入用の第3侵入口)
25 小型側部侵入口(ゴキブリ侵入用の第1侵入口)
R 捕獲用空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲用空間を有する容器と、
上記容器の壁部に設けられ、上記捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第1侵入口及び第2侵入口とを備え、
上記第1侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、
上記第2侵入口の上下方向の寸法が、23mm以上45mm以下に設定されていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載のゴキブリ捕獲器において、
容器の壁部には、複数の第1侵入口が互いに離れて設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴキブリ捕獲器において、
容器の壁部には、複数の第2侵入口が互いに離れて設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のゴキブリ捕獲器において、
第1侵入口及び第2侵入口は、容器の壁部に上下方向に開口幅を有するように設けられ、
上記容器の壁部における第1侵入口の上方には、捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第3侵入口が設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項5】
請求項4に記載のゴキブリ捕獲器において、
第3侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定されていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項1】
捕獲用空間を有する容器と、
上記容器の壁部に設けられ、上記捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第1侵入口及び第2侵入口とを備え、
上記第1侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、
上記第2侵入口の上下方向の寸法が、23mm以上45mm以下に設定されていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載のゴキブリ捕獲器において、
容器の壁部には、複数の第1侵入口が互いに離れて設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴキブリ捕獲器において、
容器の壁部には、複数の第2侵入口が互いに離れて設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のゴキブリ捕獲器において、
第1侵入口及び第2侵入口は、容器の壁部に上下方向に開口幅を有するように設けられ、
上記容器の壁部における第1侵入口の上方には、捕獲用空間に連通するゴキブリ侵入用の第3侵入口が設けられていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項5】
請求項4に記載のゴキブリ捕獲器において、
第3侵入口の上下方向の寸法が、8mm以上17mm以下に設定されていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−159521(P2007−159521A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362778(P2005−362778)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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